(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084519
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20230612BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20230612BHJP
F24C 15/20 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F24C1/00 360A
F24C7/04 301Z
F24C15/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198740
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 愛子
(72)【発明者】
【氏名】荒木 克典
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA01
3L087BB09
3L087BB20
3L087CC01
3L087DA24
(57)【要約】
【課題】食材の調理性が損なわれるのを抑制しつつ、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くする。
【解決手段】加熱調理器(5)は、食材(F)が配置される加熱庫(12)と、加熱庫(12)内を加熱する加熱装置(20)と、加熱庫(12)内を撮影する撮影装置(50)と、撮影装置(50)を用いて検出される煙の濃度レベルを判定する制御装置(90)とを備える。制御装置(90)は、判定した煙の濃度レベルに応じて、撮影装置(50)により撮影される撮影画像(500)に写る加熱庫(12)内の煙を除去する煙除去制御を行う。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材が配置される加熱庫と、
前記加熱庫内を加熱する加熱装置と、
前記加熱庫内を撮影する撮影装置と、
前記加熱庫内の煙を検出するための検煙装置と、
前記検煙装置を用いて検出される煙の濃度レベルを判定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて、前記撮影装置により撮影される撮影画像に写る前記加熱庫内の煙を除去する煙除去制御を行う
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記撮影装置は、前記検煙装置に兼用され、
前記制御装置は、前記撮影画像に基づいて前記加熱庫内の煙の濃度レベルを判定する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、食材の加熱調理の開始時に撮影された前記撮影画像を基準画像とし、食材の加熱調理中に撮影された前記撮影画像を比較画像として、前記基準画像と前記比較画像とを比較することによって、前記加熱庫内の煙の濃度レベルを判定する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、前記煙除去制御として、前記撮影画像に対して、当該撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減するように色情報を補正する画像処理を行う
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、前記検煙装置を用いて前記加熱庫内の煙の濃度に対応する評価値を算出し、
前記画像処理での色情報の補正量は、前記評価値が高くなるほど、大きくなる
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて、食材の加熱条件を調整することにより、前記加熱庫内での煙の発生を抑制する発煙抑制制御を行う
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、前記発煙抑制制御として、前記加熱装置の出力を低下させる
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱庫内での煙の発生をユーザに通知する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項9】
請求項8に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、前記加熱庫内での煙の発生を通知する通知データを外部機器に送信する通信部を有する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱庫の扉をロックする
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱装置により前記加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、
判定した煙の濃度レベルが所定の第1レベルである場合に、前記煙除去制御として、前記撮影画像に対して、当該撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減するように色情報を補正する画像処理を行い、
判定した煙の濃度レベルが前記第1レベルよりも高い第2レベルである場合に、前記加熱装置による食材の加熱条件を調整することにより、前記加熱庫内での煙の発生を抑制する発煙抑制制御を行う
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項13】
請求項12に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルが前記第2レベルよりも高い第3レベルである場合に、前記加熱庫の扉をロックする
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項14】
請求項13に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルが前記第3レベルよりも高い第4レベルである場合に、前記加熱装置により前記加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記撮影画像を表示する表示部をさらに備え、
前記制御装置は、前記煙除去制御を行っているときには、前記加熱庫内の煙が除去された前記撮影画像を前記表示部に表示させる
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記制御装置は、前記撮影画像を示す画像データを外部機器に送信する通信部を有し、
前記通信部は、前記煙除去制御を行っているときには、前記加熱庫内の煙が除去された前記撮影画像を示す画像データを外部機器に送信する
ことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、食材に熱を加えて調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱庫内において調理中の食材を表示部で確認できるようにした加熱調理器が知られている。そうした加熱調理器は、例えば特許文献1に開示される。特許文献1の加熱調理器は、撮像装置(撮像ユニット)と、表示部とを備える。撮像装置は、加熱庫(加熱室)内を撮像して、加熱庫内の画像を取得する。表示部は、撮像装置により撮像された加熱庫内の画像をユーザが確認できるように表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加熱調理器では、加熱庫内で食材を加熱中に油煙などの煙が発生することがある。特許文献1のように撮影装置を備える加熱調理器において、加熱庫内で煙が発生すると、撮影装置の視界が煙で遮られて、撮影装置により撮影された加熱庫内の画像に煙が写り込む。そのため、表示部に表示される加熱庫内の撮影画像では、食材の視認性が低下し、食材の調理状態を確認することが困難になる。
【0005】
そこで、加熱調理器においては、食材の加熱中に油煙などの煙が発生するのを抑制するように、食材を加熱する温度範囲や食材に対する熱源の方向など、食材の加熱条件を制限することが考えられる。しかし、そのような加熱庫内での発煙対策を採ると、加熱庫内で煙が発生しているか否かに関わらず、食材の加熱条件が一律に制限される。このため、食材の調理性が損なわれ、食材に対してユーザの望む加熱調理を行えないおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、食材の調理性が損なわれるのを抑制しつつ、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本開示の技術では、加熱庫内の煙の濃度レベルに応じて撮影画像に写り込む煙を発生後に除去するようにした。
【0008】
具体的には、本開示の第1の態様は、加熱調理器を対象とする。第1の態様の加熱調理器は、食材が配置される加熱庫と、前記加熱庫内を加熱する加熱装置と、前記加熱庫内を撮影する撮影装置と、前記加熱庫内の煙を検出するための検煙装置と、前記検煙装置を用いて検出される煙の濃度レベルを判定する制御装置とを備える。前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルに応じて、前記撮影装置により撮影される撮影画像に写る前記加熱庫内の煙を除去する煙除去制御を行う。ここで、「煙を除去する」とは、煙を完全に除去することに限らず、煙の一部を除去すること、つまり煙を低減させることも意味する。
【0009】
第1の態様では、制御装置が加熱庫内の煙の濃度レベルを判定し、判定した煙の濃度レベルに応じて煙除去制御を行う。煙除去制御が行われると、撮影装置によって撮影される撮影画像に写る加熱庫内の煙が除去される。それにより、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くすることができる。ここで、煙除去制御は、加熱庫内の煙をその発生後に除去するための制御であり、加熱庫内での食材の加熱条件を制限しない。よって、加熱調理器において、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くするのに、食材の調理性が損なわれるのを抑制できる。
【0010】
本開示の第2の態様は、第1の態様の加熱調理器において、前記撮影装置が、前記検煙装置に兼用される、加熱調理器である。第2の態様の加熱調理器において、前記制御装置は、前記撮影画像に基づいて前記加熱庫内の煙の濃度レベルを判定する。
【0011】
第2の態様では、撮影装置が検煙装置に兼用される。これによれば、撮影装置とは別に検煙装置を備えずに済み、加熱調理器の部品点数を削減できる。また、制御装置は、撮影画像に基づいて加熱庫内の煙の濃度レベルを判定する。加熱庫内の煙の濃度レベルを判定することは、撮影画像に写り込む煙を煙除去制御により除去することを目的に行われる。よって、加熱庫内の煙の濃度レベルを撮影画像から判定することは、当該撮影画像での食材の視認性を良くするのに合理的である。
【0012】
本開示の第3の態様は、第2の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、食材の加熱調理の開始時に撮影された画像を基準画像とし、食材の加熱調理中に撮影された画像を比較画像として、前記基準画像と前記比較画像とを比較することによって、前記加熱庫内の煙の濃度レベルを判定する、加熱調理器である。
【0013】
第3の態様では、制御装置が加熱庫内の煙の濃度レベルの判定を、食材の加熱調理中に撮影された比較画像と基準画像とを比較することで行う。仮に、基準画像が、加熱調理器の製造時に予め撮影された画像や、電源の初回投入時に撮影された画像であると、当該基準画像には、その後の加熱調理器の使用において撮影装置に用いられるカメラのレンズに付いた塵埃や汚れなどが反映されない。これに対して、本態様では、基準画像が食材の加熱調理の開始時に撮影された画像であるので、基準画像には、撮影装置に用いられるカメラのレンズに付いた塵埃や汚れなどが反映される。よって、加熱庫内の煙の濃度レベルを精度よく判定できる。
【0014】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、前記煙除去制御として、前記撮影画像に対して、当該撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減する画像処理を行う、加熱調理器である。
【0015】
第4の態様では、煙除去制御として画像処理を行う。当該画像処理では、撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減するように、当該撮影画像の色情報が補正される。画像処理は、加熱庫内での食材の加熱条件を制限しない。したがって、本態様の煙除去制御は、加熱調理器による食材の調理性と、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性とを両立させるのに適している。
【0016】
本開示の第5の態様は、第4の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、前記検煙装置を用いて前記加熱庫内の煙の濃度に対応する評価値を算出する、加熱調理器である。第5の態様の加熱調理器において、前記画像処理での色情報の補正量は、前記評価値が高くなるほど、大きくなる。
【0017】
第5の態様では、制御装置が加熱庫内の煙の濃度に対応する評価値を算出する。この評価値が高くなるほど、画像処理での色情報の補正量が大きくなる。これによれば、撮影画像に写った食材の色情報が加熱庫内の煙の濃度に応じて補正される。そうすることで、調理中の食材の焼き色などの色合いを撮影画像で良好に見ることができる。このことは、食材の調理状態を確認するのに有利である。
【0018】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルに応じて、食材の加熱条件を調整することにより、前記加熱庫内での煙の発生を抑制する発煙抑制制御を行う、加熱調理器である。
【0019】
第6の態様では、制御装置が発煙抑制制御を行う。発煙抑制制御が行われると、食材の加熱条件が調整されることで、加熱庫内での煙の発生が抑制される。発煙抑制制御は、制御装置が判定した煙の濃度レベルに応じて行われる。よって、加熱庫内の煙が煙除去制御のみでは撮影画像に写る煙を好適に除去できないような濃度レベルにあるなど、発煙抑制制御を必要なときに限って行うことができる。そうすることで、食材の調理性が損なわれるのを抑制できる。
【0020】
本開示の第7の態様は、第6の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、前記発煙抑制制御として、前記加熱装置の出力を低下させる、加熱調理器である。
【0021】
第7の態様では、制御装置が、発煙抑制制御として加熱装置の出力を低下させる。加熱庫内で食材の加熱中に発生する煙は、主に油脂と水分が混ざり合い高温に加熱された際に発生する油煙である。油煙の発生は、加熱装置の出力を低下させることで抑制される。よって、加熱装置の出力を低下させることは、発煙抑制制御に適している。
【0022】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱庫内での煙の発生をユーザに通知する、加熱調理器である。
【0023】
第8の態様では、制御装置が加熱庫内での煙の発生をユーザに通知する。この通知は、制御装置が判定した煙の濃度レベルに応じて行われる。よって、加熱庫内の煙が煙除去制御のみでは撮影画像に写る煙を好適に除去できない濃度レベルにあるなど、加熱庫内の環境が煙で酷いときに必要に応じて当該通知を出すことができる。このことは、ユーザに注意を促すアラートとして有効である。
【0024】
本開示の第9の態様は、第8の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、前記加熱庫内での煙の発生を通知する通知データを外部機器に送信する通信部を有する、加熱調理器である。
【0025】
第9の態様では、制御装置が加熱庫内での煙の発生を示す通知データを通信部の機能により外部機器に送信する。これによれば、ユーザは、加熱調理器から離れていても、外部機器で受信した通知データに基づき、加熱庫内での煙の発生を認知できる。外部機器が可搬性のある情報端末であると、利便性が高い。
【0026】
本開示の第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱庫の扉をロックする、加熱調理器である。
【0027】
第10の態様では、制御装置が加熱庫の扉をロックする。この扉のロックは、制御装置が判定した煙の濃度レベルに応じて行われる。よって、加熱庫内の煙が扉を開けると出てくるような濃度レベルにあるなど、加熱庫内の煙が多量であるときに必要に応じて扉をロックできる。そうすることで、加熱庫内から出てきた煙によって室内が汚れるのを抑制できる。
【0028】
本開示の第11の態様は、第1~第10の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルに応じて前記加熱装置により前記加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する、加熱調理器である。
【0029】
第11の態様では、制御装置が加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する。この加熱運転の停止は、制御装置が判定した煙の濃度レベルに応じて行われる。よって、加熱庫内の煙が撮影装置の視界を殆ど遮るような濃度レベルにあるなど、加熱庫内の環境が異常な状態と判断されるときに必要に応じて加熱運転を停止できる。そうすることで、加熱調理器の異常な状態が進展することを回避できる。
【0030】
本開示の第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルが所定の第1レベルである場合に、前記煙除去制御として、前記撮影画像に対して、当該撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減するように色情報を補正する画像処理を行う、加熱調理器である。第9の態様の加熱調理器において、前記制御装置は、判定した煙の濃度レベルが前記第1レベルよりも高い第2レベルである場合に、前記加熱装置による食材の加熱条件を調整することにより、前記加熱庫内での煙の発生を抑制する発煙抑制制御を行う。
【0031】
第12の態様では、制御装置が煙除去制御として画像処理を行う。画像処理は、制御装置が判定した煙の濃度レベルが第1レベルである場合に行われる。画像処理では、撮影画像に写った煙による食材の色への影響を低減するように、当該撮影画像の色情報が補正される。画像処理は、加熱庫内での食材の加熱条件を制限しない。したがって、本態様の煙除去制御は、加熱調理器による食材の調理性と、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性とを両立させるのに適している。
【0032】
また、第12の態様では、制御装置が発煙抑制制御を行う。発煙抑制制御は、制御装置が判定した煙の濃度レベルが第2レベルである場合に行われる。発煙抑制制御では、加熱装置による食材の加熱条件が調整されることで、加熱庫内での煙の発生が抑制される。煙の濃度レベルについて、発煙抑制制御を行う第2レベルは、煙除去制御を行う第1レベルよりも高い。そのため、煙除去制御は、発煙抑制制御よりも優先して行われる。これにより、食材の加熱条件をなるべく制限しないで、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くすることができる。
【0033】
本開示の第13の態様は、第12の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルが前記第2レベルよりも高い第3レベルである場合に、前記加熱庫の扉をロックする、加熱調理器である。
【0034】
第13の態様では、制御装置が加熱庫の扉をロックする。この扉のロックは、制御装置が判定した煙の濃度レベルが第3レベルである場合に行われる。煙の濃度レベルについて、加熱庫の扉をロックする第3レベルは、発煙抑制制御を行う第2レベルよりも高い。そのため、発煙抑制制御は、加熱庫の扉のロックよりも優先して行われる。これにより、発煙抑制制御により加熱庫内の煙を低減できないときに限って加熱庫の扉がロックされる。そのことで、加熱調理器の使用性をなるべく損なわないようにしつつ、加熱庫内から出てきた煙によって室内が汚れるのを抑制できる。
【0035】
本開示の第14の態様は、第13の態様の加熱調理器において、前記制御装置が、判定した煙の濃度レベルが前記第3レベルよりも高い第4レベルである場合に、前記加熱装置により前記加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する、加熱調理器である。
【0036】
第14の態様では、制御装置が加熱庫内を加熱する加熱運転を停止する。この加熱運転の停止は、制御装置が判定した煙の濃度レベルが第4レベルである場合に行われる。煙の濃度レベルについて、加熱調理器の運転を停止する第4レベルは、加熱庫の扉をロックする第3レベルよりも高い。そのため、加熱庫の扉のロックは、加熱調理器の運転の停止よりも優先して行われる。これにより、加熱調理器の信頼性をなるべく損なわないようにしつつ、加熱調理器の異常な状態が進展することを回避できる。
【0037】
本開示の第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記撮影画像を表示する表示部をさらに備える、加熱調理器である。第15の態様の加熱調理器において、前記制御装置は、前記煙除去制御を行っているときには、前記加熱庫内の煙が除去された撮影画像を前記表示部に表示させる。
【0038】
第15の態様では、加熱調理器が表示部を備える。表示部には、撮影画像が表示される。表示部に表示される加熱庫内の撮影画像は、加熱庫内に煙が存在するときに、煙除去制御により煙が除去された画像とされる。したがって、ユーザは、加熱庫内で食材の加熱中に油煙などの煙が発生しても、表示部を見ることで食材の調理状態を確認できる。
【0039】
本開示の第16の態様は、第1~第15の態様のいずれか1つの加熱調理器において、前記撮影画像を示す画像データを外部機器に送信する通信部をさらに備える、加熱調理器である。第16の態様の加熱調理器において、前記通信部は、前記煙除去制御を行っているときには、前記加熱庫内の煙が除去された前記撮影画像を示す画像データを外部機器に送信する。
【0040】
第16の態様では、制御装置が通信部を有する。通信部は、撮影画像を示す画像データを外部機器に送信する。外部機器が画像データに基づいて撮影画像を表示可能であると、ユーザは、加熱調理器から離れていても、外部機器で食材の調理状態を確認できる。そして、外部機器で表示される加熱庫内の撮影画像は、加熱庫内に煙が存在するときに、煙除去制御により煙が除去された画像とされる。したがって、ユーザは、加熱庫内で油煙などの煙が発生しても、外部機器で食材の調理状態を確認できる。外部機器が可搬性のある情報端末であると、利便性が高い。
【発明の効果】
【0041】
本開示の技術によれば、食材の調理性が損なわれるのを抑制しつつ、加熱庫内の撮影画像での食材の視認性を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、実施形態の加熱調理システムの概略的な全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の加熱調理器を右上から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態の加熱調理器を右下から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態の加熱調理器の加熱庫内を正面から見た図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線における加熱調理器の断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のロック装置の概略構成を例示する図である。
【
図7】
図7は、実施形態の制御装置とその主な関連機器を例示するブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態の加熱庫内の煙の濃度レベルの区分を例示する概念図である。
【
図9】
図9は、実施形態の加熱調理器の制御例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態の加熱調理器における加熱庫内の煙対策制御の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態の加熱調理器での鶏肉の加熱調理中における加熱庫内の煙の濃度レベルの経時的変化を例示するグラフである。
【
図17】
図17は、撮影画像から煙画像に基づいて作成される煙除去画像の一例を示す模式図である。
【
図18】
図18は、変形例の加熱庫内の煙の濃度レベルの区分を例示する概念図である。
【
図19】
図19は、変形例の加熱調理器における加熱庫内の煙対策制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明では、加熱調理器について、上下方向における上側を「上」、下側を「下」と称し、加熱庫の扉側を「前」、当該扉とは反対側を「後」と称し、扉が設けられる前側から後側を見たときの左側を「左」、右側を「右」と称する。なお、図面は、本開示を概念的に説明するためのものである。よって、図面では、本開示の技術の理解を容易にするために寸法、比または数を、誇張あるいは簡略化して表す場合がある。
【0044】
《実施形態》
この実施形態の加熱調理器5は、
図1に示すように、加熱調理システム1を構成する。加熱調理システム1は、加熱調理器5を使用するユーザに向けて加熱調理中の食材Fを含む加熱庫12内の撮影画像500を提示するシステムである。加熱調理システム1による加熱庫12内の撮影画像500の提示は、加熱調理を行っている食材Fの調理状態の確認を可能とし、加熱調理器5を使用するユーザを支援する。
【0045】
加熱調理システム1は、加熱調理器5と、情報端末100とを備える。
【0046】
-加熱調理器の構成-
加熱調理器5は、いわゆるコンベクションオーブンである。加熱調理器5は、食材Fの自動的な加熱調理を行う機能を有する。
図2~
図5に示すように、加熱調理器5は、加熱庫12と、加熱装置20と、排気機構35と、食材温度検出器40と、三次元計測装置46と、庫内温度検出器48と、撮影装置50と、表示部62と、操作部64と、記憶装置70と、ロック装置80と、制御装置90とを備える。
【0047】
〈加熱庫〉
加熱庫12は、筐体10に形成される。筐体10は、前面が開口する直方体型の箱状物である。筐体10の内部空間は、加熱庫12を構成する。筐体10は、アウタハウジング12aと、インナハウジング12bとを有する。アウタハウジング12aは、筐体10の外装部分を構成する。インナハウジング12bは、加熱庫12の内壁を構成する。アウタハウジング12aとインナハウジング12bとの間には、通気流路13が形成される。通気流路13は、外部から取り込んだ空気と、加熱庫12内から誘引した空気とを流すための流路である。
【0048】
加熱庫12には、食材Fが配置される。食材Fとしては、例えば肉類や魚介類、野菜類、それらの調理過程のものが挙げられる。筐体10の前面(開口面)には、扉14が設置される。扉14は、筐体10の開口下側の部分にヒンジを介して連結される。扉14は、ヒンジの左右方向に延びる回転軸を中心に回転することで、加熱庫12を開閉する。加熱庫12には、載置棚16が設けられる。
【0049】
載置棚16は、線材からなる矩形枠状の枠状部材と、枠状部材の内側で前後方向に延びて左右方向に並べられる複数の棒状部材とが一体に組み合わせられて構成される。載置棚16の左右方向における両端部は、筐体10の側壁、つまり加熱庫12を区画する側面部に支持される。載置棚16には、トレイ18が載置される。トレイ18は、金属製の板状物である。トレイ18には、食材Fが載置される。
【0050】
筐体10の後壁部、つまり加熱庫12を区画する後面部には、庫内灯19が設けられる。庫内灯19は、上下両側に分けて2つ設けられる。具体的には、一方の庫内灯19は、加熱庫12の左上側に配置される。他方の庫内灯19は、加熱庫12の右下側に配置される。庫内灯19は、加熱調理中の食材Fの状態などを確認し易くするために、加熱庫12内を照明する。庫内灯19は、例えば、白熱球、蛍光灯またはLED(Light Emitting Diode)電球によって構成される。
【0051】
〈加熱装置〉
加熱装置20は、加熱庫12内を加熱する。加熱装置20は、複数のヒータを有する。
図2~
図5に示すように、本例における複数のヒータは、上部ヒータ22と、下部ヒータ24と、コンベクションヒータ26とである。上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26は、個別に独立して出力調整が可能に構成される。
【0052】
上部ヒータ22は、筐体10の上壁に設けられる。具体的には、上部ヒータ22は、インナハウジング10aの上面部に沿わせて配置される。下部ヒータ24は、筐体10の底壁に設けられる。具体的には、下部ヒータ24は、インナハウジング10aの下面部の下側に埋設される。これら上部ヒータ22および下部ヒータ24はそれぞれ、例えば、通電により発熱する電熱線で構成される。上部ヒータ22および下部ヒータ24は、赤外線を放射する赤外線ヒータによって構成されてもよく、電熱線と赤外線ヒータとの組合せにより構成されてもよい。
【0053】
コンベクションヒータ26は、筐体10の後壁、つまり加熱庫12を区画する後面部において、左右方向における中央部分に上下両側に分けて2つ設けられる。コンベクションヒータ26は、ケーシング27と、ファン28と、発熱部29とを有する。ケーシング27は、正面視で概ね楕円形の浅い皿状に形成される。ケーシング27は、後方に開口を向けて筐体10における加熱庫12の後面部に取り付けられる。
【0054】
ケーシング27は、加熱庫12内で張り出すことで、後側に収容部30を構成する。ケーシング27の中央部分には、正面側に向けて開口する吸込孔31が形成される。ケーシング27の外周を構成する周壁32には、ケーシング27の外周側に向けて開口する送風口33が形成される。ファン28は、ケーシング27内の収容部30に収容され、吸込孔31の後側に配置される。ファン28は、例えば遠心ファンによって構成される。
【0055】
発熱部29は、ケーシング27内にファン28の周囲を囲うように設けられる。発熱部29は、例えば通電により発熱する電熱線で構成される。コンベクションヒータ26は、ファン28を回転させることで、加熱庫12内の空気を吸込孔31からケーシング27内に吸い込んでファン28の外周側に流し、発熱部29により加熱された空気を送風口33から加熱庫12内に送り出す。そのことで、加熱庫12内の空気を循環させ、加熱庫12内で熱が対流する。
【0056】
加熱装置20の出力は、調節可能である。加熱装置20の出力は、複数のヒータ、本例では上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26のうち駆動状態となるヒータの数と、駆動状態にあるヒータの出力とに依存する。具体的には、複数のヒータの出力が同一である場合、複数のヒータのうち駆動状態となるヒータの数が多くなるに連れて、加熱装置20の出力が高くなる。また、複数のヒータのうち駆動状態となるヒータの出力が高くなるに連れて、加熱装置20の出力が高くなる。
【0057】
また、加熱装置20に含まれる複数のヒータ、本例では上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26はそれぞれ、連続的に駆動する連続駆動状態と、間欠的に駆動する間欠駆動状態とに切り換え可能である。複数のヒータの各々の駆動周期に対する駆動時間の割合は、変更可能である。例えば、上部ヒータ22が連続駆動状態から間欠駆動状態になると、上部ヒータ22の出力が低下する。また、間欠駆動状態である上部ヒータ22の駆動周期に対する駆動時間の割合が小さくなると、上部ヒータ22の出力が低下する。
【0058】
〈排気機構〉
排気機構35は、加熱庫12内の空気を外部に排気する機構である。排気機構35は、排気部36と、排気通路37と、排気ファン38とを有する。排気部36は、筐体10において加熱庫12と排気通路37とを連通させる部分である。排気部36は、筐体10のインナハウジング10aの上面部の概ね中央位置に設けられる。排気通路37は、通気流路13の一部で構成される。排気通路37は、筐体10の上部から後部、さらに下部に亘って設けられる。筐体10の下部前面には、排気口39が形成される。排気ファン38は、駆動されると、通気流路13に空気の流れを生成する。
【0059】
排気ファン38は、筐体10の上側後部で排気通路37に配置される。排気ファン38は、例えば横断流送風ファンである。排気ファン38は、加熱庫12内の空気を排気部36から排気通路37に誘引し、排気通路37を流して排気口39から排出させる。排気ファン38は、制御装置90を冷却するための冷却風を生成する冷却ファンに兼用される。冷却風は、筐体10の上部側面に形成された吸気口15(
図2および
図3参照)から通気流路13に取り込まれた空気により形成される。冷却風をなす空気は、加熱庫12内の空気と共に排気通路37を流れて排気口39から排出される。
【0060】
〈食材温度検出器〉
食材温度検出器40は、食材Fの内部温度を検出するための機器である。本例の食材温度検出器40は、食材Fの表面温度を非接触で検出する。例えば、食材温度検出器40は、複数の赤外線センサにより構成される。食材温度検出器40は、加熱庫12の上面部に設置される。食材温度検出器40は、トレイ18の上面を略全域に亘ってスキャンし、食材Fを含む対象領域の熱分布を検知する。食材温度検出器40の検出結果(食材Fを含む対象領域の表面温度を示す食材温データ)は、制御装置90に出力される。
【0061】
〈三次元計測装置〉
三次元計測装置46は、加熱庫12に配置された食材Fの三次元形状を計測することにより、食材Fの三次元形状を示す三次元データを取得するための機器である。具体的には、三次元データは、食材Fの三次元形状を示す三次元座標を含む。例えば、三次元計測装置46は、TOF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラなどの公知の三次元計測装置46により構成される。三次元計測装置46の計測結果(食材の三次元形状を示す三次元データ)は、制御装置90に出力される。
【0062】
〈庫内温度検出器〉
庫内温度検出器48は、加熱庫12内の温度を検出するための機器である。庫内温度検出器48は、加熱庫12内に設置される。厳密には、庫内温度検出器48は、加熱庫12内の設置場所における空気の温度を検出する。例えば、庫内温度検出器48は、サーミスタなどの公知の温度センサにより構成される。庫内温度検出器48の検出結果(加熱庫12内の温度を示す庫内温データ)は、制御装置90に出力される。
【0063】
〈撮影装置〉
撮影装置50は、加熱庫12内を撮影することにより、食材Fを含む加熱庫12内の撮影画像500を取得する。例えば、撮影装置50は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどの公知の撮影装置により構成される。撮影装置50は、検煙装置に兼用される。検煙装置は、加熱庫12内の煙を検出するための装置である。
【0064】
撮影装置50は、加熱庫12内の食材Fを画角に含むように、筐体10の左右片方の上側(
図3および
図4に示す例では左上側)で前後方向における中央の位置に配置される。本例の撮影装置50は、1つのカメラによって構成される。撮影装置50は、加熱庫12内を異なる方向から撮影する複数のカメラを含んでもよい。撮影装置50の撮影結果(撮影画像500を示す画像データ)は、制御装置90に出力される。
【0065】
〈表示部、操作部〉
表示部62および操作部64は、コントロールパネル60として加熱庫12の開口の上側に一体に設けられる。コントロールパネル60は、例えば、タッチパネル付きの表示装置により構成される。表示部62は、コントロールパネル60をなす表示装置の画面である。操作部64は、タッチパネルである。操作部64は、物理的な操作ボタン、ダイヤル式スイッチなどを含んでもよい。
【0066】
表示部62は、加熱調理に関する情報を表示する。表示部62に表示される情報としては、例えば、加熱調理の運転モード、加熱装置の出力度合、加熱調理に要する時間などが挙げられる。表示部62はさらに、撮影画像500を表示する。操作部64は、加熱調理に関するユーザの操作を受け付ける。コントロールパネル60では、ユーザのタッチ操作により、加熱調理の設定情報の入力、加熱調理の開始および停止が行える。コントロールパネル60で入力された情報(加熱調理に関する設定データ)は、制御装置90に出力される。
【0067】
〈記憶装置〉
記憶装置70は、各種の情報を記憶する。記憶装置70は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの周知の記憶装置により構成される。記憶装置70は、加熱調理器5に内蔵される。記憶装置70は、筐体10外に設けられた外部記憶装置によって構成されてもよい。記憶装置70は、食材Fの種類ごとに準備された食材画像を記憶する。食材画像は、食材Fを写した画像である。
【0068】
記憶装置70はさらに、食材Fの種類とサイズの組合せごとに準備された加熱調理条件を記憶する。例えば、食材Fのサイズは、食材Fの厚さ、食材Fの堆積、食材Fの表面積および食材Fの重量のいずれか1つ、またはこれらの少なくとも2つの組合せである。食材のサイズは、食材画像に基づく計算により取得されたものであってもよい。加熱調理条件は、食材Fの加熱調理において、その食材Fを好適な食感と美味しさに仕上げるための条件である。
【0069】
記憶装置70はさらに、後述する煙除去制御で用いられる煙画像600に係るデータを記憶する。煙画像600に係るデータは、例えば、撮影画像500の色情報に基づいて煙画像600を作成するための相関関数である。煙画像600は、煙が発生した加熱庫12内を撮影したようなモデル画像である(
図17参照)。煙画像600に係るデータ(相関関数)は、例えば、加熱庫12内の煙の濃度変化に応じた、庫内灯19からの光の煙による反射、加熱庫12内の壁面による反射、食材Fによる反射を考慮して、実測に基づいて作成される。
【0070】
〈ロック装置〉
ロック装置80は、扉14を閉じた状態でロックする装置である。筐体10の開口の周囲において扉14の回転軸から離れた側(
図4に示す例では右上側)の部分に設けられる。
図6に示すように、ロック装置80は、ラッチ81と、駆動装置83とを有する。ラッチ81は、アウタハウジング10aに形成された孔84から前方に突き出す。ラッチ81は、筐体10内に設けられた軸体85を中心として回転自在に設けられる。扉14のロック装置80に対応する部分には、ラッチ81を引っ掛けるラッチ受け部87が設けられる。ラッチ受け部87は、扉14が閉じた位置にあるときに、ラッチ81が挿入される開口88を有する。
【0071】
ラッチ81は、ロック位置(
図6に実線で示す位置)と、解除位置(
図6に二点鎖線で示す位置)との間で変位する。ロック位置は、ラッチ81がラッチ受け部87に引っ掛かる位置である。解除位置は、ラッチ81がラッチ受け部87に引っ掛からない位置である。ラッチ81は、ばね部材89により解除位置からロック位置に向けて常時付勢される。駆動装置83は、モータなどを含む。駆動装置83は、制御装置90からの制御信号により、ばね部材89の付勢力に抗してラッチ81を解除位置に回転させる。それにより、ロック装置80は、ユーザが開けることができないように扉14をロックする。
【0072】
〈制御装置〉
制御装置90は、加熱調理器5の動作を総合的に制御する。
図7に示すように、制御装置90は、加熱装置20、排気機構35(排気ファン38)、食材温度検出器40、三次元計測装置46、庫内温度検出器48、撮影装置50、表示部62、操作部64、記憶装置70およびロック装置80(駆動装置83)と通信可能なように電気的に接続される。制御装置90は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。
【0073】
制御装置90は、CPU(Central Processing Unit)92と、メモリ94と、通信部96とを有する。メモリ94は、各種のプログラムおよびデータを記憶する。CPU92は、メモリ94から読み出したプログラムを実行する。通信部96は、WiFi(Fireless Fidelity)などの無線LAN(Local Area Network)を用いた通信機能や、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの近距離無線通信規格での通信機能を有する。
【0074】
制御装置90は、メモリ94に記憶されたプログラムを実行することにより、コントロールパネル60で入力された加熱調理に関する設定データと、食材温度検出器40、三次元計測装置46、庫内温度検出器48および撮影装置50から入力された各種のデータとに基づいて、加熱装置20を制御する。具体的には、制御装置90は、加熱庫12内に配置された食材Fの種類に応じた加熱調理条件に従い、上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26を制御する。
【0075】
制御装置90は、加熱調理器5で加熱調理を開始すると、撮影装置50に加熱庫12内を撮影させ、加熱庫12内の食材Fが写った撮影画像500を取得する。制御装置90は、取得した撮影画像500を表示部62に表示させる。表示部62に表示させる撮影画像500には、必要に応じて、後述する煙除去制御としての画像処理が施される。通信部96は、情報端末100から要求指令を受けると、撮影画像500を示す画像データを情報端末100に送信する。
【0076】
-情報端末の構成-
図1に示す情報端末100は、通信機能を有し、可搬性のあるモバイル機器である。情報端末100は、外部機器の一例である。情報端末100としては、例えば、スマートフォンと呼ばれる小型の多機能携帯電話機が用いられる。
図7に示すように、情報端末100は、表示部102と、操作部104と、通信部106とを有する。表示部102および操作部104は、タッチパネル付きの表示装置によって構成される。表示部102は、表示装置の画面である。操作部104は、タッチパネルである。
【0077】
通信部106は、他の機器と通信するためのインタフェースである。通信部106は、インターネットなどの広域通信網である外部ネットワークNと通信を行う。通信部106は、WiFi(Fireless Fidelity)などの無線LAN(Local Area Network)を用いた通信機能や、LTE(Long Time Evolution)といったモバイル通信規格での通信機能を有する。情報端末100には、特定のアプリケーションソフトウェアがインストールされることで、外部ネットワークNを介した加熱調理器5との通信が確立可能になる。
【0078】
情報端末100は、操作部104で所定の入力操作を行うと、加熱庫12内の撮影画像500を要求する要求指令を通信部106の機能により加熱調理器5に向けて送信する。また、情報端末100は、加熱調理器5から送信された加熱庫12内の撮影画像500を示す画像データを通信部106で受信する。情報端末100の表示部102には、上記アプリケーションソフトウェアの機能により、受信した画像データに基づき、加熱庫12内の撮影画像500が表示される。
【0079】
-加熱庫内の煙対策制御-
加熱調理器5の加熱庫12内には、食材Fの加熱中に煙が発生することがある。加熱庫内に発生する煙は、油脂と水分が混ざり合い高温加熱された際に発生する油煙が主である。油脂を加熱していくときに煙が発生する温度である発煙点は、油脂の成分や性質によって異なる。発煙点は、動物性や植物性などの分類によって、また肉類や魚介類などの種類によって、さらに油脂の劣化度合いによっても異なる。このように、油煙の発生条件は、多くの複雑な条件からなるため定まらない。
【0080】
加熱庫12内で煙が発生すると、加熱庫12内の画像500に煙が写り込む。そのため、撮影装置50により撮影された加熱庫12内の画像500をそのまま加熱調理器5の表示部62や情報端末100の表示部102に表示したのでは、当該撮影画像500での食材Fの視認性が低下し、食材Fの調理状態を確認することが困難になる。しかしながら、加熱庫12内での煙の発生を抑制すべく、食材Fの加熱条件を制限すると、加熱庫12内で煙が発生しているか否かに関わらず、食材Fの加熱条件が一律に制限される。このため、食材Fの調理性が損なわれ、食材Fに対してユーザの望む加熱調理を行えないおそれがある。
【0081】
そこで、本例の制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定し、判定した煙の濃度レベルに応じて煙除去制御を行う。煙除去制御は、撮影装置50により撮影される撮影画像500に写る加熱庫12内の煙を除去する制御である。本例の制御装置90は、煙除去制御として、撮影画像500に画像処理を行う。この画像処理では、撮影装置50により撮影された画像500に対して、当該画像500に写った煙による食材Fの色への影響を低減するように色情報を補正する。
【0082】
制御装置90は、撮影装置50を用いて加熱庫12内の煙を検出する。具体的には、制御装置90は、撮影装置50により撮影された撮影画像500、つまり撮影装置50から入力された画像データに基づいて、加熱庫12内の煙を検出し、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する。加熱庫12内の煙の検出およびその煙の濃度レベルの判定には、撮影画像500の色情報が用いられる。撮影画像500の色情報は、色空間での距離を比較するのに利用される。
【0083】
制御装置90は、撮影装置50により食材Fの加熱調理の開始時に撮影された撮影画像500を基準画像500rとして取得する(
図12参照)。制御装置90は、加熱調理の開始後、つまり食材Fの加熱調理中に撮影された撮影画像500を比較画像500tとして取得する(
図13~
図15参照)。そして、制御装置90は、基準画像500rと比較画像500tを比較することによって、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する。
【0084】
本例の制御装置90は、基準画像500rと比較画像500tとの比較を、それら両画像500r,500tの色情報を用いて行う。比較画像500tでは、加熱庫12内に油煙などの煙が発生した場合に、その煙の濃度に応じて色情報が変化する。よって、基準画像500rと比較画像500tとの色情報の差分をとることで、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定することが可能である。
【0085】
具体的には、制御装置90は、基準画像500rおよび比較画像500tの各々に対して、検査領域550を設定する。検査領域550は、基準画像500rおよび比較画像500tにおいて、食材Fが写った部分OBを除く領域、例えばトレイ18の表面が写った領域に設定される(
図16参照)。制御装置90による基準画像500rと比較画像500tとの比較は、それら両画像500r,500tの検査領域550同士で行われる。
【0086】
制御装置90は、基準画像500rの検査領域550における色情報に基づいて、検査基準値Vrを算出する。検査基準値Vrは、加熱庫12内に煙が発生していない状態で撮影された基準画像500rの検査領域550が持つ値を示し、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する際の基準となる。検査基準値Vrは、以下の式(1)で表されるRGB値の二乗和平方根により求められる。
【0087】
【0088】
ここで、R1は、基準画像500rの検査領域550に存在する全画素の赤色成分(R値)の平均値である。G1は、基準画像500rの検査領域550に存在する全画素の緑色成分(G値)の平均値である。B1は、基準画像500rの検査領域550に存在する全画素の青色成分(B値)の平均値である。各色成分の平均値は、算術平均値である。各色成分の平均値は、幾何平均値であってもよく、他の要素を加味した加重平均値または調和平均値であってもよい。
【0089】
また、制御装置90は、比較画像500tの検査領域550における色情報に基づいて、比較対象値Vtを算出する。比較対象値Vtは、比較画像500tの検査領域550が持つ値を示し、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する際の検査基準値Vrとの比較対象となる。比較対象値Vtは、以下の式(2)で表されるRGB値の二乗和平方根により求められる。
【0090】
【0091】
ここで、R2は、比較画像500tの検査領域550に存在する全画素の赤色成分(R値)の平均値である。G2は、比較画像500tの検査領域550に存在する全画素の緑色成分(G値)の平均値である。B1は、比較画像500tの検査領域550に存在する全画素の青色成分(B値)の平均値である。各色成分の平均値は、算術平均値である。
各色成分の平均値は、幾何平均値であってもよく、他の要素を加味した加重平均値または調和平均値であってもよい。
【0092】
そして、制御装置90は、検査基準値Vrと比較対象値Vtとの差分を色差値Dcとして算出する。色差値Dcは、以下の式(3)で表される減算式により求められる。色差値Dcは、基準画像500rの検査領域550と比較画像500tの検査領域550との間の色情報の差分を示す。色差値Dcは、加熱庫12内の煙の濃度に対応する評価値であって、加熱庫12内の煙の濃度が高くなるほど、大きくなる。
【0093】
【0094】
制御装置90は、色差値Dcの大きさに応じて、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する。
図8に示すように、本例の制御装置90が判定する加熱庫12内の煙の濃度レベルは、第1レベル~第4レベルからなる4つのレベルに分けられる。当該煙の濃度レベルは、第1レベル、第2レベル、第3レベル、第4レベルの順に高い。煙の濃度レベルが高いことは、加熱庫12内の煙が濃いことを意味する。
【0095】
第1レベルは、撮影画像500に写る煙を画像処理により対処して当該画像500における食材Fの視認性を改善できる煙の濃度レベルである。第2レベルは、撮影画像500における食材Fの視認性を画像処理では改善することが難しい煙の濃度レベルである。第3レベルは、加熱庫12内の煙が扉14を開けると庫外に多く出てくることが想定される煙の濃度レベルである。第4レベルは、加熱庫12内の煙が加熱調理器5で異常が発生した可能性のある煙の濃度レベルである。
【0096】
加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、第2レベルは、レベルAおよびレベルBからなる2つのレベルに分けられる。レベルAは、第2レベルにおいて、煙の濃度レベルが相対的に低いレベルである。レベルBは、第2レベルにおいて、煙の濃度レベルが相対的に高いレベルである。
【0097】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルが第1レベルである場合に、煙除去制御としての画像処理を行う。煙除去制御としての画像処理は、加熱庫12内の煙の濃度に応じた色情報の補正処理である。当該画像処理は、加熱庫12内の煙の濃度に相当する煙画像600を用いて行われる。煙画像600は、色差値Dcに基づいて作成される。よって、煙画像600には、色差値Dcが高いほど濃い煙の色情報が反映される。当該画像処理での色情報の補正量は、色差値Dcが高くなるほど、大きくなる。
【0098】
制御装置90は、煙画像600に係る相関データを記憶装置70から読み出して、その相関データおよび色差値Dcに基づいて加熱庫12内の煙の濃度に応じた煙画像600を作成する。制御装置90は、作成した煙画像600に基づき、撮影画像500から煙を除去するように撮影画像500の色情報を補正し、当該補正を行った煙除去画像700を作成する(
図17参照)。そして、制御装置90は、煙除去制御を行っているときには、煙除去画像700を表示部62に表示させる。このとき、通信部96は、情報端末100からの要求指令を受けると、煙除去画像700を示す画像データを情報端末100に送信する。
【0099】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルに応じて加熱庫12内での煙の発生をユーザに通知する。具体的には、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAである場合に、加熱庫12内での煙の発生をユーザに通知する。制御装置90は、ユーザへの通知として、表示部62に加熱庫12内で煙が発生したことを示すアイコンや文字などの情報を表示する。このとき、通信部96は、必要に応じて、加熱庫12内での煙の発生を通知する通知データを情報端末100に送信する。
【0100】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルに応じて発煙抑制制御を行う。発煙抑制制御は、食材Fの加熱条件を調整することにより、加熱庫12内での煙の発生を抑制する制御である。具体的には、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBである場合に、発煙抑制制御を行う。発煙抑制制御としては、加熱装置20の出力を加熱調理条件に従う通常出力よりも低下させる。加熱装置20の出力を低下させるには、例えば、駆動状態となるヒータの数を減らすか、駆動状態にあるヒータの出力を低下させるか、または間欠駆動状態にあるヒータの駆動周期に対する駆動時間の割合を小さくすればよい。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBよりも低くなったときに、加熱装置20の出力を加熱調理条件に従う通常出力に復帰させてもよい。
【0101】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルに応じて加熱庫12の扉14をロックする。具体的には、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第3レベルである場合に、ロック装置80を作動させて、加熱庫12の扉14を閉じた状態でロックする。制御装置90は、食材Fの加熱調理が終了するか、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベル以下になるか、加熱調理器5の運転が停止するか、または加熱調理器5の運転停止から所定の時間が経過したときに、扉14のロックを解除する。
【0102】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルに応じて加熱装置20により加熱庫12内を加熱する加熱運転を停止する。具体的には、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第4レベルである場合に、加熱運転を停止する。この場合、制御装置90は、図示しない換気機構による加熱庫12内の空気の入れ換えにより、加熱庫12内を冷却する冷却運転を行ってもよい。また、制御装置90は、加熱調理器5の運転を完全に停止してもよい。
【0103】
-加熱調理器の動作-
加熱調理器5を使用して食材Fを加熱調理するには、まず、ユーザが食材Fを加熱庫12に投入する。次いで、ユーザは、コントロールパネル60で食材Fの調理方法を設定する操作を行う。そして、ユーザは、食材Fの調理方法を設定し終えたら、コントロールパネル60で加熱調理の開始を指示する操作を行う。そうすることで、加熱調理器5は、加熱庫12内に配置された食材Fを自動的に加熱調理する。
【0104】
図9に示すように、まず、制御装置90は、ユーザから加熱調理の開始を指示する操作が入力されたか否かを判定する(ステップST1)。加熱調理の開始を指示する操作が入力されたか否かは、コントロールパネル60での操作に基づいて判定する。制御装置90は、加熱調理の開始を指示する操作が入力されていないと判定した場合(ステップST1でNOの場合)には、加熱調理を開始せずに処理を終了させる。
【0105】
制御装置90は、食材Fの加熱調理の開始を指示する操作が入力されたと判定した場合(ステップST1でYESの場合)には、食材温度検出器40、三次元計測装置46、庫内温度検出器48および撮影装置50から入力された各種のデータを読み込む(ステップST2)。そして、制御装置90は、三次元計測装置46から入力された食材の三次元データと、撮影装置50から入力された画像データとに基づいて、食材Fの種類およびサイズを認識する(ステップST3)。
【0106】
制御装置90は、食材Fの種類およびサイズを認識すると、食材Fの種類およびサイズに基づいて、その食材Fの加熱調理条件を設定する(ステップST4)。食材Fの加熱調理条件は、記憶装置70に記憶された複数の加熱調理条件から食材Fの種類およびサイズに適合する加熱調理条件が選定される。食材Fの仕上げ具合がコントロールパネル60で入力された場合、その仕上げ具合も考慮して加熱調理条件が選定される。
【0107】
そして、制御装置90は、設定した加熱調理条件に従い、食材の加熱調理を実行する(ステップST5)。食材の加熱調理を行っているときは、制御装置90は、食材温度検出器40から入力される食材Fの表面温度に基づき、食材Fの内部温度を推定してモニタリングする。制御装置90は、食材Fの内部温度が加熱調理条件に含まれる温度プロファイルに倣って推移するように、上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26の少なくとも1つのヒータを駆動させて、食材Fを加熱する。このとき、排気ファン38を駆動させて、制御装置90を冷却すると共に、加熱庫12内の空気を排気する。
【0108】
制御装置90は、食材Fの内部温度が目標温度に到達すると、加熱装置20によって食材Fを加熱する加熱運転を停止する。そして、食材Fの加熱調理を完了する。食材Fの加熱調理が完了すると、制御装置90は、コントロールパネル60に表示部62の一部として設けられたランプの点灯や、加熱調理器5に設けられた放音器の鳴動によって、食材Fの加熱調理の完了をユーザに報知する。
【0109】
また、制御装置90は、食材Fの加熱調理の開始を指示する操作が入力されたと判定した場合(ステップST1でYESの場合)には、各種のデータの読み込みを行う以降の処理と同時に、加熱庫12内の煙対策制御を実行する。
【0110】
図10に示すように、加熱庫12内の煙対策制御では、まず、制御装置90が、加熱調理の開始時に撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を基準画像500rとして取得する(ステップK-ST1)。そして、制御装置90は、取得した基準画像500rに対して検査領域550を設定する。検査領域550は、三次元計測装置46から入力された食材Fの三次元データに基づいて、撮影画像500のうち食材Fが存在する部分を除いた領域に設定される。
【0111】
続いて、制御装置90は、基準画像500rの検査領域550における色情報(RGB値)に基づいて、検査基準値Vrを算出する(ステップK-ST2)。検査基準値Vrは、上記式(1)により求められる。
【0112】
次に、制御装置90は、加熱調理の開始後に撮影装置50から入力された画像データを示す撮影画像500を比較画像500tとして取得する(ステップK-ST3)。そして、制御装置90は、取得した比較画像500tに対して検査領域550を設定する。比較画像の検査領域550は、基準画像500rの検査領域550に相当する領域に設定される。比較画像500tの検査領域550は、当該比較画像500tを示す画像データと共に三次元計測装置46から入力された食材Fの三次元データに基づいて、改めて設定されてもよい。
【0113】
続いて、制御装置90は、比較画像500tの検査領域550における色情報(RGB値)に基づいて、比較対象値Vtを算出する(ステップK-ST4)。比較対象値Vtは、上記式(2)により求められる。
【0114】
その後、制御装置90は、検査基準値Vrと比較対象値Vtとに基づいて、基準画像500rの検査領域550と比較画像500tの検査領域550との間の色差値Dcを算出する(ステップK-ST5)。色差値Dcは、上記式(3)により求められる。そして、制御装置90は、色差値Dcに基づいて、加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する。このとき、加熱庫12内の煙の濃度レベルは、色差値Dcが大きいほど高く判定される。
【0115】
制御装置90は、判定した煙の濃度レベルが第1レベルに満たないと、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500をそのまま表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。また、制御装置90は、当該画像データを必要に応じて通信部96の機能により情報端末100に送信する。一方、制御装置90は、判定した煙の濃度レベルが第1レベル以上であると、その煙の濃度レベルに応じた処理を実行する(ステップK-ST6~ステップK-ST15)。
【0116】
本例の制御装置90は、判定した煙の濃度レベルが第1レベル~第4レベルのいずれに該当するかを、煙の濃度レベルが高い方から順に判定する。制御装置90は、まず、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第4レベルであるか否かを判定する(ステップK-ST6)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第4レベルであると判定した場合(ステップK-ST6でYESの場合)には、加熱調理器5の加熱運転を停止する(ステップK-ST7)。そして、制御装置90は、加熱庫12内の煙対策制御と共に食材Fの加熱調理を終了する。
【0117】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第4レベルでないと判定した場合(ステップK-ST6でNOの場合)には、続いて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第3レベルであるか否かを判定する(ステップK-ST8)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第3レベルであると判定した場合(ステップK-ST8でYESの場合)には、加熱庫12の扉14をロックする(ステップK-ST9)。
【0118】
そして、制御装置90は、加熱庫12の扉14をロックすると、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500がそのまま表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを受信すると、その画像データに基づいて加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500を表示部102に表示できる。
【0119】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第3レベルでないと判定した場合(ステップK-ST8でNOの場合)には、続いて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBであるか否かを判定する(ステップK-ST10)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBであると判定した場合(ステップK-ST10でYESの場合)には、発煙抑制制御として、加熱装置20の出力を低下させる(ステップK-ST11)。
【0120】
そして、制御装置90は、加熱装置20の出力を低下させると、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500が表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを受信すると、その画像データに基づいて加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500を表示部102に表示できる。
【0121】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBでないと判定した場合(ステップK-ST10でNOの場合)には、続いて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAであるか否かを判定する(ステップK-ST12)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAであると判定した場合(ステップK-ST12でYESの場合)には、ユーザへの通知として、加熱調理器5の表示部62に、加熱庫12内で煙が発生したことを示すアイコンなどの情報を表示する。また、制御装置90は、必要に応じて、加熱庫12内での煙の発生を通知する通知データを通信部96の機能より情報端末100に送信する。情報端末100は、通知データを通信部106で受信すると、その通知データに基づいてアラートを示す文字や記号を表示部102に表示できる。
【0122】
そして、制御装置90は、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500が表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを受信すると、その画像データに基づいて加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500を表示部102に表示できる。
【0123】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAでない、つまり第2レベルでないと判定した場合(ステップK-ST12でNOの場合)には、続いて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルであるか否かを判定する(ステップK-ST14)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルであると判定した場合(ステップK-ST15)には、煙除去制御として、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500に対して煙除去制御としての画像処理を行う(ステップK-ST15)。
【0124】
そして、制御装置90は、当該画像処理が施された煙除去画像700を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として煙除去画像700が表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該煙除去画像700を示す画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを通信部106で受信すると、その画像データに基づいて加熱庫12内の様子を示す画像として煙除去画像700を表示部102に表示できる。
【0125】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルでないと判定した場合(ステップK-ST14でNOの場合)には、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500が表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該画像データを通信部96の機能より情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを通信部106で受信すると、その画像データに基づいて加熱庫12内の様子を示す画像として撮影画像500を表示部102に表示できる。
【0126】
制御装置90は、加熱庫12内の様子を示す画像を加熱調理器5の表示部62に表示させた後に、加熱調理器5による食材Fの加熱調理が終了したか否かを判定する(ステップK-ST17)。制御装置90は、食材Fの加熱調理が終了していないと判定した場合(ステップK-ST17でNOの場合)には、撮影装置50から入力された画像データを示す撮影画像500を比較画像500tとして取得する処理(ステップK-ST3)に戻り、それ以降の判定および処理を再び行う。また、制御装置90は、食材Fの加熱調理が終了したと判定した場合(ステップK-ST17でYESの場合)には、加熱庫12内の煙対策制御を終了する。
【0127】
-加熱調理器による加熱調理の例-
以下に、加熱調理器5を使用した調理例について、食材Fとして鶏肉CKを加熱調理する場合を説明する。
【0128】
加熱庫12内に鶏肉CKが投入され、ユーザの操作により加熱調理の開始を指示する操作がコントロールパネル60で行われると、制御装置90は、上述した制御フローに従い、鶏肉CKの自動的な加熱調理を開始する。制御装置90は、撮影装置50によって撮影された撮影画像500により加熱庫12内の様子をモニタリングする。上述したように、本例の制御装置90は、加熱庫12内の様子をモニタリングする手立てとして、加熱庫12内の状態変化を色差値Dcにより検出する。
【0129】
制御装置90は、色差値Dcの大きさに応じて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベル~第4レベルのいずれかに該当するか否かを判定する。加熱調理器5を使用した鶏肉CKの加熱調理では、加熱庫12内に油煙を主とした煙が発生しても、通常、その煙の濃度レベルは第1レベルまでに収まる。以下には、加熱庫12内の煙の濃度レベルが鶏肉CKの加熱調理中に第1レベルになった場合を例に挙げて説明する。
【0130】
図11に示すように、加熱調理器5で鶏肉CKを加熱調理するときには、加熱調理を開始してから暫くすると、加熱庫12内に煙が発生し、その煙の濃度が加熱調理時間の経過と共に高くなる。加熱庫12内の煙の濃度の経時的な推移としては、例えば、鶏肉CKの加熱調理の途中(
図11に示す例で時刻t2)で最大となり、その後に加熱調理の終了に向けて小さくなる。
図12~
図15には、撮影装置50によって撮影された撮影画像500の例を示す。
【0131】
図12に示す撮影画像500aは、
図11に示す時刻t0に撮影された撮影画像500である。時刻t0は、調理開始時の時刻である。そのため、加熱庫12内には、煙が発生していない。この時刻t0の撮影画像500aでは、鶏肉CKがクリアに見える。時刻t0の撮影画像500aは、基準画像500rに設定される。
【0132】
色差値Dcを算出するために設定される検査領域550は、
図16に示すように、撮影画像500(基準画像500r、比較画像500t)において、鶏肉CKが存在する部分OBを除いてトレイ18の表面が写った領域(
図16で白色で示す領域)に設定される。なお、
図16に示す撮影画像500の外周部分(黒塗りの部分)は、撮影装置50に用いられるカメラのレンズを加熱庫12内に覗かせるために筐体10の内壁に設けられた窓の開口周縁が写った部分である。
【0133】
図13に示す撮影画像500bは、
図11に示す時刻t1に撮影された撮影画像500である。時刻t1は、鶏肉CKの加熱調理中の時刻である。この時刻t1には、加熱庫12内に煙が発生している。そのため、時刻t1の撮影画像500bには、煙が写り込んで、鶏肉CKを含む撮影領域の全体が霞がかったように見える。
【0134】
図14に示す撮影画像500cは、
図11に示す時刻t2に撮影された撮影画像500である。時刻t2は、時刻t1よりも後の鶏肉CKの加熱調理中の時刻である。この時刻t2には、加熱庫12内の煙の濃度レベルがピークに達している。そのため、時刻t2の撮影画像500cには、時刻t1の撮影画像500bよりも煙が濃く写り込んで、鶏肉CKを含む撮影領域の全体がよりいっそう白く霞がかったように見える。
【0135】
図15に示す撮影画像500dは、
図11に示す時刻t3に撮影された撮影画像500である。時刻t3は、時刻t2よりも後の鶏肉CKの加熱調理の終了間際の時刻である。この時刻t3には、加熱庫12内の煙の濃度が調理開始時に近い程度にまで低くなる。そのため、この時刻t3の撮影画像500dでは、鶏肉CKがクリアに見える。
【0136】
図11に示す時刻t1および時刻t2においては、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルである。
図13および
図14に示すような鶏肉CKの加熱調理中の撮影画像500b,500dでは、加熱庫12内の煙の影響で鶏肉CKの焼き色などを判別できず、鶏肉CKの調理状態が視覚的に確認し難いことがある。
【0137】
これに対して、本例の制御装置90は、上述の色差値Dcに基づいて判定した加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルである場合に、撮影画像500に対して、煙除去制御としての画像処理を行う。
図17に一例を示すように、この画像処理では、色差値Dcに基づいて加熱庫12内の煙の濃度に応じた煙画像600を作成し、その煙画像600を用いて撮影画像500に写った煙による鶏肉CKの色への影響を低減するように、撮影画像500の色情報が補正される。そして、制御装置90は、撮影画像500に画像処理を施した煙除去画像700を作成する。
【0138】
図11に示す時刻t1および時刻t2を含め、加熱調理器5を使用した鶏肉CKの加熱調理中に加熱庫12内に煙が第1レベルの濃度で充満している期間において、加熱調理器5の表示部62には、煙除去画像700が表示される。また、そうした煙除去画像700は、ユーザの操作により情報端末100から加熱調理器5に要求指令が送信されると、情報端末100の表示部102にも表示される。ユーザは、加熱調理器5の表示部62または情報端末100の表示部102に表示される煙除去画像700を視認することで、加熱庫12内に煙が発生しても、鶏肉CKの調理状態を良好に確認できる。
【0139】
-実施形態の特徴-
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定し、判定した煙の濃度レベルに応じて煙除去制御を行う。煙除去制御が行われると、撮影装置50によって撮影される画像に写る加熱庫12内の煙が除去される。それにより、加熱庫12内を撮影した画像での食材Fの視認性を良くすることができる。ここで、煙除去制御は、加熱庫12内の煙をその発生後に除去するための制御であり、加熱庫12内での食材Fの加熱条件を制限しない。よって、加熱調理器5において、加熱庫12内を撮影した画像での食材Fの視認性を良くするのに、食材Fの調理性が損なわれるのを抑制できる。
【0140】
この実施形態の加熱調理器5では、撮影装置50が検煙装置に兼用される。これによれば、撮影装置50とは別に検煙装置を備えずに済み、加熱調理器5の部品点数を削減できる。また、制御装置90は、撮影装置50によって撮影された撮影画像500に基づいて加熱庫12内の煙の濃度レベルを判定する。加熱庫12内の煙の濃度レベルを撮影画像500から判定することは、加熱庫12内の撮影画像500での食材Fの視認性を良くするのに合理的である。
【0141】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内の煙の濃度レベルの判定を、食材Fの加熱調理の開始時に撮影された撮影画像500を基準画像500rとし、食材Fの加熱調理中に撮影された撮影画像500を比較画像500tとして、それら基準画像500rと比較画像500tとを比較することで行う。このようにすると、基準画像500rには、撮影装置50に用いられるカメラのレンズに付いた塵埃や汚れなどが反映される。よって、加熱庫12内の煙の濃度レベルを精度よく判定できる。
【0142】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が煙除去制御として画像処理を行う。当該画像処理では、撮影装置50により撮影された撮影画像500に対して、当該画像500に写った煙による食材Fの色への影響を低減するように色情報を補正する。画像処理は、加熱庫12内での食材Fの加熱条件を制限しない。したがって、本例の煙除去制御は、加熱調理器5による食材Fの調理性と、加熱庫12内の撮影画像500での食材Fの視認性とを両立させるのに適している。
【0143】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内の煙の濃度に対応する評価値として色差値Dcを算出する。この色差値Dcが高くなるほど、画像処理での色情報の補正量が大きくなる。これによれば、撮影画像に写った食材Fの色情報が加熱庫12内の煙の濃度に応じて補正される。そうすることで、調理中の食材Fの焼き色などの色合いを撮影画像500で良好に見ることができる。このことは、食材Fの調理状態を確認するのに有利である。
【0144】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が発煙抑制制御を行う。発煙抑制制御が行われると、加熱装置20による食材Fの加熱条件が調整され、加熱庫12内での煙の発生が抑制される。発煙抑制制御は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBである場合に行われる。加熱庫内の煙の濃度レベルについて、発煙抑制制御を行う第2レベルのうちのレベルBは、煙除去制御を行う第1レベルよりも高い。そのため、煙除去制御は、発煙抑制制御よりも優先して行われる。よって、加熱庫12内の煙が煙除去制御のみでは撮影画像500に写る煙を好適に除去できないような濃度レベルにある場合に限って、発煙抑制制御を行える。これにより、食材Fの加熱条件をなるべく制限しないで、加熱庫12内の撮影画像500での食材Fの視認性を良くすることができる。
【0145】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が、発煙抑制制御として加熱装置20の出力を低下させる。加熱庫12内で食材Fの加熱中に発生する煙は、主に油脂と水分が混ざり合い高温に加熱された際に発生する油煙である。油煙の発生は、加熱装置20の出力を低下させることで抑制される。よって、加熱装置20の出力を低下させることは、発煙抑制制御に適している。
【0146】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内での煙の発生をユーザに通知する。この通知は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAである場合に行われる。加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、当該通知を行う第2レベルのうちのレベルAは、煙除去制御を行う第1レベルよりも高い。よって、加熱庫12内の煙が煙除去制御のみでは撮影画像500に写る煙を好適に除去できない濃度レベルにあり、加熱庫12内の環境が煙で酷いときに限って、当該通知を出すことができる。このことは、ユーザに注意を促すアラートとして有効である。
【0147】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内での煙の発生を示す通知データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。これによれば、ユーザは、加熱調理器5から離れていても、情報端末100で受信した通知データに基づき、加熱庫12内での煙の発生を認知できる。情報端末100は、可搬性のあるモバイル機器であるので、利便性が高い。
【0148】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12の扉14をロックする。この扉14のロックは、制御装置90が判定した煙の濃度レベルが第3レベルである場合に行われる。加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、扉14をロックする第3レベルは、発煙抑制制御を行う第2レベルのうちのレベルBよりも高い。そのため、発煙抑制制御は、加熱庫12の扉のロックよりも優先して行われる。これにより、発煙抑制制御を行っても加熱庫12内の煙を低減できないときに限って、加熱庫12の扉14がロックされる。そのことで、加熱調理器5の使用性をなるべく損なわないようにしつつ、加熱庫12内から出てきた煙によって室内が汚れるのを抑制できる。
【0149】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が加熱庫12内を加熱する加熱運転を停止する。この加熱運転の停止は、制御装置90が判定した煙の濃度レベルが第4レベルである場合に行われる。加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、加熱運転を停止する第4レベルは、扉14をロックする第3レベルよりも高い。そのため、加熱庫12の扉14のロックは、加熱調理器5の運転の停止よりも優先して行われる。これにより、加熱庫12内の煙が撮影装置50の視界を殆ど遮るような濃度レベルにあるなど、加熱庫12内の環境が異常な状態と判断されるときに限って、加熱運転を停止できる。そのことで、加熱調理器5の信頼性をなるべく損なわないようにしつつ、加熱調理器5の異常な状態が進展することを回避できる。
【0150】
この実施形態の加熱調理器5では、表示部62を備える。表示部62には、撮影画像500が表示される。表示部62に表示される加熱庫内の撮影画像500は、加熱庫12内に煙が第1レベルの濃度レベルで存在するときに、煙除去制御により煙が除去された煙除去画像700とされる。したがって、ユーザは、加熱庫12内で食材Fの加熱調理中に油煙などの煙が発生しても、表示部62を見ることで食材Fの調理状態を確認できる。
【0151】
この実施形態の加熱調理器5では、制御装置90が通信部96を有する。通信部96は、撮影画像を示す画像データを情報端末100に送信する。情報端末100が画像データに基づいて撮影画像500を表示部102に表示すると、ユーザは、加熱調理器5から離れていても、情報端末100で食材Fの調理状態を確認できる。そして、情報端末100で表示される加熱庫12内の撮影画像500は、加熱庫12内に煙が第1レベルの濃度レベルで存在するときに、煙除去制御により煙が除去された煙除去画像700とされる。したがって、ユーザは、加熱庫12内で油煙などの煙が発生しても、情報端末100で食材Fの調理状態を確認できる。情報端末100は、可搬性のあるモバイル機器であるので、利便性が高い。
【0152】
-変形例-
本例の制御装置90は、煙除去制御として、画像処理の他に、排気ファン38の回転数を高くする。排気機構35では、排気ファン38の回転数が高くなるほど、排気通路37を流れる空気の流量が大きくなる。そのことで、加熱庫12内から排気通路37を通じて外部に排出される空気の排気量が多くなる。
【0153】
本例の制御装置90が判定する加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、
図18に示すように、第1レベルは、レベルAおよびレベルBからなる2つのレベルに分けられる。当該レベルAは、第1レベルにおいて、煙の濃度レベルが相対的に低いレベルである。当該レベルBは、第1レベルにおいて、煙の濃度レベルが相対的に高いレベルである。
【0154】
本例の制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルAである場合に、煙除去制御としての画像処理を行う。そして、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBである場合に、煙除去制御として、排気ファン38の回転数を高める。ここでいう「排気ファン38の回転数を高める」とは、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベル未満であって加熱庫12内の温度が同じときの通常時の排気ファン38の回転数よりも高くすることを意味する。
【0155】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBである場合に、例えば、排気ファン38の回転数を最大回転数とする。排気ファン38の回転数が高められると、加熱庫12内からの空気の排気量が増えるため、加熱庫12内の煙が物理的に除去される。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルA以下になったときに、排気ファン38の回転数を通常の回転数に戻す。
【0156】
具体的には、
図19に示すように、加熱庫12内の煙対策制御では、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAでないと判定した場合(ステップK-ST12でNOの場合)に、続いて、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBであるか否かを判定する(ステップK-ST14b)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBであると判定した場合(ステップK-ST14bでYESの場合)には、煙除去制御として、排気ファン38の回転数を高める。
【0157】
そして、制御装置90は、排気ファン38の回転数を高めると、撮影装置50から入力された画像データが示す撮影画像500を加熱調理器5の表示部62に表示させる(ステップK-ST16)。これにより、加熱調理器5の表示部62には、加熱庫12内の様子を示す画像として、煙が排気により除去された状態での撮影画像500が表示される。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令に応じて、当該画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。情報端末100は、画像データを受信すると、その画像データに基づいて、煙が排気により除去された状態での撮影画像500を表示部102に表示できる。
【0158】
制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBでないと判定した場合(ステップK-ST14bでNOの場合)には、続いて、加熱庫12内の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルAであるか否かを判定する(ステップK-ST14a)。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBであると判定した場合(ステップK-ST14bでYESの場合)には、煙除去制御としての画像処理を行う。その後の判定および処理は、上記実施形態と同様である。
【0159】
また、制御装置90が、加熱庫12内の煙の濃度レベルを第1レベルのうちのレベルAであると判定した場合(ステップK-ST14bでNOの場合)には、上記実施形態で加熱庫12内の煙の濃度レベルを第1レベルであると判定した場合と同様に、加熱調理器5の表示部62に煙除去画像700を表示すると共に、必要に応じて煙除去画像700を示す画像データを通信部96の機能により情報端末100に送信する。
【0160】
本例の加熱調理器5では、制御装置90が煙除去制御として排気ファン38の回転数を高める。排気ファン38の回転数が高められると、加熱庫12から排気通路37に誘引される空気量が増加し、排気量が増大する。これにより、撮影画像500に写る加熱庫12内の煙が除去される。そうした排気ファン38の回転数アップは、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルのうちのレベルBである場合に行われる。加熱庫12内の煙の濃度レベルについて、排気ファン38の回転数アップを行う第1レベルのうちのレベルBは、加熱庫12内での煙の発生をユーザに通知する第2レベルのうちのレベルAよりも低い。そのため、煙除去制御としての排気ファン38の回転数アップは、ユーザへの通知よりも優先して行われる。よって、加熱庫12内の煙が煙除去制御のみでは除去できないような濃度レベルにある場合に限って、ユーザへの通知を行える。
【0161】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、制御装置90が加熱庫12内の煙の濃度レベルが第1レベルであると判定した場合には、常時、煙除去制御が行われるとしたが、これに限らない。制御装置90は、ユーザが加熱調理器5の表示部62を見るときだけ煙除去制御を行ってもよい。例えば、制御装置90は、コントロールパネル60で加熱庫12内の撮影画像500を表示させることを要求する操作を受け付けたときに、煙除去制御を行ってもよい。また、制御装置90は、情報端末100からの要求指令を通信部96で受信したときに、煙除去制御を行ってもよい。
【0162】
上記実施形態では、制御装置90が加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルBである場合に、発煙抑制制御を行うとしたが、これに限らない。制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルであればレベルAおよびレベルBのどちらに属していようと、発煙抑制制御を行ってもよい。例えば、制御装置90は、加熱庫12内の煙の濃度レベルが第2レベルのうちのレベルAである場合に、加熱庫12内での煙の発生をユーザに通知すると共に、発煙抑制制御を行ってもよい。
【0163】
上記実施形態では、制御装置90が、記憶装置70から読み込んだ相関データと色差値Dcに基づいて煙画像600を作成するとしたが、これに限らない。記憶装置70には、加熱庫12内の煙の濃度に応じた複数の煙画像600そのものが記憶されてもよい。この場合、制御装置90は、記憶装置70から複数の煙画像600を読み込んで、算出した色差値Dcに基づいて、加熱庫12内の煙の濃度に応じた煙画像600を決定し、決定した煙画像600を用いて撮影画像500から煙除去画像700を作成してもよい。
【0164】
上記実施形態では、撮影装置50が検煙装置を兼ねるとしたが、これに限らない。加熱調理器5は、撮影装置50とは別に、加熱庫12内の煙を検出するための検煙装置を備えてもよい。この場合、検煙装置としては、例えば、空気中の微粒子を計測するパーティクルカウンターや、気体の成分を分析する成分分析器などを用いることができる。検煙装置の出力値は、加熱庫12内の煙の濃度に対応する評価値として利用される。
【0165】
上記実施形態では、食材温度検出器40が食材Fの表面温度を非接触で計測し、制御装置90が食材Fの表面温度から食材Fの内部温度を推定する場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。食材温度検出器40は、食材Fの内部温度を直接検出するように構成されてもよい。例えば、食材温度検出器40は、
図20に示すような温度プローブ42を有してもよい。温度プローブ42は、食材Fの内部に差し込まれて食材Fの内部温度を測定するためのものである。
【0166】
上記実施形態では、加熱装置20が複数のヒータ、具体的には上部ヒータ22、下部ヒータ24およびコンベクションヒータ26を有するとしたが、これに限らない。加熱装置20は、上部ヒータ22およびコンベクションヒータ26のみで構成されてもよく、上部ヒータ22および下部ヒータ24のみで構成されてもよい。また、加熱装置20は、1つのヒータにより構成されてもよい。
【0167】
上記実施形態では、制御装置90が、三次元計測装置46から入力された三次元データと、撮影装置50から入力された画像データとに基づいて、加熱庫12内に配置された食材Fの種類とサイズを認識するとしたが、これに限らない。加熱調理器5は、調理対象とする食材Fの種類を指定する操作をコントロールパネル60で受け付けるように構成されてもよい。また、加熱調理器5は、調理対象とする食材Fのサイズを指定する操作をコントロールパネル60で受け付けるように構成されてもよい。
【0168】
上記実施形態では、食材画像および加熱調理条件は、加熱調理器5に内蔵された記憶装置70に記憶されるとしたが、これに限らない。食材画像および加熱調理条件は、インターネット上のクラウドサーバに保存され、制御装置90がインターネットにアクセスしてクラウドサーバから食材画像および加熱調理条件を適宜取得してもよい。
【0169】
上記実施形態では、本開示の技術に係る加熱調理器5がオーブンである場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。オーブンは加熱調理器5の一例に過ぎず、本開示の技術は、コンロなどに附帯するグリルや電子レンジなど、他の加熱調理器にも適用可能である。
【0170】
以上のように、本開示の技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態について、本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲においてさらに色々な変形が可能なこと、またそうした変形も本開示の技術の範囲に属することは、当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0171】
以上説明したように、本開示の技術は、加熱調理器について有用である。
【符号の説明】
【0172】
F 食材
5 加熱調理器
12 加熱庫
14 扉
20 加熱装置
50 撮影装置(検煙装置)
62 表示部
90 制御装置
96 通信部
100 情報端末(外部機器)
500 撮影画像
500r 基準画像
500t 比較画像