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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084548
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】遠心ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/16 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
F04D29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198792
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA02
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB46
3H130AB58
3H130AC30
3H130BA53A
3H130BA53C
3H130CA21
3H130CB09
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DC12X
3H130EB01A
3H130EB01C
3H130EB01F
(57)【要約】
【課題】遠心ポンプにおいて、羽根車の入口部分に発生した逆流が羽根車の内部に流入することを抑制しつつ、ポンプ効率の低下を抑制する。
【解決手段】遠心ポンプ1は、吐出室10が内部に形成されたケーシング3と、ケーシング3に回転可能に配置された回転軸20と、吐出室10に配置されるとともに回転軸20に固定され、入口35が回転軸20と同軸上に位置し、回転軸20から離れるように径方向外側に向かって延びる複数の羽根板31を有する羽根車30と、ケーシング3と羽根車30との間に配置され、ケーシング3に固定されているライナリング40とを備える。ライナリング40は、回転軸20の軸方向において羽根板31の入口35側の外端31bと位置合わせされ、径方向外側に向かって延びる循環面40eを有し、外端31bと径方向外側において隣接している壁40aと、壁40aによって、少なくとも一部が画定されている逆流循環溝39とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出室が内部に形成されたケーシングと、
前記ケーシングに回転可能に配置された回転軸と、
前記吐出室に配置されるとともに前記回転軸に固定され、入口が前記回転軸と同軸上に位置し、前記回転軸から離れるように径方向外側に向かって延びる複数の羽根板を有する羽根車と、
前記ケーシングと前記羽根車との間に配置され、前記ケーシングに固定されているライナリングと
を備え、
前記ライナリングは、
前記回転軸の軸方向において前記羽根板の前記入口側の外端と位置合わせされ、前記径方向外側に向かって延びる循環面を有し、前記外端と前記径方向外側において隣接している第1壁と、
前記第1壁によって、少なくとも一部が画定されている逆流循環溝と
を備える、遠心ポンプ。
【請求項2】
前記ライナリングは、
前記第1壁の先端から、前記軸方向において前記羽根車から離れる方向に延びる第2壁と、
前記第2壁の先端から、前記径方向内側に向かって延びる第3壁と
を備え、
前記逆流循環溝は、前記第1壁と、前記第2壁と、前記第3壁とによって、画定されている、請求項1に記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記第3壁は、前記第2壁の先端から、前記径方向内側かつ前記軸方向の前記羽根車側に向かって延びる、請求項2に記載の遠心ポンプ。
【請求項4】
前記ライナリングは、前記吐出室と前記逆流循環溝とを連通する第1連結流路を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の遠心ポンプ。
【請求項5】
前記ライナリングは、前記羽根車に対して前記軸方向に間隔をあけて位置する対向部を有し、
前記入口の外周部と前記対向部との間には、液体の流動を許容する隙間が形成され、
前記対向部には、前記液体の流動方向と交差する方向の断面積を広くした環状の溝からなる高圧部が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の遠心ポンプ。
【請求項6】
前記高圧部は、
第1膨張室と、
前記第1膨張室に対して前記液体の流動方向の下流側に間隔をあけて位置する第2膨張室と
を含む、請求項5に記載の遠心ポンプ。
【請求項7】
前記ライナリングは、前記第1膨張室と前記逆流循環溝とを連通する第2連結流路を備える、請求項6に記載の遠心ポンプ。
【請求項8】
前記ライナリングは、前記第2膨張室と前記逆流循環溝とを連通する第3連結流路を備える、請求項6又は7に記載の遠心ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプにより移送される液体の流量が設計流量より低い場合、羽根車の入口部分において逆流が生じることがある。逆流が生じると、逆流によるキャビテーションが発生することがある。キャビテーションが発生すると、振動や騒音が発生し、ポンプの正常な運転が妨げられる可能性がある。
【0003】
特許文献1には、羽根の最も吸込側に位置する部分である前端部の径方向外側に設けられた逆流循環部を備える遠心ポンプが開示されている。羽根車の入口部分において発生した逆流は、逆流循環部で循環し得る。そのため、逆流の上流側への広がりが制限され、キャビテーションの発生が抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-116750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の遠心ポンプでは、羽根の前端部によって加圧された液体は、逆流循環部にも流入する。換言すると、羽根の前端部によって加圧された液体のうち、羽根車の内部に流入する液体の割合が低下し、ポンプ効率が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、遠心ポンプにおいて、羽根車の入口部分に発生した逆流が羽根車の内部に流入することを抑制しつつ、ポンプ効率の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吐出室が内部に形成されたケーシングと、前記ケーシングに回転可能に配置された回転軸と、前記吐出室に配置されるとともに前記回転軸に固定され、入口が前記回転軸と同軸上に位置し、前記回転軸から離れるように径方向外側に向かって延びる複数の羽根板を有する羽根車と、前記ケーシングと前記羽根車との間に配置され、前記ケーシングに固定されているライナリングとを備え、前記ライナリングは、前記回転軸の軸方向において前記羽根板の前記入口側の外端と位置合わせされ、前記径方向外側に向かって延びる循環面を有し、前記外端と前記径方向外側において隣接している第1壁と、前記第1壁によって、少なくとも一部が画定されている逆流循環溝とを備える、遠心ポンプを提供する。
【0008】
本発明によれば、循環面は、回転軸の軸方向において羽根板の入口側の外端と位置合わせされ、径方向外側に向かって延びている。そのため、羽根車の入口付近で発生した逆流は、循環面に沿って、逆流循環溝に流入し得る。従って、羽根車の入口付近で発生した逆流が、羽根車の内部に流入することが抑制され得る。また、羽根板の入口側の外端は、第1壁と隣接している。そのため、液体が、羽根車の入口付近において回転軸の径方向外側に向かって流れることが抑制され得る。すなわち、羽根車の入口付近の液体は、羽根車の内部に向かって流れ得る。従って、ポンプ効率が低下することが抑制され得る。
【0009】
前記ライナリングは、前記第1壁の先端から、前記軸方向において前記羽根車から離れる方向に延びる第2壁と、前記第2壁の先端から、前記径方向内側に向かって延びる第3壁とを備え、前記逆流循環溝は、前記第1壁と、前記第2壁と、前記第3壁とによって、画定されていてもよい。
【0010】
前記の構成によれば、逆流循環溝に流入した逆流は、逆流循環溝で循環し得る。そのため、逆流循環溝に流入した逆流が、逆流循環溝から流出し、羽根車に吸い込まれることが抑制され得る。
【0011】
前記第3壁は、前記第2壁の先端から、前記径方向内側かつ前記軸方向の前記羽根車側に向かって延びていてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、逆流循環溝に流入した逆流は、第3壁に沿って流れることによって、逆流循環溝から流出し難くなり得る。そのため、逆流循環溝に流入した逆流が、逆流循環溝から流出し、羽根車に吸い込まれることが抑制され得る。
【0013】
前記ライナリングは、前記吐出室と前記逆流循環溝とを連通する第1連結流路を備えていてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、第1連結流路を介して、相対的に高圧である吐出室から相対的に低圧である逆流循環溝に向かって液体が流れ得る。そのため、逆流循環溝に流入した逆流の一部は、羽根車から離れる方向に向かって押し流され得る。従って、逆流循環溝に流入した逆流が羽根車に吸い込まれることが抑制され得る。
【0015】
前記ライナリングは、前記羽根車に対して前記軸方向に間隔をあけて位置する対向部を有し、前記入口の外周部と前記対向部との間には、液体の流動を許容する隙間が形成され、前記対向部には、前記液体の流動方向と交差する方向の断面積を広くした管状の溝からなる高圧部が形成されていてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、隙間を介して、相対的に高圧である吐出室から相対的に低圧である羽根車の入口に向かって液体が流れ得る。そのため、回転軸の径方向における羽根車の内部の圧力差を低減できる。従って、キャビテーションの発生を抑制することができる。また、高圧部によって、隙間には、隙間の断面積が広い部分と狭い部分とが形成されているため、隙間の断面積が広い部分によって液体の流れを減速し、圧力を高めることでキャビテーションを効果的に消滅できる。
【0017】
前記高圧部は、第1膨張室と、前記第1膨張室に対して前記液体の流動方向の下流側に間隔をあけて位置する第2膨張室とを含んでいてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、第1膨張室と第2膨張室とが設けられているため、二段階で圧力を高めることができる。そのため、キャビテーションの消滅効果を高めることができる。
【0019】
前記ライナリングは、前記第1膨張室と前記逆流循環溝とを連通する第2連結流路を備えていてもよい。
【0020】
前記の構成によれば、第2連結流路を介して、第2膨張室に比べ相対的に高圧である第1膨張室から逆流循環溝に向けて液体が流れ得る。すなわち、第1膨張室から逆流循環溝に向けて、液体は相対的に速く流れ得る。そのため、逆流循環溝に流入した逆流の一部は、羽根車から離れる方向に向かって遠くまで押し流される。従って、逆流循環溝に流入した逆流が羽根車に吸い込まれることが抑制され得る。
【0021】
前記ライナリングは、前記第2膨張室と前記逆流循環溝とを連通する第3連結流路を備えていてもよい。
【0022】
前記の構成によれば、第3連結流路を介して、第1膨張室に比べ相対的に低圧である第2膨張室から逆流循環溝に向けて液体が流れ得る。すなわち、第2膨張室から逆流循環溝に向けて流れる液体の流量は、相対的に少なくなり得る。そのため、ポンプの漏れ損失が小さくなり、効率が向上し得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の遠心ポンプによれば、羽根車の入口部分に発生した逆流が羽根車の内部に流入することを抑制しつつ、ポンプ効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態における遠心ポンプの断面図。
図2図1の部分IIの拡大図。
図3】第2実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
図4】第3実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
図5】第4実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
図6】第5実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
図7】第6実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
図8】第7実施形態における遠心ポンプの図2と同様の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1及び図2は、本実施形態における遠心ポンプ1の一例を示す。本実施形態では、遠心ポンプ1は、横軸の両吸込型遠心ポンプである。また、本実施形態では、遠心ポンプ1は、吸込口2から吸い込んだ水(液体)を吐出口11から排出するもので、ケーシング3、回転軸20、羽根車30、及びライナリング40を備える。
【0026】
ケーシング3は、ケーシング本体4とケーシングカバー6とを備える。
【0027】
ケーシング本体4の幅方向中央には、概ねU字形状の下側仕切壁5が設けられている。ケーシングカバー6の幅方向中央には、下側仕切壁5の上方に位置するように、概ね逆U字形状の上側仕切壁7が設けられている。ケーシング本体4にケーシングカバー6を組み付けることで、下側仕切壁5と上側仕切壁7とは、中央に取付孔8を備える環状体になる。取付孔8には、羽根車30との干渉を防ぐために、例えば、ステンレス、鋳鉄、青銅等の摺動性が良好な材料からなる環状のライナリング40が配置され、固定されている。
【0028】
ケーシング本体4には、吸込口2と吐出口11とが形成されている。吸込口2から吐出口11までの液体流路は、ケーシング3の内部に形成された吸込室9と吐出室10とによって構成されている。吸込室9は、吸込口2に連通する流路であり、ケーシング3内において、仕切壁5,7の左右両外側に形成されている。吐出室10は、ライナリング40が有する環状部40iにより画定された開口38を介して吸込室9と連通するとともに、吐出口11に連通する流路であり、仕切壁5,7内に形成されている。
【0029】
回転軸20は、ライナリング40の開口38を軸方向(X方向)に貫通するように、ケーシング3に回転可能に配置されている。回転軸20の両端は、ケーシング3からX方向外側へ突出されており、ケーシング3に対して軸受22によって軸支され、メカニカルシール21によって軸封されている。図1において回転軸20の右端には、図示しないモータ等の駆動機が接続されている。
【0030】
羽根車30は、両吸込型であり、吐出室10内に配置されるとともに回転軸20に固定されている。本実施形態では、羽根車30は、羽根車30のX方向の中心を通り、かつ、吸込口2の中心を通る中心軸CLに関して対称である。そのため、以下の説明では、中心軸CLに関して左側のみを説明するが、右側に関しても同様の構成である。
【0031】
羽根車30は、回転軸20と一体に回転されることによって、外部の水を吸込口2から吸込室9内に吸引し、吐出室10を経て吐出口11から吐出する。羽根車30は、回転軸20が延びる方向から見て円形状であり、径方向外側に向かって延びる複数の羽根板31と、羽根板31のX方向の外側に配置されたシュラウド32を備える。
【0032】
羽根板31は、回転軸20側に位置する基端部31aから、回転軸20から離れるように羽根車30の径方向外側に位置する先端部31cへ延びている。また、羽根板31は、X方向の最も外側に外端31bを有する略矩形である。羽根板31の基端部31aには、回転軸20に固定するための固定部33が一体に設けられている。固定部33には、吸い込んだ水を羽根車30の径方向外側に導くために、隆起部34が形成されている。
【0033】
シュラウド32は、X方向における羽根板31の外側に固定されている。シュラウド32は、外周縁が羽根板31の先端部31cと一致する外径の円板状である。シュラウド32には、羽根板31の基端部31aが位置する中央に入口35が形成されており、入口35と回転軸20とは同軸上に位置している。
【0034】
前述の通り、ライナリング40は、ケーシング3と羽根車30との間に配置され、ケーシング3に固定されている。本実施形態では、ライナリング40は、壁(第1壁)40a、壁(第2壁)40b、壁(第3壁)40c、及び逆流循環溝39を備える。
【0035】
本実施形態では、ライナリング40の環状部40iは、羽根板31の外端31bと径方向外側において隣接している。また、壁40aは、環状部40iから径方向外側に向かって延びている。すなわち、壁40aは、外端31bと径方向外側において隣接している。また、壁40aは、X方向の羽根車30とは反対側に循環面40eを有する。循環面40eは、X方向において、羽根板31の入口35側の外端31bと位置合わせされ、径方向外側に向かって延びている。つまり、壁40aは、X方向において外端31bと位置合わせされた循環面40eから、羽根車30に向かって厚みを有するように構成されている。好ましくは、外端31bと循環面40eとは、X方向において同じ位置である。
【0036】
壁40bは、壁40aの先端、つまり、径方向外側の端部から、X方向において羽根車30から離れる方向に延びている。また、壁40bは、径方向内側に循環面40fを有する。循環面40fは、循環面40eの径方向外側の端部に接続している。すなわち、循環面40eと循環面40fとは連続している。
【0037】
壁40cは、壁40bの先端、つまり、X方向における羽根車30とは反対側の端部から、径方向内側に向かって延びている。また、壁40cは、X方向の羽根車30側に循環面40gを有する。循環面40gは、循環面40fのX方向の羽根車30とは反対側の端部に接続している。すなわち、循環面40fと循環面40gとは連続している。本実施形態では、壁40aと壁40cとは、より具体的には、循環面40eと循環面40gとは、略平行である。
【0038】
逆流循環溝39は、壁40a~40cによって画定されている。より具体的には、逆流循環溝39は、循環面40e~40gによって画定されている。逆流循環溝39は、壁40aによって少なくとも一部が画定されていればよく、つまり、壁40b,40cの全部又は一部がなくてもよい。
【0039】
本実施形態では、羽根車30とケーシング3との間には、吐出室10から吸込室9へ向かう水の流動を許容する隙間41が形成されている。詳細には、隙間41は、吐出室10から、吸込室9の羽根車30によって水が吸い込まれる箇所、すなわち、羽根車30の入口35付近に向かう水の流動を許容する。換言すると、隙間41は、吐出室10と羽根車30の入口35とを連通させている。
【0040】
隙間41は、入口35の外周部36と、ライナリング40の開口38の外周部(対向部)40hとの間に形成されている。ライナリング40の開口38と、入口35とは、同心円状かつ概ね同一直径で形成されており、X方向に定められた間隔で配置されている。換言すると、外周部40hは、羽根車30に対してX方向に間隔を空けて位置している。
【0041】
羽根車30の基端部31a側でのキャビテーションをより効果的に消滅させるために、隙間41には、高圧部43が形成されている。高圧部43は、膨張室44,45を含む。膨張室44,45は、ライナリング40の外周部40hを円環状に切り欠く(切削する)ことで形成されている。また、膨張室44,45は、吐出室10から入口35に向けた通水方向(羽根車30の径方向の外側から内側)に向けて、膨張室44及び膨張室45の順で形成されている。
【0042】
膨張室44,45は、通水方向(液体の流動方向)に対して交差するX方向の隙間41の断面積を広くするもので、隙間41を構成するライナリング40の外周部40hに設けた環状の溝によって構成されている。ライナリング40の径方向外側(通水方向の上流側)に位置する膨張室44と、ライナリング40の径方向内側(通水方向の下流側)に位置する膨張室45とは、定められた間隔をあけて形成されている。
【0043】
このようにした隙間41は、2以上の膨張室44,45によって、隙間41の断面積が広い部分と狭い部分とを有するラビリンス構造になっている。そして、隙間41の断面積が広い部分によって、隙間41を流れる水の流れを減速し、圧力を高めることができる。
【0044】
本実施形態によれば、循環面40eは、回転軸20の軸方向において羽根板31の入口35側の外端31bと同じ位置から、径方向外側に向かって延びている。そのため、羽根車30の入口35付近で発生した逆流は、循環面40eに沿って、逆流循環溝39に流入し得る。従って、羽根車30の入口35付近で発生した逆流が、羽根車30の内部に流入することが抑制され得る。また、羽根板31の入口35側の外端31bは、壁40aと隣接している。そのため、液体が、羽根車30の入口35付近において回転軸20の径方向外側に向かって流れることが抑制され得る。すなわち、羽根車30の入口35付近の液体は、羽根車30の内部に向かって流れ得る。従って、ポンプ効率が低下することが抑制され得る。
【0045】
また、ライナリング40が壁40bと壁40cを備えるため、逆流循環溝39に流入した逆流は、逆流循環溝39で循環し得る。そのため、逆流循環溝39に流入した逆流が、逆流循環溝39から流出し、羽根車30に吸い込まれることが抑制され得る。
【0046】
さらに、隙間41を介して、相対的に高圧である吐出室10から相対的に低圧である羽根車30の入口35に向かって液体が流れ得る。そのため、羽根板31の基端部31aと先端部31cとの圧力差、すなわち、回転軸20の径方向における羽根車30の内部の圧力差を低減できる。従って、キャビテーションの発生を抑制することができる。また、高圧部43によって、隙間41には、隙間41の断面積が広い部分と狭い部分とが形成されているため、隙間41の断面積が広い部分によって液体の流れを減速し、圧力を高めることでキャビテーションを効果的に消滅できる。
【0047】
以下の第2実施形態から第7実施形態に係る遠心ポンプ1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。これらの実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0048】
(第2実施形態)
図3を参照すると、第2実施形態では、ライナリング40は、壁40aに膨張室44と逆流循環溝39とを流体的に連通する連結流路(第2連結流路)47を備える。具体的には、連結流路47は、膨張室44から逆流循環溝39に向かってX方向に沿って環状に延びている。
【0049】
第2実施形態によれば、連結流路47を介して、膨張室45に比べ相対的に高圧である膨張室44から逆流循環溝39に向けて液体が流れ得る。すなわち、膨張室44から逆流循環溝39に向けて、液体は相対的に速く流れ得る。そのため、逆流循環溝39に流入した逆流の一部は、羽根車30から離れる方向に向かって遠くまで押し流される。従って、逆流循環溝39に流入した逆流が羽根車30に吸い込まれることが抑制され得る。
【0050】
(第3実施形態)
図4を参照すると、第3実施形態では、ライナリング40は、壁40aに膨張室45と逆流循環溝39とを流体的に連通する連結流路(第3連結流路)48を備える。具体的には、連結流路48は、膨張室45から逆流循環溝39に向かってX方向に沿って環状に延びている。
【0051】
第3実施形態によれば、連結流路48を介して、膨張室44に比べ相対的に低圧である膨張室45から逆流循環溝39に向けて液体が流れ得る。すなわち、膨張室45から逆流循環溝39に向けて流れる液体の流量は、相対的に少なくなり得る。そのため、ポンプの漏れ損失が小さくなり、効率が向上し得る。
【0052】
(第4実施形態)
図5を参照すると、第4実施形態では、ライナリング40は、壁40aに膨張室44と逆流循環溝39とを流体的に連通する連結流路(第2連結流路)47を備える。具体的には、連結流路47は、膨張室44から逆流循環溝39に向かってX方向に沿って環状に延びている。
【0053】
また、ライナリング40は、壁40aに膨張室45と逆流循環溝39とを流体的に連通する連結流路(第3連結流路)48を備える。具体的には、連結流路48は、膨張室45から逆流循環溝39に向かってX方向に沿って環状に延びている。
【0054】
第4実施形態によれば、連結流路47を介して、膨張室45に比べ相対的に高圧である膨張室44から逆流循環溝39に向けて液体が流れ得る。すなわち、膨張室44から逆流循環溝39に向けて、液体は相対的に速く流れ得る。そのため、逆流循環溝39に流入した逆流の一部は、羽根車30から離れる方向に向かって遠くまで押し流される。従って、逆流循環溝39に流入した逆流が羽根車30に吸い込まれることが抑制され得る。
【0055】
また、連結流路48を介して、膨張室44に比べ相対的に低圧である膨張室45から逆流循環溝39に向けて液体が流れ得る。すなわち、膨張室45から逆流循環溝39に向けて流れる液体の流量は、相対的に少なくなり得る。そのため、ポンプの漏れ損失が小さくなり、効率が向上し得る。
【0056】
(第5実施形態)
図6を参照すると、第5実施形態では、ライナリング40は、壁40aに吐出室10と逆流循環溝39とを流体的に直接連通する連結流路(第1連結流路)46を備える。具体的には、連結流路46は、吐出室10から逆流循環溝39に向かってX方向に対して角度を有して環状に延びている。
【0057】
第5実施形態によれば、連結流路46を介して、相対的に高圧である吐出室10から相対的に低圧である逆流循環溝39に向かって液体が流れ得る。そのため、逆流循環溝39に流入した逆流の一部は、羽根車30から離れる方向に向かって押し流され得る。従って、逆流循環溝39に流入した逆流が羽根車30に吸い込まれることが抑制され得る。
【0058】
(第6実施形態)
図7を参照すると、第6実施形態では、ライナリング40の壁40cは、壁40bの先端から、径方向内側かつ、X方向の羽根車30側に向かって延びている。換言すると、壁40cの先端は、壁40aに向かって傾斜している。
【0059】
第6実施形態によれば、逆流循環溝39に流入した逆流は、壁40cに沿って流れることによって、逆流循環溝39から流出し難くなり得る。そのため、逆流循環溝39に流入した逆流が、逆流循環溝39から流出し、羽根車30に吸い込まれることが抑制され得る。
【0060】
(第7実施形態)
図8を参照すると、第7実施形態では、ライナリング40は、壁40bと壁40cとに逆流循環溝39と吸込室9とを流体的に連通する排出流路49を備える。詳細には、排出流路49は、一端49aが循環面40fと循環面40gとの接続箇所に位置し、他端49bがライナリング40のX方向における羽根車30と最も離れた面である外面40jに位置している。また、他端49bは、径方向において、一端49aより外側に位置している。つまり、排出流路49は、逆流循環溝39から径方向外側に向かって、かつ、X方向の羽根車30から離れるように環状に延びている。
【0061】
第7実施形態では、逆流循環溝39に流入した逆流は、排出流路49を介して吸込室9に流出する。そのため、逆流を羽根車30から遠ざけることができ、逆流が羽根車30に吸い込まれることを抑制できる。
【符号の説明】
【0062】
1 遠心ポンプ
2 吸込口
3 ケーシング
4 ケーシング本体
5 下側仕切壁
6 ケーシングカバー
7 上側仕切壁
8 取付孔
9 吸込室
10 吐出室
11 吐出口
20 回転軸
21 メカニカルシール
22 軸受
30 羽根車
31 羽根板
31a 基端部
31b 外端
31c 先端部
32 シュラウド
33 固定部
34 隆起部
35 入口
36 外周部
38 開口
39 逆流循環溝
40 ライナリング
40a 壁(第1壁)
40b 壁(第2壁)
40c 壁(第3壁)
40e,40f,40g 循環面
40h 外周部(対向部)
40i 環状部
40j 外面
41 隙間
42 入口
43 高圧部
44 膨張室(第1膨張室)
45 膨張室(第2膨張室)
46 連結流路(第1連結流路)
47 連結流路(第2連結流路)
48 連結流路(第3連結流路)
49 排出流路
49a 一端
49b 他端
CL 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8