(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084584
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/18 20060101AFI20230612BHJP
C08F 12/08 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C08J11/18 ZAB
C08F12/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198860
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】野寺 明夫
【テーマコード(参考)】
4F401
4J100
【Fターム(参考)】
4F401AA11
4F401AC05
4F401AC06
4F401AD20
4F401BA13
4F401CA70
4F401CA75
4F401EA01
4F401EA67
4F401EA76
4F401FA11Y
4F401FA11Z
4J100AB02P
4J100AB03Q
4J100AB04Q
4J100AL02R
4J100AS02R
4J100AS03R
4J100DA01
4J100HA51
4J100HC43
4J100HC63
4J100HC75
4J100HE17
4J100JA15
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、樹脂組成面から難燃性スチレンを熱分解しスチレンモノマーを回収するリサイクルにおいて、腐食性ガスを発生させず、燃焼残渣を低減し、スチレンモノマー回収率が高いリサイクル方法を提供することである。
【解決手段】本発明は、スチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法であって、前記スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を調製する工程(1)と、前記混合物を熱分解する工程(2)と、を有する、スチレンモノマーを回収するリサイクル方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法であって
前記スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を調製する工程(1)と、
前記混合物を熱分解する工程(2)と、を有する、スチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【請求項2】
前記混合物における前記NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の含有量が、スチレン系樹脂材料(A)100質量部に対して0.1~5.0質量部である、請求項1記載のスチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂材料(A)が、ゴム変性スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂である、請求項1又は請求項2記載のスチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【請求項4】
前記混合物は、前記スチレン系樹脂材料(A)100質量部に対して、リン系難燃剤(C)を0.1~30質量部さらに含有する、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のスチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【請求項5】
前記スチレン系樹脂材料(A)がポストコンシューマー材料である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のスチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂のスチレンモノマーを回収するリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性に加え、耐衝撃性に優れていることから、広範囲な用途に使用されている。中でも難燃性が付与されたポリスチレン系樹脂組成物は、家電機器、OA機器を始め多岐にわたり使用されており、外装部品や透明部品など意匠性が必要な部材に使用されている。
【0003】
近年、環境や資源枯渇などの問題より、材料の再資源化が求められるようになり、材料のリサイクルが進められている。マテリアルリサイクルが実施されているが、一方、汚れがひどい、または樹脂劣化が大きい材料はマテリアルリサイクルを行うことができず、ケミカルリサイクルによる再資源化が期待されている。スチレン系樹脂では、熱分解によるスチレンモノマー回収のケミカルリサイクルが開発されているが、とくに難燃性ポリスチレン樹脂では、腐食性ガスや燃焼残渣の増加、スチレンモノマーの収率低下が課題となっており、ケミカルリサイクルができない問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、スチレン樹脂のスチレンモノマー回収技術が開示されている。また、特許文献2には特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を配合する難燃技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-2088号公報
【特許文献2】特表2002-507238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、スチレン系樹脂では残渣における残留固形分がケミカルリサイクルに悪影響を及ぼすため、処理設備により燃焼残渣を取り除くことが提案されているのみであり、材料に関しては全く記載がない。さらには、スチレン系樹脂の燃焼により生じる残留固形分を取り除くための設備が必要となり、設備が複雑で費用が高くなってしまう課題もある。また、特許文献2では、難燃性に関する技術のみが記載されており、スチレン系樹脂の熱分解における記載は全くない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スチレン系樹脂を熱分解しスチレンモノマーを回収するリサイクルにおける腐食性ガスの発生を抑制又は防止し、かつスチレン系樹脂の熱分解時の残留固形分となる燃焼残渣を低減し、スチレンモノマー回収率が高い、スチレンモノマーを簡便に得られるリサイクル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、NOR型ヒンダードアミン系化合物とスチレン系樹脂とを含む材料を熱分解することにより、腐食性ガスの発生を抑制又は防止し、かつ燃焼残渣を低減し、スチレンモノマー回収率が高い、スチレンモノマーを簡便に得られるリサイクル方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]スチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法であって
前記スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を調製する工程(1)と、
前記混合物を熱分解する工程(2)と、を有する、スチレンモノマーを回収するリサイクル方法。
【0010】
[2]前記混合物における前記NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の含有量が、スチレン系樹脂材料(A)100質量部に対して0.1~5.0質量部であることが好ましい。
【0011】
[3]前記スチレン系樹脂材料(A)がゴム変性スチレン系樹脂を含むスチレン系樹脂であることが好ましい。
【0012】
[4]前記混合物は、前記スチレン系樹脂材料(A)100質量部に対して、リン系難燃剤(C)を0.1~30質量部さらに含有することが好ましい。
【0013】
[5]前記スチレン系樹脂材料(A)がポストコンシューマー材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スチレン系樹脂を熱分解しスチレンモノマーを回収するリサイクルにおいて、腐食性ガスを発生させず又は腐食性ガスの発生を抑制し、かつ残留固形分となる燃焼残渣を低減し、スチレンモノマーの回収率が高いリサイクル方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
[スチレン系樹脂のリサイクル方法]
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法は、スチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法である。そして、前記スチレン系樹脂は、使用済、廃棄済又は廃棄されるスチレン系樹脂でありうる。すなわち、前記スチレン系樹脂のリサイクル方法は、前記スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を調製する工程(1)と、前記混合物を熱分解する工程(2)と、を有する。
また、必要により、前記工程(1)又は前記工程(2)において、前記混合物にリン系難燃剤(C)を配合してもよい。
これにより、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂材料(A)を熱分解する際において、腐食性ガスを発生させず又は腐食性ガスの発生を抑制し、かつ残留固形分となる燃焼残渣を低減し、高い回収率でスチレンモノマーが簡便に得られる。
【0017】
以下、各工程について詳説する。
(工程(1))
本実施形態におけるスチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法は、スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を調製する工程(1)を有する。
本実施形態における混合物は、スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)とNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)とを含有していればよく、スチレン系樹脂材料(A)に対するNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の分散状態は特に制限されなく、公知の混合機構又は混練機構を使用して後述の工程(2)を施す前又は後述の工程(2)を施しながら予備混合を行っても良い。当該混合機構又は混練機構としては、特に制限されず、混合物中の各成分が均一に混合される方法が好ましく、必要により溶融混合又は溶融混練であってもよい。前記混合又は混練機構の具体例としては、単軸押出機、2軸押出機、スクリュー型押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサー又はインターナルミキサーなどが挙げられる。混合又は混練の時間は、1~10分程度であることが好ましい。また、溶融混練する場合の温度条件としては、180~260℃であることが好ましい。さらには、溶融混練する場合、混練機構内(又は混錬装置内)を減圧することが好ましく、バキューム圧は500mmHg以上であることが好ましい。なお、バキューム圧とは、大気圧と混練機構内の圧力との差圧のことをいい、ベントなどから減圧することができる。
本実施形態の混合物において、スチレン系樹脂材料(A)(100質量部)に対して、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を0.1~5質量部配合することが好ましく、0.2~4質量部配合することがより好ましく、0.3~3質量部配合することがさらに好ましい。より詳細には、本実施形態の混合物において、スチレン系樹脂(100質量部)に対して、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を0.1~5質量部配合することが好ましく、0.2~4量部配合することがより好ましく、0.3~3質量部配合することがさらに好ましい。
【0018】
<スチレン系樹脂材料(A):(A)成分>
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法において、スチレン系樹脂材料(A)は、工場回収品などのプレコンシューマー材料、市場回収品などのポストコンシューマー材料などであり、場合によっては長期在庫ペレット、規格外ペレットなども含まれる。また、スチレン系樹脂材料(A)は、リン系難燃剤を含む難燃性スチレン系樹脂でも可能な方法であり、流動パラフィンや安定剤、着色剤などを含んでいてもよく、オレフィン系樹脂又はポリエーテル系樹脂など他樹脂が積層されているような製品又はオレフィン系樹脂又はポリエーテル系樹脂など他樹脂と混合されている混合樹脂でも使用できる。
特にこのリサイクル方法は熱分解時残渣が生じるゴム変性スチレン系樹脂に対して使用することが有益であり、さらに環境面よりポストコンシューマー材料が好ましい。
【0019】
本実施形態で使用可能なスチレン系樹脂材料(A)に含有されるスチレン系樹脂は、使用済、廃棄済又は廃棄されるスチレン系樹脂でありうる。そして、前記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位を有していればよく、スチレン系単量体単位と、必要に応じて当該スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体単位及びゴム状重合体(a)より選ばれる1種以上とを重合して得られる樹脂であることが好ましい。換言すると、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体単位を有する重合体であることが好ましく、スチレン系単量体単位を必須に含み、当該スチレン系単量体単位に対して共重合可能な他のビニル系単量体及び/又はゴム状重合体(a)の単量体単位を任意成分として有する重合体であることがより好ましい。本実施形態におけるスチレン系樹脂の好ましい形態は特に限定されることは無いが、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリスチレン系重合体(ポリスチレン及び/又はポリスチレン-不飽和カルボン酸系重合体等)を含有するポリマーマトリックス中にゴム状重合体(a)の粒子が分散されたゴム変性スチレン系樹脂、又はスチレン系共重合樹脂が挙げられる。
本実施形態で使用可能なスチレン系樹脂材料(A)に含有されるスチレン系樹脂は、スチレン系樹脂全体(100質量%)に対して、スチレン系単量体単位を50質量%以上有していればよく、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
また、本実施形態において、スチレン系樹脂材料(A)に含有されるスチレン系樹脂は、スチレン系樹脂材料(A)全体(100質量%)に対して、スチレン系樹脂を70質量%以上有していればよく、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有する。
【0020】
<<ポリスチレン>>
本実施形態において、ポリスチレンとはスチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。ポリスチレンを構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。ポリスチレンは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体単位以外の単量体単位を更に含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
【0021】
<<ゴム変性スチレン系樹脂>>
本実施形態において、ゴム変性スチレン系樹脂とは、マトリクスとしてのスチレン系樹脂中にゴム状重合体(a)の粒子が分散したものであり、ゴム状重合体(a)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。
【0022】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。
【0023】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体(a)は、例えば、当該ゴム状重合体(a)の内側に上記のスチレン系単量体より得られるスチレン単量体単位を含有する樹脂を内包してもよく、及び/又は、当該ゴム状重合体(a)の表面にスチレン単量体単位を含有する樹脂がグラフトされたものであってよい。
【0024】
前記ゴム状重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等のゴム成分を使用できる。また、当該ゴム成分には、ポリスチレン及び/又はポリスチレン-不飽和カルボン酸系重合体等を内包した形態を含んでも良い。なかでも、ゴム状重合体(a)は、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(a)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0025】
このようなゴム変性スチレン系樹脂の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0026】
ゴム変性スチレン系樹脂がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(a)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
【0027】
なお、上記ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス-1,4構造、トランス-1,4構造、又はビニル-1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
【0028】
また、上記ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3-ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0029】
ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、当該ゴム変性スチレン系樹脂総量100質量%に対して、3~20質量%が好ましく、更に好ましくは5~15質量%である。ゴム状重合体(a)の含有量が3質量%未満であるとスチレン系樹脂の耐衝撃性が低下する虞がある。また、ゴム状重合体(a)の含有量が20質量%を超えると難燃性が低下する虞がある。
【0030】
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0031】
ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、耐衝撃性や難燃性の観点から、0.5~4.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~3.5μmである。
【0032】
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、以下の方法により測定することができる。
四酸化オスミウムで染色したゴム変性スチレン系樹脂から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影する。当該写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体(a)である。写真から、下記数式(N1):
平均粒子径=ΣniDri3 /ΣniDri2 (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体(a)の平均粒子径とする。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定する。
【0033】
ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下する虞があり、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する虞がある。
【0034】
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
【0035】
ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(a)の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(a)ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(a)とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0036】
<スチレン系共重合樹脂>
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂とは、スチレン系単量体単位と、当該スチレン系単量体と共重合可能なその他単量体(例えば、不飽和カルボン酸系単量体単位)とを含む樹脂である。例えば、前記その他単量体が不飽和カルボン酸系単量体単位である場合、本発明に係るスチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸系単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量は69~98質量%であることが好ましく、より好ましくは74~96質量%であり、さらに好ましくは77~92質量%の範囲である。当該含有量を69質量%以上とすることにより、樹脂の流動性を向上させることができる。一方、当該スチレン系単量体単位の含有量を98質量%以下とすることにより、その他単量体の一例である後述の不飽和カルボン酸系単量体単位を所望量存在させにくくなり、これらの単量体単位による後述の効果を得にくくなる。
【0037】
なお、本実施形態における不飽和カルボン酸系単量体は、不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸エステル単量体を含む。
【0038】
本実施形態の好適なスチレン系共重合樹脂において、不飽和カルボン酸単量体単位は耐熱性を向上させる役割を果たす。前記スチレン系共重合樹脂中のスチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸単量体単位の含有量は2~16質量%であることが好ましく、より好ましくは4~14質量%であり、さらに好ましくは8~13質量%である。当該含有量を2質量%以上とすることにより、(B)成分の分散性が向上するとともに耐熱性をより向上させることができる。一方、当該含有量を16質量%以下とすることにより、本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物をマスターバッチとして使用した場合、スチレン系樹脂に対する優れた分散性が発揮され、難燃性が向上できるほか、成形外観、樹脂の流動性、及び機械的物性がより向上する。
【0039】
一般に、本発明におけるスチレン系共重合樹脂の一形態である、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合樹脂を含むスチレン-メタクリル酸系樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されている。しかし、本実施形態において、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行なうことができる。
【0040】
不飽和カルボン酸エステル単量体は、不飽和カルボン酸単量体との分子間相互作用によって不飽和カルボン酸単量体の脱水反応を抑制するために、及び、樹脂の機械的強度を向上させるために用いることができる。更には、不飽和カルボン酸エステル単量体は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
【0041】
本実施形態において、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位の合計含有量を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量は0~15質量%であることが好ましく、より好ましくは1~12質量%、さらに好ましくは2~10質量%である。当該含有量を15質量%以下とすることにより、樹脂の流動性を向上させ、且つ吸水性を抑制することができる。また、不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量の下限を0質量%とすることにより、耐熱性の向上やコスト削減をすることができるが、上記の観点から不飽和カルボン酸エステル単量体単位の含有量を0質量%超とすることもできる。
【0042】
なお、不飽和カルボン酸単量体と不飽和カルボン酸エステル単量体単位とが隣り合わせで結合した場合、高温、高真空の脱揮装置を用いると、条件によっては脱アルコール反応が起こり、六員環酸無水物が形成される場合がある。本実施形態のスチレン系共重合樹脂は、この六員環酸無水物を含んでいてもよいが、流動性を低下させることから、生成される六員環酸無水物はより少ない方が好ましい。
【0043】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂中の、スチレン系単量体単位(例えば、スチレン単量体単位)、不飽和カルボン酸単量体単位(例えば、メタクリル酸単量体単位)及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位(例えば、メタクリル酸メチル単量体単位)の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0044】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂は、スチレン系単量体単位、その他の単量体の一例である、不飽和カルボン酸系単量体(例えば、不飽和カルボン酸単量体単位及び不飽和カルボン酸エステル単量体単位)以外の単量体単位を、本発明の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しない。しかし、本発明におけるスチレン系共重合樹脂は、典型的には、スチレン系単量体単位、不飽和カルボン酸単量体単位、及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体単位から構成されることが好ましい。
【0045】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレン系単量体としては、特に限定されないが例えば、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ブロモスチレン、インデン等のスチレン誘導体が挙げられる。スチレン系単量体としては、工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されないが例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸単量体としては、耐熱性の向上効果が大きく、常温にて液状でハンドリング性に優れることからメタクリル酸が好ましい。これらの不飽和カルボン酸系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
本実施形態のスチレン系共重合樹脂を構成する、不飽和カルボン酸エステル系単量体としては、特に限定されないが例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、耐熱性低下に対する影響が小さいことから(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステル系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
本実施形態の好適なスチレン系共重合樹脂としては、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレンーメタクリル酸ブチル共重合体、又はスチレン-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0049】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂の重量平均分子量(Mw)は100,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは120,000~300,000、さらに好ましくは140,000~240,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
【0050】
本実施形態において、スチレン系アルコキシ基重合樹脂の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
【0051】
以下、本実施形態に用いることができるスチレン系共重合樹脂の重合方法の一例について説明する。
【0052】
スチレン系共重合樹脂を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
【0053】
スチレン系共重合樹脂の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0054】
スチレン系共重合樹脂の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0055】
スチレン系共重合樹脂の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0056】
本実施形態において、スチレン系共重合樹脂を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、スチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、不飽和カルボン酸単量体(例えば、メタクリル酸)と不飽和カルボン酸エステル単量体(例えば、メタクリル酸メチル)との隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0057】
<NOR型ヒンダードアミン系化合物(B):(B)成分>
本実施形態の混合物におけるNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~3質量部であり、さらに好ましくは0.5~2.0質量部である。NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の含有量が0.1質量部以上であれば、スチレン系樹脂を熱分解させたとき、燃焼残渣が低減でき、スチレンモノマーを高い収率で回収できる。(B)成分は、添加剤としてそのまま添加しても構わないが、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂材料(A)に既に含有されたものも使用できる。また、ポストコンシューマー材料のようにリサイクル材にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)が含まれているものも使用できる。その場合、リサイクルを実施する際、他のスチレン系樹脂を加えなくてもよい。NOR型ヒンダードアミン系化合物は、THFの溶媒に溶かしたのち、ガスクロマトグラフを用いた重量分析により含有量を定量化できる。
【0058】
また、(B)成分は、熱分解時、スチレン系樹脂からのラジカル分解物を安定化させることにより、スチレンモノマーの回収率が高く、残渣が残らない効果となる。さらにスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂材料(A)にリン系難燃剤(C)が含有されている場合は、リン難燃剤分解物と反応し、リン由来の残渣を低減させる効果がある。一方、N-メチル型ヒンダードアミン系化合物又はN-H型ヒンダードアミン系化合物の場合は、そのような効果は見られない。
【0059】
本実施形態で用いるNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、N-アルコキシル基(>N-OR)の構造を有するものであれば特に限定されない。具体例として、例えば、特表2002-507238号公報、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号等に記載されているNOR型ヒンダードアミン系化合物等(B)が好適例として挙げられる。
【0060】
また、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、特に高分子タイプのものが好ましい。高分子タイプとは、一般に、オリゴマー状又はポリマー状化合物である。高分子タイプであると、成形加工のモールドデポジットが低減でき、難燃性と耐熱性の点に優れる。
【0061】
上記オリゴマー状又はポリマー状のNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、繰り返し単位数としては、2~100が好ましく、より好ましくは5~80である。
【0062】
本実施形態において使用可能なNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる:1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-オクタデシルアミノピペリジン;2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;ビス(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)-6-クロロ-s-トリアジン;過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物(N,N’,N’’’-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3’-エチレンジイミノジプロピルアミン);ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート;1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン;ビス(1-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート。
【0063】
本実施形態のNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、市販品を使用してもよく、例えば、BASF社製FlamestabNOR116FF、TINUVIN NOR371、TINUVIN XT850FF、TINUVIN XT855FF、TINUVIN PA123、株式会社ADEKA製LA-77Y、LA-81、FP-T80等を例示することができる。
本実施形態におけるNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、1種を単独で使用しても、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
<リン系難燃剤(C):(C)成分>
本実施形態の工程(1)又は工程(2)において、スチレン系樹脂材料(A)又は混合物は、リン系難燃剤(C)を含有しても良い。前記リン系難燃剤(C)の含有量は、スチレン系樹脂材料(A)(100質量部)に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは2~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部である。当該含有量が30質量部より多いと残渣量が多くなり、リサイクル時、頻繁に取り除く必要が生じる。リン系難燃剤(C)は、スチレン系樹脂又はスチレン系樹脂材料(A)に既に含有されていてもよく、あるいは本実施形態の工程(1)又は工程(2)において、スチレン系樹脂材料(A)又は混合物に配合してもよい。NOR型ヒンダードアミン系化合物は、THF溶媒に溶かしたのち、ガスクロマトグラフ用いた重量分析により含有量を定量化できる。前者のリン系難燃剤(C)を含むスチレン系樹脂又はスチレン系樹脂材料(A)としては、難燃用途に使われるものであり、工場回収品などのプレコンシューマー材料、市場回収品などのポストコンシューマー材料などが挙げられる。また、場合によっては長期在庫ペレット、規格外ペレットなどが対象となる。NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)と併用することにより、リン難燃剤から腐食性ガスの発生を抑制又は防止し、スチレン系樹脂材料(A)の熱分解時の残渣量を低減することが可能である。特に、リン系難燃剤(C)として、ホスホン酸エステル化合物及び/又はホスフィン酸化合物を使用する場合、残渣低減にはより効果を発揮しうる。
【0065】
本実施形態において使用可能なリン系難燃剤(C)は、特に制限されず、従来公知の方法によって得られるもの、又は市販品を用いることができる。前記リン系難燃剤(C)としては、好ましくはリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホン酸化合物(例えばホスホン酸エステルを包含する。)、又はホスフィン酸化合物(例えばホスフィン酸塩化合物を包含する。)である。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもスチレン系樹脂との相溶性の良いリン酸エステル化合物、又はホスホン酸エステル化合物、ホスフィン酸化合物が最も好ましい。
【0066】
--リン酸エステル化合物--
上記リン酸エステル化合物としては、芳香族リン酸エステル化合物が好ましい。例えば、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)等のモノマー型リン酸エステル系化合物、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビスフェノールAビス-ジクレジルホスフェート、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェート等の、オキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である芳香族縮合リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
これらの中でも好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェートであり、より好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェートであり、更に好ましくは、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートである。
【0067】
また、リン酸エステル化合物は、耐熱性、成形加工時のモールドデポジットの低減等の観点で、縮合タイプである縮合リン酸エステル系化合物であることが好ましく、特に下記化学式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル系化合物が好ましい。
【化1】
(上記化学式(1)中、R
1~R
5はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、R
1~R
5は同一でも異なっていてもよい。nは0~30の整数であり、好ましくは0~10の整数である。)
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第2ブチル基、第3ブチル基、アミル基、第3アミル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、2,6-キシリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0068】
更に、上記リン酸エステル化合物の中でも、難燃性と透明性の両立という観点から、下記の化合物(1-1)、(1-2)、又は(1-3)で表わされるリン酸エステル化合物が好ましく、化合物(1-2)又は(1-3)がより好ましく、化合物(1-2)が更に好ましい。
化合物(1-2)(レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のPX-200等が使用でき、化合物(1-3)(レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のCR-733S等が使用できる。
【化2】
【0069】
-ホスファゼン化合物-
ホスファゼン化合物としては、例えば、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-エチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-n-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-イソ-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,3-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,4-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,5-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,6-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等が挙げられる。
【0070】
この中でも好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、より好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、更に好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼンである。
【0071】
-ホスホン酸エステル-
ホスホン酸エステルとしては、例えば、下記化学式(2)で表されるものが挙げられる。
【化3】
(上記化学式(2)中、R
6~R
10は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい一価の炭化水素基であり、R
6~R
10はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
本明細書中において、一価の炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい)及び環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでもよい)のいずれであってもよく、例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよい。
当該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0072】
上記化学式(2)で表されるホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(2-1)~(2-8)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0073】
-ホスフィン酸化合物-
ホスフィン酸化合物としては、例えば、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドや10-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドなどが挙げられる。9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイドとしては、例えば、三光株式会社のHCA等が、10-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイドとしては、例えば、三光株式会社のBCA等が使用できる。
【0074】
-ホスフィン酸塩化合物-
ホスフィン酸塩化合物としては、下記一般式(i)で表され、ホスフィン酸塩及びジホスフィン酸塩から選択される少なくとも1種のホスフィン酸塩類を含むことが好ましく、より好ましくはホスフィン酸塩化合物全体(100質量%)に対して70質量%以上をホスフィン酸塩類が占める。
下記一般式(i):
【化5】
[上記式(i)中、R
i1及びR
i2は、各々独立して、無置換又は1以上の水素原子が置換基R
i3により置換されてもよい、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基又は炭素原子数6~14のアラルキル基であり、
前記置換基R
i3は、下記式(ii):
【化6】
「上記式(ii)中、R
ii1は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であり、*は他の原子との結合を表す。」で表され、
M
iは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、p
+はM
iのイオン価を表し、1~3の正の整数であり、m
i1は、1~3の正の整数であり、n
-は、-1、-2又は-3の負の整数を表し、rは、1~3の正の整数であり、|p
+×r|=|n
-×m
i1|である。また、R
i1及びR
ii1がそれぞれ複数存在する場合は、それぞれのR
i1及びR
ii1が同一であってもあるいは異なっていてもよい。]
そのため、本実施形態におけるホスフィン酸塩化合物としては、一般式(i)で表されるホスフィン酸塩類以外の公知の難燃剤を、当該ホスフィン酸塩化合物全体(100質量%)に対して30質量%以下含んでもよい。
上記式(i)中、M
iのイオン価を表す「p
+」と「r」との積の絶対値が、「n
-」と「m
i1」との積の絶対値に等しい。
上記(i)中、p
+は、1又は2が好ましい。m
i1は、1又は2が好ましい。n
-は、-1又は-2が好ましい。rは、1又は2が好ましい
【0075】
本実施形態において、好ましいホスフィン酸塩は、下記の一般式(iii)で表される通りであり、
【化7】
[上記式(iii)中、R
11及びR
12は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であり、M
1は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a
+はM
1のイオン価を表し、1~3の整数であり、m
1は、1~3の整数であり、a=m
1である。R
11及びR
12がそれぞれ複数存在する場合は、それぞれのR
11及びR
12が同一であってもあるいは異なっていてもよい。]からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0076】
本実施形態において、好ましいジホスフィン酸塩は、下記の一般式(iv)で表される通りであり、
【化8】
[上記式(iv)中、R
21及びR
22は、各々独立して、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であり、L
23は、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数6~10のアリーレン基、炭素原子数6~14のアルキルアリーレン基又は炭素原子数6~14のアリールアルキレン基であり、M
2は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、亜鉛イオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びプロトン化された窒素塩基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、b
+はM
2のイオン価を表し、1~3の整数であり、m
2は、1~3の整数であり、qは、1又は2の整数であり、b×q=2m
2である。R
21及びR
12がそれぞれ複数存在する場合は、それぞれのR
21及びR
22が同一であってもあるいは異なっていてもよい。]からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0077】
上記式(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、又はヘキシル基の直鎖状のアルキル基、及びイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソアミル基、又はt-アミル基等の分岐状のアルキル基が挙げられる。
上記式(i)、(ii)、(iii)及び(iv)において、炭素原子数6~10のアリール基としては、単環構造或いは縮環構造を有するものであってもよい。例えば、フェニル基又はナフチル基が挙げられる。
上記式(iv)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~10のアルキレン基は、上記直鎖状若しくは分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基から水素原子を一つ取り除いた基が挙げられる。
上記式(iv)において、炭素原子数6~10のアリーレン基は、上記炭素原子数6~10のアリール基から水素原子を一つ取り除いた基が挙げられる。
上記式(i)において、炭素原子数6~14のアラルキル基は、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、又はtert-ブチルナフチル基が挙げられる。
上記式(iv)において、炭素原子数6~14のアルキルアリーレン基としては、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、tert-ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基、tert-ブチルナフチレン基が挙げられる。
上記式(iv)において、炭素原子数6~14のアリールアルキレン基としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基が挙げられる。
上記式(iii)において、R11及びR12は、各々独立して、直鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であることが好ましい。
上記式(iii)において、M1は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛が好ましい。また、aはM1のイオン価を表わし、2又は3である。
上記式(iv)において、R21及びR22は、各々独立して、直鎖状の炭素原子数1~6のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であることが好ましい。
上記式(iv)において、L23は各々独立して、直鎖状の炭素原子数1~6のアルキレン基又は炭素原子数6~10のアリーレン基であることが好ましい。
上記式(iv)において、M2は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛が好ましい。また、bはM2のイオン価を表わし、2又は3である。
ホスフィン酸塩化合物は、電気特性に優れるため、絶縁性が必要な難燃材料に適しており、加水分解性にも優れるため、高温高湿度下での用途に使えるほか、リサイクル性にも優れる。
【0078】
本実施形態に用いるホスフィン酸塩は、中でも、ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物とを用いて水溶液中で製造され、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては、縮合度が1~3のポリマー性ホスフィン酸塩類も含まれる。
【0079】
このようなホスフィン酸塩としては、特に限定されることなく、例えば、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸マグネシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸マグネシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸マグネシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル-n-プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸マグネシウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチル-n-プロピルホスフィン酸亜鉛、メタンジ(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)マグネシウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メタンジ(メチルホスフィン酸)亜鉛、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)マグネシウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン-1,4-(ジメチルホスフィン酸)亜鉛、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸マグネシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸マグネシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸亜鉛が挙げられ、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルブチルホスフィン酸アルミニウム、ジブチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛であることが好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムであることが更に好ましい。
ホスフィン酸塩化合物(b)の市販品としては、特に限定されることなく、例えば、クラリアントジャパン社製のExolit(登録商標)OP1230、OP1240、OP1311、OP1312、OP930、OP935等が挙げられる。
【0080】
本実施形態において、ホスフィン酸塩化合物は粒状であることが好ましい。当該ホスフィン酸塩化合物が粒状である場合、ホスフィン酸塩化合物の平均粒子径は、本実施形態の難燃性樹脂組成物を成形して得られる成形品の機械的強度、成形品の外観を向上する点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、ホスフィン酸塩化合物(b)はこの粒子径にまで粉砕した粉末を用いるのが好ましい。好ましくは0.5μm超20μm、より好ましくは1μm超20μm以下である。好ましい粒子径の粉末を用いると、高い難燃性を発現するばかりでなく、衝撃強度が著しく高くなるので、特に好ましい。
粒状のホスフィン酸塩化合物の平均粒子径の測定方法としては、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径に基づいている。また、ホスフィン酸塩化合物の分散媒として3%イソプロパノール水溶液を用いて測定される値である。具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-910(堀場製作所(株)製)を用いて、3%イソプロパノール水溶液の分散媒でブランク測定を行った後、測定試料を規定の透過率(95%~70%)になるように入れて測定することにより求めることができる。なお、分散媒中への試料の分散は、超音波を1分間照射することにより行う。
【0081】
<任意添加成分>
本実施形態のスチレン系樹脂材料(A)又は混合物には、上記(A)~(C)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤、加工助剤等の任意添加成分を添加することができる。これら添加剤、加工助剤等としては、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
【0082】
上記酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0083】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-tert-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-tert-ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-tert-ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-tert-ブチル-4-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
上記耐候剤としては、紫外線吸収剤等を用いることができる。当該紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-tert-オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-tert-アミルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
上記滑剤としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
【0088】
上記脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
上記脂肪族エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28~30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
上記脂肪酸系滑剤のうち飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。
【0091】
上記脂肪酸系滑剤のうち不飽和脂肪酸としては、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0092】
上記脂肪酸金属塩系滑剤としては、上記脂肪酸系滑剤の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0093】
上記帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を用いることができる。具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3-ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0094】
上記充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭素繊維、マイカ、ワラストナイト、ウィスカ等を用いることができる。
【0095】
本実施形態における混合物は、上記の添加剤及び加工助剤等その他、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目ヤニ防止剤)等の任意添加成分を含有してもよい。添加剤及び加工助剤等の任意添加成分の合計含有量は、混合物中、0.05~5質量%としてよい。
【0096】
本実施形態の混合物は、実質的に(A)成分~(B)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分~(B)成分のみ、(A)成分~(C)成分のみ、又は(A)成分~(C)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
【0097】
「実質的に(A)成分~(C)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、混合物の95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(A)成分~(C)成分であるか、又は(A)成分~(C)成分及び任意添加成分であることを意味する。
【0098】
尚、本実施形態の混合物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分~(C)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0099】
(工程(2))
本実施形態のスチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法は、スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)にNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を配合した混合物を熱分解する工程(2)と、を有する。
前記混合物は、スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)とNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)とを含有していればよく、必要により、上述した混合機構又は混練機構を使用して工程(2)を施す前又は工程(2)を施しながら予備混合を行っても良い。また、前記工程(1)及び又は前記工程(1)において、前記混合物又はスチレン系樹脂材料(A)に対して必要によりリン系難燃剤(C)を添加してもよい。
本実施形態において、混合物を熱分解する方法としては、例えば、熱分解炉内に前記混合物を充填した後、400~800℃の温度、好ましくは450~600℃の温度に前記混合物を加熱する熱分解工程を行うことが好ましい。そして、この際発生した熱分解蒸気は、スチレンモノマーの沸点以上180℃以下の温度に冷却して、高沸点成分を液化して再び前記熱分解炉の中に滴下させることによって、再度スチレンモノマーを回収するようにしてもよい。
上記熱分解炉の温度範囲にすることにより、原料のスチレン系樹脂材料(A)に含まれうるポリオレフィン系樹脂等の他の樹脂を除去することができる。すなわち、ポリスチレンの熱分解温度は約330~380℃であるのに対して、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)の熱分解温度は約400~450℃である。そのため、上記熱分解炉内の温度を400~800℃に設定することにより、発生した熱分解蒸気の大部分がスチレン系樹脂の熱分解生成物となりうる。
また、本実施形態における熱分解炉は、公知の熱分解炉を使用することができる。例えば、本実施形態の熱分解炉は、原料であるスチレン系樹脂材料(A)及びNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を貯留され可能な原料貯留槽と、前記原料貯留槽に流体的に接続された熱分解炉と、前記原料貯留槽中の原料を熱分解炉に供給する原料供給ポンプと、前記熱分解炉の外周に設けられた加熱機構(ホットプレートなど)とを有する。さらには、必要により、重合禁止剤を供給する装置を用いて、重合禁止剤を断続的又は連続的に供給して、生成されるスチレンモノマーの重合反応を抑制してもよい。
本実施形態における熱分解炉は、当該熱分解炉から供給される熱分解蒸気を精留し、ベンゼン又はトルエン等の低沸点成分と、粗スチレンモノマー(純度が90%以下のスチレンモノマー)とを分離することが可能な常圧精留塔に対して流体的に接続されてもよい。さらには、前記常圧精留塔は、分離された前記粗スチレンモノマーの純度を上げるために前記粗スチレンモノマーを真空蒸留する真空蒸留塔と流体的に接続されてもよい。そして、必要により、熱分解により生じる熱分解蒸気中の成分を脱塩素処理する脱塩素装置を前記熱分解炉と前記常圧精留塔との間に流体的に接続してもよい。本発明においてスチレン系樹脂材料(A)及びNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を含有する混合物を熱分解する機構としては、上記の通り、例えば、熱分解炉、常圧精留塔及び真空蒸留塔を有する熱分解機構が挙げられる。そしてこの機構により、スチレンモノマーを回収してスチレン系樹脂のリサイクル方法を提供できる。
本実施形態のスチレン系樹脂からスチレンモノマーを回収するリサイクル方法は、上記工程(2)の熱分解によって発生した熱分解蒸気からスチレンモノマーを回収する工程(3)を有してもよい。
以下、スチレン系樹脂材料(A)とNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)とを含有する混合物を熱分解し、当該熱分解により生じる熱分解蒸気からスチレンモノマーを回収するまでの工程の一例を説明する。
スチレン系樹脂を含有するスチレン系樹脂材料(A)とNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)と必要により添加されるリン系難燃剤(C)を含有する混合物を、必要により、上述した混合機構又は混練機構を使用して予備混合した後、熱分解炉内に前記混合物を充填して、400~800℃の温度に前記混合物を加熱する。そして、前記熱分解炉における加熱により、前記混合物が熱分解されて発生した熱分解蒸気は、必要により設けられる脱塩素装置を通過した後、常圧精留塔へと供給される。前記脱塩素装置には、鉄粉末又は鉄系触媒などの金属粉末が充填されており、熱分解蒸気中に含まれる塩素系物質は金属粉末と吸着することによって除去されうる。次に、常圧精留塔は、熱分解炉から供給された熱分解蒸気を精留し、常圧精留塔の頂部から低沸点成分であるベンゼン又はトルエン等を回収し、塔の中央部から粗スチレンモノマー(純度が90%以下のスチレンモノマー)として回収し、塔の底部から高沸点成分であるスチレンダイマー又はスチレントリマー等を回収する。前記常圧精留塔の中央部から回収した粗スチレンモノマーは、コンデンサー及び脱塩素装置を介して粗スチレンモノマー回収容器内に回収され、その一部は常圧精留塔へと還流され、残りは真空蒸留塔へと供給される。そして、前記真空蒸留塔において、110℃以下で真空蒸留を行うことにより、純度の高いスチレンモノマー(純度99.5%以上)を回収することができる。
【0100】
<スチレン系樹脂のリサイクル方法の好ましい形態>
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法は、製品、製品の粉砕品やペレットを加熱、電磁波により、熱分解し気化したガスを採集し、スチレンモノマーを回収するものである。NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は加熱する前に配合してもよく、あるいはスチレン系樹脂材料(A)として、製品、及び製品の粉砕品やペレットに含まれていてもよい。熱分解時の加熱温度は400℃~800℃であり、好ましくは450℃~600℃である。気化したガスはガスとして、もしくは冷却し液体として回収した後、蒸留等によりスチレンモノマーを生成する。NOR型ヒンダードアミン化合物(B)は分解され、加熱分解炉に残留物として残らず、スチレンモノマーの不純物等影響を与えない。さらにリン系難燃剤(C)がスチレン系樹脂材料(A)に含まれる場合、一般的には酸価リンとして、加熱炉に残留物として残ってしまうが、NOR型ヒンダードアミン化合物(B)が存在すると残留物を大きく低減することができる。熱分解時、NOR型ヒンダードアミン化合物(B)がリン化合物と反応し、ガスになるためと考えられる。またリン系難燃剤(C)は、ホスフィンガスのような腐食性ガスを発生する場合があるが、NOR型ヒンダードアミン化合物(B)との反応により、腐食性ガスの発生を抑制又は防止することができる。
【0101】
[リサイクル材料の評価]
<腐食性ガス>
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法における腐食性ガスは、代表的な腐食性ガスとして、ハロゲン系ガス又はホスフィン酸系ガスなどがあり、スチレン系樹脂がガス発生する温度で鉄を腐食しないことが必要である。
【0102】
<残渣量>
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法における残渣量は、窒素雰囲気下で熱重量分析(TGA)により判断することが可能で、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.8%以下である。1%より多いと熱分解炉の熱効率が低下したり、配管などが閉塞する恐れがある。
【0103】
<スチレンモノマー回収率>
本実施形態のスチレン系樹脂のリサイクル方法におけるスチレンモノマー回収率は、40%以上であることが好ましく、より好ましくは45%以上である。スチレンモノマー回収率が40%より低いと、採算性が低く、純度の低いスチレンモノマーになってしまう恐れがある。
【0104】
[リサイクルで回収されたスチレンモノマーを利用した再生スチレン系樹脂]
本実施形態のリサイクルで回収されたスチレンモノマーは、通常のスチレン系樹脂製造である塊状重合法や溶液重合法などに使用し、再生スチレン系樹脂を製造することができる。
【実施例0105】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0106】
「測定及び評価方法」
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0107】
(1)腐食性ガスの測定
実施例・比較例で作製したペレット状混合物(1)~(19)を各5gと10×10×1mmの鉄板とをガラスシャーレに入れて密封した後、400℃のオーブンで1時間加熱した後、24時間後、鉄板表面の錆の有無を目視で確認した。
【0108】
(2)燃焼残渣量の測定
実施例・比較例で作製したペレット状混合物(1)~(19)を熱重量分析(TGA)で窒素雰囲気下昇温速度10℃/時間の条件で550℃の残渣量を測定した。
なお、前記燃焼残渣量は、(加熱分解後のペレット状混合物の重量)/(ペレット状混合物の仕込み重量)×100(%)である。
【0109】
(3)スチレンモノマー比率の測定
実施例・比較例で作製したペレット状混合物(1)~(19)を熱分解ガスクロマトグラフ/質量分析法を用いて窒素雰囲気下550℃で測定し、スチレンモノマーとスチレンダイマーとスチレントリマーとのピーク面積の合計に対するスチレンモノマーピーク面積比で評価した。
【0110】
実施例及び比較例で用いた各材料は下記の通りである。
<HIPS>
MFR7.0の高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量8.6質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。
【0111】
<NOR型ヒンダードアミン化合物(B)含有HIPS(NOR-HIPS-1)>
後述するNOR型ヒンダードアミン化合物B1を3質量%含有したMFR8.2のポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。当該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量8.5質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。このHIPSはIrganox1076とIrgafos168を0.2質量部ずつ添加後、予備混合し、得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、220℃の範囲で溶融押出(スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hr)を行い、ペレットを作製した。
【0112】
<NOR型ヒンダードアミン化合物(B)含有HIPS(NOR-HIPS―2)>
後述するNOR型ヒンダードアミン化合物B1を1質量%、及び後述するホスホン酸エステル5質量%含有したMFR6.2の高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量8.5質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。製造方法はNOR-HIPS-1と同様である。
【0113】
<NOR型ヒンダードアミン化合物(B)含有HIPS(NOR-HIPS-3)>
後述するNOR型ヒンダードアミン化合物B1を1質量%、及び後述するリン酸エステル5質量%含有したMFR8.5の高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量8.5質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。製造方法はNOR-HIPS-1と同様である。
【0114】
<NOR型ヒンダードアミン化合物(B)含有HIPS(NOR-HIPS-4)>
後述するNOR型ヒンダードアミン化合物B1を1質量%、及び後述するホスフィン酸系化合物5質量%含有したMFR8.1の高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量8.5質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。製造方法はNOR-HIPS-1と同様である。
【0115】
<NOR型ヒンダードアミン化合物(B)含有HIPS(NOR-HIPS-5)>
後述するNOR型ヒンダードアミン化合物B1を1質量%、及び後述するホスフィン酸アルミニウム20質量%含有したMFR3.8の高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、ゴム状重合体の含有量7質量%であった。当該高衝撃ポリスチレン(HIPS)の平均粒子径は1.5μmであった。製造方法はNOR-HIPS-1と同様である。
【0116】
<ポストコンシューマー材料>
家電から回収された高衝撃ポリスチレンを用いた。MFR5.6、ゴム状重合体含有量7.5質量%、平均粒子径1.6μmであった。
【0117】
<(B)成分>
NOR型ヒンダードアミン系化合物B1(表1,2中、NOR-HALS-B1とも称する。)[BASF社製、FlamestabNOR116FF、NOR型高分子タイプ]
NOR型ヒンダードアミン系化合物B2(表1,2中、NOR-HALS-B2とも称する。)[(株)ADEKA製、アデカスタブ LA-81 NOR型]
【0118】
<(C)成分>
・ホスホン酸エステル化合物[丸菱油化工業株式会社製、ノンネン73]
・リン酸エステル:レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート[大八化学工業株式会社製、PX-200]
・ホスフィン酸系化合物[三光株式会社製、HCA、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド]
・ホスフィン酸アルミニウム「クラリアントジャパン社製Exolit OP1230」
【0119】
<添加剤>
(フェノール系酸化防止剤)
・ステアリル〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕[BASF社製、Irganox1076]
(リン系酸化防止剤)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト[BASF社製、Irgafos168]
【0120】
[実施例1-1]
回収スチレン系材料又はスチレン系樹脂材料(A)としての上記HIPSと、NOR型ヒンダードアミン化合物(B)としての上記NOR-HALS-B1と、を表1に示す組成比で予備混合し、ペレット状混合物(1)を調製した後、特開2021-134281号に記載された熱分解装置に準拠して、窒素雰囲気の条件下で約550℃の温度で加熱分解して、スチレンモノマーを回収した。当該スチレンモノマーの純度は98%であり、スチレンモノマーの回収率は55%であった。なお、回収スチレン系樹脂(A-1)の加熱分解により生じた残留固形分となる燃焼残渣量は、0.5%であった。
[実施例1-2]
実施例1-1で作製したペレット状混合物(1)を、上記「腐食性ガスの測定」、上記「燃焼残渣量の測定」及び上記「スチレンモノマー比率の測定」の欄に記載の手順に従い評価した。その結果を表1に示す。当該表1に示す通り、燃焼残渣量及びスチレンモノマー比の値が、実施例1-1の熱分解装置を使用した場合と概ね同程度であり、かつ腐食性ガスの測定結果も同じであることが確認できたため、実施例2~12及び比較例1~7については、実施例1-1の熱分解装置を使用することなく、各実施例及び比較例で得られたペレット状混合物(2)~(19)をそのまま上記の測定の欄の手順にしたがって評価した。
[実施例2~7]
表1に示す組成比で各成分を予備混合し、得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、180℃~230℃の範囲で溶融押出(スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hr)を行い、ペレット状混合物(2)~(7)を作製し、上記の測定の欄の手順にしたがって評価した。
[実施例8~12]
表1に示す組成比でスチレン系樹脂材料(A)及びNOR型ヒンダードアミン化合物(B)を含有するペレット状混合物(8)~(12)を上記の測定の欄の手順にしたがってそのまま評価した。
[比較例1~2]
表2に示す組成比でスチレン系樹脂材料(A)及びNOR型ヒンダードアミン化合物(B)を含有するペレット状混合物(13)~(14)を上記の測定の欄の手順にしたがってそのまま評価した。
[比較例3~7]
表2に示す組成比で予備混合し、得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、180℃~230℃の範囲で溶融押出(スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hr)を行い、ペレット状混合物(15)~(19)を作製し上記の測定の欄の手順にしたがって評価した。
【0121】
【0122】
【0123】
実施例1~12は、上記表1に示すように、腐食性ガスの発生もなく、燃焼残渣量が少なく、高いスチレンモノマー比を示した。溶融混合の有り無しにかかわらず、腐食性ガスの発生、燃焼残渣量、及びスチレンモノマー比がいずれも良好であり、リン系難燃剤(C)を含む材料も良い結果が得られた。
一方、比較例1~2については、表2に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)を含有しないと燃焼残渣量が1%を超える結果となった。
また比較例3については、表2に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)が多いと燃焼残渣量が増え、スチレンモノマー比も低減する結果となった。
同様に比較例4~7については、表2に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)が無く、リン系難燃剤(C)が含有すると燃焼残渣量が増え、スチレンモノマー比が低減したり、腐食性ガスが発生する結果が得られた。
本発明のスチレン系樹脂のリサイクル方法は、スチレン系樹脂を熱分解しスチレンモノマーを回収するリサイクルにおける腐食性ガスの発生を抑制又は防止し、かつスチレン系樹脂の熱分解時の残留固形分となる燃焼残渣を低減し、スチレンモノマー回収率が高いリサイクル方法を提供することである。