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  • 特開-電力装置及びガス圧維持装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084600
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】電力装置及びガス圧維持装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/055 20060101AFI20230612BHJP
   H02B 13/065 20060101ALI20230612BHJP
   G01M 3/26 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
H02B13/055 D
H02B13/065 F
G01M3/26 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198887
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松葉 晃明
(72)【発明者】
【氏名】坂元 省一
(72)【発明者】
【氏名】植村 有希
【テーマコード(参考)】
2G067
5G017
【Fターム(参考)】
2G067AA22
2G067BB02
2G067CC04
2G067DD02
2G067EE15
5G017DD08
5G017DD12
(57)【要約】
【課題】ガス収容室内の圧力を、初期圧と略同じ圧力に保つことができる電力装置及びガス圧維持装置を提供する。
【解決手段】電力装置1は、シール材24によって気密に保たれたガス収容室25を有し、ガス収容室25に絶縁ガスが収容された電力機器2と、ガス収容室25に対して、絶縁ガスを常時供給することで、ガス収容室25内の圧力を維持するガス圧維持装置3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール材によって気密に保たれたガス収容室を有し、前記ガス収容室に二酸化炭素ガスを含む絶縁ガスが収容された電力機器と、
前記ガス収容室に対して、絶縁ガスを常時供給することで、前記ガス収容室内の圧力を維持するガス圧維持装置と、
を備える、
電力装置。
【請求項2】
前記ガス圧維持装置は、
前記ガス収容室と絶縁ガスの供給源とをつなぐ供給路と、
前記供給路を塞ぐようにして前記供給路に設けられ、絶縁ガスを透過する高分子膜と、
を有する、
請求項1に記載の電力装置。
【請求項3】
前記シール材における絶縁ガスの単位時間当たりのガス透過量に対する、前記高分子膜における絶縁ガスの単位時間当たりのガス透過量の比は、0.8以上1.1以下である、
請求項2に記載の電力装置。
【請求項4】
前記シール材と前記高分子膜とは同じ材質で形成されている、
請求項2又は請求項3に記載の電力装置。
【請求項5】
前記高分子膜がゴムを含む膜である、
請求項2から4のいずれか一項に記載の電力装置。
【請求項6】
前記ガス圧維持装置は、
絶縁ガスの供給源としてのガスタンクと、
前記供給路における前記ガスタンクと前記高分子膜との間に設けられた圧力調整器と、
を有する、
請求項2から5のいずれか一項に記載の電力装置。
【請求項7】
シール材によって気密に保たれたガス収容室を有し、前記ガス収容室に絶縁ガスが収容された電力機器に対して接続されるガス圧維持装置であって、
前記ガス収容室と絶縁ガスの供給源とをつなぐ供給路と、
前記供給路を閉じるようにして前記供給路に設けられ、絶縁ガスを透過する高分子膜と、
を備える、
ガス圧維持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力装置及びガス圧維持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、ガス遮断器等の電力機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。電力機器には、絶縁を目的として絶縁ガスが収容される。絶縁ガスは、ガス収容室に充填されている。
【0003】
この種のガス収容室は、開口を有する容器と、容器の開口を塞ぐ閉塞部材とを備える。容器と閉塞部材とは、シール材を介して接合されている。これによって、ガス収容室は気密に保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-175283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のシール材は、完全に絶縁ガスの漏れを防ぐことができず、微量ではあるが、絶縁ガスを透過する。特に、この種のシール材は、二酸化炭素ガスに対する気体透過率は比較的高い。このため、長期間経過すると、電力機器のガス収容室内は、圧力が低下することがある、という問題がある。
【0006】
本発明は、長期間経過しても、ガス収容室内の圧力を、初期圧と略同じ圧力に保つことができる電力装置及びガス圧維持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一態様の電力装置は、シール材によって気密に保たれたガス収容室を有し、前記ガス収容室に絶縁ガスが収容された電力機器と、前記ガス収容室に対して、絶縁ガスを常時供給することで、前記ガス収容室内の圧力を維持するガス圧維持装置と、を備える。
【0008】
本発明に係る一態様のガス圧維持装置は、シール材によって気密に保たれたガス収容室を有し、前記ガス収容室に二酸化炭素ガスを含む絶縁ガスが収容された電力機器に対して接続されるガス圧維持装置であって、前記ガス収容室と絶縁ガスの供給源とをつなぐ供給路と、前記供給路を閉じるようにして前記供給路に設けられ、絶縁ガスを透過する高分子膜と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る上記態様の電力装置及びガス圧維持装置は、長期間経過しても、ガス収容室内の圧力を、初期圧と略同じ圧力に保つことができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る電力装置の概略図である。
図2図2は、一実施形態に係る電力機器の概略図である。
図3図3は、図2のB部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。各図面は、実施形態を模式的に示しているため、例えば、位置関係、各部品のサイズ等が正確ではない。
【0012】
本実施形態に係る電力装置1は、絶縁ガスによる絶縁性能をもった電力機器2を有する装置である。電力装置1は、図1に示すように、ガス収容室25を有する電力機器2と、ガス圧維持装置3と、を備える。電力装置1では、ガス収容室25に収容された絶縁ガスが、時間の経過に応じて、シール材24を透過して大気に漏れる。しかし、本実施形態に係る電力装置1では、ガス圧維持装置3によって、シール材24を透過して大気に漏れる絶縁ガスの量と、略同じ量の絶縁ガスを、常時、ガス収容室25に供給する。この結果、長期間経過しても、電力機器2のガス収容室25は、絶縁ガスによって、一定以上の圧力に保たれる。
【0013】
(1)電力機器
電力機器2は、電力の供給を受ける器具である。電力機器2は、ガス収容室25を有する。本実施形態において、電力機器2としては特に制限はなく、例えば、ガス遮断器、ガス絶縁開閉装置(GIS)、計器用変成器(変圧器、交流器)等が挙げられる。本実施形態では、電力機器2の一例として、ガス遮断器を挙げて説明する。
【0014】
ガス収容室25は、図2に示すように、筐体21内にある。筐体21は、容器22と、複数の閉塞体23と、複数のシール材24と、を備える。筐体21のガス収容室25内には、例えば、電流遮断装置(不図示)が配置される。
【0015】
容器22は、中空である。容器22は、例えば、円筒状、角筒状、箱状等により構成される。容器22の少なくとも一面には、開口面が形成されている。本実施形態の容器22は、2つの開口面を有する。容器22は、各開口面の周囲に形成されたフランジ26を有する。
【0016】
閉塞体23は、フランジ26に取り付けられることで、開口面を閉じる。閉塞体23とフランジ26との間には、シール材24が配置される。具体的に、シール材24は、開口面を囲むようにして取り付けられる。これによって、ガス収容室25は、気密に保たれる。シール材24としては、例えば、ガスケット、パッキン、シーリング材、コーキング材等が挙げられ、特に制限はない。シール材24の素材としては、例えば、ゴム等の高分子材料、ウレタン、シリコーン、アクリル、変性シリコーン等が挙げられる。
【0017】
ガス収容室25は、容器22及び閉塞体23で気密状に囲まれた室である。ガス収容室25には、絶縁ガスが収容される。
【0018】
絶縁ガスは、絶縁性を有するガスであり、不活性ガスが用いられる。絶縁ガスとしては、COガス(二酸化炭素ガス)が含まれる。本発明では、絶縁ガスとしては、COガスのみの絶縁ガスに限られず、COガスと他のガスとの混合ガスであってもよい。他のガスとしては、例えば、SFガス(六フッ化硫黄ガス)、CFI(ヨウ化トリフルオロメタン)とN(窒素)との混合ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられる。
【0019】
(2)ガス圧維持装置
ガス圧維持装置3は、ガス収容室25に対して、絶縁ガスを常時供給することで、ガス収容室25内の圧力を維持する装置である。ガス圧維持装置3は、図1に示すように、ガスタンク31と、供給路32と、高分子膜33と、圧力調整器34と、圧力計35と、を備える。
【0020】
ガスタンク31は、絶縁ガスが収容された気密性を有する耐圧容器である。ガスタンク31は、絶縁ガスの供給源となる。ガスタンク31の内部の圧力は、電力機器2のガス収容室25の圧力に比べて、十分高い圧力に設定されている。
【0021】
ガスタンク31の形状には、特に制限はなく、例えば、シリンダ状、球状、箱状等が挙げられる。本実施形態に係るガスタンク31は、いわゆるガスボンベである。ガスタンク31としてガスボンベを採用することで、大容量の絶縁ガスをコンパクトに収容することができる。
【0022】
供給路32は、絶縁ガスの供給源であるガスタンク31とガス収容室25とを通じさせる経路である。供給路32は、複数のパイプ321と、フランジ322・エルボ等の複数の継手とを組み合わせることによって構成される。供給路32には、ガスタンク31からガス収容室25に向かって一方向に絶縁ガスが移動する。供給路32は、本実施形態では、一つであるが、本発明では複数設けられてもよい。
【0023】
圧力計35は、供給路32において、圧力調整器34よりもガスタンク31側に設けられており、圧力調整器34の一次側の圧力を計測する。すなわち、圧力計35は、ガスタンク31の圧力を計測する。圧力計35は、本実施形態では供給路32に設けられているが、ガスタンク31に設けられてもよいし、圧力調整器34に設けられてもよい。すなわち、圧力計35付きのガスタンク31(ガスボンベ)が用いられてもよいし、圧力計35付きの圧力調整器34が用いられてもよい。
【0024】
圧力調整器34は、ガスタンク31からガス収容室25へ供給される絶縁ガスの圧力を調整する。本実施形態に係る圧力調整器34は、背圧弁を含むが、例えば、減圧弁、定流量弁等を含んでもよい。本実施形態に係る圧力調整器34は、ガスタンク31からの絶縁ガスの一次側圧力を減圧し、二次側圧力を所望の圧力に調整できる。圧力調整器34は、例えば、一段式、二段式、自動切換え式、圧力可変式のいずれであってもよい。
【0025】
圧力調整器34が設けられることで、ガスタンク31の圧力を、電力機器2のガス収容室25の圧力に比べて十分に高い圧力に設定しても、高分子膜33に加わる圧力を、一定の所定圧力とすることができる。この結果、長期間にわたってガスタンク31の交換をすることなく、電力機器2のガス収容室25に対して、常時、絶縁ガスを供給し続けることができる。
【0026】
高分子膜33は、供給路32を塞ぐようにして供給路32に設けられる。高分子膜33は、例えば、ゴム、プラスチック、フィルムからなる膜、又はこれらを複合した膜等が挙げられる。本実施形態に係る高分子膜33は、ゴムを含む膜である。ゴムとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ハロゲン化した塩素化ブチルゴム(CIIR)、ハロゲン化した臭素化ブチルゴム(BIIR)、フッ素ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。
【0027】
高分子膜33は、例えば、パイプ321に設けられた一対のフランジ322に挟まれるようにして取り付けられる。これによって、高分子膜33は、供給路32を、ガスタンク31側と電力機器2側とに区切る。高分子膜33に加わる圧力は、一次側の圧力(すなわち、ガスタンク31側の圧力)が、二次側の圧力(すなわち、電力機器2側の圧力)以上となるように、圧力調整器34によって設定されている。
【0028】
高分子膜33は、厚さ方向において、絶縁ガスを透過する。高分子膜33における絶縁ガスのガス透過量は、シール材24における絶縁ガスのガス透過量と、同等になるように設定される。ここでいう「ガス透過量」は、単位時間当たりに透過する絶縁ガスの総量を意味する。
【0029】
例えば、ガスタンク31、供給路32及び高分子膜33が複数設けられる場合、各高分子膜33を透過する絶縁ガスの透過量を、全ての高分子膜33について足し合わせた量を「高分子膜33のガス透過量」とする。また、ガス収容室25の気密性を保つシール材24が複数ある場合、各シール材24を透過する絶縁ガスの透過量を、全てのシール材24について足し合わせた量を「シール材24のガス透過量」とする。
【0030】
高分子膜33のガス透過量qは、高分子膜33の固有のガス透過係数f、高分子膜33を透過する絶縁ガスの透過面積a、絶縁ガスが透過した厚さd、圧力差△p、時間tとすると、
q=f×(a/d)×△p×t で表される。
【0031】
また、同様に、シール材24のガス透過量Qは、シール材24の固有のガス透過係数F、シール材24を透過する絶縁ガスの透過面積A、絶縁ガスが透過した厚さD、圧力差△P、時間Tとすると、
Q=F×(A/D)×△P×T で表される。
【0032】
ここで、シール材24の透過面積Aは、例えば、図3に示すように、シール材24の内周面M1の面積の合計、すなわち、シール材24の内径×π×シール材24の厚さTで近似される。また、絶縁ガスが透過した厚さDは、シール材24の線径で表される。なお、本明細書でいう「ガス透過係数」は、JIS K 6275/JIS K 7126に準拠した方法で測定した値が用いられる。
【0033】
また、ここでいう「同等」とは、高分子膜33における絶縁ガスのガス透過量と、シール材24における絶縁ガスのガス透過量とが、同じである場合のほか、両透過量に僅かに差がある場合も含む。シール材24における絶縁ガスのガス透過量に対する、高分子膜33における絶縁ガスのガス透過量の比が、例えば、0.8以上1.1以下である場合も、ここでいう「同等」の範疇である。
【0034】
電力機器2のガス収容室25の絶縁ガスは、シール材24を透過し、時間経過に応じて比例的に大気に漏れる。これに対して、ガスタンク31から出た絶縁ガスは、供給路32を通り、高分子膜33を透過し、ガス収容室25に供給される。高分子膜33の一次側には、常に一定の圧力が加わるため、常時、一定量の絶縁ガスを、ガス収容室25に供給できる。
【0035】
なお、ガス収容室25内の絶縁ガスの漏れ出る量が、想定よりも少ない場合であっても、高分子膜33の二次側の圧力と、一次側の圧力とがバランスするため、高分子膜33を絶縁ガスが透過せず、必要以上の絶縁ガスがガス収容室25に供給されない。
【0036】
従来の電力機器2では、長期間でみれば、ガス収容室25から絶縁ガスが漏れ出たことが把握できるものの、短期間でみると、ごく僅かしか絶縁ガスが漏れ出ていないので、絶縁ガスの減圧を把握するには、一定量以上の絶縁ガスが漏れ出た後になりやすい。
【0037】
しかし、本実施形態に係るガス圧維持装置3を用いることで、常時、ガス収容室25から漏れ出た量と同等の量の絶縁ガスを供給することができるため、ガス収容室25内の圧力を、初期圧と略同じ圧力に、常時保つことができる。
【0038】
ところで、絶縁ガスのガス透過量は、環境温度によっても影響を受ける可能性がある。このため、シール材24と高分子膜33とは、同じ材質で形成されることが好ましい。これによって、電力装置1が、常温とは異なる環境下(例えば、高温環境下)に設置された場合に、シール材24と高分子膜33とが温度の影響を受けても、ガス収容室25内の圧力を一定の圧力に保ちやすい。
【0039】
<変形例>
上記実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0040】
供給路32が、複数のパイプ321及び継手を組み立てることによって構成されたが、本発明では、絶縁ガスの流路が確保できれば、パイプ321や継手はなくてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ガス圧維持装置3は、一のガスタンク31と一の供給路32とを備えたが、一のガスタンク31と一の供給路32とのセットを、複数セット備えてもよいし、一のガスタンク31に対して、複数の供給路32を備えてもよい。この場合、高分子膜33は各供給路32に設けられる。
【0042】
上記実施形態では、高圧のガスタンク31と、圧力調整器34とを用いて、高分子膜33の一次側の圧力を調整したが、圧力が調整された絶縁ガスを吐出可能な供給源を、直接的に高分子膜33に接続してもよい。
【0043】
上記実施形態に係る電力機器2は、2箇所のシール材24で、ガス収容室25の気密性を確保したが、本発明では、これに制限されない。シール材24によって気密性を確保する箇所の他例としては、例えば、容器22の開口と端子台との接続箇所、容器22の穴とバルブとの接続箇所、容器22と継手との接続箇所等が挙げられる。
【0044】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略同じ」とは、実質的に「同じ」であることを意味する。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0045】
<まとめ>
以上説明したように、第1の態様に係る電力装置1は、シール材24によって気密に保たれたガス収容室25を有し、ガス収容室25に二酸化炭素ガスを含む絶縁ガスが収容された電力機器2と、ガス収容室25に対して、絶縁ガスを常時供給することで、ガス収容室25内の圧力を維持するガス圧維持装置3と、を備える。
【0046】
この態様によれば、ガス収容室25に対して、常時、ガス収容室25から漏れ出た量と同等の量の絶縁ガスを供給することができるため、ガス収容室25内の圧力を、初期圧と略同じ圧力に保つことができる。
【0047】
第2の態様に係る電力装置1では、第1の態様において、ガス圧維持装置3は、ガス収容室25と絶縁ガスの供給源とをつなぐ供給路32と、供給路32を塞ぐようにして供給路32に設けられ、絶縁ガスを透過する高分子膜33と、を有する。
【0048】
この態様によれば、複雑な機構を用いることなく、ガス収容室25から漏れ出た量と同等の量の絶縁ガスを、常時、供給することができる。
【0049】
第3の態様に係る電力装置1では、第2の態様において、シール材24における絶縁ガスの単位時間当たりのガス透過量に対する、高分子膜33における絶縁ガスの単位時間当たりのガス透過量の比は、0.8以上1.1以下である。
【0050】
この態様によれば、長期間にわたって、ガス収容室25内の圧力を、初期圧と略同じ一定の圧力に保つことができる。
【0051】
第4の態様に係る電力装置1では、第2又は第3の態様において、シール材24と高分子膜33とは同じ材質で形成されている。
【0052】
この態様によれば、電力装置1が、常温とは異なる環境下に設置された場合に、ガス収容室25内の圧力を一定の圧力に保ちやすい。
【0053】
第5の態様に係る電力装置1では、第2~4のいずれか1つの態様において、高分子膜33がゴムを含む膜である。
【0054】
この態様によれば、電力機器2で標準的に使用されるゴム膜を用いることができる。
【0055】
第6の態様に係る電力装置1では、第2~5のいずれか1つの態様において、ガス圧維持装置3は、絶縁ガスの供給源としてのガスタンク31と、供給路32におけるガスタンク31と高分子膜33との間に設けられた圧力調整器34と、を有する。
【0056】
この態様によれば、長期間にわたって一定の圧力を高分子膜33に加え続けることができるため、ガス収容室25に対して、長期間にわたって、絶縁ガスを常時供給することができる。この結果、定期的なガス圧調整作業等のメンテナンスが不要となり、保守期間の延長が可能となる。
【0057】
第7の態様に係るガス圧維持装置3は、シール材24によって気密に保たれたガス収容室25を有し、ガス収容室25に絶縁ガスが収容された電力機器2に対して接続されるガス圧維持装置3であって、ガス収容室25と絶縁ガスの供給源とをつなぐ供給路32と、供給路32を閉じるようにして供給路32に設けられ、絶縁ガスを透過する高分子膜33と、を備える。
【0058】
この態様によれば、ガス収容室25に対して、常時、ガス収容室25から漏れ出た量と同等の量の絶縁ガスを供給することができるため、ガス収容室25内の圧力を、初期圧と略同じ一定の圧力に保つことができる。
【0059】
<実施例>
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明に係る電力装置1及びガス圧維持装置3は、以下の実施例に限定されない。
【0060】
実施例1,2に係る電力装置1として、上記実施形態に係る電力装置1を用いた。実施例1では、上記実施形態と同様の構造の電力機器2を用い、実施例2では、ガス収容室25の容量が異なるサイズの電力機器2を用いた。
【0061】
実施例1,2において、「ガス収容室25の初期ガス圧」、ガス収容室25と大気圧との「初期差圧」、「ガス収容室25の容積」、「初期ガス量」、「ガスタンク31のガス圧」、ガスタンク31とガス収容室25との「初期差圧」は、表1のような条件となった。表1の各数値は、表2の計算式を用いた。
【0062】
表2におけるアルファベットは次の通りである。F:シール材24のガス透過係数、f:高分子膜33のガス透過係数、A:ガス収容室25の各シール材24の透過面積、d:シール材24の線径、A2:高分子膜33の透過面積、d2:高分子膜33の厚さ
【0063】
高分子膜33及びシール材24の材質として、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を用いた場合と、ハロゲン化した塩素化ブチルゴム(CIIR)を用いた場合とで、実施例1,2のそれぞれについて試験を行った。NBRでは、室温23℃で試験を行い、CIIRでは、高温環境下の50℃で試験を行った。比較例として、ガス圧維持装置3を使用しない場合の試験を同じ条件で行った。実施例1の電力機器2を用いた比較例を「比較例1」とし、実施例2の電力機器2を用いた比較例を「比較例2」とする。
【0064】
任意の期間で、1秒ごとのガス収容室25のガス圧の変化を繰り返し計算し、得られた数値を表3に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【0065】
表3からもわかるように、ガス圧維持装置3を用いることで、30年経過時点においても、電力機器2のガス収容室25内において、初期圧力とほぼ同程度の圧力値が得られることがわかった。また、1年、6年及び30年経過時において、どの時点でも一定の圧力値が得られることがわかった。さらに、高温環境下でも室温環境下でも、同じ結果が得られることもわかった。
【符号の説明】
【0066】
1 電力装置
2 電力機器
25 ガス収容室
3 ガス圧維持装置
31 ガスタンク
32 供給路
33 高分子膜
34 圧力調整器
図1
図2
図3