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特開2023-84566推定装置、推定方法および推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084566
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法および推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20230612BHJP
【FI】
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198822
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 和輝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】島田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 知範
(72)【発明者】
【氏名】木村 大地
(57)【要約】
【課題】プラントや都市空間で発生する時系列データの分布パターンに応じた学習済みのモデルを適用する。
【解決手段】記憶部14が、入力値と実測値との組み合わせである訓練データ14aを記憶する。抽出部15bが、訓練データ14aのうち、入力値と、推定値を出力するモデル14bに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する。生成部15cが、抽出された近傍のデータを用いて、モデル14bを学習により生成する。推定部15dが、生成されたモデル14bを用いて入力値に対する推定値を出力する。推定部15dは、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力値と実測値との組み合わせである訓練データを記憶する記憶部と、
前記訓練データのうち、入力値と、推定値を出力するモデルに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する抽出部と、
抽出された前記近傍のデータを用いて、前記モデルを学習により生成する生成部と、
生成された前記モデルを用いて入力値に対する推定値を出力する推定部と、
を有し、
前記推定部は、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力することを特徴とする推定装置。
【請求項2】
前記抽出部は、抽出した前記近傍のデータの数が所定数未満である場合に、アラートを出力することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記抽出部は、アラートを出力した場合に、さらに、前記要求点における実測値を訓練データとして前記記憶部に記憶させることを特徴とする請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、アラートを出力した場合に、さらに、前記モデルの他のモデルへの切り替え、または、前記モデルの再学習を行うことを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記入力値の分布の変化に加え、前記モデルの複数の説明変数の間の因果関係の変化または異なる説明変数の選択に応じた目的変数の変化に基づいて、入力される入力値の分布が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の推定装置。
【請求項6】
推定装置が実行する推定方法であって、
前記推定装置は、入力値と実測値との組み合わせである訓練データを記憶する記憶部を有し、
前記訓練データのうち、入力値と、推定値を出力するモデルに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する抽出部と、
抽出された前記近傍のデータを用いて、前記モデルを学習により生成する生成部と、
生成された前記モデルを用いて入力値に対する推定値を出力する推定工程と、
を含み、
前記推定工程は、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力することを特徴とする推定方法。
【請求項7】
入力値と実測値との組み合わせである訓練データを記憶する記憶部を参照し、
前記訓練データのうち、入力値と、推定値を出力するモデルに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する抽出ステップと、
抽出された前記近傍のデータを用いて、前記モデルを学習により生成する生成ステップと、
生成された前記モデルを用いて入力値に対する推定値を出力する推定ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記推定ステップは、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力することを特徴とする推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法および推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラントをはじめとした都市空間の様々な場所において発生するセンサ等の時系列データの特徴を学習して活用する技術が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-185194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラントや都市空間で発生する時系列データ等の非定常なデータを用いて学習されたモデルは頑健性に乏しく、実際に適用する際に適切とは限らない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プラントや都市空間で発生する時系列データ等の非定常なデータを用いて学習された学習済みのモデルが、実際に適用する際に適切であるか否かを確認することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る推定装置は、入力値と実測値との組み合わせである訓練データを記憶する記憶部と、前記訓練データのうち、入力値と、推定値を出力するモデルに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する抽出部と、抽出された前記近傍のデータを用いて、前記モデルを学習により生成する生成部と、生成された前記モデルを用いて入力値に対する推定値を出力する推定部と、を有し、前記推定部は、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が前記近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プラントや都市空間で発生する時系列データ等の非定常なデータを用いて学習された学習済みのモデルが、実際に適用する際に適切であるか否かを確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、推定装置の概略構成を例示する模式図である。
図2図2は、抽出部の処理を説明するための図である。
図3図3は、推定部の処理を説明するための図である。
図4図4は、推定部の処理を説明するための図である。
図5図5は、推定部の処理を説明するための図である。
図6図6は、推定部の処理を説明するための図である。
図7図7は、推定処理手順を例示するフローチャートである。
図8図8は、推定プログラムを実行するコンピュータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0010】
[推定装置の構成]
図1は、推定装置の概略構成を例示する模式図である。図1に例示するように、推定装置10は、パソコン等の汎用コンピュータで実現され、入力部11、出力部12、通信制御部13、記憶部14、および制御部15を備える。
【0011】
入力部11は、キーボードやマウス等の入力デバイスを用いて実現され、操作者による入力操作に対応して、制御部15に対して処理開始などの各種指示情報を入力する。出力部12は、液晶ディスプレイなどの表示装置、プリンター等の印刷装置等によって実現される。
【0012】
通信制御部13は、NIC(Network Interface Card)等で実現され、ネットワークを介した外部の装置と制御部15との通信を制御する。例えば、通信制御部13は、後述する推定処理の処理対象の時系列データを出力するセンサや時系列データを管理する管理装置等と制御部15との通信を制御する。
【0013】
記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。記憶部14には、推定装置10を動作させる処理プログラムや、処理プログラムの実行中に使用されるデータなどが予め記憶され、あるいは処理の都度一時的に記憶される。なお、記憶部14は、通信制御部13を介して制御部15と通信する構成でもよい。
【0014】
本実施形態において、記憶部14は、例えば、後述する推定処理に用いられる訓練データ14aや、推定処理で生成されるモデル14bを記憶する。訓練データ14aは、入力値と実測値との組み合わせである。例えば、記憶部14は、訓練データ14aとして、過去の大量の入力値と実測値との組み合わせを記憶している。
【0015】
制御部15は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて実現され、メモリに記憶された処理プログラムを実行する。これにより、制御部15は、図1に例示するように、取得部15a、抽出部15b、生成部15cおよび推定部15dとして機能する。なお、これらの機能部は、それぞれあるいは一部が、異なるハードウェアに実装されてもよい。例えば、生成部15cと推定部15dとは、別の装置に実装されてもよい。また、制御部15は、その他の機能部を備えてもよい。
【0016】
取得部15aは、時系列データ等の非定常なデータを取得する。例えば、取得部15aは、後述する推定処理の対象とするセンサ値等の非定常な時系列データを、入力部11を介して、あるいは、センサあるいはセンサ値を管理する管理装置等から、通信制御部13を介して取得する。
【0017】
抽出部15bは、訓練データ14aのうち、入力値と、推定値を出力するモデルに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下の近傍のデータを抽出する。
【0018】
ここで、図2は、抽出部の処理を説明するための図である。図2には、訓練データ14aの散布図が例示されている。また、モデル14bは、説明変数xと目的変数yとの関係を表すアルゴリズムf(x)で実現され、入力値xが入力されると推定値yを出力する。抽出部15bは、所望の要求点におけるアルゴリズムfを学習により局所的に推定するために、訓練データ14aのうち、要求点の近傍のデータを抽出する。具体的には、抽出部15bは、図2に三角形で示すように、訓練データ14aのうち、要求点との距離が所定の閾値以下であるxに対応するデータを近傍のデータとして抽出する。
【0019】
なお、推定装置10では、後述する生成部15cが、抽出された近傍のデータを教師データとして用いて学習することにより、局所的に要求点におけるアルゴリズムfを表すモデル14bを生成する。
【0020】
その際に、モデル14bの生成に用いる近傍のデータが少ないと、学習の精度が向上しない。そこで、抽出部15bは、抽出した近傍のデータの数が所定数未満である場合に、アラートを出力する。例えば、抽出部15bは、出力部12に、あるいは通信制御部13を介してユーザ端末等に、「生成されるモデルの精度が低い恐れがある」旨のユーザに対するメッセージを提示する。これにより、生成されるモデル14bの信頼性が高くない場合に、ユーザが検知することが可能となる。
【0021】
また、抽出部15bは、アラートを出力した場合に、さらに、要求点における実測値を訓練データ14aとして記憶部14に記憶させる。すなわち、抽出部15bは、近傍のデータが少ない未知の要求点について、当該要求点と実測値との組み合わせを訓練データ14aに追加する。これにより、推定装置10は、以後に生成されるモデル14bの精度を向上させることが可能となる。
【0022】
図1の説明に戻る。生成部15cは、抽出された近傍のデータを用いて、モデル14bを学習により生成する。すなわち、上述したように、生成部15cは、所望の要求点の近傍のデータを教師データとして学習することにより、局所的に要求点におけるアルゴリズムfを表すモデル14bを生成する。
【0023】
推定部15dは、生成されたモデル14bを用いて入力値に対する推定値を出力する。すなわち、推定部15dは、取得部15aが取得した非定常なデータを入力として、学習済みのモデル14bを適用して推定値を出力する。
【0024】
そして、推定部15dは、出力する推定値が所定の範囲外である場合、または、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力する。また、推定部15dは、アラートを出力した場合に、さらに、モデル14bの他のモデルへの切り替え、または、モデル14bの再学習を行う。
【0025】
ここで、図3図6は、推定部の処理を説明するための図である。具体的には、推定部15dは、出力する推定値が所定の範囲外である場合に、アラートを出力する。例えば、推定装置10は、推定値の範囲を「a以上b以下」というように設定しておく。そして、推定部15dは、適用されている学習済みのモデル14bの入力値に対する出力値が、設定されている範囲を逸脱する見込みになった場合に、その旨を示すメッセージをユーザに提示する。
【0026】
例えば、図3に示すように、入力値が時系列データであって、入力値に対応して出力される1時間後の推定値が、設定されている範囲外となる場合に、推定部15dは「1時間後に保証範囲を逸脱します」というようなメッセージを提示する。図3には、プラントにおけるセンサ値を入力値として、〇で囲んで示す1時間後の推定値が図中の「保証範囲」の値の範囲を逸脱する場合が例示されている。
【0027】
この場合には、ユーザが、自動操作から手動操作に切り替えたり、モデル14bの出力する推定値が保証範囲に戻ったら自動操作を再開したりすることが可能である。図3の「過去の手動操作履歴」の部分では、保証範囲を逸脱して手動操作に切り替えられている。推定部15dは、出力する推定値が設定されている範囲内になるような他の学習済みのモデル14bへの切り替えを行うようにしてもよい。
【0028】
あるいは、推定部15dは、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力する。例えば、図4に示すように、入力値が時系列データであって、入力値がモデル14bの学習に用いられた訓練データの分布の範囲を逸脱する場合に、データの未知性を指摘するメッセージをユーザに提示する。ここで、入力値が訓練データの分布の範囲を逸脱するとは、例えば、訓練データの分布からの乖離具合(乖離度)が所定の閾値以上の外れ値である場合が例示される。その場合に、推定部15dは、例えば「現在の入力値は適用中のモデルの学習に用いられていない」旨のメッセージをユーザに提示する。
【0029】
あるいは、入力値の訓練データの分布からの乖離具合は、例えば、α%以上の場合には大(×)、β%以上α%未満の場合には中(△)、β%未満は小(〇)というように判定されてもよい。図4には、特徴量A、Cについて、現在の入力値の「保証範囲(訓練データ分布)」からの乖離具合が大(×)であることが例示されている。また、特徴量B、Dについて、「保証範囲(訓練データ分布)」からの乖離具合が中(△)であることが例示されている。
【0030】
この場合にも、ユーザが、自動操作から手動操作に切り替えたり、入力値が保証範囲に戻ったら自動操作を再開したりすることが可能である。図4の「過去の手動操作時の説明変数」の部分では、入力値が保証範囲を逸脱して手動操作に切り替えられている。推定部15dは、この保証範囲外の未知の入力値を用いて、モデル14bの再学習を行ってもよい。これにより、未知の入力値を既知の入力値とすることが可能となる。
【0031】
推定部15dは、入力値の分布の変化に加え、モデルの複数の説明変数の間の因果関係の変化または異なる説明変数の選択に応じた目的変数の変化に基づいて、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱するか否かを判定する。
【0032】
例えば、図5に示すように、推定部15dは、図5(a)に示す入力値の分布の変化に加え、図5(b)に示す説明変数間の因果関係や、図5(c)に示す説明変数の選択に応じた目的変数の変化を考慮して、入力値が保証範囲を逸脱するか否かを判定する。
【0033】
図5(a)には、スライド窓を時間軸方向にスライドさせながら各時刻の入力値を入力することにより、入力値の分布の変化を検知して、訓練データ(学習データ)の分布からの乖離具合すなわち入力値の未知性を判定することが例示されている。
【0034】
また、図5(b)には、スライド窓のスライドに応じたモデル14bの説明変数間の因果関係の変化により、入力値の訓練データの分布からの乖離具合すなわち入力値の未知性を判定することが例示されている。
【0035】
また、図5(c)には、モデル14bの説明変数の選択を変更した場合の目的変数の変化により重要特徴の変化を検知して、入力値の訓練データの分布からの乖離具合すなわち入力値の未知性を判定することが例示されている。
【0036】
なお、ここで算出された入力値の訓練データの分布からの乖離具合(乖離度)が所定の閾値より大きい場合には、推定部15dが、入力値の未知性を判定する。入力値の未知性を判定する閾値の値は、抽出部15bが要求点の近傍のデータを抽出する際の閾値と同一の値としてもよい。すなわち、推定装置10は、乖離度が所定の閾値以下の場合に、同一のモデル14bの適用を継続するようにしてもよい。
【0037】
また、推定部15dは、再学習の際には、少量の最新の訓練データを用いて学習するオンライン学習を行ってもよいし、オンライン学習にかえて、最新時刻から遡った所定数の訓練データを用いて学習するバッチ学習を行ってもよい。ここで、図6に示すように、従来の「オンライン学習」は、新たなデータのみでパラメータを更新するため、処理が軽量で、入力値等の状態の変化に迅速に対応できる一方、ハイパーパラメータの更新が困難で、外れ値やノイズの影響を受けやすい。ハイパーパラメータとは、例えば、丸め幅、時間幅、予測先、ステップ数、DNNの層数、ノード数、活性化関数、その他、機械学習モデルに固有の情報等である。
【0038】
これに対し、図6に示すように、「バッチ学習」は、ハイパーパラメータの更新も学習の度に現状に即して更新可能である。また、過去の情報を忘却可能でメモリの軽量化が可能であり、外れ値やノイズの影響を抑制することが可能である。
【0039】
[推定処理手順]
次に、図7を参照して、本実施形態に係る推定装置10による推定処理の一例について説明する。図7は、推定処理手順を例示するフローチャートである。図7のフローチャートは、例えば、推定処理の開始を指示する入力があったタイミングで開始される。
【0040】
まず、抽出部15bが、訓練データ14aのうち、入力値と、モデルに入力する所望の要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する(ステップS1)。
【0041】
次に、生成部15cが、抽出された近傍のデータを用いて、モデル14bを学習により生成する(ステップS2)。すなわち、生成部15cが、要求点の近傍のデータを教師データとして学習することにより、局所的に要求点におけるアルゴリズムを表すモデル14bを生成する。
【0042】
そして、推定部15dが、生成されたモデル14bを用いて入力値に対する推定値を出力する(ステップS3)。すなわち、推定部15dは、取得部15aが取得した非定常なデータを入力として、学習済みのモデル14bを適用して推定値を出力する。
【0043】
また、推定部15dは、出力する推定値が所定の範囲外となる場合、または、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力する(ステップS4)。また、推定部15dは、アラートを出力した場合に、モデル14bの他のモデルへの切り替え、または、モデル14bの再学習を行う。これにより、一連の推定処理が終了する。
【0044】
[効果]
以上、説明したように、上記実施形態の推定装置10では、記憶部14が、入力値と実測値との組み合わせである訓練データ14aを記憶する。また、抽出部15bが、訓練データ14aのうち、入力値と、推定値を出力するモデル14bに入力する所望の入力値である要求点との距離が所定の閾値以下である近傍のデータを抽出する。また、生成部15cが、抽出された近傍のデータを用いて、モデル14bを学習により生成する。推定部15dが、生成されたモデル14bを用いて入力値に対する推定値を出力する。この推定部15dは、出力する推定値が所定の範囲外となる場合、または、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱する場合に、アラートを出力する。
【0045】
このように、所望の要求点の近傍のデータを教師データとして学習して、局所的に要求点におけるアルゴリズムを表すモデル14bが生成される。そして、非定常な入力データが所定の範囲を逸脱する場合や、入力値に対する推定値が所定の範囲を逸脱する場合に、ユーザに通知される。これにより、プラントや都市空間で発生する時系列データ等の非定常なデータを用いて学習された学習済みのモデルが、実際に適用する際に適切であるか否かを確認することが可能となる。
【0046】
また、抽出部15bは、抽出した近傍のデータの数が所定数未満である場合に、アラートを出力する。これにより、生成されるモデル14bの信頼性が高くない場合に、ユーザが検知することが可能となる。
【0047】
また、抽出部15bは、アラートを出力した場合に、さらに、要求点における実測値を訓練データ14aとして記憶部14に記憶させる。これにより、推定装置10は、訓練データを追加して、以後に生成されるモデル14bの精度を向上させることが可能となる。
【0048】
推定部15dは、アラートを出力した場合に、さらに、モデル14bの他のモデルへの切り替え、または、モデル14bの再学習を行う。これにより、推定装置10は、状況に応じて適切なモデル14bを適用することが可能となる。
【0049】
また、推定部15dは、入力値の分布の変化に加え、モデル14bの複数の説明変数の間の因果関係の変化または異なる説明変数の選択に応じた目的変数の変化に基づいて、入力される入力値が近傍のデータの入力値の分布の範囲を逸脱するか否かを判定する。これにより、入力値の未知性を高精度に判定することが可能となる。
【0050】
[システム構成等]
図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUやGPUおよび当該CPUやGPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0051】
また、本実施形態において説明した各処理のうち、自動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的におこなうこともでき、あるいは、手動的におこなわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的におこなうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0052】
[プログラム]
上記実施形態において説明した推定装置が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。例えば、実施形態に係る推定装置10が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータがプログラムを実行することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、かかるプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記実施形態と同様の処理を実現してもよい。
【0053】
図8は、推定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0054】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011およびRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1031に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1041に接続される。ディスクドライブ1041には、例えば、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース1050には、例えば、マウス1051およびキーボード1052が接続される。ビデオアダプタ1060には、例えば、ディスプレイ1061が接続される。
【0055】
ここで、ハードディスクドライブ1031は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093およびプログラムデータ1094を記憶する。上記実施形態で説明した各情報は、例えばハードディスクドライブ1031やメモリ1010に記憶される。
【0056】
また、推定プログラムは、例えば、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュール1093として、ハードディスクドライブ1031に記憶される。具体的には、上記実施形態で説明した推定装置10が実行する各処理が記述されたプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
【0057】
また、推定プログラムによる情報処理に用いられるデータは、プログラムデータ1094として、例えば、ハードディスクドライブ1031に記憶される。そして、CPU1020が、ハードディスクドライブ1031に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した各手順を実行する。
【0058】
なお、推定プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1031に記憶される場合に限られず、例えば、着脱可能な記憶媒体に記憶されて、ディスクドライブ1041等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、推定プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
10 推定装置
11 入力部
12 出力部
13 通信制御部
14 記憶部
14a 訓練データ
14b モデル
15 制御部
15a 取得部
15b 抽出部
15c 生成部
15d 推定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8