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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084574
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/28 20060101AFI20230612BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20230612BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230612BHJP
   F01D 11/02 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F02C7/28 B
F16J15/447
F01D25/00 F
F01D25/00 M
F01D11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198839
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 真人
(72)【発明者】
【氏名】朝原 元夢
(72)【発明者】
【氏名】大村 尚登
【テーマコード(参考)】
3G202
3J042
【Fターム(参考)】
3G202KK06
3G202KK17
3J042AA03
3J042BA01
3J042CA01
3J042CA10
3J042DA01
(57)【要約】
【課題】ホールパターンシールとロータとの接触リスクを低減しつつ、ダンピングを向上させることができる回転機械を提供する。
【解決手段】回転機械は、軸線方向にわたって一様な外径の外周面を有するロータと、ロータの外周側に配置され、ロータに対して軸線回りに相対回転する環状部材と、環状部材に固定されてロータと環状部材との間の空間を高圧側と低圧側とに区画するホールパターンシールと、を備え、ホールパターンシールは、ロータを外周側から覆う環状のシール本体と、シール本体の内周面に設けられ、ロータの外周面に対向する複数の穴部が軸線方向及び軸線の周方向に間隔をあけて形成された穴群と、シール本体の内周面に設けられ、ロータ側に向かって延出して周方向に延びるとともに、厚さがシール本体の最小肉厚以下であるフィン部と、を有し、フィン部は、穴群に対して軸線方向で少なくとも高圧側及び低圧側に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に沿って延びるとともに、前記軸線方向にわたって一様な外径の外周面を有するロータと、
前記ロータの外周側に配置され、前記ロータに対して前記軸線回りに相対回転する環状部材と、
前記環状部材に固定されて前記ロータと前記環状部材との間の空間を高圧側と低圧側とに区画するホールパターンシールと、
を備え、
前記ホールパターンシールは、
前記ロータを外周側から覆う環状のシール本体と、
前記シール本体の内周面に設けられ、前記ロータの前記外周面に対向する複数の穴部が前記軸線方向及び前記軸線の周方向に間隔をあけて形成された穴群と、
前記シール本体の前記内周面に設けられ、前記ロータ側に向かって延出して前記周方向に延びるとともに、厚さが前記シール本体の最小肉厚以下であるフィン部と、
を有し、
前記フィン部は、前記穴群に対して前記軸線方向で少なくとも高圧側及び低圧側に設けられている回転機械。
【請求項2】
前記周方向に並ぶ複数の前記穴部は、円環状に配列され、
前記軸線方向に並ぶ複数の前記穴部は、直線状に配列されている請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記フィン部は、前記穴群に対して前記軸線方向で高圧側及び低圧側にのみ設けられ、
各前記フィン部は、前記シール本体の前記内周面の全体にわたって円環状に延びている請求項1又は2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記穴群は、複数の前記穴部が前記周方向に間隔をあけて円環状に形成された穴列を、前記軸線方向に間隔をあけて複数有し、
前記フィン部は、全ての前記穴列に対して前記軸線方向で高圧側に設けられ、
各前記フィン部は、前記シール本体の前記内周面の全体にわたって円環状に延びている請求項1又は2に記載の回転機械。
【請求項5】
前記ホールパターンシールは、前記周方向で隣り合う前記穴部同士の間に設けられ、前記周方向に並ぶ複数の前記穴部を連通させるスリットを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項6】
前記穴部は、前記ロータから離間するにしたがって前記軸線方向で低圧側に位置するように傾斜するとともに、前記ロータから離間するにしたがって前記ロータの回転方向に位置するように傾斜している請求項1から5のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項7】
前記フィン部は、前記軸線の径方向から見て、前記穴部を囲うように前記軸線方向で高圧側に凸の半円弧状に形成された半円弧部を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項8】
複数の前記穴部は、多角形格子状に配列され、
前記フィン部は、各前記穴部の開口部の全周を囲うように多角形格子状に設けられているとともに、前記ロータに接近するにしたがって先細る形状に形成されている請求項1に記載の回転機械。
【請求項9】
前記ホールパターンシールよりも前記軸線方向で高圧側に、前記周方向に交差する板状のスワールブレーカを備える請求項1から8のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項10】
軸線に沿って延びるとともに、前記軸線方向にわたって一様な外径の外周面を有するロータと、
前記ロータの外周側に配置され、前記ロータに対して前記軸線回りに相対回転する環状部材と、
前記環状部材に固定されて前記ロータと前記環状部材との間の空間を高圧側と低圧側とに区画するホールパターンシールと、
を備え、
前記ホールパターンシールは、
前記ロータを外周側から覆う環状のシール本体と、
前記シール本体の内周面に、前記軸線方向及び前記軸線の周方向に間隔をあけて複数形成され、前記ロータの前記外周面に対向する穴部と、
前記シール本体の前記内周面に設けられ、前記ロータ側に向かって延出して前記周方向に延びるとともに、厚さが前記シール本体の最小肉厚以下であるフィン部と、
を有し、
複数の前記穴部は、多角形格子状に配列され、
前記フィン部は、各前記穴部の開口部の全周を囲うように多角形格子状に設けられているとともに、前記ロータに接近するにしたがって先細る形状に形成されている回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
タービン等の回転機械では、静止側と回転側との隙間から流体が漏洩することを防止するために、ロータの外周面にシール流路が設けられている。シール流路内には、ロータの回転によって周方向の速度成分を有するスワールが発生する。ロータに変位が発生した際、シール流路内のスワールが大きい場合には、ロータの変位と直角方向の励振力がロータに作用する。この励振力は、ロータの触れ回りを助長して軸系の安定性を低下させ、不安定な自励振動を引き起こす。このため、スワールを低減し、自励振動を抑制することが求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、回転軸(ロータ)とステータとの間の空間を高圧側と低圧側とに区画するとともに、ロータの外周面に対向する複数の穴部が周方向に間隔をあけて形成された穴列を有するホールパターンシールを備える回転機械が開示されている。ホールパターンシールは、穴列の高圧側に回転軸側に向かって延出し、周方向に延びるフィン部を有し、ロータは、外周面から穴部に向かって突出して周方向に延びるとともに、フィン部の低圧側で穴部に対向する凸部を備える。これにより、フィン部とロータとの隙間から入り込んだ流体を、ロータの凸部に接触させてホールパターンシールの穴部に向かって流し、旋回方向への流体の流れを阻害してスワールを低減することができる。その結果、スワールによる自励振動が抑制される。また、このようなホールパターンシールでは、穴部に発生するスワール等による運動量変動に起因して得られる減衰効果が大きい。
以下では、自励振動を抑制することをダンピングと称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/077058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロータに変位が生じると、フィン部及び凸部の広範囲でホールパターンシールとロータとが接触する場合がある。この場合、ホールパターンシールとロータとの接触熱によってロータが変形してロータの偏心量(アンバランス)が増大し、強制振動(アンバランス振動)が増加することが予想される。このようなホールパターンシールとロータとの接触リスクを低減しつつ、ダンピングを向上させるという点で改善の余地が残されていた。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、ホールパターンシールとロータとの接触リスクを低減しつつ、ダンピングを向上させることができる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る回転機械は、軸線に沿って延びるとともに、前記軸線方向にわたって一様な外径の外周面を有するロータと、前記ロータの外周側に配置され、前記ロータに対して前記軸線回りに相対回転する環状部材と、前記環状部材に固定されて前記ロータと前記環状部材との間の空間を高圧側と低圧側とに区画するホールパターンシールと、を備え、前記ホールパターンシールは、前記ロータを外周側から覆う環状のシール本体と、前記シール本体の内周面に設けられ、前記ロータの前記外周面に対向する複数の穴部が前記軸線方向及び前記軸線の周方向に間隔をあけて形成された穴群と、前記シール本体の前記内周面に設けられ、前記ロータ側に向かって延出して前記周方向に延びるとともに、厚さが前記シール本体の最小肉厚以下であるフィン部と、を有し、前記フィン部は、前記穴群に対して前記軸線方向で少なくとも高圧側及び低圧側に設けられている。
【0008】
本開示に係る回転機械は、軸線に沿って延びるとともに、前記軸線方向にわたって一様な外径の外周面を有するロータと、前記ロータの外周側に配置され、前記ロータに対して前記軸線回りに相対回転する環状部材と、前記環状部材に固定されて前記ロータと前記環状部材との間の空間を高圧側と低圧側とに区画するホールパターンシールと、を備え、前記ホールパターンシールは、前記ロータを外周側から覆う環状のシール本体と、前記シール本体の内周面に、前記軸線方向及び前記軸線の周方向に間隔をあけて複数形成され、前記ロータの前記外周面に対向する穴部と、前記シール本体の前記内周面に設けられ、前記ロータ側に向かって延出して前記周方向に延びるとともに、厚さが前記シール本体の最小肉厚以下であるフィン部と、を有し、複数の前記穴部は、多角形格子状に配列され、前記フィン部は、各前記穴部の開口部の全周を囲うように多角形格子状に設けられているとともに、前記ロータに接近するにしたがって先細る形状に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の回転機械によれば、ホールパターンシールとロータとの接触リスクを低減しつつ、ダンピングを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る蒸気タービンを示す模式図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るホールパターンシールを示す斜視図である。
図3】本開示の第一実施形態に係るホールパターンシールの周方向視の部分断面図である。
図4図3の最も高圧側の穴部を拡大した図である。
図5】本開示の第一実施形態に係るホールパターンシールの内周面の部分展開図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る穴部内の蒸気の流れを説明する図である。
図7】本開示の第二実施形態に係るホールパターンシールの周方向視の部分断面図である。
図8】本開示の第二実施形態に係るホールパターンシールの内周面の部分展開図である。
図9】本開示の第三実施形態に係るホールパターンシールの内周面の部分展開図である。
図10】本開示の第三実施形態に係るホールパターンシールのスリットを示す拡大斜視図である。
図11】本開示の第三実施形態に係る穴部内の蒸気の流れを説明する平面図である。
図12】本開示の第四実施形態に係るホールパターンシールの周方向視の部分断面図である。
図13】本開示の第四実施形態に係るホールパターンシールの軸線方向で高圧側から見た部分断面図である。
図14】本開示の第五実施形態に係るホールパターンシールの内周面の部分展開図である。
図15図14の穴部及びフィン部を拡大した図である。
図16】本開示の第六実施形態に係るホールパターンシールの内周面の部分展開図である。
図17図16のA-A線に沿う箇所に相当する、ホールパターンシールの周方向視の部分断面図である。
図18】本開示の第七実施形態に係るスワールブレーカ周辺の部分断面図である。
図19】本開示の第七実施形態に係るスワールブレーカを軸線方向で高圧側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
(回転機械)
以下、本開示の第一実施形態に係る回転機械について、図1から図6を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1(回転機械の例示)は、軸線O回りに回転するロータ2と、ロータ2を外周側から囲うダミーリング3(環状部材の例示)と、ダミーリング3の内周面3aに設けられたシール部材4と、ダミーリング3に対して軸線O方向に間隔をあけて配置された翼環5と、ダミーリング3及び翼環5のそれぞれ少なくとも一部を外周側から囲う内車室6と、ダミーリング3、翼環5、及び内車室6を外周側から囲う外車室7と、内車室6と外車室7の間に設けられた蒸気供給管10と、を備える。
以下、軸線O方向の周方向Dcを単に「周方向Dc」と称し、軸線O方向の径方向を単に「径方向」と称する場合がある。
【0012】
(ロータ)
ロータ2は、軸線Oを中心とする柱状に形成されている。ロータ2は、軸線Oに沿って延びている。ロータ2は、軸線O方向にわたって一様な外径の外周面2aを有する。ロータ2は、外車室7を軸線O方向に貫通している。外車室7の内部では、軸線O方向一方側から他方側に向かって、ロータ2の外周面2aを囲うようにしてダミーリング3、内車室6、及び翼環5が順に設けられている。
【0013】
(ダミーリング)
ダミーリング3は、ロータ2の外周側に配置され、外車室7の内側に固定されている。ダミーリング3の内周面3aとロータ2の外周面2aとの間には、僅かな隙間が形成されている。ダミーリング3の内周面3aには、シール部材4が設けられている。シール部材4は、ロータ2とダミーリング3との間を流通する蒸気Gをシールするために設けられる。シール部材4は、軸線O方向に並んで5つ設けられている。5つのシール部材4のうち、軸線O1方向で最も翼環5側に位置するシール部材4は、ホールパターンシール20である。
【0014】
詳しくは図示しないが、翼環5は、軸線O方向に配列された複数の静翼列(不図示)を有する。各静翼列は軸線Oに対する周方向Dcに配列された複数の静翼を有している。ロータ2の外周面2aには、これら静翼列同士の間に入り込むようにして軸線O方向に間隔をあけて配列された複数の動翼列(不図示)が設けられている。各動翼列は、軸線Oに対する周方向Dcに配列された複数の動翼を有している。
【0015】
ダミーリング3の外周面と翼環5の外周面のそれぞれ少なくとも一部は環状の内車室6によって外側から囲われている。内車室6の内周側の空間(供給空間V)と、外車室7の外側とは、蒸気供給管10によって連通されている。蒸気供給管10を通じて外部の蒸気供給源(不図示)から蒸気タービン1に蒸気Gが供給される。蒸気供給管10を通じて供給された蒸気は、供給空間Vを経て、軸線O方向両側に向かって流通し、上述のダミーリング3の内周側、及び翼環5の内周側に流入する。
【0016】
翼環5の内周側に蒸気Gが流入することで、上記の静翼列、及び動翼列を通じてロータ2に回転力が与えられる。これにより、ロータ2は、軸線Oを中心として翼環5側から見て反時計回りの回転方向Drに回転する。ここで、ダミーリング3は外車室7内に固定されている。このため、ダミーリング3は、ロータ2に対して軸線O回りに相対回転することになる。ロータ2の回転は軸端から取り出されて発電機等の外部機器(不図示)を駆動する。翼環5を通過した蒸気Gは、外車室7に形成された排気口12を経て外部(例えば、不図示の復水器等)に排出される。
【0017】
(ホールパターンシール)
ホールパターンシール20は、ダミーリング3の内周面3aに固定されている。図2図3に示すように、ホールパターンシール20は、円環状に形成されている。ホールパターンシール20は、ロータ2とダミーリング3との間の空間を軸線O方向で高圧側HPと低圧側LPに区画する。ホールパターンシール20を挟んで、軸線O方向で供給空間V側が高圧側HPとなり、軸線O方向で供給空間Vとは反対側が低圧側LPとなる。ホールパターンシール20は、ロータ2の外周面2aを外周側から覆う円環状のシール本体21と、シール本体21の内周面21aに設けられ、複数の穴部25が軸線O方向及び周方向Dcに間隔を空けて形成された穴群22と、シール本体21の内周面21aのうち穴群22とは異なる位置に設けられた複数のフィン部26と、を有する。
【0018】
(シール本体)
図3から図5に示すように、シール本体21は、ロータ2の外周面2aとの間にキャビティC1を形成している。キャビティC1の径方向の寸法L1は、自励振動が発生しロータ2が多少変位したとしてもシール本体21とロータ2とが接触しない程度の大きさとなっている。
【0019】
(穴群)
穴群22は、複数の穴部25が周方向Dcに間隔を空けて円環状に(展開図では直線状に)形成された穴列24を、複数有する。
【0020】
(穴列)
複数の穴列24は、軸線O方向に間隔をあけて設けられている。穴列24は、シール本体21の内周面21aに、周方向Dc全体にわたって設けられている。
【0021】
(穴部)
各穴部25は、ロータ2の外周面2aに対向し、内周側に向けて開口している。これらの穴部25は、径方向に延び、穴径が略等しい断面円形に形成されている。周方向Dcに並ぶ複数の穴部25は、円環状に(展開図では直線状に)配列され、軸線O方向に並ぶ複数の穴部25は、直線状に配列されている。これらの穴部25の開口部25bは、軸線O方向及び周方向Dcに等間隔に並んでいる。また、各穴部25の底面25cは、平坦な円形状に形成されている。
【0022】
(フィン部)
フィン部26は、穴群22に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられている。各フィン部26は、ロータ2側に向かって延出し、シール本体21の内周面21aの周方向Dc全体にわたって円環状に(展開図では直線状に)延びている。高圧側HPのフィン部26は、シール本体21の軸線O方向の端面21cに沿っている。低圧側LPのフィン部26は、軸線O方向で最も低圧側LPの穴列24よりも低圧側LPに位置するとともに、最も低圧側LPの穴列24に沿っている。
【0023】
フィン部26は、径方向で、軸線O方向の厚さW2が一様となるように形成されている。フィン部26の厚さW2は、シール本体21の最小肉厚W1以下であり、例えば最小肉厚W1の0.01倍より大きく0.5倍未満となる。
【0024】
フィン部26のうち径方向内側の端面26aは、ロータ2の外周面2aとの間にクリアランスC2を形成している。クリアランスC2の径方向の寸法L2は、フィン部26を通過する蒸気Gがロータ2に向けて縮流される程度の大きさに設定されている。キャビティC1の径方向の寸法L1は、クリアランスC2の径方向の寸法L2の1.1倍以上10倍以下となっている。
【0025】
(作用効果)
次に、上述したホールパターンシール20によるスワール低減の作用について図3図4及び図6を参照して説明する。
ここで、上述したロータ2が回転すると、ロータ2の周囲の蒸気Gには、ロータ2から回転方向Drにせん断力が作用する。このせん断力の作用によって周方向Dcの速度成分を有するスワールが発生する。このスワールを含む蒸気Gが、軸線O方向両側の圧力差によって高圧側HPから低圧側LPに向かって流れようとする。
【0026】
まず、上記スワールを含む蒸気Gは、ホールパターンシール20の最も高圧側HPのフィン部26の端面26aとロータ2の外周面2aとのクリアランスC2によって、径方向内側に向けて縮流される。縮流された蒸気Gの一部は、ロータ2の外周面2aに衝突した後、径方向外側に向けて膨張される。膨張された蒸気Gは、最も高圧側HPの穴部25(1列目の穴列24に属する穴部25)に導かれる。穴部25に導かれた蒸気Gは、周方向Dcの速度成分によって、図6に示すような穴部25の内周面に沿う螺旋状の渦となる。これにより、蒸気Gに含まれるスワールが穴部25の内周面に衝突して低減される。
【0027】
その後、底面25cで開口部25bに向かうように折り返され、1つ低圧側LPの穴部25(2列目の穴列24に属する穴部25)に向けて移動する。蒸気Gは、2つの穴部25間を移動する際に、径方向内側に向けて再び縮流される。縮流された蒸気Gの一部は、径方向外側に向けて再び膨張されて、2列目の穴部25に導かれる。2列目の穴部25内でも同様に、蒸気Gは穴部25の内周面に沿う螺旋状の渦となり、1列目と同様にして、スワールが低減される。その後、蒸気Gは、低圧側LPに向けて進み、その過程で、蒸気Gの一部が上述したように縮流と膨張とを繰り返す。すなわち、穴列24の列数だけ、上述した作用が繰り返されることとなる。このようにして、蒸気Gに含まれるスワールが低減される。
【0028】
本実施形態では、ホールパターンシール20は、シール本体21の内周面21aに設けられ、ロータ2側に向かって延出して周方向Dcに延びるとともに、厚さW2がシール本体21の最小肉厚W1以下であるフィン部26を有する。フィン部26は、穴群22に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPに設けられている。
【0029】
本実施形態によれば、高圧側HPから低圧側LPに向かう蒸気Gがフィン部26によって軸線Oの径方向内側に向けて縮流される。縮流された蒸気Gは、ロータ2の外周面2aに衝突して径方向外側に向けて膨張する。これにより、穴部25に流入する蒸気Gの流量が増加し、穴部25内に生じる蒸気Gの渦を増強させることができる。よって、穴部25内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。穴部25内での蒸気Gの定常運動量が増加するほど、穴部25に流入出する蒸気Gの運動量の変動が大きくなり、スワールに起因してロータ2に作用する励振力が低減される。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール20によるダンピングを向上させることができる。
【0030】
さらに、フィン部26の厚さW2は、シール本体21の最小肉厚W1以下であるため、ホールパターンシール20とロータ2との接触面積を縮小することができる。これにより、ロータ2に変位が発生したとしても、ホールパターンシール20とロータ2との接触熱が増大することを抑制することができる。したがって、接触熱によってロータ2が変形してロータ2の偏心量(アンバランス)が増大し、強制振動(アンバランス振動)が増加する等の接触リスクを低減することができる。
【0031】
本実施形態では、周方向Dcに並ぶ複数の穴部25は、円環状に配列され、軸線O方向に並ぶ複数の穴部25は、直線状に配列されている。
【0032】
これにより、穴部25の配列パターンを周方向Dcで一様化して、蒸気Gの周方向Dcの流れの規則性を向上させることができる。このため、穴部25が不規則に配列される場合と比較して、穴部25内に生じる蒸気Gの渦が増強し、穴部25内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。これにより、スワールに起因してロータ2に作用する励振力が低減される。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール20によるダンピングをより一層向上させることができる。
【0033】
本実施形態では、フィン部26は、穴群22に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられている。各フィン部26は、シール本体21の内周面21aの全体にわたって円環状に延びている。
【0034】
これにより、各フィン部26でホールパターンシール20とロータ2との間に入り込む蒸気Gを適度に縮流することができるので、穴部25内の蒸気Gの渦を増強させて、穴部25内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。このため、スワールに起因してロータ2に作用する励振力が低減される。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール20によるダンピングをより一層向上させることができる。
さらに、穴群22に対して高圧側HP及び低圧側LPの両方で、蒸気Gの漏れ量を低減することができる。したがって、ホールパターンシール20のシール性を維持することができる。
【0035】
また、穴列24間にフィン部26が設けられている場合と比較して、ホールパターンシール20とロータ2との接触面積をより一層縮小することができる。これにより、ロータ2に変位が発生したとしても、ホールパターンシール20とロータ2との接触熱が増大することを抑制することができる。したがって、接触熱によってロータ2が変形してロータ2の偏心量(アンバランス)が増大し、強制振動(アンバランス振動)が増加する等の接触リスクを低減することができる。
【0036】
第一実施形態では、フィン部26は、径方向で、軸線O方向の厚さW2が一様となるように形成されているとしたが、これに限られない。例えば、フィン部26は、ロータ2に接近するにしたがって先細るように形成されていてもよい。
また、第一実施形態では、周方向Dcに並ぶ複数の穴部25が、円環状に配列され、軸線O方向に並ぶ複数の穴部25が、直線状に配列されるように、複数の穴部25が規則的に形成される場合について説明したが、これに限られない。例えば、複数の穴部25は、周方向Dc及び軸線O方向にジグザグ状に配置されていてもよい。また、複数の穴部25は、不規則に形成されていてもよい。
【0037】
<第二実施形態>
以下、本開示の第二実施形態に係る蒸気タービン201(回転機械の例示)について、図7図8を参照して説明する。第二実施形態のうち第一実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0038】
図7図8に示すように、本実施形態のホールパターンシール220では、第一実施形態と同様に、穴群22は、複数の穴部25が周方向Dcに間隔をあけて円環状に形成された穴列24を、軸線O方向に間隔をあけて複数有する。また、フィン部226は、全ての穴列24に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられている。さらに、フィン部226は、軸線O方向で最も低圧側LPの穴列24に対して低圧側LPにも設けられている。各フィン部226は、軸線O方向で高圧側HPに隣り合う穴列24に沿って周方向Dcに円環状に(展開図では直線状に)延びている。軸線O方向で最も高圧側HPに位置するフィン部226は、シール本体21の軸線O方向の端面21cに沿って周方向Dcに(展開図では直線状に)延びている。
【0039】
各フィン部226の径方向内側の端面226aは、径方向で全て略同じ位置に配置されている。すなわち、各フィン部226のクリアランスC2の径方向の寸法L2は、全て略同じ大きさとなっている。
【0040】
第二実施形態の蒸気タービン201は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0041】
本実施形態では、フィン部226は、全ての穴列24に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられ、各フィン部226は、シール本体21の内周面21aの全体にわたって円環状に延びている。
【0042】
これにより、穴群22の高圧側HP及び低圧側LPに加えて、各穴列24の高圧側HPにクリアランスC1を形成することができる。このため、蒸気Gのリーク量を低減し、ホールパターンシール220のシール性を向上させることができる。
さらに、各穴列24の高圧側HPで縮流することができるので、各穴部25に流入する蒸気Gの流量を増加させることができる。このため、各穴部25には、流速の大きい蒸気Gの渦が発生し、穴部25内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール220によるダンピングをより一層向上させることができる。
【0043】
<第三実施形態>
以下、本開示の第三実施形態に係る蒸気タービン301(回転機械の例示)について、図9から図11を参照して説明する。第三実施形態のうち上述した各実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0044】
図9図10に示すように、本実施形態のホールパターンシール320は、シール本体21、穴群22、及びフィン部226に加えて、周方向Dcに並ぶ複数の穴部25を連通させる複数のスリット330をさらに有する。
【0045】
スリット330は、周方向Dcで隣り合う穴部25同士の間に設けられ、同一の穴列24に属する穴部25を連通させる。周方向Dcに並ぶ複数のスリット330は、円環状に(展開図では直線状に)配列されている。スリット330は、径方向に延び、ロータ2の外周面に向けて開口している。スリット330の径方向の寸法は、穴部25の径方向の寸法と略等しい。スリット330の軸線O方向の厚さは、径方向及び周方向Dcにおいて、一様となっている。
【0046】
図11に示すように、本実施形態では、上述した第二実施形態と同様に、蒸気Gはフィン部226によって縮流されてから各穴部25に流入するため、各穴部25の内部には、流速の大きい蒸気Gの渦が発生する。この蒸気Gの渦は、穴部25の内周面に沿って螺旋状に流れる。
【0047】
第三実施形態の蒸気タービン301は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0048】
本実施形態では、ホールパターンシール320は、周方向Dcで隣り合う穴部25同士の間に設けられ、周方向Dcに並ぶ複数の穴部25を連通させるスリット330を有する。
【0049】
これにより、穴部25の内周面に沿って流れる螺旋状の蒸気Gの渦に、周方向で隣り合う穴部25からスリット330を通じて蒸気Gを適度に導くことができる。周方向Dcから導かれた蒸気Gによって、穴部25内の蒸気Gの渦が加速されるので、穴部25内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール320によるダンピングをより一層向上させることができる。
【0050】
第三実施形態では、ホールパターンシール320が、第二実施形態と同様に、全ての穴列24に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられたフィン部226を有する場合について説明したが、これに限られない。第三実施形態でのフィン部226は、一部の穴列424に対してのみ軸線O方向で高圧側HPに設けられていてもよく、例えば第一実施形態と同様に、フィン部226は、穴群22に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられていてもよい。
【0051】
<第四実施形態>
以下、本開示の第四実施形態に係る蒸気タービン401(回転機械の例示)について、図12図13を参照して説明する。第四実施形態のうち上述した各実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0052】
図12図13に示すように、本実施形態のホールパターンシール420は、シール本体21、フィン部226、に加えて穴群422を有する。
【0053】
穴群422では、第一実施形態と同様に、周方向Dcに延びる各穴列424が、軸線O方向に間隔をあけて設けられている。
また、第一実施形態と同様に、周方向Dcに並ぶ複数の穴部425は、円環状に(展開図では直線状に)配列され、軸線O方向に並ぶ複数の穴部425は、直線状に配列されている。これらの穴部425は、穴径が略等しい断面円形に形成されている。これらの穴部425の開口部425bは、軸線O方向及び周方向Dcに等間隔に並んでいる。また、各穴部425の底面425cは、平坦な円形状に形成されている。
【0054】
図12に示すように、穴部425は、ロータ2から径方向に離間するにしたがって軸線O方向で低圧側LPに位置するように傾斜している。さらに、図13に示すように、穴部425は、ロータ2から径方向に離間するにしたがってロータ2の回転方向Drに位置するように傾斜している。
【0055】
穴部425の傾斜角度は、適宜変更可能であるが、穴部425は、シール本体21の内周面21aに対して、軸線O方向及び周方向に例えば20度以上70度以下の範囲で傾斜していることが好ましく、軸線O方向及び周方向に45度で傾斜していることがより好ましい。
【0056】
第四実施形態の蒸気タービン401は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0057】
蒸気Gは、ロータ2の外周面2aに沿って高圧側HPから低圧側LPに向かって流れるが、その際、ロータ2から回転方向Drにせん断力が作用する。この作用によって、蒸気Gは、回転方向Drに回転しながら低圧側LP側に向かってらせん状に流れる。
【0058】
本実施形態では、穴部425は、ロータ2から離間するにしたがって軸線O方向で低圧側LPに位置するように傾斜するとともに、ロータ2から離間するにしたがってロータ2の回転方向Drに位置するように傾斜している。すなわち、穴部425は、ロータ2の外周面2aに沿う蒸気Gの流れを迎え入れるように形成されている。
【0059】
このため、蒸気Gを各穴部425に向けて良好に流入させることができる。これにより、穴部425に流入する蒸気Gの流量が増加し、穴部425内に生じる蒸気Gの渦を増強させることができる。よって、穴部425内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール420によるダンピングをより一層向上させることができる。
【0060】
第四実施形態では、ホールパターンシール420が、第二実施形態と同様に、全ての穴列424に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられたフィン部226を有する場合について説明したが、これに限られない。第四実施形態でのフィン部226は、一部の穴列424に対してのみ軸線O方向で高圧側HPに設けられていてもよく、例えば第一実施形態と同様に、フィン部226は、穴群422に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられていてもよい。
また、第三実施形態と同様にスリット330を設け、スリット330が周方向Dcに並ぶ複数の穴部425を連通していてもよい。
【0061】
<第五実施形態>
以下、本開示の第五実施形態に係る蒸気タービン501(回転機械の例示)について、図14図15を参照して説明する。第五実施形態のうち上述した各実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0062】
図14図15に示すように、本実施形態のホールパターンシール520では、フィン部526は、全ての穴列24に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられている。フィン部526は、シール本体21の内周面21aの周方向Dcで全体にわたって設けられている。各フィン部526は、径方向から見て、各穴部25の全周を囲うように軸線O方向で高圧側HPに凸の半円弧状に形成された複数の半円弧部528と、周方向Dcで隣り合う半円弧部528同士を接続するフィン接続部527と、を有する。具体的に、各半円弧部528は、軸線O方向で低圧側LPに隣り合う穴部25の開口部25bにそって半円弧状に形成されている。半円弧部528は、径方向内側に延出している。周方向Dcで隣り合う半円弧部528同士は、フィン接続部527によって周方向Dの端部同士を接続されている。フィン接続部527は、半円弧部528と同程度の高さで径方向内側に延出し、周方向Dcに延びている。周方向Dcに並ぶ複数の半円弧部528及びフィン接続部527は、環状に一体形成されている。
【0063】
ただし、軸線O方向で最も低圧側LPに位置するフィン部526は、第一実施形態のフィン部26と同様に、シール本体21の内周面21aに周方向Dc全体にわたって円環状(展開図では直線状)に設けられている。
【0064】
各フィン部526の径方向内側の端面526aは、径方向で全て略同じ位置に配置されている。すなわち、各フィン部526のクリアランスCの寸法L2は、全て略同じ大きさとなっている。
【0065】
第五実施形態の蒸気タービン501は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0066】
本実施形態では、フィン部526は、軸線Oの径方向から見て、穴部525を囲うように軸線O方向で高圧側HPに凸の半円弧状に形成された半円弧部528を有する。
【0067】
穴部25には、周方向Dcから蒸気Gが流入しようとするが、本実施形態によれば、半円弧部528によって穴部25の高圧側HPから周方向Dcに流れる蒸気Gが流入することを抑制することができる。さらに、穴部25の低圧側HPには半円弧部528が存在しないため、周方向Dcに流れる蒸気Gは、穴部25に低圧側HPから容易に流入することができる。
【0068】
ところで、穴部25内に生じる蒸気Gの渦は、高圧側HPでは周方向Dcから流入しようとする蒸気Gと反対の向きに流れ、低圧側LPでは周方向Dcから流入しようとする蒸気Gと同じ向きに流れる。このため、穴部25の低圧側LPから周方向Dcに流れる蒸気Gを流入させることによって、穴部25内に生じる蒸気Gの渦を増強させることができる。よって、穴部25内での定常運動量を増加させることができる。したがって、スワールによるロータ2の自励振動を抑制し、ホールパターンシール520によるダンピングをより一層向上させることができる。
【0069】
第五実施形態では、フィン接続部527が周方向Dcで隣り合う半円弧部528同士を接続する場合について説明したが、これに限るものではない。フィン接続部527が存在せず、複数の半円弧部528は、互いに独立して設けられていてもよい。また、複数のフィン部526のうち、一部のフィン部526のみがフィン接続部527と半円弧部528とを有してもよい。また、一つのフィン部526において、軸線O方向で隣り合う24列に属する全ての穴部25に対してではなく、一部の穴部25に対して半円弧部528を有していてもよい。
【0070】
第五実施形態では、ホールパターンシール520が、第二実施形態と同様に、全ての穴列24に対して軸線O方向で高圧側HPに設けられたフィン部526を有する場合について説明したが、これに限られない。第四実施形態でのフィン部526は、一部の穴列24に対してのみ軸線O方向で高圧側HPに設けられていてもよく、例えば第一実施形態と同様に、フィン部526は、穴群22に対して軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられていてもよい。
また、第三実施形態と同様にスリット330を設け、スリット330が周方向Dcに並ぶ複数の穴部25を連通していてもよい。
【0071】
<第六実施形態>
以下、本開示の第六実施形態に係る蒸気タービン601(回転機械の例示)について、図16図17を参照して説明する。第六実施形態のうち上述した各実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0072】
図16図17に示すように、本実施形態のホールパターンシール620では、シール本体21に加えて、穴群622と、フィン部626とを有する。
【0073】
穴群622を構成する複数の穴部625は、径方向視で多角形格子状に配列されている。具体的には、複数の穴部625は、正六角形格子状に配列されている。
また、第一実施形態と同様に、これらの穴部625は、径方向に延び、穴径が等しい略楕円形に形成されている。これらの穴部625の開口部625bは、軸線O方向及び周方向Dcに等間隔に並んでいる。また、各穴部625の底面625cは、平坦な円形状に形成されている。
【0074】
フィン部626は、各穴部625のロータ2側の開口部625bの全周を囲うように、径方向視で多角形格子状に複数設けられている。具体的には、複数のフィン部626は、正六角形が複数ならんで形成されたハニカム状に設けられている。さらに、隣り合うフィン部626同士は端部同士で接続されている。また、各フィン部626は、ロータ2に接近するにしたがって先細る形状に形成されている。
【0075】
各フィン部626の径方向内側の端面626aは、径方向で全て略同じ位置に配置されている。すなわち、各フィン部626のクリアランスC2の寸法L2は、全て略同じ大きさとなっている。
【0076】
第六実施形態の蒸気タービン601は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0077】
複数の穴部625は、多角形格子状に配列されている。フィン部626は、各穴部625の開口部625bを囲うように設けられるとともに、ロータ2に接近するにしたがって先細る形状に形成されている。
【0078】
これにより、フィン部626によって、各穴部625の高圧側HPで縮流することができるので、各穴部625に流入する蒸気Gの流量を増加させることができる。このため、各穴部625には、流速の大きい蒸気Gの渦が発生し、穴部625内での蒸気Gの定常運動量を増加させることができる。したがって、フィン部626が周方向に延びる環状に形成される場合と同程度に、スワールに起因してロータ2に作用する励振力を低減し、ホールパターンシール220によるダンピングを向上させることができる。
さらに、フィン部626は、ロータ2に接近するにしたがって先細るため、ホールパターンシール620とロータ2との接触面積を縮小することができる。これにより、ロータ2に変位が発生したとしても、ホールパターンシール620とロータ2との接触熱が増大することを抑制することができる。したがって、接触熱によってロータ2が変形してロータ2の偏心量(アンバランス)が増大し、強制振動(アンバランス振動)が増加する等の接触リスクを低減することができる。
【0079】
第六実施形態では、複数の穴部625が六角形格子状に配列され、複数のフィン部626は、各穴部625を囲うように六角形が複数並んで形成されたハニカム状に設けられているとしたが、これに限るものではない。例えば、複数のフィン部626は、各穴部625を囲うように、正三角形が複数並んだ形状に設けられていてもよい。また、複数の穴部625が第一実施形態と同様に直線状に配列されて、複数の穴部625の配列パターンが四角格子状となる場合、複数のフィン部626は、各穴部625を囲うように四角形が複数並んだ形状に設けられていてもよい。
【0080】
<第七実施形態>
以下、本開示の第七実施形態に係る蒸気タービン701(回転機械の例示)について、図18図19を参照して説明する。第七実施形態のうち上述した各実施形態と同様の構成については、同一の名称、同一の符号を付す等して適宜説明を省略する。
【0081】
図18図19に示すように、本実施形態の蒸気タービン701は、第一実施形態のホールパターンシール20と、ホールパターンシール20よりも軸線O方向で高圧側HPにスワールブレーカ740と、を備える。スワールブレーカ740は、ダミーリング3の内周面3aに固定されるとともに、ロータ2の外周側に周方向Dcに並ぶように複数設けられている。スワールブレーカ740は、軸線O方向及び径方向に延在する薄板状の部材である。すなわち、スワールブレーカ740は、周方向Dcに交差している。スワールブレーカ740は、周方向Dcから見て、軸線O方向に延びる1辺を有する矩形状に形成されている。スワールブレーカ740の径方向内側の端面740aは、シール本体21の内周面21aよりも径方向内側(ロータ2側)に位置し、フィン部26の径方向内側の端面26aよりも径方向外側に位置している。
【0082】
第七実施形態の蒸気タービン701は、第1実施形態の蒸気タービン1と共通する構成について、第1実施形態と同様の作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。
【0083】
本実施形態では、ホールパターンシール20よりも軸線O方向で高圧側HPに、周方向Dcと交差する板状のスワールブレーカ740を備える。
【0084】
これにより、スワールブレーカ740で周方向Dcへの蒸気Gの流れを阻害してスワールを低減した後で、ホールパターンシール20に蒸気Gを流入させることができる。したがって、蒸気タービン701全体としてのダンピングをより一層向上させることが可能となる。
【0085】
第七実施形態では、第一実施形態のホールパターンシール20に対してスワールブレーカ740を設ける場合について説明したが、これに限るものではない。第二から第六実施形態のホールパターンシール220,320,420,520,620に対してスワールブレーカ740が設けられていてもよい。
【0086】
第七実施形態では、スワールブレーカ740の径方向内側の端面740aは、フィン部26の径方向内側の端面26aよりも径方向外側に位置しているとしたが、フィン部26の端面26aと径方向の位置が同じであってもよい。
【0087】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせてもよい。
なお、上記実施形態では、回転機械の例として、蒸気タービン1,201,301,401,501,601,701を挙げたが、これに限るものではない。回転機械は、例えば遠心圧縮機であってもよい。
【0088】
なお、上記実施形態では、穴部25,425,625は、穴径が略等しい断面円形に形成されているとしたが、これに限るものではない。穴部25,425,625の形状は、上記形状に限られず、例えば、断面多角形状としてもよい。穴部25,425,625の内径は、必ずしも全て同一である必要はなく、必要に応じて内径を変化させてもよい。
【0089】
<付記>
各実施形態に記載の回転機械は、例えば以下のように把握される。
【0090】
(1)第1の態様に係る回転機械(蒸気タービン1,201,301,401,501,601,701)は、軸線Oに沿って延びるとともに、前記軸線O方向にわたって一様な外径の外周面2aを有するロータ2と、前記ロータ2の外周側に配置され、前記ロータ2に対して前記軸線O回りに相対回転する環状部材(ダミーリング3)と、前記環状部材に固定されて前記ロータ2と前記環状部材との間の空間を高圧側HPと低圧側LPとに区画するホールパターンシール20,220,320,420,520,620と、を備え、前記ホールパターンシール20,220,320,420,520,620は、前記ロータ2を外周側から覆う環状のシール本体21と、前記シール本体21の内周面21aに設けられ、前記ロータ2の前記外周面2aに対向する複数の穴部25が前記軸線O方向及び前記軸線Oの周方向Dcに間隔をあけて形成された穴群22,422,622と、前記シール本体21の前記内周面21aに設けられ、前記ロータ2側に向かって延出して前記周方向Dcに延びるとともに、厚さW2が前記シール本体の最小肉厚W1以下であるフィン部26,226,526,626と、を有し、前記フィン部26,226,526,626は、前記穴群22,422,622に対して前記軸線O方向で少なくとも高圧側HP及び低圧側LPに設けられている。
【0091】
本態様によれば、高圧側HPから低圧側LPに向かう流体がフィン部26,226,526,626によって軸線Oの径方向内側に向けて縮流される。縮流された流体は、ロータ2の外周面2aに衝突して径方向外側に向けて膨張する。これにより、穴部25,425,625に流入する流体の流量が増加し、穴部25,425,625内に生じる流体の渦を増強させることができる。よって、穴部25,425,625内での流体の定常運動量を増加させることができるので、スワールに起因してロータ2に作用する励振力を低減することができる。さらに、フィン部26,226,526,626の厚さW2は、シール本体21の最小肉厚W1以下であるため、ホールパターンシール20,220,320,420,520,620とロータ2との接触面積を縮小することができる。
各態様では、回転機械の例として、蒸気タービンの他に遠心圧縮機等が挙げられる。また、流体の例として、例えば蒸気G等が挙げられる。
【0092】
(2)第2の態様の回転機械(蒸気タービン1,201,301,401,501,701)は、(1)の回転機械であって、前記周方向Dcに並ぶ複数の前記穴部25,425は、円環状に配列され、前記軸線O方向に並ぶ複数の前記穴部25,425は、直線状に配列されていてもよい。
【0093】
これにより、穴部25,425の配列パターンを周方向Dcで一様化して、流体の周方向Dcの流れの規則性を向上させることができる。このため、穴部25,425が不規則に配列される場合と比較して、穴部25,425内に生じる流体の渦が増強し、穴部25,425内での流体の定常運動量を増加させることができる。
【0094】
(3)第3の態様の回転機械(蒸気タービン1)は、(1)又は(2)の回転機械であって、前記フィン部26は、前記穴群22に対して前記軸線O方向で高圧側HP及び低圧側LPにのみ設けられ、各前記フィン部26は、前記シール本体21の前記内周面21aの全体にわたって円環状に延びていてもよい。
【0095】
これにより、各フィン部26でホールパターンシール20とロータ2との間に入り込む流体を適度に縮流することができるので、穴部25内の流体の渦を増強させて、穴部25内での流体の定常運動量を増加させることができる。さらに、ホールパターンシール20のシール性を維持しつつ、ホールパターンシール20とロータ2との接触面積をより一層縮小することができる。
【0096】
(4)第4の態様の回転機械(蒸気タービン201,301,401)は、(1)又は(2)の回転機械であって、前記穴群22,422は、複数の前記穴部25,425が前記周方向Dcに間隔をあけて円環状に形成された穴列24,424を、前記軸線O方向に間隔をあけて複数有し、前記フィン部226は、全ての前記穴列24に対して前記軸線O方向で高圧側HPに設けられ、各前記フィン部226は、前記シール本体21の前記内周面21aの全体にわたって円環状に延びていてもよい。
【0097】
これにより、流体のリーク量を低減し、ホールパターンシール220,320,420のシール性を向上させることができる。さらに、各穴列24の高圧側HPで縮流することができるので、各穴部25に流入する流体の流量を増加させることができる。このため、各穴部25には、流速の大きい蒸気Gの渦が発生し、穴部25内での流体の定常運動量を増加させることができる。
【0098】
(5)第5の態様の回転機械(蒸気タービン301)は、(1)から(4)のいずれかの回転機械であって、前記ホールパターンシール320は、前記周方向Dcで隣り合う前記穴部25同士の間に設けられ、前記周方向Dcに並ぶ複数の前記穴部25を連通させるスリット330を有してもよい。
【0099】
これにより、穴部25の内周面に沿って流れる螺旋状の流体の渦に、周方向で隣り合う穴部25からスリット330を通じて流体を適度に導くことができる。周方向Dcから導かれた流体によって、穴部25内の流体の渦が加速されるので、穴部25内での流体の定常運動量を増加させることができる。
【0100】
(6)第6の態様の回転機械(蒸気タービン401)は、(1)から(5)のいずれかの回転機械であって、前記穴部425は、前記ロータ2から離間するにしたがって前記軸線O方向で低圧側LPに位置するように傾斜するとともに、前記ロータ2から離間するにしたがって前記ロータ2の回転方向Drに位置するように傾斜していてもよい。
【0101】
流体は、軸線O方向で高圧側HPから低圧側LPに向けて流れて、且つ、周方向Dcでロータ2の回転方向に向けて流れる。このため、本態様によれば、流体を各穴部425に向けて良好に流入させることができる。これにより、穴部425に流入する流体の流量が増加し、穴部425内に生じる流体の渦を増強させることができる。よって、穴部425内での流体の定常運動量を増加させることができる。
【0102】
(7)第7の態様の回転機械(蒸気タービン501)は、(1)から(6)のいずれかの回転機械であって、前記フィン部526は、前記軸線Oの径方向から見て、前記穴部25を囲うように前記軸線O方向で高圧側HPに凸の半円弧状に形成された半円弧部528を有してもよい。
【0103】
穴部25には、周方向Dcから流体が流入しようとするが、本態様によれば、半円弧部528によって穴部25の高圧側HPから周方向Dcに流れる流体が流入することを抑制することができる。さらに、穴部25の低圧側HPには半円弧部528が存在しないため、周方向Dcに流れる流体は、穴部25に低圧側HPから容易に流入することができる。これにより、周方向Dcに流れる流体によって、穴部25内に生じる流体の渦を増強させることができる。よって、穴部25内での定常運動量を増加させることができる。
【0104】
(8)第8の態様の回転機械(蒸気タービン601)は、(1)の回転機械であって、複数の前記穴部625は、多角形格子状に配列され、前記フィン部626は、各前記穴部625の開口部625bの全周を囲うように多角形格子状に設けられているとともに、前記ロータ2に接近するにしたがって先細る形状に形成されていてもよい。
【0105】
これにより、フィン部626によって、各穴部625の高圧側HPで縮流することができるので、各穴部625に流入する流体の流量を増加させることができる。このため、各穴部625には、流速の大きい流体の渦が発生し、穴部625内での流体の定常運動量を増加させることができる。したがって、フィン部626が周方向に延びる環状に形成される場合と同程度に、スワールに起因してロータ2に作用する励振力を低減することができる。さらに、フィン部626は、ロータ2に接近するにしたがって先細るため、ホールパターンシール620とロータ2との接触面積を縮小することができる。
【0106】
(9)第9の態様の回転機械(蒸気タービン701)は、(1)から(8)のいずれかの回転機械であって、前記ホールパターンシール20,220,320,420,520,620よりも前記軸線O方向で高圧側HPに、前記周方向Dcに交差する板状のスワールブレーカ740を備えてもよい。
【0107】
これにより、スワールブレーカ740で周方向Dcへの流体の流れを阻害してスワールを低減した後で、ホールパターンシール20,220,320,420,520,620に流体を流入させることができる。
【0108】
(10)第10の態様の回転機械(蒸気タービン601)は、軸線Oに沿って延びるとともに、前記軸線O方向にわたって一様な外径の外周面2aを有するロータ2と、前記ロータ2の外周側に配置され、前記ロータ2に対して前記軸線O回りに相対回転する環状部材(ダミーリング3)と、前記環状部材に固定されて前記ロータ2と前記環状部材との間の空間を高圧側HPと低圧側LPとに区画するホールパターンシール620と、を備え、前記ホールパターンシール620は、前記ロータ2を外周側から覆う環状のシール本体21と、前記シール本体21の内周面21aに、前記軸線O方向及び前記軸線Oの周方向Dcに間隔をあけて複数形成され、前記ロータ2の前記外周面2aに対向する穴部25と、前記シール本体21の前記内周面21aに設けられ、前記ロータ2側に向かって延出して前記周方向Dcに延びるとともに、厚さW2が前記シール本体W1の最小肉厚W2以下であるフィン部626と、を有し、複数の前記穴部625は、多角形格子状に配列され、前記フィン部626は、各前記穴部625の開口部625bの全周を囲うように多角形格子状に設けられているとともに、前記ロータ2に接近するにしたがって先細る形状に形成されている。
【符号の説明】
【0109】
1…蒸気タービン(回転機械) 2…ロータ 2a…外周面 3…ダミーリング(環状部材) 3a…内周面 4…シール部材 5…翼環 6…内車室 7…外車室 8…流路 10…蒸気供給管 12…排気口 20…ホールパターンシール 21…シール本体 21a…内周面 21c…端面 22…穴群 24…穴列 25…穴部 25b…開口部 25c…底面 26…フィン部 26a…端面 201…蒸気タービン(回転機械) 220…ホールパターンシール 226…フィン部 226a…端面 301…蒸気タービン(回転機械) 320…ホールパターンシール 330…スリット 401…蒸気タービン(回転機械) 420…ホールパターンシール 422…穴群 424…穴列 425…穴部 425b…開口部 425c…底面 501…蒸気タービン(回転機械) 520…ホールパターンシール 526…フィン部 526a…端面 527…フィン接続部 528…半円弧部 601…蒸気タービン(回転機械) 620…ホールパターンシール 622…穴群 625…穴部 625b…開口部 625c…底面 626…フィン部 626a…端面 701…蒸気タービン(回転機械) 740…スワールブレーカ 740a…端面 C1…キャビティ C2…クリアランス Dc…周方向 Dr…回転方向 G…蒸気 HP…高圧側 L1…寸法 L2…寸法 LP…低圧側 O…軸線 W1…最小肉厚 W2…厚さ
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