(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084502
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】金属化フィルムの製造方法、フィルムコンデンサの製造方法、及び金属化フィルムの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230612BHJP
H01G 13/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01G4/32 551A
H01G4/32 540
H01G13/02 K
H01G13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198713
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河内 基裕
(72)【発明者】
【氏名】森田 秀幸
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082EE07
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG06
5E082FG34
5E082HH27
(57)【要約】
【課題】直線に沿って膜厚の薄い蒸着部を有する金属化フィルムを容易に製造することができる金属化フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】金属化フィルム1の製造方法は、搬送される誘電体フィルム2と、蒸発源30との間に金属線5が誘電体フィルム2の搬送方向に平行に存在し、金属線5が誘電体フィルム2から離れた状態で、蒸発源30から金属6を蒸発させ、金属6を金属線5の両側を通過させて誘電体フィルム2に蒸着させる蒸着工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される誘電体フィルムと、蒸発源との間に金属線が前記誘電体フィルムの搬送方向に平行に存在し、前記金属線が前記誘電体フィルムから離れた状態で、前記蒸発源から金属を蒸発させ、前記金属を前記金属線の両側を通過させて前記誘電体フィルムに蒸着させる蒸着工程を含む、
金属化フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記金属線を前記誘電体フィルムの搬送方向と同じ向き又は逆向きに走行させる、
請求項1に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記金属線にオイルを塗布するオイル塗布工程を更に含む、
請求項1又は2に記載の金属化フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の金属化フィルムの製造方法を使用して製造された前記金属化フィルムを巻回又は積層して本体部を形成し、前記本体部に一対の電極を形成し、前記一対の電極にバスバーを接続してコンデンサ素子を形成する素子形成工程と、
前記コンデンサ素子を樹脂で封止する封止工程と、を含む、
フィルムコンデンサの製造方法。
【請求項5】
誘電体フィルムを繰り出す繰出部と、
前記繰出部から搬送されてきた前記誘電体フィルムに金属線を対向させながら、前記誘電体フィルムの搬送方向と同じ向き又は逆向きに前記金属線を走行させる膜厚制御部と、
蒸発源を有し、前記蒸発源から金属を蒸発させ、前記金属を前記金属線の両側を通過させて前記誘電体フィルムに蒸着させて金属化フィルムを形成する蒸着処理部と、
前記金属化フィルムを巻き取る巻取部と、を備える、
金属化フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記金属線にオイルを塗布するオイル塗布部を更に備える、
請求項5に記載の金属化フィルムの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に金属化フィルムの製造方法、フィルムコンデンサの製造方法、及び金属化フィルムの製造装置に関する。より詳細には誘電体フィルムに金属が蒸着された金属化フィルムの製造方法、金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサの製造方法、及び金属化フィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空蒸着方法が開示されている。この真空蒸着方法では、基材フィルムの所定部をマスキングテープにより遮蔽しつつ真空蒸着を行うようにしている。具体的には、マスキングテープが、冷却キャンの下で基材フィルムに接触するように配設され、且つ基材フィルムとほぼ同速度で回送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、マスキングテープで遮蔽されていない部分が蒸着部となり、マスキングテープで遮蔽されている部分が非蒸着部(マージン部)となる。特許文献1では、蒸着部の膜厚の制御については、特に検討がなされていないと考えられる。
【0005】
本開示の目的は、直線に沿って膜厚の薄い蒸着部を有する金属化フィルムを容易に製造することができる金属化フィルムの製造方法、フィルムコンデンサの製造方法、及び金属化フィルムの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る金属化フィルムの製造方法は、搬送される誘電体フィルムと、蒸発源との間に金属線が前記誘電体フィルムの搬送方向に平行に存在し、前記金属線が前記誘電体フィルムから離れた状態で、前記蒸発源から金属を蒸発させ、前記金属を前記金属線の両側を通過させて前記誘電体フィルムに蒸着させる蒸着工程を含む。
【0007】
本開示の一態様に係るフィルムコンデンサの製造方法は、前記金属化フィルムの製造方法を使用して製造された前記金属化フィルムを巻回又は積層して本体部を形成し、前記本体部に一対の電極を形成し、前記一対の電極にバスバーを接続してコンデンサ素子を形成する素子形成工程と、前記コンデンサ素子を樹脂で封止する封止工程と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る金属化フィルムの製造装置は、誘電体フィルムを繰り出す繰出部と、前記繰出部から搬送されてきた前記誘電体フィルムに金属線を対向させながら、前記誘電体フィルムの搬送方向と同じ向き又は逆向きに前記金属線を走行させる膜厚制御部と、蒸発源を有し、前記蒸発源から金属を蒸発させ、前記金属を前記金属線の両側を通過させて前記誘電体フィルムに蒸着させて金属化フィルムを形成する蒸着処理部と、前記金属化フィルムを巻き取る巻取部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、直線に沿って膜厚の薄い蒸着部を有する金属化フィルムを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る金属化フィルムの製造装置を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る金属化フィルムを示す概略平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る金属化フィルム及び金属線を示す概略平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る金属化フィルムの製造方法における蒸着工程を説明する図である。
【
図5】
図5A~
図5Cは、本実施形態に係るフィルムコンデンサの製造方法の各工程を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.概要
本実施形態に係る金属化フィルム1の製造方法は、蒸着工程を含む。
図4に示すように、蒸着工程では、搬送される誘電体フィルム2と、蒸発源30との間に金属線5が誘電体フィルム2の搬送方向(
図4では紙面に垂直な方向)に平行に存在し、金属線5が誘電体フィルム2から離れた状態で、蒸発源30から金属6を蒸発させ、金属6を金属線5の両側を通過させて誘電体フィルム2に蒸着させる。
【0012】
図4に示すように、蒸発源30から蒸発して、金属線5の両側を通過した金属6は、誘電体フィルム2の第3非投影部Q3(後述)及び第1非投影部Q1(後述)に堆積して蒸着部60を形成する。さらに金属線5は、誘電体フィルム2から離れているので、金属線5の両側を通過した金属6は、誘電体フィルム2の第1投影部P1(後述)にも回り込んで蒸着部60を形成する。
【0013】
ここで、蒸発源30と第1投影部P1との間に金属線5が存在するので、第1投影部P1に形成される蒸着部60の膜厚は、第3非投影部Q3及び第1非投影部Q1に形成される蒸着部60の膜厚よりも薄くなる。
【0014】
したがって、本実施形態によれば、直線に沿って膜厚の薄い蒸着部60を有する金属化フィルム1を容易に製造することができる。
【0015】
2.詳細
以下、本実施形態に係る金属化フィルム1、金属化フィルム1の製造装置100、金属化フィルム1の製造方法、及びフィルムコンデンサ10の製造方法について、図面を参照して説明する。各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。
【0016】
(1)金属化フィルム
図2に本実施形態に係る金属化フィルム1を示す。金属化フィルム1は、長手方向Lに沿って延びる長尺状をなしている。金属化フィルム1は、誘電体フィルム2と、蒸着部60と、を備える。
【0017】
誘電体フィルム2は、電気絶縁性を有するフィルムである。誘電体フィルム2は、長手方向Lに沿って延びる長尺状をなしている。誘電体フィルム2の材質としては、特に限定されないが、例えば、結晶性プラスチック等が挙げられる。結晶性プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、及びポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。
【0018】
誘電体フィルム2の厚さは、フィルムコンデンサ10の静電容量と絶縁破壊抑制との兼合い等を考慮して定まるものであり、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上10.0μm以下である。
【0019】
蒸着部60は、金属6が蒸着された部分であり、誘電体フィルム2の一方の面(以下「蒸着面」ともいう)に形成されている。誘電体フィルム2の蒸着面において、蒸着部60を除く部分(
図2の白抜き部分)は非蒸着部20である。非蒸着部20は、金属6が蒸着されていない部分である。
【0020】
本実施形態では、蒸着部60は、非分割電極61と、分割電極62と、を含む。非分割電極61と分割電極62とは、金属化フィルム1の短手方向S(幅方向S)に沿って並んでいる。なお、短手方向Sは、長手方向Lに直交する方向である。
【0021】
非分割電極61は、ベタ状をなす電極である。非分割電極61は、長手方向Lに沿って延びる長尺状をなしている。非分割電極61の短手方向Sの一方側端部(左側端部)は、誘電体フィルム2の短手方向Sの一方側端部(左側端部)と一致している。
【0022】
分割電極62は、複数の小電極群620を有する。複数の小電極群620は、長手方向Lに沿って並んでいる。複数の小電極群620の各々は、第1ヒューズ601によって、非分割電極61とつながっている。第1ヒューズ601は、過大な電流が流れると溶けて、小電極群620と非分割電極61とを遮断する部分である。複数の第1ヒューズ601は、長手方向Lに沿って並んでいる。
【0023】
複数の小電極群620の各々は、複数(本実施形態では2つ)の小電極630を含む。複数の小電極630の各々は、正方形状をなしているが、この形状に限定されない。複数の小電極630(本実施形態では第1小電極631及び第2小電極632)は、短手方向Sに沿って並んでいる。複数の第1小電極631は、長手方向Lに沿って並んでいる。複数の第2小電極632も、長手方向Lに沿って並んでいる。
【0024】
上述の第1ヒューズ601は、小電極群620に含まれる第1小電極631を非分割電極61につなげている。
【0025】
第1小電極631と第2小電極632とは、第2ヒューズ602によってつながっている。第2ヒューズ602は、過大な電流が流れると溶けて、第1小電極631と第2小電極632とを遮断する部分である。複数の第2ヒューズ602は、長手方向Lに沿って並んでいる。なお、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の幅(長手方向Lに沿った幅)は、小電極630の長手方向Lに沿った長さよりも細い。第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の長さ(短手方向Sに沿った長さ)は、フィルムコンデンサ10の静電容量の観点では短いほど好ましいが、特に限定されない。
【0026】
非蒸着部20は、金属6が蒸着されておらず、誘電体フィルム2が露出している部分である。本実施形態では、非蒸着部20は、非蒸着端部201と、複数の非蒸着境界部202と、を含む。
【0027】
非蒸着端部201は、金属化フィルム1の短手方向Sの他方側端部(右側端部)において、長手方向Lに沿って延びる部分である。非蒸着端部201の幅(短手方向Sに沿った幅)は、フィルムコンデンサ10の静電容量と短絡抑制との兼合い等を考慮して定まるものであり、特に限定されない。
【0028】
非蒸着境界部202は、長手方向Lに沿って隣り合う2つの小電極群620の境界をなす部分である。非蒸着境界部202は、非蒸着端部201とつながっている。非蒸着境界部202の幅(長手方向Lに沿った幅)は、フィルムコンデンサ10の静電容量の観点では細いほど好ましいが、特に限定されない。なお、「非蒸着境界部202の幅」とは、長手方向Lに沿って隣り合う小電極630間の間隔を意味する。
【0029】
図2では、非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632を低密度のドットパターンで図示し、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602を高密度のドットパターンで図示している。高密度のドットパターンで図示された部分の膜厚は、低密度のドットパターンで図示された部分の膜厚よりも薄い。すなわち、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の膜厚は、非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632の膜厚よりも薄い。なお、低密度のドットパターンと高密度のドットパターンとの境界は、必ずしも、非分割電極61と第1ヒューズ601との境界、第1ヒューズ601と第1小電極631との境界、第1小電極631と第2ヒューズ602との境界、第2ヒューズ602と第2小電極632との境界に一致するとは限らない。
【0030】
(2)金属化フィルムの製造装置
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態に係る金属化フィルム1の製造装置100は、繰出部71と、マスキング処理部9と、蒸着処理部3と、膜厚制御部4と、オイル塗布部8と、巻取部72と、を備える。
【0031】
金属化フィルム1の材料である誘電体フィルム2は、長手方向Lに搬送される。具体的には、誘電体フィルム2は、繰出部71から搬送され、マスキング処理部9を経て、蒸着処理部3で金属化フィルム1に加工され、金属化フィルム1が巻取部72で巻き取られる。このように、誘電体フィルム2の搬送方向の最も上流側に繰出部71が配置され、最も下流側に巻取部72が配置されている。なお、誘電体フィルム2及び金属化フィルム1の搬送速度は、特に限定されないが、例えば、100m/分以上1000m/分以下である。
【0032】
金属化フィルム1の製造装置100は、第1収容室101と、第2収容室102と、真空ポンプ105と、を更に備える。第1収容室101と第2収容室102とは、仕切板103で仕切られている。仕切板103は開口部104を有する。開口部104により第1収容室101と第2収容室102とは連通している。
【0033】
第1収容室101は、繰出部71と、マスキング処理部9と、巻取部72と、を収容する。なお、第1収容室101は、蒸着処理部3の一部(キャンロール32の一部)も収容する。
【0034】
第2収容室102は、蒸着処理部3と、膜厚制御部4と、オイル塗布部8と、を収容する。
【0035】
真空ポンプ105は、第2収容室102に接続されている。真空ポンプ105を作動させることにより、第2収容室102内を真空にすることができる。第1収容室101は、開口部104により第2収容室102と連通しているので、第1収容室101内も真空にすることができる。真空ポンプ105は、第2収容室102に直接接続されているので、第2収容室102を第1収容室101に比べてより高真空にしやすい。なお、「真空」とは、通常の大気圧(20℃で101.3kPa)より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。
【0036】
このように、繰出部71、マスキング処理部9、蒸着処理部3、膜厚制御部4、オイル塗布部8、及び巻取部72は真空下に配置されている。以下、繰出部71、マスキング処理部9、蒸着処理部3、膜厚制御部4、オイル塗布部8、及び巻取部72について順に説明する。
【0037】
<繰出部>
繰出部71は、誘電体フィルム2を繰り出す部分である。具体的には、繰出部71は、繰出ロール710を有する。繰出ロール710は、長尺状をなす誘電体フィルム2を円筒状に巻いたロールである。繰出ロール710は、回転可能に配置されている。
【0038】
<マスキング処理部>
マスキング処理部9は、誘電体フィルム2の一方の面(蒸着面)において金属6を蒸着させない部分(非蒸着部分)をマスキングする処理を行う部分である。マスキングされた部分は、金属6が蒸着しないので、金属化フィルム1において非蒸着部20となる(
図2参照)。
【0039】
マスキングは、オイルの塗布により行うことができる。ここで、オイルとしては、特に限定されないが、例えば、シリコンオイル、フッ素オイル、パラフィン油、エステル油、及び植物油等が挙げられる。
【0040】
マスキング処理部9は、繰出部71よりも搬送方向の下流側に配置されている。マスキング処理部9では、フレキソ印刷により誘電体フィルム2にオイルを塗布することができる。すなわち、マスキング処理部9は、印刷ロール91と、バックアップロール92と、を有する。印刷ロール91及びバックアップロール92は、繰出ロール710と平行かつ回転可能に配置されている。
【0041】
印刷ロール91は、誘電体フィルム2の一方の面(蒸着面)の非蒸着部分にオイルを塗布するロールである。
【0042】
バックアップロール92は、誘電体フィルム2の他方の面(蒸着面と反対の面)側に配置されている。バックアップロール92は、誘電体フィルム2を印刷ロール91に押し付けるロールである。なお、以下において、特に断らない限り、「他方の面」とは、一方の面の反対側の面を意味する。
【0043】
<蒸着処理部>
蒸着処理部3は、誘電体フィルム2に金属6を蒸着する処理を行う部分である。これにより、金属化フィルム1が形成される。
【0044】
蒸着処理部3は、マスキング処理部9よりも搬送方向の下流側に配置されている。蒸着処理部3は、蒸発源30と、るつぼ31と、キャンロール32と、を有する。
【0045】
蒸発源30は、誘電体フィルム2に蒸着される金属6を含む。金属6としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム及び亜鉛等が挙げられる。
【0046】
るつぼ31は、蒸発源30を収容し、蒸発源30を加熱して蒸発源30から金属6を蒸発させるための耐熱容器である。蒸発源30の加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、抵抗加熱、電子ビーム加熱、アーク放電加熱、高周波誘導加熱、及びレーザ加熱等が挙げられる。
【0047】
キャンロール32は、金属6が蒸着される誘電体フィルム2を搬送しながら冷却するためのロールである。キャンロール32によって、蒸着に伴う誘電体フィルム2への熱負荷を低減し、誘電体フィルム2にシワ及び破れが発生することを抑制することができる。なお、キャンロール32の温度は、特に限定されないが、例えば-20℃以上0℃以下である。
【0048】
キャンロール32は、仕切板103の開口部104において、繰出ロール710と平行かつ回転可能に配置されている。キャンロール32の回転軸は、仕切板103と平行である。キャンロール32の一部は、第1収容室101に配置され、キャンロール32の残部は、第2収容室102に配置されている。
【0049】
キャンロール32は、るつぼ31に収容された蒸発源30と対向している。キャンロール32と蒸発源30との間に飛散空間33が存在する。飛散空間33は、蒸発源30から蒸発した金属6がキャンロール32に向かって飛散する空間である。
【0050】
誘電体フィルム2は、キャンロール32の外周面に密着しながら搬送される。誘電体フィルム2の一方の面(キャンロール32の外周面に接触していない面)に金属6が蒸着される。ただし、オイルによりマスキングされた部分には金属6は蒸着されない。一方、誘電体フィルム2の他方の面(キャンロール32の外周面に密着している面)には金属6は蒸着されない。
【0051】
<膜厚制御部>
膜厚制御部4は、誘電体フィルム2への金属6の蒸着量を調整することによって、誘電体フィルム2の蒸着面に形成される蒸着部60の膜厚を制御し得る部分である。特に直線(本実施形態では長手方向L)に沿って膜厚の薄い蒸着部60を形成することができる(
図4参照)。
【0052】
図1に示すように、膜厚制御部4は、少なくとも1本以上(本実施形態では2本)の金属線5と、第1ロール421と、第2ロール422と、を有する。
【0053】
金属線5は、飛散空間33に存在する。具体的には、金属線5は、キャンロール32に密着した誘電体フィルム2と、るつぼ31に収容された蒸発源30との間に存在する。金属線5は、誘電体フィルム2から離れて存在しており、誘電体フィルム2と接触していない。
【0054】
図3に示すように、金属線5は、長手方向Lに沿って延びている。本実施形態では、金属線5の太さは、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の長さ(短手方向Sに沿った長さ)と同じ、又は第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の長さよりも太い。具体的には、金属線5の太さは、好ましくは0.05mm以上5.0mm以下、より好ましくは0.1mm以上2.0mm以下である。
【0055】
金属線5の材質としては、特に限定されないが、例えば、鉄、ステンレス、銅、亜鉛、モリブデン、タンタル、タングステン、白金、及びニッケル等が挙げられる。
【0056】
上述のように、本実施形態では、膜厚制御部4は、2本の金属線5を有する。2本の金属線5は、第1金属線51及び第2金属線52である。第1金属線51と第2金属線52とは、短手方向Sに沿って並んでいる。
【0057】
図2に示すように、誘電体フィルム2の蒸着面は、投影部Pと、非投影部Qと、を含む。
【0058】
投影部Pは、蒸発源30から金属線5を見た場合に、金属線5が誘電体フィルム2の蒸着面に投影される部分である。具体的には、投影部Pは、第1投影部P1と、第2投影部P2と、を含む。
【0059】
第1投影部P1は、蒸発源30から第1金属線51を見た場合に、第1金属線51が誘電体フィルム2の蒸着面に投影される長尺状をなす部分である。第1投影部P1は、複数の第1ヒューズ601を形成する箇所を含む。
【0060】
第2投影部P2は、蒸発源30から第2金属線52を見た場合に、第2金属線52が誘電体フィルム2の蒸着面に投影される長尺状をなす部分である。第2投影部P2は、複数の第2ヒューズ602を形成する箇所を含む。
【0061】
一方、非投影部Qは、金属線5が投影されない部分である。具体的には、非投影部Qは、第1非投影部Q1と、第2非投影部Q2と、第3非投影部Q3と、を含む。
【0062】
第1非投影部Q1は、第1金属線51も第2金属線52も投影されない部分である。具体的には、第1非投影部Q1は、第1投影部P1と第2投影部P2との間に存在する長尺状をなす部分である。第1非投影部Q1は、複数の第1小電極631を形成する箇所を含む。
【0063】
第2非投影部Q2は、第1金属線51も第2金属線52も投影されない部分である。具体的には、第2非投影部Q2は、第2投影部P2の右側に存在する長尺状をなす部分である。第2非投影部Q2は、複数の第2小電極632を形成する箇所を含む。
【0064】
第3非投影部Q3は、第1金属線51も第2金属線52も投影されない部分である。具体的には、第3非投影部Q3は、第1投影部P1の左側に存在する長尺状をなす部分である。第3非投影部Q3は、非分割電極61を形成する箇所を含む。
【0065】
上述のように、膜厚制御部4は、直線(本実施形態では長手方向L)に沿って膜厚の薄い蒸着部60を形成することができる。すなわち、膜厚制御部4は、非投影部Qに形成される蒸着部60の膜厚よりも、投影部Pに形成される蒸着部60の膜厚を薄くすることができる。より詳細には、膜厚制御部4は、非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632の膜厚よりも、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の膜厚を薄くすることができる。
【0066】
図1に示すように、金属線5は、第1ロール421及び第2ロール422に掛け渡されている。金属線5の長手方向Lの一方側は、第1ロール421に巻き付けられている。金属線5の長手方向Lの他方側は、第2ロール422に巻き付けられている。
【0067】
第1ロール421は、キャンロール32と平行かつ回転可能に配置されている。第1ロール421は、必要に応じて、正転(
図1の矢印の向きに回転)させたり、逆転(
図1の矢印の向きと逆向きに回転)させたりすることができるように構成されている。
【0068】
第2ロール422は、飛散空間33を介して、第1ロール421と対向している。第2ロール422は、第1ロール421と平行かつ回転可能に配置されている。第2ロール422は、第1ロール421と同じ向きに回転させることができるように構成されている。
【0069】
膜厚制御部4は、第1ロール421及び第2ロール422を同じ向きに回転させることにより、飛散空間33内において金属線5を長手方向Lに走行させることができる。金属線5の走行速度は、特に限定されないが、例えば、誘電体フィルム2の搬送速度よりも遅い。
【0070】
第1ロール421及び第2ロール422を正転させることにより、誘電体フィルム2に対向させながら、誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向きに、金属線5を走行させることができる。一方、第1ロール421及び第2ロール422を逆転させることにより、誘電体フィルム2に対向させながら、誘電体フィルム2の搬送方向と逆向きに、金属線5を走行させることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、誘電体フィルム2は、キャンロール32の外周面に密着しながら搬送されるので、誘電体フィルム2の搬送方向は、直線的ではなく、湾曲(
図1では下に凸に湾曲)している。このような場合において、「誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向き」とは、飛散空間33に面する誘電体フィルム2の速度を、金属線5に平行な成分と、金属線5に垂直な成分とに分けたときに、上記の平行な成分の向きが、金属線5が走行する向き(
図1では左向き)と同じであることを意味する。一方、「誘電体フィルム2の搬送方向と逆向き」とは、上記の平行な成分の向きが、金属線5が走行する向きと逆向きであることを意味する。
【0072】
<オイル塗布部>
オイル塗布部8は、金属線5にオイルを塗布する部分である。オイルとしては、特に限定されないが、既述のマスキング処理部9で使用されるオイルと同様のオイルが挙げられる。
【0073】
金属線5へのオイルの塗布は、金属線5が飛散空間33に進入する前に行うことが好ましい。これにより、蒸発した金属6が金属線5に付着しにくくなる。
【0074】
本実施形態では、オイル塗布部8は、第1ロール421と飛散空間33との間に配置されている。オイル塗布部8では、フレキソ印刷により金属線5にオイルを塗布することができる。すなわち、オイル塗布部8は、塗布ロール81と、バックアップロール82と、を有する。塗布ロール81及びバックアップロール82は、第1ロール421と平行かつ回転可能に配置されている。
【0075】
塗布ロール81は、金属線5にオイルを塗布するロールである。
【0076】
バックアップロール82は、金属線5を介して、塗布ロール81に対向して配置されている。バックアップロール82は、金属線5を塗布ロール81に押し付けるロールである。
【0077】
<巻取部>
巻取部72は、金属化フィルム1を巻き取る部分である。巻取部72は、蒸着処理部3よりも搬送方向の下流側に配置されている。具体的には、巻取部72は、巻取ロール720を有する。巻取ロール720は、繰出ロール710と平行かつ回転可能に配置されている。
【0078】
<その他>
金属化フィルム1の製造装置100は、少なくとも1つ以上(本実施形態では6つ)のガイドロール70(70a~70f)を更に備えてもよい。ガイドロール70は、誘電体フィルム2又は金属化フィルム1の搬送方向を変えるためのロールである。ガイドロール70は、他のロール(繰出ロール710等)と平行かつ回転可能に配置されている。ガイドロール70が配置される場所は、特に限定されない。
【0079】
(3)金属化フィルムの製造方法
次に本実施形態に係る金属化フィルム1の製造方法について説明する。金属化フィルム1の製造方法は、上述の金属化フィルム1の製造装置100を使用して実施することができる。
【0080】
本実施形態に係る金属化フィルム1の製造方法は、マスキング工程と、オイル塗布工程と、蒸着工程と、巻取工程と、を含む。これらの工程は、真空下で進行させる。これにより、誘電体フィルム2に揮発成分が含まれている場合には、揮発成分を蒸発させて除去しやすくなる。揮発成分としては、例えば、水分及び添加剤等が挙げられる。これらの揮発成分は、誘電体フィルム2への金属6の蒸着を阻害し得る成分である。また蒸着工程を真空下で進行させることで、金属6が誘電体フィルム2に達する前に、第2収容室102内の気体分子に金属6が衝突することを抑制することができる。さらに蒸発源30の蒸発温度を下げて蒸着を容易にすることができる。
【0081】
<マスキング工程>
マスキング工程では、マスキング処理部9によって、繰出部71から搬送されてきた誘電体フィルム2の一方の面において、金属6を蒸着させない部分(非蒸着部分)をマスキングする。本実施形態では、
図2に示す金属化フィルム1の非蒸着部20とすべき部分にオイルを塗布するようにしている。
【0082】
<オイル塗布工程>
オイル塗布工程では、オイル塗布部8によって、金属線5にオイルを塗布する。本実施形態では、膜厚制御部4によって、金属線5を誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向きに走行させながら、金属線5が飛散空間33に進入する前に、オイル塗布部8によって金属線5にオイルを塗布している。
【0083】
なお、図示省略しているが、オイル塗布部8は、第2ロール422と飛散空間33との間に配置されていてもよい。この場合には、膜厚制御部4によって、金属線5を誘電体フィルム2の搬送方向と逆向きに走行させながら、金属線5が飛散空間33に進入する前に、オイル塗布部8によって金属線5にオイルを塗布することができる。
【0084】
<蒸着工程>
蒸着工程では、蒸着処理部3によって、マスキング処理部9から搬送されてきた誘電体フィルム2の蒸着面に金属6を蒸着させる。具体的には、
図4に示すように、長手方向Lに搬送される誘電体フィルム2と、蒸発源30との間に金属線5が誘電体フィルム2の搬送方向に平行に存在し、金属線5が誘電体フィルム2から離れた状態で蒸着処理を行う。この状態で、蒸発源30から金属6を蒸発させ、金属6を金属線5の両側(短手方向Sの左側及び右側)を通過させて誘電体フィルム2に蒸着させる。これにより、金属化フィルム1が形成される。なお、
図4では、説明の都合上、第2金属線52、第2ヒューズ602及び第2小電極632を図示省略している。
【0085】
第1金属線51の左側を通過した金属6は、誘電体フィルム2の蒸着面において、蒸着部60のうち非分割電極61を形成する。一方、第1金属線51の右側を通過した金属6は、誘電体フィルム2の蒸着面において、第1小電極631を形成する。
【0086】
ここで、第1金属線51は、上述のように誘電体フィルム2から離れた状態にある。そのため、第1金属線51の左側を通過した金属6は、第3非投影部Q3に堆積するだけでなく、第1投影部P1にも回り込んで堆積する。同様に、第1金属線51の右側を通過した金属6も、第1非投影部Q1に堆積するだけでなく、第1投影部P1にも回り込んで堆積する。これにより、第1投影部P1に第1ヒューズ601が形成される。
【0087】
第1金属線51が誘電体フィルム2に接触していると、金属6の第1投影部P1への回り込みが阻害されるので、第1ヒューズ601は形成されにくくなる。第1金属線51と誘電体フィルム2とが非接触状態を維持しつつ、第1金属線51が誘電体フィルム2に接近するほど、非分割電極61の膜厚T61よりも、第1ヒューズ601の膜厚T601を薄くすることができる(
図4参照)。なお、第2金属線52についても、第1金属線51と同様である。
【0088】
また本実施形態では、金属線5を誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向きに走行させている。なお、金属線5を誘電体フィルム2の搬送方向と逆向きに走行させてもよい。また金属線5は、走行させておくのが好ましいが、断続的に走行と停止とを繰り返したり、停止させ続けたりしてもよい。
【0089】
<巻取工程>
巻取工程では、巻取部72によって、金属化フィルム1を巻き取る。金属化フィルム1の一方の面は、蒸着部60及び非蒸着部20を有する(
図2参照)。蒸着部60の膜厚は、特に限定されないが、例えば、5nm以上100nm以下である。本実施形態では、蒸着部60の膜厚が場所によって異なっている。すなわち、
図4に示すように、非分割電極61の膜厚T61よりも、第1ヒューズ601の膜厚T601の方が薄くなっている。
図4では図示省略しているが、第2ヒューズ602の膜厚は、第1ヒューズ601の膜厚T601と同じである。また第1小電極631及び第2小電極632の膜厚は、非分割電極61の膜厚T61と同じである。一方、金属化フィルム1の他方の面は、キャンロール32の外周面に密着しているので、金属6は蒸着されておらず、誘電体フィルム2が露出している。
【0090】
<作用効果>
本実施形態によれば、直線に沿って膜厚の薄い蒸着部60を有する金属化フィルム1を容易に製造することができる。
【0091】
ここで、上記の「直線」とは、投影部Pを意味する(
図2参照)。本実施形態では、投影部Pは、第1投影部P1と、第2投影部P2と、を含む。
【0092】
第1投影部P1は、複数の第1ヒューズ601を形成する箇所を含む。複数の第1ヒューズ601の膜厚は、非投影部Qに形成される蒸着部60(非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632)の膜厚よりも薄い。
【0093】
第2投影部P2は、複数の第2ヒューズ602を形成する箇所を含む。複数の第2ヒューズ602の膜厚も、非投影部Qに形成される蒸着部60(非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632)の膜厚よりも薄い。
【0094】
また金属線5と誘電体フィルム2とが非接触状態であることを前提として、金属線5と誘電体フィルム2との距離を短くするほど、第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602の膜厚を、非分割電極61、第1小電極631及び第2小電極632の膜厚よりも、薄くすることができる(
図4参照)。このように、金属線5と誘電体フィルム2との距離を調整することによって、投影部Pに形成される蒸着部60(本実施形態では第1ヒューズ601及び第2ヒューズ602)の膜厚を制御することができる。
【0095】
したがって、本実施形態によれば、直線に沿って膜厚の薄い蒸着部60を有する金属化フィルム1を容易に製造することができる。
【0096】
また本実施形態では、金属線5を走行させるようにしているので、蒸発した金属6が金属線5に堆積しにくくなる。これにより、金属線5が太ることを抑制することができる。その結果、蒸着部60の膜厚のばらつきを低減することができる。
【0097】
さらに本実施形態では、金属線5にオイルを塗布するようにしているので、蒸発した金属6が金属線5に付着しにくくなる。これにより、金属線5が太ることを更に抑制することができる。その結果、蒸着部60の膜厚のばらつきを更に低減することができる。
【0098】
なお、特許文献1には、マスキングテープとして、両面フッ素樹脂コーティングされたポリイミドフィルムが開示されているが、同じ太さ(幅)で比較した場合、金属線5の方がマスキングテープよりも高強度であることは明らかである。さらに金属線5は、マスキングテープに比べて、破断、折れ、及びねじれ等が生じにくく、取り扱い性にも優れている。
【0099】
(4)フィルムコンデンサの製造方法
次に本実施形態に係るフィルムコンデンサ10の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、図中に相互に直交するX軸、Y軸及びZ軸を図示しているが、これらの軸は、説明の都合上図示しているだけであり、フィルムコンデンサ10の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。また以下において、「側面視」とは、Y軸方向に沿って視ることを意味する。
【0100】
本実施形態に係るフィルムコンデンサ10の製造方法は、素子形成工程と、封止工程と、を含む。以下、素子形成工程及び封止工程について順に説明する。
【0101】
<素子形成工程>
素子形成工程では、コンデンサ素子16を形成する(
図5B参照)。コンデンサ素子16は、巻回型又は積層型である。本実施形態では、巻回型のコンデンサ素子16を形成している。以下、巻回型のコンデンサ素子16を形成する場合について説明する。
【0102】
まず
図5Aに示すように、上述の金属化フィルム1の製造方法を使用して製造された金属化フィルム1を巻回して本体部13を形成する。具体的には、2枚の金属化フィルム1(第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12)を用意し、これらの金属化フィルム1の蒸着面を同じ向きにして重ねる。なお、第1金属化フィルム11と第2金属化フィルム12とは、非分割電極61及び分割電極62の位置が左右逆である以外は、同じである。
【0103】
そして、第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12を重ねた状態で2枚の金属化フィルム1を長手方向Lに巻回すると、円柱状をなす巻回体13aが得られる(
図5A参照)。さらに巻回体13aをZ軸方向に加圧することにより、扁平巻回体13bが得られる(
図5B参照)。扁平巻回体13bは、側面視角丸長方形をなし、Y軸方向に延びる立体形状をなす。本実施形態では、扁平巻回体13bを本体部13として使用している。
【0104】
次に本体部13に一対の電極14を形成する。具体的には、Y軸方向における本体部13の両端に電極14を形成する。一方の電極14は、第1金属化フィルム11の左側において蒸着部60とつながる。他方の電極14は、第2金属化フィルム12の右側において蒸着部60とつながる。電極14は、金属溶射法により形成することができる。
【0105】
次に一対の電極14にバスバー15を接続してコンデンサ素子16を形成する。バスバー15は、Z軸方向に延びる導電性部材である。一対のバスバー15は、Y軸方向に並んで、Z軸方向に平行に配置されている。バスバー15の材質としては、特に限定されないが、例えば、銅等が挙げられる。
【0106】
なお、積層型のコンデンサ素子16を形成する場合には、金属化フィルム1を積層して本体部13を形成する。例えば、第1金属化フィルム11及び第2金属化フィルム12を所定の大きさに切り取り、これらを厚さ方向(Z軸方向)に交互に積層して本体部13を形成する。本体部13を形成した後の工程は、巻回型のコンデンサ素子16の場合と同様である。
【0107】
<封止工程>
封止工程では、
図5Cに示すように、コンデンサ素子16を樹脂17で封止する。これにより、フィルムコンデンサ10を製造することができる。
【0108】
樹脂17としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。樹脂17の硬化物で封止部18が形成されている。封止部18が、コンデンサ素子16を封止している。すなわち、封止部18にコンデンサ素子16が埋没している。本実施形態では、封止部18は、直方体状をなす。封止部18のZ軸方向一方側(上側)を向く面から一対のバスバー15が突出している。一対のバスバー15間に電圧を印加することにより、フィルムコンデンサ10を充電することができる。
【0109】
<作用効果>
本実施形態では、第1ヒューズ601の膜厚及び第2ヒューズ602の膜厚が、非分割電極61の膜厚T61よりも薄くなっている。これにより、第1ヒューズ601の抵抗値及び第2ヒューズ602の抵抗値が大きくなり、第1ヒューズ601の感度及び第2ヒューズ602の感度が高まる。その結果、短絡等の異常が発生し、過大な電流が流れた際に、第1ヒューズ601及び/又は第2ヒューズ602が溶断することで、フィルムコンデンサ10の安全性を向上させることができる。
【0110】
また本実施形態では、非分割電極61の膜厚T61が、第1ヒューズ601の膜厚及び第2ヒューズ602の膜厚よりも厚くなっている。これにより、等価直列抵抗(ESR:Equivalent Series Resistance)による損失を低減することができる。その結果、充電時及び放電時におけるフィルムコンデンサ10の発熱を低減することができる。
【0111】
3.変形例
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0112】
本実施形態に係る金属化フィルム1の製造方法は、オイル塗布工程を含まなくてもよい。したがって、本実施形態に係る金属化フィルム1の製造装置100は、オイル塗布部8を備えなくてもよい。
【0113】
本実施形態では、蒸着部60は、非分割電極61と、分割電極62と、を含んでいるが、蒸着部60の形状(厚さ方向に沿って視た形状)は、特に限定されない。
【0114】
本実施形態では、金属線5へのオイルの塗布は、フレキソ印刷により行っているが、スプレー等を用いて金属線5にオイルを吹きつけるようにしてもよい。
【0115】
本実施形態では、オイル塗布部8は、第1ロール421と飛散空間33との間に配置されているが、第2ロール422と飛散空間33との間に配置されていてもよい。
【0116】
本実施形態では、誘電体フィルム2と蒸発源30との間において、誘電体フィルム2の搬送方向に平行に金属線5が存在しているが、必ずしも完全に誘電体フィルム2の搬送方向に平行に金属線5が存在している必要はない。すなわち、本実施形態の作用効果を損なわない範囲内において、誘電体フィルム2の搬送方向に対して、金属線5が斜めに存在していてもよい。
【0117】
本実施形態では、誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向き又は逆向きに金属線5を走行させるようにしているが、必ずしも完全に誘電体フィルム2の搬送方向と同じ向き又は逆向きに金属線5を走行させる必要はない。本実施形態の作用効果を損なわない範囲内において、誘電体フィルム2の搬送方向に対して、金属線5を斜めに走行させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 金属化フィルム
10 フィルムコンデンサ
13 本体部
14 電極
15 バスバー
16 コンデンサ素子
17 樹脂
100 金属化フィルムの製造装置
2 誘電体フィルム
20 非蒸着部
3 蒸着処理部
30 蒸発源
4 膜厚制御部
5 金属線
6 金属
71 繰出部
72 巻取部
8 オイル塗布部