IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青山 省司の特許一覧

<>
  • 特開-プロジェクションナットの供給装置 図1
  • 特開-プロジェクションナットの供給装置 図2
  • 特開-プロジェクションナットの供給装置 図3
  • 特開-プロジェクションナットの供給装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084632
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】プロジェクションナットの供給装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/14 20060101AFI20230612BHJP
   B23K 11/30 20060101ALI20230612BHJP
   B23P 19/06 20060101ALI20230612BHJP
   B65G 47/88 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B23K11/14 310
B23K11/30 311
B23K11/30 360
B23P19/06 A
B65G47/88 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021209952
(22)【出願日】2021-12-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【テーマコード(参考)】
3F017
【Fターム(参考)】
3F017CA02
3F017CD03
3F017DA03
(57)【要約】
【課題】安全対応構造を、進退出力式電動モータによって設定された供給ロッドの全進退ストローク域の任意の箇所において機能させること。
【解決手段】プロジェクションナット1を電気抵抗溶接の電極へ供給する形式のものにおいて、供給ロッド7は、中空状の主ロッド20にガイドロッド21が挿入されて形成され、供給ロッド7と同方向に出力し、供給ロッド7の進出停止位置を任意の箇所に設定できる進退出力式電動モータ33が設けられ、主ロッド20の進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材42が形成され、延長部材42に、センサー51によって検知される被検知部材48が取り付けられ、センサー51は、供給ロッド7の進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材53の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に停止しているプロジェクションナットのねじ孔に、進退動作をする供給ロッドのガイドロッドを貫通させて、プロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給する形式のものにおいて、
前記供給ロッドは、中空状の主ロッドに前記ガイドロッドが挿入された状態で形成され、
前記ガイドロッドに押出し方向の弾力を付与する圧縮コイルスプリングが、前記主ロッド内に配置され、
前記供給ロッドの進退動作方向と平行な方向に出力するとともに、供給ロッドの進出停止位置を任意の箇所に設定できる進退出力式電動モータが設けられ、
前記進退出力式電動モータによって進退する進退出力部材を前記主ロッドに結合することによって、前記進退出力式電動モータの進退動作と前記供給ロッドの進退動作が同時に行われるように構成し、
前記ガイドロッド自体の延長またはガイドロッドに一体化された接合部材によって、前記主ロッドの進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材が形成され、
前記延長部材に、センサーによって検知される被検知部材が取り付けられ、
前記センサーは、前記供給ロッドの進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成され、
供給ロッドの進出時に、作業者の手やハンド工具などの異物に前記ガイドロッドの先端部が突き当たることによって、前記ガイドロッドと前記主ロッドの間に生じる相対変位を、前記センサーによって検出するように構成したことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロジェクションナットのねじ孔にガイドロッドを貫通させて、電気抵抗溶接の電極へ供給するプロジェクションナットの供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2002-172470号公報および特開2018-069331号公報には、進退出力式電動モータを用いてプロジェクションナット供給用の供給ロッドを進退させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-172470号公報
【特許文献2】特開2018-069331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1および特許文献2に記載された発明においては、進退出力式電動モータを活用して、供給ロッドの進退ストロークを確保することが可能であるとともに、作業者の手が供給ロッド先端部で挟まれたりしたときの、安全対応が可能である。しかしながら、上記の安全対応が供給ロッドの全ストローク域のどの箇所においても行われるようにはなっていない。つまり、エンコーダなどの設定手段で求められた進退ストローク毎に、安全対応を実施することが不可能である。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、安全対応構造を、進退出力式電動モータによって設定された供給ロッドの全進退ストローク域の任意の箇所において機能させること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
所定位置に停止しているプロジェクションナットのねじ孔に、進退動作をする供給ロッドのガイドロッドを貫通させて、プロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給する形式のものにおいて、
前記供給ロッドは、中空状の主ロッドに前記ガイドロッドが挿入された状態で形成され、
前記ガイドロッドに押出し方向の弾力を付与する圧縮コイルスプリングが、前記主ロッド内に配置され、
前記供給ロッドの進退動作方向と平行な方向に出力するとともに、供給ロッドの進出停止位置を任意の箇所に設定できる進退出力式電動モータが設けられ、
前記進退出力式電動モータによって進退する進退出力部材を前記主ロッドに結合することによって、前記進退出力式電動モータの進退動作と前記供給ロッドの進退動作が同時に行われるように構成し、
前記ガイドロッド自体の延長またはガイドロッドに一体化された接合部材によって、前記主ロッドの進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材が形成され、
前記延長部材に、センサーによって検知される被検知部材が取り付けられ、
前記センサーは、前記供給ロッドの進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成され、
供給ロッドの進出時に、作業者の手やハンド工具などの異物に前記ガイドロッドの先端部が突き当たることによって、前記ガイドロッドと前記主ロッドの間に生じる相対変位を、前記センサーによって検出するように構成したことを特徴とするプロジェクションナットの供給装置である。
【発明の効果】
【0007】
進退出力式電動モータによって進退長さが設定された供給ロッドにおいて、作業者の手やハンド工具などの異物がガイドロッド先端部に挟まれるような事態が発生したときには、供給ロッドの進退長さがどのような長さに設定されていても、大けがに到らないような措置が必要である。そのためには、上記異物がガイドロッド先端部に挟まれたことを、確実に検出して大事に到らないようにしなければならない。とくに、供給ロッドの進退長さが長く設定されているときにおいて、この点は重要である。
【0008】
供給ロッドは、中空状の主ロッドにガイドロッドが挿入された状態が基本構造とされているため、供給ロッドの最後端である主ロッドの最後端位置に被検知部材を取り付けた場合であれば、供給ロッドの進退方向で見た、被検知部材とセンサー間の距離が、十分に確保できないこととなる。
【0009】
本発明においては、ガイドロッド自体の延長またはガイドロッドに一体化された接合部材によって、主ロッドの進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材が形成され、この延長部材に被検知部材が取り付けられている。したがって、供給ロッドの進退長さが大幅に長くなっている場合であっても、それに応じた延長部材の長さをガイドロッドに加算した形となり、供給ロッドの長距離進退において異物挟み込みが生じても、それを確実に検知して、電極の進出禁止など、大事に到らないようにすることができる。そして、上記の被検知部材とセンサー間の距離が、十分に確保できるようになる。
【0010】
エンコーダなどによって、進退出力式電動モータの進退距離を長短複数の距離を精密に求めることができる。これにともなって、供給ロッドの進退も連動したものとなる。したがって、近隣のスペース環境などに適応させて、供給ロッドの進退距離を自由にかつ正確に選定することができる。このようにして選定された供給ロッドの進出距離毎に、異物挟み込みを確実に検出し、電極の進出禁止など、大事に到らないようにすることができる。
【0011】
プロジェクションナットが溶接される鋼板部品の形状などによっては、供給ロッドの進退長さを著しく長く設定する必要がある。このような場合、本発明においては、主ロッドの進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材が採用されているので、検知性能を損なうことなく、供給ロッドの長尺化が実現する。
【0012】
被検知部材は、延長部材に取り付けられているので、被検知部材を供給ロッドの最後退位置に存在させることができ、また、センサーは、供給ロッドの進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成されているので、センサーを供給ロッドの最前進位置に存在させることができる。このような被検知部材の前記最後退位置と、センサーの前記最前進位置の最大間隔を供給ロッドの進退長さと合致させることにより、エンコーダなどで選定された進退出力式電動モータの進退長さに適合したセンサーの固定位置を定めて、供給ロッドの進出長さ毎に作業者の手やハンド工具の介入などに適確に対処することができる。
【0013】
換言すると、供給ロッドの進出長さは、スペース事情などを勘案して種々な長さに定められるが、供給ロッドの進出長さ毎にセンサーの固定箇所が選定されるので、供給ロッドの進退長さに適応した安全構造が常に確保できる。
【0014】
被検知部材の進退長さの範囲を供給ロッドの最大進退長さと同じにすることができる。供給ロッドの最大進退長さと同じか、またはそれよりも短い長さ範囲において、エンコーダなどで供給ロッドの進出長さが精緻に求められる。そして、求められた供給ロッドの進出長さに適応させてセンサーの固定位置が選定される。したがって、供給ロッドの進出長さをエンコーダなどで正確に設定することが簡単に実施でき、合わせて、供給ロッドが作業者の手やハンド工具などに突き当たった場合には、設定された供給ロッドの進出長さ毎に、確実に異常を検出することができる。
【0015】
被検知部材は延長部材に取り付けられているので、被検知部材を供給ロッドの最後退位置に存在させることができ、被検知部材の検知長さ範囲を十分に拡大することができる。このため、供給ロッドの進退長さを長くして、遠方の目的箇所へプロジェクションナットを供給することが行いやすくなる。
【0016】
センサーは、供給ロッドの進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成されている。したがって、センサーの固定位置は、供給ロッドの最大進退長さの範囲内であれば、供給ロッドの進退長さの長短に応じて、どこにでも設定できる。したがって、供給ロッドの進退長さ毎に、供給ロッドの進出位置が正常かどうかの判別が確実になされる。
【0017】
進退出力式電動モータによって進退する進退出力部材が主ロッドに結合され、ガイドロッド自体の延長またはガイドロッドに一体化された接合部材によって、主ロッドの進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材が形成され、延長部材にセンサーによって検知される被検知部材が取り付けられ、センサーは、進退出力式電動モータの進退動作方向に沿った任意の位置に固定できるよう、供給ロッドの進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材の任意の位置に固定する固定構造とされている。したがって、長尺な静止部材を、スライド隙間を有する真っ直ぐで細長い板材や、真っ直ぐで細長い棒材などで構成することができ、調整位置を簡単にしかも確実に求めることができる。
【0018】
周辺のスペース環境などによって供給ロッドの進出長さが種々変化するが、エンコーダなどの動作設定手段を用いて進退出力式電動モータによる供給ロッドの進退長さが自由に設定される。このようにして設定された供給ロッドの進出長さに対応する箇所にセンサーを固定することにより、供給ロッドが正常に進出すると、延長部材に取り付けられた被検知部材がセンサーと向かい合った位置に停止し、プロジェクションナットが電極へ正しく供給されたことが、センサーからの信号によって確認される。
【0019】
作業者の手やハンド工具などの異物にガイドロッドの先端部が突き当たることによって、ガイドロッドと主ロッドの間に生じる異常な相対変位を、センサーによって検出する。この異常な相対変位を検出することによって、電極の進出動作を禁止することができ、安全性確保がなされる。
【0020】
進退出力式電動モータの最後退位置、すなわち、供給ロッドの最後退位置に被検知部材を配置するとともに、センサーを進退出力式電動モータの最前進位置、すなわち、供給ロッドの最前進位置にセンサーを配置することができる。よって、供給ロッドの最大進退長さの範囲内において、供給ロッドの必要な進出長さに適応させて、進退出力式電動モータの進退長さをエンコーダなどで選定して、周辺のスペース環境によって供給ロッドの進出長さが種々変化しても、柔軟に対応することができる。
【0021】
供給ロッドを進退させるために、エアシリンダのような進退駆動手段が一般的に使用されているが、ここでえられる進退長さの長短は、エアシリンダの最進出位置と最後退位置によって求められる一つだけであるため、供給ロッドの進退長さも限定されたものとなる。それに換えて、進退出力式電動モータであれば、進退長さを微小な領域において変更することができ、供給ロッドの動作の多様化において好都合である。そして、選ばれた供給ロッドの進退長さに応じたセンサーの機能を発揮させることができ、プロジェクションナットの供給信頼性の向上にとって有効である。
【0022】
本発明は、プロジェクションナットの供給装置であるが、後述の供給動作に注目した方法発明として存在させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】装置全体の断面図と部分箇所の断面図である。
図2】延長部材の変形例を示す断面図である。
図3】センサーの固定構造の変形例を示す断面図である。
図4】装置の動作状態を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のプロジェクションナットの供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例0025】
図1図4は、本発明の実施例を示す。
【0026】
供給装置全体は符号100で示され、図1に示すように、傾斜姿勢で配置してある。
【0027】
最初に、プロジェクションナットについて説明する。
【0028】
鉄製のプロジェクションナット1は、図1(A)に示すように、正方形の四角いナット本体2の中央部にねじ孔3が形成されたもので、片側の四隅に溶着用突起4が設けられている。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0029】
つぎに、プロジェクションナットの位置決めについて説明する。
【0030】
パーツフィーダ5から伸びてきている部品供給管6と、供給ロッド7のガイド管8が直交した状態で結合してあり、ナット1の位置決めをするガイド板9がガイド管8の端部に固定してある。部品供給管6、ガイド管8およびガイド板9によって仮止室10が構成されている。供給ロッド7が進出する側の仮止室10に、出口開口11が形成してある。ガイド板9に取り付けた永久磁石12によってナット1が仮止室10に引き込まれて、永久磁石12の吸引力で位置決めがなされる。位置決めは、ねじ孔3の中心線が供給ロッド7の中心軸線O-Oと同軸となるように行われる。
【0031】
部品供給管6とガイド管8の結合は、ボルト付けでもよいが、ここでは溶接が採用されている。本実施例の各図において、黒く塗り潰されている箇所は、溶接されていることを示している。
【0032】
ガイド管8の外周面に平面13が形成され、ここにガイド板9を押し付けて固定がなされている。押し付け部材14がガイド管8に溶接され、固定ボルト15を押し付け部材14にねじ込んで、ガイド板9が平面13に押し付けられている。なお、パーツフィーダ5の出口部分に矢線16で示した搬送空気を吹き込んで、ナット1を仮止室10へ送り込むようになっている。
【0033】
つぎに、供給ロッドについて説明する。
【0034】
供給装置の機枠などで構成された静止部材17に細長い基板18が結合され、基板18の端部に固定したブロック状あるいは厚板状の支持部材19に、供給ロッド7が進退可能な状態で支持されている。供給ロッド7の基本構造は、中空状の主ロッド20にガイドロッド21が挿入された状態でとされている。ガイドロッド21は供給ロッド7の進出で、仮止室10に位置決めされているナット1のねじ孔3を貫通するようになっている。固定電極23上に鋼板部品24が載置され、ガイドピン25が鋼板部品24に開けられた下孔を貫通して突出している。
【0035】
供給ロッド7が進出して、ガイドロッド21がナット1のねじ孔3を貫通し、主ロッド20の下端に設けた押出し面26がナット1の上面に当たると、ナット1は進出したガイドロッド21を滑降し、2点鎖線図示のようにガイドピン25側へ移載される。
【0036】
主ロッド20の中空管部27内に、圧縮コイルスプリング28が組み込んである。圧縮コイルスプリング28の上端は、中空管部27の内端面に受け止められ、圧縮コイルスプリング28の下端は、ガイドロッド21に固定したフランジ29に受け止められている。また、支持部材19に設けたガイド孔30を、主ロッド20が摺動可能な状態で貫通している。圧縮コイルスプリング28の張力によって、フランジ29が下側の中空管部27の内端面に押し付けられている。
【0037】
中空管部27以外の箇所では、ガイドロッド21が摺動可能な状態で主ロッド20を貫通している。
【0038】
つぎに、延長部材について説明する。
【0039】
延長部材42は、ガイドロッド21自体の延長またはガイドロッド21に一体化された接合部材43(図2参照)によって、主ロッド20の進出方向とは逆方向に延び出た状態で構成されている。
【0040】
ガイドロッド21自体を延長する場合は、ガイドロッド21を主ロッド20の端部から突き出させて、その突き出た部分44が延長部材42を構成している。延長長さは符号L1で示されている。
【0041】
図2に示すように、延長部材42をガイドロッド21に一体化された接合部材43によって構成する場合は、主ロッド20の端部から突き出たガイドロッド21にL字型の接合部材43を結合する。この結合の仕方としては、溶接やボルト付けなど種々なものが採用できる。ここでは、ボルト・ナット式である。すなわち、ガイドロッド21の端部にボルト45を形成して主ロッド20の端部から突出させ、このボルト45を接合部材43に貫通し、固定ナット46で締め付けてある。このようにして符号L1で示された延長長さが確保されている。
【0042】
つぎに、供給ロッドの進退駆動について説明する。
【0043】
供給ロッド7の進退動作は、進退長さを自由に選定できる進退出力式電動モータで行う。進退出力式電動モータとしては、ラックピニオン機構を回転出力式モータで進退させるもの、スクリューシャフトを回転させて進退動作をさせるものなど種々なものが採用できる。
【0044】
基板18に進退出力式電動モータ33が取り付けてある。進退出力式電動モータ33は、電動モータ34と、電動モータ34によって回転するスクリューシャフト35と、筒部材36と、内部の鋼球38などによって構成されている。スクリューシャフト35は、供給ロッド7の中心軸線O-Oと平行になっている。
【0045】
図1(A)や(D)に示すように、スクリューシャフト35には螺旋溝37が形成してあり、ここに多数の鋼球38が受け入れられている。スクリューシャフト35が貫通している筒部材36の内面に螺旋溝39が形成してあり、両螺旋溝37と39の両方に鋼球38が嵌まり込んでいる。したがって、スクリューシャフト35が回転すると、筒部材36が中心軸線O-O方向に進退する。なお、スクリューシャフト35の下端部は、回転可能な状態で支柱部材19に支持されている。
【0046】
筒部材36の進退動作を供給ロッド7に伝えるために、進退出力部材40が設けてある。この進退出力部材40は、主ロッド20と筒部材36を結合する部材である。この部材40に換えて、主ロッド20を直接筒部材36に結合し、筒部材36自体を進退出力部材40とすることも可能である。
【0047】
進退出力式電動モータ33の進退長さ、すなわち、供給ロッド7の進退長さは、電動モータ34に所定の回転数の回転を行わせて、所定の進退長さを求めるものが一般的に採用されており、本実施例においてはエンコーダ47を活用している。
【0048】
つぎに、被検知部材について説明する。
【0049】
鉄製の被検知部材48は、板状部材、棒状部材など種々な形状で機能させることができる。ここでは、直方体型の部材で構成され、ガイドロッド21の最後端に溶接してある。図2に示した接合部材43の場合は、ほぼ立方体型の部材で構成されている。被検知部材48の被検知面49が後述のセンサー51に対面すると、供給ロッド7が所定位置に進出したことが検出される。
【0050】
つぎに、センサーについて説明する。
【0051】
センサー51としては、種々なものが採用できるが、ここでは被検知部材48が磁界内に進入してきたことを検知する、近接スイッチのタイプである。図1(A)や(C)に示すように、供給ロッド7が所定長さにわたって進出して、被検知部材48の被検知面49がセンサー51に対面すると、センサー51から供給ロッド7の正常進出状態が検知され、その信号が信号線61を経て、制御装置(図示していない)に入力され、可動電極の進出が許可される。
【0052】
つぎに、センサーの位置調整構造について説明する。
【0053】
センサー51は、それ自体の移動により、供給ロッド7の進出長さに適合させて、ガイドロッド21が異物と干渉したことを検出するものなので、センサー51の位置調整は、中心軸線O-Oと平行な方向に移動して行う。電動モータ34にボルト付けなどで固定したブラケット部材52の端部と支柱部材19の端部の間に長尺な調整ガイド部材53を掛け渡してある。ここでの調整ガイド部材53は、細長い板材で作られている。各端部の固定は、それぞれ固定ボルト54、55によって行われている。長尺な調整ガイド部材53は、供給ロッド7の中心軸線O-Oと平行になっている。
【0054】
供給ロッド7を最後退させて長時間にわたって停止しておくと、供給ロッド7の自重でスクリューシャフト35を回転させて供給ロッド7が下降する恐れがある。これの対策として、永久磁石69をブラケット部材52に固定し、被検知部材48を上方へ引きつけるようにしている。
【0055】
図1(B)や(C)に示すように、調整ガイド部材53は、長尺部材53aと53bを平行にならべて、その間に細長い移動空間56が形成されている。図1(C)に鎖線で示すように、センサー素子57がボルト58の先端近くに埋設され、ボルト58と一体のフランジ59と固定ナット60の間に長尺部材53aと53bが挟み付けられるようになっている。この固定ナット60を緩めてセンサー51を移動空間56に沿って移動し、所定の箇所で固定ナット60を締め付ける。
【0056】
図3は、別タイプのセンサーの位置調整構造である。前述の調整ガイド部材53に相当する断面円形の棒材62が、中心軸線O-Oと平行な状態でブラケット部材52と支持部材19に固定されている。直方体型のクランプ部材63に通孔64が開けられ、そこを棒材62が貫通している。クランプ部材63にセンサー51が固定されている。クランプ部材63に通孔64に達する割り溝65が形成され、締め付けボルト66を割り溝65の箇所にねじ込んで、通孔64の内面で棒材62を締め付けて、クランプ部材63が棒材62にしっかりと固定される。
【0057】
締め付けボルト66を緩めて、クランプ部材63を棒材62に沿って移動させ、所定の箇所で締め付けボルト66を締め付けて、センサー51の位置調整が行われる。
【0058】
上記の調整ガイド部材53や棒材62は、ブラケット部材52と支柱部材19の間に架設された、長尺な静止部材に相当している。
【0059】
つぎに、装置の作動について説明する。
【0060】
後述の作動は、作業者が操作する起動スイッチ、起動スイッチからの信号、被検知部材とセンサーの向き合いによって発せられる信号、ガイドロッドが異物に干渉して被検知部材とセンサーの間の相対位置がずれたことによる信号などを、シーケンス回路または簡単なコンピュータ装置から構成された制御装置に入力し、そこで処理された信号によって可動電極の進出を行わせたり、禁止したりする。
【0061】
図4(A)は、スクリューシャフト35の回転によって筒部材36が最後退した、進退出力式電動モータ33の最後退状態を示している。これにともなって、供給ロッド7も最後退位置に置かれている。ここでの供給ロッド7の進出長さは、エンコーダ47の設定値によって最長長さに設定してあり、被検知部材48とセンサー51間の距離L2は最大長さとされている。これとともにガイドロッド21の先端と固定電極23のガイドピン25の間の距離も、上記L2同じになっている。
【0062】
次いで、進退出力式電動モータ33の動作で供給ロッド7が進出してガイドロッド21の先端部がガイドピン25の直前で停止し、ナット1はガイドロッド21を滑降してガイドピン25に嵌め合わされる。このストロークが異物との干渉のない正常なものであり、供給ロッド7の停止時には、2点鎖線で示すように、被検知部材48はセンサー51と対面しており、これによって発信された信号によって可動電極の進出がなされる。
【0063】
ナット1の供給が正常になされると、装置は逆動作をして、つぎのナット供給に備える。
【0064】
図4(B)は、上記L2に相当する距離を短くしたものであり、供給ロッド7は正常に進出して、被検知部材48がセンサー51に対面している状態である。図4(B)においては、供給ロッド7が最後退位置にあるときの、被検知部材48とセンサー51の間の距離L3は、前記のL2よりも短くなっている。これは、エンコーダ47の設定値と、センサー51の固定位置を選定して、定められている。
【0065】
図4(C)は、作業者の指67がガイドロッド21とガイドピン25の間に挟まれた状態である。このようにガイドロッド21の先端が指に突き当たって停止し、他方、主ロッド20が進出するので、圧縮コイルスプリング28は圧縮される。すなわち、主ロッド20とガイドロッド21の間に相対変位L4が形成される。このように供給ロッド7が所定長さの進出をした場合には、センサー51から何の信号も発信されない。このようなときの検知の仕方としては、主ロッド20が所定ストロークを完了してから、センサー51の信号が一定の時間後になっても発信されないことを、制御装置においてタイマースイッチなどで検知し、この検知信号をトリガー信号にして、可動電極68の進出を禁止し、指67が可動電極68で挟み付けられるといった、最悪の事態が回避される。
【0066】
なお、図示していないが、スパナやプライヤなどのハンド工具が指67のように挟みつけられた場合であっても、同様な検知動作が行われる。
【0067】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0068】
進退出力式電動モータ33によって進退長さが設定された供給ロッド7において、作業者の手67やハンド工具などの異物がガイドロッド21の先端部に挟まれるような事態が発生したときには、供給ロッド7の進退長さがどのような長さに設定されていても、大けがに到らないような措置が必要である。そのためには、上記異物がガイドロッド21の先端部に挟まれたことを、確実に検出して大事に到らないようにしなければならない。とくに、供給ロッド7の進退長さが長く設定されているときにおいて、この点は重要である。
【0069】
供給ロッド7は、中空状の主ロッド20にガイドロッド21が挿入された状態が基本構造とされているため、供給ロッド7の最後端である主ロッド20の最後端位置に被検知部材48を取り付けた場合であれば、供給ロッド7の進退方向で見た、被検知部材48とセンサー51間の距離が、十分に確保できないこととなる。
【0070】
本実施例においては、ガイドロッド21自体の延長またはガイドロッド21に一体化された接合部材43によって、主ロッド20の進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材42が形成され、この延長部材42に被検知部材48が取り付けられている。したがって、供給ロッド7の進退長さが大幅に長くなっている場合であっても、それに応じた延長部材42の長さL1をガイドロッド21に加算した形となり、供給ロッド7の長距離進退において異物挟み込みが生じても、それを確実に検知して、電極の進出禁止など、大事に到らないようにすることができる。そして、上記の被検知部材48とセンサー51間の距離が、十分に確保できるようになる。
【0071】
エンコーダ47などによって、進退出力式電動モータ33の進退距離を長短複数の距離を精密に求めることができる。これにともなって、供給ロッド7の進退も連動したものとなる。したがって、近隣のスペース環境などに適応させて、供給ロッド7の進退距離を自由にかつ正確に選定することができる。このようにして選定された供給ロッド7の進出距離毎に、異物挟み込みを確実に検出し、電極の進出禁止など、大事に到らないようにすることができる。
【0072】
プロジェクションナット1が溶接される鋼板部品24の形状などによっては、供給ロッド7の進退長さを著しく長く設定する必要がある。このような場合、本実施例においては、主ロッド20の進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材42が採用されているので、検知性能を損なうことなく、供給ロッド7の長尺化が実現する。
【0073】
被検知部材48は、延長部材42に取り付けられているので、被検知部材48を供給ロッド7の最後退位置に存在させることができ、また、センサー51は、供給ロッド7の進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材53、62の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成されているので、センサー51を供給ロッド7の最前進位置に存在させることができる。このような被検知部材48の前記最後退位置と、センサー51の前記最前進位置の最大間隔L2を供給ロッド7の進退長さと合致させることにより、エンコーダ47などで選定された進退出力式電動モータ33の進退長さに適合したセンサー51の固定位置を定めて、供給ロッド7の進出長さ毎に作業者の手67やハンド工具の介入などに適確に対処することができる。
【0074】
換言すると、供給ロッド7の進出長さは、スペース事情などを勘案して種々な長さに定められるが、供給ロッド7の進出長さ毎にセンサー51の固定箇所が選定されるので、供給ロッド7の進退長さに適応した安全構造が常に確保できる。
【0075】
被検知部材48の進退長さの範囲を供給ロッド7の最大進退長さL2と同じにすることができる。供給ロッド7の最大進退長さL2と同じか、またはそれよりも短い長さ範囲において、エンコーダ47などで供給ロッド7の進出長さが精緻に求められる。そして、求められた供給ロッド7の進出長さに適応させてセンサー51の固定位置が選定される。したがって、供給ロッド7の進出長さをエンコーダ47などで正確に設定することが簡単に実施でき、合わせて、供給ロッド7が作業者の手67やハンド工具などに突き当たった場合には、設定された供給ロッド7の進出長さ毎に、確実に異常を検出することができる。
【0076】
被検知部材48は延長部材42に取り付けられているので、被検知部材48を供給ロッド7の最後退位置に存在させることができ、被検知部材48の検知長さ範囲を十分に拡大することができる。このため、供給ロッド7の進退長さを長くして、遠方の目的箇所へプロジェクションナット1を供給することが行いやすくなる。
【0077】
センサー51は、供給ロッド7の進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材53、62の任意の位置に固定できるようにその固定構造が構成されている。したがって、センサー51の固定位置は、供給ロッド7の最大進退長さの範囲内であれば、供給ロッド7の進退長さの長短に応じて、どこにでも設定できる。したがって、供給ロッド7の進退長さ毎に、供給ロッド7の進出位置が正常かどうかの判別が確実になされる。
【0078】
進退出力式電動モータ33によって進退する進退出力部材40が主ロッド20に結合され、ガイドロッド21自体の延長またはガイドロッド21に一体化された接合部材43によって、主ロッド20の進出方向とは逆方向に延び出た状態の延長部材42が形成され、延長部材42にセンサー51によって検知される被検知部材48が取り付けられ、センサー51は、進退出力式電動モータ33の進退動作方向に沿った任意の位置に固定できるよう、供給ロッド7の進退動作方向に沿って配置された長尺な静止部材53、62の任意の位置に固定する固定構造とされている。したがって、長尺な静止部材53、62を、スライド隙間(移動空間56)を有する真っ直ぐで細長い板材(53a、53b)や、真っ直ぐで細長い棒材62などで構成することができ、調整位置を簡単にしかも確実に求めることができる。
【0079】
周辺のスペース環境などによって供給ロッド7の進出長さが種々変化するが、エンコーダ47などの動作設定手段を用いて進退出力式電動モータ33による供給ロッド7の進退長さが自由に設定される。このようにして設定された供給ロッド7の進出長さに対応する箇所にセンサー51を固定することにより、供給ロッド7が正常に進出すると、延長部材42に取り付けられた被検知部材48がセンサー51と向かい合った位置に停止し、プロジェクションナット1が固定電極23へ正しく供給されたことが、センサー51からの信号によって確認される。
【0080】
作業者の手67やハンド工具などの異物にガイドロッド21の先端部が突き当たることによって、ガイドロッド21と主ロッド20の間に生じる異常な相対変位L4を、センサー51によって検出する。この異常な相対変位L4を検出することによって、可動電極68の進出動作を禁止することができ、安全性確保がなされる。
【0081】
進退出力式電動モータ33の最後退位置、すなわち、供給ロッド7の最後退位置に被検知部材48を配置するとともに、センサー51を進退出力式電動モータ33の最前進位置、すなわち、供給ロッド7の最前進位置にセンサー51を配置することができる。よって、供給ロッド7の最大進退長さの範囲内において、供給ロッド7の必要な進出長さに適応させて、進退出力式電動モータ33の進退長さをエンコーダ47などで選定して、周辺のスペース環境によって供給ロッド7の進出長さが種々変化しても、柔軟に対応することができる。
【0082】
供給ロッド7を進退させるために、エアシリンダのような進退駆動手段が一般的に使用されているが、ここでえられる進退長さの長短は、エアシリンダの最進出位置と最後退位置によって求められる一つだけであるため、供給ロッド7の進退長さも限定されたものとなる。それに換えて、進退出力式電動モータ33であれば、進退長さを微小な領域において変更することができ、供給ロッド7の動作の多様化において好都合である。そして、選ばれた供給ロッド7の進退長さに応じたセンサー51の機能を発揮させることができ、プロジェクションナット1の供給信頼性の向上にとって有効である。
【0083】
基板18の両端に配置されたブラケット部材52と、支持部材19の間に、進退出力式電動モータ33と供給ロッド7と調整ガイド部材53、62が平行な状態で配置してある。したがって、進退出力式電動モータ33、供給ロッド7、調整ガイド部材53、62の主要3部材がコンパクトに配置され、装置の小型化にとって有効である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
上述のように、本発明の装置によれば、安全対応構造を、進退出力式電動モータによって設定された供給ロッドの全進退ストローク域の任意の箇所において機能させる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 プロジェクションナット
2 ナット本体
3 ねじ孔
4 溶着用突起
6 部品供給管
7 供給ロッド
8 ガイド管
10 仮止室
18 基板
19 支柱部材
20 主ロッド
21 ガイドロッド
23 固定電極
24 鋼板部品
25 ガイドピン
27 中空管部
28 圧縮コイルスプリング
33 進退出力式電動モータ
34 電動モータ
35 スクリューシャフト
36 筒部材
37 螺旋溝
38 鋼球
39 螺旋溝
40 進退出力部材
42 延長部材
43 接合部材
44 突き出た部分
47 エンコーダ
48 被検知部材
49 検知端面
51 センサー
53 調整ガイド部材
53a 長尺部材
53b 長尺部材
57 センサー素子
62 棒材
63 クランプ部材
67 指
68 可動電極
100 供給装置
O-O 供給ロッドの中心軸線
L1 延長長さ
L2 被検知部材とセンサー間の最大間隔
L3 被検知部材とセンサー間の短縮された長さ
L4 相対変位の長さ
図1
図2
図3
図4