(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084582
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20230612BHJP
【FI】
B41J2/335 101H
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198854
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC11
2C065JC12
2C065JH05
2C065JH14
(57)【要約】
【課題】 印刷媒体とサーマルプリントヘッドとの接触圧力を高めることが可能なサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびプリンタを提供する。
【解決手段】 本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く第1主面11aおよび第1裏面11bを有する基材11を用意する固定と、主第1主面11aに第1ガラスペースト1210を塗布する第1塗布工程と、第1ガラスペースト1210を乾燥する第1乾燥工程と、第1ガラスペースト1211に接し且つ第1ガラスペースト1210よりも厚さ方向zに突出する形状となるように第2ガラスペースト1220を塗布する第2塗布工程と、第1ガラスペースト1211および第2ガラスペースト1221を一括して焼成することによりグレーズ層12を形成する焼成工程と、グレーズ層12上に電極層3および抵抗体層4を形成する工程と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材を用意する固定と、
前記主面に第1ガラスペーストを塗布する第1塗布工程と、
前記第1ガラスペーストを乾燥する第1乾燥工程と、
前記第1ガラスペーストに接し且つ前記第1ガラスペーストよりも前記厚さ方向に突出する形状となるように第2ガラスペーストを塗布する第2塗布工程と、
前記第1ガラスペーストおよび前記第2ガラスペーストを一括して焼成することによりグレーズ層を形成する焼成工程と、
前記グレーズ層上に電極層および抵抗体層を形成する工程と、を備える、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記第2塗布工程の後、前記焼成工程の前に、前記第2ガラスペーストを乾燥する第2乾燥工程をさらに備える、請求項1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記第2塗布工程においては、前記第2ガラスペーストを主走査方向に延びる帯状に塗布する、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記第2ガラスペーストの塗布厚さは、前記第1ガラスペーストの塗布厚さよりも厚い、請求項1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記第2塗布工程においては、前記第2ガラスペーストの全体と前記主面との間に前記第1ガラスペーストが介在するように塗布する、請求項1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記第1塗布工程においては、前記第1ガラスペーストに主走査方向に延びる溝を形成し、
前記第2塗布工程においては、前記溝を埋めるように前記第2ガラスペーストを塗布する、請求項1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記溝は、前記第1ガラスペーストを前記厚さ方向に貫通している、請求項6に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記溝は、前記第1ガラスペーストを前記厚さ方向に貫通していない、請求項6に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記第1ガラスペーストに含まれるガラスの軟化点と、前記第2ガラスペーストに含まれるガラスの軟化点は、互いに等しい、請求項1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記第2塗布工程の後に、前記第2ガラスペーストに接し且つ前記第2ガラスペーストよりも前記厚さ方向に突出する形状となるように第3ガラスペーストを塗布する第3塗布工程をさらに備え、
前記焼成工程では、前記第1ガラスペースト、前記第2ガラスペーストおよび前記第3ガラスペーストを一括して焼成する、請求項1ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記第3塗布工程の後、前記焼成工程の前に、前記第3ガラスペーストを乾燥する第3乾燥工程をさらに備える、請求項10に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、前記グレーズ層に支持された前記電極層を形成した後に、前記電極層の一部を覆うように前記抵抗体層を形成する、請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項13】
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、第2金属ペーストを塗布する処理と、前記第2金属ペーストを焼成することにより前記抵抗体層を形成する処理と、を含む、請求項12に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項14】
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、第1金属ペーストを塗布する処理と、前記第1金属ペーストを焼成することにより前記電極層を形成する処理と、を含む、請求項13に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記電極層は、複数の帯状部を有する共通電極と、複数の個別電極とを含む、請求項14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項16】
前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とは、主走査方向において交互に配置されており、
前記抵抗体層は、主走査方向に延びており且つ前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とを跨いでいる、請求項15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とは、副走査方向において間隔をおいて対向配置されており、
前記抵抗体層は、各々が前記帯状部と前記個別電極とに接する複数の発熱部を含む、請求項15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項18】
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材と、
前記主面に形成されたグレーズ層と、
前記グレーズ層上に形成された電極層および抵抗体層を形成する工程、を備え、
前記グレーズ層は、主走査方向に延び且つ前記厚さ方向に膨出した形状であって前記抵抗体層を支持する膨出部を含み、
前記膨出部の前記厚さ方向の大きさは、前記膨出部の副走査方向の大きさの5%以上である、サーマルプリントヘッド。
【請求項19】
請求項18に記載のサーマルプリントヘッドを備える、サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱紙や感熱インクリボンに対して熱を付与することにより印刷を行うサーマルプリントヘッドがある。たとえば、特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドが開示されている。特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドは、基材およびグレーズ層からなる基板、電極層、抵抗体層および保護層を備える。グレーズ層は、部分グレーズおよびガラス層を有する。部分グレーズは、基材の厚さ方向に膨出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷の品位を高めるには、印刷媒体とサーマルプリントヘッドの接触圧力を高めることが好ましい。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、印刷媒体とサーマルプリントヘッドとの接触圧力を高めることが可能なサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材を用意する固定と、前記主面に第1ガラスペーストを塗布する第1塗布工程と、前記第1ガラスペーストを乾燥する第1乾燥工程と、前記第1ガラスペーストに接し且つ前記第1ガラスペーストよりも前記厚さ方向に突出する形状となるように第2ガラスペーストを塗布する第2塗布工程と、前記第1ガラスペーストおよび前記第2ガラスペーストを一括して焼成することによりグレーズ層を形成する焼成工程と、前記グレーズ層上に電極層および抵抗体層を形成する工程と、を備える。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材と、前記主面に形成されたグレーズ層と、前記グレーズ層上に形成された電極層および抵抗体層を形成する工程、を備え、前記グレーズ層は、主走査方向に延び且つ前記厚さ方向に膨出した形状であって前記抵抗体層を支持する膨出部を含み、前記膨出部の前記厚さ方向の大きさは、前記膨出部の副走査方向の大きさの5%以上である。
【0008】
本開示の第3の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタによれば、印刷媒体とサーマルプリントヘッドとの接触圧力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図であり、本開示の第1実施形態に係るプリンタを示す。
【
図3】
図3は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う要部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図9】
図9は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大平面図である。
【
図12】
図12は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図13】
図13は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図14】
図14は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図15】
図15は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図16】
図16は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大平面図である。
【
図17】
図17は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図18】
図18は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大平面図である。
【
図19】
図19は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図20】
図20は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図21】
図21は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大平面図である。
【
図22】
図22は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
【
図23】
図23は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第1変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図24】
図24は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第1変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図25】
図25は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図26】
図26は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図27】
図27は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第3変形例を示すフローチャートである。
【
図28】
図28は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第3変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図29】
図29は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第3変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図30】
図30は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第3変形例を示す要部拡大断面図である。
【
図31】
図31は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1~
図4は、本開示の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリンタP1を示している。サーマルプリントヘッドA1は、基板1、保護層2、電極層3、抵抗体層4、接続基板5、複数のワイヤ61,62、複数のドライバIC7、保護樹脂78および放熱部材8を備える。サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体C1(
図2参照)に印字を施すサーマルプリンタP1に組み込まれるものである。
【0013】
サーマルプリンタP1は、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラB1を備える。プラテンローラB1は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体C1は、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラB1との間に挟まれ、このプラテンローラB1によって、副走査方向yに搬送される。このような印刷媒体C1としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。プラテンローラB1に代えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視して弓形状の一部分を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラB1と平坦なプラテンとの双方を含む。
【0014】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う要部拡大断面図である。
図1においては、保護層2および複数のワイヤ61を省略しており、
図3においては、保護層2を省略している。理解の便宜上、
図1~
図4において、基板1(後述の基材11)の厚さ方向を厚さ方向zとしている。主走査方向xおよび副走査方向yは、いずれも厚さ方向zと直交する方向である。印刷時において、印刷媒体C1は、副走査方向yの図中矢印が指す方向に送られる。副走査方向yにおいて、図中矢印が指す方向を下流とし、その反対方向を上流とする。また、厚さ方向zにおいて、図中矢印が指す方向を上方とし、その反対方向を下方とする。
【0015】
基板1は、
図1に示すように、主走査方向xに長く延びる板状である。基板1は、保護層2、電極層3、抵抗体層4、および、複数のドライバIC7を支持する支持部材である。基板1は、基材11およびグレーズ層12を有する。
【0016】
基材11は、たとえばAlN(窒化アルミニウム)Al
2O
3(アルミナ)、ジルコニアなどのセラミックからなる。基材11は、たとえばその厚さが0.6mm以上1.0mm以下である。基材11は、
図1に示すように、平面視において、主走査方向xに長く延びる矩形状とされている。基材11は、第1主面11aおよび第1裏面11bを有する。第1主面11aと第1裏面11bとは、厚さ方向zに離間する。第1主面11aは、基材11の上面であり、厚さ方向zの上方を向く。第1裏面11bは、基材11の下面であり、厚さ方向zの下方を向く。第1主面11aは、本開示の主面であり、第1裏面11bは、本開示の第1裏面11bである。
【0017】
グレーズ層12は、基材11上に形成されている。グレーズ層12は、第1主面11aを覆う。グレーズ層12は、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。グレーズ層12は、膨出部122および平坦部121を含んでいる。
【0018】
膨出部122は、主走査方向xに長く延びている。膨出部122は、主走査方向x視において、厚さ方向zに膨出している。膨出部122は、
図4に示すように、主走査方向xに直交する平面による断面(y-z断面)が、円弧状である。膨出部122は、抵抗体層4のうち発熱する部分(後述の発熱部41)を印刷媒体C1に押し当て易くするために、設けられる。また、膨出部122は、発熱部41からの熱を蓄積する蓄熱層として、設けられている。膨出部122は、厚さ方向zの寸法(最大寸法)が、平坦部121よりも大きい。本実施形態においては、
図4に示す膨出部122の厚さ方向zにおける大きさである高さHは、膨出部122の副走査方向yの大きさである幅Wの5%以上であり、好ましくは、10%以上である。
【0019】
平坦部121は、膨出部122に隣接して形成されており、上面が平坦な形状である。平坦部121の厚さは、たとえば2.0μm程度である。平坦部121は、相対的に粗面である基材11の第1主面11aを覆うことにより、電極層3を形成するのに適した平滑面を構成するためのものである。
【0020】
グレーズ層12の軟化点は何ら限定されない。平坦部121の軟化点と、膨出部122の軟化点とは、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。平坦部121および膨出部122の軟化点は、たとえば800℃以上850℃以下であり、または、たとえば680℃程度である。
【0021】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための導通経路を構成する。電極層3は、導電性材料によって形成されている。電極層3は、たとえばAu(金)を含む金属である。電極層3は、基板1のグレーズ層12上に形成されている。電極層3の厚さは、たとえば1μm以上7.5μm以下(好ましくは5.0μm程度)である。電極層3は、
図3および
図4に示すように、共通電極31および複数の個別電極34を有している。なお、電極層3の各部の形状および配置は、
図3および
図4に示す例に限定されず、様々な構成とすることができる。また、電極層3の各部の材料も限定されない。
【0022】
共通電極31は、
図3に示すように、複数の帯状部32および連結部33を有している。連結部33は、基板1の副走査方向y下流側の端縁寄りに配置されており、主走査方向xに延びる帯状である。複数の帯状部32は、各々が連結部33から副走査方向yに延びており、主走査方向xに等ピッチで配置されている。
図3に示す例では、連結部33の抵抗値を低減させるために、連結部33上にAg層331が積層されているが、Ag層331が積層されていなくてもよい。Ag層331は、たとえば有機Ag(銀)化合物を含むペーストあるいはAg(銀)粒子、ガラスフリット、Pd(パラジウム)および樹脂を含むペーストを印刷および焼成することによって形成される。
【0023】
複数の個別電極34は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものである。各個別電極34は、共通電極31に対して逆極性となる。各個別電極34は、抵抗体層4からドライバIC7に向かって延びている。複数の個別電極34は、主走査方向xに配列されている。複数の個別電極34はそれぞれ、帯状部35、連結部36およびボンディング部37を有している。
【0024】
帯状部35は、
図3に示すように、副走査方向yに延びており、厚さ方向zに見て、帯状である。各帯状部35は、共通電極31の隣り合う2つの帯状部32の間に位置している。隣り合う個別電極34の帯状部35と共通電極31の帯状部32との間隔は、たとえば50μm以下である。
【0025】
連結部36は、帯状部35からドライバIC7に向かって延びる部位である。連結部36は、平行部361および斜行部362を含む。平行部361は、一端がボンディング部37に繋がり、かつ、副走査方向yに沿って延びている。斜行部362は、副走査方向yに対して傾斜している。斜行部362は、副走査方向yにおいて、平行部361と帯状部35との間に挟まれている。また、複数の個別電極34は、ドライバIC7に集約される。
【0026】
複数のボンディング部37は、
図3に示すように、個別電極34の副走査方向y上流側の端部に形成されており、各々が各平行部361に繋がっている。各ボンディング部37には、各ワイヤ61がボンディングされている。これにより、各個別電極34とドライバIC7とが、各ワイヤ61を介して、導通する。複数のボンディング部37は、第1ボンディング部37Aと第2ボンディング部37Bとを含む。隣り合う2つの第1ボンディング部37Aに挟まれた平行部361の幅(主走査方向xにおける長さ)は、たとえば10μm以下である。また、第2ボンディング部37Bは、副走査方向yにおいて第1ボンディング部37Aよりも抵抗体層4から遠ざかる側に位置する。第2ボンディング部37Bは、隣り合う2つの第1ボンディング部37Aに挟まれた平行部361に繋がっている。このような構成により、複数のボンディング部37は、連結部36のほとんどの部位よりも幅が大きいにも関わらず、互いに干渉することが回避されている。連結部36のうち隣り合う第1ボンディング部37Aに挟まれた部位は、個別電極34において最も幅が小さい。
【0027】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大である。抵抗体層4は、たとえば酸化ルテニウムなどからなる。抵抗体層4は、
図3および
図4に示すように、膨出部122上に形成されている。抵抗体層4は、
図1および
図3に示すように、厚さ方向z視において、主走査方向xに延びる帯状である。抵抗体層4は、各帯状部32(共通電極31)と各帯状部35(個別電極34)とに交差している。抵抗体層4は、厚さ方向zにおいて、複数の帯状部32と複数の帯状部35に対して基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各帯状部32と各帯状部35とに挟まれた部位が、発熱部41とされている。複数の発熱部41は、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する。各発熱部41の発熱によって印字ドットが形成される。複数の発熱部41は、主走査方向xに配列されている。基板1の主走査方向xの単位長さ(たとえば1mm)において主走査方向xに配列される複数の発熱部41の数が多いほど、サーマルプリントヘッドA1のドット密度が大きくなる。抵抗体層4の厚さは、たとえば3μm以上6μm以下である。抵抗体層4の材料および厚さは限定されない。
図4に示す例では、抵抗体層4は、膨出部122の頂部上に形成されているが、膨出部122の頂部上に形成されている必要はなく、膨出部122上に形成されていればよい。
【0028】
保護層2は、電極層3および抵抗体層4などを保護するためのものである。ただし、保護層2は、複数の個別電極34の複数のボンディング部37を含む領域を露出させている。保護層2は、たとえば非晶質ガラスからなる。保護層2は、非晶質ガラスからなる第1層と、たとえば、SiAlONからなる第2層とが積層されていてもよい。SiAlONは、窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)を合成した窒
化ケイ素系のエンジニアリングセラミックスである。第2層はたとえばスパッタリングで形成される。第2層は、SiAlONの代わりにSiC(炭化ケイ素)を採用してもよい。また、保護層2は、互いに異なる材質を含む複数層が積層された構成であってもよい。
【0029】
接続基板5は、
図1および
図2に示すように、基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。接続基板5は、たとえばプリント基板であり、図示しない配線パターンが形成されている。接続基板5には、後述のコネクタ59が搭載される。接続基板5の形状は特に限定されないが、本実施形態においては、主走査方向xを長手方向とする矩形状である。接続基板5は、第2主面5aおよび第2裏面5bを有する。第2主面5aは、基材11の第1主面11aと同じ側を向く面であり、第2裏面5bは、基材11の第1裏面11bと同じ側を向く面である。
【0030】
複数のドライバIC7はそれぞれ、たとえば基板1に搭載されており、複数の発熱部41に個別に通電させるためのものである。各ドライバIC7は、基板1と接続基板5とに跨って搭載されていてもよいし、接続基板5に搭載されていてもよい。複数のドライバIC7は、複数のワイヤ61によって複数の個別電極34(複数のボンディング部37)に接続されている。複数のドライバIC7による複数の発熱部41への通電制御は、接続基板5を介してサーマルプリントヘッドA1の外部から入力される指令信号に従う。複数のドライバIC7は、複数のワイヤ62によって接続基板5の配線パターン(図示略)に接続されている。複数のドライバIC7は、複数の発熱部41の個数に応じて、適宜設けられている。
【0031】
複数のドライバIC7、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62は、保護樹脂78に覆われている。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、基板1と接続基板5とに跨るように形成されている。
【0032】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタに接続するために用いられる。コネクタ59は、接続基板5に取り付けられており、接続基板5の配線パターン(図示略)に接続されている。
【0033】
放熱部材8は、
図2に示すように、基板1および接続基板5を支持している。放熱部材8は、複数の発熱部41によって生じた熱の一部を、基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばAl等の金属からなるブロック状の部材である。放熱部材8は、
図2に示すように、支持面81を有する。支持面81は、各々が厚さ方向z上側を向いている。支持面81には、基材11の第1裏面11bおよび接続基板5の第2裏面5bが接合されている。
【0034】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、
図5~
図22を参照して、説明する。
図5は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図6~
図9、
図11~
図15、
図17、
図19、
図20および
図22はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す断面図であって、
図4に示す断面に対応する。
図10、
図16、
図18および
図21はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す要部拡大平面図であって、
図3に示す要部拡大図に対応する。
【0035】
まず、
図6に示すように、基材11を用意する。基材11は、たとえばセラミックからなり、このセラミックの素材としては、たとえば、AlN、Al
2O
3、ジルコニアなどのいずれかが採用される。基材11は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く第1主面11aおよび第1裏面11bを有している。一般的に、第1主面11aは、基材11(セラミック)の素地による微細な凹凸(第1凹凸)が形成されており、粗面である。
【0036】
次に、第1塗布工程を行う。
図7に示すように、第1塗布工程では、基材11の第1主面11aに、第1ガラスペースト1210を塗布する。第1ガラスペースト1210は、グレーズ層12の平坦部121と膨出部122の一部とを形成するための材料である。第1ガラスペースト1210の具体的構成は何ら限定されず、たとえばガラスフリットおよび溶剤等を含むガラスペーストである。第1ガラスペースト1210に含まれるガラスフリットの軟化点は何ら限定されず、たとえば800℃以上850℃以下、あるいは680℃程度である。第1ガラスペースト1210の塗布厚さ(厚さ方向zの寸法)は何ら限定されず、例えば10μm以上200μm以下である。第1ガラスペースト1210を塗布する手法は何ら限定されず、たとえば厚膜印刷によって塗布される。
【0037】
次に、第1乾燥工程を行う。
図8に示すように、第1乾燥工程では、第1ガラスペースト1210に含まれる溶剤等を蒸発させる。第1乾燥工程は、自然乾燥によって行ってもよいし、たとえば乾燥炉を用いて行ってもよい。第1乾燥工程を経ることにより、第1ガラスペースト1210から溶剤等が蒸発し、
図9に示す第1ガラスペースト1211となる。第1ガラスペースト1211は、第1ガラスペースト1210よりも溶剤等の含有率が低い。また、第1ガラスペースト1211は、第1ガラスペースト1210よりも硬く、形状を維持しやすいものとなっている。
【0038】
次に、第2塗布工程を行う。
図10および
図11に示すように、第2塗布工程では、第1ガラスペースト1211に接するように第2ガラスペースト1220を塗布する。また、第2塗布工程では、第2ガラスペースト1220が第1ガラスペースト1210よりも厚さ方向zに突出する形状となるように、第2ガラスペースト1220を塗布する。図示された例においては、第1ガラスペースト1211の図中上面に第2ガラスペースト1220が塗布されている。また、第2ガラスペースト1220は、主走査方向xに長く延びる帯状に塗布されている。第2ガラスペースト1220は、膨出部122を形成するための材料である。
【0039】
第2ガラスペースト1220の具体的構成は何ら限定されず、たとえばガラスフリットおよび溶剤等を含むガラスペーストである。第2ガラスペースト1220に含まれるガラスフリットの軟化点は何ら限定されず、たとえば800℃以上850℃以下、あるいは680℃程度である。第2ガラスペースト1220に含まれるガラスフリットの軟化点は、第1ガラスペースト1210(第1ガラスペースト1211)に含まれるガラスフリットの軟化点と同じであってもよいし、異なっていてもよい。図示された例においては、第2ガラスペースト1220のガラスフリットの軟化点と第1ガラスペースト1210(第1ガラスペースト1211)のガラスフリットの軟化点とは、互いに同じである。第2ガラスペースト1220の塗布厚さ(厚さ方向zの寸法)は何ら限定されず、例えば5μm以上200μm以下である。第2ガラスペースト1220を塗布する手法は何ら限定されず、たとえば厚膜印刷によって塗布される。第1ガラスペースト1211と接するように第2ガラスペースト1220を塗布すると、第1乾燥工程による乾燥を経た第1ガラスペースト1211は、第2ガラスペースト1220よりも溶剤等の含有率が低い。このため、第2ガラスペースト1220に含まれる溶剤等が、第1ガラスペースト1211に吸収される現象が生じる。
【0040】
次に、第2乾燥工程を行う。
図12に示すように、第2乾燥工程では、第2ガラスペースト1220に含まれる溶剤等を蒸発させる。第2乾燥工程は、自然乾燥によって行ってもよいし、たとえば乾燥炉を用いて行ってもよい。第2乾燥工程を経ることにより、第2ガラスペースト1220から溶剤等が蒸発する。また、第2乾燥工程においても、第2ガラスペースト1220に含まれる溶剤等が、第1ガラスペースト1211に吸収される。第2乾燥工程を経ることにより、第2ガラスペースト1220は、
図13に示す第2ガラスペースト1221となる。第2ガラスペースト1221は、第2ガラスペースト1220よりも溶剤等の含有率が低い。また、第2ガラスペースト1221は、第2ガラスペースト1220よりも硬く、形状を維持しやすいものとなっている。
【0041】
次に、焼成工程を行う。焼成工程では、第1ガラスペースト1211および第2ガラスペースト1221が設けられた基材11を、焼成炉等の内部に載置し、焼成を行う。これにより、第1ガラスペースト1211および第2ガラスペースト1221が焼成され、
図14に示すグレーズ層12が形成される。第1ガラスペースト1211のみが設けられた領域においては、平坦部121が形成される。第2ガラスペースト1221が設けられた領域においては、膨出部122が形成される。本実施形態においては、膨出部122の厚さ方向zにおける大きさである高さHは、膨出部122の副走査方向yの大きさである幅Wの5%以上であり、好ましくは、10%以上である。基材11およびグレーズ層12は、基板1を構成している。
【0042】
次いで、
図15~
図19に示すように、電極層3を形成する。電極層3を形成する工程(電極層形成工程)は、たとえば次に示す金属層の製造方法により行う。金属層の製造方法は、印刷工程、パターン形成工程および焼成工程を含む。
【0043】
印刷工程では、
図15および
図16に示すように、厚膜印刷によって基板1のグレーズ層12上に金属ペースト材30を転写する。本実施形態では、金属ペースト材30として、たとえば、Auペースト材を用いる。つまり、金属ペースト材30は、金属成分としてAu(金)を含む。当該金属成分は、Au(金)に限定されず、Ag(銀)、Cu(銅)等であってもよい。
【0044】
パターン形成工程では、
図17および
図18に示すように、印刷工程にて印刷した金属ペースト材30のパターニングを行う。このパターニングは、たとえば露光工程と現像工程とによって行う。
図17および
図18に示すように、パターニングされた金属ペースト材30が形成される。パターニングされた金属ペースト材30は、サーマルプリントヘッドA1の電極層3における共通電極31(複数の帯状部32および連結部33)と複数の個別電極34(帯状部35、連結部36およびボンディング部37)とに対応する部分を含む。
【0045】
焼成工程では、パターン形成工程によってパターニングされた金属ペースト材30を焼成する。これにより、金属ペースト材30の金属成分であるAu(金)を主成分とする電極層3が形成される。形成された電極層3は、共通電極31および複数の個別電極34を含んでいる。
【0046】
上記した電極層形成工程により、電極層3が基板1に形成される。なお、Ag層331は、たとえば焼成工程後に、共通電極31の連結部33上に、Agを含むペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより形成される。
【0047】
なお、電極層形成工程においては、印刷された金属ペースト材30を対象とした焼成工程を行うことにより金属層を形成し、その後、パターン形成工程にて、フォトリソグラフィにより金属層のパターニングを行ってもよい。
【0048】
次いで、
図20および
図21に示すように、抵抗体層4を形成する。抵抗体層4を形成する工程(抵抗体層形成工程)では、たとえば、酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペーストを厚膜印刷する。抵抗体ペーストは、グレーズ層12の膨出部122上において、主走査方向xに延びる帯状に厚膜印刷され、電極層3の各帯状部32(共通電極31)と各帯状部35(各個別電極34)とを交互に交差する。そして、厚膜印刷した抵抗体ペーストを焼成する。これにより、
図20および
図21に示す抵抗体層4が形成される。
【0049】
次いで、
図22に示すように、保護層2を形成する。保護層2を形成する工程(保護層形成工程)では、たとえば、外部に露出する基板1(グレーズ層12)、電極層3(複数のボンディング部37を除く)および抵抗体層4の上に、保護層2を構成するガラスペーストを厚膜印刷する。そして、厚膜印刷したガラスペーストを焼成する。これにより、
図22に示す保護層2が形成される。
【0050】
その後に、基板1および接続基板5の放熱部材8への取付け、ドライバIC7の実装、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62のボンディング、および、保護樹脂78の形成などの工程を経ることにより、
図1~
図4に示すサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0051】
サーマルプリントヘッドA1の作用および効果は、次の通りである。
【0052】
サーマルプリントヘッドA1の製造方法は、
図5に示すように、第1塗布工程および第1乾燥工程と、第2塗布工程とを含む。
図8に示す第1乾燥工程を経ることにより、
図9に示す第1ガラスペースト1211は、溶媒等の含有率が低くなっている。
図10および
図11に示す第2塗布工程においては、第2ガラスペースト1220が第1ガラスペースト1211と接するように第2ガラスペースト1220を塗布する。また、第2ガラスペースト1220は、第1ガラスペースト1211よりも厚さ方向zに突出する形状に塗布される。第2ガラスペースト1220に含まれる溶媒等は、第1ガラスペースト1211に吸収される。このため、第2ガラスペースト1220の突出した形状を維持しやすい。そして、この後の焼成工程を経ることにより得られる基板1においては、グレーズ層12の膨出部122の厚さ方向zの高さHをより高く仕上げることが可能である。たとえば、本実施形態においては、膨出部122の厚さ方向zの高さHは、副走査方向yの幅Wの5%以上とすることが可能であり、好ましくは、10%以上とすることが可能である。したがって、
図2に示す印刷媒体C1とサーマルプリントヘッドA1との接触圧力を高めることが可能であり、サーマルプリントヘッドA1の印刷の品位を高めることができる。同様に、サーマルプリンタP1の印刷の品位を高めることができる。
【0053】
本実施形態においては、第2塗布工程の後、焼成工程の前に第2乾燥工程を行う。これにより、
図13に示すように、焼成構成に先立って、第2ガラスペースト1220から溶媒等を十分に蒸発させた第2ガラスペースト1221を形成することが可能である。第2ガラスペースト1221は、第2ガラスペースト1220と比べて固く、厚さ方向zに突出した形状を維持しやすい。これにより、印刷媒体C1とサーマルプリントヘッドA1との接触圧力をより確実に高めることができる。
【0054】
第2ガラスペースト1220の塗布厚さは、第1ガラスペースト1210の塗布厚さよりも厚い。これにより、膨出部122を厚さ方向zにより膨出した形状に仕上げることができる。
【0055】
第2塗布工程で塗布された第2ガラスペースト1220と基材11の第1主面11aとの間には、第1ガラスペースト1211が介在している。第1ガラスペースト1211は、第1乾燥工程を経ているため、溶媒等を吸収しやすい。したがって、第2ガラスペースト1220を、たとえば第1主面11a上に塗布した場合と比較して。第2ガラスペースト1220の溶媒等をより確実に除去することができる。
【0056】
図23~
図32は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。また、上述の実施形態と、以降に述べる変形例および他の実施形態の各部の構成は、技術的な矛盾等が生じない限り、相互に自在に組み合わせることが可能である。
【0057】
<第1実施形態 第1変形例>
図23および
図24は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第1変形例を示している。本変形例においては、
図23に示すように、第1塗布工程において、第1ガラスペースト1210に溝部1215を形成する。溝部1215は、溝部1215の厚さ方向zの上面から基材11側に凹んだ部位であり、主走査方向xに長く延びている。図示された例においては、溝部1215は、第1ガラスペースト1210を厚さ方向zに貫通している。溝部1215からは、基材11の第1主面11aが露出している。このような溝部1215は、たとえば第1ガラスペースト1210を厚膜印刷する際に主走査方向xに長く延びるマスクを用いることにより形成する。
【0058】
図24は、第1ガラスペースト1210を第1乾燥工程により第1ガラスペースト1211とした後に、第2塗布工程を行った状態を示している。第2塗布工程では、第2ガラスペースト1220が第1ガラスペースト1211に接するように塗布する。また、本変形例においては、溝部1215を第2ガラスペースト1220で埋めるように第2ガラスペースト1220を塗布する。第2ガラスペースト1220は、第1主面11aに接する。塗布された第2ガラスペースト1220は、第1ガラスペースト1211と接した部分において、溶剤等が第1ガラスペースト1211に吸収される。
【0059】
この後は、必要に応じて第2乾燥工程を行い、その後に焼成工程等の上述の工程を経ることにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0060】
本変形例によっても、印刷媒体とサーマルプリントヘッドA1との接触圧力を高めることができる。また、第1ガラスペースト1211が溝部1215を有することにより、第2ガラスペースト1220を厚さ方向zにより突出した形状に塗布しやすいという利点がある。
【0061】
<第1実施形態 第2変形例>
図25および
図26は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第2変形例を示している。本変形例においては、
図25に示すように、第1塗布工程において、第1ガラスペースト1210に溝部1215を形成する。溝部1215は、溝部1215の厚さ方向zの上面から基材11側に凹んだ部位であり、主走査方向xに長く延びている。図示された例においては、溝部1215は、第1ガラスペースト1210を厚さ方向zに貫通していない。このため、溝部1215において、基材11の第1主面11aは、露出していない。すなわち、溝部1215は、第1ガラスペースト1210のうち厚さ方向zの厚さが部分的に小である部位である。
【0062】
図26は、第1ガラスペースト1210を第1乾燥工程により第1ガラスペースト1211とした後に、第2塗布工程を行った状態を示している。第2塗布工程では、第2ガラスペースト1220が第1ガラスペースト1211に接するように塗布する。また、本変形例においては、溝部1215を第2ガラスペースト1220で埋めるように第2ガラスペースト1220を塗布する。本変形例においては、第2ガラスペースト1220は、第1ガラスペースト1211のみと接し、第1主面11aとは接しない。塗布された第2ガラスペースト1220は、第1ガラスペースト1211と接した部分において、溶剤等が第1ガラスペースト1211に吸収される。
【0063】
この後は、必要に応じて第2乾燥工程を行い、その後に焼成工程等の上述の工程を経ることにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0064】
本変形例によっても、印刷媒体とサーマルプリントヘッドA1との接触圧力を高めることができる。また、溝部1215が第1ガラスペースト1211を厚さ方向zに貫通していない構成であることにより、第2ガラスペースト1220を厚さ方向zにより突出した形状に塗布しつつ、第2ガラスペースト1220の溶媒等をより迅速に除去することができる。
【0065】
<第1実施形態 第3変形例>
図27~
図30は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の第3変形例を示している。本変形例においては、第2乾燥工程と焼成工程の間に、第3塗布工程および第3乾燥工程を行う。
【0066】
図28に示すように、第2乾燥工程によって第2ガラスペースト1221を形成した後に、第3塗布工程において第3ガラスペースト1230を塗布する。第3塗布工程においては、第3ガラスペースト1230が第2ガラスペースト1221に接するように第3ガラスペースト1230を塗布する。また、第3ガラスペースト1230が第2ガラスペースト1221よりも厚さ方向zに突出する形状となるように第3ガラスペースト1230を塗布する。図示された例においては、第3ガラスペースト1230は、第2ガラスペースト1221の図中上面に塗布されている。なお、第3ガラスペースト1230は、第1ガラスペースト1211に接していてもよい。塗布された第3ガラスペースト1230は、第2ガラスペースト1221と接した部分において、溶剤等が第2ガラスペースト1221に吸収される。
【0067】
次に、
図29に示すように、第3乾燥工程を行う。第3乾燥工程の内容は、たとえば上述の第1乾燥工程および第2乾燥工程と同様である。第3乾燥工程を経ることにより、第3ガラスペースト1230から溶剤等が蒸発する。また、第3乾燥工程においても、第3ガラスペースト1230に含まれる溶剤等が、第2ガラスペースト1221に吸収される。第3乾燥工程を経ることにより、第3ガラスペースト1230は、
図30に示す第3ガラスペースト1231となる。第3ガラスペースト1231は、第3ガラスペースト1230よりも溶剤等の含有率が低い。また、第3ガラスペースト1231は、第3ガラスペースト1230よりも硬く、形状を維持しやすいものとなっている。
【0068】
この後は、焼成工程等の上述の工程を経ることにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0069】
本変形例によっても、印刷媒体とサーマルプリントヘッドA1との接触圧力を高めることができる。また、第2ガラスペースト1221よりも突出した形状の第3ガラスペースト1230を塗布することにより、膨出部122の高さHをより高く仕上げることが可能である。また、本変形例から理解されるように、第1塗布工程、第2塗布工程の後に1つの塗布工程、または複数の塗布工程を行ってもよい。
【0070】
<第2実施形態>
図31および
図32は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドA2を示している。サーマルプリントヘッドA2においては、共通電極31、複数の個別電極34および抵抗体層4の構成が、上述した実施形態と異なっている。
【0071】
本実施形態においては、共通電極31の複数の帯状部32と複数の個別電極34の帯状部35とは、副走査方向yにおいて間隔をおいて対向配置されている。すなわち、ある帯状部32とある帯状部35とは、主走査方向xにおける位置が互いに等しい。帯状部32と帯状部35との間の間隔は、膨出部122上に位置している。
【0072】
抵抗体層4は、互いに離れて配置された複数の発熱部41を含む。複数の発熱部41は、各々が副走査方向yに延びた形状であり、主走査方向xに等間隔で配置されている。発熱部41は、帯状部32と帯状部35とに接している。
【0073】
このような実施形態によっても、印刷媒体とサーマルプリントヘッドA2との接触圧力を高めることができる。また、本実施形態から理解されるように、本開示のサーマルプリントヘッドにおける電極層3、抵抗体層4等の構成は、何ら限定されない。
【0074】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびプリンタは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示のサーマルプリントヘッドの製造方法、サーマルプリントヘッドおよびプリンタの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0075】
〔付記1〕
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材を用意する固定と、
前記主面に第1ガラスペーストを塗布する第1塗布工程と、
前記第1ガラスペーストを乾燥する第1乾燥工程と、
前記第1ガラスペーストに接し且つ前記第1ガラスペーストよりも前記厚さ方向に突出する形状となるように第2ガラスペーストを塗布する第2塗布工程と、
前記第1ガラスペーストおよび前記第2ガラスペーストを一括して焼成することによりグレーズ層を形成する焼成工程と、
前記グレーズ層上に電極層および抵抗体層を形成する工程と、を備える、サーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記2〕
前記第2塗布工程の後、前記焼成工程の前に、前記第2ガラスペーストを乾燥する第2乾燥工程をさらに備える、付記1に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記3〕
前記第2塗布工程においては、前記第2ガラスペーストを主走査方向に延びる帯状に塗布する、付記1または2に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記4〕
前記第2ガラスペーストの塗布厚さは、前記第1ガラスペーストの塗布厚さよりも厚い、付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記5〕
前記第2塗布工程においては、前記第2ガラスペーストの全体と前記主面との間に前記第1ガラスペーストが介在するように塗布する、付記1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記6〕
前記第1塗布工程においては、前記第1ガラスペーストに主走査方向に延びる溝を形成し、
前記第2塗布工程においては、前記溝を埋めるように前記第2ガラスペーストを塗布する、付記1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記7〕
前記溝は、前記第1ガラスペーストを前記厚さ方向に貫通している、付記6に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記8〕
前記溝は、前記第1ガラスペーストを前記厚さ方向に貫通していない、付記6に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記9〕
前記第1ガラスペーストに含まれるガラスの軟化点と、前記第2ガラスペーストに含まれるガラスの軟化点は、互いに等しい、付記1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記10〕
前記第2塗布工程の後に、前記第2ガラスペーストに接し且つ前記第2ガラスペーストよりも前記厚さ方向に突出する形状となるように第3ガラスペーストを塗布する第3塗布工程をさらに備え、
前記焼成工程では、前記第1ガラスペースト、前記第2ガラスペーストおよび前記第3ガラスペーストを一括して焼成する、付記1ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記11〕
前記第3塗布工程の後、前記焼成工程の前に、前記第3ガラスペーストを乾燥する第3乾燥工程をさらに備える、付記10に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記12〕
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、前記グレーズ層に支持された前記電極層を形成した後に、前記電極層の一部を覆うように前記抵抗体層を形成する、付記1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記13〕
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、第2金属ペーストを塗布する処理と、前記第2金属ペーストを焼成することにより前記抵抗体層を形成する処理と、を含む、付記12に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記14〕
前記電極層および前記抵抗体層を形成する工程においては、第1金属ペーストを塗布する処理と、前記第1金属ペーストを焼成することにより前記電極層を形成する処理と、を含む、付記13に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記15〕
前記電極層は、複数の帯状部を有する共通電極と、複数の個別電極とを含む、付記14に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記16〕
前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とは、主走査方向において交互に配置されており、
前記抵抗体層は、主走査方向に延びており且つ前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とを跨いでいる、付記15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記17〕
前記共通電極の前記複数の帯状部と前記複数の個別電極とは、副走査方向において間隔をおいて対向配置されており、
前記抵抗体層は、各々が前記帯状部と前記個別電極とに接する複数の発熱部を含む、付記15に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
〔付記18〕
厚さ方向において互いに反対側を向く主面および裏面を有する基材と、
前記主面に形成されたグレーズ層と、
前記グレーズ層上に形成された電極層および抵抗体層を形成する工程、を備え、
前記グレーズ層は、主走査方向に延び且つ前記厚さ方向に膨出した形状であって前記抵抗体層を支持する膨出部を含み、
前記膨出部の前記厚さ方向の大きさは、前記膨出部の副走査方向の大きさの5%以上である、サーマルプリントヘッド。
〔付記19〕
付記18に記載のサーマルプリントヘッドを備える、サーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0076】
A1,A2:サーマルプリントヘッド
P1 :サーマルプリンタ
1 :基板
2 :保護層
3 :電極層
4 :抵抗体層
5 :接続基板
5a :第2主面
5b :第2裏面
7 :ドライバIC
8 :放熱部材
11 :基材
11a :第1主面(主面)
11b :第1裏面(裏面)
12 :グレーズ層
30 :金属ペースト材
31 :共通電極
32 :帯状部
33 :連結部
34 :個別電極
35 :帯状部
36 :連結部
37 :ボンディング部
37A :第1ボンディング部
37B :第2ボンディング部
41 :発熱部
59 :コネクタ
61,62:ワイヤ
78 :保護樹脂
81 :支持面
121 :平坦部
122 :膨出部
331 :Ag層
361 :平行部
362 :斜行部
1210,1211:第1ガラスペースト
1215 :溝部
1220,1221:第2ガラスペースト
1230,1231:第3ガラスペースト
B1 :プラテンローラ
C1 :印刷媒体
H :高さ
x :主走査方向
y :副走査方向
z :厚さ方向