(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084592
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】長尺状部材付着装置、タイヤ製造装置、長尺状部材付着方法、及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/16 20060101AFI20230612BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B29D30/16
B29D30/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198875
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 寿樹
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA02
4F215VA12
4F215VD18
4F215VK02
4F215VL03
4F215VL11
4F215VL13
4F215VM07
4F215VP27
(57)【要約】
【課題】本発明は、長尺状の部材の曲げ剛性を予め増加させずに被付着部材に付着させる際に、長尺状の部材が意図せずにずれてしまうことを抑制する。
【解決手段】被付着部材であるカーカス38に長尺状の部材である導電糸44を押圧して付着させる長尺状部材付着装置10において、導電糸44を切断するカッタ54と、カッタ54よりも導電糸44の搬送経路の上流側で導電糸44を把持するチャックである第一チャック50と、カッタ54よりも導電糸44の搬送経路の下流側で導電糸44を挟持可能であり、カーカス38に接触しながら導電糸44をカーカス38に押圧して付着させる挟持部である吸着ローラ56及びクランプローラ58と、を備え、引出部である第一チャック50は、カッタ54により切断された導電糸44の先端を、次回の付着に備えて吸着ローラ56及びクランプローラ58の導電糸44の搬送経路の下流側まで引き出す、長尺状部材付着装置10。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給部から供給される長尺状の部材を切断するカッタと、
前記カッタよりも前記長尺状の部材の搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第一チャックと、
前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側で前記長尺状の部材を挟持可能であり、前記長尺状の部材を被付着部材に押圧して付着させる挟持部と、
前記カッタにより切断された前記長尺状の部材の先端を、次回の付着に備えて前記挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出す引出部と、
を備え、
前記第一チャック、前記挟持部及び前記引出部の少なくとも何れかにより前記長尺状の部材を常に把持又は挟持する、長尺状部材付着装置。
【請求項2】
前記第一チャックは、前記引出部を兼ねている、
請求項1に記載の長尺状部材付着装置。
【請求項3】
前記挟持部は、周面に前記長尺状の部材を吸着する吸着ローラ及び、前記吸着ローラと共に前記長尺状の部材を挟んで挟持するクランプローラを含む、
請求項1又は請求項2に記載の長尺状部材付着装置。
【請求項4】
前記第一チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第二チャックをさらに備えている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の長尺状部材付着装置。
【請求項5】
前記長尺状の部材は、導電性を有する糸である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の長尺状部材付着装置。
【請求項6】
前記挟持部は、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向のうち、前記X方向及び前記Y方向に移動すると共に、前記Z方向を軸として回動するアームの末端に取り付けられている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の長尺状部材付着装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の長尺状部材付着装置と、
タイヤ成型ドラムと、
を備え、
前記長尺状の部材は、タイヤ構成部材であり、
前記被付着部材は、前記タイヤ成型ドラムに載置された、前記タイヤ構成部材とは別のタイヤ構成部材である、
タイヤ製造装置。
【請求項8】
供給部から供給される長尺状の部材を被付着部材に押圧して付着させる長尺状部材付着方法において、
切断された前記長尺状の部材の搬送経路の下流側の先端側を、引出部によって挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出して前記挟持部に挟持させる挟持ステップと、
前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記引出部をカッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる移動ステップと、
供給される長尺状の部材を押圧しながら被付着部材に付着させる付着ステップと、
前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で、第一チャックによって前記長尺状の部材を把持する把持ステップと、
前記第一チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、前記カッタによって前記長尺状の部材を切断する切断ステップと、
前記カッタにより切断された前記第一チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側の前記長尺状の部材を、前記挟持部によって押圧しながら前記被付着部材に付着させる第二付着ステップと、
を有する長尺状部材付着方法。
【請求項9】
前記第一チャックは、前記引出部を兼ねており、前記挟持ステップでは、前記第一チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、切断された前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側の先端側を、前記挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出して前記挟持部に挟持させ、前記移動ステップでは、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる、
請求項8に記載の長尺状部材付着方法。
【請求項10】
前記移動ステップでは、前記第一チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第二チャックによって、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記カッタよりも上流側で前記長尺状の部材が把持され、
前記引出部は、前記移動ステップでは、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持すると共に、前記第二チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる、
請求項8又は請求項9に記載の、長尺状部材付着方法。
【請求項11】
前記長尺状の部材は、導電性を有する糸である、
請求項8から請求項10のいずれか一項に記載の、長尺状部材付着方法。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか一項に記載の長尺状部材付着方法を備えたタイヤ製造方法であって、
前記長尺状の部材は、タイヤ構成部材とされ、
前記被付着部材は、タイヤ成型ドラムに載置された、前記タイヤ構成部材とは別のタイヤ構成部材とされている、
タイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状部材付着装置、タイヤ製造装置、長尺状部材付着方法、及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、熱硬化性接着剤を用いて繊維束を被貼付面上の所定の貼り付け位置に貼り付ける、繊維束貼り付け装置であって、該繊維束貼り付け装置は、前記繊維束の搬送装置、前記繊維束及び/又は前記貼り付け位置に前記熱硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布手段、前記繊維束を前記被貼付面上に押圧して貼り付ける押圧手段を少なくとも有し、前記押圧手段による押圧貼り付け動作に先だって、前記接着剤塗布手段により塗布された前記熱硬化性接着材を加熱する加熱手段をさらに有することを特長とする、繊維束貼り付け装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の構成では熱硬化性接着剤を繊維束に塗布し、予め加熱しながら貼り付けていたため、繊維束を硬化、すなわち繊維束の曲げ剛性が低いまま付着させる方法について開示されていない。
【0005】
本発明は、長尺状の部材の曲げ剛性を予め増加させずに被付着部材に貼付する工程において、長尺状の部材を所定長さに切断しながら次々と被付着部材に付着させることが可能となる長尺状部材付着装置、タイヤ製造装置、長尺状部材付着方法、及びタイヤ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の長尺状部材付着装置は、供給部から供給される長尺状の部材を切断するカッタと、前記カッタよりも長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第一チャックと、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側で前記長尺状の部材を挟持可能であり、前記長尺状の部材を被付着部材に押圧して付着させる挟持部と、前記カッタにより切断された前記長尺状の部材の先端を、次回の付着に備えて前記挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出す引出部と、を備え、前記長尺状の部材が前記搬送経路から逸脱しないように、前記第一チャック、前記挟持部及び前記引出部の少なくとも何れかにより前記長尺状の部材を常に把持又は挟持する。
【0007】
この長尺状部材付着装置によれば、前記長尺状の部材を前記被付着部材に貼付する工程において、前記長尺状の部材がその前記搬送経路から逸脱しないように前記第一チャック、前記挟持部及び前記引出部の少なくとも何れかにより前記長尺状の部材を常に把持又は挟持しながら、前記長尺状の部材を前記被付着部材に押圧して付着させること、及び次の付着に備えて前記長尺状の部材の付着を準備することが可能となる。
【0008】
また、この長尺状部材付着装置によれば、カッタによる長尺状の部材の切断と、引出部による長尺状の部材の先端の引き出しとを繰り返すことにより、切断された複数の長尺状の部材を被付着部材に次々と付着させることができる。
【0009】
第二態様の長尺状部材付着装置は、第一態様に記載の長尺状部材付着装置において、前記第一チャックは、前記引出部を兼ねている。
【0010】
この長尺状部材付着装置によれば、第一チャックが引出部を兼ねるため、第一チャックが引出部を兼ねていない場合と比して長尺状部材付着装置の部品点数が削減される。
【0011】
第三態様の長尺状部材付着装置は、第一態様又は第二態様に記載の長尺状部材付着装置において、前記挟持部は、周面に前記長尺状の部材を吸着する吸着ローラ及び、前記吸着ローラと共に前記長尺状の部材を挟んで挟持するクランプローラを含む。
【0012】
この長尺状部材付着装置によれば、挟持部が吸着ローラ及びクランプローラであるため、前記長尺状の部材を挟持しながら前記被付着部材に長尺状の部材を押圧することが可能とされる。
【0013】
また、長尺状の部材が吸着ローラに吸着されるため、長尺状の部材が吸着ローラ及びクランプローラで挟持されていない状態でも、吸着ローラのみで長尺状の部材を押圧して被付着部材に付着させることができる。
【0014】
第四態様の長尺状部材付着装置は、第一態様から第三態様のいずれか一態様に記載の長尺状部材付着装置において、前記第一チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第二チャックをさらに備えている。
【0015】
この長尺状部材付着装置によれば、第二チャックを備えていない場合と比して、挟持部が引出部により引き出された長尺状の部材を把持する状態において、引出部が復帰する間に長尺状の部材が挟持部から外れてしまうことがさらに抑制される。
【0016】
第五態様の長尺状部材付着装置は、第一態様から第四態様のいずれか一態様に記載の長尺状部材付着装置において、前記長尺状の部材は、導電性を有する糸である。
【0017】
この長尺状部材付着装置によれば、前記長尺状の部材が導電性を有する糸であるため、前記被付着部材に導電性を付加することが可能とされる。
【0018】
第六態様の長尺状部材付着装置は、第一態様から第五態様のいずれか一態様に記載の長尺状部材付着装置において、前記挟持部は、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向のうち、前記X方向及び前記Y方向に移動すると共に、前記Z方向を軸として回動するアームの末端に取り付けられている。
【0019】
この長尺状部材付着装置によれば、アームが互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向のうち、前記X方向及び前記Y方向に移動すると共に、前記Z方向を軸として回動するため、立体的に配置された前記被付着部材に前記長尺状の部材を付着させることが可能とされる。
【0020】
第七態様のタイヤ製造装置は、第一態様から第六態様のいずれか一態様に記載の長尺状部材付着装置と、タイヤ成型ドラムと、を備え、前記長尺状の部材は、タイヤ構成部材であり、前記被付着部材は、前記タイヤ成型ドラムに載置された、前記タイヤ構成部材とは別のタイヤ構成部材である。
【0021】
このタイヤ製造装置によれば、タイヤ構成部材である長尺状の部材を、別のタイヤ構成部材である被付着部材に付着させるため、タイヤ構成部材を別のタイヤ構成部材に精度よく付着させることが可能とされる。
【0022】
第八態様の長尺状部材付着方法は、供給部から供給される長尺状の部材を被付着部材に押圧して付着させる長尺状部材付着方法において、切断された前記長尺状の部材の搬送経路の下流側の先端側を、引出部によって挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出して前記挟持部に挟持させる挟持ステップと、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記引出部をカッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる移動ステップと、供給される長尺状の部材を押圧しながら被付着部材に付着させる付着ステップと、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で、第一チャックによって前記長尺状の部材を把持する把持ステップと、前記第一チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、前記カッタによって前記長尺状の部材を切断する切断ステップと、前記カッタにより切断された前記チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側の前記長尺状の部材を、前記挟持部によって押圧しながら前記被付着部材に付着させる第二付着ステップと、を有する。
【0023】
この長尺状部材付着方法によれば、前記長尺状の部材がその前記搬送経路から逸脱しないように前記第一チャック、前記挟持部及び前記引出部の少なくとも何れかにより前記長尺状の部材を常に把持又は挟持しながら、前記長尺状の部材を前記被付着部材に付着させること及び次の付着に備えて前記長尺状の部材の付着を準備することが可能となる。
【0024】
また、この長尺状部材付着方法によれば、カッタによる長尺状の部材の切断と、引出部による長尺状の部材の先端の引き出しとを繰り返すことにより、被付着部材に切断された複数の長尺状の部材を次々と付着させることができる。
【0025】
第九態様の長尺状部材付着方法は、第八態様に記載の長尺状部材付着方法において、前記第一チャックは、前記引出部を兼ねており、前記挟持ステップでは、前記第一チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、切断された前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側の先端側を、前記挟持部の前記長尺状の部材の前記搬送経路の下流側まで引き出して前記挟持部に挟持させ、前記移動ステップでは、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる。
【0026】
この長尺状部材付着方法によれば、第一チャックが引出部を兼ねるため、第一チャックが引出部を兼ねていない場合と比して長尺状部材付着装置の部品点数が削減される。
【0027】
第十態様の長尺状部材付着方法は、第八態様又は第九態様に記載の、長尺状部材付着方法において、前記移動ステップでは、前記第一チャックよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側で前記長尺状の部材を把持する第二チャックによって、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持した状態で、前記カッタよりも上流側で前記長尺状の部材が把持され、前記引出部は、前記移動ステップでは、前記挟持部が前記長尺状の部材を挟持すると共に、前記第二チャックが前記長尺状の部材を把持した状態で、前記カッタよりも前記長尺状の部材の前記搬送経路の上流側に移動させる。
【0028】
この長尺状部材付着方法によれば、挟持部が引出部により引き出された長尺状の部材を挟持すると共に第二チャックが長尺状の部材を把持するため、引出部が復帰する間に長尺状の部材が挟持部から外れてしまうことをさらに抑制することが可能とされる。
【0029】
第十一態様の長尺状部材付着方法は、第八態様から第十態様のいずれか一態様に記載の、長尺状部材付着方法において、前記長尺状の部材は、導電性を有する糸である。
【0030】
この長尺状部材付着方法によれば、前記長尺状の部材が導電性を有する糸であるため、前記被付着部材に導電性を付加することが可能とされる。
【0031】
第十二態様のタイヤ製造方法は、第八態様から第十一態様のいずれか一態様に記載の長尺状部材付着方法を備えたタイヤ製造方法であって、前記長尺状の部材は、タイヤ構成部材とされ、前記被付着部材は、タイヤ成型ドラムに載置された、前記タイヤ構成部材とは別のタイヤ構成部材とされている。
【0032】
このタイヤ製造方法によれば、タイヤ構成部材である長尺状の部材を、別のタイヤ構成部材である被付着部材に付着させるため、タイヤ構成部材を別のタイヤ構成部材に精度よく付着させることが可能とされる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、長尺状の部材の曲げ剛性を予め増加させずに被付着部材に付着させる際に、長尺状の部材が意図せずにずれてしまうことを抑制することが可能となる長尺状部材付着装置及び長尺状部材付着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施形態の長尺状部材付着装置を用いて製造される製品の一例を説明する断面図である。
【
図2】実施形態の長尺状部材付着装置を有するタイヤ製造装置を説明する斜視図である。
【
図3】実施形態の長尺状部材付着装置が導電糸を準備する工程の動作を説明する図である。
【
図4】実施形態の長尺状部材付着装置が導電糸を準備する工程の動作を説明する正面図であり、
図4(A)は、第一チャックが導電糸の搬送経路から移動する様子を示す図、
図4(B)は、第一チャックが導電糸を吸着ローラ及びクランプローラに引き出す様子を示す図、
図4(C)は、吸着ローラ及びクランプローラが導電糸を挟持する様子を示す図、
図4(D)は、第一チャックが吸着ローラに導電糸を吸着させる様子を示す図、
図4(E)は、第二チャックが導電糸を把持した状態で第一チャックが元の位置に戻る様子を示す図である。
【
図5】実施形態の長尺状部材付着装置が導電糸を準備する工程の動作を説明する側面図であり、
図5(A)は、第一チャックが導電糸の搬送経路から移動する様子を示す図、
図5(B)は、第一チャックが導電糸を吸着ローラ及びクランプローラに引き出す様子を示す図、
図5(C)は、吸着ローラ及びクランプローラが導電糸を挟持する様子を示す図、
図5(D)は、第一チャックが吸着ローラに導電糸を吸着させる様子を示す図、
図5(E)は、第二チャックが導電糸を把持した状態で第一チャックが元の位置に戻る様子を示す図である。
【
図6】実施形態の長尺状部材付着装置が導電糸をカーカスに付着させる工程の動作を説明する図である。
【
図7】実施形態の長尺状部材付着装置が導電糸をカーカスに付着させる工程の動作を説明する正面図であり、
図7(A)は、吸着ローラが導電糸をカーカスに途中まで付着させた様子を示す図、
図7(B)は、第一チャックが導電糸を把持する様子を示す図、
図7(C)は、カッタが導電糸を切断する様子を示す図、
図7(D)は、吸着ローラが導電糸をカーカスに付着させる様子を示す図である。
【
図8】実施形態の長尺状部材付着装置のアームが導電糸をカーカスに付着させた後、次の付着に備える工程の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0036】
また、以下の説明において、「X方向」、「Y方向」、「Z方向」とは、互いに直交する3つの方向を指しており、実際の方向とは異なる場合がある。以下の説明では、X方向及びZ方向は、一例としてそれぞれ水平方向であり、Y方向は、鉛直方向としている。
【0037】
また、以下の説明において、「上側」、「下側」、「左側」、「右側」等の方向は、参照する図面の紙面における方向を示しており、実際の方向とは異なる場合がある。
【0038】
図1は、本発明に係る長尺状部材付着装置10を用いて製造された製品の一例であるタイヤ20が、リム26と組まれて地面Gに接している状態の断面を示す図である。
【0039】
タイヤ20は、一例として内部にタイヤ20の骨格を成すカーカス38と、カーカス38に対してリム26側に形成されたチェーファー24と、カーカス38に対して地面G側に形成されたトレッド部30とを有している。
【0040】
チェーファー24は、カーカス38が直接的にリム26と触れないように、カーカス38を保護する部分であり、導電性を有する部材で形成されている。このため、タイヤ20は、リム26と電気的に接続されている。
【0041】
また、カーカス38に対してタイヤ20の径方向外側には、タイヤ20の周方向に亘ってベルト22が設けられている。
【0042】
また、ベルト22に対してタイヤ20の径方向外側であるトレッド部30には、トレッドゴム32が設けられており、トレッドゴム32が地面Gと接している。
【0043】
ここで、トレッドゴム32のうちタイヤ20の厚さ方向の一部には、
図1に示すように導電性ゴム34が組込まれている。この導電性ゴム34は、タイヤ20の周方向全周に亘って設けられており、一部が地面Gと接している。
【0044】
また、ベルト22は、導電性を有する部材で形成されているか、導電性を有する部材が組込まれており、ベルト22と導電性ゴム34は、電気的に接続されている。
【0045】
ここで、カーカス38に対してタイヤ20の厚さ方向の外側であるサイドウォール部28には、ベルト22からチェーファー24まで、本発明に係る長尺状の部材の一例である導電糸44が組込まれている。
【0046】
したがって、タイヤ20には、タイヤ20が取り付けられた自動車等の車体から、リム26、チェーファー24、導電糸44、ベルト22、及び導電性ゴム34を伝って地面Gに流れる導電路が形成される。
【0047】
なお、導電糸44は、ベルト22とチェーファー24との間を電気的に接続する材料であればどのような材料でもよいが、一例としてカーボンブラックが繊維中に組込まれた化学繊維で形成されている。
【0048】
また、導電糸44は、ベルト22とチェーファー24との間を電気的に接続すれば本数及び位置は限定されないが、一例として、タイヤ20の幅方向のいずれか一方に、タイヤ周方向に120°の間隔を空けて3本配置されている。
【0049】
なお、導電糸44は、一般的に曲げ剛性が小さい材料とされている。ここで、曲げ剛性が小さい材料とは、風や重力等の外力、残留応力、巻き癖等によって、非拘束状態においてその長さ方向に対して容易に曲がる材料を指す。
【0050】
図2は、長尺状の部材を被付着部材に貼付する工程の一例として、タイヤ構成部材である導電糸44を他のタイヤ構成部材であるカーカス38に付着させてタイヤ20に組込む工程に用いられる、本発明に係る長尺状部材付着装置10を備えたタイヤ製造装置90を示す図である。
【0051】
図2に示すように、本発明に係る長尺状部材付着装置10は、一例として、X方向及びY方向に駆動すると共に、Z方向を軸として回動可能なアーム12を備えている。
【0052】
また、
図2に示すように、本発明に係る長尺状部材付着装置10は、導電糸44を供給する供給部16と、本発明に係る被付着部材の一例であるカーカス38を固定するタイヤ成型ドラム14と共に、タイヤ20に導電糸44を組込む工程に使用される。
【0053】
なお、
図2に示すタイヤ20に導電糸44を組込む工程では、カーカス38の表面は、未加硫ゴムで覆われているため、タイヤ成型ドラム14に固定されたカーカス38の表面は、粘着性を有している。
【0054】
これにより、後述するように導電糸44は、カーカス38の表面に押圧されることで、カーカス38に付着可能とされている。
【0055】
なお、
図2に示すように、カーカス38は、タイヤ成型ドラム14に立体的に取り付けられている。すなわち、カーカス38は、外周面40と、カーカス38の厚さ方向の外側を向く面である側面42を有するように取り付けられている。
【0056】
また、本実施形態に係る供給部16は、図示しない駆動部を有し、導電糸44を巻き出して長尺状部材付着装置10に導電糸44を供給するように構成されていてもよい。
【0057】
続いて、
図3及び
図4を適宜参照しながら、本発明に係る長尺状部材付着装置10の構成を説明する。なお、以後の説明において、「搬送経路」とは、導電糸44をカーカス38に付着させる工程中に、導電糸44が案内されて移動する仮想的な経路を指す。
【0058】
(長尺状部材付着装置10の構成)
図3に示すように本実施形態に係る長尺状部材付着装置10は、供給部16から導電糸44が供給されると共に、アーム12で導電糸44を案内して搬送する。
【0059】
また、アーム12は、アーム12における導電糸44の搬送経路に沿って、第一チャック50と、カッタ54と、吸着ローラ56及びクランプローラ58と、第二チャック52と、を備えている。
【0060】
第一チャック50は、導電糸44を把持することが可能とされている。より具体的には、
図4及び後述する
図7に示すように、第一チャック50は、導電糸44の先端F、又は導電糸44のうち切断により次の先端Fとなり得る箇所、つまり切断位置の上流側近傍を把持する。
【0061】
また、第一チャック50は、本発明に係る「引出部」を兼ねており、
図4に示すように、導電糸44を把持した状態で吸着ローラ56及びクランプローラ58よりも導電糸44の搬送経路の下流側、及び該箇所から吸着ローラ56の側に移動可能とされている。この動作の説明は、後述する。
【0062】
カッタ54は、導電糸44の搬送経路において第一チャック50よりも下流側に設けられ、導電糸44を切断可能とされている。なお、カッタ54は、どのような構成及び動作で導電糸44を切断してもよいが、一例として導電糸44を剪断して切断する。
【0063】
吸着ローラ56は、導電糸44の搬送経路においてカッタ54よりも下流側の、アーム12の末端に設けられ、アーム12に対して回転可能に固定されたローラである。
【0064】
また、吸着ローラ56には、周面に図示しない空気を吸引する吸引孔が周方向に並んで空けられており、吸引孔は、図示しない吸引ポンプに接続されている。
【0065】
このため、吸着ローラ56は、周面に空けられた吸引孔から空気を吸引することで、導電糸44を吸着ローラ56の周面に吸着することが可能とされている。
【0066】
なお、本実施形態に係る吸着ローラ56は、一例として、直径が20mm以上50mm以下とされていることが望ましい。
【0067】
クランプローラ58は、アーム12に対して導電糸44の搬送経路の下流側で、周面が吸着ローラ56に対向して設けられており、吸着ローラ56に対して接近及び離隔する方向に移動可能とされた軸に回転可能に固定されている。
【0068】
また、クランプローラ58は、吸着ローラ56と共に導電糸44を間に挟んで接触することで、導電糸44を挟持可能とされている。すなわち、本実施形態における吸着ローラ56及びクランプローラ58は、本発明の「挟持部」の一例である。
【0069】
なお、吸着ローラ56は、クランプローラ58に対して、後述する導電糸44を付着させる工程におけるアーム12が移動する方向の後側となる位置に配置されている。
【0070】
より具体的には、吸着ローラ56は、
図6において、右側へ移動するアーム12における左側に配置されており、クランプローラ58は、吸着ローラ56よりも右側に配置されている。
【0071】
なお、本実施形態に係るクランプローラ58は、吸着ローラ56よりも小径とされていることが望ましい。より具体的には、後述する導電糸44を付着させる工程において、クランプローラ58がカーカス38に触れない形状とされていることが望ましい。
【0072】
第二チャック52は、第一チャック50の初期位置よりも導電糸44の搬送経路の上流側に設けられており、導電糸44を把持することが可能とされている。
【0073】
なお、アーム12、第一チャック50、第二チャック52、カッタ54、吸着ローラ56及びクランプローラ58のそれぞれは、図示しない制御部によってその動作を制御されている。
【0074】
続いて、本実施形態における長尺状部材付着装置10が導電糸44を準備する工程、導電糸44を付着させる工程、及び次の付着に備える工程の動作を説明する。
【0075】
(導電糸44を準備する工程の動作)
導電糸44を準備する工程では、
図3における実線及び二点鎖線で示されたように、導電糸44を吸着ローラ56の周面に吸着させてから、カーカス38に接触させる。導電糸44を準備する工程における長尺状部材付着装置10の動作を
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0076】
図4及び
図5は、導電糸44を準備する工程における、アーム12の動作を示す図である。
【0077】
最初の挟持ステップでは、アーム12は、カーカス38の側面42と対向する位置(
図3における実線で示された位置)で、
図4(A)及び
図5(A)に示されるように、第一チャック50がその初期位置において導電糸44の先端Fを把持した状態とされている。
【0078】
この状態で、第一チャック50は、
図4(A)及び
図5(A)に示されるように、カッタ54、吸着ローラ56及びクランプローラ58との干渉を避けるため、導電糸44の搬送経路から離れる方向に(Z方向マイナス側に)移動する。
【0079】
そして、
図4(B)及び
図5(B)に示されるように、第一チャック50は、導電糸44の先端Fを把持しながら吸着ローラ56及びクランプローラ58よりも導電糸44の搬送経路の下流側に移動することで、導電糸44を引き出す。
【0080】
引き出された導電糸44は、第一チャック50が、導電糸44の搬送経路の間へ(Z方向プラス側に)移動することで、吸着ローラ56及びクランプローラ58の間に配置される。
【0081】
この状態でクランプローラ58が吸着ローラ56に接触する方向に移動することで、
図4(C)及び
図5(C)に示すように、導電糸44は、吸着ローラ56及びクランプローラ58によって挟持される。
【0082】
そして、
図4(D)及び
図5(D)に示すように、第一チャック50は、吸着ローラ56及びクランプローラ58が導電糸44を挟持した状態で、吸着ローラ56の側(
図4(D)における左側)に移動することによって、吸着ローラ56の周面に導電糸44を這わせる。
【0083】
この状態で、吸引ポンプによる吸引力を吸着ローラ56に与えることにより、吸着ローラ56の周面に導電糸44が吸着される。
【0084】
次の移動ステップでは、導電糸44が吸着ローラ56の周面に吸着した状態で、第二チャック52が導電糸44を把持する。この状態では、第一チャック50が導電糸44の把持を解消しても、導電糸44は、第二チャック52、吸着ローラ56及びクランプローラ58によって把持及び挟持されているため、適切な位置から意図せずにずれにくくなる。
【0085】
この状態で、第一チャック50が導電糸44の把持を解消し、
図4(E)及び
図5(E)に示すように、第一チャック50は、導電糸44の搬送経路における、第二チャック52及びカッタ54の間に移動して、
図4(A)に示される初期位置に復帰する。
【0086】
そして、アーム12は、カーカス38の側面42と吸着ローラ56とが接触する位置(
図3における二点鎖線で示した位置)に移動して導電糸44を接触させることで、導電糸44の先端F側をカーカス38に付着させる。
【0087】
(導電糸44を付着させる工程の動作)
導電糸44を付着させる工程では、
図6における実線及び二点鎖線で示されたように、アーム12は、導電糸44を吸着ローラ56によってカーカス38に押圧しながら、カーカス38に対して左側の側面42から外周面40に向かって移動する。導電糸44を付着させる工程における長尺状部材付着装置10の動作を、
図7を参照しながら説明する。
【0088】
付着ステップでは、
図7(A)に示すように、吸着ローラ56をカーカス38に接触させ、カーカス38との接触点Pで、導電糸44の先端F側をカーカス38に押圧して付着させる。
【0089】
この状態において、第二チャック52の把持を解消すると共に吸着ローラ56の吸引を停止させることによって、導電糸44の吸着が停止する。
【0090】
また、クランプローラ58は、吸着ローラ56から離れる方向に移動する。すなわち、吸着ローラ56及びクランプローラ58による導電糸44の挟持は、解消される。
【0091】
そして、アーム12は、吸着ローラ56をカーカス38に触れさせながら左側の側面42から外周面40に向かって移動する。
【0092】
ここで、吸着ローラ56は、回転可能に固定されているため、アーム12の移動に伴って回転しながら、カーカス38と接触している接触点Pの位置で導電糸44をカーカス38に押圧する。
【0093】
すなわち、導電糸44は、アーム12の移動に伴って押圧されることで、左側の側面42から外周面40まで付着する。
【0094】
そして、アーム12は、導電糸44をカーカス38に付着させる長さのうち、接触点Pからカッタ54までの間の長さ分を残した位置で、移動を停止させる。
【0095】
次の把持ステップでは、
図7(B)に示すように、第一チャック50が導電糸44を把持すると共に、クランプローラ58が吸着ローラ56に接近することで、クランプローラ58と吸着ローラ56は、導電糸44を挟持する。
【0096】
次の切断ステップでは、
図7(C)に示すように、第一チャック50が導電糸44を把持し、吸着ローラ56及びクランプローラ58が導電糸44を挟持した状態で、カッタ54が導電糸44を切断する。
【0097】
次の第二付着ステップでは、アーム12を外周面40における、カーカス38の厚さ方向の中央(
図6の二点鎖線で示される位置)に移動させることによって、
図7(D)に示すように、切断された導電糸44の後端B側を、カーカス38に付着させる。
【0098】
そして、導電糸44の後端B側をカーカス38に付着させた後、アーム12を、カーカス38から離れる方向、より具体的には
図6における二点鎖線で示された位置から上側に移動させる。
【0099】
(次の付着に備える工程の動作)
次の付着に備える工程では、
図8の実線で示されたようにカーカス38の外周面40の上側から、二点鎖線で示されたようにカーカス38の側面42よりも左側へ向かって、アーム12を移動させる。
【0100】
ここで、
図8の二点鎖線で示されたアーム12の位置は、
図3の実線で示された位置である。すなわち、アーム12を、次の導電糸44を付着させる工程に備えるため、導電糸44を準備する工程の最初の位置に移動させる。
【0101】
このように、長尺状部材付着装置10が導電糸44を準備する工程、導電糸44を付着させる工程、及び次の付着に備える工程における、それぞれのステップを実行することにより、長尺状部材付着装置10は、カーカス38に導電糸44を付着させる。
【0102】
また、長尺状部材付着装置10が次の付着に備える工程の最中には、一例としてタイヤ成型ドラム14を周方向に回転させて、カーカス38に導電糸44を付着させる位置を変更する動作、他のカーカス38を取り付けたタイヤ成型ドラム14を用意する動作等が行われる。
【0103】
そして導電糸44を付着させたカーカス38は、その後、ベルト22、トレッドゴム32等、その他のタイヤ構成部材と共に、
図1に示されるタイヤ20の製造に用いられる。
【0104】
(作用及び効果)
本実施形態に係る長尺状部材付着装置10による、作用及び効果を次に示す。
【0105】
本実施形態に係る長尺状部材付着装置10は、カーカス38に導電糸44を押圧して付着させる長尺状部材付着装置10において、導電糸44を切断するカッタ54と、カッタ54よりも導電糸44の搬送経路の上流側で導電糸44を把持する第一チャック50と、カッタ54よりも導電糸44の搬送経路の下流側で導電糸44を挟持可能であり、カーカス38に接触しながら導電糸44をカーカス38に押圧して付着させる吸着ローラ56及びクランプローラ58と、カッタ54により切断された導電糸44の先端Fを、次回の付着に備えて吸着ローラ56及びクランプローラ58の導電糸44の搬送経路の下流側まで引き出す引出部と、を備え、導電糸44が搬送経路から逸脱しないように、第一チャック50、吸着ローラ56並びにクランプローラ58、及び引出部の少なくとも何れかにより導電糸44を常に把持又は挟持する。
【0106】
本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、導電糸44の搬送経路から逸脱しないように導電糸44のいずれかの部分を把持又は挟持しながら、導電糸44をカーカス38に押圧して付着させること及び導電糸44の付着を準備することが可能となる。
【0107】
したがって、導電糸44は、第一チャック50によって把持されているか、吸着ローラ56及びクランプローラ58によって挟持されている状態が維持されるため、導電糸44の付着時、及び準備時に導電糸44が適切な位置から意図せずにずれてしまうことが抑制される。
【0108】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、カッタ54による導電糸44の切断と、第一チャック50による導電糸44の先端Fの引き出しとを繰り返すことにより、カーカス38に切断された複数の導電糸44を次々と付着させることができる。
【0109】
また、本実施形態に係る第一チャック50は、引出部を兼ねている。
【0110】
したがって、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、第一チャック50が引出部を兼ねるため、第一チャック50が引出部を兼ねていない場合と比して長尺状部材付着装置10の部品点数が削減される。
【0111】
また、本実施形態に係る挟持部は、周面に導電糸44を吸着する吸着ローラ56及び、吸着ローラ56と共に導電糸44を挟んで挟持するクランプローラ58である。
【0112】
したがって、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、挟持部が吸着ローラ56及びクランプローラ58であるため、導電糸44を挟持しながらカーカス38に導電糸44を押圧することが可能とされる。
【0113】
これにより、導電糸44が吸着ローラ56及びクランプローラ58で挟持されていない状態でも、導電糸44が吸着ローラ56に吸着されるので、吸着ローラ56のみでもカーカス38に導電糸44を押圧することができる。
【0114】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10は、第一チャック50よりも導電糸44の搬送経路の上流側で導電糸44を把持する第二チャック52をさらに備えている。
【0115】
したがって、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、吸着ローラ56及びクランプローラ58によって導電糸44が挟持され、第一チャック50が導電糸44を把持していない状態においても、第二チャック52によって導電糸44を把持することが可能となる。
【0116】
したがって、第二チャック52を備えていない場合と比して、吸着ローラ56及びクランプローラ58が第一チャック50により引き出された導電糸44を挟持する状態において、第一チャック50が復帰する間に導電糸44が吸着ローラ56及びクランプローラ58から外れてしまうことがさらに抑制される。
【0117】
また、本実施形態に係る長尺状の部材は、導電性を有する糸である。
【0118】
したがって、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、長尺状の部材が導電性を有する糸であるため、カーカス38に導電性を付加することが可能とされる。
【0119】
また、この導電性を付加されたカーカス38をタイヤ20に組込むことにより、リム26から地面Gまで導電路を有するタイヤ20が得られる。
【0120】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10では、吸着ローラ56及びクランプローラ58は、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向のうち、X方向及びY方向に移動すると共に、Z方向を軸として回動するアーム12の末端に取り付けられている。
【0121】
したがって、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10によれば、アーム12がX方向及びY方向に移動すると共に、Z方向を軸として回動するため、立体的に配置されたカーカス38に導電糸44を付着させることが可能とされる。
【0122】
また、本実施形態に係るタイヤ製造装置90では、長尺状の部材は、タイヤ構成部材である導電糸44であり、被付着部材は、タイヤ成型ドラム14に載置された、導電糸44とは別のタイヤ構成部材であるカーカス38である。
【0123】
したがって、本実施形態に係るタイヤ製造装置90によれば、タイヤ構成部材である導電糸44を、別のタイヤ構成部材であるカーカス38に付着させるため、タイヤ構成部材を別のタイヤ構成部材に精度よく付着させることが可能とされる。
【0124】
このように、長尺状の部材を被付着部材に貼付する工程において、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10を用いることで、長尺状の部材の曲げ剛性を予め増加させずに、被付着部材に長尺状の部材を貼付することができる。
【0125】
(変形例)
本実施形態に係る長尺状部材付着装置10の説明では、第一チャック50が引出部を兼ねているとされていたが、第一チャック50が引出部を兼ねずに、導電糸44の搬送経路における第一チャック50とカッタ54との間に、別の引出部を設けていてもよい。
【0126】
この場合における引出部は、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10における第一チャック50と同様の動作をする。
【0127】
したがって、この場合における第一チャック50は、導電糸44の引き出しを行わずに、導電糸44の把持及び解消の動作を行う。
【0128】
このような構成及び方法を採用した場合においても、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10と同様に、導電糸44の付着時に導電糸44が意図せずにずれてしまうことが抑制される。
【0129】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着は、第二チャック52を構成に有していたが、これを有していない構成とされていてもよい。
【0130】
この場合においても、第一チャック50が導電糸44の搬送経路における、吸着ローラ56及びクランプローラ58よりも下流側からカッタ54よりも上流側に戻るステップにおいて、導電糸44は、先端F側が挟持されているため、導電糸44が意図せずにずれてしまうことが抑制される。
【0131】
なお、この場合、吸着ローラ56及びクランプローラ58が導電糸44の先端F側を挟持した状態において、導電糸44には、吸着ローラ56及びクランプローラ58よりも導電糸44の搬送経路の上流側で、挟持部から外れない程度に張力が掛かっている状態とされていることが望ましい。
【0132】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10は、長尺状の部材の一例を導電糸44とされていたが、これに限定されず、帯状、紐状、フィルム状等の曲げ剛性の低い部材とされていてもよい。
【0133】
この場合においても、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10と同様に、被付着部材に長尺状の部材を付着させる際に、長尺状の部材が意図せずにずれてしまうことが抑制される。
【0134】
また、本実施形態に係る被付着部材は、表面が粘着性を有する未加硫ゴムで覆われたカーカス38とされていたが、これに限らずに、表面に粘着性を有していない被付着部材を用いてもよい。
【0135】
この場合、被付着部材の表面又は長尺状の部材に、予め接着剤等を塗布、又は噴霧することにより粘着性を与えることで、長尺状の部材を被付着部材に押圧して付着可能とさせることで、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10を用いることが可能となる。
【0136】
その他にも、被付着部材又は長尺状の部材のいずれか一方が磁力を有した材料で形成され、他方が強磁性体で形成されていた場合においても、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10を用いることが可能となる。
【0137】
また、上述した本実施形態の説明において、クランプローラ58は、吸着ローラ56よりも小径とされていたが、上述した導電糸44を付着させる工程において、クランプローラ58がカーカス38と接触しない配置であれば、これに限られない。
【0138】
一例として、クランプローラ58が吸着ローラ56よりも導電糸44の搬送経路の上流側にずれて配置される場合には、クランプローラ58は吸着ローラ56よりも大径とされていてもよい。
【0139】
また、上述した本実施形態の説明において、カーカス38は、タイヤ成型ドラム14に取り付けられることによって立体的に配置されていたが、これに限らずに、被付着部材は、平面上に固定されていてもよい。
【0140】
この場合においても、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10を用いることで、被付着部材に長尺状の部材を付着させることができる。
【0141】
また、本実施形態に係る長尺状部材付着装置10は、挟持部の一例を吸着ローラ56及びクランプローラ58とされていたが、挟持部の構成は、これに限られない。
【0142】
例えば、本実施形態に係る吸着ローラ56に代えて、電磁石で形成されたローラを用いることで、磁性を有する長尺状の部材を周面に吸着してもよい。
【0143】
また例えば、本実施形態に係る吸着ローラ56に変えて、吸着能力を有していないローラを用いてもよい。
【0144】
このような場合においても、ローラが被付着部材に接触するため、長尺状の部材を押圧しながら被付着部材に付着させることが可能である。
【0145】
また例えば、本実施形態に係る吸着ローラ56及びクランプローラ58に変えて、アーム12の末端で回転せず、被付着部材との接触点Pで摺動する摺動部材を用いてもよい。
【0146】
このような場合においても、摺動部材が押圧しながら被付着部材に接触するため、長尺状の部材を押圧しながら被付着部材に付着させる際に、長尺状の部材が意図せずにずれてしまうことが抑制される。
【0147】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0148】
10 長尺状部材付着装置、12 アーム、14 タイヤ成型ドラム、16 供給部、20 タイヤ、22 ベルト、24 チェーファー、26 リム、28 サイドウォール部、30 トレッド部、32 トレッドゴム、34 導電性ゴム、38 カーカス、40 外周面、42 側面、44 導電糸、50 第一チャック、52 第二チャック、54 カッタ、56 吸着ローラ、58 クランプローラ、90 タイヤ製造装置、B 後端、F 先端、G 地面、P 接触点