(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084606
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/239 20060101AFI20230612BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198899
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠矢
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 武経
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA07
3D054AA13
3D054BB04
3D054BB05
3D054CC04
3D054CC11
3D054CC15
3D054CC16
3D054CC35
3D054DD11
3D054EE11
3D054EE29
3D054EE32
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】排気孔の閉塞維持時に、排気孔からの膨張用ガスの漏れを抑制可能なエアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】開口時に内部に流入させた膨張用ガスの一部を排出可能な排気孔34を有するエアバッグ25と、排気孔を塞ぎ可能なフラップ材40と、を、備える。フラップ材が、元部42側を排気孔の周縁に結合されるフラップ本体41と、フラップ本体の先端43側から延びて先端側を開閉制御装置と連結させる構成の連結部材47と、を備える。フラップ本体が、エアバッグの内周面側から排気孔を閉塞可能に配置されるとともに、元部側の幅寸法を、排気孔の開口幅寸法よりも、大きく設定されて、元部側を略全長にわたって、エアバッグにおける排気孔の周縁に結合され、元部側の結合部位の両端と、先端側における連結部材を連結させている部位と、を、それぞれ結ぶ直線L1,L2間の領域において、排気孔を覆う構成とされている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて前記収納部位から突出するように膨張する構成とされるとともに、開口時に、内部に流入させた前記膨張用ガスの一部を排出可能な排気孔を、有するエアバッグと、
前記収納部位側に配置されて、前記排気孔の開閉を制御可能な開閉制御装置と、
前記排気孔を塞ぎ可能なフラップ材と、
を、備える構成とされて、
前記フラップ材が、
可撓性を有したシート体から構成されるとともに、前記排気孔を塞ぎ可能な大きさに設定されて、元部側を、前記排気孔よりも前記エアバッグの外周縁側となる位置で、前記排気孔の周縁に結合されるフラップ本体と、
該フラップ本体における前記元部と対向する先端側から延び、延びた先端の連結端側を、前記収納部位側の前記開閉制御装置と連結させる構成の連結部材と、
を備え、
前記フラップ本体が、前記連結部材の前記開閉制御装置との連結を維持させた状態での前記エアバッグの膨張時に、前記排気孔の閉塞状態を維持され、前記連結部材の前記開閉制御装置との連結を解除した状態での前記エアバッグの膨張時に、前記排気孔を開口させるように構成されるエアバッグ装置であって、
前記フラップ本体が、
前記連結部材の長手方向に沿う幅方向の中央線を基準として、外形形状を略対称形とされて、先端側における幅方向の略中央から、前記連結部材を延ばすように構成されて、
前記エアバッグの内周面側から、前記排気孔を閉塞可能に配置されるとともに、元部側の幅寸法を、前記排気孔における前記連結部材の長手方向と略直交する方向側の開口幅寸法よりも、大きく設定されて、元部側を略全長にわたって、前記エアバッグにおける前記排気孔の周縁に結合され、
前記元部側の結合部位の両端と、先端側における前記連結部材を連結させている部位と、を、それぞれ結ぶ直線間の領域において、前記排気孔を覆うように、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記フラップ本体が、幅方向側で対向する両側の縁部を、それぞれ、元部側の結合部位の両端と、先端側における前記連結部材を連結させている部位と、を、それぞれ結ぶ直線に略沿わせるように、傾斜させて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記連結部材が、幅寸法を、前記排気孔における前記連結部材の長手方向と略直交する方向側の開口幅寸法よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記排気孔が、開口形状を略円形として構成され、
前記フラップ本体が、前記排気孔の開口縁から前記縁部までの離隔距離を、少なくとも3mm以上とするように、構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記排気孔が、前記エアバッグにおいて、膨張完了時の断面において曲率を小さく設定されて、略平面状とされる領域に、形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から突出するように膨張するエアバッグを備えるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置としては、エアバッグに、膨張用ガスの一部を排出可能な排気孔を設け、この排気孔の開閉を、座席に着座した乗員の着座位置や体格に応じて、開閉制御装置によって制御し、エアバッグの膨張時の内圧を制御する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグ装置では、エアバッグに設けられる排気孔を、フラップ材によって塞ぎ可能としていた。具体的には、フラップ材は、可撓性を有したシート体から構成されて排気孔を塞ぎ可能な大きさの略長方形状に設定されて元部側を排気孔の周縁に結合されるフラップ本体と、フラップ本体から延びて連結端を収納部位側に配置される開閉制御装置に連結される連結部材と、を備える構成であった。また、特許文献1に記載のエアバッグ装置では、フラップ本体は、エアバッグの外周面側から、排気孔を閉塞可能に配置されており、連結部材は、フラップ本体における略中央であって、排気孔を覆っている領域に、元部側を連結させるようにして、フラップ本体から延びる構成とされていた。そして、フラップ本体は、連結部材の開閉制御装置との連結を維持させた状態のエアバッグの膨張時に、排気孔の閉塞状態を維持されて、排気孔からの膨張用ガスの排出を抑制される構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のエアバッグ装置では、連結部材の開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際には、フラップ本体には、連結部材を連結させている部位と、排気孔周縁に結合される元部側の両端と、の間に、それぞれ張力が作用するような態様となって、このような張力により、フラップ本体による排気孔の閉塞状態を維持していた。しかしながら、従来のエアバッグ装置では、フラップ本体が、エアバッグの外周面側に配置される構成であり、また、連結部材の元部側が、フラップ本体の略中央となる位置(排気孔の開口面に重なる位置)に、連結されていることから、このように張力を発揮させる構成であっても、エアバッグの内部に流入した膨張用ガスによってフラップ本体が浮き上がって、排気孔から膨張用ガスが漏れる虞れがあった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、排気孔の閉塞維持時に、排気孔からの膨張用ガスの漏れを抑制可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から突出するように膨張する構成とされるとともに、開口時に、内部に流入させた膨張用ガスの一部を排出可能な排気孔を、有するエアバッグと、
収納部位側に配置されて、排気孔の開閉を制御可能な開閉制御装置と、
排気孔を塞ぎ可能なフラップ材と、
を、備える構成とされて、
フラップ材が、
可撓性を有したシート体から構成されるとともに、排気孔を塞ぎ可能な大きさに設定されて、元部側を、排気孔よりもエアバッグの外周縁側となる位置で、排気孔の周縁に結合されるフラップ本体と、
フラップ本体における元部と対向する先端側から延び、延びた先端の連結端側を、収納部位側の開閉制御装置と連結させる構成の連結部材と、
を備え、
フラップ本体が、連結部材の開閉制御装置との連結を維持させた状態でのエアバッグの膨張時に、排気孔の閉塞状態を維持され、連結部材の開閉制御装置との連結を解除した状態でのエアバッグの膨張時に、排気孔を開口させるように構成されるエアバッグ装置であって、
フラップ本体が、
連結部材の長手方向に沿う幅方向の中央線を基準として、外形形状を略対称形とされて、先端側における幅方向の略中央から、連結部材を延ばすように構成されて、
エアバッグの内周面側から、排気孔を閉塞可能に配置されるとともに、元部側の幅寸法を、排気孔における連結部材の長手方向と略直交する方向側の開口幅寸法よりも、大きく設定されて、元部側を略全長にわたって、エアバッグにおける排気孔の周縁に結合され、
元部側の結合部位の両端と、先端側における連結部材を連結させている部位と、を、それぞれ結ぶ直線間の領域において、排気孔を覆うように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、フラップ本体が、エアバッグの内周面側から排気孔を閉塞するとともに、外形形状を、排気孔周縁に結合されている元部側の結合部位の両端と、先端側における連結部材を連結させている部位と、をそれぞれ結ぶ直線間の領域において、排気孔を覆うような構成とされている。本発明のエアバッグ装置では、連結部材の開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際に、フラップ本体には、上記直線に略沿うように、張力が発生することとなり、排気孔は、フラップ本体において、この張力発生部位間の領域に、内周面側を覆われることとなる。そのため、開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際に、上記直線に略沿うように張力が作用することとなって、この張力によって、フラップ本体が、排気孔の縁部よりも外方となる部位を、押えられることとなる。また、フラップ本体における張力発生部位間の領域、すなわち、排気孔を覆っている領域(中間部位)は、上記直線に略沿うような張力の発生により、逆に、弛みを生じるような態様となるが、フラップ本体は、エアバッグの内周面側から排気孔を覆っていることから、エアバッグ内に流入した膨張用ガスの内圧を受けて、この弛んだ状態の中間部位が、排気孔の周縁に圧接されるような態様となる。そのため、本発明のエアバッグ装置では、フラップ本体のエアバッグからの浮き上がりを的確に抑制することができて、排気孔からの膨張用ガスの漏れを抑制することができる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、排気孔の閉塞維持時に、排気孔からの膨張用ガスの漏れを抑制することができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、フラップ本体において、幅方向側で対向する両側の縁部を、それぞれ、元部側の結合部位の両端と、先端側における連結部材を連結させている部位と、を、それぞれ結ぶ直線に略沿わせるように、傾斜させる構成とすれば、開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際に、張力が、フラップ本体における幅方向側で対向する縁部に略沿うように発生することとなり、換言すれば、上記構成のエアバッグ装置では、フラップ本体は、張力発生部位から外方に延びるような領域を備えない構成とされる。そのため、張力発生部位から外方に延びる領域が浮き上がることも抑制できて、フラップ本体と排気孔周縁との間に、一層隙間が生じ難く、好ましい。また、フラップ本体の面積(大きさ)を極力小さくすることができて、フラップ本体の形成材料を少なくすることもできる。
【0010】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、連結部材の幅寸法を、排気孔における連結部材の長手方向と略直交する方向側の開口幅寸法よりも小さく設定する構成とすれば、開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際に、フラップ本体に発生する張力を、一層安定して、フラップ本体の縁部近傍に、作用させることができて、好ましい。
【0011】
具体的には、上記構成のエアバッグ装置において、排気孔を、開口形状を略円形として構成し、フラップ本体における排気孔の開口縁から縁部までの離隔距離を、少なくとも3mm以上とするように、構成すれば、フラップ本体による排気孔の閉塞状態を安定させることが可能となって、好ましい。
【0012】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、排気孔を、エアバッグにおいて、膨張完了時の断面において曲率を小さく設定されて、略平面状とされる領域に、形成させる構成とすれば、排気孔と、排気孔を内側から塞ぐフラップ本体と、が、膨張完了時のエアバッグにおいて、略平面状に配置される領域に配設されることとなり、連結部材の開閉制御装置との連結を維持させた状態でエアバッグを膨張させる際において、フラップ本体に張力を作用させた際に、張力発生部位とエアバッグとの間に隙間が生じることを、抑制できて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態であるステアリングホイール用のエアバッグ装置が搭載される付近を示す概略図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置を搭載させたステアリングホイールの概略平面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置の前後方向の概略拡大断面図である。
【
図4】実施形態のエアバッグ装置で使用されるエアバッグを平らに展開した状態の底面図である。
【
図5】
図4のエアバッグの縦断面図であり、
図4のV-V部位を示す。
【
図6】
図4のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。
【
図7】
図4のエアバッグとフラップ材とを示すエアバッグの内周面側から見た概略平面図である。
【
図8】実施形態のエアバッグ装置において、フラップ材と係止部材との連結状態を維持した状態で、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【
図9】実施形態のエアバッグ装置において、フラップ材と係止部材との連結状態を維持した状態でのエアバッグの膨張完了時における排気孔とフラップ材との部位付近を示す部分拡大断面図である。
【
図10】実施形態のエアバッグ装置において、フラップ材と係止部材との連結状態を解除した状態でのエアバッグの膨張完了時における排気孔とフラップ材との部位付近を示す部分拡大断面図である。
【
図11】実施形態のエアバッグ装置において、フラップ材と係止部材との連結状態を維持した状態でのエアバッグの膨張時における排気孔とフラップ材との状態を示す概略部分拡大断面図である。
【
図12】実施形態のエアバッグ装置において、フラップ材と係止部材との連結状態を維持した状態と、フラップ材と係止部材との連結状態を解除された状態と、におけるエアバッグの膨張状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置Mとして、ステアリングホイールWに搭載されるものを例に採り、説明する。ステアリングホイールWは、
図2,3,8に示すように、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置Mと、を備えている。ステアリングホイール本体1は、実施形態の場合、操舵時に把持するリング部Rと、リング部Rの略中央に配置されてステアリングシャフトSSに連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する複数(実施形態の場合、4本)のスポーク部と、を備えている。ステアリングホイールWは、構成部品上では、エアバッグ装置Mとステアリングホイール本体1とから構成されている。
【0015】
実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(
図3,8参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
【0016】
ステアリングホイール本体1は、リング部Rやボス部B等の各部を連結するように配置されてアルミニウム合金等の金属からなる芯金2と、リング部Rやスポーク部Sの部位の芯金2を被覆する合成樹脂製の被覆層3と、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー4と、を備えている(
図2,3,8参照)。
【0017】
エアバッグ装置Mは、
図2,3に示すように、エアバッグ25と、エアバッグ25に形成される後述する排気孔34を塞ぎ可能とされるフラップ材40と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター9と、折り畳まれたエアバッグ25とインフレーター9とを収納して保持する収納部位としてのケース11と、折り畳まれたエアバッグ25を覆うエアバッグカバー20と、エアバッグ25とインフレーター9とをケース11に取り付けるためのリテーナ7と、エアバッグ25の排気孔34の開閉を制御する開閉制御機構としての保持解除手段15と、を備えている。実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター9と保持解除手段15とは、
図1に示す制御装置70によって、作動を制御されるように構成されている。
【0018】
制御装置70は、
図1に示すように、座席(運転席)DSに着座した乗員としての運転者MDの体格や着座位置等を検知可能な乗員検知センサ、例えば、ステアリングホイールWと運転者MDとの距離を検知可能な位置検知センサ75や、運転者MDの重量を検知可能な重量検知センサ76と、電気的に接続されるとともに、車両の加速度や加速の方向等を検知可能な衝突検知センサ77と電気的に接続され、これらの位置検知センサ75や重量検知センサ76、あるいは、衝突検知センサ77からの電気信号を入力させて、インフレーター9を作動させるとともに、保持解除手段15を作動させる。そして、実施形態の場合、保持解除手段15は、インフレーター9の作動時におけるエアバッグ25の膨張時に、エアバッグ25の内圧上昇を制御可能に、エアバッグ25内に流入した膨張用ガスGをエアバッグ25外へ排気させて、好適な膨張モードでエアバッグ25を膨張させるように、制御装置70によって作動を制御されている。
【0019】
インフレーター9は、
図3に示すように、複数のガス吐出口9bを有した略円柱状の本体部9aと、インフレーター9をケース11に取り付けるためのフランジ部9cと、を備えている。フランジ部9cには、リテーナ7の図示しないボルトを貫通させるための図示しない貫通孔が、形成されている。インフレーター9は、制御装置70と電気的に接続されている。
【0020】
収納部位としてのケース11は、板金製として、
図3に示すように、インフレーター9を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12と、底壁部12の外周縁から上下に延びる周壁部13と、を備えている。底壁部12において、インフレーター9の本体部9aを挿通させるための開口(図符号省略)の前側の領域には、フラップ材40の後述する連結手段としての連結ベルト47の連結端48側を挿通可能な貫通孔12aが、形成されている。周壁部13の上端には、外方へ延びる取付片13aが形成されている(
図2参照)。実施形態のエアバッグ装置Mは、この取付片13aに取り付けられる図示しないホーンスイッチ機構の取付基板を利用して、ケース11をステアリングホイールWの芯金2に取付固定させることにより、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1のボス部Bの上部に搭載される構成である。また、ケース11の周壁部13には、リベット21等を利用して、エアバッグカバー20の側壁部20cが、取り付けられている(
図3参照)。実施形態の場合、エアバッグ25とインフレーター9とは、エアバッグ25内に配置させたリテーナ7の図示しないボルトを取付手段として、このボルトを、エアバッグ25における流入用開口29の周縁、ケース11の底壁部12、及び、インフレーター9のフランジ部9cを、貫通させて、ナット止めすることにより、ケース11の底壁部12に取り付けられている。
【0021】
また、底壁部12の下部側であって、貫通孔12aの近傍となる部位には、フラップ材40の連結ベルト47の連結端48側を連結する開閉制御装置としての保持解除手段15が、配設されている。この保持解除手段15は、連結ベルト47の連結端48に形成される連結孔48aに挿通される係止ピン16と、底壁部12の下面側に固着されて係止ピン16を引き込み可能に作動するアクチュエータ17と、から構成されている。アクチュエータ17が係止ピン16を引き込ませるように作動すると、係止ピン16が、連結ベルト47の連結端48を係止している状態から係止を解除する状態に移行して、連結端48の連結保持状態を解除することとなる。このアクチュエータ17は、制御装置70と電気的に接続されており、制御装置70からの電気信号により係止ピン16を移動できれば、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。なお、底壁部12の下面における貫通孔12aの周縁であって、アクチュエータ17と対向する縁部側(実施形態の場合、貫通孔12aの後縁側)には、
図3に示すように、保持解除手段15の係止ピン16の先端を支持して、係止時における係止ピン16からの連結ベルト47の抜けを防止する(連結ベルト47の連結保持状態を維持する)支持台12bが、配設されている。実施形態では、この保持解除手段15と、保持解除手段15に連結ベルト47の連結端48側を連結されるフラップ材40と、が、エアバッグ25の膨張完了時の内圧を調整可能な内圧調整機構を、構成している。
【0022】
エアバッグカバー20は、合成樹脂製として、ケース11に収納されたエアバッグ25の上方を覆う天井壁部20aと、天井壁部20aの外周縁付近から下方に延びる略四角筒形状の側壁部20cと、を備えている。天井壁部20aには、膨張するエアバッグ25に押されて前後に開く2枚の扉部20b,20bが、形成されている。
【0023】
エアバッグ25は、実施形態の場合、
図4,5に示すように、袋状のバッグ本体26と、バッグ本体26の膨張完了形状を規制するテザー38と、を備えている。
【0024】
バッグ本体26は、膨張完了時にステアリングホイールWの上面側を、略全面にわたって覆い可能に、膨張完了形状を、
図1,2の二点鎖線及び
図8に示すように、上方から見てリング部R全体を覆い可能な略円形状とし、側方から見て略楕円球状とするように、構成されている。バッグ本体26は、
図4,5に示すように、膨張完了時に運転者MD側に配置される運転者側壁部36と、ステアリングホイールW(車体)側に配置される車体側壁部28と、を備えるもので、
図6に示すように、外形形状を略同一とした略円形の運転者側パネル56と車体側パネル55との外周縁55a,56a相互を結合させることにより、袋状とされている。バッグ本体26を構成する運転者側パネル56及び車体側パネル55は、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から、形成されている。
【0025】
バッグ本体26において、車体側壁部28の略中央には、
図4に示すように、膨張用ガスを内部に流入可能な流入用開口29が、円形に開口して、形成されている。この流入用開口29は、インフレーター9の本体部9aを下方から挿入させるものであり、流入用開口29の周縁には、リテーナ7に形成される図示しないボルトを挿通させる4つの取付孔30が、形成されている。また、流入用開口29の周縁であって、実施形態の場合、流入用開口29の前縁側には、フラップ材40における連結ベルト47の連結端48を挿通可能な挿通孔31が、左右方向に略沿ったスリット状に、形成されている。
【0026】
また、バッグ本体26における車体側壁部28には、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気するベントホール33が、形成されている。実施形態の場合、ベントホール33は、略円形に開口して、流入用開口29の中心を通る前後方向に沿った線を基準線CL1として(
図4参照)、左右対称となる位置の2箇所に、形成されており、さらに具体的には、平らに展開した状態のバッグ本体26における車体側壁部28において、流入用開口29と外周縁28aとの間における流入用開口29側となる位置(具体的には、流入用開口29から1/3程度の位置)に、形成されている。ベントホール33は、エアバッグ25(バッグ本体26)の膨張完了時において、リング部Rよりも内側となる領域に、配置されることとなる(
図2の二点鎖線及び
図9,12参照)。
【0027】
さらに、バッグ本体26には、常時開口しているベントホール33,33とは別に、フラップ材40によって開閉される排気孔34が、形成されている。排気孔34は、開口形状を略円形として構成されて、実施形態の場合、バッグ本体26を平らに展開した状態において、ベントホール33,33間であって、流入用開口29の前方となる位置に、配設されている。詳細には、排気孔34と、排気孔34の左右両側に配置されるベントホール33,33と、は、流入用開口29を中心として、略放射状となるように、配設されている。また、排気孔34も、ベントホール33,33と同様に、平らに展開した状態のバッグ本体26における車体側壁部28において、流入用開口29と外周縁28aとの間における流入用開口29側となる位置(具体的には、流入用開口29から1/3程度の位置)に、形成されている。バッグ本体26の車体側壁部28において、排気孔34を配設させている領域は、バッグ本体26の膨張完了時に、リング部Rよりも内側となる位置に配置される部位であり(
図2の二点鎖線及び
図9~12参照)、詳細には、
図9,10に示すように、膨張完了時の断面において曲率を小さく設定されて、略平面状とされる部位である。また、実施形態の場合、排気孔34は、各ベントホール33よりも、開口面積を大きく設定されている。具体的には、排気孔34の内径寸法d1は、40mm程度に設定され、各ベントホール33の内径寸法d2は、28mm程度に設定されている(
図4参照)。すなわち、排気孔34の内径寸法d1は、各ベントホール33の内径寸法d2の1.4倍程度に設定されている。ちなみに、実施形態の場合、平らに展開したバッグ本体26の外径寸法OD(
図4参照)は、650mm程度に設定されている。また、実施形態のエアバッグ25では、排気孔34と各ベントホール33とは、それぞれ、周縁を、略円環状の補強布62,63によって補強されている。
【0028】
バッグ本体26の膨張完了形状を規制するテザー38は、車体側壁部28における流入用開口29の周縁と、運転者側壁部36の中央付近と、を連結するように配置されて、膨張完了時に、運転者側壁部36の中央付近と流入用開口29周縁との離隔距離を規制するもので、実施形態の場合、流入用開口29の左右両側となる2箇所に、形成されている。テザー38は、
図6に示すような2枚のテザー用基材58U,58Dから、構成されている。テザー用基材58U,58Dは、それぞれ、車体側壁部28側と運転者側壁部36側とに結合される取付側部位59U,59Dと、取付側部位59U,59Dの外周縁から延びる2つのテザー構成部60U,60Dと、を備える構成とされ、車体側壁部28側と運転者側壁部36側とに、取付側部位59U,59Dを結合させた状態で、対応する各テザー構成部60U,60Dの端部相互を結合させることにより、テザー38を形成している。テザー38を構成するテザー用基材58U,58Dは、バッグ本体26と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から、形成されている。
【0029】
エアバッグ25の排気孔34を塞ぎ可能とされるフラップ材40は、エアバッグ25(バッグ本体26)の内周面側に配置されるもので、排気孔34を塞ぐフラップ本体41と、フラップ本体41から延びる連結部材としての連結ベルト47と、を備えている。実施形態の場合、フラップ本体41と連結ベルト47とは、
図6,7に示すように、可撓性を有したシート体から、一体的に、構成されている。具体的には、フラップ本体41と連結ベルト47とは、バッグ本体26及びテザー38と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から、形成されている。
【0030】
フラップ本体41は、バッグ本体26の内周面側から排気孔34を塞ぎ可能な大きさに設定されるもので、実施形態の場合、外形形状を、排気孔34の周縁に結合される元部42側を最も幅広として、先端43側にかけて狭幅とした略二等辺三角形状とされている。フラップ本体41は、元部42側を、排気孔34よりもエアバッグ25(バッグ本体26)の外周縁26a側となる位置で、排気孔34の周縁に結合される構成であり、具体的には、バッグ本体26を平らに展開した状態で、幅方向(左右方向)の中央を排気孔34の中心と略一致させつつ、元部42側の端縁42aを左右方向に略沿わせるように配置させて、元部42側を、左右の全域にわたって縫合糸を用いて、車体側壁部28における排気孔34の前縁側の領域に、縫着させている(
図4,7参照)。すなわち、フラップ本体41は、前後方向(後述する連結ベルト47の長手方向)に沿う方向である幅方向(左右方向)の中央線CL2を基準として(
図7参照)、外形形状を、略対称形とされており、先端43を、この中央線CL2上に位置させるように、構成されている。フラップ本体41において、幅方向(左右方向)側で対向して配置される縁部41a,41bは、左右対称形として、前後方向に対して傾斜して形成されている。
【0031】
詳細には、フラップ本体41は、排気孔34を全面にわたって閉塞可能なように、元部42側の幅寸法を、排気孔34における内径寸法(排気孔34における左右方向側(連結ベルト47の長手方向と略直交する方向側)の開口幅寸法)よりも、大きく設定されており、幅方向側(左右方向側)で対向する両側の縁部(縁部41a,41b)を、排気孔34の左方と右方とに位置させ、先端43を、排気孔34の後方に位置させるように、構成されている。具体的には、フラップ本体41における元部42側の幅寸法W1(結合部位45の長さ寸法、
図7参照)は、排気孔34の内径寸法d1の3倍程度に設定されている。また、フラップ本体41における縁部41a,41bの左右方向に対する傾斜角度θ(
図7参照)は、60°程度に、設定されている。さらに、フラップ本体41は、排気孔34を閉塞するように排気孔34の周縁に重ねられた状態で、排気孔34の開口縁34aから各縁部41a,41bまでの離隔距離D1(ラップ量、
図7参照)を、少なくとも3mm以上とするように、構成されている。実施形態の場合、排気孔34の開口縁34aから各縁部41a,41bまでの離隔距離D1(ラップ量)は、15mm程度(排気孔34の内径寸法d1の3/8程度)に、設定されている。また、実施形態では、排気孔34の開口縁34aから結合部位45までの離隔距離D2(
図7参照)も、排気孔34の開口縁34aから縁部41a,41bまでの離隔距離D1と略同等に、設定されている。ちなみに、フラップ本体41において、排気孔34の開口縁34aから各縁部41a,41bまでの離隔距離D1(ラップ量)は、10mm~20mmの範囲内に設定することが望ましく、この範囲内に設定することで、フラップ本体41の必要以上の大形化を抑制して、フラップ本体41により、排気孔34を安定して閉塞させることができる。
【0032】
すなわち、実施形態のフラップ本体41は、元部42側の結合部位45の両端となる端部45a,45bと、先端43側における連結ベルト47を連結させている部位(実施形態の場合、フラップ本体41と連結ベルト47との境界部位50)と、を、それぞれ結ぶ直線L1,L2間の領域において、排気孔34を覆うような構成とされており、また、フラップ本体41における各縁部41a,41bは、それぞれ、この直線L1,L2に略沿って配置されることとなる(
図7参照)。
【0033】
連結部材としての連結ベルト47は、実施形態の場合、フラップ本体41と一体的に構成される帯状体とされるもので、フラップ本体41の先端43側から延びて、延びた先端47aとなる連結端48に、開閉制御装置としての保持解除手段15における係止ピン16を挿通させて連結可能な連結孔48aを、有している(
図4,6参照)。連結ベルト47は、バッグ本体26における流入用開口29の前縁側に形成される挿通孔31を経て、連結端48をバッグ本体26外に突出させる構成である。連結ベルト47は、幅寸法W2(
図7参照)を、排気孔34の内径寸法d1(排気孔34における左右方向側(連結ベルト47の長手方向と略直交する方向側)の開口幅寸法)よりも小さく設定されており、具体的には、連結ベルト47の幅寸法W2は、排気孔34の内径寸法d1の3/8程度に設定されている。また、連結ベルト47は、長さ寸法(厳密には、境界部位50と連結孔48aとの離隔距離)を、保持解除手段15との連結状態を維持された状態(フラップ本体41による排気孔34の閉塞維持状態)でのバッグ本体26の膨張時に、バッグ本体26を支障なく膨張させることが可能で、かつ、フラップ本体41において、元部42側の結合部位45の端部45a,45bと、先端43側における連結ベルト47との境界部位50と、をそれぞれ結ぶ直線L1,L2上に、張力T(
図7参照)を発生可能な寸法に、設定されている。
【0034】
次に、実施形態のエアバッグ25の製造について述べる。車体側パネル55には、予め、フラップ材40におけるフラップ本体41の元部42側を、結合部位45を形成するように、縫合糸を用いて縫着させておく。また、車体側パネル55に、テザー用基材58Dの取付側部位59Dを重ね、流入用開口29の周縁となる部位で、縫合糸を用いて縫着させて、孔開け加工により、流入用開口29と取付孔30と挿通孔31とを形成する。運転者側パネル56には、テザー用基材58Uの取付側部位59Uを、縫着させておく。次いで、車体側パネル55と運転者側パネル56とを、外表面側を接触させつつ、平らに展開した状態で重ね、外周縁55a,56a相互を、縫合糸を用いて縫着させれば、フラップ材40を連結させた状態の袋状のバッグ本体26を形成することができる。このバッグ本体26を、縫代を外部に露出させないように、流入用開口29を利用して反転させた後、テザー構成部60U,60Dの先端相互を結合させてテザー38を形成すれば、エアバッグ25を製造することができる。
【0035】
このようにして製造したエアバッグ25は、以下のようにして、車両に搭載することができる。まず、図示しないボルトを取付孔30から突出させるようにして、内部にリテーナ7を配置させた状態で、エアバッグ25を、ケース11内に収納可能に折り畳む。エアバッグ25は、詳細な図示は省略するが、車体側壁部28と運転者側壁部36を重ねるように平らに展開した状態から、ケース11内に収納可能に、前後左右の幅寸法を縮めるように折り畳まれることとなり、このとき、フラップ材40も、バッグ本体26の内部において、連結ベルト47の先端47a側の連結端48を挿通孔31から外部に突出させつつ、平らに展開して配置された状態から、エアバッグ25とともに、折り畳まれる。そして、折り畳んだエアバッグ25をケース11内に収納させる。このとき、挿通孔31から外部に突出している連結ベルト47の連結端48を、ケース11の底壁部12の貫通孔12aから突出させる。保持解除手段15の係止ピン16を、連結端48に形成されている連結孔48aに挿通させ、係止ピン16の先端側を支持台12bに支持させるようにして、連結ベルト47の連結端48を保持解除手段15に係止させる。インフレーター9の本体部9aを下方から挿入させて、底壁部12から突出させた図示しないボルトとナットとを利用して、インフレーター9とエアバッグ25とをケース11に取り付ける。さらに、ケース11にエアバッグカバー20を被せて、リベット21等を利用して、ケース11にエアバッグカバー20を取り付け、ケース11の取付片13aに、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。このエアバッグ装置Mは、予め、ステアリングシャフトSSに締結したステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、取り付ければ、車両に搭載することができる。
【0036】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、インフレーター9のガス吐出口9bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ25が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー20の扉部20b,20bを押し開き、ケース11から突出して、
図1,2の二点鎖線及び
図8に示すように、ステアリングホイールWの上面を略全面にわたって覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フラップ本体41が、エアバッグ25の内周面側から排気孔34を閉塞するとともに、外形形状を、排気孔34周縁に結合されている元部42側の結合部位45の両方の端部45a,45bと、先端43側における連結部材としての連結ベルト47を連結させている部位(実施形態の場合、フラップ本体41と連結ベルト47との境界部位50)と、をそれぞれ結ぶ直線L1,L2間の領域において、排気孔34を覆うような構成とされている(
図7参照)。実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結ベルト47の開閉制御装置としての保持解除手段15との連結を維持させた状態でエアバッグ25を膨張させる際に、フラップ本体41には、この直線L1,L2に略沿うように、張力Tが発生することとなり、排気孔34は、フラップ本体41において、この張力発生部位間の領域に、内周面側を覆われることとなる。そのため、保持解除手段15との連結を維持させた状態でエアバッグ25を膨張させる際に、上記直線L1,L2に略沿うように張力Tが作用することとなって、この張力Tによって、フラップ本体41が、排気孔34の開口縁34aよりも外方となる部位を、押えられることとなる。また、フラップ本体41における張力発生部位間の領域、すなわち、排気孔34を覆っている領域(中間部位44)は、上記直線L1,L2に略沿うような張力Tの発生により、逆に、弛みを生じるような態様となるが(
図11のA参照)、フラップ本体41は、エアバッグ25の内周面側から排気孔34を覆っていることから、
図11のBに示すように、エアバッグ25内に流入した膨張用ガスGの内圧を受けて、この弛んだ状態の中間部位44が、排気孔34の周縁に圧接されるような態様となる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フラップ本体41のエアバッグ25からの浮き上がりを的確に抑制することができて、排気孔34からの膨張用ガスGの漏れを抑制することができる。
【0038】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排気孔34の閉塞維持時に、排気孔34からの膨張用ガスGの漏れを抑制することができる。
【0039】
具体的には、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排気孔34の開閉を制御する開閉制御装置は、フラップ材40における連結部材としての連結ベルト47の連結端48の連結状態を、保持または保持解除可能とされる保持解除手段15から、構成されている。
【0040】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、所定のセンサ75,76,77からの信号を入力させている制御装置70が、例えば、小柄な運転者MD1の着座を検知したり、運転者MDがステアリングホイールWに近接した位置に着座していることを検知した場合には、インフレーター9の作動と略同時に、保持解除手段15のアクチュエータ17に作動信号を出力させて、係止ピン16を引き込むように作動されて、連結ベルト47の連結端48の保持状態を解除する。そして、エアバッグ25は、
図10,12のBに示すように、排気孔34を開口させるような開口モードで膨張することとなり、排気孔34から余剰の膨張用ガスGを排気させるようにして、膨張を完了させることとなる。そのため、エアバッグ25が、排気孔34から余剰の膨張用ガスGを排気させて、内圧上昇を抑制された状態で膨張を完了させることから、小柄な運転者MD1やステアリングホイールWに近接して着座している運転者MDを、内圧を低く設定されたエアバッグ25により、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる。
【0041】
逆に、制御装置70が、例えば、大柄な運転者MD2の着座を検知したり、運転者MDがステアリングホイールWから比較的離れた位置に着座していることを検知した場合には、制御装置70からアクチュエータ17に作動信号が出力されず、エアバッグ25は、連結ベルト47の連結端48の保持解除手段15による保持状態を維持され、フラップ本体41による排気孔34の閉塞状態を維持された状態の閉塞モードで膨張することとなり、
図8,9,12のAに示すように、この排気孔34の閉塞状態を維持されたままで、膨張を完了させることとなる。そのため、エアバッグ25が、排気孔34から膨張用ガスを排気させない内圧の高い状態で膨張を完了させることから、大柄な運転者MD2やステアリングホイールWから比較的離れて着座している運転者MDを、充分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ25により、底付きすることなく、的確に保護することができる。
【0042】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フラップ本体41が、幅方向側(左右方向側)で対向する両側の縁部41a,41bを、それぞれ、上記直線L1,L2に略沿わせるように、傾斜させている。すなわち、実施形態では、保持解除手段15との連結を維持させた状態でエアバッグ25を膨張させる際に、張力Tが、フラップ本体41における幅方向側で対向する縁部41a,41bに略沿うように発生することとなり、さらに換言すれば、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フラップ本体41は、張力発生部位から外方に延びるような領域を備えない構成とされる。そのため、張力発生部位から外方に延びる領域が浮き上がることも抑制できて、フラップ本体41と排気孔34周縁との間に、一層隙間が生じ難い。また、フラップ本体41の面積(大きさ)を極力小さくすることができて、フラップ本体41の形成材料を少なくすることもできる。勿論、このような点を考慮しなければ、フラップ本体として、幅方向側で対向する縁部を傾斜させず、例えば、略長方形状とされるものを、使用してもよい。なお、実施形態では、フラップ本体41は、縁部41a,41bの元部42側の端末と略一致した位置に形成される結合部位45によって、車体側壁部28側に結合されているが、
図7の二点鎖線で示すように、結合部位45´を、縁部41a,41bの端末よりもやや元部42側にずらした位置に、形成してもよい。
【0043】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結部材としての連結ベルト47が、幅寸法W2を、排気孔34における連結ベルト47の長手方向と略直交する方向側(左右方向側)の開口幅寸法(実施形態の場合、排気孔34の内径寸法d1)よりも小さく設定されている。そのため、保持解除手段15との連結を保持させた状態でエアバッグ25を膨張させる際に、フラップ本体41に発生する張力Tを、一層安定して、フラップ本体41の縁部41a,41b近傍に、作用させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、連結部材として、排気孔の開口幅寸法よりも幅広に設定されているものを、使用してもよい。なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結ベルト47は、フラップ本体41と一体として構成されているが、連結ベルトを、フラップ本体と別体の帯状体から構成して、フラップ本体に縫着させる構成としてもよい。また、連結部材の形状も、実施形態のごとく帯状に限定されるものではなく、例えば、連結部材として、先端側に、保持解除手段の係止ピンを挿通可能なループ部を有した紐状体からなるものを、使用してもよい。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排気孔34が、開口形状を略円形として構成され、フラップ本体41が、排気孔34の開口縁34aから縁部41a,41bまでの離隔距離D1を、少なくとも3mm以上とするように、構成されていいることから、フラップ本体41による排気孔34の閉塞状態を安定させることができる。
【0045】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排気孔34が、エアバッグ25において、膨張完了時の断面において曲率を小さく設定されて、略平面状とされる領域に、形成される構成である。具体的には、実施形態のエアバッグ装置Mは、ステアリングホイール用であり、排気孔34は、バッグ本体26の車体側壁部28において、膨張完了時に、ステアリングホイールWにおけるリング部Rよりも内側となる位置に配置される領域に、形成されている。車体側壁部28におけるリング部Rよりも内側となる位置に配置される領域は、膨張完了時のバッグ本体26において、略平面状に配置されることとなる(
図9,10参照)。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排気孔34と、排気孔34を内側から塞ぐフラップ本体41と、が、膨張完了時のエアバッグ25(バッグ本体26)の車体側壁部28において、略平面状に配置される領域に配設されることとなり、連結ベルト47の保持解除手段15との連結を維持(保持)させた状態でエアバッグ25を膨張させる際において、フラップ本体41の縁部41a,41b近傍に張力Tを作用させた際に、張力発生部位(縁部41a,41b側の部位)と車体側壁部28との間に隙間が生じることを、抑制できる。なお、このような点を考慮しなければ、排気孔を、エアバッグにおいて、膨張完了時の断面における曲率を大きく設定される領域、実施形態の場合、リング部Rよりも外周側に位置する外周縁側の領域に、配置させる構成としてもよい。排気孔をこのような位置に配設させる場合、確かに、断面形状において排気孔の周縁の部位を大きく曲げるように、エアバッグが、膨張することから、張力を発生させるフラップ本体の縁部側の領域(断面で略直線状に配置されることとなる)と、排気孔の周縁の部位との間に隙間が生じやすくなるが、フラップ本体は、エアバッグの内周面側から排気孔を覆う構成であることから、エアバッグ内に流入する膨張用ガスの内圧によって、排気孔周縁に圧接されるような態様となり、排気孔からのガス漏れは、安定して抑制することができる。
【0046】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ25には、排気孔34とは別に、常時開口している2つのベントホール33,33が、配設される構成であるが、常時開口しているベントホールの有無は特に限定されるものではなく、乗員の保護モードに応じて、ベントホールの配置の有無や大きさ、配置数等は、適宜変更可能である。また、実施形態では、ステアリングホイール用のエアバッグ装置Mを例に採り説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、勿論、ステアリングホイール用に限定されるものではなく、例えば、助手席用のエアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
9…インフレーター、11…ケース(収納部位)、15…保持解除手段(開閉制御装置)、20…エアバッグカバー、25…エアバッグ、26…バッグ本体、28…車体側壁部、34…排気孔、34a…開口縁、40…フラップ材、41…フラップ本体、41a,41b…縁部、42…元部、43…先端、44…中間部位、45…結合部位、45a,45b…端部、47…連結ベルト(連結部材)、47a…先端、48…連結端、48a…連結孔、70…制御装置、G…膨張用ガス、W…ステアリングホイール、M…エアバッグ装置。