(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084660
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】A/Dコンバータの試験装置および試験方法
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20230612BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H03M1/10 C
G01R31/28 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158679
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021198642
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢央
【テーマコード(参考)】
2G132
5J022
【Fターム(参考)】
2G132AA11
2G132AB02
2G132AD01
2G132AE06
2G132AE23
2G132AG03
2G132AL11
5J022AA01
5J022AC04
(57)【要約】
【課題】改善された正弦波ヒストグラム法を提供する。
【解決手段】A/Dコンバータ20を有する半導体デバイス10の試験方法において、A/Dコンバータ20に、正弦波のアナログテスト信号S1を供給する。アナログテスト信号S1に応答して、A/Dコンバータ20が正弦波の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群S2を保存する。保存された出力コードの群S2のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータ20を評価する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験装置であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tを有するアナログテスト信号を供給する波形発生器と、
前記アナログテスト信号に応答して前記A/Dコンバータが前記周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、
前記波形取得部が保存した前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価する評価装置と、
を備える、試験装置。
【請求項2】
前記整数Kは素数である、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項4】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項5】
前記評価装置は、前記正弦波のオフセットがqであるとき、x<j<yを満たすコードjとその度数P[j]を利用して、
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
にもとづいて、前記正弦波の振幅pを計算する、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項6】
前記評価装置は、異なる複数のコードjについて振幅pを算出し、複数の振幅pを平均する、請求項5に記載の試験装置。
【請求項7】
前記整数Kは、前記ヒストグラムの非ゼロの最低度数が10以上となるように定められる、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項8】
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の3次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt)+Vofs
Aは振幅
ωは角周波数
Vofsはオフセット
で表される、請求項1または2に記載の試験装置。
【請求項9】
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の5次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt+1/25×sin5ωt)+Vofs
で表される、請求項8に記載の試験装置。
【請求項10】
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験装置であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期的なアナログテスト信号を供給する波形発生器と、
前記アナログテスト信号に応答して、前記A/Dコンバータが前記アナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、
前記波形取得部が取得した前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価する評価装置と、
を備え、
i番目のコードをC[i]、その度数をP[i]と表すとき、前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、試験装置。
【請求項11】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項10に記載の試験装置。
【請求項12】
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tを有するアナログテスト信号を供給するステップと、
前記アナログテスト信号に応答して、前記A/Dコンバータが前記周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、
保存された前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価するステップと、
を備える、試験方法。
【請求項13】
前記整数Kは素数である、請求項12に記載の試験方法。
【請求項14】
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の3次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt)+Vofs
Aは振幅
ωは角周波数
Vofsはオフセット
で表される、請求項12または13に記載の試験方法。
【請求項15】
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の5次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt+1/25×sin5ωt)+Vofs
で表される、請求項14に記載の試験方法。
【請求項16】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項12または13に記載の試験方法。
【請求項17】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項12または13に記載の試験方法。
【請求項18】
前記評価するステップは、前記正弦波のオフセットがqであるとき、x<j<yを満たすコードjとその度数P[j]を利用して、
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
にもとづいて、前記正弦波の振幅pを計算する、請求項12または13に記載の試験方法。
【請求項19】
前記評価するステップは、異なる複数のコードjについて振幅pを算出し、複数の振幅pを平均する、請求項18に記載の試験方法。
【請求項20】
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期的なアナログテスト信号を供給するステップと、
前記アナログテスト信号に応答して前記A/Dコンバータが、前記アナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、
保存された前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価するステップと、
を備え、
コードiの度数をP[i]と表すとき、前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、試験方法。
【請求項21】
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、請求項20に記載の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/Dコンバータの評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル信号処理を行うシステムにおけるキーデバイスのひとつとしてA/Dコンバータがある。A/Dコンバータの性能を表す指標として、微分非直線性誤差(DNL:Differential Non-Linearity)や積分非直線性誤差(INL:Integral Non-Linearity)が知られている。
【0003】
A/Dコンバータあるいはそれを組み込んだチップやシステムは、出荷前に検査する必要がある。一般的には、A/Dコンバータの入力に、全コードを横切るスイープ波形を有するアナログテスト信号を入力し、それに対する出力の応答が測定される。ここで、測定に要する時間は、コードの総数とサンプリング時間の積に比例する。
【0004】
A/Dコンバータの試験に用いるアナログテスト信号としては、直線状に変化するリニアランプ波形が用いられる。A/Dコンバータには、サンプリングレートが非常に遅いものがある。たとえばΔΣ変調器を用いたA/Dコンバータには、サンプリングレートが数sps(sample per second)程度のものがある。たとえば、サンプリングレートが6.8sps、24ビットのA/Dコンバータを全コード試験するためには、685時間もの時間が必要となり、現実的ではない。
【0005】
A/Dコンバータの評価方法として、正弦波ヒストグラム法が知られている。これは、正弦波のアナログテスト信号をA/Dコンバータに入力し、それに応答して得られる出力コードの群のヒストグラムにもとづいて、DNLやINLを評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示のある態様は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、改善された正弦波ヒストグラム法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある態様の試験装置は、A/Dコンバータを有する半導体デバイスを試験する。試験装置は、A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tのアナログテスト信号を供給する波形発生器と、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータが周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、波形取得部が保存した出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価する評価装置と、を備える。
【0009】
本開示の別の態様もまた、A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験装置である。試験装置は、A/Dコンバータに、周期的なアナログテスト信号を供給する波形発生器と、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータがアナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、波形取得部が保存した出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価する評価装置と、を備える。あるコードiの度数をP[i]と表すとき、評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]>P[y]であるとき、ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、xとzの中点を、正弦波のオフセットqとする。
【0010】
本開示のさらに別の態様は、A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法である。試験方法は、A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tのアナログテスト信号を供給するステップと、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータがアナログテスト信号の周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価するステップと、を備える。
【0011】
本開示のさらに別の態様も、A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法である。試験方法は、A/Dコンバータに、周期的なアナログテスト信号を供給するステップと、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータがアナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、保存された出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価するステップと、を備える。あるコードiの度数をP[i]と表すとする。評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]>P[y]であるとき、ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、xとzの中点を、正弦波のオフセットqとする。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0013】
本開示のある態様によれば、改善された正弦波ヒストグラム法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る試験装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の試験装置によるA/Dコンバータの試験を説明する図である。
【
図4】
図4は、
図3の正弦波の振幅確率密度関数p(V)を示す図である。
【
図5】
図5は、正弦波とヒストグラムの関係を示す図である。
【
図6】
図6は、ヒストグラム、DNL、INLのシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】
図7は、A/DコンバータのフルスケールFSとアナログテスト信号の電圧レベルの関係を示す図である。
【
図8】
図8は、非理想条件において得られるヒストグラムを示す図である。
【
図9】
図9は、別の非理想条件において得られるヒストグラムを示す図である。
【
図10】
図10は、周期数Kを1050、1049としたときに得られるヒストグラムを示す図である。
【
図11】
図11は、周期数Kを1049,1050としたときの、理論上のDNLおよびINLを示す図である。
【
図12】
図12は、周期数Kを1051,1052としたときの、理論上のDNLおよびINLを示す図である。
【
図13】
図13は、基本波のみを含むアナログテスト信号V(t)、基本波および3次高調波を含むアナログテスト信号V’(t)、基本波、3次高調波および5次高調波を含むアナログテスト信号V(t)’’の波形図である。
【
図14】
図14は、アナログテスト信号V(t),V’(t),V’’(t)に対応するヒストグラムである。
【
図15】
図15は、アナログテスト信号V(t),V’(t),V’’(t)に対応するヒストグラムである。
【
図16】
図16は、アナログテスト信号V’’(t)を生成する波形発生器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0016】
一実施形態に係る試験装置は、A/Dコンバータを有する半導体デバイスを試験する。試験装置は、A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tのアナログテスト信号を供給する波形発生器と、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータが周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、波形取得部が保存した出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価する評価装置と、を備える。
【0017】
A/Dコンバータの出力コードを、丁度、正弦波の整数周期数Kにわたって取り込むことにより、正弦波の周波数を考慮する必要がなくなり、正弦波の累積確率密度の計算式を簡素化できる。
【0018】
一実施形態において、整数Kは素数であってもよい。周期数Kを素数とすることで、コード間のヒストグラムのばらつきをおおきく低減できる。
【0019】
一実施形態において、あるコードiの度数をP[i]と表すとき、評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]>P[y]であるとき、ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、xとzの中点を、正弦波のオフセットqとしてもよい。ヒストグラムの中央付近の度数が最低をとるコードをオフセットとする場合に比べて、正確なオフセットを取得できる。
【0020】
一実施形態において、あるコードiの度数をP[i]と表すとき、評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]<P[y]であるとき、ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、zとyの中点を、正弦波のオフセットqとしてもよい。ヒストグラムの中央付近の度数が最低をとるコードをオフセットとする場合に比べて、正確なオフセットを取得できる。
【0021】
一実施形態において、評価装置は、正弦波のオフセットがqであるとき、x<j<yを満たすコードjとその度数P[j]を利用して、
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
にもとづいて、正弦波の振幅pを計算してもよい。これにより、振幅pを正確に検出できる。
【0022】
一実施形態において、評価装置は、異なる複数のコードjについて振幅pを算出し、複数の振幅pを平均してもよい。
【0023】
一実施形態において、周期数Kは、ヒストグラムの非ゼロの最低度数が10以上となるように定められてもよい。
【0024】
一実施形態に係る試験装置は、A/Dコンバータに、周期的なアナログテスト信号を供給する波形発生器と、アナログテスト信号に応答してA/Dコンバータがアナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、波形取得部が保存した出力コードの群のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータを評価する評価装置と、を備える。あるコードiの度数をP[i]と表すとき、評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]>P[y]であるとき、ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、xとzの中点を、正弦波のオフセットqとする。
【0025】
一実施形態において、あるコードiの度数をP[i]と表すとき、評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、P[x]<P[y]であるとき、ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、zとyの中点を、正弦波のオフセットqとしてもよい。
【0026】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
図1は、実施の形態に係る試験装置100のブロック図である。試験装置100は、半導体デバイス(DUT:Device Under Test)10を試験する。
【0030】
DUT10は、A/Dコンバータ20を備える。DUT10の種類は限定されないが、たとえばセンサ用の出力をデジタル信号に変換するフロントエンド回路であってもよい。センサとしては、熱電対、サーミスタ、RTD(測温抵抗体)などが例示される。
【0031】
波形発生器110は、A/Dコンバータ20に周期的なアナログテスト信号S1を供給する。波形発生器110は、波形データを保持する波形テーブルと、波形データから読み出したデータをアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、D/Aコンバータの出力の高周波成分を除去するローパスフィルタを含んでもよい。本実施形態において、アナログテスト信号S1は正弦波である。
【0032】
波形取得部120は、アナログテスト信号S1に応答してA/Dコンバータ20が発生する出力コードの群を、丁度、正弦波の整数K倍の周期にわたって保存する。
【0033】
A/Dコンバータ20のサンプリングレートがfs、正弦波の周波数がf0であるとする。このとき、波形取得部120は、N=K×fs/f0個の出力コードの群(出力コード群という)S2を保存する。
【0034】
評価装置130は、波形取得部120が保存した出力コード群S2のヒストグラムを生成し、ヒストグラムにもとづいて、A/Dコンバータ20を評価する。
【0035】
以上が試験装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図2は、
図1の試験装置100によるA/Dコンバータ20の試験を説明する図である。
図2には、K=4、すなわち正弦波の4周期分の期間T=1/f
0×4にわたって波形を取り込む場合が示される。サンプリングタイミングごとに、正弦波のアナログテスト信号S1がサンプリングされ、デジタルのコードに変換される。4周期分のコードが、出力コード群S2として保存される。
【0036】
図3は、正弦波を示す図である。角周波数ω、振幅A、DCレベル(オフセット)がV
OFSである正弦波を考える。
V(t)=Asinωt+V
OFS …(1)
【0037】
上述のように、正弦波の周期の整数倍の期間にわたってアナログテスト信号S1をサンプリングする場合、角周波数ωを考慮する必要がなくなり、ω=2πfにおいて、周波数fを正規化して1とすることで、角周波数ωを2πとして扱うことができる。
【0038】
図4は、
図3の正弦波の振幅確率密度関数p(V)を示す図である。振幅確率密度関数p(V)は、正弦波の任意の値Vをとる確率を表す確率を表し、式(2)で表される。
p(V)=1/{π√(A
2-(V-V
OFS)
2)} …(2)
V=V
OFSのときに振幅確率密度p(V)は最小値p
MIN=1/πAをとる。
【0039】
A/Dコンバータによって、Vi(i=0,1,…)をしきい値として正弦波は離散化され、コードに変換される。ヒストグラムは統計的に有意であるとき、振幅確率密度p(V)を離散化して、サンプル数Nを乗算したものに漸近し、式(3)で表される。P[i]は、Viに対応するコードiの度数を表す。
P[i]=N×/{π√(A2-(Vi-VOFS)2)} …(3)
【0040】
図5は、正弦波とヒストグラムの関係を示す図である。ヒストグラムを統計的に有意なものとするために、最小度数P
MINが所定値Bより大きくなるように、サンプルデータ数Nを定めてもよい。
P
MIN=N×p
MIN=N/πA>B
たとえばB=10程度に定めるとよい。
【0041】
正規化するために、2A=1とすると、pMIN=2/πとなる。A/Dコンバータ20のビット数をmとするとき、ヒストグラムの中心部の理論度数はN/2m×2/πとなるから、
N/2m×2/π≧B
を満たせばよい。m=16ビットのA/Dコンバータ20を想定すると、
N/216×2/π≧B
となるから、サンプルデータ数Nは、
N≧216×π/2×B
である。B=10とすれば、
N≧1029438
を得る。
【0042】
サンプルデータ数Nは、2のべき乗である方が都合がよい。そこでπ×B=32と定めると、
N≧2m×32/2=2(m+4)
を満たせばよい。L≧4として、
N=2(m+L)
とすれば、サンプルデータ数Nを2のべき乗とし、かつ最低度数PMINを10より大きくできる。L=4としたときのサンプルデータ数Nは、
N=1048576
となる。A/Dコンバータ20のサンプリングレートが1Mspsであるとき、テストタイムTは、T=1048576/1Msps=1.048576秒で約1秒であり、十分に実用的である。
【0043】
上述のように、A/Dコンバータ20がN個のコードを生成する間に、正弦波が、丁度整数K周期分、含まれている必要がある。たとえばアナログテスト信号S1の周波数f0を1kHzの近傍とする場合を考える。テストタイムTと周波数f0の間には、
T=K/f0
の関係が成り立てばよい。
【0044】
T=1.048576、K=1050とすれば、
f=K/T=1001.35803222656Hz
とすればよい。
【0045】
図6は、ヒストグラム、DNL、INLのシミュレーション結果を示す図である。ヒストグラムからDNL、INLの計算は、公知技術を用いればよい。たとえば、ヒストグラムから、コード0からコードjまでの累積確率密度PI
jを計算し、累積確率密度PI
jからDNLおよびINLを計算することができる。
【0046】
理想的には、正弦波のアナログテスト信号は、試験対象のA/Dコンバータ20のフルスケールの範囲を変化することが望ましい。しかしながら、現実的には、A/Dコンバータ20のオフセット、アナログテスト信号S1の中心レベルVOFSのばらつき、アナログテスト信号S1の振幅Aのばらつきによって、アナログテスト信号S1の範囲は、A/Dコンバータ20のフルスケールと必ずしも一致しない。
【0047】
図7は、A/DコンバータのフルスケールFSとアナログテスト信号S1の電圧レベルの関係を示す図である。
図7の上段は、理想条件で得られるヒストグラムを示しており、
図7の下段は、非理想条件、具体的にはアナログテスト信号S1が、A/DコンバータのフルスケールFSをオーバーしているときのヒストグラムを示している。アナログテスト信号S1がフルスケールFSと不一致であると、振幅確率密度分布が、正弦波のそれからずれるため、ヒストグラムに非対称性が表れる。
【0048】
非理想条件において、正弦波のオフセットおよび振幅を計算する手法を説明する。
【0049】
図8は、非理想条件において得られるヒストグラムを示す図である。一番上は、測定で得られたヒストグラムを示す。あるコードiの度数をP
[i]と表す。16ビットのA/Dコンバータの場合、コードは16進数で0x0000~0xFFFF、10進数で0~65535をとる。
【0050】
評価装置130は、最小コードxの度数P
[x]と、最大コードyの度数P
[y]を取得する。
図8の例では、最小コードxは0であり、最大コードyは65535である。
【0051】
最小コードxの度数P[0]と最大コードyの度数P[65535]には、P[0]>P[65535]の関係が成り立っている。
【0052】
評価装置130は、ヒストグラムの区間z~yの積算値Σj=z:yP[j]がP[x]に最も近いコードzを検出する。
Σj=z:yP[j]≒P[0]
【0053】
そして、xとzの中点を、正弦波のオフセット(DCレベル)qとする。
q=(x+z)/2
【0054】
反対に、P[x]<P[y]であった場合には、ヒストグラムの区間x~zの積算値Σj=x:zP[j]が、P[y]に最も近いコードzを検出する。そして、zとyの中点を、正弦波のオフセットqとする。
q=(x+y)/2
【0055】
続いて正弦波の振幅pの算出について説明する。評価装置130は、このようにして得られたオフセットqを利用して、以下の式を利用して、正弦波の振幅pを算出する。
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
jは、ヒストグラムにおける任意のコードを選ぶことができる。たとえば、j=xとしてもよいし、yとしてもよい。
【0056】
好ましくは、評価装置130は、異なる複数のコードjについて、振幅pを算出し、複数のコードjについて得られた複数の振幅qの平均値をとってもよい。たとえばj=x(=0)と、j=y(=65535)の2点について、振幅px、py計算し、それらの平均を振幅pとしてもよい。
【0057】
検証のために、振幅p=32790、オフセットq=32757の正弦波を考える。この正弦波は、-33~66547の範囲で変化する。N=1048576であるとき、P[0]=15090、P[65534]=9218となる。このときのzは、65513となる。したがって、xとzの中点は、65513/2=32756.5となり、初めに定めたオフセットq=32757と実質的に一致する。
【0058】
またj=1について計算される振幅pの推定値p^は、32789.37であり、j=65534について計算される振幅pの推定値p^は、32790.61である。2つの振幅の推定値p^の平均値は、p’=32789.99であり、これも初めに定めた振幅p=32790と実質的に一致する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、非理想条件で試験した場合においても、ヒストグラムにもとづいて、正弦波のオフセットqおよび振幅qを正確に検出できる。
【0060】
図8の例では、正弦波が、フルスケールの最低値0と最大値65535の両方をオーバーしているが、それに限定されず、片側だけオーバーしていてもよい。
図9は、別の非理想条件において得られるヒストグラムを示す図である。この例でも、最小コードx(=0)の度数P
[x]と、最大コードy(=65535)の度数P
[y]が取得される。P
[x]<P
[y]である場合、ヒストグラムの区間x~zの積算値Σ
j=x:zP
[j]がP
[y]に最も近いコードzを検出する。そして、zとyの中点を、正弦波のオフセットqとする。
【0061】
上述のように、A/Dコンバータ20の出力コードを保存する測定期間は、正弦波の整数周期数Kにわたる時間とした。本発明者は、この周期数Kとして素数を選ぶと、測定精度が大きく改善されることを認識した。
【0062】
図10は、周期数Kを1050、1049としたときに得られるヒストグラムを示す図である。整数Kを非素数の1050とする場合、コード間の度数のばらつきは4であるのに対して、素数の1049とすることで、コード間の度数のばらつきは2となる。コード間の度数のばらつきは、DNL、INLの精度に大きく影響する。
【0063】
図11は、周期数Kを1049,1050としたときの、理論上のDNLおよびINLを示す図である。2つの比較から、素数1049を選んだときの方が、理論上のINL、DNLが小さくなる。つまり、実際のA/Dコンバータを測定したときの、DNL,INLの測定精度を改善することができる。
【0064】
図12は、周期数Kを1051,1052としたときの、理論上のDNLおよびINLを示す図である。2つの比較から、素数1051を選んだときの方が、理論上のINL、DNLが小さくなる。つまり、実際のA/Dコンバータを測定したときの、DNL,INLの測定精度を改善することができる。
【0065】
なお、
図8を参照して説明した正弦波のオフセットqおよび振幅pの推定手法は、アナログテスト信号として、任意の周期信号を用いた場合にも適用できる。
【0066】
(アナログテスト信号の修正)
実施形態では、アナログテスト信号として、
図3に示す単一周波数(モノトーン)の正弦波を用いた。正弦波の波形は、DCレベルV
OFSの近傍でもっとも傾きが急峻となるため、
図4に示す振幅確率密度関数p(V)は、DCレベルV
OFSにおいて最小値Pminをとる。この最小値Pminが大きいほど、精度が高くなり、あるいは同じ測定精度を実現するために必要な、試験時間を短縮でき、そのためには、アナログテスト信号S1のDCレベル付近での傾きを小さくすればよい。
【0067】
修正されたアナログテスト信号は、奇数次の高調波を含み、三角波に近い波形を有する。具体的には、1次と3次の高調波を含むアナログテスト信号V’(t)は、式(4)で表される。
V’(t)=A(sinωt-1/9sin3ωt)+VOFS …(4)
【0068】
1次、3次、5次の高調波を含むアナログテスト信号V’’(t)は、式(5)で表される。
V’’(t)=A(sinωt-1/9sin3ωt+1/25sin5ωt)+VOFS …(5)
【0069】
図13は、基本波のみを含むアナログテスト信号V(t)、基本波および3次高調波を含むアナログテスト信号V’(t)、基本波、3次高調波および5次高調波を含むアナログテスト信号V(t)’’の波形図である。
【0070】
図14は、アナログテスト信号V(t),V’(t),V’’(t)に対応するヒストグラムである。アナログテスト信号の周波数は、1000.40435791015Hzであり、K=1049とし、1秒間にわたり得られた1048576ポイントを、ヒストグラムで表している。
【0071】
アナログテスト信号V(t)のとき、ヒストグラムのコード32764に対する最小頻度は、10であるのに対して、アナログテスト信号V’(t)およびV’’(t)では、最小頻度は12に増えている。このことは、測定精度を20%改善できることを意味している。
【0072】
また、
図14の結果は、同じ測定精度を得るための試験時間を20%短縮できることを示唆している。
【0073】
図15は、アナログテスト信号V(t),V’(t),V’’(t)に対応するヒストグラムである。アナログテスト信号の周波数は、1000.16689316453Hzであり、K=839とし、0.8秒間にわたり得られた838860ポイントを、ヒストグラムで表している。
【0074】
図14に比べて、ポイント数が20%減っているため、アナログテスト信号V(t)のヒストグラムのコード32764に対する最小頻度は10から8へと減っている。この例では、アナログテスト信号V’(t)のヒストグラ
ムのコード32764に対する最小頻度も8に減っており、V(t)に比べて優位性はない。一方、5次高調波まで含むV’’(t)では、最小頻度は10であり、測定時間1秒で正弦波V(t)を用いた場合と同じ最小頻度が得られている。つまり、同じ測定精度を得るための試験時間を20%短縮できることが確認された。
【0075】
図16は、アナログテスト信号V’’(t)を生成する波形発生器110Aのブロック図である。波形発生器110Aは、デジタル波形発生器200、D/Aコンバータ230、ローパスフィルタ240、アナログ加算器250を備える。
【0076】
デジタル波形発生器200は、たとえばFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成することができる。サイン変調器202_1~202_3は、入力aに対する正弦Sin(a)を出力する。サイン変調器122_1には、時間ωtに対応するデジタル値が入力され、したがって、sin(ωt)を出力する。乗算器204は、時間ωtに対応するデジタル値を3倍し、サイン変調器122_2に入力する。サイン変調器122_2は、sin(3ωt)を出力する。乗算器206は、時間ωtに対応するデジタル値を5倍し、サイン変調器122_3に入力する。サイン変調器122_3は、sin(5ωt)を出力する。
【0077】
乗算器208は、サイン変調器122_2の出力であるsin(3ωt)に、係数-1/9を乗算する。乗算器210は、サイン変調器122_3の出力であるsin(5ωt)に、係数1/25を乗算する。加算器212は、サイン変調器202_1の出力sin(ωt)、乗算器208の出力-1/9・sin(3ωt)、乗算器210の出力1/25・sin(5ωt)を加算する。乗算器214は、加算器212の出力に、振幅に対応する係数Aを乗算する。
【0078】
D/Aコンバータ230は、デジタル波形発生器200の出力をアナログ電圧に変換する。ローパスフィルタ240は、アナログ電圧の出力の高周波成分を除去する。ローパスフィルタ240のカットオフ周波数は、5ωよりも高く定められる。アナログ加算器250は、ローパスフィルタ240の出力信号に、オフセット電圧Vofsを加算する。
【0079】
実施の形態は、本開示の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【0080】
(付記)
本明細書には以下の技術が開示される。
【0081】
(項目1)
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験装置であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tを有するアナログテスト信号を供給する波形発生器と、
前記アナログテスト信号に応答して前記A/Dコンバータが前記周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、
前記波形取得部が保存した前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価する評価装置と、
を備える、試験装置。
【0082】
(項目2)
前記整数Kは素数である、項目1に記載の試験装置。
【0083】
(項目3)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目1または2に記載の試験装置。
【0084】
(項目4)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目1または2に記載の試験装置。
【0085】
(項目5)
前記評価装置は、前記正弦波のオフセットがqであるとき、x<j<yを満たすコードjとその度数P[j]を利用して、
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
にもとづいて、前記正弦波の振幅pを計算する、項目1または2に記載の試験装置。
【0086】
(項目6)
前記評価装置は、異なる複数のコードjについて振幅pを算出し、複数の振幅pを平均する、項目5に記載の試験装置。
【0087】
(項目7)
前記整数Kは、前記ヒストグラムの非ゼロの最低度数が10以上となるように定められる、項目1または2に記載の試験装置。
【0088】
(項目8)
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の3次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt)+Vofs
Aは振幅
ωは角周波数
Vofsはオフセット
で表される、項目1または2に記載の試験装置。
【0089】
(項目9)
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の5次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt+1/25×sin5ωt)+Vofs
で表される、項目8に記載の試験装置。
【0090】
(項目10)
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験装置であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期的なアナログテスト信号を供給する波形発生器と、
前記アナログテスト信号に応答して、前記A/Dコンバータが前記アナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存する波形取得部と、
前記波形取得部が取得した前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価する評価装置と、
を備え、
i番目のコードをC[i]、その度数をP[i]と表すとき、前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、試験装置。
【0091】
(項目11)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価装置は、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目10に記載の試験装置。
【0092】
(項目12)
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期Tを有するアナログテスト信号を供給するステップと、
前記アナログテスト信号に応答して、前記A/Dコンバータが前記周期Tの整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、
保存された前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価するステップと、
を備える、試験方法。
【0093】
(項目13)
前記整数Kは素数である、項目12に記載の試験方法。
【0094】
(項目14)
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の3次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt)+Vofs
Aは振幅
ωは角周波数
Vofsはオフセット
で表される、項目12または13に記載の試験方法。
【0095】
(項目15)
前記アナログテスト信号は、前記正弦波の5次高調波をさらに含み、
A(sinωt-1/9×sin3ωt+1/25×sin5ωt)+Vofs
で表される、項目14に記載の試験方法。
【0096】
(項目16)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目12または13に記載の試験方法。
【0097】
(項目17)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目12または13に記載の試験方法。
【0098】
(項目18)
前記評価するステップは、前記正弦波のオフセットがqであるとき、x<j<yを満たすコードjとその度数P[j]を利用して、
p=√{(N/π・P[j])2+(j-q)2}
にもとづいて、前記正弦波の振幅pを計算する、項目12または13に記載の試験方法。
【0099】
(項目19)
前記評価するステップは、異なる複数のコードjについて振幅pを算出し、複数の振幅pを平均する、項目18に記載の試験方法。
【0100】
(項目20)
A/Dコンバータを有する半導体デバイスの試験方法であって、
前記A/Dコンバータに、正弦波を含む周期的なアナログテスト信号を供給するステップと、
前記アナログテスト信号に応答して前記A/Dコンバータが、前記アナログテスト信号の周期の整数K倍の期間にわたって発生した出力コードの群を保存するステップと、
保存された前記出力コードの群のヒストグラムを生成し、前記ヒストグラムにもとづいて、前記A/Dコンバータを評価するステップと、
を備え、
コードiの度数をP[i]と表すとき、前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]>P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間z~yの積算値がP[x]に最も近いコードzを検出し、
xとzの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、試験方法。
【0101】
(項目21)
あるコードiの度数をP[i]と表すとき、
前記評価するステップは、最小コードxの度数P[x]と、最大コードyの度数P[y]を取得し、
P[x]<P[y]であるとき、前記ヒストグラムの区間x~zの積算値がP[y]に最も近いコードzを検出し、
zとyの中点を、前記正弦波のオフセットqとする、項目20に記載の試験方法。
【符号の説明】
【0102】
20 A/Dコンバータ
100 試験装置
110 波形発生器
120 波形取得部
130 評価装置
S1 アナログテスト信号
S2 出力コード群