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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084458
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】PTP包装シート
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20230612BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20230612BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230612BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20230612BHJP
   C08L 23/04 20060101ALI20230612BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20230612BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20230612BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/36
B32B27/20 A
C08L27/06
C08L23/04
C08L23/14
C08K3/30
C08J5/18 CES
C08J5/18 CEV
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198645
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 幸博
(72)【発明者】
【氏名】早野 信吾
(72)【発明者】
【氏名】井口 博務
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一真
(72)【発明者】
【氏名】油布 一隆
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E067AA13
3E067AB82
3E067AC12
3E067BA15A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA14
3E067EA06
3E067EE33
3E067FB04
3E086AB01
3E086AD07
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB25
3E086CA28
4F071AA19
4F071AA20
4F071AA24
4F071AA88
4F071AB24
4F071AD02
4F071AD06
4F071AE22
4F071AF30Y
4F071AF36
4F071AH04
4F071BB04
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA07A
4F100AK04A
4F100AK07A
4F100AK15A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DE01A
4F100GB15
4F100GB66
4F100JN02A
4J002DG046
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD050
4J002FD090
4J002FD170
4J002GG02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硫酸バリウムの分散性に優れ、造影性に優れるPTP包装シートを提供すること。
【解決手段】樹脂と、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒子径が0.05~1.5μmである硫酸バリウムとを含むPTP包装シートであって、該シートの厚さ方向に直交する面の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が40g/m2以上である、PTP包装シート。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒子径が0.05~1.5μmである硫酸バリウムとを含むPTP包装シートであって、
該シートの厚さ方向に直交する面の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が40g/m2以上である、PTP包装シート。
【請求項2】
前記PTP包装シートが、前記樹脂と、前記硫酸バリウムとを含む層Aのみからなる単層シート、または、
前記PTP包装シートが、前記層Aを含む多層のシートであって、
該層A中の硫酸バリウムの濃度が7~35質量%である、
請求項1に記載のPTP包装シート。
【請求項3】
厚さが50~600μmである、請求項1または2に記載のPTP包装シート。
【請求項4】
前記樹脂が、塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂およびプロピレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載のPTP包装シート。
【請求項5】
ヘーズ値が80%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のPTP包装シート。
【請求項6】
前記PTP包装シートが、体内に存在していても造影可能なシートである、請求項1~5のいずれか1項に記載のPTP包装シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPTP包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤、カプセル剤などの形状の医薬品や食品等は、通常、透明なプラスチックシートであるプレススルーパック包装シート(以下「PTP包装シート」という。)に、所定の深さのポケット(深絞り部)を形成し、そのポケットに該医薬品や食品等を収容し、開口部をアルミニウム箔などのシール材(蓋材)にて密封包装することで、PTP包装体として流通に供されており、前記ポケット内に収容された医薬品や食品等は、例えば、ポケットを指で押すことにより、シール材側から取り出されて服用等されている。
【0003】
PTP包装体では、通常、医薬品や食品等の収容物を収容したポケットを1つ有する収容部が、ミシン目やハーフカット等により1個ずつ分離できるようにされた状態で多数連結されていることが多く、該PTP包装体から、医薬品や食品等の収容物を取り出す際には、多数連結された収容部を1個ずつ分離してから、該収容物を取り出すことが多い。
このように多数連結された収容部を1個ずつ分離してから、収容物を取り出す場合、誤ってPTP包装体ごと服用(以下「誤飲」ともいう。)してしまう場合がある。
【0004】
前記のような誤飲が起こった場合、PTP包装体は、食道ばかりでなく、胃や腸等を傷つけることもあるため、PTP包装体を早期に体外に取り出す必要があるが、従来のPTP包装体は、病院のX線レントゲン等には写り難いため、CTや内視鏡等で発見することしかできず、PTP包装体の発見の遅れによる重症化につながっていた。このため、前記誤飲対策として、X線で造影可能なPTP包装体の開発が求められている。
【0005】
このようなX線で造影可能なPTP包装体としては、例えば、特許文献1や2に記載のPTP包装体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-235790号公報
【特許文献2】特開2000-286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のX線で造影可能なPTP包装体に用いられるPTP包装シートは、X線による造影性の点で十分ではなく、改良の余地があった。
また、従来のX線で造影可能なPTP包装体に用いられるPTP包装シートは、その造影性を向上しようとすると、X線造影剤の分散性の低下による生産性の低下が起こることが分かった。
【0008】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、硫酸バリウムの分散性に優れ、造影性に優れるPTP包装シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下のとおりである。
【0010】
[1] 樹脂と、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒子径が0.05~1.5μmである硫酸バリウムとを含むPTP包装シートであって、
該シートの厚さ方向に直交する面の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が40g/m2以上である、PTP包装シート。
【0011】
[2] 前記PTP包装シートが、前記樹脂と、前記硫酸バリウムとを含む層Aのみからなる単層シート、または、
前記PTP包装シートが、前記層Aを含む多層のシートであって、
該層A中の硫酸バリウムの濃度が7~35質量%である、
[1]に記載のPTP包装シート。
【0012】
[3] 厚さが50~600μmである、[1]または[2]に記載のPTP包装シート。
【0013】
[4] 前記樹脂が、塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂およびプロピレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載のPTP包装シート。
【0014】
[5] ヘーズ値が80%以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のPTP包装シート。
【0015】
[6] 前記PTP包装シートが、体内に存在していても造影可能なシートである、[1]~[5]のいずれか1記載のPTP包装シート。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硫酸バリウムの分散性に優れ、造影性に優れる、特に体内に存在していても造影可能なPTP包装シートを提供することができる。また、本発明によれば、安全性に優れ、PTP包装体の成形性に優れるPTP包装シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施例4で作製したPTP包装シートのX線造影写真である。
図2図2は、実施例5で作製したPTP包装シートのX線造影写真である。
図3図3は、実施例6で作製したPTP包装シートのX線造影写真である。
図4図4は、実施例10で作製したPTP包装シートのX線造影写真である。
図5図5は、比較例2で作製したPTP包装シートのX線造影写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪PTP包装シート≫
本発明に係るPTP包装シート(以下「本シート」ともいう。)は、樹脂と、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒子径が0.05~1.5μmである硫酸バリウムとを含み、
該本シートの厚さ方向に直交する面の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が40g/m2以上である。
【0019】
本シートは、前記樹脂と前記硫酸バリウムとを含む層(以下「層A」ともいう。)のみからなる単層シートであってもよく、該層Aを含む多層のシートであってもよい。該多層のシートの場合、層Aを2層以上含んでいてもよく、層A以外の層(以下「層B」ともいう。)を2層以上含んでいてもよい。
本シートが2層以上の層Aを含む場合、該2層以上の層Aは、同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。本シートが2層以上の層Bを含む場合、該2層以上の層Bは、同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。
前記層Bとしては、例えば、樹脂を含み、硫酸バリウムを含まない層が挙げられる。
【0020】
本シートの好適例としては、層Aのみからなる単層シート、層B、層A、層Bがこの順で積層された積層シート、層B、層B、層A、層B、層Bがこの順で積層された積層シート、層B、層A、層B、層A、層Bがこの順で積層された積層シートが挙げられ、層Aのみからなる単層シート、層B、層A、層Bがこの順で積層された積層シートがより好ましい。
また、本シートは、必要に応じて、前記単層シートや積層シートの片面または両面に、酸素バリア層などのガスバリア層、ガス吸収層、防湿層、遮光層、ブリードアウト防止層などの層が積層された多層型シートとしてもよい。
【0021】
本シートの厚さ方向に直交する面(本シートの最も面積の大きな面)の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量(以下単に「単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量」ともいう。)は、40g/m2以上であり、好ましくは40~130g/m2、より好ましくは55~100g/m2である。
単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が前記範囲にあると、造影性に優れる、特に、体内に存在していても造影可能なPTP包装シートを得ることができる。
【0022】
単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量は、本シートの密度と、層Aの厚みと、該層A中の硫酸バリウムの濃度との積で算出することができる。なお、例えば、本シートが、層Aとして、厚みa1(m)で硫酸バリウムの濃度がc1(質量%)である層A1と、厚みa2(m)で硫酸バリウムの濃度がc2(質量%)である層A2とを含む場合、単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量は、本シートの密度(g/m3)×(a1×c1/100+a2×c2/100)で算出することができる。本シートが3層以上の層Aを含む場合も同様である。
【0023】
本シートの厚みは、特に制限されないが、本シートからPTP包装体を製造する際のポケット成形性に優れる等の点から、好ましくは50~600μm、より好ましくは100~400μm、さらに好ましくは150~300μmである。
本シートが前記単層シートである場合、層Aの厚みは、前記本シートの厚みと同じである。一方、本シートが前記積層シートである場合、本シート中の層Aの合計厚みは、単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が前記範囲となるように選択すればよいが、好ましくは50~300μm、より好ましくは85~250μmである。
なお、本明細書では、フィルムとシートとは特に区別しているわけではない。
【0024】
本シートの形状は特に制限されず、PTP包装体の用途に応じて適宜選択すればよい。
【0025】
本シートのヘーズ値は、PTP包装体に収容された収容物の視認性に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下である。該ヘーズ値の下限は特に制限されず、小さければ小さい方がよい。
該ヘーズ値は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0026】
<樹脂>
前記樹脂としては特に制限されず、従来公知の、PTP包装シートに使用されてきた樹脂を制限なく用いることができる。
層Aに含まれる樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。層Bが樹脂を含む場合、該層Bに含まれる樹脂も、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0027】
前記層A中の樹脂の含有量は、強度、透明性、水蒸気バリア性および収容物の保存性等に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、好ましくは65~93質量%、より好ましくは70~84質量%、さらに好ましくは74~84質量%である。
【0028】
前記樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのエステル系樹脂(ポリエステル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体などのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、塩化ビニル系樹脂(PVC)、ポリカーボネート、ポリアクリルニトリル、ポリイミドが挙げられる。
前記樹脂は、従来公知の方法で合成して得た樹脂であってもよく、市販品でもよい。
【0029】
これらの中でも、PTP包装体に好適に用いることができるシートを容易に得ることができる等の点から、塩化ビニル系樹脂およびオレフィン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、塩化ビニル系樹脂、エチレン系樹脂およびプロピレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
なお、前記樹脂がエチレン系樹脂またはプロピレン系樹脂である場合、本シートを製造する際の成形性やポケット成形性により優れる等の点から、本シートは、前記積層シートであることが好ましい。
【0030】
[塩化ビニル系樹脂]
層Aや層Bに用いる樹脂としては、塩化ビニル系樹脂を用いることができる。
本シートが特に前記単層シートである場合、層Aに用いる樹脂としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0031】
前記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを原料として得られる樹脂であれば特に制限されず、塩化ビニルの単独重合体または塩化ビニルと他のモノマーと共重合体が挙げられる。
【0032】
前記他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン等のオレフィン類またはその塩素化物、イソプレン、ブタジエン等のジエン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニル化合物、マレイン酸またはそのエステルもしくはその酸無水物、アクリル酸またはそのエステル、メタクリル酸またはそのエステル、塩化ビニリデンが挙げられる。
【0033】
また、前記塩化ビニル系樹脂としては、前記単独重合体または共重合体が部分的に架橋された樹脂であってもよい。また、塩化ビニル系樹脂のポリマーブレンド物、例えば、塩化ビニル樹脂とポリ塩化ビニリデンからなるポリマーブレンド物を用いてもよい。
これらのうち、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0034】
前記塩化ビニル系樹脂のJIS K 6720-2に基づいて測定した平均重合度は、熱安定性および成形性に優れる本シートが得られる等の点から、好ましくは500~5000であり、より好ましくは500~2000である。
【0035】
[エチレン系樹脂]
層Aや層Bに用いる樹脂としては、エチレン系樹脂を用いることができる。
本シートが特に前記積層シートである場合、透明性に優れ、医薬品や食品等の収容物を包装するPTP包装体として好適に用いることができる等の点から、層Aはエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
エチレン系樹脂としては特に制限されず、例えば、高密度ポリエチレン(以下「HDPE」ともいう。)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(以下「LDPE」ともいう。)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」ともいう。)が挙げられる。
【0037】
前記層Aは、強度、透明性、水蒸気バリア性および収容物の取り出し容易性等に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、HDPEを含むことが好ましい。
【0038】
HDPEのJIS K 7210(190℃、2.16kg荷重)に従い測定されるMFRは、良好なポケット成形性を有するシートを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1~10g/10分、より好ましくは0.5~6g/10分である。
【0039】
HDPEとしては、エチレンの単独重合体のみならず、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
【0040】
HDPEは、大気中のCO2量の増加を抑制し、かつ、石油資源の節約にもつながる等の点から、バイオマス由来のHDPEであってもよい。
【0041】
前記バイオマスとしては特に制限されないが、サトウキビ(バガスを含む)、とうもろこし、デンプン、ひまし油、畳(使用済みの廃畳)の破砕物、木材チップ、木粉、おが屑、紙屑、草木ソルガム、甜菜の絞りかす、稲わら等の草木質、針葉樹材料、広葉樹材料、非樹木系材料、これら材料の廃棄物等が挙げられる。
【0042】
前記バイオマス由来のHDPEとしては、バイオマス由来のエチレンを原料として得られるHDPEであれば特に制限されないが、具体的には、植物を発酵させて得られたアルコールを原料として合成したエチレンを用いた植物由来のHDPEが挙げられる。
より具体的には、従来公知の方法で、前記バイオマスから得られる糖液やデンプンを、酵母等の微生物により発酵させてバイオエタノールを製造し、これを触媒存在下で加熱し、分子内脱水反応等させることで得られたエチレンおよび必要によりα-オレフィン(例:1-ブテン、1-ヘキセン)等を共重合モノマーとして用い、化石燃料由来のHDPEの合成と同様に、慣用の触媒の存在下で(共)重合させることにより得られる、HDPEが挙げられる。
前記共重合モノマーとしては、バイオマス由来のα-オレフィンの他に、従来の高密度ポリエチレンの合成において一般に用いられる化石燃料由来のコモノマーを用いてもよい。
【0043】
前記層Aは、透明性およびポケット成形性に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、LDPEを含むことが好ましい。
【0044】
LDPEのASTM D 1238に従い測定されるMFRは、良好なポケット成形性を有するシートを容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.1~10g/10分、より好ましくは0.5~6g/10分である。
【0045】
LDPEは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンを主成分とし、α-オレフィンを副成分として、メタロセン触媒等の存在下に重合することにより得られる低密度ポリエチレンであってもよい。α-オレフィンとしては、炭素数3~40、好ましくは4~35、より好ましくは4~30のα-オレフィンの1種または2種以上が使用され、例えば、炭素数3~8のα-オレフィンと炭素数10~26のα-オレフィンとを併用することができる。LDPEが共重合体である場合、α-オレフィンの含有量は、共重合体に対し、好ましくは3~15モル%である。
【0046】
LDPEは、大気中のCO2量の増加を抑制し、かつ、石油資源の節約にもつながる等の点から、バイオマス由来のLDPEであってもよい。
バイオマス由来のLDPEは、前記HDPEの欄で挙げたバイオマス由来の原料を用い、従来公知のLDPEを合成する方法に従って合成することができる。
【0047】
前記LLDPEは、エチレン単独重合体であってもよく、また、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。また、該共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
炭素数3~10のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられ、これらのα-オレフィンは1種であってもよく、2種以上でもよい。
【0048】
LLDPEのJIS K 7210(190℃、2.16kg荷重)に従い測定されるMFRは、成形性により優れる等の点から、好ましくは0.1~10g/10分、より好ましくは0.5~7g/10分である。
【0049】
[プロピレン系樹脂]
層Aや層Bに用いる樹脂としては、プロピレン系樹脂を用いることができる。
本シートが特に前記積層シートである場合、外観(表面平滑性)に優れ、医薬品や食品等の収容物を包装するPTP包装体として好適に用いることができる等の点から、層Bはプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。
本シートは接着層を含まないことが好ましいが、前記積層シートにおいて、層Aに用いる樹脂としてポリエチレン系樹脂を用いる場合には、接着層を用いずに層間接着性に優れる積層シートを容易に得ることができる等の点から、層Bとしては、プロピレン系樹脂とともに前記LLDPEを用いることが好ましい。
【0050】
前記プロピレン系樹脂としては特に制限されず、プロピレン単独共重合体、プロピレンとエチレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種との共重合体等が挙げられる。該共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
該炭素数4以上のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1等が挙げられる。
前記共重合体中におけるプロピレンから誘導される構成単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0051】
プロピレン系樹脂のJIS K 7210(230℃、2.16kg荷重)に従い測定されるMFRは、好ましくは0.1~10g/10分、より好ましくは0.5~7g/10分である。
MFRが前記範囲にあるプロピレン系樹脂を用いることで、本シートを製造する際の成形性により優れるため好ましい。
【0052】
<硫酸バリウム>
層Aに含まれる硫酸バリウムは、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒子径が0.05~1.5μmの硫酸バリウムである。
層Aに含まれる硫酸バリウムは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0053】
前記平均粒子径は、硫酸バリウムの分散性およびポケット成形性に優れ、ヘーズ値の小さい、造影性に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、0.05~1.5μmであり、好ましくは0.06~0.9μm、より好ましくは0.1~0.6μmである。
前記平均粒子径が0.05μmを下回ると、硫酸バリウムの分散性に劣り、1.5μmを上回ると、得られるフィルムの表面凹凸が大きくなり、つやが低下する。
【0054】
本発明における硫酸バリウムの平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により、レーザー回折・散乱式粒度分析計を使用して測定される粒子径分布曲線において、粒子の小さい方からの累積が50%となる粒子径(D50)である。
該レーザー回折・散乱式粒度分析計としては、例えば、日機装(株)製のレーザー回折・散乱式粒度分析計「MT3200II」を使用することができる。
【0055】
前記硫酸バリウムとしては、例えば、天然鉱物(例:重晶石)の粉砕物や沈降性硫酸バリウムが挙げられる。
前記硫酸バリウムは、本発明の効果を損なわない範囲において、鉄、マンガン、ストロンチウム、カルシウム、硫化物などの不純物を含んでもよいが、該不純物を含まないまたは不純物含量の少ないものが好ましい。
【0056】
前記硫酸バリウムとしては、脂肪酸処理やSiO2-Al23処理等の公知の表面処理により表面処理したものを用いてもよいし、表面を処理していない未処理品を用いてもよい。
樹脂との混和性を考慮すると表面を処理したものの方が好ましい場合があるが、例えば、樹脂として、塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、得られるシートが着色(焼けの発生)してしまう場合があるため、未処理品を用いることが好ましい。
【0057】
本シート中の硫酸バリウムの含有量は、単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量が前記範囲となるような量である。
層A中の硫酸バリウムの濃度は、硫酸バリウムの分散性に優れ、ヘーズ値の小さい、造影性に優れるシートを容易に得ることができる等の点から、好ましくは7~35質量%、より好ましくは16~30質量%、さらに好ましくは16~26質量%である。
【0058】
<他の成分>
本シートは、必要に応じて、樹脂および硫酸バリウム以外の他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0059】
前記他の成分としては、例えば、分散剤、熱安定剤や耐光安定剤などの安定剤、紫外線吸収剤、柔軟剤、可塑剤、滑剤、加工助剤、強化剤、顔料、紫外線散乱剤、帯電防止剤、酸化防止剤が挙げられる。
これらの他の成分は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0060】
[分散剤]
前記分散剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた分散剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤が挙げられる。
【0061】
[安定剤]
前記安定剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた安定剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、錫等の金属化合物、ジベンゾイルメタン等のβ-ジケトン化合物、有機亜リン酸エステル、多価アルコール、フェノール系化合物、エポキシ系化合物、有機ホスファイト化合物が挙げられ、安全性および安定性に優れるシートが得られる等の点から、カルシウム、バリウム、亜鉛等の金属化合物、β-ジケトン化合物が好ましい。
【0062】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた紫外線吸収剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0063】
[柔軟剤]
前記柔軟剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた柔軟剤を使用することができ、特に制限されないが、得られるシートの耐衝撃性を向上させる等の点から、ブチルアクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体、ブチルアクリレート-スチレン-メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エポキシ変性エチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体、スチレン-エチレン-プロピレン共重合体等の耐衝撃性改良樹脂が好ましい。
【0064】
[可塑剤]
前記可塑剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた可塑剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステル系可塑剤;エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポシキ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化エステル系可塑剤;トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等のリン酸エステル系可塑剤が挙げられる。これらの中でも、シートの成形性、加工性等の点から、エポキシ化エステル系可塑剤が好ましい。
【0065】
[滑剤]
前記滑剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた滑剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、脂肪酸アルコールエステル、低分子ポリエチレンが挙げられ、シートの加工性等の点から、脂肪酸アルコールエステルが好ましい。
前記脂肪酸アルコールエステルとしては、グリセリンと脂肪酸の1~3価のエステル系化合物であることが好ましく、例えば、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド等のステアリン酸グリセライド滑剤、オレイン酸グリセライド滑剤、パルチミン酸グリセライド滑剤が挙げられる。
【0066】
[加工助剤]
前記加工助剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた加工助剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体、高分子量のポリメチルメタクリレート等のアクリル系加工助剤が好ましい。
【0067】
[強化剤]
前記強化剤としては、従来のPTP包装シートに用いられてきた強化剤を使用することができ、特に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル系樹脂の強化剤が好ましい。
【0068】
[顔料]
前記顔料としては、PTP包装シートに従来用いられてきた顔料を使用することができ、特に制限されないが、例えば、アゾ系顔料、キナクリドン、イソインドリン、アントラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料などの着色顔料、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、酸化亜鉛、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ガラス繊維、紙粉、木粉等の体質顔料が挙げられる。
【0069】
<本シートの製造方法>
本シート、特に前記層Aや単層シートは、例えば、前記樹脂、前記硫酸バリウムおよび必要に応じて前記他の成分を含む樹脂組成物を、溶融成形法の単層Tダイ法、カレンダー法など公知の手法によってシート状に成形することで製造することができる。
【0070】
前記積層シートや前記多層型シートは、従来公知の積層体の製造方法と同様の方法で製造することができる。例えば、前記積層シートや前記多層型シートは、層Aの両面に、前記層Bを形成するシートを重ね合せた後に熱融着したり、各層を形成するシートを接着剤層などを介して接着することで製造してもよい。
ここで、得られる積層シートや前記多層型シートの層間接着性を良くするために、積層シートや前記多層型シートを形成するいずれかの層の表面を、予め、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などの方法で前処理しておいてもよい。
【0071】
また、前記積層シートや前記多層型シートは、前記各層を形成する原料を用い、必要により、前記各層を形成する原料を予めブレンドした物を用い、多層Tダイ法や多層インフレーション法等の共押出法、押出コーティング、ドライラミネーション、ヒートラミネーション、湿式流延法や乾式流延法等のキャスティング法などの一般的な多層シート成形法により製造することもできる。
【0072】
共押し出しする際の温度は、用いる原料に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは160~300℃、より好ましくは180~250℃である。
なお、例えば、前記層Aを押し出す際の温度と、前記層Bを押し出す際の温度とは異なっていてもよい。
【0073】
<PTP包装体>
本シートは、通常、本シートを用いてPTP包装体を作製して使用される。
本シートを用いて、PTP包装体を製造する方法は特に制限されないが、例えば、公知の成形方法で本シートにポケットを形成し、各ポケットに医薬品や食品等の収容物を収容し、収容された収容物を密封するように、本シートとシール材(蓋材)とを接着することでPTP包装体を製造することができる。
【0074】
ここで、本シートにポケットを形成する方法としては、具体的には、以下の方法等が挙げられる。
・加熱圧空成形法:本シートを高温、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、加熱軟化させながらエアーを供給してポケットを形成する方法
・プレヒーター平板式圧空成形法:本シートを加熱し軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、エアーを供給してポケットを形成する方法
・ドラム式真空成形法:本シートをポケット形状の凹部を有する加熱ドラムで部分的に加熱し軟化させた後、前記凹部を真空引きしてポケットを成形する方法
・ピン成形法:本シートを加熱し軟化させた後、ポケット形状の凹凸金型で圧着する方法
・プレヒータープラグアシスト圧空成形法:本シートを加熱し軟化させた後、高圧のエアーが供給される孔を有する下型と、ポケット形状の凹部を有する上型との間に挟み、エアーを供給してポケットを形成する方法であって、成形の際に、凸形状のプラグを上昇および降下させて成形を補助する方法
【0075】
なお、前記ポケット部の形状、大きさ、深さ、個数、配列等は収容物の形状や用途によって適宜選択すればよい。
【0076】
前記シール材(蓋材)としては、ヒートシール(加熱接着)によって、収容物を密封できることから、ヒートシール性樹脂層を有するものが好ましい。ヒートシール性樹脂層とは、ヒートシールの際に、収容物を収容した本シートと融着する層である限り特に限定されないが、例えば、LDPE、中密度ポリエチレン(MDPE)、HDPE、LLDPE、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMAA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルメタクリル酸共重合体(EMMA)、アイオノマー(IO)などを、1種または2種以上含む層が挙げられる。
【0077】
また、シール材(蓋材)は、ガスバリア性が良好である点から、アルミニウム層などの金属蒸着膜層や金属箔層を有することが好ましい。
【実施例0078】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されない。
【0079】
[実施例1]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、表面未処理硫酸バリウム(平均粒子径:0.3μm)とを、該硫酸バリウムの濃度が16質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが180μmのPTP包装シートを作製した。
【0080】
[実施例2]
硫酸バリウムの濃度が20質量%となるように変更した以外は実施例1と同様にして得られた混合物をカレンダー成形することにより、厚みが200μmのPTP包装シートを作製した。
【0081】
[実施例3]
硫酸バリウムの濃度が24質量%となるように変更した以外は実施例1と同様にして得られた混合物をカレンダー成形することにより、厚みが200μmのPTP包装シートを作製した。
【0082】
[実施例4]
硫酸バリウムの濃度が30質量%となるように変更した以外は実施例1と同様にして得られた混合物をカレンダー成形することにより、厚みが250μmのPTP包装シートを作製した。
【0083】
[実施例5]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.6μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが139μmのPTP包装シートを作製した。
【0084】
[実施例6]
厚みが248μmとなるように変更した以外は実施例5と同様にしてPTP包装シートを作製した。
【0085】
[実施例7]
以下のようにして、第1層、第2層、第3層がこの順で積層された積層体であるPTP包装シートを作製した。
【0086】
第1層および第3層形成材料として、PP(ホモポリプロピレン、MFR(JIS K 7210に準拠、230℃、2.16kg荷重):3.0g/10min)をφ65mmの単軸押出機を用いて200~230℃で溶融混練した。
また、第2層形成材料として、PP(ホモポリプロピレン、MFR(JIS K 7210に準拠、230℃、2.16kg荷重):3.0g/10min)と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.6μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20質量%となるようにコンパウンドした後、φ65mmの二軸押出機を用いて200℃で溶融混練した。
【0087】
2種3層のマルチマニホールド式の金口より、ダイス温度205~215℃で、第1層~第3層形成材料を、第1層および第3層の厚みが30μm、第2層の厚みが130μmとなるように吐出量を調整しながら、共押し出しし、得られたシートをキャストロールにて冷却することで、PTP包装シートを作製した。
【0088】
[実施例8]
第2層の厚みが240μmとなるように変更した以外は実施例7と同様にしてPTP包装シートを作製した。
【0089】
[実施例9]
以下のようにして、第1層、第2層、第3層がこの順で積層された積層体であるPTP包装シートを作製した。
【0090】
第1層および第3層形成材料として、PP1(ホモポリプロピレン、MFR(JIS K 7210に準拠、230℃、2.16kg荷重):3.0g/10min)6質量部と、PP2(ホモポリプロピレン、MFR(JIS K 7210に準拠、230℃、2.16kg荷重):7.0g/10min)30質量部と、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン、MFR(JIS K 7210に準拠、190℃、2.16kg荷重):1.2g/10min)10質量部とをドライブレンドした後、φ65mmの単軸押出機を用いて215℃で溶融混練した。
また、第2層形成材料として、HDPE(バイオマス高密度ポリエチレン、密度(ASTM D 792):0.952g/cm3、MFR(JIS K 7210に準拠、190℃、2.16kg荷重):2.0g/10min、バイオマス度(ASTM D 6866):96%)と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.6μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20質量%となるようにコンパウンドした(なお、この際には、硫酸バリウム1質量部に対し、0.2質量部の分散剤を使用した)後、φ65mmの二軸押出機を用いて200℃で溶融混練した。
【0091】
2種3層のマルチマニホールド式の金口より、ダイス温度210℃で、第1層~第3層形成材料を、第1層および第3層の厚みが25μm、第2層の厚みが87μmとなるように吐出量を調整しながら、共押し出しし、得られたシートをキャストロールにて冷却することで、PTP包装シートを作製した。
【0092】
[実施例10]
第2層の厚みが160μmとなるように変更した以外は実施例9と同様にしてPTP包装シートを作製した。
【0093】
[実施例11]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.1μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20.45質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが180μmのPTP包装シートを作製した。
【0094】
[実施例12]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.06μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20.45質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが180μmのPTP包装シートを作製した。
【0095】
[実施例13]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.1μm)とを、硫酸バリウムの濃度が10質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが540μmのPTP包装シートを作製した。
【0096】
[比較例1]
厚みが160μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にしてPTP包装シートを作製した。
【0097】
[比較例2]
第2層の厚みが117μmとなるように変更した以外は実施例7と同様にしてPTP包装シートを作製した。
【0098】
[比較例3]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:3.0μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20.45質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが180μmのPTP包装シートを作製したが、得られたシートは、表面がザラザラしており、表面のツヤがない状態であり、PTP包装シートとして使用できなかった。
【0099】
[比較例4]
ポリ塩化ビニル(TVS-118[大成化工(株)製])と、硫酸バリウム(平均粒子径:0.03μm)とを、硫酸バリウムの濃度が20.45質量%となるように混合した混合物をカレンダー成形することにより、厚みが180μmのPTP包装シートを作製した。
【0100】
<単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量>
実施例および比較例で作製したPTP包装シートの密度を測定した。
測定したPTP包装シートの密度と、硫酸バリウムを含む層(実施例7~10および比較例2の場合第2層)の厚みと、硫酸バリウムを含む層中の硫酸バリウムの濃度との積から、PTP包装シートの厚さ方向に直交する面の単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量(g/m2)を算出した。結果を表1に示す。
【0101】
<造影性>
実施例および比較例で作製したPTP包装シートを用いて、X線撮影装置((株)島津製作所製、マイクロフォーカスX線透過装置SMX-1000)を使用し、X線管電圧90kV、X線管電流110μAで撮影した写真を以下の基準に基づき目視で造影性を評価した。結果を表1に示す。また、実施例4~6、実施例10および比較例2で作製したPTP包装シートのX線造影写真を、それぞれ図1~5に示す。
【0102】
(評価基準)
◎:撮影された写真が、実施例6(単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量:76.2g/m2)で作製したPTP包装シートの写真と同等以上の濃さであり、かつ、輪郭がはっきりと写っている。
○:撮影された写真は、輪郭がはっきりと写っており、かつ、撮影された写真の濃さが、実施例5(単位面積当たりの硫酸バリウムの含有量:42.7g/m2)で作製したPTP包装シートの写真と同等以上であるが、実施例6で得られたPTP包装シートの写真より薄い。
×:撮影された写真の濃さが、実施例5で作製したPTP包装シートの写真より薄い、または、撮影された写真の輪郭がぼやけている。
【0103】
前記造影性が◎および○のPTP包装シートは、胸・腹部用X線水ファントムを用いたレントゲン撮影でも、目視により問題なくPTP包装シートの存在を確認ができたことから、本シートは、体内においても、造影することができると判断できる。
【0104】
<分散性>
実施例および比較例で作製したPTP包装シートを目視観察し、以下の評価基準に基づき硫酸バリウムの分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0105】
(評価基準)
○:凝集がなく均一に分散している。
×:凝集の発生もしくは、シート中の硫酸バリウムに偏りが見られる。
【0106】
<透明性(ヘーズ値)>
実施例および比較例で作製したPTP包装シートのヘーズ値を、JIS K 7136に基づいて測定した。結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
<PTP包装体成形性>
前記実施例1、7および9で作製したPTP包装シートのPTP包装体成形性を以下の方法で確認した。
PTP成形機(シー・ケー・ディー(株)製、FBP-M2)において、実施例1、7および9で作製したPTP包装シートを、ピンポイント加熱板を用いて120℃で加熱した後、φ11.0×H4.0用錠剤型(直径11mmφ、深さ4.0mm)およびプラグアシスト機構を用いて成形し、PTP包装シートの成形型(錠剤型)への型追従性を評価した。なお、型追従性は、目視により、ポケット天部、コーナー部および側面部の外観ムラを評価した。
さらに、得られたポケット部を有するPTP包装シートをアルミ箔でシールし、得られたPTP包装体にスリットを入れた後、幅50mm、長さ108mm、コーナーR5mmに打ち抜いた。得られたPTP包装体の、アルミ箔とPTP包装シートの接着部であるダイス目の現れ方およびアルミ箔の破れを外観評価した。
【0109】
実施例1、7および9で作製したPTP包装シートは、成形型(錠剤型)への型追従性に優れ、また、ダイス目の現れ方に問題はなく、アルミ箔の破れもなく、PTP包装体の成形性に優れていた。
【0110】
<人体に対する安全性>
硫酸バリウムの配合量の人体への影響度・安全性について、玩具の安全性に関する国際規格(ISO8124-3:2010)に基づいて評価を行った。このISO8124-3:2010は、6歳以下の幼児用玩具中のバリウム等の重金属類が、接触や誤飲により健康に影響を与えるレベルで含まれているか否かを調べる溶出試験であり、胃液に模した濃度の塩酸(誤飲したことを模擬した状態)を用いて溶出を行い、得られた溶出液についてICP質量分析法で測定をするというものであり、バリウムの場合、溶出限度値は、1,000mg/kgであるとされている。
【0111】
実施例2で作製したPTP包装シートについて、国際規格(ISO8124-3:2010)に基づき評価を行ったところ、バリウム溶出量は134mg/kgであった。この結果から、該実施例2で得られたシートのバリウム溶出量は、該国際規格に十分適合する結果となった。また、実施例4で得られたシートについても、バリウム溶出量は、国際規格に十分適合する結果となると考えられる。
従って、前記実施例で得られたシートはいずれも、国際規格に十分適合し、人体に対し安全性の高いシートであると言える。
図1
図2
図3
図4
図5