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特開2023-84669金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び金属支持構造を形成するための動作方法
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  • 特開-金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び金属支持構造を形成するための動作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084669
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】金属液滴吐出三次元(3D)物体プリンタ及び金属支持構造を形成するための動作方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 28/00 20060101AFI20230612BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230612BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230612BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B23K28/00 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176834
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】17/457,966
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス、ケイ.、ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】チューホン、リウ
(72)【発明者】
【氏名】シーミット、プラハラジ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン、エム.、ルフェーヴル
(72)【発明者】
【氏名】ポール、ジェイ.、マッコンビル
(72)【発明者】
【氏名】パルガット、エス.、ラメシュ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】物体のプリント後に金属支持構造をより容易に取り外すことができる三次元(3D)金属物体製造装置を提供する。
【解決手段】三次元(3D)金属物体製造装置は、溶融金属液滴が吐出されるノズルの周りに磁場を選択的に形成するための磁場発生器を装備している。磁場の存在下で吐出された液滴は、それらの液滴が吐出される際の初期速度から低減される速度を有する。低減された速度は、液滴が着地領域に衝突する前の液滴の飛行時間を増加させる。移動時間の増加により、溶融金属液滴が十分に酸化し、磁場を通過することなく吐出される液滴より少なく密に結合する。したがって、装置は、物体の部品部分により少なく密に接着する金属支持構造を形成することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属液滴吐出装置であって、
ノズルを通して溶融金属液滴を吐出するように構成された吐出器ヘッドと、
前記ノズルにおいて磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、
前記吐出器ヘッドから吐出された溶融金属液滴を受けるように位置決めされた平面部材と、
前記磁場発生器に動作可能に接続されたコントローラと、を備え、前記コントローラが、前記磁場発生器を動作させて、前記吐出された溶融金属液滴が前記平面部材で受けられる前に通過する磁場を発生させるように構成されている、金属液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吐出器ヘッドの前記ノズルの周りに巻かれた電磁コイルと、
電源と、
前記電源を前記電磁コイルに接続するように構成されたスイッチと、
前記スイッチに動作可能に接続されている前記コントローラと、を更に備え、前記コントローラが、前記スイッチを動作させて、前記電源を前記電磁コイルに選択的に接続し、前記磁場を選択的に発生させるように更に構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラが、
支持構造が前記吐出器ヘッドから吐出された前記溶融金属液滴で形成されているときに、前記スイッチを動作させて、前記電磁コイルを前記電源に接続し、
金属部品の一部分が前記吐出器ヘッドから吐出された前記溶融金属液滴で形成されているときに、前記スイッチを動作させて、前記電磁コイルを前記電源から切断するように更に構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電磁コイルが、
導電性ワイヤの複数の配置を更に備え、各配置が、導電性ワイヤのディスクを形成する導電性ワイヤの複数の同心巻きを有し、各ディスクが、前記ノズルを通る通路の外周から垂直に延び、前記配置が、前記ノズルの長さの一部分に沿って互いに平行である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
導電性ワイヤの同心巻きの各配置が、米国ワイヤゲージ規格2/0のワイヤゲージを生成する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記導電性ワイヤの同心巻きの各配置が、前記導電性ワイヤの10個の同心巻きを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の配置が、前記ノズルの10ミリメートルの長さに沿って互いに平行な導電性ワイヤの10個の配置を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記電源が、前記スイッチを介して前記電磁コイルに接続されたときに、最大220アンペアの電流を前記複数の配置に供給する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の配置によって生成される前記磁場が、約2700ガウスであり、前記平面部材と前記ノズルとの間の距離が、約10mmである、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ノズルから吐出された溶融金属液滴の移動経路に平行な方向に、前記ノズルの周りの不活性ガスの流れを生成するように構成された不活性ガスの供給源と、
前記不活性ガスの前記供給源と前記ノズルとの間のバルブと、
前記バルブに動作可能に接続されている前記コントローラと、を更に備え、
前記コントローラが、前記電磁コイルが磁場を発生させているときに、前記バルブを選択的に動作させて、前記ノズルの周りから前記不活性ガスの流れを除去するように、
更に構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
金属液滴吐出装置を動作させる方法であって、
ノズルを通して平面部材に向かって溶融金属液滴を吐出するように構成された吐出器ヘッドで形成される支持構造層の一部分を検出することと、
前記吐出された溶融金属液滴が前記平面部材で受けられる前に通過する磁場を発生させるように、磁場発生器を動作させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記支持構造層の前記検出された部分が前記吐出器ヘッドから吐出された前記溶融金属液滴で形成されているときに、前記吐出器ヘッドの前記ノズルの周りに巻かれた電磁コイルに電力を選択的に接続し、前記磁場を発生させるように構成されたスイッチを動作させること、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
金属部品の一部分が前記吐出器ヘッドから吐出された前記溶融金属液滴で形成されているときに、前記電磁コイルを前記電源から切断するように、前記スイッチを動作させること、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁コイルを電力に接続するように、前記スイッチを前記動作させることが、
電力を導電性ワイヤの複数の配置に接続することを更に含み、各配置が、導電性ワイヤのディスクを形成する導電性ワイヤの複数の同心巻きを有し、各ディスクが、前記ノズルを通る通路の外周から垂直に延び、前記配置が、前記ノズルの長さの一部分に沿って互いに平行である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
導電性ワイヤの同心巻きの各配置が、米国ワイヤゲージ規格2/0のワイヤゲージを生成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性ワイヤの同心巻きの各配置が、前記導電性ワイヤの10個の同心巻きを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の配置が、前記ノズルの10ミリメートルの長さに沿って互いに平行な導電性ワイヤの10個の配置を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
電力を前記導電性ワイヤの複数の配置に接続するように、前記スイッチを前記動作させることが、
最大220アンペアの電流を前記複数の配置に供給するように構成された電源を接続することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記磁場を前記発生させることが、
前記平面部材と前記ノズルとの間の約10mmの距離にわたって約2700ガウスの磁場強度で前記磁場を生成することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記導電性ワイヤの複数の配置が磁場を発生させていないときに、前記ノズルの周りに不活性ガスの流れを供給するように、不活性ガスの供給源に動作可能に接続されたバルブを動作させることと、
前記導電性ワイヤの複数の配置が磁場を発生させているときに、前記ノズルの周りから前記不活性ガスの流れを除去するように、前記バルブを動作させることと、
を更に含む、請求項18に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属液滴を吐出して物体を形成する三次元(three-dimensional、3D)物体プリンタを対象とし、より具体的には、かかるプリンタによって物体を形成するために使用される吐出金属を用いた金属支持構造の形成を対象とする。
【背景技術】
【0002】
積層造形(additive manufacturing)としても知られる三次元印刷は、事実上あらゆる形状のデジタルモデルから三次元の固体物体を作製するプロセスである。多くの三次元印刷技術は、積層造形デバイスが、構築材料の液滴を吐出するか、又は構築材料をひも状に押し出して、前に堆積された層の上に部品の連続層を形成する積層プロセスを使用する。これらの技術のうちのいくつかは、フォトポリマー又はエラストマーなどのUV硬化性材料を吐出する吐出器を使用するが、他の技術は、プラスティック材料を溶融して熱可塑性材料を生成し、これを押し出して熱可塑性材料の連続層を形成する。これらの技術は、様々な形状及び特徴を有する三次元物体を構築するために使用される。この積層造形法は、ほとんどが切断又はドリル加工などの減法プロセスによる加工物からの材料の除去に依存する従来の物体形成技術と区別可能である。
【0003】
近年、3D金属物体を形成するために、1つ以上の吐出器から溶融金属の液滴を吐出するいくつかの3D物体プリンタが開発されている。これらのプリンタは、ワイヤのロール、マイクロサイズのペレット、又は金属粉末などの固体金属源を有し、固体金属は、プリンタ内の容器の加熱された収容部に供給され、そこで固体金属が溶融され、溶融された金属が収容部を充填する。収容部は、周囲に電気ワイヤが巻き付けられてコイルを形成する非導電性材料で作製されている。電流がコイルを通過して電磁場を生成し、電磁場により、収容部のノズルにおける溶融金属の液滴が収容部内の溶融金属から分離し、ノズルから推進される。プラットフォームは、コントローラがアクチュエータを動作させることによって、プラットフォームの平面に平行なX-Y平面内で移動するように構成されており、ノズルから吐出された溶融金属液滴は、プラットフォーム上に物体の金属層を形成する。コントローラは、吐出器と、形成されている金属物体の既存の層との間に一定の距離を維持するように、別のアクチュエータを動作させて吐出器又はプラットフォームの位置を変化させる。このタイプの金属液滴吐出プリンタは、磁気流体力学(magnetohydrodynamic、MHD)プリンタと呼ばれる。
【0004】
エラストマー材料を使用する3D物体印刷システムでは、追加の吐出器を使用して異なる材料の液滴を吐出し、物体の形成中に物体から離れる方向に延びるオーバーハング及び物体特徴のための支持体を形成することによって、仮の支持構造が形成される。これらの支持構造は、物体を形成する材料とは異なる材料から作製されるため、物体と十分に接着又は結合しないように設計することができる。その結果、支持構造は、それらが物体製造中に支持する物体特徴から容易に分離されて、物体の形成が完了した後、物体から取り外すことができる。そのようなものは、金属液滴吐出システムについては当てはまらない。プリンタを用いて物体を形成するために使用される溶融金属が支持構造を形成するために使用される場合、支持構造は、凝固する間に支持を必要とする物体の特徴と強く結合する。その結果、物体から支持体を取り外すために、相当な量の切削、機械加工、及び研磨が必要である。異なる金属を使用する別の金属液滴吐出プリンタを調和して働かせることは、異なる金属の熱的条件が2つのプリンタの構築環境に影響を及ぼし得るため、困難である。例えば、より高い溶融温度を有する支持構造金属は、物体を形成する金属を弱化若しくは軟化させ得るか、又は物体より低い溶融温度を有する支持金属構造は、より高い温度で溶融された金属で作製された物体特徴が支持構造に接触するときに弱化させ得る。金属液滴吐出プリンタが、金属物体オーバーハング及び他の延出する特徴を形成することを可能にする支持構造を形成することができることが有益である。
【発明の概要】
【0005】
3D金属物体プリンタを動作させる新しい方法は、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する。この方法は、ノズルを通して平面部材に向かって溶融金属液滴を吐出するように構成された吐出器ヘッドで形成される支持構造層の一部分を検出することと、吐出された溶融金属液滴が平面部材で受けられる前に通過する磁場を発生させるように、磁場発生器を動作させることと、を含む。
【0006】
新しい3D金属物体プリンタは、構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する。新しい3D金属物体プリンタは、ノズルを通して溶融金属液滴を吐出するように構成された吐出器ヘッドと、ノズルにおいて磁場を発生させるように構成された磁場発生器と、吐出器ヘッドから吐出された溶融金属液滴を受けるように位置決めされた平面部材と、磁場発生器に動作可能に接続されたコントローラと、を含み、コントローラは、磁場発生器を動作させて、吐出された溶融金属液滴が平面部材で受けられる前に通過する磁場を発生させるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する方法、及び方法を実施する3D金属物体プリンタの前述の態様及び他の特徴を、添付図面と併せて、以下の記述において説明する。
図1】構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する、新しい3D金属物体プリンタを表す。
図2】物体特徴に密に接着しない支持構造を形成するように選択的に動作される、図1に示された、3D金属物体プリンタのノズルの周りの電磁コイルを表す。
図3】溶融金属液滴の初期速度に対する、溶融金属液滴が表面に衝突する際の最終速度の比率と、吐出された溶融金属液滴の速度が明らかに変化しない参照ケースに対する飛行時間の比率のグラフである。
図4A図1の3D金属物体プリンタによって製造された部品における支持材料の形成を示す。
図4B】支持構造が取り外された後の図4Aの完成した部分を示す。
図5】構造によって支持された物体特徴に密に接着しない支持構造を形成する図1の3D金属物体プリンタを動作させるプロセスのフロー図である。
図6】物体を形成するために使用されるのと同じ金属で作製された支持構造を形成するための構成要素を含まない先行技術の3D金属プリンタのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示された3D金属物体プリンタ及びその動作、並びにプリンタ及びその動作の詳細の一般的な理解のために、図面を参照する。図面では、同様の参照番号は、同様の要素を表す。
【0009】
図6は、以前から知られている3D金属物体プリンタ100の実施形態を示しており、この3D金属物体プリンタ100は、金属物体を形成するために使用されるのと同じ溶融金属を用いても、支持構造が物体特徴に過度に密に接着することなく、支持構造を形成することができない。本文書で使用されるとき、「支持構造」という用語は、吐出器ヘッドから吐出された溶融金属液滴で形成された部品から後で取り外される、吐出器ヘッドから吐出された溶融金属液滴で作製された金属の形成を意味する。本文書で使用されるとき、「部分」という用語は、3D金属液滴吐出装置で作製された製造物体を意味する。図6のプリンタでは、溶融バルク金属の液滴が、単一ノズル108を有する取り外し可能な容器104の収容部から吐出されて、構築プラットフォーム112上に製造された物体の層を形成する。本文書で使用されるとき、「取り外し可能な容器」という用語は、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味し、コンテナは全体として、3D金属物体プリンタにおける設置及び取り外し可能に構成されている。本文書で使用されるとき、「容器」という用語は、3D物体金属プリンタに対して設置及び取り外しを行うように構成され得る、液体又は固体物質を保持するように構成された収容部を有する中空コンテナを意味する。本文書で使用されるとき、「バルク金属」という用語は、一般的に入手可能なゲージのワイヤ、マクロサイズの金属ペレット、及び金属粉末などの、凝集体形態で入手可能な導電性金属を意味する。
【0010】
図6を更に参照すると、金属ワイヤ120などのバルク金属源116が、吐出器ヘッド140内の上部ハウジング122を通って延びるワイヤガイド124に供給され、取り外し可能な容器104の収容部内で溶融されて、吐出器ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110を通ってノズル108から吐出される溶融金属を提供する。本文書で使用されるとき、「ノズル」という用語は、容器内の収容部から溶融金属液滴を排出するように構成されている、溶融金属を含む容器の収容部内の体積に流体的に接続されたオリフィスを意味する。本文書で使用されるとき、「吐出器ヘッド」という用語は、金属物体の製造のための溶融金属液滴の溶融、吐出、及び吐出の調整を行う3D金属物体プリンタのハウジング及び構成要素を意味する。溶融金属レベルセンサ184は、レーザー及び反射センサを含む。溶融金属レベルからのレーザーの反射は、反射センサによって検出され、溶融金属レベルまでの距離を示す信号を発生させる。コントローラは、この信号を受信し、取り外し可能な容器の収容部内の適切なレベル118に維持することができるように、取り外し可能な容器104内の溶融金属の体積のレベルを求める。取り外し可能な容器104がヒータ160内へと摺動し、ヒータの内径が取り外し可能な容器に接触し、取り外し可能な容器の収容部内の固体金属を、固体金属を溶融させるのに十分な温度まで加熱することが可能になる。本文書で使用されるとき、「固体金属」という用語は、元素の周期表で定義されている金属、又は液体若しくは気体ではなく固体の形態でこれらの金属によって形成される合金を意味する。ヒータは、取り外し可能な容器から分離されて、ヒータと取り外し可能な容器104との間に体積を形成する。不活性ガス供給部128は、ガス供給管132を通して吐出器ヘッドにアルゴンなどの不活性ガスの圧力調整された供給源を提供する。ガスは、ヒータと取り外し可能な容器との間の体積を通って流れ、ノズル108の周りの吐出器ヘッド及びベースプレート114内のオリフィス110から出ていく。ノズルに近接するこの不活性ガスの流れは、溶融金属の吐出された液滴をベースプレート114の周囲空気から絶縁して、吐出された液滴の飛行中に金属酸化物が形成されるのを防止する。ノズルと、吐出された金属液滴が着地する表面との間の隙間は、不活性ガス流内の液滴が着地する前に、ノズルの周りから出るこの不活性ガスが放散しない程度に意図的に十分に小さく保たれる。
【0011】
吐出器ヘッド140は、プラットフォーム112に対する吐出器ヘッドの移動に対応するように、Z軸軌道内に移動可能に装着される。1つ以上のアクチュエータ144は、吐出器ヘッドをZ軸に沿って移動させるために吐出器ヘッド140に動作可能に接続され、プラットフォームを吐出器ヘッド140の下のX-Y平面内で移動させるために、プラットフォーム112に動作可能に接続される。アクチュエータ144は、吐出器ヘッド140のベースプレート114内のオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の適切な距離を維持するように、コントローラ148によって動作される。
【0012】
溶融金属の液滴がプラットフォーム112に向かって吐出されるときに、X-Y平面内でプラットフォーム112を移動させることにより、形成される物体上に溶融金属液滴のスワスが形成される。コントローラ148はまた、アクチュエータ144を動作させ、吐出器ヘッド140と、基材上に最も近時に形成された層との間の距離を調節して、物体上の他の構造の形成を容易にする。溶融金属3D物体プリンタ100は、垂直配向で動作されるものとして図6に表されているが、他の代替配向を採用することができる。また、図6に示される実施形態は、X-Y平面内を移動するプラットフォームを有し、吐出器ヘッドがZ軸に沿って移動するが、他の配置も可能である。例えば、アクチュエータ144は、吐出器ヘッド140をX-Y平面内で、Z軸に沿って移動させるように構成されることも、又はX-Y平面及びZ軸の両方でプラットフォーム112を移動させるように構成されることもできる。
【0013】
コントローラ148は、スイッチ152を動作させる。1つのスイッチ152は、供給源156からヒータ160に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得、別のスイッチ152は、ノズル108から液滴を吐出する電場を発生させるために別の電源156からコイル164に電力を提供するようにコントローラによって選択的に動作され得る。ヒータ160は高温で大量の熱を発生させるため、コイル164は、吐出器ヘッド140の1つ(円形)又は2つ以上の壁(直線形状)によって形成されたチャンバ168内に位置決めされる。本文書で使用されるとき、「チャンバ」という用語は、3D金属物体プリンタのヒータ、コイル、及び取り外し可能な容器が位置する、金属液滴吐出プリンタ内の1つ以上の壁内に収容された体積を意味する。取り外し可能な容器104及びヒータ160は、かかるチャンバ内に位置している。チャンバは、ポンプ176を介して流体源172に流体的に接続され、また熱交換器180に流体的に接続される。本文書で使用されるとき、「流体源」という用語は、熱を吸収するのに有用な特性を有する液体のコンテナを指す。熱交換器180は、流体源172への戻りを介して接続される。供給源172からの流体は、チャンバを通って流れて、コイル164から熱を吸収し、流体は、交換器180を通して吸収された熱を搬送し、熱は、既知の方法によって除去される。冷却された流体は、適切な動作範囲内のコイルの温度を維持する際に更に使用するために、流体源172に戻される。
【0014】
3D金属物体プリンタ100のコントローラ148は、金属物体製造のためにプリンタを制御するために、外部供給源からのデータを必要とする。一般に、形成されるべき物体の三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、コントローラ148に動作可能に接続されたメモリ内に記憶される。コントローラは、サーバなどを通してデジタルデータモデルに、デジタルデータモデルが記憶されたリモートデータベースに、又はデジタルデータモデルが記憶されているコンピュータ可読媒体に、選択的にアクセスすることができる。この三次元モデル又は他のデジタルデータモデルは、プリンタ100の構成要素を動作させ、モデルに対応する金属物体を形成するために、既知の方法で、コントローラとともに実装されるスライサによって処理されて、コントローラ148による実行のためのマシン対応命令を発生させる。マシン対応命令の発生は、デバイスのCADモデルがSTLデータモデル、多角形メッシュ、又は他の中間表現に変換されるときなどの、中間モデルの生成を含むことができ、次いで、この中間モデルを処理して、プリンタによって物体を製造するためのGコードなどのマシン命令を発生させることができる。本文書で使用されるとき、「マシン対応命令」という用語は、3D金属物体付加製造システムの構成要素を動作させて、プラットフォーム112上に金属物体を形成するために、コンピュータ、マイクロプロセッサ、又はコントローラによって実行されるコンピュータ言語コマンドを意味する。コントローラ148は、マシン対応命令を実行して、ノズル108からの溶融金属液滴の吐出、プラットフォーム112の位置付け、並びにオリフィス110とプラットフォーム112上の物体の表面との間の距離の維持を制御する。
【0015】
同様の構成要素に対して同様の参照番号を使用し、形成中に物体に過度に密に接着しない金属支持構造を形成するために使用されない構成要素のいくつかを除去して、新しい3D金属物体プリンタ100’が図1に示されている。プリンタ100’は、図2に示すように、容器104のノズル108の周りに巻かれた電磁コイル204を含む。この電磁コイルは、スイッチ152のうちの1つを介して電源156に接続されている。コントローラに接続された非一時的メモリに記憶されたプログラムされた命令で構成されたコントローラ148’は、コントローラ148’が金属支持構造の形成のためにプログラムされた命令を実行するときに、スイッチ152のうちの1つを動作させて、電磁コイル204を電力に選択的に接続する。コイルが電源156に接続されると、それは磁場を生成し、吐出された溶融金属液滴は、この磁場を通過する必要がある。以下により詳細に説明されるように、溶融金属液滴に対するこの磁場の影響は、吐出された溶融金属液滴の速度を低下させるため、溶融金属液滴は着地領域に衝突する前に酸化する時間がある。これらの酸化金属液滴は、部品の凝固金属に密に結合しないか、又は互いに密に結合しない。したがって、金属支持構造を酸化金属液滴で形成することができ、それらは部品に又は互いに密に結合しないため、部品の製造完了後に金属支持構造を容易に取り外すことができる。
【0016】
図2に示すように、電磁コイル204は、プレート114を通って延びるノズル108の周りに巻かれている。一実施形態では、コイル204の総ゲージは、電源156から受け取る220アンペアまでの電流のための米国ワイヤゲージ規格(American Wire Gauge、AWG)2/0である。コイル204は、ノズル108の周りに巻かれた複数の同心巻き208で形成され、電気ワイヤのこの同心配置は、AWG2/0の全体的なワイヤゲージを形成する。この実施形態では、10個の同心配置212が、ノズル108の長さ10mmに沿って提供される。本文書で使用されるとき、「導電性ワイヤの配置」という用語は、ノズルを通る通路の外周から垂直に延びる導電性ワイヤのディスクを形成するための、吐出器ヘッドノズルの周りの導電性ワイヤの同心巻き付けを意味する。
【0017】
運動エネルギーをほとんど又は全く伴わずに、表面上に着地する溶融金属液滴は、結合強度が低下している。この低減された結合強度は、溶融金属液滴間の湿潤及び合体の有効性を低減する低い液滴速度から生じると考えられる。電磁コイル204を動作させることにより、磁場を通過する液滴の速度が低下し、それにより、液滴が互いに結合する能力が低下する。コイルを通過する電流によって生成される定常磁場は、吐出された液滴の運動に垂直である。この磁場は、液滴内の渦電流を誘発し、次いで、液滴の運動とは反対方向にローレンツ力を誘発する。このローレンツ力は、液滴の運動を減衰させるように作用し、機械的エネルギーは熱として消費される。減衰力は、液滴の速度に比例する。したがって、ノズルと液滴着地面との間の約10mmの隙間にわたる均一な磁場により、3.5m/秒の初期速度で吐出された直径500ミクロンの溶融金属液滴は、磁場強度の関数である低減した飛行の速度及び時間を有することになる。
【0018】
図3のグラフは、吐出された液滴の初期速度に対する、溶融金属液滴が表面に衝突する際の最終速度の比率と、磁気減衰を伴わない参照ケースに対する液滴の飛行時間の比率のグラフを示す。弱い結合液滴を生成するために、0.5以下の衝突速度比及び2以上の飛行時間比を標的とする。これらの値は、弱結合支持構造を形成する溶融金属液滴の衝突速度を低下させるのに適切であるように、約0.27テスラ(又は2700ガウス)の磁場強度を特定するために使用される。これらの液滴は、これらの液滴の速度が低下すると、液滴が、部品408を形成する妨害されない液滴よりも多く酸化することが可能になるため、強く結合しない。吐出された金属液滴の酸化を更に向上させるために、コントローラ148’は、入力ライン132内のバルブ134を動作させて、不活性ガス供給部128をノズル108の周りの空間から選択的に切断することができるため、不活性ガスは、溶融金属液滴の酸化を、溶融金属液滴の着地面への移動中に妨げない。
【0019】
図4Aは、部品408において弱い結合セクション404を有する複合物体400を示す。部品408は、吐出され、表面に衝突する前に磁場を通過しなかった溶融金属液滴で形成されている。セクション404は、電磁コイル204によって生成された磁場を、表面に衝突する前に通過した溶融金属液滴で形成された。記載された隙間及び初期速度について先に特定した磁界強度は、磁場に遭遇する溶融金属液滴が、磁場を通過しない液滴の2倍超酸化することを可能にする。図4Bに示されるように部品408を残してセクション404が取り外されると、部品の製造中に、最下部のセクション404が部品の開口部の下部ブリッジ412を支持していたこと、及び、開口部に充填されていたセクションがオーバーハング416を支持していたことが分かる。これらのセクション並びに穴420に充填されていたセクションは、弱く一緒に結合されているため、機械加工又は切削操作を必要とせずに部品408から取り外すことができる。
【0020】
コントローラ148’は、プログラムされた命令を実行する1つ以上の汎用又は専用のプログラマブルプロセッサを用いて実装され得る。プログラムされた機能を実施するために必要とされる命令及びデータは、プロセッサ又はコントローラに関連付けられたメモリ内に記憶され得る。プロセッサ、それらのメモリ、及びインターフェース回路は、先に説明し、並びに以下に説明される操作を実施するようにコントローラを構成する。これらの構成要素は、印刷回路カード上に提供されてもよいか、又は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)内の回路として提供されてもよい。回路の各々は、別個のプロセッサで実装され得るか、又は複数の回路は、同じプロセッサ上に実装され得る。代替的に、回路は、超大規模集積回路(very large scale integrated、VLSI)内に提供される個別の構成要素又は回路で実装することができる。また、本明細書に記載される回路は、プロセッサ、ASIC、個別の構成要素、又はVLSI回路の組み合わせで実装することができる。金属物体の形成中、製造される構造の画像データが、プラットフォーム112上に物体を形成するようにプリンタ100’の構成要素を動作させる信号を処理するため及び発生させるために、走査システム又はオンライン若しくはワークステーション接続のいずれかから、コントローラ148’のプロセッサ(単数又は複数)に送信される。
【0021】
物体特徴に弱く取り付けられる金属支持構造を形成するために3D金属物体プリンタ100’を動作させるためのプロセスが、図5に示されている。プロセスの説明において、プロセスがいくつかのタスク又は機能を実施しているという記述は、コントローラ又は汎用プロセッサが、データを動作させるために、又はプリンタ内の1つ以上の構成要素を操作してタスク若しくは機能を実施するために、コントローラ又はプロセッサに動作可能に接続された非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム命令を実行することを指す。上述したコントローラ148’は、そのようなコントローラ又はプロセッサとすることができる。代替的に、コントローラは、2つ以上のプロセッサ並びに関連する回路及び構成要素とともに実装され得、これらは各々、本明細書に記載される1つ以上のタスク又は機能を形成するように構成される。追加的に、方法の工程は、図に示される順序又は処理が記載される順序にかかわらず、任意の実行可能な時系列順序で実施され得る。
【0022】
図5は、電磁コイル204とコントローラ148’とを使用するプロセス500のフロー図であり、コントローラ148’は、金属支持構造であって、金属支持構造が支持するか又は金属支持構造が上に構築される物体特徴に弱く取り付けられる、金属支持構造を構築するために、コントローラに動作可能に接続された非一時的なメモリに記憶されたプログラムされた命令を実行するように構成されている。このプロセスは、形成される層の支持構造部分が検出される(ブロック508)までの、物体の層の部品部分を形成することを開始する(ブロック504)。コントローラは、スイッチ152のうちの1つを動作させて、コイル204を電源156に接続し、吐出器ノズルにおいて磁場を発生させる(ブロック516)。支持構造のための層の部分を形成する溶融金属液滴は、コイルによって生成された磁場を通って吐出され、そのため液滴が着地前に酸化する(ブロック520)。支持構造部分が終了すると(ブロック524)、プロセスは、層が終了したかどうかを判定し(ブロック512)、終了していなければ、部品部分の形成を継続する(ブロック504)。層が完成すると、プロセスは、物体の形成が終了したかどうかを判定し(ブロック528)、終了していなければ、別の層が形成される(ブロック504、508、516、520、及び524)。物体製造が完了すると(ブロック528)、プロセスは停止する。
【0023】
上記に開示された及び他の特徴及び機能の変形、又はそれらの代替が、望ましくは、多くの他の異なるシステム、アプリケーション、又は方法に組み合わされ得ることが理解されるであろう。以下の特許請求の範囲によって包含されることも意図される、様々な現在予見又は予期されていない代替、修正、変形、又は改善が、その後、当業者によって行われ得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6