(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084536
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】浸漬ヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/18 20060101AFI20230612BHJP
H05B 3/06 20060101ALI20230612BHJP
H05B 3/78 20060101ALI20230612BHJP
H05B 3/46 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H05B3/18
H05B3/06
H05B3/78
H05B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198778
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】520285880
【氏名又は名称】中部電力ミライズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510014869
【氏名又は名称】株式会社ヤマト
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章浩
(72)【発明者】
【氏名】森山 聡雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 享寛
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真之
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP13
3K092QA02
3K092QB02
3K092QB27
3K092QC08
3K092QC38
3K092RA01
3K092RB04
3K092RD09
3K092VV15
(57)【要約】
【課題】最大発熱量をより大きくすることが可能な浸漬ヒータを提供する。
【解決手段】浸漬ヒータ1は、コイル状の発熱体4と、発熱体4の基端部に接続される第1リード線部6と、発熱体4の先端部に接続される第2リード線部8と、を備えている。第1リード線部6は、発熱体4の外部に配置されている。第2リード線部8は、基端側導線部8Wと、先端側導線部8Eと、を有している。先端側導線部8Eは、基端側導線部8Wと電気的に接続されていると共に、発熱体4の内方を通っており、更に複数の単線10を有している。少なくとも2本以上の単線10は、その長手方向に交わる幅方向に並んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状の発熱体と、
前記発熱体の第1端部に接続される第1リード線部と、
前記発熱体の第2端部に接続される第2リード線部と、
を備えており、
前記第1リード線部は、前記発熱体の外部に配置されており、
前記第2リード線部は、第1部分と、第2部分と、を有しており、
前記第2部分は、前記第1部分と電気的に接続されていると共に、前記発熱体の内方を通っており、更に複数の単線を有しており、
少なくとも2本以上の前記単線は、その長手方向に交わる幅方向に並んでいる
ことを特徴とする浸漬ヒータ。
【請求項2】
前記発熱体及び各前記単線の少なくとも何れかは、モリブデン又はモリブデン合金製である
ことを特徴とする請求項1に記載の浸漬ヒータ。
【請求項3】
前記第1リード線部及び前記第1部分の少なくとも一方は、ニクロム製の撚り線を含んでいる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の浸漬ヒータ。
【請求項4】
更に、前記発熱体と前記第1リード線部との間に介装される第1接続部を備えており、
前記第1リード線部は、第1パイプ部を有しており、
前記発熱体及び前記第1パイプ部は、前記第1接続部に接合されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の浸漬ヒータ。
【請求項5】
前記第1接続部は、第1リング部と、ポール部と、を有しており、
前記発熱体は、前記第1リング部に接合されており、
前記第1パイプ部は、前記ポール部に接合されている
ことを特徴とする請求項4に記載の浸漬ヒータ。
【請求項6】
前記第2部分は、端子を有しており、
各前記単線は、前記端子によって束ねられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の浸漬ヒータ。
【請求項7】
前記端子は、かしめられることにより各前記単線を束ねる
ことを特徴とする請求項6に記載の浸漬ヒータ。
【請求項8】
更に、前記発熱体と前記第2部分との間に介装される第2接続部を備えており、
前記発熱体及び前記端子は、前記第2接続部に接合されている
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の浸漬ヒータ。
【請求項9】
前記第2接続部は、第2リング部と、板部と、を有しており、
前記発熱体は、前記第2リング部に接合されており、
前記端子は、前記板部に接合されている
ことを特徴とする請求項8に記載の浸漬ヒータ。
【請求項10】
前記第1部分は、第2パイプ部を有しており、
前記第2パイプ部は、前記第2部分に接合されている
ことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載の浸漬ヒータ。
【請求項11】
前記第2部分は、端子を有しており、
各前記単線は、前記端子によって束ねられており、
前記第2パイプ部は、前記端子に接合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の浸漬ヒータ。
【請求項12】
更に、前記発熱体の外方に配置される管状部と、
前記管状部と前記発熱体との間に配置されるフィラーと、
を備えており、
前記フィラーは、粉体の高熱伝導充填材である
ことを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載の浸漬ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状の金属である溶湯の加熱(保温を含む)を行う浸漬ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒータとして、特許第6760534号公報(特許文献1)の
図5に記載されたヒータ300が知られている。
このヒータ300は、一端が封止され他端が開放された筒状部材330と、その中に配置される発熱部材320と、を有する。
発熱部材320は、コイル状部分と、その内部を通る直線状部分と、を有している。
筒状部材330の開放端側における発熱部材320のコイル状部分の端部は、第1のリード線380Aに接続される。筒状部材330の開放端側における発熱部材320の直線状部分の端部は、第2のリード線380Bに接続される。
発熱部材320は、発熱部材120と同様に、全長にわたって同一の材料及び形状で構成されても良いし、全長にわたって意図的に温度変化を発生させるために、全長に沿って複数の材料及び形状を有しても良いとされるところ、更なる具体例としては、複数の材料の例のみが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のヒータは、発熱部材320に印加可能な最大電力に向上の余地があり、最大発熱量に向上の余地がある。
本発明の主な目的は、最大発熱量をより大きくすることが可能な浸漬ヒータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するため、コイル状の発熱体と、前記発熱体の第1端部に接続される第1リード線部と、前記発熱体の第2端部に接続される第2リード線部と、を備えており、前記第1リード線部は、前記発熱体の外部に配置されており、前記第2リード線部は、第1部分と、第2部分と、を有しており、前記第2部分は、前記第1部分と電気的に接続されていると共に、前記発熱体の内方を通っており、更に複数の単線を有しており、少なくとも2本以上の前記単線は、その長手方向に交わる幅方向に並んでいることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記発熱体及び各前記単線の少なくとも何れかは、モリブデン又はモリブデン合金製であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記第1リード線部及び前記第1部分の少なくとも一方は、ニクロム製の撚り線を含んでいることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、更に、前記発熱体と前記第1リード線部との間に介装される第1接続部を備えており、前記第1リード線部は、第1パイプ部を有しており、前記発熱体及び前記第1パイプ部は、前記第1接続部に接合されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、前記第1接続部は、第1リング部と、ポール部と、を有しており、前記発熱体は、前記第1リング部に接合されており、前記第1パイプ部は、前記ポール部に接合されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記第2部分は、端子を有しており、各前記単線は、前記端子によって束ねられていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記端子は、かしめられることにより各前記単線を束ねることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、更に、前記発熱体と前記第2部分との間に介装される第2接続部を備えており、前記発熱体及び前記端子は、前記第2接続部に接合されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、上記発明において、前記第2接続部は、第2リング部と、板部と、を有しており、前記発熱体は、前記第2リング部に接合されており、前記端子は、前記板部に接合されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、上記発明において、前記第1部分は、第2パイプ部を有しており、前記第2パイプ部は、前記第2部分に接合されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、上記発明において、前記第2部分は、端子を有しており、各前記単線は、前記端子によって束ねられており、前記第2パイプ部は、前記端子に接合されていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、上記発明において、更に、前記発熱体の外方に配置される管状部と、前記管状部と前記発熱体との間に配置されるフィラーと、を備えており、前記フィラーは、粉体の高熱伝導充填材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の主な効果は、最大発熱量をより大きくすることが可能な浸漬ヒータが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1Aは、本発明に係る浸漬ヒータの先端部の模式図である。
図1Bは、
図1Aにおける発熱体の模式的な一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。
尚、本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0009】
図1Aは、当該形態に係る浸漬ヒータ1の先端部の模式図である。
図1Bは、
図1Aにおける発熱体4の模式的な一部端面図である。
図2Aは、
図1Bを基端側からみた場合の図である。
図2Bは、
図1Bを先端側からみた場合の図である。
浸漬ヒータ1は、管状部2と、発熱体4と、第1リード線部6と、第1接続部7と、第2リード線部8と、第2接続部9と、封止部(図示略)と、フィラー(図示略)と、を備えている。
浸漬ヒータ1は、アルミニウムの溶湯(アルミ溶湯)を対象として加熱(保温を含む)するものである。尚、浸漬ヒータ1は、亜鉛、鉄等の他の金属の溶湯を加熱するものであっても良いし、他のものを加熱するものであっても良い。
アルミ溶湯は、アルミニウムダイカスト製品用のものである。尚、アルミ溶湯は、他の用途に供されても良い。
加熱対象を加熱する際、典型的には、浸漬ヒータ1の先端部は、加熱対象の上方から加熱対象に入れられ、浸漬ヒータ1は、浸漬ヒータ1の長手方向が上下方向となる姿勢をとる。尚、浸漬ヒータ1は、かような上下方向に向く姿勢以外の姿勢で用いられても良い。
【0010】
管状部2は、セラミックス製の円筒管である。
管状部2の先端部は、閉じており、半球面状の閉塞端(封止端)となっている。
管状部2の基端部は、開放されており、開放端となっている。
尚、管状部2の材質は、セラミックスに限られない。又、管状部2の形状は、閉塞端と開放端とを有するものに限られず、例えば両端共に開放端となる形状であっても良い。管状部2の先端部の形状は、半球面状に限られない。
【0011】
発熱体4は、全体として一重のコイル状であり、通電により熱を発生する。発熱体4は、基端部(第1端部)から先端部(第2端部)までにわたる。
発熱体4は、管状部2内に入れられる。発熱体4は、管状部2内の先端部側に配置されている。管状部2は、発熱体4の外方に配置され、発熱体4を覆う。管状部2は、発熱体4を保護する。
発熱体4は、モリブデン(モリブデン合金を含む、以下同様)製である。
モリブデンの融点は、約2500℃であり、ニクロム線の融点(約1400℃、耐熱使用温度1150℃)より高い。よって、ニクロム線製の発熱体に比べ、より高い発熱温度が得られ、より大きい出力が得られる。
又、モリブデンの熱膨張係数は、4.8×10-6[K-1]であり、ニクロム線の熱膨張係数(14×10-6[K-1])の3分の1程度である。よって、ニクロム線製の発熱体に比べ、モリブデン製の発熱体4は膨張収縮による金属疲労が生じ難くなって、発熱体4における断線の発生が抑制される。
尚、発熱体4は、多重のコイル状等であっても良い。又、発熱体4の材質は、モリブデン以外であっても良い。
【0012】
第1リード線部6は、発熱体4に電力を供給するものである。
第1接続部7は、金属(例えばステンレス鋼)製であり、発熱体4と第1リード線部6とを接続する。第1接続部7は、発熱体4と第1リード線部6との間に介装される。
第1接続部7は、発熱体4の開放端(基端)側の端部と接続される。
第1リード線部6は、発熱体4の外部に配置されている。第1リード線部6及び発熱体4は、長手方向に並んでいる。
【0013】
第2リード線部8は、発熱体4に電力を供給するものである。
第2接続部9は、金属(例えばステンレス鋼)製であり、発熱体4と第2リード線部8とを接続する。第1接続部7は、発熱体4と第2リード線部8との間に介装される。
第2接続部9は、発熱体4の閉塞端(先端)側の端部と接続される。
第2リード線部8の先端部は、発熱体4の径方向内方を通過する。第2リード線部8は、発熱体4の内方を通る。
【0014】
第1リード線部6の基端及び第2リード線部8の基端は、制御装置(図示略)を介して、電源(図示略)に接続されている。
電源は、ここでは単相交流である。
制御装置は、電源から発熱体4への電力を制御して、発熱体4における発熱を制御する。
尚、電源は、直流であっても良いし、三相交流であっても良いし、他のものであっても良い。電源の電圧は、適宜選択されて良い。
【0015】
封止部は、管状部2の開放端に配置され、当該開放端を閉塞する。
封止部において、第1リード線部6及び第2リード線部8が通過している。
【0016】
フィラーは、管状部2内に充填される。
フィラーの主成分(重量比又は体積比で過半となる成分)は、酸化マグネシウム(マグネシア,MgO)である。ここでは、フィラーは、体積比で90%以上のMgOを有している。MgOは、優れた熱伝導性を有する高熱伝導充填材である。MgOの熱伝導率は、約60W/m・K(ワット毎メートル毎ケルビン)である。フィラーの熱伝導率は、MgOの熱伝導率に近似している。
フィラーは、発熱体4を覆っている。フィラーは、管状部2の先端部の内面に接触している。フィラーは、発熱体4の周囲に配置されており、発熱体4を保持する。フィラーは、管状部2と発熱体4との間に配置される。フィラーは、第1接続部7を含めこれより先端側に充填される。又、フィラーは、コイル状の発熱体4における隣接するループ部分の間に入る。フィラーが発熱体4を保持し、発熱体4の隙間に入るため、発熱体4の隣接する部分が発熱時の膨張等により互いに接触する事態が抑制され、発熱体4が漏電から保護される。
主にフィラーにより、モリブデン製の発熱体4に対する酸素の接触が抑制され、高温環境下での発熱体4の酸化が抑制され、酸化による脆化が抑制される。よって、発熱体4の寿命が、他の材質の発熱体の寿命と同程度以上となり、十分なものとなる。
尚、フィラーの主成分は、酸化マグネシウム以外であっても良い。フィラーの材質は、MgOのみでも良い。又、フィラーは、球体状等、粉体以外であっても良い。更に、フィラーは、第1リード線部6の先端部及び第2リード線部8の先端部より先端側に充填されても良いし、封止部より先端側に充填されても良い。
【0017】
浸漬ヒータ1の製造方法の例が、次に説明される。
まず、第1リード線部6の先端部に第1接続部7が接続され、発熱体4の基端部に第1接続部7が接続される。
又、第2リード線部8の先端部に第2接続部9が接続され、発熱体4の先端部に第2接続部9が接続される。
次に、一体となった、発熱体4、第1リード線部6、第1接続部7、第2リード線部8、及び第2接続部9が、管状部2内に入れられる。
次いで、管状部2内に、フィラーが入れられる。
続いて、管状部2の基端部に、封止部が形成される。
【0018】
第1リード線部6は、導線部6Wと、第1パイプ部6Pと、を有する。
導線部6Wは、ニクロム製の単線(例えば直径0.8mm(ミリメートル))を、複数(例えば120本)撚り合わせた撚り線である。尚、導線部6Wの材質は、ニクロム以外であっても良い。
導線部6Wが撚り線であるため、単線の場合に比べて自己の発熱が抑制される。よって、その自己発熱及び発熱体4の発熱による導線部6Wの溶断が抑制される。又、導線部6Wが撚り線であるため、導線部6Wの柔軟性は単線の場合に比べて大きくなる。よって、膨張収縮により発生する応力がより吸収され易く、導線部6Wの断線が抑制される。更に、導線部6Wが撚り線であるため、単線の場合に発生し得る金属疲労に起因する一括した断線が抑制される。又更に、第1リード線部6は、モリブデン製の発熱体4のようにより大きな出力に対応した発熱体4に対して、十分な電流を与えることができる。溶断抑制の観点から、好ましくは、導線部6Wにおける電流密度は3A/mm2(アンペア毎平方ミリメートル)以下とされる。又、大径化を抑えて十分な柔軟性を得ると共にコストを低減する観点から、好ましくは、導線部6Wにおける電流密度は1A/mm2以上とされる。
第1パイプ部6Pは、ステンレス鋼製であり、筒状である。第1パイプ部6Pは、導線部6Wの先端部の径方向外側に配置される。第1パイプ部6Pは、導線部6Wの先端部に接触して、当該先端部と電気的に接続される。尚、第1パイプ部6Pの材質は、ステンレス鋼以外であっても良い。
【0019】
第1接続部7は、第1リング部7Rと、ポール部7Pと、を有する。
第1リング部7Rは、リング状である。
ポール部7Pは、柱状である。ポール部7Pは、第1リング部7Rの片側部分に渡された状態で溶接される。
尚、ポール部7Pと第1リング部7Rとの接合は、溶接以外によっても良い。他の部分の接続及び接合の少なくとも何れかは、同様に溶接等に限られない。ポール部7Pと第1リング部7Rとは、形成当初から一体であっても良い。又、第1リング部7Rに対するポール部7Pの配置は、上述のものに限られない。ポール部7Pと第1リング部7Rとで材質が異なっていても良い。
【0020】
第1リング部7Rにおける先端側の面に、発熱体4におけるリング状の基端部が溶接される。
ポール部7Pにおける基端側の面に、第1リード線部6の第1パイプ部6Pが溶接される。第1パイプ部6Pの介在により、撚り線である導線部6Wの端部を直接溶接する場合に比べ、より容易に第1リード線部6が第1接続部7に溶接される。又、第1パイプ部6Pにより、撚り線である導線部6Wのほつれが抑制される。
【0021】
第2リード線部8は、基端側導線部8W(第1部分)と、第2パイプ部8Pと、先端側導線部8E(第2部分)と、を有する。
【0022】
基端側導線部8Wは、第1リード線部6の導線部6Wと同様に成る。
尚、基端側導線部8Wは、導線部6Wと異なっていても良い。
【0023】
第2パイプ部8Pは、第1パイプ部6Pと同様に成る。尚、第2パイプ部8Pは、第1パイプ部6Pと異なっていても良い。
第2パイプ部8Pは、基端側導線部8Wの先端部の径方向外側に配置される。第2パイプ部8Pは、基端側導線部8Wの先端部に接触して、当該先端部と電気的に接続される。
【0024】
図3Aは、第2リード線部8の先端側導線部8Eの模式図である。
図3Bは、
図3Aを先端側からみた場合の図である。
先端側導線部8Eは、複数(例えば13本)の単線10と、基端側端子部11と、先端側端子部12と、を有する。
【0025】
各単線10は、モリブデン製である。各単線10の直径は、例えば1.5mmである。尚、各単線10の材質は、モリブデン以外であっても良い。又、一部の単線10の材質及び直径の少なくとも一方は、他の単線10の材質等と異なっていても良い。単線10の材質及び直径の少なくとも一方は、3種以上存在しても良い。
一部又は全部の単線10は、長手方向に交わる方向(幅方向)に並んでいる。即ち、少なくとも2本以上の単線10は、幅方向に並んでいる。例えば、
図3では、6本の単線10が幅方向に並び、これらに隣接して残りの7本の単線10が幅方向に並んでいる。尚、幅方向は、長手方向に直交する方向と捉えられても良い。
【0026】
基端側端子部11は、金属(例えばステンレス鋼)製であり、筒状である。基端側端子部11の幅方向断面は、オーバル状である。全ての単線10の基端部は、基端側端子部11に入れられた状態でかしめられることで、束ねられて接合される。
先端側端子部12は、金属(例えばステンレス鋼)製であり、筒状である。先端側端子部12の幅方向断面は、オーバル状である。全ての単線10の先端部は、先端側端子部12に入れられた状態でかしめられることで、束ねられて接合される。
基端側端子部11の長手方向の長さは、先端側端子部12の長手方向の長さより長い。
尚、基端側端子部11の形状等と先端側端子部12の形状等とは、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。
【0027】
第2接続部9は、第2リング部9Rと、板部9Bと、を有する。
第2リング部9Rは、リング状である。
板部9Bは、板状である。板部9Bは、第2リング部9Rの中央部に渡された状態で溶接される。
尚、板部9Bと第2リング部9Rとは、プレス等により、形成当初から一体であっても良い。又、第2リング部9Rに対する板部9Bの配置は、上述のものに限られない。板部9Bと第2リング部9Rとで材質が異なっていても良い。
【0028】
第2リング部9Rにおける基端側の面に、発熱体4におけるリング状の先端部が溶接される。
板部9Bにおける基端側の面の中央部に、第2リード線部8の先端側導線部8Eの先端側端子部12が溶接される。先端側端子部12の介在により、各単線10の端部を直接溶接する場合に比べ、より容易に第1リード線部6が第1接続部7に溶接される。又、先端側端子部12により、各単線10の分離が抑制される。
【0029】
先端側導線部8Eの長さは、発熱体4の長さより長い。先端側導線部8Eの基端部は、発熱体4の基端から基端側に出ている。
発熱体4内を通る各単線10が幅方向に並ぶため、各単線10に代えて1本の導線が用いられる場合に比べ、各単線10(先端側導線部8E)の剛性がより確保し易い。よって、先端側導線部8Eが、第2接続部9等から、ねじれ力等の外力を受けた場合に発生し得る断線等が抑制される。
又、複数の単線10が用いられるため、流せる最大の電流がより大きくなる。特に、モリブデン製の発熱体4のようにより大きな出力に対応した発熱体4に対して、十分な電流を与えることができる。各単線10の溶断を抑制する観点から、好ましくは、各単線10における電流密度は2A/mm2以下とされる。
更に、複数の単線10が用いられるため、要求される最大出力の大きさに応じて単線10の本数が調整可能である。従って、求められる電流に対応しつつ、コストが抑制される。
【0030】
第2リード線部8において、先端側導線部8Eは、基端側導線部8Wと接合される。
より詳しくは、先端側導線部8Eの基端側端子部11は、基端側導線部8Wの先端部に接合された第2パイプ部8Pと溶接される。基端側端子部11の基端部と、第2パイプ部8Pの先端部とが、溶接される。基端側端子部11と、第2パイプ部8Pとは、長手方向に重なる。尚、基端側端子部11と、第2パイプ部8Pとは、幅方向等に重なっても良い。
基端側端子部11及び第2パイプ部8Pの介在により、容易に先端側導線部8Eと基端側導線部8Wとが接合される。又、基端側端子部11により、各単線10の分離が抑制され、第2パイプ部8Pにより、基端側導線部8Wのほつれが抑制される。
【0031】
第2リード線部8において、発熱体4内に入る先端側導線部8Eは、発熱体4内から出ている基端側導線部8Wとは別に設けられる。
よって、第2リード線部8において、発熱体4内外で重要となる各特性に応じて、先端側導線部8Eと基端側導線部8Wとを作り分けることができる。
即ち、発熱体4内では、高出力に対応した最大流下可能電流及び耐熱性を適宜確保しつつ、外力への対応性の確保と、より高い耐熱性の確保とがより重要となる。よって、先端側導線部8Eでは、モリブデン製の各単線10が、幅方向に並んでいる。
又、発熱体4外では、高出力に対応した最大流下可能電流及び耐熱性を適宜確保しつつ、第2リード線部8での発熱の抑制により、効率の向上、及び長寿命化を図ることがより重要となる。よって、基端側導線部8Wは、複数の単線が撚られた撚り線となっている。
【0032】
このような浸漬ヒータ1の動作例が、以下説明される。
使用者は、電源を入れ、浸漬ヒータ1の発熱体4を発熱させる。発熱体4からの熱は、フィラーにより、管状部2へ効率良く伝えられる。
使用者は、溶湯槽内のアルミ溶湯に、管状部2の先端部を上方から浸漬することで、発熱体4からフィラー及び管状部2を経た伝熱により、アルミ溶湯を加熱することができる。
発熱体4の発熱量は、制御装置により制御される。ここでは、制御装置と電気的に接続された図示されない温度センサが、アルミ溶湯の温度を検知して、当該温度を示す温度信号を制御装置に送信し、制御装置が、受信した当該温度信号に係る温度に応じて、発熱体4の発熱量を制御する。
発熱体4の最大発熱量(最大出力)は、モリブデン製の発熱体4により、ニクロム製に比べて一層大きくすることが可能である。発熱体4の脆化につながるモリブデンの酸化は、フィラーの発熱体4周辺への配置により抑制される。
【0033】
以上の浸漬ヒータ1は、次のような作用効果を奏する。
即ち、浸漬ヒータ1は、コイル状の発熱体4と、発熱体4の基端部に接続される第1リード線部6と、発熱体4の先端部に接続される第2リード線部8と、を備えており、第1リード線部6は、発熱体4の外部に配置されており、第2リード線部8は、基端側導線部8Wと、先端側導線部8Eと、を有しており、先端側導線部8Eは、基端側導線部8Wと電気的に接続されていると共に、発熱体4の内方を通っており、更に複数の単線10を有しており、少なくとも2本以上の単線10は、その長手方向に交わる幅方向に並んでいる。
よって、最大発熱量をより大きくすることが可能な浸漬ヒータ1が提供される。
【0034】
又、発熱体4及び各単線10は、モリブデン又はモリブデン合金製である。よって、浸漬ヒータ1において、ニクロム製の発熱体より大きい最大発熱量が実現される。
又更に、第1リード線部6及び基端側導線部8Wの少なくとも一方は、ニクロム製の撚り線を含んでいる。よって、発熱体4の外方を通る第1リード線部6及び基端側導線部8Wの少なくとも一方において、自己発熱による溶断が抑制され、又柔軟性の向上により応力に起因する断線が抑制され、更に金属疲労による一括した断線が抑制される。
【0035】
更に、浸漬ヒータ1は、発熱体4と第1リード線部6との間に介装される第1接続部7を備えており、第1リード線部6は、第1パイプ部6Pを有しており、発熱体4及び第1パイプ部6Pは、第1接続部7に接合されている。又、第1接続部7は、第1リング部7Rと、ポール部7Pと、を有しており、発熱体4は、第1リング部7Rに接合されており、第1パイプ部6Pは、ポール部7Pに接合されている。よって、発熱体4と第1リード線部6との十分な電流に対応した状態での結合が、より容易である。
【0036】
加えて、先端側導線部8Eは、基端側端子部11と、先端側端子部12と、を有しており、各単線10は、先端側端子部12と、基端側端子部11と、によって束ねられている。又、先端側端子部12と、基端側端子部11とは、かしめられることにより各単線10を束ねる。よって、複数の単線10が、より配置し易くなる。
更に、浸漬ヒータ1は、発熱体4と先端側導線部8Eとの間に介装される第2接続部9を備えており、発熱体4及び先端側端子部12は、第2接続部9に接合されている。よって、発熱体4と先端側導線部8Eとの十分な電流に対応した状態での結合が、より容易である。
又、第2接続部9は、第2リング部9Rと、板部9Bと、を有しており、発熱体4は、第2リング部9Rに接合されており、先端側端子部12は、板部9Bに接合されている。よって、発熱体4と先端側導線部8Eとの十分な電流に対応した状態での結合が、より容易である。又、各単線10の結束と、板部9Bへの接合とが、共通する先端側端子部12によって一層効率良く行える。
【0037】
又更に、基端側導線部8Wは、第2パイプ部8Pを有しており、第2パイプ部8Pは、先端側導線部8Eに接合されている。よって、基端側導線部8Wと先端側導線部8Eとの十分な電流に対応した状態での結合が、より容易である。
又、先端側導線部8Eは、基端側端子部11を有しており、各単線10は、基端側端子部11によって束ねられており、第2パイプ部8Pは、基端側端子部11に接合されている。よって、基端側導線部8Wと先端側導線部8Eとの十分な電流に対応した状態での結合が、より容易である。又、各単線10の結束と、第2パイプ部8Pへの接合とが、共通する基端側端子部11によって一層効率良く行える。
【0038】
更に、浸漬ヒータ1は、発熱体4の外方に配置される管状部2と、管状部2と発熱体4との間に配置されるフィラーと、を備えており、フィラーは、粉体の高熱伝導充填材である。よって、発熱体4からの熱が、管状部2に、より効率良く伝達される。又、発熱体4が、酸化からより一層保護される。特に、モリブデン製の発熱体4の場合、酸化による脆化が抑制される。
【実施例0039】
以下、上述の本発明の実施形態に即した、より具体的な実施例が説明される。
尚、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0040】
まず、発熱体4の発熱温度の試験が行われた。
管状部2にモリブデン製の発熱体4とこれを覆うフィラーを入れた浸漬ヒータ1が、アルミ溶湯に浸漬され、発熱体4の温度が、電力(単相交流)の印加により、1280℃(理論値)まで上げられた。このとき、アルミ溶湯の温度は、780℃であった。又、浸漬ヒータ1の実効出力は、20.1kW(キロワット)であった。更に、浸漬ヒータ1の内部温度は、980℃程度であった。かような内部温度は、ニクロム製の発熱体4の内部温度における常用850℃、上限950℃を上回る。
尚、導線部6W及び基端側導線部8Wは、直径0.8mmの単線120本を用いたニクロム製の撚り線であった。又、先端側導線部8Eは、13本の直径1.5mmの単線10が二列で幅方向に並んだモリブデン製であった。更に、第1パイプ部6P、第2パイプ部8P、先端側端子部12、基端側端子部11、第1接続部7、及び第2接続部9は、ステンレス鋼製であり、先端側端子部12及び基端側端子部11ではかしめが用いられ、その他では溶接が用いられた。
かような発熱体4の温度上昇が、2か月間継続的に行われた。この間、発熱体4の断線は確認されなかった。
【0041】
又、上記発熱温度の試験の浸漬ヒータ1と同様の浸漬ヒータ1により、以下の2種類の条件で、浸漬・空焚きを繰り返す高負荷の試験が行われた。
即ち、第1の条件として、浸漬ヒータ1の内部温度が、350℃以上800℃以下の温度域の上限と下限との間で68往復され(浸漬ヒータ1の出力3kW以上7kW以下)、続いて10往復をかけて温度域の上限が比例的に900℃まで上げられ、更に350℃以上900℃以下の温度域の上限と下限との間で29往復された(浸漬ヒータ1の出力3kW以上8kW以下)。かような合計107往復の浸漬・空焚きの間、浸漬ヒータ1の内部温度は、概ね5回毎に室温程度まで戻された。
又、第2の条件として、浸漬ヒータ1の内部温度が、350℃以上1000℃以下の温度域の上限と下限との間で45往復された(浸漬ヒータ1の出力5.5kW以上15kW以下)。かような45往復の浸漬・空焚きの間、浸漬ヒータ1の内部温度は、概ね5回毎に室温程度まで戻された。
上記各条件の試験後、浸漬ヒータ1が点検されたところ、何れの条件においても、発熱体4の断線は生じていなかった。
1・・浸漬ヒータ、2・・管状部、4・・発熱体、6・・第1リード線部、6P・・第1パイプ部、7・・第1接続部、7P・・ポール部、7R・・第1リング部、8・・第2リード線部、8E・・先端側導線部(第2部分)、8P・・第2パイプ部、8W・・基端側導線部(第1部分)、9・・第2接続部、9B・・板部、9R・・第2リング部、10・・単線、11・・基端側端子部(端子)、12・・先端側端子部(端子)。