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特開2023-84616飼料の高精度水分推定システム及びその使用方法
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  • 特開-飼料の高精度水分推定システム及びその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084616
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】飼料の高精度水分推定システム及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20230612BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230612BHJP
【FI】
A01K29/00
A01K29/00 Z
A23K10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198914
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】592172574
【氏名又は名称】明治飼糧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097825
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 久紀
(74)【代理人】
【識別番号】100137925
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 紀一郎
(72)【発明者】
【氏名】世良 健司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 靖晃
(72)【発明者】
【氏名】清水 和明
(72)【発明者】
【氏名】岩下 有宏
(72)【発明者】
【氏名】長尾 秀則
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA02
2B150CE05
2B150CE12
(57)【要約】
【課題】
本発明は、サイレージにおける水分量測定において、高頻度、高精度、簡易、迅速に、低コストで実現するシステムを開発することを目的とする。
【解決手段】
サンプルを写真撮影し、当該画像を機械学習モデルで処理することにより、その水分量を十分使用に耐え得る正確性にて推定することができる。この機械学習モデルは、例えば、Google Cloud Platform AutoML Visionを用いて提供することができる。本発明は、農業、とりわけ畜産業のシステム化、機械化に大いに役立つものである。また、ペーパーレス、電気エネルギーの使用量減少等を通じてSDGsにも寄与する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反芻家畜の飼料を撮影し、機械学習モデルによって処理することを特徴とする、飼料中の水分を分析・推定する方法。
【請求項2】
機械学習モデルが、Google Cloud Platform AutoML Vision、Azure Machine Learning、Amazon Machine Learning、IBM Watsonから選ばれるいずれかひとつにより構築されるものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反芻家畜の飼料が、サイレージであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかひとつの方法によって取得された値を、飼料設計表と混合作業表の水分値に反映し、自動的に牛への給与量を変更するシステム。
【請求項5】
飼料の部位毎及び/又は複数回、請求項1~3のいずれかひとつの方法によって飼料中の水分を分析・推定することができるシステム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかひとつの方法によって取得された値を、即時に飼料設計表と混合作業表の水分値に反映し、農家に飼料の配合量について、やるべきことを指示することができるシステム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかひとつの方法によって取得されたデータをデータベースに蓄積し、これを営業事務所や農場に伝達することにより、それらが管理する農場全体の飼料中の水分を分析・推定することを特徴とする、システム。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飼料、特に乾牧草、サイレージといった粗飼料の水分量を推定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サイレージは、反芻家畜の飼養管理の上で主要な栄養源となるものであり、したがって、そのDMI(乾物摂取量)すなわち水分含量把握が重要となる。
【0003】
従来問題であったDMI(乾物摂取量)不足は、飼料、特に乾牧草、サイレージといった粗飼料の水分含量や品質の変化により、反芻家畜の飼料採食量低下、選び食いなどを招き、DMI不足となり、栄養不良、代謝異常を経て乳、肉生産性の低下が発生する、ということがあった。これは従来から認識されていたものである。
【0004】
本発明においては、上記従来課題にとどまらず、さらに新たな状況を考慮している。すなわち、上記状況から一歩進み、次のことも考察している。
水分含量把握不良によるDMI(乾物摂取量)飼料採食量の認識不良(誤認識)は、飼養計画の瓦解を招き、DMI(乾物摂取量)の不足、栄養不足・不良となり乳生産低下に直接影響する。さらに、DMI不足は直接ストレスとなり乳生産に影響する。
つまり、水分含量の把握について誤った認識をしていると、それを基に設計された飼料の成分は、実は設計通りに牛体に給与されていないということになる。水分が増加しすぎていると、当然飼料成分濃度が薄くなってしまい(DMIが不足してしまい)、牛の栄養不足を招く。逆に水分量が少なければ、飼料成分濃度が濃くなってしまい代謝病等様々な疾病の原因を作り乳生産低下に陥る。
牛の飼育者としてみれば、正しい水分量に基づいて飼料配合をしていると誤解して飼育してしまうこととなるが、実は、十分な濃度の飼料を給与できていない、ということが起こり得る、という新たな課題が生じてきているのである。
そして、この誤認識は、できる限り早く修正しないと、牛への影響が大きくなってしまう。したがって、この水分量把握の誤認識を、可及的速やかに、修正しなければならない、という状況を、本願発明者らは、新たに認識した。
【0005】
よって、定期的にもしくは生産乳量やBCS(ボディ コンディション スコア:牛の体型・見た目をスコア化したもの)低下、疾病など生産性低下の現象を知り原因を探るために、サイレージの水分量を把握し、この結果を認識し、これを起点に実態把握、分析、設計、対応、そして反芻家畜の体調回復、というプロセスを経ることとなる。
従来、この家畜の体調回復プロセスの中核となる、サイレージの水分量把握の為には、一つのサイレージに対してもサイロの部位によって水分のバラツキがあるため、本来はサイロの複数部位のひとつひとつを分析検体とするべきであるが分析センターの能力や分析費用という経済的理由から、複数部位を採取混合し代表サンプルとし分析センターに送付し分析する、という手法を採っていた。
【0006】
しかしながら、この分析センターを利用した従来手法では、上記プロセスを達成するために、少なくとも1、2週間~数週間程度を要してしまうため、その間、家畜の健康に与える影響が大きく、経済的損失が大きいものとなっていた。
【0007】
また、分析センターの利用はコストも高く、多くの頻度で実行することが困難である。よって、高い精度、頻度、簡易に、低コストでサイレージの水分含量を把握・推定することができる方法が切望されていた。
【0008】
他方、近年、機械学習モデルの分野での技術発展はめざましく、様々な提案がなされている。例えば、輸送機械の部品の画像を処理し、該輸送機械の部品の良否を判定するための機械学習モデル等が提案されている(特許文献1)。
【0009】
このような機械学習モデルを、反芻家畜の飼料分野において用いた技術は、ほとんど見受けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2021-51404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、反芻家畜の飼料、特にサイレージにおいて、その水分量を高い頻度、精度で、簡易に、低コスト等で推定・把握することができるシステムを構築することを目的としてなされたものである。
また、本システムで、水分以外の他の飼料成分の把握も可能とすることも目的とする。
併せて、このシステムにより、継続的・高頻度での測定が可能となり、通信を介してデータを共有することで、農場における迅速な飼料設計見直しも可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明者らは各方面から検討した結果、従来、飼料分野ではほとんど着目されていなかった機械学習モデルを用いた方法に着目した。
そして検討の結果、予め撮影されたサイレージの映像を機械学習モデルを用いて処理することにより、迅速かつ、かなり高精度で水分量を把握できる、という有用な新知見を得た。
【0013】
この知見に基づき、システムを具体化するための更なる研究を行った結果、サイレージの映像をスマートフォン等で撮影し、これを例えばGoogle Cloud Platform AutoML Visionにて処理することにより、高い正確性をもって、その水分量を推定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)反芻家畜の飼料を撮影し、機械学習モデルによって処理することを特徴とする、飼料中の水分を分析・推定する方法。
(2)機械学習モデルが、Google Cloud Platform AutoML Vision、Azure Machine Learning、Amazon Machine Learning、IBM Watsonから選ばれるいずれかひとつにより構築されるものであることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3)反芻家畜の飼料が、サイレージであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)(1)~(3)のいずれかひとつの方法によって取得された値を、飼料設計表と混合作業表の水分値に反映し、自動的に牛への給与量を変更するシステム。
(5)飼料の部位毎及び/又は複数回、(1)~(3)のいずれかひとつの方法によって飼料中の水分を分析・推定することができるシステム。
(6)(1)~(3)のいずれかひとつの方法によって取得された値を、即時に(極めて短時間に)飼料設計表と混合作業表の水分値に反映し、農家に飼料の配合量について、やるべきこと(水分量の増減、その他の飼料成分の選択・それらの混合比・混合方法等)を(スマートフォンの画面等に表示することにより)指示することができるシステム。
(7)(1)~(3)のいずれかひとつの方法によって取得されたデータをデータベースに蓄積し、これを営業事務所や農場に伝達することにより、それらが管理する農場全体の飼料中の水分を分析・推定することを特徴とする、システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反芻家畜の飼養管理の上で主要な栄養源となるサイレージのDMIを、高い頻度、精度、簡易に低コストで分析及び高い確度で推定することが可能となる。その結果、サイレージの水分含量、品質の変化に応じ、リアルタイムな飼料設計の適正化が可能となり、家畜の適正な乾物摂取量(DMI)の確保(飼料採食量低下、栄養不足・不良を防止)が出来、乳、肉生産性の低下を防止することができる。また、本発明によればサイレージの水分含量がリアルタイムで測定、把握されるので、このデータを利用して家畜の飼養をシステム化し、畜産等の近代化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、各飼料成分を実際に分析センターで測定した値と、本願発明にて分析した値、その誤差を示す。
図2図2は、粗飼料分析のトータルシステムの流れを示す。
図3図3は、本発明を用いて作成した飼料設計表である。牛の状態や求められる水分値等から、設計値を定めている。そして、この設計値と(アプリによる)実測値では差が生じる。これをもとに、実際の混合量を定めていくのである。
図4図4は、図3と同様、本発明を用いて定められた、混合作業表である。図3と同様に、設計値と実測値を定め、具体的な混合作業の量や内容を定めるのである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、家畜用飼料において、特に重要である水分量の把握につき、例えば、Google Cloud Platform AutoML Vision、Azure Machine Learning、Amazon Machine Learning、IBM Watson等による機械学習を利用したアプリケーションにより、簡易迅速、且つ低コストでの解決を可能としたものである。
【0019】
家畜の飼料、特にサイレージにおいては、個々により水分範囲が約15%~80%と広範囲であることと、通常飼料とは違い有機酸など多様な成分が混在しているという特徴がある。
したがって、水分量の把握を誤ると、水分量の範囲が広範であることから、栄養分の濃度等に及ぼす影響が大きく、牛に与える栄養分の量を大きく間違ってしまう危険が大きい。
サイレージの水分量把握の為には、一つのサイレージに対してもサイロの部位によって水分のバラツキがあるため、本来はサイロの複数部位のひとつひとつを分析検体とするべきであるが分析センターの能力や分析費用という経済的理由と検体数に比例して時間がかかり実現できないという事から、複数部位を採取混合し代表サンプルとし分析センターに送付し分析する、という手法を採っていた。
部位毎の水分が多様であり、このことが飼料中の真の水分量を把握することの妨げとなっていた。本来は、サイレージの部位毎を分析し、その部位毎の飼料設計を行い給与すれば理想的となるが前項の理由で行えず不完全な栄養管理となっており乳生産を律速している。
【0020】
しかしながら、当該方法の下では、サイロ中でも多くのサンプルを採取し、これを分析センターに送付し、各々分析することとなるため、正確なデータは取得できるものの、コストや手間、多くの時間を要することとなるため、デメリットも多い。
【0021】
そして、飼育現場レベルでみると、飼料中の水分量を誤認したまま給与し続けていた、という事情が考えられる。その後に、水分量をチェックしてみたら、含有水分量が想定と異なっていたことに気づき、あわててこれを調整しなければならなくなるとともに、水分量の範囲の広さゆえに、牛への健康被害も大きくなってしまう。当然ながら、この被害は、誤りに気付くまでの時間が多い程、大きくなるものである。
本願は、この新たなる課題にも解決手段を提供するものである。すなわち、本願発明によれば、即座に、水分量を的確に把握することができ、正しい水分量に基づいた牛の飼育メニューを迅速に飼育者にもたらすことが可能となるのである。
【0022】
そこで、本願出願人らは、従来、写真・画像からその飼料に含まれている成分を推定・同定・分析することは困難である、という技術常識の中、あえて、飼料の見栄え、画像が水分を実用可能な程度の精度で推定できることを見出し、本願発明に想到したものである。
【0023】
具体的にはまず、対象となる飼料を農場等から採取する。そして、スマートフォン等で飼料の画像を撮影する。当該画像はスマートフォン内部か、クラウド・ネットワーク等を介し、データベースに保存する。その際、飼料画像とともに、農場名や草種、タイプ、刈取No.、畑名等も同時に入力することもできる。
【0024】
そして、当該画像を、機械学習モデルを用いて処理する。この機械学習モデルは、例えば、Google Cloud Platform AutoML Visionを用いて提供されることができる。
【0025】
上記処理により、サンプルをひとつひとつ採取し、分析センターに送付し水分量を測定するのではなく、当該画像中の飼料中の水分量が、数字にて、例えばスマートフォンの画面中に表示されることとなる。以上が、本願発明の中核である。
また、水分量がすぐに表示されるため、水分量把握を極めて迅速に、即座に可能とすることも、本願発明の奏する効果である。
【0026】
次に、このようにして取得したデータのさらなる使用法についてであるが、例えば、当該システムにより継続的・より反復的に水分測定することが可能となり、より細かな水分管理が可能となる。すなわち、より綿密に、効果的に反芻動物(例えば牛)の健康管理が可能となる。
【0027】
さらに、このデータ通信を介して共有することにより、農場における迅速な飼料設計見直しが可能となる。また、本手法を提供することで畜産業の生産性向上につなげることもできる。
【0028】
さらなる応用として、多様なデータを収集しながら精度向上・維持を実現するために、分析センター運用の中に収集の仕組みを構築することで持続的に高精度の維持を実現することも可能となる。
別に、本データを活かした多様な成分推定につなげることもできる。
【0029】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【実施例0030】
日本国内における農場において、チモシーを用いたサイレージ、デントコーンを用いたサイレージ、オーチャードグラスを用いたサイレージを各5ずつ採取し、サンプルとした。
【0031】
これらサンプルを、スマートフォンにて撮影し、機械学習モデルのプログラムにより処理した。そして、得られた水分量の数値を図1に示した。
【0032】
そして、分析センターに送付した同一サンプルを同センターにて測定した水分量データを同じく図1に示した。
【0033】
これらを比較すると、チモシー、デントコーン、オーチャードグラスともに、本願発明により得られた数値と、分析センターの測定値について、ほとんど差がないことが証明されている。すなわち、本願発明により推定される水分量は、十分に、実測の水分量を推定させるものとして、ほとんど誤差なく、十分な精度・確度を備えていることになる。
【実施例0034】
本願発明の応用として、図2に示したように、分析センターへの通信伝達手段をも含めたかたちで、全体における管理システムを構築することも可能となる。
【実施例0035】
次に、本分析法の、現場での飼料設計の場面について説明する。
【0036】
図3に示したように、サイレージの水分量には、理論上の設計値と、実測の値との間に変動があるものである。第一に、この値を確認することを行う。
次に、このサイレージ水分率の変動に応じて飼料設計中の混合量を調整する。
具体的には、本分析法による値を、図3に示した飼料設計表と、図4に示した混合作業表の水分値に反映し、自動的に牛への給与量を変更する。
この調整により、簡易的に摂取する乾物量(DM)を維持することができる。
乾物摂取量(DMI)や牛のコンディションに変化を認めた際は、サイレージの成分分析を経て全体の飼料設計の再見直しをする。
【実施例0037】
次に、本発明を用いた、飼料混合担当者の作業内容について説明する。
【0038】
飼料混合担当者は、スマートフォンやタブレット端末等に表示された上記表を見て作業する。例えば、サイレージ運搬用バケットに設置することができる。
給仕作業時に上記アプリが自動起動し、飼料調整作業にかかわる情報が表示される。
【0039】
さらに具体的な入力・処理方法等について説明する。
【0040】
まず第一に、担当者は牛の状態や求められる栄養状態等を考慮しながら、飼料設計メニューを入力又は自動入力する。そうすると、自動で本日の混合量がタブレット上に表示される。
第二に、バンカーサイロ壁面を取り出す時点で取り出し口の水分の平均値を把握する。この際、担当者は(1)飼料の5カ所を撮影し、水分の平均値を取得する。(2)平均値から、混合量を決定する。
例えば、乾物換算混合量(現物)=設計混合量×A/B、とできる。
サイレージ粒度を見て、それに応じて混合時間を調整する。
また、全体水分量に問題が生じたときは、必要時に必要量の加水対応を行う。
なお、サイレージの畑が変わったときは、飼料設計の見直しを行う。
【0041】
サービスの具体例としては、次のようなものが可能である。
【0042】
(1)水分推定アプリ+飼料設計メニュー表アプリ。これは、日々の作業に利用するものである。
(2)飼料担当者の持つマネージメントツール。
(3)飼料設計(群別混合メニュー表)。
(4)水分データ、サイロ在庫、飼料粒度、乳成分、牛の状況他のデータを表示することが可能である。
【0043】
本発明によって奏される効果についてさらに説明する。
すなわち、図3をみると、理論上の設計値と、実際の水分量の実測値には、差が生じる。この差は大きな差ではないようにも感じられるが、図4のように、実際の混合作業の段階となると、牛の頭数等により、この差も非常に大きいものとなっている。このように、現物kgで飼料の量に大きく差が生じてしまうと、経済的損失も非常に大きいものとなる。
本願発明は、このような従来行われていた、設計値のみでの飼料混合から生じていた誤差を、簡便かつかなり正確に実測値を算出できるものであるため、飼料の無駄を大きく減らすことができ、非常に顕著な効果を奏するものである。
【0044】
さらに、図3について補足する。「水分」の欄をみると、「設計値」の値が存する。これは、牛の飼育状況等を踏まえて、この水分値(乾物量)を給与しよう、というふうに決定された値である。
しかしながら、その隣の「実測値」をみると、設計値と異なっていることがわかる。当該図3は本願発明を用いて設定した値により設計しているので、ほとんど誤差なく測定できているが、これを本発明によらないで、間違った水分量認識のまま行うと、誤った水分量(乾物量)を給与し続けてしまう弊害が生じ得る。すなわち、現場では、設計値によって配合した飼料を、この通りの水分量で有ることを前提に給与し続け、生産性・BCS低下、疾病など問題が起きたことで気が付くのが現状なのである。そして、従来のセンターに測定依頼することによって正しい水分量を把握する方法では、時間がかかりすぎる。センターからの測定結果を待って、そこで正しい実測値が分かってから、配合量を調整することとなるからである。しかも、部位毎の水分量もわからず根本的な解決にはならないのである。その間の、牛への間違った給与により、かかった時間に比例して、損害が大きくなるのである。
この点、本願発明によると、信頼性の高い水分量が、入力後、瞬時に表示されるため、非常に技術的価値が高い。しかも部位毎の水分量も瞬時に表示される。
【0045】
また、次のような効果も奏される。
すなわち、従来は、特に面積の大きいバンカーサイロや、ロール(パック)サイレージなどにおいて、費用的・技術的な理由から、ユニットごとに水分量を測定することは困難であった。せいぜい、複数個所にて水分測定をし、便宜上これらを混ぜて平均値を算出するなどし、これを全体の水分量として取り扱う、等の精度で運用されていた。
しかしながら、当然これでは、代表サンプルのみであるから、特に面積の大きいバンカーサイロや、ユニット数の多いロールサイレージなどでは、水分量の誤差が大きくなり、上記の水分量誤認が生じやすい。
これに対し、本願発明によると、迅速かつ正確に水分量が測定できるため、これらサイレージの部位ごとに測定することが可能となり、即時に配合量等に反映することができる。また、サイロの複数回の分析や、複数の場所の水分量を測定して、時間ごと、部位ごとの誤差をそれぞれ、きめこまかく反映することができる。
【0046】
さらに、バンカーサイロやロールサイレージにおいては、水分分析等のために開封又は穴を開けると、時間とともにそこから劣化してしまう、という問題点があった。これは空気中の雑菌の侵入を許し二次発酵(悪い発酵。当業界で変敗のことをいう)という所謂、変敗を起こしてしまうのである。すなわち、分析サンプル採取の為に、これらに穴を開けると、そこから腐ってしまうのである。よって、酪農家としては、使用するまで開封や穴を開けたくないのであるが、分析を希望するため、それでも穴を開けるのが通例となっていた。
【0047】
この点、本発明によれば、写真撮影後、即時に成分数値が提示され、システム上、すぐ酪農家がやるべきメニューが変更表示されるため、水分等を分析してから飼料を使用するその時に、時間をおかず開封することが可能となる。時間をおかないで開封できれば、当然、分析値に近い値での飼料給与等が可能となる。なお、冬は、飼料等が腐りにくいため、夏よりは影響が少ない。
【0048】
酪農家としては、当然、いつも正しい分析値を欲しておりかつ劣化していないフレッシュな飼料を使用したいと考えている。しかしながら、正しい分析値を把握しようとすると、これらサイレージにたくさんの穴を開けて測定しなければならなくなってしまう。これでは飼料がフレッシュでもない。
酪農家は従来、いいものを使用したいのに、分析するといいものではなくなってしまう、というジレンマを抱えていたのである。
【0049】
従来は、予めバンカーサイロやロールサイレージ等の複数部位から分析しておいて、水分等を予測する、という手法を採っていた。すなわち、実際使用するまでの間に劣化する可能性をはらみながら使用していたのである。
【0050】
この点、本発明においては、使用するとき、言うなれば使用する瞬間に分析すればよい、という従来できなかったことができているのである。
前もって分析しておく、というような感覚がなくなり、本発明によると直ちに分析できる。
【0051】
また、従来は、バンカーサイロやロールサイレージ等の多数の部位からサンプルを取得し、水分等を測定し、その平均値をとって水分量を予測する、という手法を採っていた。
この点、本発明においては、牛に食べさせるところを直接、分析し、実際の値を正確に測定できる、という利点がある。
【0052】
以下、本発明を要約すれば次のとおりである。
【0053】
すなわち、本発明は、サイレージにおける水分量測定において、高頻度、高精度、簡易、迅速に、低コストで実現するシステムを開発することを目的とする。
【0054】
そして、サンプルを写真撮影し、当該画像を機械学習モデルで処理することにより、その水分量を十分使用に耐え得る正確性にて推定することができる。この機械学習モデルは、例えば、Google Cloud Platform AutoML Visionを用いて提供することができる。本発明は、農業、とりわけ畜産業のシステム化、機械化に大いに役立つものである。また、ペーパーレス、電気エネルギーの使用量減少等を通じてSDGsにも寄与する。
図1
図2
図3
図4