(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084471
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230612BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230612BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20230612BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198666
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】早川 敬之
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB03
5H050DA03
5H050DA09
5H050DA10
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA16
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA06
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
【課題】高品質な負極活物質層を製造することを可能にする、二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法を提供する。
【解決手段】二次電池負極電極用水系スラリーを製造する本発明の方法は、
少なくとも、非導電性の負極活物質、及びカーボンナノチューブの水系分散液を含有している、第1の組成物を提供すること、
前記第1の組成物に分散処理を施すこと、
分散処理を施した前記第1の組成物、及びポリマーを含有している、第2の組成物を提供すること、並びに
前記第2の組成物を混練すること
を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、非導電性の負極活物質、及びカーボンナノチューブの水系分散液を含有している、第1の組成物を提供すること、
前記第1の組成物に分散処理を施すこと、
分散処理を施した前記第1の組成物、及びポリマーを含有している、第2の組成物を提供すること、並びに
前記第2の組成物を混練すること
を含む、
二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記第1の組成物がポリマーを含有しており、かつ前記第1の組成物に含有されていたポリマーの前記第2の組成物における含有率が、前記第2の組成物に含有されている全ポリマーの含有率の70質量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混練した前記第2の組成物を、孔径50μm以下のフィルターで濾過することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
混練した第2の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色のフィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でXYZ表色系におけるYの値を、測定したときに、前記Yの値の標準偏差が0.5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
混練した前記第2の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色のフィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値をそれぞれ求め、L*a*b*色空間における色差ΔEを、前記塗膜上の5点から算出したときに、前記ΔEの最大値が2.0以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
分散処理の前後の前記第1の組成物の色差ΔEを算出したときに、前記ΔEが0.1~20.0であり、前記色差の算出を下記の工程で行う、態様1~5のいずれか一項に記載の方法:
(a)分散処理前の前記第1の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色のフィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた前記塗膜のL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値を、それぞれ前記塗膜上の3点で測定し、そしてL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、
(b)分散処理後の前記第1の組成物について、上記(a)と同様にして、L*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、並びに
(c)前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値と、前記(a)で得た分散処理後の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値とから、前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物と前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物との色差ΔEを求めること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、電力蓄電、及び情報機器などの様々な分野において、二次電池が広く用いられている。このような二次電池の製造において、導電材、活物質等を含有している電極層形成用分散体が用いられている。
【0003】
特許文献1では、正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に位置した固体電解質層とを具備し、前記固体電解質層は、前記正極に接した複数の第1の固体電解質粒子を含む第1の部分と、前記負極に接した複数の第2の固体電解質粒子を含む第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に位置し且つ複数の第3の固体電解質粒子を含む第3の部分とを含み、前記第3の固体電解質粒子の平均粒子径は、前記第1の固体電解質粒子の平均粒子径よりも大きく、前記第2の固体電解質粒子の平均粒子径よりも大きい電極群が開示されている。特許文献1では、負極を構成する材料を水に分散させて得たスラリーを、負極集電体に塗布することにより負極活物質層を形成することが開示されている。
【0004】
特許文献2では、導電材、分散剤及び分散媒を含有し、前記導電材が、平均一次粒子径が40nm以下であり、かつ、平均分散粒子径が400nm以下であるカーボンブラックであり、前記分散剤が、非イオン性分散剤を含有することを特徴とする、導電材分散液が開示されている。
【0005】
なお、特許文献3では、所与の重合体を含む非水系蓄電素子用結着剤、及びこれを用いて形成される活物質層を有する非水系蓄電素子用電極が開示されている。特許文献3では、防腐剤としてアルコールを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-163870号公報
【特許文献2】特開2011-70908号公報
【特許文献3】国際公開第2015-16283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、高品質な負極活物質層を製造することを可能にするための、二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
《態様1》少なくとも、非導電性の負極活物質、及びカーボンナノチューブの水系分散液を含有している、第1の組成物を提供すること、
前記第1の組成物に分散処理を施すこと、
分散処理を施した前記第1の組成物、及びポリマーを含有している、第2の組成物を提供すること、並びに
前記第2の組成物を混練すること
を含む、
二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法。
《態様2》前記第1の組成物がポリマーを含有しており、かつ前記第1の組成物に含有されていたポリマーの前記第2の組成物における含有率が、前記第2の組成物に含有されている全ポリマーの含有率の70質量%以下である、態様1に記載の方法。
《態様3》
混練した前記第2の組成物を、孔径50μm以下のフィルターで濾過することを更に含む、態様1又は2に記載の方法。
《態様4》混練した第2の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でXYZ表色系におけるYの値を測定したときに、前記Yの値の標準偏差が0.5以下である、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
《態様5》混練した前記第2の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値をそれぞれ求め、L*a*b*色空間における色差ΔEを、前記塗膜上の5点から算出したときに、前記ΔEの最大値が2.0以下である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
《態様6》分散処理の前後の前記第1の組成物の色差ΔEを算出したときに、前記ΔEが0.1~20.0であり、前記色差の算出を下記の工程で行う、態様1~5のいずれか一項に記載の方法:
(a)分散処理前の前記第1の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた前記塗膜のL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値を、それぞれ前記塗膜上の3点で測定し、そしてL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、
(b)分散処理後の前記第1の組成物について、上記(a)と同様にして、L*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、並びに
(c)前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値と、前記(a)で得た分散処理後の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値とから、前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物と前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物との色差ΔEを求めること。
【発明の効果】
【0009】
二次電池負極電極用水系スラリーを製造する本発明の方法によれば、高品質な負極活物質層を製造することを可能にする二次電池負極電極用水系スラリーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《二次電池負極電極用水系スラリーの製造方法》
二次電池負極電極用水系スラリーを製造する本発明の方法は、
少なくとも、非導電性の負極活物質、及びカーボンナノチューブの水系分散液を含有している、第1の組成物を提供すること、
前記第1の組成物に分散処理を施すこと、
分散処理を施した前記第1の組成物、及びポリマーを含有している、第2の組成物を提供すること、並びに
前記第2の組成物を混練すること
を含む。
【0011】
理論に限定されるものではないが、本発明の方法によって、高品質な負極活物質層を製造することを可能にする二次電池負極電極用水系スラリーが得られるのは以下のような理由によると考えられる。すなわち、非導電性の負極活物質及びカーボンナノチューブが混在している状態で、負極活物質とカーボンナノチューブとを均一化させること、またこの状態の組成物にポリマーを混合させて混練することにより、スラリー中において負極活物質とカーボンナノチューブとが均一に存在する状態のまま安定化できるので、高品質な負極活物質層を製造することを可能にする二次電池負極電極用水系スラリーが得られると考えられる。
【0012】
本発明の二次電池負極電極用水系スラリーの、25℃、剪断速度0.2/sの条件で測定した粘度は、300Pa・s未満であることができる。この粘度は、290Pa・s以下、280Pa・s以下、270Pa・s以下、260Pa・s以下、250Pa・s以下、240Pa・s以下、230Pa・s以下、又は220Pa・s以下であることができ、また30Pa・s以上、50Pa・s以上、70Pa・s以上、100Pa・s以上、120Pa・s以上、又は150Pa・s以上であることができる。この粘度は、例えばレオメーター(MCR302、アントンパール社 コーンプレートφ50mm 2°、25℃)を用いて測定できる。
【0013】
このようにして得た二次電池負極電極用水系スラリーを、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でXYZ表色系におけるYの値を測定したときに、Yの値の標準偏差は、0.5以下であることができる。この標準偏差は、0.4以下、0.3以下、又は0.2以下であることができ、また0超であることができる。
【0014】
ここで、XYZ表色系におけるYの値は、例えば以下の条件で測定することができる。
測定装置:分光測色計(SC-T(P)、スガ試験機社)
光学条件:拡散照明8°受光 d8方式(正反射を除く)
光源:12V50Wハロゲンランプ
測色条件:D65光、2°視野
測定領域:5φ
【0015】
また、このようにして得た二次電池負極電極用水系スラリーを、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜の面内の任意の5点でL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値をそれぞれ測定し、2点間のL*a*b*色空間における色差ΔEを、前記任意の5点から組み合わせることができるすべての2点間において計算し求めたときに、その色差ΔEの最大値は、2.0以下であることができる。このΔEの最大値は、2.0以下、1.6以下、1.3以下、1.0以下、0.8以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、又は0.3以下であることができ、また0超であることができる。
【0016】
ここで、L*a*b*表色系におけるL*値、a*値及びb*値は、例えば以下の条件で測定することができる。
測定装置:分光測色計(SC-T(P)、スガ試験機社)
光学条件:拡散照明8°受光 d8方式(正反射を除く)
光源:12V50Wハロゲンランプ
測色条件:D65光、2°視野
測定領域:5φ
【0017】
2点間の色差ΔEは、上記の条件で測定したL*値、a*値及びb*値を用いて、以下の式から算出することができる。
{(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}(1/2)
この式において、ΔL*、Δa*及びΔb*はそれぞれ、2点のL*値、a*値及びb*値の差を表す。
【0018】
この場合において、任意の5点から組み合わせることができるすべての2点間において求められるΔEは10通りあり、そのうちの最大のものを、上記のΔEの最大値とすることができる。
【0019】
このように、XYZ表色系におけるYの値の標準偏差及び色差ΔEの最大値が小さいことは、各成分が均質にかつ良好に分散している負極活物質層が得られていること、すなわち高品質な負極活物質層が得られていることを意味している。
【0020】
本発明の方法は、混練した第2の組成物を、孔径50μm以下のフィルターで濾過することを更に含むことが、分散、混練時に残った粗大粒子を除去し、それによって、高品質な塗膜を得る観点から好ましい。孔径50μmとは、50μm以上の粒子を捕集効率90%以上で除去できる孔径であることを示す。
【0021】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0022】
〈第1の組成物の提供〉
第1の組成物は、少なくとも、非導電性の負極活物質、及びカーボンナノチューブの水系分散液を含有している。また、第1の組成物は、他の物質、例えば下記で言及するpH調整剤、防腐剤、及び有機溶媒等を更に含有していてもよい。
【0023】
第1の組成物は、例えば非導電性の負極活物質を、カーボンナノチューブの水系分散液に添加することにより提供してもよいが、第1の組成物を構成する物質の添加順は、特に限定されるものではない。非導電性の負極活物質は、比重が大きく沈降しやすいため、負極活物質又は水系分散液の添加は、攪拌しながら行うことが好ましい。
【0024】
撹拌の方法としては、特に限定されず、第1の組成物の提供の態様に応じて適切な方法を選択することができる。攪拌の方法は、次に分散処理をする際に詰まり又はムラが生じないようにする方法であってよく、例えばディスパー(プライミクス社 ホモディスパー)、又はプロペラミキサー(佐竹マルチミクス社 ポータブルミキサー)を使用した方法であってよい。また、攪拌の方法は、第1の組成物の分散処理又は第2の組成物の混練において言及している方法、例えばプラネタリーミキサー(プライミクス社 ハイビスミックス)などを使用した方法であってよい。
【0025】
ここで、この第1の組成物は、ポリマーを含有していないか、又は第1の組成物がポリマーを含有しており、かつ第1の組成物に含有されていたポリマーの第2の組成物における含有率が、第2の組成物に含有されている全ポリマーの含有率の70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下である。また、この割合は、10質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、又は50質量%以上であってよい。
【0026】
第1の組成物に含有されるポリマーについては、ポリマーについての下記の記載を参照することができ、特に第1の組成物に含有されるポリマーは、下記で増粘剤及び分散剤として言及されるポリマーであってよい。
【0027】
カーボンナノチューブの水系分散液は、水、カーボンナノチューブ、及び任意のポリマーを含有していてよい。これらの成分の含有量については、各成分についての下記の記載を参照することができる。
【0028】
〈第1の組成物の分散処理〉
第1の組成物の分散処理は、第1の組成物に含有されている各成分、例えば負極活物質及びカーボンナノチューブを均一に分散させる処理であってよい。第1の組成物の分散処理は、例えば超音波分散機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、高圧ホモジナイザー、ミキサー等を用いて行うことができる。
【0029】
第1の組成物は、分散させると、粒子の分散に伴って色の変化が観察される。したがって、第1の組成物の分散処理の前後の色差ΔEを、分散の指標とすることができる。
【0030】
具体的には、第1の組成物の分散処理の前後の色差ΔEが、0.1以上、0.2以上、0.3以上、又は0.4以上となるような強さで、第1の組成物の分散処理を施すことが、負極活物質を十分に分散させる観点から好ましい。また、この色差ΔEは、20.0以下、15.0以下、12.0以下、10.0以下、8.0以下、5.0以下、3.0以下、1.0以下、0.8以下、0.7以下、又は0.6以下となるような強さで、第1の組成物の分散処理を施すことができ、中でもこの色差ΔEが0.8以下、0.7以下、又は0.6以下となるような強さで、第1の組成物の分散処理を施すことが、負極活物質の過度な粉砕を抑制する観点から好ましい。
【0031】
第1の組成物の分散処理の前後の色差ΔEの測定は、下記の工程で行う:
(a)分散処理前の前記第1の組成物を、50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色のフィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた前記塗膜のL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値を、それぞれ前記塗膜上の3点で測定し、そしてL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、
(b)分散処理後の前記第1の組成物について、上記(a)と同様にして、L*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出すること、並びに
(c)前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値と、前記(a)で得た分散処理後の前記第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値とから、前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物と前記(a)で得た分散処理前の前記第1の組成物との色差ΔEを求めること。
【0032】
例えば、ビーズミルを用いて第1の組成物の分散処理を行う場合には、ビーズミルの周速、用いるメディアの径若しくは材質、又は充填率などを設定することができる。
【0033】
ビーズミルの周速については、6m/s以上、7m/s以上、又は8m/s以上であり、かつ17m/s以下、15m/s以下、又は13m/s以下に設定することが、上記の色差ΔEを得る観点から好ましい。
【0034】
メディアについては、φ1.0mm、φ0.5mm、φ0.3mm、φ0.1mm、φ0.05mm、φ0.03mm、φ0.01mmなどの大きさを選択することができ、材質もガラスやジルコニア、アルミナなどを選択することができる。
【0035】
また、ビーズミルにメディアを充填する際の充填率についても、ビーズミルの許容範囲内で任意に選択することができる。
【0036】
高圧ホモジナイザーを用いて第1の組成物の分散処理を行う場合には、処理時の圧力などを設定することができる。
【0037】
圧力については、装置の許容する上限まで、任意に設定することができ、下限についても、30MPa以上、50MPa以上、100MPa以上、150MPa以上に設定することができる。
【0038】
第1の組成物の分散処理を施す時間は、分散の強さに応じて決定することができる。例えば、ビーズミルを用いるケースでは、周速が10m/sである場合には、ビーズミル内の滞留時間(分散時間)が1分間以上、2分間以上、又は3分間以上であり、かつ20分間以下、15分間以下、13分間以下、又は11分間以下であることが、上記の色差ΔEを得る観点から好ましい。
【0039】
高圧ホモジナイザーを用いるケースでは、圧力が150MPaである場合には、装置を通す回数を1回以上、2回以上、3回以上であり、50回以下、30回以下、20回以下であることが、上記の色差ΔEを得る観点から好ましい。
【0040】
〈第2の組成物の提供〉
第2の組成物は、分散処理を施した前記第1の組成物、及びポリマーを含有している。
【0041】
第2の組成物は、分散処理を施した第1の組成物にポリマーを混合させることにより提供してもよく、又はポリマーに、分散処理を施した第1の組成物を混合させることにより提供してもよい。また、第2の組成物の提供において、他の物質、例えば下記で言及するpH調整剤、防腐剤、及び有機溶媒等を更に添加する場合には、第1の組成物、ポリマー及びこれらの他の物質の添加順は特に限定されない。
【0042】
混合の方法としては、特に限定されず、第2の組成物の提供の態様に応じて適切な方法を選択することができる。混合の方法は、例えばディスパー(プライミクス社 ホモディスパー)又はプロペラミキサー(佐竹マルチミクス社 ポータブルミキサー)を用いた方法であってよい。また、攪拌の方法は、第1の組成物の分散処理又は第2の組成物の混練において言及している方法、例えばプラネタリーミキサー(プライミクス社 ハイビスミックス)などを使用した方法であってよい。
【0043】
ここで混合させるポリマーは、第1の組成物に元々含有されているポリマーと同じポリマーであっても異なるポリマーであってもよい。ここで混合させるポリマーについては、ポリマーについての下記の記載を参照することができ、特にここで混合させるポリマーは、下記でバインダーとして用いられ得るポリマーとして言及されるポリマーであってよい。
【0044】
〈第2の組成物の混練〉
第2の組成物の混練は、単純な攪拌と異なり、概して、ブレード、ボール等の媒体を複数個有する機器を用い、これらの媒体を各々組成物のあらゆる箇所で運動させることによって、第2の組成物全体に対して確実に剪断を与える工程である。第2の組成物の混練は、例えばビーズミル、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いて行うことができる。特に、第2の組成物の混練は、複数のブレードを自転及び公転させることができるプラネタリーミキサーを用いることにより行うことが好ましい。ディスパーなどによるバッチ処理では、液体を流動させて均一化する、いわゆる単純な攪拌では、第2の組成物全体に対して確実に剪断を与えることはできない。
【0045】
例えば、プラネタリーミキサーを用いて第2の組成物の混練を行う場合には、公転回転数を1rpm以上、2rpm以上、4rpm以上、又は6rpm以上に設定することが、スラリーにおける粒子の偏在を更に抑制し、その結果、得られる塗膜の均一性、特に表面間の色差ΔEを低くする観点から好ましい。この公転回転数は、40rpm以下、30rpm以下、又は20rpm以下に設定してよい。
【0046】
〈濾過〉
濾過は、孔径50μm以下のフィルターを用いて行うことができる。この孔径は、50μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、又は25μm以下であってよく、また1μm以上、3μm以上、5μm以上、7μm以上、9μm以上、10μm以上、12μm以上、15μm以上、17μm以上、又は20μm以上であってよい。
【0047】
以下では、本発明の方法において用いる物について説明する。
【0048】
〈水〉
水は、イオン交換水、蒸留水、精製水等であることができる。
【0049】
〈負極活物質〉
負極活物質としては、導電性を有しないものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば金属酸化物系活物質粒子、シリコン系活物質粒子、特に金属酸化物系負極活物質粒子を用いることができる。なお、本発明において、「導電性を有しない」又は「非導電性」とは、その物質の体積抵抗率が、10Ω・cm以上、102Ω・cm以上、103Ω・cm以上、104Ω・cm以上、105Ω・cm以上、106Ω・cm以上、107Ω・cm以上、108Ω・cm以上、109Ω・cm以上、又は1010Ω・cm以上であることを意味するものである。この体積抵抗率は、JIS C 2139:2008に準拠して、周囲温度25℃、相対湿度40%RHの条件で測定したものである。
【0050】
金属酸化物系負極活物質粒子としては、例えば、チタン酸化物を使用できる。チタン酸化物としては、リチウムを吸蔵放出可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、スピネル型チタン酸リチウム、ラムスデライト型チタン酸リチウム、チタン含有金属複合酸化物、単斜晶系の結晶構造を有する二酸化チタン(TiO2(B))、並びにアナターゼ型二酸化チタンなどを用いることができる。
【0051】
スピネル型チタン酸リチウムとしては、Li4+xTi5O12(xは充放電反応により-1≦x≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。ラムスデライト型チタン酸リチウムとしては、Li2+yTi3O7(yは充放電反応により-1≦y≦3の範囲で変化する)などが挙げられる。TiO2(B)及びアナターゼ型二酸化チタンとしては、Li1+zTiO2(zは充放電反応により-1≦z≦0の範囲で変化する)などが挙げられる。
【0052】
チタン含有金属複合酸化物としては、TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素とを含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiとP、V、Sn、Cu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2-P2O5、TiO2-V2O5、TiO2-P2O5-SnO2、TiO2-P2O5-MeO(MeはCu、Ni及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。
【0053】
このような金属複合酸化物は、結晶性が低く、結晶相とアモルファス相とが共存しているか、又は、アモルファス相が単独で存在しているミクロ構造であることが好ましい。ミクロ構造であることにより、サイクル性能を更に向上させることができる。
【0054】
二次電池負極電極用水系スラリーにおける金属酸化物系活物質粒子の含有率は、二次電池負極電極用水系スラリー全体の質量を基準として、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、又は40質量%以上であってよく、また70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
【0055】
〈カーボンナノチューブ〉
カーボンナノチューブとしては、公知のカーボンナノチューブを用いることができる。
【0056】
カーボンナノチューブの平均粒子径は、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であることができ、また20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は7μm以下であることができる。ここで、本明細書において採用される平均粒子径は、対象となる炭素粒子の大きさによって適宜選択され、概ね1μm未満の粒子の場合は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布によるヒストグラム平均粒子径(D50)の値であり、1μm以上の粒子の場合は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値である。動的光散乱法による測定は、例えばDelsaMax CORE(ベックマン・コールター社)を用いて行うことができる。レーザー回折法による測定は、例えば粒度分布測定装置 MT3300II(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて行うことができる。
【0057】
二次電池負極電極用水系スラリーにおけるカーボンナノチューブの含有率は、二次電池負極電極用水系スラリーの全質量を基準として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は0.6質量%以上であってよく、また10.0質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.8質量%以下であってよい。
【0058】
〈他の導電材粒子〉
他の導電材粒子としては、例えばカーボンナノチューブ以外の炭素系導電材粒子、及び金属系導電材粒子を用いることができる。
【0059】
炭素系導電材粒子は、炭素繊維及び/又は炭素粒子であってよい。
【0060】
炭素繊維としては、これに限られないが、ミルドファイバー、及びチョップドファイバー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また組み合わせて使用してもよい。
【0061】
炭素繊維の平均長は、100nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、1μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることができ、また200μm以下、100μm以下、70μm以下、50μm以下、又は30μm以下であることができる。炭素繊維の平均長は電子顕微鏡により測定することができる。
【0062】
炭素粒子としては、例えばグラフェン、黒鉛、並びにアセチレンブラック及びケッチェンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、又は組み合わせて使用してもよい。
【0063】
炭素粒子の形状は、特に限定されず、例えば扁平状、アレイ状、球状等の形状であってよい。
【0064】
炭素粒子の平均粒子径は、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上であることができ、また20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は7μm以下であることができる。ここで、本明細書において採用される平均粒子径は、対象となる炭素粒子の大きさによって適宜選択され、概ね1μm未満の粒子の場合は、動的光散乱法により測定した散乱強度分布によるヒストグラム平均粒子径(D50)の値であり、1μm以上の粒子の場合は、レーザー回折法において体積基準により算出されたメジアン径(D50)の値である。動的光散乱法による測定は、例えばDelsaMax CORE(ベックマン・コールター社)を用いて行うことができる。レーザー回折法による測定は、例えば粒度分布測定装置 MT3300II(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて行うことができる。
【0065】
二次電池負極電極用水系スラリーにおける他の導電材粒子の含有率は、二次電池負極電極用水系スラリーの全質量を基準として、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は0.6質量%以上であってよく、また10.0質量%以下、8.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.8質量%以下であってよい。
【0066】
金属系導電材粒子は、金属の単体又は化合物のうち、導電性を有するものであってよい。
【0067】
〈ポリマー〉
ポリマーとしては、例えばバインダーとして用いられ得るポリマーを用いることができる。かかるポリマーとしては、例えば種々のエマルション型のポリマーを用いることができ、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系エマルション型のポリマー、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のエラストマー系エマルション型のポリマー、アクリル系エマルション型のポリマー等を用いることができる。
【0068】
かかるポリマーとしては、中でもエラストマー系エマルション型のポリマー、特にスチレン系エラストマー系エマルション型のポリマー、特にスチレン-ブタジエンゴムを用いることが、導電性の観点から好ましい。
【0069】
また、ポリマーとしては、例えば多糖類等の天然高分子、合成高分子を用いることができる。このようなポリマーは、増粘剤として用いられることがある。
【0070】
多糖類としては、例えばアラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩を用いることができる。中でも、カルボキシメチルセルロースを用いることが、分散安定性の観点から好ましい。
【0071】
合成高分子としては、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニル-ポリビニルピロリドン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体及びその塩、イソブチレン無水マレイン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を用いることができる。
【0072】
また、ポリマーとしては、例えばポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、キチン類、キトサン類、デンプン等の非イオン性分散剤を用いることができる。これらのポリマーは、分散助剤として用いられることがある。
【0073】
また、ポリマーとしては、分散剤を挙げることができる。具体的には、分散剤であるポリマーとしては、例えば非イオン性又はアニオン性の分散剤、多糖類を用いることができる。非イオン性分散剤としては、上記分散助剤又はポリビニルピロリドンを用いることができ、アニオン性分散剤としては、スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びエポキシ系樹脂等を用いることができる。
【0074】
ポリマーの合計の含有率は、二次電池負極電極用水系スラリーの全質量を基準として、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、又は2.2質量%以上であってよく、また15.0質量%以下、12.0質量%以下、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%、4.5質量%以下、4.0質量%以下、3.5質量%以下、3.0質量%以下、又は2.5質量%以下であってよい。
【0075】
〈pH調整剤〉
随意のpH調整剤としては、例えばアンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の、炭酸又はリン酸のアルカリ金属塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の少なくとも1種を用いることができる。
【0076】
〈防腐剤〉
随意の防腐剤としては、例えばフェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルフォニル)ピリジン、安息香酸、ソルビン酸又はデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩、ベンズイミダゾール系化合物、フェノキシエタノール等のアルコール類、1.3-ペンタンジオール等のグリコール類等の少なくとも1種を用いることができる。
【0077】
〈有機溶媒〉
随意の有機溶媒としては、例えばアルコール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、等の親水基含有有機溶媒を用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、又は組み合わせて用いてもよい。
【実施例0078】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0079】
《二次電池負極電極用水系スラリーの作製》
〈実施例1〉
負極活物質としての45質量部のチタン酸リチウム45質量部、40質量部のカーボンナノチューブ(CNT)水系分散液(カーボンナノチューブ含有率2質量%)、0.9質量部のカーボンブラック(CB)、ポリマーとしての0.8質量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)、並びに10.3質量部の水を混合させて、第1の組成物を作製した。
【0080】
作製した第1の組成物を50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて塗膜を得、得られた塗膜のL*a*b*色空間におけるL*値、a*値、及びb*値を、分光測色計(SC-T(P)、スガ試験機社)を用いて、それぞれこの塗膜上の3点で測定した。測定したL*値、a*値、及びb*値の平均値を算出した。
【0081】
次いで、φ1.0mmのジルコニアビーズを用いたビーズミルにより、周速を10m/sに設定し、この第1の組成物に分散処理を施した。ビーズミル内の滞留時間(分散時間)は、10分間とした。分散処理後の第1の組成物について、上記と同様にして、L*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値を算出した。
【0082】
分散処理前の第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値と、分散処理後の第1の組成物のL*値、a*値、及びb*値のそれぞれの平均値とから、分散処理前の第1の組成物と分散処理前の第1の組成物との色差ΔEを求めた。
【0083】
次いで、第1の組成物93質量部に、ポリマーとしての1.5質量部のスチレンブタジエンゴム、及び5.5質量部の水を混合させ、第2の組成物を作製した。次いで、プラネタリーミキサーを用い、公転回転数を10rpmに設定して、この第2の組成物を120分間混練した。
【0084】
脱泡させた第2の組成物を、孔径50μmのフィルターで濾過して、実施例1の二次電池負極電極用水系スラリーを作製した。
【0085】
〈実施例2~10及び比較例1~3〉
用いた材料及び製造条件を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同様にして、実施例2~10及び比較例1~3の二次電池負極電極用水系スラリーを作製した。
【0086】
《評価》
〈スラリーとしての評価〉
(粘度)
レオメーター(MCR302、アントンパール社 コーンプレートφ50mm 2°)を用いて粘度を測定し、25℃、剪断速度0.2/sの値をスラリーの粘度値とした。
【0087】
(塗工性)
50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で得られたスラリーを無色の透明フィルム基材に塗工し、その塗膜の外観を目視により観察して、スラリーの塗工性を評価した。評価基準は以下のとおりである:
A:筋もムラも無い
B:塗膜に筋又はムラがある
【0088】
〈膜としての評価〉
50μmのスリットを有するコーターを用い、塗工速度25mm/s、温度25℃の条件で得られたスラリーを無色の透明フィルム基材に塗工し、次いで80℃で5分間乾燥させて、膜を得た。得られた膜について、以下の評価を行った。
【0089】
(表面目視観察)
以下の評価基準で、膜の外観を評価した:
A:膜の表面の凹凸が視認できなかった。
B:膜の表面の凹凸が視認できた。
【0090】
(Yの値の標準偏差)
得られた塗膜の、XYZ表色系におけるYの値を、塗膜上の5点で測定し、標準偏差を算出した。
【0091】
(表面間の色差)
得られた塗膜の、色差ΔEの最大値を、塗膜上の5点でL*値、a*値、及びb*値を測定し算出することで決定した。
【0092】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1及び表2に示す。なお、表2の分散速度における「-」との記載は、分散を行わなかったことを意味している。また、表2の混練速度における「-」との記載は、プラネタリーミキサーの代わりに、ディスパー(ホモディスパー、プライミクス社)を用いて、120分間撹拌処理を行ったことを意味している。
【0093】
【0094】
【0095】
表1から、第1の組成物に分散処理を施し、かつ第2の組成物を混練して得た実施例1~10の二次電池負極電極用水系スラリーによれば、一様な外観を有する負極活物質層が得られていたこと、すなわち高品質の負極活物質層が得られていたことが理解できよう。