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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084470
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】回転装置及び試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198665
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 友彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 健司
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓文
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA28
2G036BB17
2G036CA12
(57)【要約】
【課題】回転させて製品の姿勢を変える回転装置において、回転可能な角度範囲を限定して回転装置のケーブル類の絡まりや捻じれを防止する。
【解決手段】回転装置10(図2)は、被試験体2が取り付けられ、裏側に回転可能な螺旋状の規制溝30が設けられた制御盤13と、規制溝30に係合する規制手段31を備える。規制手段31は、所定位置に設置され、制御盤13の半径方向に沿って開口形成された案内溝34を有する基部材32と、案内溝34内に移動可能に設けられて案内溝34から突出した上部33bが規制溝30に係合する規制部材33を有している。制御盤は規制溝が形成された角度範囲内においてのみ回転することができる(図8)。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置された製品(2)を回転させて任意の姿勢に設定する回転装置(10)であって、
製品が設置される回転可能な基台(13)と、
前記基台を回転させる駆動手段(16)と、
前記基台の回転方向に沿って前記基台に形成された周状の規制溝(30)と、
前記規制溝に係合し前記基台の回転に伴い前記規制溝に対して移動する規制手段(31)と、
を有することを特徴とする回転装置(10)。
【請求項2】
前記規制溝(30)は、
前記基台(13)の下面に螺旋状に形成されており、
前記規制手段(31)は、
前記基台の下方の所定位置に設置され、前記基台の半径方向に沿って上面に開口して形成された案内溝(34)を有する基部材(32)と、
前記基部材の前記案内溝に移動可能に設けられ、前記案内溝から突出して前記規制溝に係合する規制部材(33)と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の回転装置(10)。
【請求項3】
前記規制手段(31)の規制部材(33)は円柱形状であり、前記基台(13)の回転に伴い前記基台の半径方向に沿って移動する際に回転することを特徴とする請求項2に記載の回転装置(10)。
【請求項4】
被試験アンテナを有する被試験体(2)の送信特性又は受信特性を測定する試験装置(1)であって、
電波暗箱(3)と、
前記電波暗箱の内部に設けられ、被試験体の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ(4)と、
前記電波暗箱の内部に設けられ、設置された被試験体を回転させて任意の姿勢に設定するために有限な所定の角度について回転可能とされた回転装置(10)と、
を有することを特徴とする試験装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の性能を試験する等の目的のため、製品を設置した基台を回転させて試験に必要な任意の姿勢に設定するための回転装置と、そのような回転装置を用いて製品の試験を行う試験装置に係り、特に当該回転装置の基台が回転できる範囲を限定することにより、回転装置に付随する電源等のケーブル類が、基台の回転により捻じれ又は機構に絡まる等の不具合が生じないようにした回転装置及び試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、被試験アンテナ110を有する被試験対象(DUT)100の送信特性又は受信特性の温度依存性を測定する温度試験装置1の発明が開示されている。この温度試験装置1は、電波暗箱50と、電波暗箱50内に収容された試験用アンテナ6及び断熱筐体70と、断熱筐体70内の温度を制御する温度制御装置30と、試験用アンテナ6を使用してDUT100の送信特性又は受信特性の測定を行う測定装置2を備えている。さらに、この温度試験装置1は、断熱筐体70内に姿勢可変機構56を備えている。姿勢可変機構56は、2軸の各軸周りに回転する回転機構を備えた2軸ポジショナであって、DUT100を2軸周りの回転自由度をもって回転させることにより、DUT100を試験に必要な姿勢に設定することができる。具体的には、姿勢可変機構56は、駆動部56aと、2軸のうちの一方の軸の周りに駆動部56aによって回動するターンテーブル56bと、ターンテーブル56bに連結された支柱56cと、支柱56cに設けられてDUT100を保持し、2軸のうちの他方の軸の周りに回動するDUT載置部56dを備えている。なお、以上説明した「背景技術」及び次に説明する「発明が解決しようとする課題」の各項において、各構成部分の名称に付された数字は特許文献1において使用されている参照符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-148631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された温度試験装置1の発明によれば、DUT100の姿勢可変機構56には次のような問題があった。すなわち、姿勢可変機構56のターンテーブル56bを一の方向のみに回転させた場合、DUT100と温度試験装置1を接続している電源ケーブル、制御ケーブル等のケーブル類が捻じれてRF特性が悪化し、最悪の場合には捻じ切れてしまう可能性があるという問題である。姿勢可変機構56は、必ずしも同一の試験担当者のみが連続して使用する訳ではなく、複数の試験担当者が交代で使用することがある。その場合、前に装置を使用した試験担当者が試験中に回転させたターンテーブル56bをそのまま放置し、試験後に逆方向に回転させて初期位置に戻さないことがある。そうすると、次に装置を使用する他の試験担当者が、直前の装置の回転状況を把握しないでターンテーブル56bを必要な方向に回転させると、結果としてターンテーブル56bを一の方向のみに何回も回転させてしまうことになり、ケーブル類が捻じれ、又は捻じ切れてしまうという問題が発生する場合が考えられる。このような問題を未然に回避するため、前記特許文献1に開示されているような姿勢可変機構56のターンテーブル56bでは、同一方向に回転可能な回転数を制限する必要があったが、従来は有効な対策がとられていなかった。
【0005】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題に鑑みてなされたものであり、製品の検査等、種々の目的に応じ、製品を設置した基台を回転させて任意の姿勢に設定するための回転装置において、基台が回転できる範囲を限定することにより、回転装置に付随するケーブル類が基台の回転により捻じれ又は切断される等の不具合を未然に防止するとともに、そのような回転装置を用いた試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された回転装置10は、
設置された製品2を回転させて任意の姿勢に設定する回転装置10であって、
製品2が設置される回転可能な基台13と、
前記基台13を回転させる駆動手段16と、
前記基台13の回転方向に沿って前記基台13に形成された周状の規制溝30と、
前記規制溝30に係合し前記基台13の回転に伴い前記規制溝30に対して移動する規制手段31と、
を有することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載された回転装置10は、請求項1に記載の回転装置10において、
前記規制溝30は、
前記基台13の下面に螺旋状に形成されており、
前記規制手段31は、
前記基台13の下方の所定位置に設置され、前記基台13の半径方向に沿って上面に開口して形成された案内溝34を有する基部材32と、
前記基部材32の前記案内溝34に移動可能に設けられ、前記案内溝34から突出して前記規制溝30に係合する規制部材33と、
を有することを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載された回転装置10は、請求項2に記載の回転装置10において、
前記規制手段31の規制部材33は円柱形状であり、前記基台13の回転に伴い前記基台13の半径方向に沿って移動する際に回転することを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載された試験装置1は、
被試験アンテナを有する被試験体2の送信特性又は受信特性を測定する試験装置1であって、
電波暗箱3と、
前記電波暗箱3の内部に設けられ、被試験体2の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を被試験アンテナとの間で送信又は受信する試験用アンテナ4と、
前記電波暗箱3の内部に設けられ、設置された被試験体2を回転させて任意の姿勢に設定するために有限の回転角度について回転可能とされた回転装置10と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された回転装置によれば、基台に製品を設置し、駆動手段によって基台を必要な角度だけ回転させることにより、製品を回転させて姿勢を変化させ、又は製品の姿勢を任意に設定することができる。基台を回転させる際には、基台に形成された周状の規制溝に係合した規制手段が、基台の回転に伴って規制溝に対して移動し、周状の規制溝の端部に規制手段が到達したところで基台の回転を規制するため、基台は規制溝の長さに対応した角度だけしか回転することができず、回転装置に付随するケーブル類が基台の回転により捻じれ又は切断される等の不具合は未然に防止される。
【0011】
請求項2に記載された回転装置によれば、周状の規制溝が、周の半径を縮小又は拡大しながら連続する螺旋状のパターンで基台に形成されているため、基台が回転できる角度を、1回転を越えた任意の値に設定することができる。また、規制溝は基台の下面に形成され、これに係合する規制手段は基台の下方の所定位置に設置されて上方の規制溝に係合しているため、基台が回転できる角度を規制する機構は表に現れず、被試験体の設置や被試験体から延設されるケーブル類の引き回しに支障が生じにくい使い勝手のよい整った外観乃至外形状の装置とすることができる。さらに、規制手段は、基台の半径方向を長手方向とする案内溝を備えた基部材と、案内溝に移動可能に設けられ、案内溝から突出した部分が規制溝に係合する規制部材を備えた構造であるため、基台の回転に伴って基台の半径方向に沿って規制部材が移動し、基台を回転可能な角度の範囲内で円滑に回転させることができる。
【0012】
請求項3に記載された回転装置によれば、規制手段の規制部材は円柱形状であるため、基台の回転に伴い基台の半径方向に沿って規制部材が移動する際には、規制部材は案内溝内で回転するので、基台の回転に伴って基台の半径方向に移動する規制部材の動作が円滑となり、基台を回転可能な角度の範囲内で回転させる動作が一層円滑となる。
【0013】
請求項4に記載された試験装置によれば、電波暗箱の内部において、回転装置に設置した被試験体の被試験アンテナと、試験用アンテナとの間で無線信号を送信又は受信することにより、被試験体の送信特性又は受信特性を測定することができる。この試験の際、回転装置を回転させることにより、製品を回転させて姿勢を変化させ、又は製品の姿勢を任意に設定することができるが、回転装置は、有限な所定の角度について回転可能とされているため、回転装置に付随するケーブル類が基台の回転により捻じれ又は切断される等の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の通信端末試験装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置の斜め上方から見た斜視図と、同斜視図中のA部を拡大して示す斜視図である。
図3】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置の斜め下方から見た斜視図である。
図4】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置の駆動機構等を示す図であって、回転可能な円盤形の基台の表面に平行な切断面における断面図である。
図5】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置の基台を示す図であって、特に基台の裏面に設けられた周状の規制溝の形状を示す図である。
図6】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置において、基台に設けられた周状の規制溝に係合する規制手段の構造を示す斜視図である。
図7】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置において、基台に設けられた周状の規制溝に係合する規制手段の作用を示す斜視図である。
図8】第1実施形態の通信端末試験装置に設けられた通信端末回転装置において、回転可能な基台の回転と、回転に伴う規制手段の移動と、基台が回転できる角度の範囲(0度~960度)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る移動端末試験装置1(以下、試験装置1とも呼ぶ)について、図1図8を参照して説明する。なお、各図面上の各構成要素の寸法比は実際の寸法比と必ずしも一致していない。特に、詳細は後述するが、図1に示した試験装置1に含まれる回転装置10は、その構成要素を簡略化して示しているため、図2以降に示す回転装置10と比べた場合、構成要素の形状、寸法比は必ずしも一致していない。
【0016】
まず、図1を参照して本実施形態の試験装置1の全体構成を説明する。
図1に示す本実施形態の試験装置1は、被試験アンテナを有する被試験体2(試験対象物である製品)の送信特性又は受信特性を測定するための装置であって、例えば被試験体2のRF特性を測定することができる。実施形態における被試験体2は、例えば、5GNR規格に準拠した規定の周波数帯(ミリ波帯)の無線信号を使用するスマートフォンなどの無線端末(移動体通信端末とも呼ぶ)である。但し、これは一例であって、被試験体の用途、機能、構造等を限定するものではなく、また被試験体に対する試験の技術的な内容を限定するものでもない。
【0017】
図1に示すように、試験装置1は、電波暗箱3と、電波暗箱3の内部に設けられた試験用アンテナ4及びリフレクタ5と、リンクアンテナ6と、電波暗箱3の内部に設けられて被試験体2を回転させる回転装置10と、試験装置1の全体を統括して制御する図示しない制御装置を備えている。
【0018】
電波暗箱3は、楔形の電波吸収体7が内面の全域に貼り付けられて周囲の電波環境に影響されない内部空間を構成する箱体であって、ラック構造体8の上に設置されている。この電波暗箱3によれば、例えば5G用の無線端末の性能試験に際してのOTA試験環境を実現することができる。
【0019】
試験用アンテナ4は、電波暗箱3の内部空間に設置され、被試験体2の送信特性又は受信特性を測定するための無線信号を被試験アンテナとの間で送信又は受信することができる。試験用アンテナ4としては、例えばホーンアンテナ等の指向性を持ったミリ波用のアンテナを用いることができる。
【0020】
リフレクタ5は、曲面状に湾曲した反射面を有し、測定用の無線信号の電波を反射することができ、例えばオフセットパラボラ型の構造を有している。
【0021】
リンクアンテナ6は、電波暗箱3の内部において、被試験体2との間でリンク(呼)を確立又は維持するためのアンテナであって、回転装置10に保持される被試験体2に対して指向性を有するように設置されている。
【0022】
回転装置10は、電波暗箱3の内部空間におけるクワイエットゾーンQZ内に配置された被試験体2を回転させて、その姿勢を変化させるための装置であり、その構造と作用については後に詳細に説明する。
【0023】
制御装置は、以上の構成を統括的に制御することにより、回転装置10によって被試験体2を回転させて姿勢を変化させ、試験用アンテナ4を用いて被試験体2の送信特性又は受信特性の測定を行う。制御装置はラック構造体8のラック内に設置してもよい。
【0024】
次に、図1図8を参照して、回転装置10について説明する。
回転装置10は、2軸の各軸周りに回転する回転機構を備えた2軸ポジショナであって、試験用アンテナ4を固定した状態で、2軸周りの回転自由度をもって被試験体2を回転させるOTA試験系(Combined-axes system)として機能する。
【0025】
図1に示すように、回転装置10は、電波暗箱3の底面上に取り付けられた基板11と、基板11に設けられた第1駆動部12と、第1駆動部12によって回転する円盤形の基台である制御盤13と、制御盤13の上面に設けられた矩形状の回転テーブル14と、回転テーブル14を覆って設けられたカバー15を有しており、カバー15には楔形の電波吸収体7が設けられている。なお、図2は、電波吸収体7が設けられたカバー15を取り外して矩形状の回転テーブル14が露出した状態を示しており、図3は、矩形状の回転テーブル14にカバー15が設けられた状態を示しているが、その上にある電波吸収体7は図面上には現れていない。なお、電波暗箱3の内部空間に露出している基板11の表面には、図示しない薄型の電波吸収体が設けられている。
【0026】
図2と、そのA部の拡大図に示す回転装置10の第1駆動部12は、2軸ポジショナである回転装置10の鉛直方向に平行な第1軸による回転を掌る機構である。図3乃至図4に示すように、第1駆動部12は、駆動手段としての第1モータ16と、第1モータ16によって前記第1軸を中心として回転駆動される環状の回転部17を備えている。図4に示すように、回転部17の外周には、前述した円盤形の制御盤13が同軸に、取り付けられており、また図2に示すように、この制御盤13には、前述した矩形状の回転テーブル14が、その中央部分で取り付けられている。従って、第1モータ16を駆動すれば、回転部17及び制御盤13が回転し、回転テーブル14を水平面内で任意の方向に旋回させることができる。
【0027】
図2乃至図4に示すように、回転装置10は第2駆動部18を有している。第2駆動部18は、2軸ポジショナである回転装置10の水平方向に平行な第2軸による回転を掌る機構である。第2駆動部18は、回転テーブル14(図1及び図2に示す。図4には不図示。)の一端部の下面側に設けられた第2モータ19と、回転テーブル14の一端部の上面側に鉛直方向に沿って取り付けられた支柱部20(図2及び図3参照)と、支柱部20の上端に設けられた前記第2軸を中心とする回転機構21(図2参照)と、第2モータ19と回転機構21を連動させるプーリ及びベルト等からなる図示しない連動手段を有している。図2には示していないが、図1に模式的に示したように、回転機構21には、被試験体2を保持する保持具22が取り付けられる。従って、第2モータ19を駆動すれば、連動手段を介して回転機構21が回転し、保持手段22が保持している被試験体2を、前記第2軸を中心として任意の方向に旋回させることができる。
【0028】
図4に示すように、第1駆動部12の第1モータ16によって駆動される回転部17は、前述したように環状であり、その中央には上下に貫通した連通孔23が設けられている。さらに、図2及び図3に示す回転テーブル14に設けられた第2モータ19からは、図4に示すように3本の動力ケーブル24が導出されている。これら3本の動力ケーブル24は、図4では切断面の位置のために一部が示されていないが、回転部17の連通孔23を経て基板11の下方から回転装置10の外に導かれており、図示しない制御装置に接続されている。そして、回転装置10は、図4に示すように2個のFR2リンクアンテナ25を備えているが、これらのFR2リンクアンテナ25の一方は、図3に示すように回転テーブル14の一端部(支柱部20側)の下面側に取り付けられており、また直接には図示しないが、図3及び図4から理解されるように、他方のFR2リンクアンテナ25は、回転テーブル14の他端部の下面側に取り付けられている。そして、これら2つのFR2リンクアンテナ25からは制御ケーブル26がそれぞれ導出されている。これら2本の制御ケーブル26は、図4では切断面の位置のために一部が示されていないが、回転部17の連通孔23を経て基板11の下方から回転装置10の外に導かれており、図示しない制御装置に接続されている。
【0029】
上述したように、回転テーブル14に設けられた第2モータ19の3本の動力ケーブル24と、回転テーブル14に設けられた2個のFR2リンクアンテナ25の2本の制御ケーブル26が、何れも回転部17の連通孔23から下方に導出されているのは、次の理由による。すなわち、これらケーブル24、26を、回転中心の連通孔23を経ずに回転装置10の外に直接導出して制御装置に接続すると、回転テーブル14が一方向に無制限に回転した場合、動力ケーブル24及び制御ケーブル26は回転テーブル14とともに回転するために捻じれ、また回転テーブル14の下方にある第1駆動部12の固定部分(例えば第1モータ16を基板11上に支持している不動の台部等)に絡まり、場合によっては捻じ切れてしまう可能性があるからである。しかしながら、本実施形態では、これらケーブル24、26が回転テーブル14の回転中心を通過する構造となっているため、このような問題は発生しにくい。
【0030】
また、図1に示したように、試験を行う際には、回転装置10の回転機構21に取り付けた保持具22に被試験体2を保持させ、被試験体2に接続されたケーブルを引き回して制御装置に接続する必要がある。被試験体2のケーブルを、回転中心の連通孔23を経ずに回転装置10の外に直接導出して制御装置に接続すると、第2モータ19の動力ケーブル24等の場合と同様、被試験体2のケーブルについても、回転テーブル14の回転によって捻じれる等の問題が生じる可能性がある。また、連通孔23を通す場合と比べ長いケーブルを使用する必要があり、ケーブル長による抵抗値や高周波挿入損失のロス値増大やコスト増につながる問題もある。従って、本実施形態の試験装置1を用いて試験を行う場合、被試験体2のケーブルは、カバー15の下側に導いて、回転テーブル14の中央に設けた通孔27(図2参照)を経て、回転部17の連通孔23(図4参照)から下方に導出させ、制御装置に接続することが好ましい。
【0031】
なお、図3に示すように、第1駆動部12の第1モータ16にも動力ケーブル28が接続されているが、第1モータ16は回転して位置が変わるものではないため、第1モータ16の動力ケーブル28は、そのまま回転装置10の外に導出されて制御装置に接続されている。
【0032】
以上説明したように、この回転装置10は、装置の構成要素や被試験体2に付随する各種ケーブルが装置の回転に伴って捻じれるのを防止する構造(回転部17の連通孔23等)を有しているが、さらに回転テーブル14の回転が一方向へ無限に継続することがないように、回転テーブル14が取り付けられた制御盤13の回転を、予め定められた有限の角度に限定するための機構、構造を有している。
【0033】
図2のA部拡大図に示すように、回転テーブル14が取り付けられている制御盤13の下面には、制御盤13の回転方向に沿って、すなわち円形の制御盤13の外周縁と略平行に、円周状の規制溝30が形成されている。そして、この規制溝30には、所定の回転角度の範囲内でのみ制御盤13の回転を許容し、これを越える範囲での移転を抑止するための規制手段31が係合している。
【0034】
図5には、制御盤13と、その裏面に形成された規制溝30が図示されている。周状の規制溝30は、半径を縮小又は拡大させながら周方向に連続する螺旋状となっている。この実施形態では、規制溝30は、一方の始点S(又は終点)から他方の終点E(又は始点)に至るまで、制御盤13の回転角度で960°(2周と240°)の範囲にわたって連続している。
【0035】
図2のA部拡大図、図5及び図6には、規制手段31が図示されている。規制手段31は、略直方体状のブロックである基部材32と、基部材32に沿って移動する規制部材33を有している。基部材32は、図2のA部拡大図に示すように制御盤13の下方の所定位置に固定して設置され、図5及び図6に示すように制御盤13の半径方向に沿って上面に開口して形成された案内溝34を有している。なお、案内溝34は、図5に示すように、閉じた溝孔状でもよいし、図6に示したように両端が開放されたスリット状でもよい。図6に示すように、案内溝34は、幅が広い下方の下溝34aと、幅が狭く上方に開口した上溝34bから構成されている。図6に示すように、規制部材33は、下溝34aに係合する大径円柱形の下部33aと、上溝34bから上方に突出する小径円柱形の上部33bから構成されており、基部材32の案内溝34に対して移動可能である。
【0036】
図2のA部拡大図及び図7に示すように、規制部材33の上部33bは規制溝30に係合している。制御盤13が回転すると、規制部材33は、移動する規制溝30の内面に上部33bを押されて制御盤13の半径方向に平行な案内溝34に沿って移動していくが、その際、全体の形状が円柱形であるため、規制溝30内及び案内溝34内では移動しながら回転する。このため、規制溝30内及び案内溝34内での規制部材33の移動は周囲との引っ掛かりが少なく円滑であり、制御盤13の回転に支障が生じることはない。制御盤13が一方向の回転を続行すると、規制部材33は半径方向に沿って移動しながら、図7(a)~(c)又は同(c)~(a)に示すように螺旋状の規制溝30を一方向に移動し、制御盤13の半径方向に隣接している3本の規制溝30の外側から内側へ、又は内側から外側へと進んでいく。
【0037】
図8を参照して、回転装置10を使用する際に、回転テーブル14と一体である制御盤13が、所定の角度範囲(960°)でのみ回転する作用について説明する。
図8の各分図(1)~(6)は、規制溝30が形成された制御盤13と、規制部材33が規制溝30に係合している規制手段31を示しており、図8(1)において規制部材33が係合している規制溝30の一端部を回転角度0°の位置とし、これを仮に規制溝30の始点Sとすれば、制御盤13が時計回り方向に回転した場合、図8(6)において規制部材33が係合している規制溝30の他端部は回転角度960°の位置であり、当該位置を規制溝30の終点Eと呼ぶことができる。もちろん、制御盤13は時計回り、反時計回りの何れの方向にも回転できるため、上述し、以下においても使用する「一端部」及び「他端部」、また「始点」及び「終点」なる名称は便宜的なものにすぎない。
【0038】
図8(1)に示すように、規制部材33が規制溝30の一端部(回転角度0°の始点S)と係合している状態では、制御盤13は時計回りに回転することはできず、規制部材33が規制溝30の一端部から離れていく反時計回りにのみ回転可能であるが、その回転可能な角度も無限ではなく、同方向に連続して960°に限られる。すなわち、制御盤13は、図8(1)から反時計回りに回転すると、図8(2)に示す回転角度170°の位置、図8(3)に示す回転角度345°の位置、図8(4)に示す回転角度615°の位置、図8(5)に示す回転角度795°の位置を経て、図8(6)に示す回転角度960°の位置において規制部材33が規制溝30の他端部(回転角度960°の終点E)と係合するため、回転にロックがかかり、それ以上反時計回りには回転できなくなる。逆に、この図8(6)の位置から、制御盤13を時計回りに連続して回転させれば、960°回転したところで、規制部材33が規制溝30の一端部(回転角度0°の始点S)と係合するため、回転にロックがかかり、それ以上時計回りには回転できなくなる。
【0039】
なお、制御盤13の回転角度の制限は960°に限らず、装置の形状・構造、回転装置10や被試験体2に付属するケーブルの本数や長さ等に合わせて任意に設定することができる。例えば、回転装置10の規制溝30を、回転方向に沿って360度±20度の範囲で形成すれば、制御盤13の回転を、被試験体2の姿勢設定に最小限必要と考えられる1回転の範囲に概ね収めることができるが、装置を使用するユーザーの実際的事情等に鑑みて、例えばその2倍の回転角度である720°とすることもできる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の試験装置1に設けた回転装置10は、制御盤13に形成した螺旋状の規制溝30に、制御盤13に対して所定位置で半径方向のみに移動可能な規制部材33を係合させることにより、制御盤13の回転を有限の角度範囲内に規制した。このため、第2モータ19や被試験体2とともに回転する回転テーブル14の回転角度は、予め定めた有限な角度範囲内の値に制限されるので、第2モータ19の動力ケーブル24等のケーブル類や、被試験体2に接続されたケーブルが、回転装置10の回転によって捻じれ、又は切れるといった不具合は未然に防止される。
【0041】
なお、回転装置10において制御盤13の回転可能な角度に制限を加える他の手段としては、例えば、回転する制御盤13と、回転装置10の固定部分(例えば第1モータ16を基板11上に支持している不動の台部やフレーム等)を、装置の外側において、ある程度の長さを有するワイヤ等で結合しておくという簡便な構造も考えられる。しかしながら、装置の外側に露出して配した丈夫なワイヤで回転部分と不動部分を連結する構成では、装置の回転に伴ってワイヤ自体が装置の不動部分に絡まり、これが前述したケーブル類を損傷する危険性もあるため、課題の解決手段としては、必ずしも望ましいものとは言えない。
【0042】
これに対し、本実施形態の試験装置1に設けた回転装置10では、制御盤13の回転角度規制を、回転装置10の回転機構の内部に設けた構造により行うため、外に露出しているケーブル類を損傷する危険性がない。また、回転する制御盤13に設けた螺旋状の規制溝30の端部にストッパたる規制部材33が係止して回転を止める構造であるため、回転の制限に機構的な無理がなく、また確実に回転を停止させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…試験装置としての移動端末試験装置
2…製品としての被試験体
3…電波暗箱
4…試験用アンテナ
10…回転装置
13…基台としての制御盤
16…駆動手段としての第1モータ
30…規制溝
31…規制手段
32…基部材
33…規制部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8