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特開2023-84543無機繊維用サイジング剤、無機繊維、その製造方法、及び複合材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084543
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】無機繊維用サイジング剤、無機繊維、その製造方法、及び複合材料
(51)【国際特許分類】
D06M 15/256 20060101AFI20230612BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20230612BHJP
D06M 13/08 20060101ALI20230612BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20230612BHJP
D06M 15/227 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
D06M15/256
D06M15/53
D06M13/08
D06M15/55
D06M15/227
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198785
(22)【出願日】2021-12-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松永 拓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 旬
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA09
4L033AB01
4L033AC11
4L033BA05
4L033CA12
4L033CA17
4L033CA48
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】無機繊維に対する付着斑の低減効果の向上と集束性の向上効果の両立を図ることができる無機繊維用サイジング剤、無機繊維、その製造方法、及び複合材料を提供する。
【解決手段】本発明の無機繊維用サイジング剤は、樹脂(A)及び分子中にパーフルオロアルケニル基を有する含フッ素界面活性剤(B)を含有することを特徴とする。本発明の無機繊維は、前記無機繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする。本発明の無機繊維の製造方法は、前記無機繊維用サイジング剤を無機繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする。また、本発明の複合材料は、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)、及び下記の含フッ素界面活性剤(B)を含有することを特徴とする無機繊維用サイジング剤。
含フッ素界面活性剤(B):分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤。
【請求項2】
前記無機繊維用サイジング剤の不揮発分中における前記含フッ素界面活性剤(B)の含有割合が、10ppm以上60000ppm以下である請求項1に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項3】
前記含フッ素界面活性剤(B)が、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものである請求項1又は2に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項4】
前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項5】
前記樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、前記含フッ素界面活性剤(B)を0.001質量部以上6質量部以下の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項6】
更に、界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項7】
前記樹脂(A)の不揮発分及び前記界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び前記界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項6に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする無機繊維。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤を無機繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする無機繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項11】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項12】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がビニルエステル樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項13】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含む無機繊維用サイジング剤、無機繊維、その製造方法、及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維等の無機繊維及び母材として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等のマトリックス樹脂を含む材料として繊維強化樹脂複合材料が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維等の無機繊維及びマトリックス樹脂との界面の接着性を向上させるためにサイジング剤を無機繊維に付着させる処理が行われている。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示のマトリックス樹脂を補強するために用いられる無機繊維用サイジング剤が知られている。特許文献1は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、並びに集束剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の無機繊維用サイジング剤は、無機繊維に対する付着斑の低減効果の向上と集束性の向上効果の両立が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の含フッ素界面活性剤と、樹脂とを含有する無機繊維用サイジング剤が正しく好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の無機繊維用サイジング剤では、樹脂(A)、及び下記の含フッ素界面活性剤(B)を含有することを要旨とする。
【0007】
含フッ素界面活性剤(B):分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記無機繊維用サイジング剤の不揮発分中における前記含フッ素界面活性剤(B)の含有割合が、10ppm以上60000ppm以下であってもよい。
【0008】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記含フッ素界面活性剤(B)が、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものであってもよい。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含有するものであってもよい。
【0009】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、前記含フッ素界面活性剤(B)を0.001質量部以上6質量部以下の割合で含有してもよい。
【0010】
前記無機繊維用サイジング剤において、更に、界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を含有してもよい。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)の不揮発分及び前記界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び前記界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有してもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の無機繊維では、前記機繊維用サイジング剤が付着していることを要旨とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の無機繊維の製造方法では、前記無機繊維用サイジング剤を無機繊維に付着させる工程を含むことを要旨とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であることを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がポリアミド樹脂であることを要旨とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がビニルエステル樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂であることを要旨とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると無機繊維に対する付着斑の低減効果の向上と集束性の向上効果の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例欄における接着性評価のための複合材界面特性評価装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係る無機繊維用サイジング剤(以下、サイジング剤ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。サイジング剤は、樹脂(A)と所定の含フッ素界面活性剤(B)とを含有する。
【0019】
(樹脂(A))
本実施形態のサイジング剤に供される樹脂(A)は、サイジング剤が付与される無機繊維の用途等に応じて適宜公知のものから選択される。樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種の樹脂を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:商品名:jER828,jER1002,jER1001)、ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製:商品名:スーパーフレックス740)、ポリプロピレン樹脂(丸芳化学社製:商品名:MGP-1650)、ポリプロピレン樹脂(東邦化学工業社製:商品名:ハイテックP-9018)、ポリエステル樹脂(東洋紡社製:商品名:バイロナールMD-1480)、フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製:商品名:YP-50S)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物とジアミノジフェニルエーテルのポリイミド樹脂前駆体、ポリアミド樹脂(東レ社製:商品名:AQナイロンP-95)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とフマル酸のポリエーテルエステル樹脂、エポキシ樹脂とメタクリル酸のビニルエステル樹脂、平均分子量2000のポリエチレングリコールとジメチルテレフタレートとラウリルアルコールの共重合物(ポリエーテルエステル樹脂)等が挙げられる。
【0021】
無機繊維が複合材料に適用される場合、サイジング剤に配合される樹脂の種類は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点より複合材料を構成する母材の種類を考慮して選択されることが好ましい。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。マトリックス樹脂がポリアミド樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ビニルエステル樹脂を含むことが好ましい。マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
(含フッ素界面活性剤(B))
本実施形態のサイジング剤に供される含フッ素界面活性剤(B)は、分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤が適用される。また、本実施形態のサイジング剤に供される含フッ素界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものが好ましい。かかる構成により、マトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。
【0023】
含フッ素界面活性剤(B)の具体例としては、例えばエチレンオキサイドが平均15モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント215M)、エチレンオキサイドが平均12モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント212M)、エチレンオキサイドが平均8モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント251)、エチレンオキサイドが平均18モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェントFTX-218)、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオス社製:商品名フタージェント100)、パーフルオロアルケニルトリアルキルアンモニウムブロマイド(ネオス社製:商品名フタージェント320)等が挙げられる。これらの含フッ素界面活性剤(B)は、1種の含フッ素界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の含フッ素界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
サイジング剤中において、サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは10ppm以上、より好ましくは30ppm以上である。かかる含有割合が10ppm以上の場合、無機繊維に対する付着斑の低減効果をより向上できる。サイジング剤中において、サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは60000ppm以下、より好ましくは50000ppm以下である。かかる含有割合が60000ppm以下の場合、母材としてのマトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0025】
サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上である。かかる含有割合が0.001質量部以上の場合、無機繊維に対する付着斑の低減効果をより向上できる。サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは6質量部以下である。かかる含有割合が6質量部以下の場合、母材としてのマトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0026】
(界面活性剤(C))
サイジング剤は、必要によりさらに界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を配合してもよい。界面活性剤(C)を配合することにより、サイジング剤の乳化安定性を向上できる。界面活性剤(C)としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤(C)は、1種の界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
非イオン界面活性剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤(C)の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分及び界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、サイジング剤の乳化安定性を向上できる。
【0031】
本実施形態のサイジング剤の効果について説明する。
(1-1)本実施形態のサイジング剤では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するように構成した。したがって、無機繊維に対する付着斑の低減効果を向上できる。また、サイジング剤で処理された無機繊維の集束性を向上できる。また、母材に対する無機繊維の接着性を向上できる。
【0032】
<第2実施形態>
次に本発明に係る無機繊維の製造方法を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0033】
本実施形態の無機繊維の製造方法は、第1実施形態のサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。付着量(溶媒を含まない)については特に制限はないが、無機繊維にサイジング剤として0.01質量%以上10質量%以下となるよう付着させたものが好ましい。かかる数値範囲に規定することにより、無機繊維に対する付着斑の低減効果、集束性等の効能をより向上できる。
【0034】
(無機繊維)
本実施形態において適用される無機繊維の種類としては、特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からガラス繊維、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維が挙げられる。
【0035】
第1実施形態のサイジング剤を無機繊維に付着させるには、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等が挙げられる。サイジング剤を付着させた無機繊維は、続いて公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。
【0036】
本実施形態の無機繊維の製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態の無機繊維の製造方法では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。したがって、無機繊維に対するサイジング剤の付着斑の低減効果が期待され、効率的にサイジング剤を無機繊維に対して付着処理できる。
【0037】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る複合材料を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
【0038】
第2実施形態によりサイジング剤を付着させた無機繊維を、母材としてのマトリックス樹脂に含浸させることにより複合材料が得られる。複合材料を製造する際、無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態を採用できる。
【0039】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、複合材料の目的、用途等に応じて公知のものから適宜選択される。マトリックス樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。
【0040】
マトリックス樹脂は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点からサイジング剤に含まれる樹脂の種類を考慮して選択されてもよい。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つである組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がポリアミド樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つである組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ビニルエステル樹脂である組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリオレフィン樹脂である組み合わせが好ましい。
【0041】
本実施形態の複合材料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3-1)本実施形態の複合材料では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するサイジング剤を適用している。したがって、無機繊維とマトリックス樹脂との優れた接着性により、特に機械特性等の各種特性に優れる繊維強化樹脂複合材料が得られる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態のサイジング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、サイジング剤の性能を維持する観点、無機繊維に対する付与性向上等の観点から、その他の成分として、水又は有機溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0043】
・上記実施形態のサイジング剤が適用される分野は、特に限定されない。例えばマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料(CFRP)の他、コンクリートの補強用繊維等に適用してもよい。
【実施例0044】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0045】
試験区分1(サイジング剤の調製)
実施例1のサイジング剤は、原料として表1に示される含フッ素界面活性剤(B-1)、樹脂(A)として表2に示されるエポキシ樹脂(A-1)、界面活性剤(C)として表3に示されるトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド34モルとプロピレンオキサイド4モルのランダム付加物(C-1)を使用した。
【0046】
まず、含フッ素界面活性剤(B-1)以外の各原料を混合したものを100℃に加温して均一にした。その後、70℃以下に冷却して徐々に水を加えた後に含フッ素界面活性剤(B-1)を加えることで、表4に示される含有割合からなる実施例1のサイジング剤の水性液を得た。
【0047】
実施例2~16、比較例1~5のサイジング剤又はサイジング剤の水性液は、原料として表1の含フッ素界面活性剤(B)、表2の樹脂(A)、及び必要により表3の界面活性剤(C)を使用した。各成分を表4に示した含有割合にて混合し、下記のA~Eに示される調製方法によってサイジング剤の水性液又はサイジング剤を得た。
【0048】
A:含フッ素界面活性剤(B)以外の各原料を混合したものを100℃に加温して均一にした。その後、70℃以下に冷却して徐々に水を加えた後に含フッ素界面活性剤(B)を加えることでサイジング剤の水性液を得た。
【0049】
B:予め調製した樹脂(A)を含む乳化物と、界面活性剤(C)及び含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
C:予め製造された樹脂(A)を含む乳化物と含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
【0050】
D:予め製造された樹脂(A)を含む乳化物と界面活性剤(C)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
E:樹脂(A)と界面活性剤(C)を混合したものに徐々に水を加えてサイジング剤の水性液を得た。
【0051】
F:界面活性剤(C)と含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤を得た。
含フッ素界面活性剤(B)の種類と含有量、樹脂(A)の種類と不揮発分としての含有量、界面活性剤(C)の種類と含有量、サイジング剤の調製方法を、表4の「含フッ素界面活性剤(B)」欄、「樹脂(A)」欄、「界面活性剤(C)」欄、「製造時の混合方法」欄にそれぞれ示す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【表4】
表4に記載する接着性評価に使用したマトリックス樹脂、*1)~*3)の詳細は以下のとおりである。
【0056】
(接着性評価に使用したマトリックス樹脂)
エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 商品名:jER828+トリエチレンテトラミン)
ビニルエステル樹脂(昭和電工社製 商品名:リポキシR-804B(同社製メチルエチルケトンパーオキシド硬化剤使用))
ポリアミド樹脂(宇部興産社製 UBEナイロン 1011FB)
ポリプロピレン樹脂:2%無水マレイン酸変性ポリプロピレン
*1)樹脂(A)の不揮発分100部に対する含有割合(部)
*2)サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合(ppm)
*3)不揮発分基準
なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量として求めた。
【0057】
試験区分2(接着性の評価)
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0058】
上述したように調製した各例の水性液又はサイジング剤を更に水希釈し、固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をストランド状の炭素繊維又はガラス繊維に固形分として2%付与されるように浸漬法にて給油することで各例のサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維又はガラス繊維を調製した。
【0059】
次に、この炭素繊維又はガラス繊維から1本の炭素繊維又はガラス繊維を取り出し、この繊維12を板状の四角枠状のホルダー11に緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、表4に示される各例のマトリックス樹脂を、直径がほぼ70μmの樹脂滴13となるように繊維12に付着させ、固定した。
【0060】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0061】
樹脂滴13が固定されている繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0062】
ホルダー11を5mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0063】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を求めた。さらに得られた平均値について、下記に示される使用したマトリックス樹脂の基準数値に対する増加率を求め、以下の基準により評価した。結果を表4の「接着性」に示す。また、使用した無機繊維の種類及びマトリックス樹脂の種類を、表4の「接着性評価に使用した無機繊維」欄及び「接着性評価に使用したマトリックス樹脂」欄にそれぞれ示す。
【0064】
【数1】
数1において、
F:繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)、
D:繊維12の直径(m)、
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
【0065】
・使用したマトリックス樹脂の基準数値
エポキシ樹脂:60MPa
ビニルエステル樹脂:40MPa
ポリアミド樹脂:50MPa
ポリプロピレン樹脂:22MPa
・接着性の評価基準
◎◎(優れる):増加率が12%以上
◎(良好):増加率が9%以上12%未満
○(可):増加率が1%以上9%未満
×(不可):増加率が1%未満
試験区分3(付着斑抑制の評価)
試験区分2で得られたサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維について、十分に乾燥させた炭素繊維束から1m毎に10か所で5mgの炭素繊維をサンプリングした。熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)で40℃→500℃まで10℃/分で昇温後、10分500℃を保持させた際の初期質量から最終質量の差分をサイジング剤付着量とした。10か所の測定値の標準偏差の値を以下の基準で評価した。結果を表4の「付着斑抑制」欄に示す。
【0066】
・付着斑抑制の評価基準
◎(良好):0.2未満
○(可):0.2以上0.3未満
×(不可):0.3以上
試験区分4(集束性の評価)
試験区分2で得られたサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維について、乾燥工程を経たのちの金属ローラー部分での糸の集束性を目視にて以下の基準で評価した。結果を表4の「集束性」欄に示す。
【0067】
・集束性の評価基準
○(可):糸が纏まって金属ローラーを通過しており、工程性に問題が無い場合
×(不可):糸が纏まっておらず金属ローラーへの巻きつきが生じている場合
以上表4の結果からも明らかなように、各実施例のサイジング剤が付与された無機繊維は、付着斑抑制及び集束性の評価はいずれも可以上であった。また、サイジング剤が付与された無機繊維のマトリックス樹脂に対する接着性の評価はいずれも可以上であった。本発明によれば、付着斑抑制、集束性、接着性を向上できるという効果が生じる。
【符号の説明】
【0068】
10…複合材界面特性評価装置
11…ホルダー
12…繊維
13…樹脂滴
14…接着剤
15…ロードセル
16…基板
17,18…ブレード
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)、及び下記の含フッ素界面活性剤(B)を含有することを特徴とする無機繊維用サイジング剤。
含フッ素界面活性剤(B):分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤。
【請求項2】
前記無機繊維用サイジング剤の不揮発分中における前記含フッ素界面活性剤(B)の含有割合が、10ppm以上60000ppm以下である請求項1に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項3】
前記含フッ素界面活性剤(B)が、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものである請求項1又は2に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項4】
前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含有するものである請求項1~3のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項5】
前記樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、前記含フッ素界面活性剤(B)を0.001質量部以上6質量部以下の割合で含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項6】
更に、界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項7】
前記樹脂(A)の不揮発分及び前記界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び前記界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有する請求項6に記載の無機繊維用サイジング剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤が付着していることを特徴とする無機繊維(濾材を構成するガラス繊維にバインダーとフッ素系界面活性剤とを付着させたエアフィルタ用濾材を除く)。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の無機繊維用サイジング剤を無機繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする無機繊維の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項11】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がポリアミド樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項12】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がビニルエステル樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂であることを特徴とする複合材料。
【請求項13】
請求項8に記載の無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂であることを特徴とする複合材料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素界面活性剤を含む無機繊維用サイジング剤、無機繊維、その製造方法、及び複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維等の無機繊維及び母材として熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等のマトリックス樹脂を含む材料として繊維強化樹脂複合材料が知られ、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。炭素繊維等の無機繊維及びマトリックス樹脂との界面の接着性を向上させるためにサイジング剤を無機繊維に付着させる処理が行われている。
【0003】
従来より、例えば特許文献1に開示のマトリックス樹脂を補強するために用いられる無機繊維用サイジング剤が知られている。特許文献1は、ジスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物及びトリスチレン化フェノールのアルキレンオキサイド付加物、並びに集束剤を含有する炭素繊維用サイジング組成物について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の無機繊維用サイジング剤は、無機繊維に対する付着斑の低減効果の向上と集束性の向上効果の両立が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の含フッ素界面活性剤と、樹脂とを含有する無機繊維用サイジング剤が正しく好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の無機繊維用サイジング剤では、樹脂(A)、及び下記の含フッ素界面活性剤(B)を含有することを要旨とする。
【0007】
含フッ素界面活性剤(B):分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記無機繊維用サイジング剤の不揮発分中における前記含フッ素界面活性剤(B)の含有割合が、10ppm以上60000ppm以下であってもよい。
【0008】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記含フッ素界面活性剤(B)が、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものであってもよい。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含有するものであってもよい。
【0009】
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、前記含フッ素界面活性剤(B)を0.001質量部以上6質量部以下の割合で含有してもよい。
【0010】
前記無機繊維用サイジング剤において、更に、界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を含有してもよい。
前記無機繊維用サイジング剤において、前記樹脂(A)の不揮発分及び前記界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び前記界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有してもよい。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の無機繊維(濾材を構成するガラス繊維にバインダーとフッ素系界面活性剤とを付着させたエアフィルタ用濾材を除く)では、前記無機繊維用サイジング剤が付着していることを要旨とする。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の無機繊維の製造方法では、前記無機繊維用サイジング剤を無機繊維に付着させる工程を含むことを要旨とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂が、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であることを要旨とする。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つを含み、前記マトリックス樹脂がポリアミド樹脂であることを要旨とする。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がビニルエステル樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂であることを要旨とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様では、前記無機繊維とマトリックス樹脂とを含む複合材料であって、前記無機繊維用サイジング剤中の樹脂がポリオレフィン樹脂を含み、前記マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると無機繊維に対する付着斑の低減効果の向上と集束性の向上効果の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例欄における接着性評価のための複合材界面特性評価装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
先ず、本発明に係る無機繊維用サイジング剤(以下、サイジング剤ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。サイジング剤は、樹脂(A)と所定の含フッ素界面活性剤(B)とを含有する。
【0019】
(樹脂(A))
本実施形態のサイジング剤に供される樹脂(A)は、サイジング剤が付与される無機繊維の用途等に応じて適宜公知のものから選択される。樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種の樹脂を単独で使用してもよく、2種以上の樹脂を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂(三菱ケミカル社製:商品名:jER828,jER1002,jER1001)、ポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製:商品名:スーパーフレックス740)、ポリプロピレン樹脂(丸芳化学社製:商品名:MGP-1650)、ポリプロピレン樹脂(東邦化学工業社製:商品名:ハイテックP-9018)、ポリエステル樹脂(東洋紡社製:商品名:バイロナールMD-1480)、フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製:商品名:YP-50S)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物とジアミノジフェニルエーテルのポリイミド樹脂前駆体、ポリアミド樹脂(東レ社製:商品名:AQナイロンP-95)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とフマル酸のポリエーテルエステル樹脂、エポキシ樹脂とメタクリル酸のビニルエステル樹脂、平均分子量2000のポリエチレングリコールとジメチルテレフタレートとラウリルアルコールの共重合物(ポリエーテルエステル樹脂)等が挙げられる。
【0021】
無機繊維が複合材料に適用される場合、サイジング剤に配合される樹脂の種類は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点より複合材料を構成する母材の種類を考慮して選択されることが好ましい。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。マトリックス樹脂がポリアミド樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ビニルエステル樹脂を含むことが好ましい。マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
【0022】
(含フッ素界面活性剤(B))
本実施形態のサイジング剤に供される含フッ素界面活性剤(B)は、分子中にパーフルオロアルケニル基を有する界面活性剤が適用される。また、本実施形態のサイジング剤に供される含フッ素界面活性剤(B)は、ポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテルを含むものが好ましい。かかる構成により、マトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。
【0023】
含フッ素界面活性剤(B)の具体例としては、例えばエチレンオキサイドが平均15モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント215M)、エチレンオキサイドが平均12モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント212M)、エチレンオキサイドが平均8モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェント251)、エチレンオキサイドが平均18モル付加したポリオキシアルキレンパーフルオロアルケニルエーテル(ネオス社製:商品名フタージェントFTX-218)、パーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオス社製:商品名フタージェント100)、パーフルオロアルケニルトリアルキルアンモニウムブロマイド(ネオス社製:商品名フタージェント320)等が挙げられる。これらの含フッ素界面活性剤(B)は、1種の含フッ素界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の含フッ素界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
サイジング剤中において、サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは10ppm以上、より好ましくは30ppm以上である。かかる含有割合が10ppm以上の場合、無機繊維に対する付着斑の低減効果をより向上できる。サイジング剤中において、サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは60000ppm以下、より好ましくは50000ppm以下である。かかる含有割合が60000ppm以下の場合、母材としてのマトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
【0025】
サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上である。かかる含有割合が0.001質量部以上の場合、無機繊維に対する付着斑の低減効果をより向上できる。サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分の全質量を100質量部としたとき、含フッ素界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは6質量部以下である。かかる含有割合が6質量部以下の場合、母材としてのマトリックス樹脂と無機繊維との接着性を向上できる。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0026】
(界面活性剤(C))
サイジング剤は、必要によりさらに界面活性剤(C)(ただし、前記含フッ素界面活性剤(B)に該当するものを除く)を配合してもよい。界面活性剤(C)を配合することにより、サイジング剤の乳化安定性を向上できる。界面活性剤(C)としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤(C)は、1種の界面活性剤を単独で使用してもよく、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
非イオン界面活性剤(C)としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤(C)の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2-ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2-エチル-1-ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、二級ドデシルアルコールにエチレンオキサイドを付加した化合物、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシアルキレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、1,2-ジメチルイミダゾール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0030】
両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
サイジング剤中において、樹脂(A)の不揮発分及び界面活性剤(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、樹脂(A)の不揮発分を20質量部以上99質量部以下及び界面活性剤(C)を1質量部以上80質量部以下の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、サイジング剤の乳化安定性を向上できる。
【0031】
本実施形態のサイジング剤の効果について説明する。
(1-1)本実施形態のサイジング剤では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するように構成した。したがって、無機繊維に対する付着斑の低減効果を向上できる。また、サイジング剤で処理された無機繊維の集束性を向上できる。また、母材に対する無機繊維の接着性を向上できる。
【0032】
<第2実施形態>
次に本発明に係る無機繊維の製造方法を具体化した第2実施形態について説明する。第2実施形態について、下記の記載以外は、第1実施形態と同様の構成が適用される。
【0033】
本実施形態の無機繊維の製造方法は、第1実施形態のサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。付着量(溶媒を含まない)については特に制限はないが、無機繊維にサイジング剤として0.01質量%以上10質量%以下となるよう付着させたものが好ましい。かかる数値範囲に規定することにより、無機繊維に対する付着斑の低減効果、集束性等の効能をより向上できる。
【0034】
(無機繊維)
本実施形態において適用される無機繊維の種類としては、特に限定されず、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより有効に発現できる観点からガラス繊維、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の種類としては、例えばアクリル繊維を原料として得られたPAN系炭素繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系炭素繊維、リサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維が挙げられる。本発明において、濾材を構成するガラス繊維にバインダーとフッ素系界面活性剤とを付着させたエアフィルタ用濾材は除かれる。
【0035】
第1実施形態のサイジング剤を無機繊維に付着させるには、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。例えば、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法等が挙げられる。サイジング剤を付着させた無機繊維は、続いて公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。
【0036】
本実施形態の無機繊維の製造方法によれば、第1実施形態の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態の無機繊維の製造方法では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するサイジング剤を炭素繊維に付着させる工程を含んでいる。したがって、無機繊維に対するサイジング剤の付着斑の低減効果が期待され、効率的にサイジング剤を無機繊維に対して付着処理できる。
【0037】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る複合材料を具体化した第3実施形態について説明する。第3実施形態について、下記の記載以外は、第1,2実施形態と同様の構成が適用される。
【0038】
第2実施形態によりサイジング剤を付着させた無機繊維を、母材としてのマトリックス樹脂に含浸させることにより複合材料が得られる。複合材料を製造する際、無機繊維の形態としては特に制限はなく、例えば長繊維状、短繊維状、不織布状等の形態を採用できる。
【0039】
(マトリックス樹脂)
マトリックス樹脂は、複合材料の目的、用途等に応じて公知のものから適宜選択される。マトリックス樹脂の具体例としては、例えばエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、PEEK樹脂、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、BMI樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、ポリエーテルスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂の具体例としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。
【0040】
マトリックス樹脂は、接着性の向上、リサイクル性の向上等の観点からサイジング剤に含まれる樹脂の種類を考慮して選択されてもよい。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂から選ばれる少なくとも1つである組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がポリアミド樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂前駆体、及びポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つである組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がビニルエステル樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ビニルエステル樹脂である組み合わせが好ましい。マトリックス樹脂がポリプロピレン樹脂の複合材料に適用される場合、サイジング剤中の樹脂は、ポリオレフィン樹脂である組み合わせが好ましい。
【0041】
本実施形態の複合材料によれば、以下のような効果を得ることができる。
(3-1)本実施形態の複合材料では、樹脂(A)及び所定の含フッ素界面活性剤(B)を含有するサイジング剤を適用している。したがって、無機繊維とマトリックス樹脂との優れた接着性により、特に機械特性等の各種特性に優れる繊維強化樹脂複合材料が得られる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態のサイジング剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、サイジング剤の性能を維持する観点、無機繊維に対する付与性向上等の観点から、その他の成分として、水又は有機溶媒、平滑剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合することを妨げるものではない。
【0043】
・上記実施形態のサイジング剤が適用される分野は、特に限定されない。例えばマトリックス樹脂を含浸させた炭素繊維複合材料(CFRP)の他、コンクリートの補強用繊維等に適用してもよい。
【実施例0044】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0045】
試験区分1(サイジング剤の調製)
実施例1のサイジング剤は、原料として表1に示される含フッ素界面活性剤(B-1)、樹脂(A)として表2に示されるエポキシ樹脂(A-1)、界面活性剤(C)として表3に示されるトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド34モルとプロピレンオキサイド4モルのランダム付加物(C-1)を使用した。
【0046】
まず、含フッ素界面活性剤(B-1)以外の各原料を混合したものを100℃に加温して均一にした。その後、70℃以下に冷却して徐々に水を加えた後に含フッ素界面活性剤(B-1)を加えることで、表4に示される含有割合からなる実施例1のサイジング剤の水性液を得た。
【0047】
実施例2~16、比較例1~5のサイジング剤又はサイジング剤の水性液は、原料として表1の含フッ素界面活性剤(B)、表2の樹脂(A)、及び必要により表3の界面活性剤(C)を使用した。各成分を表4に示した含有割合にて混合し、下記のA~Eに示される調製方法によってサイジング剤の水性液又はサイジング剤を得た。
【0048】
A:含フッ素界面活性剤(B)以外の各原料を混合したものを100℃に加温して均一にした。その後、70℃以下に冷却して徐々に水を加えた後に含フッ素界面活性剤(B)を加えることでサイジング剤の水性液を得た。
【0049】
B:予め調製した樹脂(A)を含む乳化物と、界面活性剤(C)及び含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
C:予め製造された樹脂(A)を含む乳化物と含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
【0050】
D:予め製造された樹脂(A)を含む乳化物と界面活性剤(C)を混合することでサイジング剤の水性液を得た。
E:樹脂(A)と界面活性剤(C)を混合したものに徐々に水を加えてサイジング剤の水性液を得た。
【0051】
F:界面活性剤(C)と含フッ素界面活性剤(B)を混合することでサイジング剤を得た。
含フッ素界面活性剤(B)の種類と含有量、樹脂(A)の種類と不揮発分としての含有量、界面活性剤(C)の種類と含有量、サイジング剤の調製方法を、表4の「含フッ素界面活性剤(B)」欄、「樹脂(A)」欄、「界面活性剤(C)」欄、「製造時の混合方法」欄にそれぞれ示す。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【表4】
表4に記載する接着性評価に使用したマトリックス樹脂、*1)~*3)の詳細は以下のとおりである。
【0056】
(接着性評価に使用したマトリックス樹脂)
エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製 商品名:jER828+トリエチレンテトラミン)
ビニルエステル樹脂(昭和電工社製 商品名:リポキシR-804B(同社製メチルエチルケトンパーオキシド硬化剤使用))
ポリアミド樹脂(宇部興産社製 UBEナイロン 1011FB)
ポリプロピレン樹脂:2%無水マレイン酸変性ポリプロピレン
*1)樹脂(A)の不揮発分100部に対する含有割合(部)
*2)サイジング剤の不揮発分中における含フッ素界面活性剤(B)の含有割合(ppm)
*3)不揮発分基準
なお、不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量として求めた。
【0057】
試験区分2(接着性の評価)
接着性は、市販の複合材界面特性評価装置を用いてマイクロドロップレット法によって測定される応力により評価した。
図1に複合材界面特性評価装置10の概略図を示す。
【0058】
上述したように調製した各例の水性液又はサイジング剤を更に水希釈し、固形分が2%の水性液を作成した。この水性液をストランド状の炭素繊維又はガラス繊維に固形分として2%付与されるように浸漬法にて給油することで各例のサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維又はガラス繊維を調製した。
【0059】
次に、この炭素繊維又はガラス繊維から1本の炭素繊維又はガラス繊維を取り出し、この繊維12を板状の四角枠状のホルダー11に緊張した状態でその両端を接着剤14で固定した。次に、表4に示される各例のマトリックス樹脂を、直径がほぼ70μmの樹脂滴13となるように繊維12に付着させ、固定した。
【0060】
図示しない装置本体には、一側面において垂直断面が先細状に成型された2枚の板状のブレード17,18が、その先端部17a及び18aが向かい合わせになる位置状態で取り付けられている。
【0061】
樹脂滴13が固定されている繊維12を2枚のブレード17,18の先端部17a,18aで挟む位置にて、ホルダー11を装置本体に固定されている基板16に取り付けた。基板16にはロードセル15が接続され、基板16に負荷される応力が計測される。
【0062】
ホルダー11を5mm/分の速度で繊維軸方向に移動させた時に、ブレード17,18の先端部17a,18aによって樹脂滴13が繊維12から剥離する際に生じる最大応力Fを、ロードセル15にて計測した。
【0063】
計測した値を用いて、下記の数1により界面せん断強度τを算出した。同様の操作を20回行い、得られた界面せん断強度の平均値を求めた。さらに得られた平均値について、下記に示される使用したマトリックス樹脂の基準数値に対する増加率を求め、以下の基準により評価した。結果を表4の「接着性」に示す。また、使用した無機繊維の種類及びマトリックス樹脂の種類を、表4の「接着性評価に使用した無機繊維」欄及び「接着性評価に使用したマトリックス樹脂」欄にそれぞれ示す。
【0064】
【数1】
数1において、
F:繊維12から樹脂滴13が剥離する際に生じる最大応力(N)、
D:繊維12の直径(m)、
L:樹脂滴13の引き抜き方向の直径(m)。
【0065】
・使用したマトリックス樹脂の基準数値
エポキシ樹脂:60MPa
ビニルエステル樹脂:40MPa
ポリアミド樹脂:50MPa
ポリプロピレン樹脂:22MPa
・接着性の評価基準
◎◎(優れる):増加率が12%以上
◎(良好):増加率が9%以上12%未満
○(可):増加率が1%以上9%未満
×(不可):増加率が1%未満
試験区分3(付着斑抑制の評価)
試験区分2で得られたサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維について、十分に乾燥させた炭素繊維束から1m毎に10か所で5mgの炭素繊維をサンプリングした。熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)で40℃→500℃まで10℃/分で昇温後、10分500℃を保持させた際の初期質量から最終質量の差分をサイジング剤付着量とした。10か所の測定値の標準偏差の値を以下の基準で評価した。結果を表4の「付着斑抑制」欄に示す。
【0066】
・付着斑抑制の評価基準
◎(良好):0.2未満
○(可):0.2以上0.3未満
×(不可):0.3以上
試験区分4(集束性の評価)
試験区分2で得られたサイジング剤が付与されたストランド状炭素繊維について、乾燥工程を経たのちの金属ローラー部分での糸の集束性を目視にて以下の基準で評価した。結果を表4の「集束性」欄に示す。
【0067】
・集束性の評価基準
○(可):糸が纏まって金属ローラーを通過しており、工程性に問題が無い場合
×(不可):糸が纏まっておらず金属ローラーへの巻きつきが生じている場合
以上表4の結果からも明らかなように、各実施例のサイジング剤が付与された無機繊維は、付着斑抑制及び集束性の評価はいずれも可以上であった。また、サイジング剤が付与された無機繊維のマトリックス樹脂に対する接着性の評価はいずれも可以上であった。本発明によれば、付着斑抑制、集束性、接着性を向上できるという効果が生じる。