(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084531
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】粘着シート、粘着シートの製造方法および印刷物
(51)【国際特許分類】
C09J 7/24 20180101AFI20230612BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230612BHJP
B41M 5/52 20060101ALI20230612BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230612BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230612BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230612BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20230612BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
B41M5/52 100
B32B27/30 101
B32B27/18 Z
B32B27/00 M
G09F3/00 E
G09F3/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198771
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】本橋 望
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀平
【テーマコード(参考)】
2H186
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
2H186AA14
2H186BA11
2H186BB05X
2H186BB11X
2H186BB21X
2H186BB30X
2H186BB31X
2H186BB36X
2H186BC73X
2H186CA03
2H186CA18
2H186DA07
4F100AH06A
4F100AH06H
4F100AH10A
4F100AH10H
4F100AK15A
4F100AK25B
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4F100CA18A
4F100CA18H
4F100HB31
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA05
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA01
(57)【要約】
【課題】耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による印刷適性に優れる粘着シートを提供すること、前記粘着シートを好適に製造することができる粘着シートの製造方法を提供すること、また、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による滲みの少ない優れた印刷品質の印刷部を有する印刷物を提供すること。
【解決手段】本発明の粘着シートは、インクジェット法による印刷に用いられる粘着シートであって、基材と、当該基材に接触して設けられた粘着剤層とを有し、前記基材が、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む材料で構成されていることを特徴とする。前記レベリング剤は、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤およびフッ素系レベリング剤よりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法による印刷に用いられる粘着シートであって、
基材と、当該基材に接触して設けられた粘着剤層とを有し、
前記基材が、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む材料で構成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記レベリング剤が、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤およびフッ素系レベリング剤よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記基材は、剥離処理が施されていない支持体の表面に、前記ポリ塩化ビニルおよび前記レベリング剤を含む液状の組成物を塗工・乾燥することにより形成されたものである請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層の前記基材と接触する面とは反対側の面が、剥離ライナーで被覆されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ポリ塩化ビニルの平均重合度が1000以上2000以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材の厚さが5μm以上200μm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記基材中における、前記ポリ塩化ビニル:100質量部に対する前記レベリング剤の含有量が0.5質量部以上20.0質量部以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む液状の組成物を剥離処理が施されていない支持体上に塗工する塗工工程と、
前記支持体上に塗工された前記組成物を固化させ、基材を形成する固化工程と、
前記支持体上に形成された前記基材の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを有することを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項9】
前記組成物は、前記ポリ塩化ビニルおよび前記レベリング剤に加えて、さらに、有機溶媒を含んでいる請求項8に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の粘着シートの前記基材上に、インクジェット法による印刷部が形成されていることを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、粘着シートの製造方法および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候性、曲面や凹凸を有する表面への形状追従性等に優れていること等から、従来から、広告、看板等の装飾用の粘着シートとして、ポリ塩化ビニル製のシートが広く用いられている。
【0003】
広告、看板等の用途では、比較的短期間で交換することが多く、また、小ロットでの生産が求められることがある。
【0004】
一方、インクジェット法による印刷は、オンデマンド性に優れ、少量多品目の印刷物の製造に適するという特性を有している。
【0005】
装飾用の粘着シートへの印刷にも、インクジェット法に適用されることが多くなってきている。
【0006】
しかしながら、従来のポリ塩化ビニルに対して、インクジェット法による印刷を施した場合、インクジェット法による印刷が、滲みにより不鮮明になりやすいという問題があった。
【0007】
インクジェット法による印刷を施した際における上記のような問題を解決すること等を目的に、所定の材料で構成されたインク受理層を設けたシート材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、このようなシート材料においても、インクジェット法による印刷適性を十分に優れたものとすることができなかった。
また、前記の通り、広告、看板等の装飾用の粘着シートには曲面や凹凸を有する表面への形状追従性が求められているため、基材の柔軟性や延伸性が必要となる。特許文献1のシート材料は、柔軟性や延伸性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による印刷適性に優れる粘着シートを提供すること、前記粘着シートを好適に製造することができる粘着シートの製造方法を提供すること、また、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による滲みの少ない優れた印刷品質の印刷部を有する印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) インクジェット法による印刷に用いられる粘着シートであって、
基材と、当該基材に接触して設けられた粘着剤層とを有し、
前記基材が、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む材料で構成されていることを特徴とする粘着シート。
【0012】
(2) 前記レベリング剤が、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤およびフッ素系レベリング剤よりなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)に記載の粘着シート。
【0013】
(3) 前記基材は、剥離処理が施されていない支持体の表面に、前記ポリ塩化ビニルおよび前記レベリング剤を含む液状の組成物を塗工・乾燥することにより形成されたものである上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
【0014】
(4) 前記粘着剤層の前記基材と接触する面とは反対側の面が、剥離ライナーで被覆されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の粘着シート。
【0015】
(5) 前記ポリ塩化ビニルの平均重合度が1000以上2000以下である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の粘着シート。
【0016】
(6) 前記基材の厚さが5μm以上200μm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の粘着シート。
【0017】
(7) 前記基材中における、前記ポリ塩化ビニル:100質量部に対する前記レベリング剤の含有量が0.5質量部以上20.0質量部以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の粘着シート。
【0018】
(8) ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む液状の組成物を剥離処理が施されていない支持体上に塗工する塗工工程と、
前記支持体上に塗工された前記組成物を固化させ、基材を形成する固化工程と、
前記支持体上に形成された前記基材の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程とを有することを特徴とする粘着シートの製造方法。
【0019】
(9) 前記組成物は、前記ポリ塩化ビニルおよび前記レベリング剤に加えて、さらに、有機溶媒を含んでいる上記(8)に記載の粘着シートの製造方法。
【0020】
(10) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の粘着シートの前記基材上に、インクジェット法による印刷部が形成されていることを特徴とする印刷物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による印刷適性に優れる粘着シートを提供すること、前記粘着シートを好適に製造することができる粘着シートの製造方法を提供すること、また、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による滲みの少ない優れた印刷品質の印刷部を有する印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【
図2】本発明の粘着シートの製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【
図3】本発明の印刷物の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【
図4】本発明の印刷物をラミネートシートで被覆した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]粘着シート
まず、本発明の粘着シートについて説明する。
【0024】
図1は、本発明の粘着シートの好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
粘着シート10は、インクジェット法による印刷に用いられる粘着シート10であって、基材11と、基材11に接触して設けられた粘着剤層12とを有する。そして、基材11は、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む材料で構成されている。
【0025】
これにより、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による印刷適性に優れる粘着シート10を提供することができる。また、基材11と粘着剤層12との密着性を特に優れたものとすることができる。また、造膜性、柔軟性等の特性も優れたものとすることができる。また、後に詳述するように、粘着シート10の製造時において、支持体300上に形成された基材11を好適に剥離することができ、基材11の表面(支持体300と接触していた面)での不本意な荒れや、基材11の不本意な伸び等の発生を効果的に防止することができ、粘着シート10の信頼性、歩留まりを優れたものとすることができる。
【0026】
これに対し、上記のような構成を満たさない場合には、このような優れた効果は得られない。
【0027】
例えば、基材がポリ塩化ビニルを含まない材料で構成されたものであると、粘着シート全体としての、耐候性、曲面や凹凸を有する表面への形状追従性、造膜性、柔軟性等を十分に優れたものとすることが困難となる。
【0028】
また、基材がレベリング剤を含まない材料で構成されたものであると、インクジェット法による印刷適性を十分に優れたものとすることが困難となる。より具体的には、インクジェット法による印刷に適用した場合に、インクが濡れ広がりすぎ、画像が滲んでしまい、鮮明な画像を形成することが困難となる。また、粘着シートの製造時において、支持体上に液状の組成物を塗布・乾燥することにより基材を形成した場合に、形成された基材を支持体から好適に剥離することが困難となり、基材の表面(支持体と接触していた面)での不本意な荒れや、基材の不本意な伸び等が生じやすくなる。また、粘着シートの歩留まりも著しく低下する。
【0029】
[1-1]基材
基材11は、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む材料で構成されたものであり、インクジェット法による印刷が施される部位である。
【0030】
[1-1-1]ポリ塩化ビニル
ポリ塩化ビニルは、耐候性に優れる。また、後述する可塑剤と併用することで、柔軟性、形状追従性等に優れるという特徴を有する。
【0031】
ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルをモノマー成分とする重合体である。ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルに加えて他のモノマー成分を含んでいてもよいが、ポリ塩化ビニル中における塩化ビニル以外のモノマー成分の含有率は、5質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下であるのがより好ましく、0質量%であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0032】
基材11中に含まれるポリ塩化ビニルの平均重合度は、500以上5000以下であるのが好ましく、700以上3000以下であるのがより好ましく、1000以上2000以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
これにより、粘着シート10全体としての耐候性や柔軟性、形状追従性等を、いずれも、より優れたものとすることができる。また、ポリ塩化ビニルとレベリング剤との親和性、相溶性をより優れたものとすることができ、前述したようなポリ塩化ビニルとレベリング剤を共存させることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0034】
平均重合度は、例えば、JIS K 6720-2:1999に準拠する方法により測定することができる。
基材11中におけるポリ塩化ビニルの含有率は、50質量%以上であるのが好ましい。
【0035】
[1-1-2]レベリング剤
レベリング剤は、粘着シート10において、主に、インクジェット法による印刷適性を向上させる機能を有している。また、レベリング剤は、後に詳述するような方法で粘着シート10を製造する場合において、支持体300からの基材11の剥離のしやすさを向上させる機能を有している。これにより、基材11の表面(支持体300と接触していた面)での不本意な荒れや、基材11の不本意な伸び等の発生を効果的に防止することができ、粘着シート10の信頼性、歩留まりを優れたものとすることができる。特に、支持体300として剥離処理が施されていないものを用いた場合でも、このような効果を得ることができる。このように支持体300として剥離処理が施されていないものを用いることにより、支持体300と接触していた基材11に剥離剤が移行するといった問題の発生を防止することができる。
【0036】
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、ビニル系レベリング剤、アセチレングリコール系レベリング剤等が挙げられるが、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤およびフッ素系レベリング剤よりなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0037】
シリコーン系レベリング剤としては、例えば、BYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-310、BYK-315、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-344、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、1711、1751N、1761、LS-001、LS-050(以上、楠本化成社製、DISPARLONシリーズ)、グラノール100、グラノール115、グラノール200、グラノール400、グラノール410、グラノール440、グラノール435、グラノール450、グラノール482、グラノールB-1484、ポリフローATF-2(以上、TEGO社製)等の市販品の固形分等が挙げられる。
【0038】
アクリル系レベリング剤としては、例えば、BYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-392(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、OX-880EF、OX-881、OX-883、OX-883HF、OX-70、OX-77EF、OX-60、OX-710、OX-720、OX-720EF、OX-750HF、LAP-10、LAP-20、LAP-30、1970、230、LF-1980、LF-1982、LF-1983、LF-1984、LF-1985、LHP-95、LHP-96(以上、楠本化成社製、DISPARLONシリーズ)、ポリフローNo.3、ポリフローNo.7、ポリフローNo.50E,ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.55、ポリフローNo.64、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.S、ポリフローNo.90、ポリフローNo.90D-50、ポリフローNo.95、ポリフローNo.300、ポリフローNo.460、ポリフローWS、ポリフローWS-30、ポリフローWS-314(以上、共栄社化学社製)等の市販品の固形分等が挙げられる。
【0039】
フッ素系レベリング剤としては、例えば、フッ素変性ポリマーであるBYK-340、BYK-3441(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、S-242、S-243、S-420、S-431(以上、AGCセイミケミカル社製)等の市販品の固形分等が挙げられる。
【0040】
ビニル系レベリング剤としては、例えば、LHP-90、LHP-91(以上、楠本化成社製、DISPARLONシリーズ)等の市販品の固形分等が挙げられる。
【0041】
基材11中における、ポリ塩化ビニル:100質量部に対するレベリング剤の含有量は、0.5質量部以上20.0質量部以下であるのが好ましく、1.0質量部以上18.0質量部以下であるのがより好ましく、2.5質量部以上15.0質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0042】
これにより、前述した効果がより顕著に発揮されるとともに、インクジェット法による印刷を施した際のインクの弾きがより効果的に防止される。このように、インクの滲みおよび弾きがより高いレベルで防止されることから、インクジェット法による印刷の品質をより優れたものとすることができる。
【0043】
[1-1-3]可塑剤
基材11は、前述したポリ塩化ビニル、レベリング剤以外に可塑剤を含む。
可塑剤は、通常、柔軟性付与のために用いられる。
【0044】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-n-オクチル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸エステル系可塑剤;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等のアジピン酸系可塑剤;フタル酸系ポリエステル等のポリエステル系可塑剤、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ化アマニ油、エポキシ化ステアリン酸ブチル等のエポキシ系可塑剤等が挙げられる。
【0045】
ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量は、2000以上6000以下であるのが好ましい。
【0046】
可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対し、25質量部以上40質量部以下であるのが好ましく、27質量部以上35質量部以下であるのがより好ましい。
【0047】
[1-1-4]着色剤
基材11は、着色剤を含んでいてもよい。
【0048】
着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができるが、耐光性等の観点から、顔料が好ましい。
【0049】
基材11を白色のものとする場合、着色剤(顔料)としては、例えば、酸化チタンを好適に用いることができる。
【0050】
[1-1-5]その他の成分
基材11は、前述した成分以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ポリ塩化ビニル以外の樹脂材料、セルロース、セルロース誘導体、各種フィラー、分散剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、消臭剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、架橋剤、重合開始剤、定着剤、凝集剤等が挙げられる。
【0051】
ただし、基材11中におけるポリ塩化ビニル、レベリング剤、可塑剤、着色剤以外の成分の含有量は、ポリ塩化ビニル100質量部に対して、10質量部以下であるのが好ましく、5質量部以下であるのがより好ましく、3質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0052】
[1-1-6]基材のその他の条件
基材11は、基材全体が十分な柔軟性、曲面追従性が得られる限り、その全体が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、互いに異なる組成の部位を有するものであってもよい。例えば、基材11は、その厚さ方向に組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよいし、複数の層を有する積層体であってもよい。また、基材11の面内の異なる部位で異なる組成を有していてもよい。
【0053】
基材11の厚さは、5μm以上200μm以下であるのが好ましく、20μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
【0054】
これにより、粘着シート10の柔軟性と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。また、粘着シート10の被着体への貼着の際の取り扱いのしやすさをより優れたものとすることができる。また、後に詳述するような方法で粘着シート10を製造する場合において、支持体300からの基材11の剥離をより好適に行うことができる。
【0055】
基材11は、いかなる方法で形成されたものであってもよいが、例えば、前述した成分を含む液状の組成物を用いたキャスト法により好適に形成することができる。キャスト法で形成することで、貼付後の不本意な熱収縮を抑制することができる。
【0056】
特に、基材11は、剥離処理が施されていない支持体300の表面に、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む液状の組成物を塗工・乾燥し、支持体300を剥離することにより形成されたものであるのが好ましい。
【0057】
これにより、支持体300と接触していた基材11に剥離剤が移行するといった問題の発生を防止することができ、インクジェット法により印刷部30を形成する場合におけるインクの弾きをより効果的に防止することができる。その結果、印刷部30の印刷品質をより優れたものとすることができる。
【0058】
なお、基材11の形成方法、粘着シート10の製造方法については、後に詳細に説明する。
【0059】
[1-2]粘着剤層
粘着剤層12は、粘着剤を含む材料で構成されており、被着体に貼着する際に被着体と接触する部位である。
【0060】
[1-2-1]粘着剤
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0061】
これらの中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤は、一般に、粘着性を与える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と官能基を含有する単量体との共重合体を、架橋剤により架橋したものである。
【0062】
粘着性を与える(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0063】
官能基を含有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0064】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物等が挙げられる。
【0065】
[1-2-2]その他の成分
粘着剤層12は、上述した粘着剤以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料等の着色剤、各種フィラー、界面活性剤、分散剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、酸化防止剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤、消臭剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、架橋剤、重合開始剤が挙げられる。
【0066】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン、ロジンフェノール樹脂、およびそのエステル化合物、水添ロジンエステル等のロジン系樹脂、テルペン低重合体、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂等の粘着付与剤等を使用できる。また、より好ましくは、水添ロジンエステルおよび/または芳香族変性テルペン樹脂を使用することができる。
【0067】
ただし、粘着剤層12中における粘着剤以外の成分の含有率は、15質量%以下であるのが好ましい。
【0068】
[1-2-3]粘着剤層のその他の条件
粘着剤層12は、その全体が実質的に均一な組成を有するものであってもよいし、互いに異なる組成の部位を有するものであってもよい。例えば、粘着剤層12は、その厚さ方向に組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよいし、複数の層を有する積層体であってもよい。また、粘着剤層12の面内の異なる部位で異なる組成を有していてもよい。
【0069】
粘着剤層12の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
【0070】
[1-3]粘着シートの全体構成
粘着シート10の厚さは、10μm以上300μm以下であるのが好ましく、40μm以上160μm以下であるのがより好ましい。
【0071】
これにより、粘着シート10の柔軟性と耐久性とをより高いレベルで両立することができる。また、粘着シート10の被着体への貼着の際の取り扱いのしやすさをより優れたものとすることができる。
【0072】
[1-4]剥離ライナー
未使用の粘着シート10の粘着剤層12の表層、すなわち、粘着剤層12の基材11と接触する面とは反対側の面は、
図1に示されているように、剥離ライナー20によって覆われているのが好ましい。
【0073】
これにより、未使用の粘着シート10が取り回しやすくなるとともに、被着体に貼付される前の粘着剤層12を好適に保護できる。
【0074】
剥離ライナー20としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアリレート等の各種樹脂よりなるシートや、ポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンラミネート紙、クレーコート紙、樹脂コート紙、グラシン紙、上質紙等の各種紙材を基材とし、この基材の粘着剤層12との接触面に、必要により剥離処理が施されたもの等を用いることができる。
【0075】
剥離処理としては、例えば、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等の剥離剤よりなる剥離剤層の形成等が挙げられる。
【0076】
[2]粘着シートの製造方法
次に、本発明の粘着シートの製造方法について説明する。
【0077】
図2は、本発明の粘着シートの製造方法の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0078】
図2に示す実施形態の製造方法は、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む液状の組成物を剥離処理が施されていない支持体300上に塗工する塗工工程(1a)と、支持体300上に塗工された前記組成物を固化させ、基材11を形成する固化工程(1b)と、支持体300上に形成された基材11の表面に粘着剤層12を形成する粘着剤層形成工程(1c)とを有する。
【0079】
これにより、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による印刷適性に優れる粘着シート10を好適に製造することができる粘着シート10の製造方法を提供することができる。また、基材11と粘着剤層12との密着性を特に優れたものとすることができる。また、造膜性、柔軟性等の特性も優れたものとすることができる。また、支持体300上に形成された基材11を好適に剥離することができ、基材11の表面(支持体300と接触していた面)での不本意な荒れや、基材11の不本意な伸び等の発生を効果的に防止することができ、粘着シート10の信頼性、歩留まりを優れたものとすることができる。
【0080】
[2-1]塗工工程
塗工工程では、ポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含む液状の組成物11’を剥離処理が施されていない支持体300上に塗工する(
図2中の(1a)参照)。
【0081】
組成物11’は、少なくともポリ塩化ビニルおよびレベリング剤を含むものであればよいが、これらに加えて、さらに、可塑剤、有機溶媒を含んでいるのが好ましい。
【0082】
これにより、組成物11’の流動性をより好適なものとすることができ、塗工工程をより好適に行うことができる。特に、塗工工程において、組成物11’を過剰に加熱しなくても十分な流動性を確保することができ、組成物11’の構成成分の不本意な変性、劣化等をより効果的に防止することができ、製造される粘着シート10の信頼性をより優れたものとすることができるとともに、省エネルギー等の観点からも好ましい。
【0083】
組成物11’を構成する有機溶媒としては、例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、石油留分からなる市販の混合溶剤を用いてもよい。
【0084】
組成物11’が有機溶媒を含むものである場合、組成物11’中における有機溶媒の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上85質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上80質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0085】
支持体300としては、いかなるものを用いてもよいが、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料で構成されたフィルム等を好ましく用いることができる。
【0086】
特に、支持体300は、剥離剤による剥離処理が施されていないものであるのが好ましい。
【0087】
これにより、支持体300と接触していた基材11に剥離剤が不均一に移行するといった問題の発生を防止することができ、製造された粘着シート10にインクジェット法により印刷部30を形成する場合におけるインクの弾きをより効果的に防止することができる。その結果、印刷部30の印刷品質をより優れたものとすることができる。
【0088】
[2-2]固化工程
固化工程では、支持体300上に塗工された組成物11’を固化させ、基材11を形成する(
図2の(1b)参照)。
【0089】
組成物11’が有機溶媒を含むものである場合、本工程は、例えば、加熱、減圧等により、支持体300上に塗工した組成物11’から有機溶媒を揮発させた後、塩化ビニルを加熱溶融しゲル化させることにより行うことができる。加熱溶融温度は、170℃以上220℃以下であるのが好ましく、180℃以上200℃以下であるのがより好ましい。
【0090】
また、組成物11’が有機溶媒を含まずに、塗工工程を組成物11’を溶融させた状態で行う場合には、本工程(固化工程)は冷却することにより行うことができる。
【0091】
[2-3]粘着剤層形成工程
粘着剤層形成工程では、支持体300上に形成された基材11の表面に粘着剤層12を形成する(
図2の(1c)参照)。
【0092】
粘着剤層12は、例えば、基材11の表面(支持体300との接触面とは反対側の表面)に液状の粘着剤組成物を付与し希釈溶媒を乾燥させることにより形成してもよいし、液状の粘着剤組成物を剥離ライナー20上に付与し希釈溶媒を乾燥させ、これを基材11の表面(支持体300との接触面とは反対側の表面)に転写することにより形成してもよい。
【0093】
本工程により、支持体300上に、基材11と粘着剤層12との積層体である粘着シート10が形成される。
【0094】
[2-4]剥離工程
本実施形態では、形成された基材11と粘着剤層12と剥離ライナー20との積層体を支持体300から剥離する剥離工程をさらに有している(
図2の(1d)参照)。本剥離工程は、粘着剤層形成工程後から印刷前までの間であればいつ行っても構わない。
【0095】
これにより、基材11と粘着剤層12の積層体である粘着シート10の粘着剤層12が剥離ライナー20で保護された積層体が得られる。
【0096】
このように、粘着シート10の粘着剤層12が剥離ライナー20で保護された状態で、支持体300から剥離することにより、剥離工程やその後の処理等において、不本意に粘着剤層12が汚損したり、粘着シート10が不本意な部位に付着してしまうことを効果的に防止することができる。
【0097】
[3]印刷物
次に、本発明の印刷物について説明する。
【0098】
図3は、本発明の印刷物の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。
図4は、本発明の印刷物をラミネートシートで被覆した状態の一例を示す模式的な縦断面図である。
【0099】
印刷物100は、粘着シート10の基材11上に、インクジェット法による印刷部30が形成されていることを特徴とする。
【0100】
これにより、耐候性等に優れるとともに、インクジェット法による滲みの少ない優れた印刷品質の印刷部を有する印刷物を提供することができる。
【0101】
印刷部30を形成するのに用いるインクは、特に限定されず、例えば、油性インク(溶剤系インク)、水性インク、ラテックスインク、光硬化型インク(紫外線硬化型インク、電子線硬化型インク)等が挙げられる。中でも、油性インク(溶剤系インク)がより好ましい。
【0102】
従来においては、インクジェット法による印刷部の形成に、このようなインクを用いた場合に、上述したような問題が特に起こりやすかったが、本発明によれば、このようなインクを用いた場合であっても、上述したような問題の発生を効果的に防止することができる。すなわち、印刷部30の形成に前述したようなインクを用いる場合に、本発明による効果がより顕著に発揮される。
【0103】
また、印刷部30の形成には、2種以上のインクを組み合わせて用いてもよい。
図示の構成では、印刷部30が基材11の全面に設けられているが、印刷部30は、基材11の表面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0104】
印刷部30は、粘着シート10を被着体に貼着する前に形成されるものであってもよいし、粘着シート10を被着体に貼着した後に形成されるものであってもよい。
印刷部30による表示内容等は、特に限定されない。
【0105】
印刷物100は、そのまま、被着体に貼着した状態で用いられるものであってもよいし、例えば、
図4に示すように、印刷部30が設けられた側の面をラミネートシート200で被覆した状態で用いられるものであってもよい。
【0106】
ラミネートシート200の構成は、特に限定されないが、図示の構成では、ラミネートシート基材50と粘着剤層60とを有している。
【0107】
ラミネートシート基材50は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、通常は、主として樹脂材料で構成されたものである。
【0108】
ラミネートシート基材50を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0109】
ラミネートシート基材50の厚さは、10μm以上100μm以下であるのが好ましく、20μm以上80μm以下であるのがより好ましい。
【0110】
粘着剤層60は、粘着剤を含む材料で構成されており、印刷物100の印刷部30が設けられた側の面と接触する部位である。
【0111】
粘着剤層60を構成する粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤等が挙げられる。
【0112】
粘着剤層60の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
【0113】
印刷物100をラミネートシート200で被覆する場合、印刷物100へのラミネートシート200の被覆は、印刷物100の被着体への貼着前に行ってもよいし、印刷物100の被着体への貼着後に行ってもよい。
【0114】
本発明の印刷物は、例えば、各種の広報、広告、看板等に用いることができる。これらには、例えば、車体のラッピング、壁面への貼着等の使用形態が含まれる。
【0115】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0116】
例えば、図示の構成では、印刷部が基材上に設けられているが、印刷部の一部は、基材中に浸透していてもよい。
【0117】
また、前述した実施形態では、基材の表面に粘着剤層を形成した後に、支持体から基材を剥離する剥離工程を行うものとして説明したが、剥離工程は、基材の表面に粘着剤層を形成する前に行い、支持体から剥離された基材に対して、粘着剤層を形成してもよい。この場合、粘着剤層は、基材の支持体と接触していた面とは反対の面上に設けるのが好ましい。
【0118】
また、前述した実施形態では、剥離処理が施されていない支持体を用いて基材を製造する場合について中心的に説明したが、基材の製造には、剥離処理が施された支持体を用いてもよい。
【実施例0119】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の実施例中の処理、測定で、温度条件を示していないものについては、25℃で行った。
【0120】
[4]粘着シートの製造
(実施例1)
平均重合度が1600であるポリ塩化ビニル(東ソー社製、リューロンペースト860):100質量部に対し、アジピン酸系ポリエステル可塑剤(ADEKA社製、P-200):30質量部、アクリル共重合体系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-392):2.5質量部(全て固形分比)を、有機溶媒としてのエチレングリコールモノブチルエーテルに分散させ、液状の組成物を得た。得られた組成物中における有機溶媒の含有率は、30質量%であった。
【0121】
このようにして得られた組成物を、キャスト法により、支持体であるポリエチレンテレフタレート製のフィルム(剥離処理が施されていないもの)上に塗工・乾燥して厚さ50μmの基材を作製した。
【0122】
一方、剥離ライナーの剥離剤処理面上に、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが25μmとなるように、粘着剤組成物を塗工し、90℃にて1分間乾燥した。
粘着剤組成物としては、アクリル系粘着剤を用いた。
【0123】
次に、この乾燥済みの粘着剤組成物(粘着剤層)を、上記のようにして製造した基材と接触させ、その後、支持体を剥離、除去することで、粘着剤層が剥離ライナーで保護された状態の粘着シートを得た。
【0124】
(実施例2)
アクリル共重合体系レベリング剤の代わりに、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-320)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0125】
(実施例3)
アクリル共重合体系レベリング剤の代わりに、C6F13フルオロテロマー含有アクリル共重合体系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-3441)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0126】
(実施例4~9)
基材の構成が表1に示すものとなるように、レベリング剤の種類、使用量を変更した以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0127】
(比較例1)
基材の形成に用いる組成物として、レベリング剤を含まないもの、より具体的には、平均重合度が1600であるポリ塩化ビニル(東ソー社製、リューロンペースト860):100質量部に対し、アジピン酸系ポリエステル可塑剤(ADEKA社製、P-200):30質量部(全て固形分比)を、有機溶媒としてのエチレングリコールモノブチルエーテルに分散させたものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0128】
(比較例2)
支持体としてシリコーンにより剥離処理されたポリエチレンテレフタレート製のフィルムを用いた以外は、前記比較例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0129】
前記各実施例および各比較例の粘着シートの構成を表1にまとめて示した。なお、表1中、ポリ塩化ビニル(東ソー社製、リューロンペースト860)の固形分を「PVC1」、アジピン酸系ポリエステル可塑剤(ADEKA社製、P-200)を「P1」、アクリル共重合体系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-392)の固形分を「LA1」、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-320)の固形分を「LA2」、C6F13フルオロテロマー含有アクリル共重合体系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン社製、BYK-3441)の固形分を「LA3」で示した。
【0130】
【0131】
[5]印刷物の製造
前記各実施例および各比較例の粘着シートの基材側の表面に、インクジェットプリンター(ミマキエンジニアリング社製、JV33-130)を用いたインクジェット法により、JIS X 9201:2001で規定された高精細カラーディジタル標準画像の識別番号N1(ポートレート)を印刷することにより印刷部を形成し、印刷物を得た。
【0132】
このとき、インクとしては、溶剤系インク(油性インク)であるSS21インク(ミマキエンジニアリング社製)を用いた。
【0133】
[6]評価
前記各実施例および各比較例の印刷物について、以下のような評価を行った。
【0134】
[6-1]滲み評価
前記各実施例および各比較例の印刷物の印刷部が設けられた面側について、目視による観察を行い、以下の基準に従い評価した。
【0135】
A:滲みが全く認められない非常に鮮明な外観を呈する。
B:滲みがほとんど認められない十分に鮮明な外観を呈する。
C:滲みがわずかに認められるものの比較的鮮明な外観を呈する。
D:滲みがはっきりと認められ、鮮明さが不十分である。
E:滲みが顕著に認められ、不鮮明な外観を呈する。
【0136】
[6-2]弾き評価
前記各実施例および各比較例の印刷物の印刷部が設けられた面側について、目視による観察を行い、以下の基準に従い評価した。
【0137】
A:インクの弾きが全く認められない非常に鮮明な外観を呈する。
B:インクの弾きがほとんど認められない十分に鮮明な外観を呈する。
C:インクの弾きがわずかに認められるものの比較的鮮明な外観を呈する。
D:インクの弾きがはっきりと認められ、鮮明さが不十分である。
E:インクの弾きが顕著に認められ、不鮮明な外観を呈する。
【0138】
[6-3]耐候性評価
前記各実施例および各比較例の粘着シートについて、アクリル塗装板に貼付しサンシャインウェザーメータを用いて2000時間促進耐候性試験を行い、以下の基準に従い評価した。
【0139】
A:クラックや黄変が認められない。
B:クラックや黄変がわずかに認められる。
C:クラックや黄変がはっきりと認めれれる。
これらの結果を表2にまとめて示す。
【0140】
【0141】
表2から明らかなように、前記各実施例の粘着シートでは、優れた結果が得られた。これに対し、各比較例の粘着シートでは、満足のいく結果が得られなかった。特に、比較例1では、基材を支持体から剥離する際に生じた基材表面の荒れ、基材の不本意な伸びが認められた。また、支持体に剥離処理を施した比較例2では、インクの弾きが顕著に発生していた。これは、支持体の剥離処理に用いた剥離剤が基材に移行したことによると考えられる。また、ポリ塩化ビニルの平均重合度を1000以上2000以下の範囲内で種々変更し、基材の厚さを5μm以上200μm以下の範囲内で種々変更した以外は、前記各実施例および各比較例と同様に粘着シートを製造し、これらについて、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。