(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084677
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】部材取付ロボット
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20230612BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230612BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
E04G21/16
B25J13/08 Z
B25J5/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186451
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021198838
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022129021
(32)【優先日】2022-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500539561
【氏名又は名称】株式会社テムザック
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡 尚人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義秀
(72)【発明者】
【氏名】手島 則夫
(72)【発明者】
【氏名】伊東 真
(72)【発明者】
【氏名】三室 恵史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】川久保 勇次
(72)【発明者】
【氏名】清水 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑典
【テーマコード(参考)】
2E174
3C707
【Fターム(参考)】
2E174CA16
2E174CA23
2E174CA26
2E174DA52
2E174DA63
3C707AS07
3C707AS21
3C707AS26
3C707CS08
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS05
3C707KT03
3C707KT05
3C707KT06
3C707KX06
3C707LT06
3C707LV04
3C707LV05
3C707LV17
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】埋設部材に棒状部材を取り付ける作業における工数を低減する。
【解決手段】天井面1に設けられた埋設部材4に棒状部材6を取り付ける部材取付ロボット100は、床面2を移動可能な台車部10と、埋設部材4への棒状部材6の取り付けを行う部材取付部24と、支持軸23を中心に部材取付部24を回動させる回動モータ22と、埋設部材4の傾きを検出可能な距離センサ51と、台車部10、部材取付部24及び回動モータ22の作動を制御する制御部50と、を備える。制御部50は、部材取付部24により保持された棒状部材6の傾きが、距離センサ51によって検出された埋設部材4の傾きと略一致するように、回動モータ22及び台車部10の少なくとも一方を作動させてから、埋設部材4に棒状部材6を取り付けるように部材取付部24を作動させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、
前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、
前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、
前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる、
部材取付ロボット。
【請求項2】
前記検出部は、前記埋設部材及び前記天井面までの距離を検出可能な距離検出部であって、
前記制御部は、
前記距離検出部により検出された前記天井面までの距離から基準傾斜角を算出し、
前記距離検出部により検出された前記埋設部材までの距離から計測傾斜角を算出し、
前記基準傾斜角と前記計測傾斜角との差分を前記埋設部材の傾きとして演算する、
請求項1に記載の部材取付ロボット。
【請求項3】
前記部材取付部は、前記棒状部材を保持する保持部と、前記保持部により保持された前記棒状部材を前記埋設部材に取り付ける操作を行う取付操作部と、を有し、
前記制御部は、傾いた前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記取付操作部を作動させた後、前記天井面に対して前記棒状部材が略垂直となるように修正するための修正荷重が、前記保持部を介して前記棒状部材に付与されるように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させる、
請求項1または2に記載の部材取付ロボット。
【請求項4】
前記部材取付ロボットの周囲を撮像可能な撮像部をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて、前記棒状部材に対して前記修正荷重を付与することが可能か否かを判定する、
請求項3に記載の部材取付ロボット。
【請求項5】
前記部材取付部は、前記埋設部材に向けて前記棒状部材をガイド可能なスリーブをさらに有し、
前記制御部は、前記埋設部材の近傍に前記スリーブが到達したと判定された後、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる、
請求項1または2に記載の部材取付ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記埋設部材への前記棒状部材の差込量に基づいて、前記棒状部材の取付けの適否を判定する、
請求項1または2に記載の部材取付ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材取付ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井面に設けられた埋設部材に対して吊りボルトを取り付ける部材取付ロボットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天井面に設けられる埋設部材が、コンクリートを打設する前に設置されるインサートである場合、デッキプレートにインサートが予め取り付けられていると、デッキプレート上にコンクリートを打設する際にコンクリートの流れによってインサートが傾くことがあり、また、合板型枠にインサートが予め取り付けられていると、型枠が変形することによってインサートが傾くことがある。また、天井面に設けられる埋設部材が、打設後のコンクリートの天井面に取り付けられるあと施工アンカーである場合、アンカーを取り付けるための孔が傾いて形成されていると、アンカーは傾いた状態となる。
【0005】
このように傾いた状態で埋設部材が天井面に設けられていると、特許文献1に記載されるような部材取付ロボットによって、吊りボルトを埋設部材に取り付けようとしても、埋設部材のネジ穴に吊りボルトを螺合させることができず、作業エラーが生じてしまったり、埋設部材のネジ穴に吊りボルトを強引に螺合させることでネジ部にかじりが生じ、吊りボルトを正常に取り付けることができなくなってしまったりすることとなる。このため、吊りボルトを埋設部材に取り付ける作業を作業員が改めて行わなければならず、結果として、作業工数が増大するおそれがある。
【0006】
本発明は、天井面に設けられた埋設部材に棒状部材を取り付ける作業における工数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、天井面に設けられた埋設部材に棒状部材を取り付ける作業における工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る部材取付ロボットによって行われる作業のイメージを示したイメージ図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る部材取付ロボットの側面図である。
【
図3】
図2の矢印Aで示される方向から見た部材取付ロボットの一部を示した図である。
【
図4】部材取付ロボット及び運搬ロボットを含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
【
図5】部材取付ロボットと共に用いられる運搬ロボットの側面図である。
【
図6】部材取付ロボットが行う作業の手順を示したフローチャートである。
【
図7A】埋設部材の傾きを検出する方法について説明するための図である。
【
図8】埋設部材に棒状部材を取り付ける作業について説明するための図である。
【
図9】
図5のフローチャートの一部の工程の詳細を示したフローチャートである。
【
図10】埋設部材に取り付けられた棒状部材の傾きを修正する作業について説明するための図である。
【
図11A】埋設部材の傾きを検出する方法の変形例について説明するための図である。
【
図12A】埋設部材の端面と天井面とがほぼ面一となる場合に埋設部材の傾きを検出する方法について説明するための図である。
【
図13A】埋設部材の端面が天井面から露出していない場合に埋設部材の傾きを検出する方法について説明するための図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る部材取付ロボットの変形例を示す図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る部材取付ロボットの別の変形例の側面図である。
【
図17】
図16のG-G線に沿う断面を示した図であり、棒状部材を供給するための構造について説明するための図である。
【
図18】棒状部材を部材取付部へと受け渡す工程について説明するための図である。
【
図19】棒状部材を部材取付部へと受け渡す工程について説明するための図であり、
図18に続く工程を示す図である。
【
図20】棒状部材を部材取付部へと受け渡す工程について説明するための図であり、
図19に続く工程を示す図である。
【
図21】棒状部材を部材取付部へと受け渡す工程について説明するための図であり、
図20に続く工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る部材取付ロボットについて説明する。
【0011】
本発明の実施形態に係る部材取付ロボット100は、外部からの操作を必要としない自律型ロボットであり、
図1に示すように、天井面1に設けられた埋設部材4に棒状部材6を取り付ける作業を行うものである。
図1は、部材取付ロボット100によって行われる作業をわかりやすく誇張して示したイメージ図であり、実際の大きさや比率とは異なる部分がある。
【0012】
図1に示される天井面1は、コンクリートが流し込まれたデッキプレートの下面、または、合板型枠が取り外された後のコンクリートスラブの下面であり、天井面1には、複数の埋設部材4が所定の位置に設けられる。
【0013】
埋設部材4は、天井面1に棒状部材6を取り付けるために設けられる部材であって、棒状部材6のネジ部が螺合される図示しない雌ネジ穴が天井面1において露出するように設けられている。具体的には、埋設部材4は、コンクリートを打設する前に設置されるインサート、または、打設後のコンクリートに取り付けられるあと施工アンカーである。
【0014】
例えば、天井面1がデッキプレートの下面である場合には、デッキプレート上にコンクリートが流し込まれる前にデッキプレートの所定の位置に取り付けられるインサートが埋設部材4として用いられてもよいし、デッキプレート上に流し込まれたコンクリートが硬化した後に天井面1となるデッキプレートの下面にドリルによって形成された孔内に打ち込まれ、図示しない拡張部が開くことによって孔内に機械的に固着されるあと施工アンカーが埋設部材4として用いられてもよい。
【0015】
また、天井面1が、合板型枠が取り外された後のコンクリートスラブの下面である場合には、合板型枠にコンクリートが打設される前に合板型枠の所定の位置に取り付けられるインサートが埋設部材4として用いられてもよいし、合板型枠に打設されたコンクリートが硬化した後に天井面1となるコンクリートスラブの下面にドリルによって形成された孔内に機械的に固着されるあと施工アンカーが埋設部材4として用いられてもよい。なお、埋設部材4として用いられる施工アンカーは、孔内に機械的に固着されるものに限定されず、孔内に充填された接着剤等が硬化することによって孔内に固着されるものであってもよい。
【0016】
埋設部材4として用いられるインサートやあと施工アンカーは、設計上、コンクリート内に少なくとも一部分が埋設固定され、その下端部が天井面1から所定の長さだけ突出した状態で設置される。これにより、埋設部材4に形成された雌ネジ穴が天井面1側において露出した状態となることから、埋設部材4を介して棒状部材6を天井面1に取り付けることが可能となる。なお、埋設部材4は、インサートやあと施工アンカーに限定されず、少なくとも一部分が天井面1に埋設固定されることによって、棒状部材6を天井面1に取り付けることが可能な構成を有する部材であればどのような部材であってもよい。
【0017】
棒状部材6は、全ネジボルトであって、例えば、天井パネルを保持する枠部材を支持したり、空調装置本体や空調用のダクトを支持したり、照明装置を支持したりする吊りボルトとして用いられる。なお、棒状部材6の下端には、埋設部材4に対して棒状部材6を螺合させる際に締め付け工具等が係合可能な図示しない係合部、例えば、雄ネジ部の谷の径よりも外径が小さい六角頭部や六角穴が設けられていてもよい。
【0018】
図1に示されるように、部材取付ロボット100は、運搬ロボット110によって運搬される棒状部材6を運搬ロボット110から受け取り、受け取った棒状部材6を天井面1に設けられた埋設部材4に対して順次取り付けるという作業を行うものである。運搬ロボット110は、部材取付ロボット100と同様に、外部からの操作を必要としない自律型ロボットである。なお、運搬ロボット110は、1台の部材取付ロボット100に対して1台ずつ配置されていてもよいし、複数の部材取付ロボット100に対して1台配置されていてもよい。
【0019】
部材取付ロボット100及び運搬ロボット110は、それぞれ同じ構成の台車部10を有し、部材取付ロボット100は、台車部10に部材取付ユニット20が組付けられることによって構成され、運搬ロボット110は、台車部10に運搬ユニット60が組付けられることによって構成される。
【0020】
まず、
図2~4を参照し、部材取付ロボット100について説明する。
図2は、部材取付ロボット100の側面図であり、
図3は、
図2の矢印Aで示される方向から見た部材取付ロボット100の一部、主に部材取付ユニット20の部分を示した図であり、
図4は、部材取付ロボット100及び運搬ロボット110を含む制御システム全体の構成を示すブロック図である。
【0021】
部材取付ロボット100は、
図2及び
図3に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、棒状部材6を保持するとともに埋設部材4への棒状部材6の取り付けを行う部材取付部24と、支持軸23を中心に部材取付部24を回動させる回動モータ(駆動部)22と、台車部10、部材取付部24及び回動モータ22の作動を制御する制御部50と、を備える。なお、部材取付ユニット20は、台車部10以外の機構によって構成される。
【0022】
台車部10は、床面2を全方向に自走可能な走行装置であり、本体部11と、本体部11に取り付けられた一対の車輪14と、一対の車輪14を別々に駆動可能に設けられた図示しない一対のモータと、一対のモータに電力を供給する図示しないバッテリと、を備える。このように一対の車輪14を別々に駆動することによって、台車部10は、その場で旋回することが可能である。なお、台車部10に設けられたバッテリは、部材取付ユニット20へ電力を供給する電力供給源としても使用される。
【0023】
台車部10を、その場で旋回させる構成としては、一対の車輪14に代えて、例えば、3輪のオムニホイールや4輪のメカナムホイールを備えた構成が採用されてもよいし、全方向に回転可能な複数の球状体が床面2に接する駆動輪として機能する構成が採用されてもよい。なお、台車部10は、作業効率の観点からは、その場での旋回が可能であることが好ましいが、床面2を前後左右に自走可能であって所定の位置へと移動することが可能な一般的な走行装置であってもよい。
【0024】
台車部10には、本体部11から上方に向かって延びる支柱12と、支柱12の上端に設けられる台車側フランジ部13とが、台車部10に対して部材取付ユニット20を取り付けるために設けられる。部材取付ユニット20は、後述の設置プレート21を介して台車側フランジ部13に取り付けられる。なお、
図2に示される支柱12は、単なる柱状部材であるが、上下方向に伸縮自在な構成を備えていてもよい。
【0025】
また、台車部10には、台車部10周辺の情報を取得可能な情報取得器(撮像部)15が設けられる。情報取得器15は、台車部10の周囲や台車部10の上方を撮像可能な全天球型または半天球型のカメラである。情報取得器15によって撮像された画像は制御部50へと送られ、台車部10の自己位置の特定や障害物を検知するために用いられる。情報取得器15としては、カメラに代えて、または、カメラに加えて、全方位の距離を検出可能なレーザスキャナ等の三次元測域センサ、いわゆる、3D-LiDAR(light detection and ranging)センサが用いられてもよい。
【0026】
台車部10に取り付けられる部材取付ユニット20の部材取付部24は、
図2及び
図3に示すように、支持軸23を介して回動モータ22により回動自在に支持される平板状のアームプレート25と、アームプレート25の一方の平面25aに設けられ棒状部材6をアームプレート25に沿って保持する保持部32と、保持部32により保持された棒状部材6を埋設部材4に取り付ける操作を行う取付操作部26と、保持部32により保持された棒状部材6を埋設部材4へと誘導するガイドスリーブ(スリーブ)45と、アームプレート25の他方の平面25bに設けられガイドスリーブ45を埋設部材4に対して近づく方向及び離れる方向に移動させることが可能な電動シリンダ40と、を有する。
【0027】
保持部32は、棒状部材6が収容されるU字溝33aが形成された固定ブロック33と、ピン部材34aを介して固定ブロック33に回動可能に取り付けられた回動ブロック34と、を有する。固定ブロック33は、U字溝33aが形成される方向がアームプレート25の長手方向に沿うようにしてアームプレート25に固定される。
【0028】
回動ブロック34の位置は、制御部50により作動が制御される図示しないサーボモータによって、U字溝33aを閉塞する位置と開放する位置、すなわち、棒状部材6を保持可能な状態と棒状部材6を受け入れ可能な状態とに変更可能である。具体的には、回動ブロック34の位置は、棒状部材6を埋設部材4に取り付ける際には、U字溝33aを閉塞する位置に保持され、運搬ロボット110から棒状部材6が補充される際には、U字溝33aを開放する位置に保持される。なお、
図3には、回動ブロック34がU字溝33aを開放する位置にある状態が示されている。
【0029】
保持部32は、アームプレート25の長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられる。
図3に示される例では、保持部32は、2箇所に設けられているが、3箇所以上に設けられていてもよい。
【0030】
取付操作部26は、棒状部材6を埋設部材4に螺合する際に棒状部材6を回転させる電動モータ27と、電動モータ27の回転軸27aに取り付けられたソケット28と、アームプレート25の長手方向に沿って形成されたレール31に沿って電動モータ27を移動させる電動スライド30と、を有する。
【0031】
ソケット28は、棒状部材6の下端部を覆うとともに、棒状部材6の下端部の外周面を把持可能な構成、例えば、ソケット28が回転されることで棒状部材6の外周面を把持可能な部材が径方向内側に向かって突出する構成を備えている。なお、棒状部材6の下端に六角穴等の係合部が設けられている場合は、ソケット28内には係合部に係合可能な凹凸部が設けられる。
【0032】
電動モータ27及び電動スライド30は、ソケット28により把持された棒状部材6を、埋設部材4に対して螺合させるように制御部50によって制御される。これらの具体的な作動については、埋設部材4に棒状部材6を取り付ける後述の方法の説明において詳述する。
【0033】
ガイドスリーブ45は、棒状部材6を埋設部材4に螺合する際に埋設部材4に対して棒状部材6を確実に誘導するために設けられた部材であり、
図3に示されるように、保持部32に保持された棒状部材6が挿通可能な貫通孔46を有する。
【0034】
また、ガイドスリーブ45は、貫通孔46の中心軸を通る平面を分割面として二つの部材45a,45bに分割されており、これらの部材45a,45bは、ヒンジを介して連結されている。
【0035】
二つの部材45a,45bのうちの一方の部材45aは、電動シリンダ40の後述のロッド部42の先端に設けられたプレート43に固定されている。他方の部材45bは、ヒンジを回動中心として、制御部50により作動が制御される図示しないサーボモータによって、一方の部材45aに当接する位置と一方の部材45aから離れる位置とに変位可能な構成となっている。
【0036】
具体的には、他方の部材45bの位置は、棒状部材6を埋設部材4に取り付ける際には、一方の部材45aに当接する位置に保持され、運搬ロボット110から棒状部材6が補充される際には、一方の部材45aから離れる位置に保持される。なお、
図3には、他方の部材45bが一方の部材45aから離れた位置にある状態が示されている。
【0037】
ガイドスリーブ45の貫通孔46は、天井面1に設けられた埋設部材4の一部を収容可能な収容穴46aと、収容穴46aに収容された埋設部材4に向けて棒状部材6をガイド可能なガイド穴46bと、を有する。
【0038】
図3に示すように、収容穴46aは、アームプレート25とは反対側において開口するように形成され、天井面1から突出している埋設部材4の外径よりも径が大きい内径を有するとともに、開口端に向かって徐々に拡径する形状となっている。ガイド穴46bは、アームプレート25側において開口するように形成され、収容穴46aの内径よりも径が小さく且つ棒状部材6の外径よりも径が大きい内径を有するとともに、開口端に向かって徐々に拡径する形状となっている。
【0039】
換言すれば、収容穴46aの内周面は、天井面1から突出している埋設部材4を収容し易くするためにテーパ状に形成されており、ガイド穴46bの内周面は、棒状部材6を収容穴46a側へと案内し易くするためにテーパ状に形成されている。このように形成された収容穴46aとガイド穴46bとが連通することによって、貫通孔46は形成される。
【0040】
上記形状のガイドスリーブ45は、収容穴46aの径及びガイド穴46bの径の組み合わせが異なるものが予め複数用意されており、施工現場で用いられる埋設部材4の種類及び棒状部材6の外径に合わせて適宜交換される。
【0041】
電動シリンダ40は、シリンダ部41とロッド部42とを有する伸縮機構であり、アームプレート25の長手方向に沿って伸縮するように、アームプレート25の他方の平面25bに固定される。シリンダ部41から突出したロッド部42の先端には、ガイドスリーブ45が固定されるプレート43が設けられる。このため、電動シリンダ40を伸縮させることによって、ガイドスリーブ45を天井面1に近付けたり天井面1から離したりすることが可能である。
【0042】
上記構成を備えた部材取付部24を、支持軸23を中心として回動させる回動モータ22は、出力軸である支持軸23が床面2と平行に延びた状態で、設置プレート21を介して台車部10の台車側フランジ部13に固定される。回動モータ22の回動量、すなわち、アームプレート25の傾きは、内蔵された図示しない角度センサによって検出される。
【0043】
このように部材取付部24は、床面2に平行な支持軸23を中心として回動自在に台車部10によって支持されている。
【0044】
部材取付ロボット100は、上記各機構に加えて、埋設部材4の傾きを検出可能な距離センサ(検出部)51と、埋設部材4の位置を把握可能な上方撮像部52と、をさらに備える。
【0045】
距離センサ51は、カメラ内蔵型のレーザ変位センサであって、ガイドスリーブ45とともにプレート43に固定される。このように距離センサ51は、埋設部材4及び天井面1に対して比較的近い位置に配置されることによって、埋設部材4及び天井面1までの距離を精度よく検出可能な距離検出部として機能する。
【0046】
距離センサ51によって検出された距離は、制御部50へと送られ、後述のように、主に埋設部材4の傾きを検出するために用いられる。
【0047】
上方撮像部52は、天井面1側を撮像するように設置されたカメラであり、回動モータ22とともに設置プレート21に固定される。なお、上方撮像部52を埋設部材4に近付けるために、例えば、上下方向に伸縮自在な支柱を介して上方撮像部52を設置プレート21に固定したり、距離センサ51とともにプレート43に上方撮像部52を固定したりしてもよい。必要に応じて上方撮像部52を埋設部材4に近付けることで、埋設部材4の位置を上方撮像部52によって、より正確に把握することができる。
【0048】
上方撮像部52によって撮像された画像は、制御部50へと送られ、後述のように、主に部材取付ロボット100を埋設部材4の下方へと正確に移動させるために用いられる。なお、台車部10に設けられた上述の情報取得器15によって、棒状部材6が取り付けられる予定の埋設部材4の位置を十分に把握することができる場合には、上方撮像部52を設けなくともよい。
【0049】
制御部50は、
図4に示すように、距離センサ51、上方撮像部52及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM(Building Information Modeling)等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10、部材取付部24及び回動モータ22の作動を制御する。制御部50が行う具体的な制御については、埋設部材4に棒状部材6を取り付ける後述の方法の説明において詳述する。
【0050】
制御部50は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部50に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部50は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよく、例えば、部材取付ユニット20と台車部10とにそれぞれ設けられていてもよい。
【0051】
また、制御部50には、
図4に示すように、部材取付ロボット100及び運搬ロボット110に対して作業の指示を行ったり、作業状況を監視したりする外部のサーバ120とデータの送受信を行うための通信部50aが設けられる。通信部50aは、インターネット回線を介してデータを送信可能な一般的な無線通信機器であってもよいし、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)やWi-Fi(登録商標)といった近距離無線通信機器であってもよい。通信部50aは、運搬ロボット110の制御部90と通信を行う際にも用いられる。
【0052】
次に、
図4及び
図5を参照し、棒状部材6を運搬する運搬ロボット110について説明する。
図5は、運搬ロボット110の側面図である。
【0053】
運搬ロボット110は、
図5に示すように、床面2を移動可能な台車部10と、複数の棒状部材6を保持可能な保持プレート70と、保持プレート70を台車部10に対して据え置くために設けられるスタンド部62と、保持プレート70により保持された棒状部材6を把持し部材取付ロボット100へと受け渡す受け渡し機構80と、台車部10及び受け渡し機構80の作動を制御する制御部90と、を備える。なお、運搬ユニット60は、台車部10以外の機構によって構成される。
【0054】
台車部10は、部材取付ロボット100の台車部10と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0055】
保持プレート70は、
図5に示されるように略U字状に形成された板状部材であり、一対の平板部72,73と、一対の平板部72,73の一端を接続する接続部71と、一対の平板部72,73にそれぞれ設けられる複数の把持部74と、を有する。
【0056】
把持部74は、棒状部材6を把持可能な溝を有し、溝が設けられる部分は、樹脂やゴムといった弾性部材によって形成されている。このような把持部74を一対の平板部72,73にそれぞれ同じ数だけ設けておくことにより、一対の平板部72,73に架け渡すようにして複数の棒状部材6を保持プレート70により保持させることができる。
【0057】
スタンド部62は、台車側フランジ部13に取り付けられる設置プレート64と、設置プレート64から上方に延びる支柱63と、支柱63に固定されたフック部65と、を有する。
【0058】
フック部65は、スタンド部62に据え置かれる保持プレート70の平板部72,73を下方から支持可能な形状となっている。換言すれば、保持プレート70は、スタンド部62のフック部65に対して着脱可能となっている。
【0059】
受け渡し機構80は、支柱63に対して直交するように固定されたレール部材81と、レール部材81に沿って移動可能な受け渡し部82と、レール部材81に沿って受け渡し部82を移動させる図示しない電動スライドと、を有する。
【0060】
受け渡し部82は、保持プレート70に保持された複数の棒状部材6のうちの1つの棒状部材6を把持部74から取り外し、取り外された棒状部材6を部材取付ロボット100へと渡すように作動可能な構成を有する。
【0061】
具体的には、受け渡し部82には、棒状部材6を磁力によって保持可能な保持部83と、保持プレート70から棒状部材6を取り外す方向に保持部83を移動させる図示しないアクチュエータと、レール部材81側を回動中心として保持部83をアクチュエータとともに水平方向に回動させる図示しない回動モータと、が設けられる。なお、保持部83は、保持プレート70の把持部74と同様に弾性力によって棒状部材6を保持するものであってもよい。
【0062】
このように運搬ロボット110は、複数の棒状部材6を上下方向に沿った状態で保管するとともに、上下方向に沿った状態で保管された棒状部材6をそのままの状態で部材取付ロボット100に受け渡すことが可能な構成となっている。このため、棒状部材6を例えば水平方向に沿った状態で運搬ロボット110に保管した場合と比較し、部材取付ロボット100に対して棒状部材6を受け渡す際の動作が簡素化されるとともに、運搬ロボット110の幅が大きくなることが抑制されることで、部材取付ロボット100の作業が運搬ロボット110によって阻害されてしまうことを防止することができる。
【0063】
また、複数の棒状部材6を保持する保持プレート70がスタンド部62に対して着脱可能な構成となっているため、保持プレート70を交換することによって、運搬ロボット110への棒状部材6の補充を容易に行うことができる。
【0064】
運搬ロボット110は、上記各機構に加えて、部材取付ロボット100の保持部32の位置を把握可能な側方撮像部91をさらに備える。
【0065】
側方撮像部91は、部材取付ロボット100を撮像可能に設置されたカメラであり、レール部材81に固定される。側方撮像部91が固定される位置は、レール部材81に限定されず、部材取付ロボット100側を撮像可能な位置であればどこであってもよく、例えば、受け渡し部82やスタンド部62であってもよい。
【0066】
側方撮像部91によって撮像された画像は、運搬ロボット110の制御部90へと送られ、後述のように、主に運搬ロボット110の受け渡し部82を、部材取付ロボット100の保持部32に対して正確に位置させるために用いられる。
【0067】
運搬ロボット110の制御部90は、側方撮像部91及び情報取得器15により取得されたデータと、予め読み込まれたBIM等の作業エリアに関するデータとに基づいて、台車部10及び受け渡し機構80の作動を制御する。また、制御部90には、部材取付ロボット100の制御部50と同様に、通信部90aが設けられる。なお、制御部90の具体的な構成は、部材取付ロボット100の制御部50と同じであるため、その説明を省略する。
【0068】
続いて、
図6~10を参照し、上記構成の部材取付ロボット100によって、天井面1に設けられた埋設部材4に棒状部材6を取り付ける方法について説明する。
図6及び
図9は、部材取付ロボット100が行う作業の手順を示したフロー図であり、
図7A及び
図7Bは、埋設部材4の傾きを検出する方法について説明するための図であり、
図8は、埋設部材4に棒状部材6を取り付ける作業について説明するための図であり、
図10は、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6の傾きを修正する作業について説明するための図である。
【0069】
まず、ステップS11では、部材取付ロボット100の制御部50において、作業エリアに関するデータが読み込まれ、記憶される。具体的には、制御部50の通信部50aを介してサーバ120からBIM等の図面データが取得され、記憶部に記憶される。ここで読み込まれるデータには、BIM等の図面データに加えて、埋設部材4の位置や棒状部材6を取り付ける順序などが含まれる。
【0070】
次に、ステップS12では、制御部50は、台車部10の情報取得器15によって、部材取付ロボット100の周辺の情報、例えば、柱までの距離や柱の配置を取得し、記憶されたBIM等の図面データと取得された情報とを照合することにより、部材取付ロボット100の自己位置、すなわち、図面上での座標を認識する。制御部50は、自己位置を特定するために、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)機能を有していてもよい。
【0071】
続くステップS13では、制御部50は、最初に棒状部材6が取り付けられる埋設部材4の座標をステップS11で読み込まれたデータから抽出し、台車部10を制御することによって部材取付ロボット100を抽出された埋設部材4の座標に向けて移動させる。なお、最初に棒状部材6が取り付けられる埋設部材4は、部材取付ロボット100が置かれた場所から最も近くにある埋設部材4であってもよい。
【0072】
部材取付ロボット100の移動が完了すると、制御部50は、上方撮像部52によって、作業対象となる埋設部材4の座標位置を含む天井面1の画像を取得し、取得された画像から埋設部材4の位置を検出する(ステップS14)。
【0073】
取得された画像から埋設部材4の位置が検出された場合には、ステップS15に進み、埋設部材4の位置が検出されない場合、例えば、埋設部材4がコンクリートに埋もれていたり、埋設部材4が何らかの障害物によって覆われている場合には、作業を行うことができないとしてステップS20に進む。
【0074】
ステップS15では、制御部50は、台車部10の情報取得器15によって、部材取付ロボット100の周辺の情報を取得し、棒状部材6の取り付け作業を行うにあたって、周囲に障害物や段差等がないかを検出する。具体的には、後述のように埋設部材4が傾いていると、それに応じて部材取付ロボット100を多少移動させる必要があることから、部材取付ロボット100から数メートルの範囲内に、部材取付ロボット100の移動を妨げるような障害物があるか否かが検出される。
【0075】
ステップS15において、障害物が無いと判定されるとステップS16に進み、障害物があると判定されると作業を行うことができないとしてステップS20に進む。
【0076】
続くステップS16では、制御部50は、距離センサ51によって埋設部材4及び天井面1までの距離を検出し、検出された距離に基づいて、埋設部材4の傾きの大きさ及び方向を検出する。この際、距離センサ51を埋設部材4に出来るだけ近付けるために、電動シリンダ40を伸長させる。
【0077】
ここで、埋設部材4及び天井面1までの距離に基づいて、埋設部材4の傾きを検出する方法について、
図7A及び
図7Bを参照して説明する。
【0078】
図7A及び
図7Bに示すように、制御部50は、カメラ内蔵型のレーザ変位センサである距離センサ51によって、埋設部材4の下端周縁5と認識される線上の複数の測定点P2(図中において黒丸で示される点)までの距離を計測するとともに、埋設部材4の周囲の天井面1と認識される平面上の複数の測定点P1(図中において白丸で示される点)までの距離を計測する。なお、複数の測定点P1,P2は、埋設部材4の雌ネジ穴4aを略中心とし、均等な間隔で設定されることが好ましい。
【0079】
そして、計測された天井面1の複数の測定点P1までの距離のうち最も距離が長い点と最も距離が短い点とを結んだ線と、距離センサ51の中心軸線とが成す角度を天井面1の角度(基準傾斜角)として算出し、計測された埋設部材4の下端周縁5上の複数の測定点P2までの距離のうち最も距離が長い点と最も距離が短い点とを結んだ線と、距離センサ51の中心軸線とが成す角度を埋設部材4の下端周縁5の角度(計測傾斜角)として算出する。
【0080】
そして、このように算出された2つの角度の差分が、鉛直方向に対する埋設部材4の傾きとして算出される。なお、上記算出方法は、天井面1が略水平面となっていることを前提としている。このため、設計上、天井面1が傾斜している場合、鉛直方向に対する埋設部材4の傾きを算出するにあたっては、天井面1の傾斜角度が考慮される。
【0081】
上記算出方法では、最も距離が長い点と最も距離が短い点とが算出に用いられるため、測定点P1,P2の数はできるだけ多い方がよく、例えば、8点以上であることが好ましい。
【0082】
また、別の方法としては、計測された天井面1の複数の測定点P1が含まれる平面を基準平面として算出し、計測された埋設部材4の下端周縁5上の複数の測定点P2が含まれる平面を計測平面として算出し、これら二つの平面が交差する角度(鋭角)を鉛直方向に対する埋設部材4の傾きとして求めてもよい。なお、この別の方法では、基準平面と距離センサ51の中心軸線とが成す角度を基準傾斜角として算出し、計測平面と距離センサ51の中心軸線とが成す角度を計測傾斜角として算出し、これらの差分を鉛直方向に対する埋設部材4の傾きとして算出することも可能である。
【0083】
このようにして埋設部材4の傾きが検出されると、ステップS17に進み、棒状部材6の傾き、すなわち、アームプレート25の傾きが調整される。
【0084】
具体的には、部材取付部24によって保持された棒状部材6の傾きがステップS16で検出された埋設部材4の傾きと一致し、棒状部材6の延長線上に埋設部材4の雌ネジ穴4aが位置するように、回動モータ22および台車部10の少なくとも一方が制御される。なお、ここでいう棒状部材6の傾きと埋設部材4の傾きとの一致とは、幾何学的に完全に一致していることを意味するものではなく、埋設部材4に対して棒状部材6を螺合させる際に支障がない程度のずれについては許容され、略一致していればよいことを意味する。
【0085】
棒状部材6の傾きと埋設部材4の傾きとが一致すると、続くステップS18において、制御部50は、取付操作部26を制御し、棒状部材6を埋設部材4に螺合させる。
【0086】
ここで、棒状部材6の延長線上に埋設部材4の雌ネジ穴4aが位置していれば、棒状部材6を埋設部材4に螺合させることは容易な作業と思われるが、実際には、比較的長尺部材である棒状部材6は、自重によって撓んだり、電動モータ27により回転されることで振れを生じたりするため、棒状部材6を円滑に埋設部材4に螺合させることは難しい。
【0087】
そこで本実施形態では、棒状部材6を埋設部材4に螺合させるにあたって、棒状部材6を誘導するガイドスリーブ45を予め埋設部材4の近傍に位置させている。
【0088】
具体的には、
図8に示すように、制御部50は、ステップS17での棒状部材6の傾きの調整が完了すると、電動シリンダ40を伸長させることによって、ガイドスリーブ45を埋設部材4に近付ける。ガイドスリーブ45には、埋設部材4を収容可能な収容穴46aが設けられているため、天井面1から埋設部材4が突出している場合には、埋設部材4の一部が収容穴46aに収容された状態となる。埋設部材4が天井面1から突出していない場合、ガイドスリーブ45は、収容穴46aが埋設部材4に対向して位置するように埋設部材4へと近付けられる。
【0089】
埋設部材4の近傍にガイドスリーブ45が到達したか否かは、距離センサ51により検出される天井面1や埋設部材4までの距離や上方撮像部52により取得される画像に基づいて逐次判定される。埋設部材4に対してガイドスリーブ45をより正確に位置させるためには、埋設部材4がガイドスリーブ45の収容穴46aに接近ないし収容されたことを検知可能な近接センサをガイドスリーブ45やその周辺に設けておくことが好ましい。
【0090】
このようにガイドスリーブ45の収容穴46aに埋設部材4が接近ないし収容されたと判定されると、制御部50は、埋設部材4への棒状部材6の螺合を開始する。
【0091】
具体的には、まず、埋設部材4に棒状部材6が接するまで、レール31に沿って電動スライド30を上昇させる。電動スライド30の推進力または推進力に相関する電流値の上昇に基づいて棒状部材6が埋設部材4に接したことが確認されると、電動モータ27を螺合方向に回転させるとともに、螺合速度に合わせて電動スライド30を徐々に上昇させる。その後、電動モータ27のトルクが所定値以上になった時点で埋設部材4への棒状部材6の螺合が完了したと判定し、電動モータ27の回転を停止する。そして、電動モータ27の停止とともに、電動スライド30をレール31の下端に向けて下降させることにより、電動モータ27及びソケット28を棒状部材6から引き離す。なお、埋設部材4に棒状部材6が接したことを確認することなく、電動モータ27を螺合方向に回転させながら電動スライド30を上昇させてもよい。
【0092】
ここで、ガイドスリーブ45には、上述のように、棒状部材6を収容穴46aに向けてガイド可能なテーパ状に形成されたガイド穴46bが設けられている。このため、電動モータ27により回転されることで棒状部材6に振れが生じたとしても、棒状部材6の先端部は、ガイド穴46bによってガイドされて埋設部材4へとスムーズに向かうことになる。したがって、かじりを生じさせることなく、棒状部材6を埋設部材4に対して円滑に螺合させることができる。
【0093】
埋設部材4への棒状部材6の螺合が完了すると、制御部50は、埋設部材4への棒状部材6の差込量が所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップS19)。
【0094】
制御部50は、電動モータ27のトルクまたはトルクに相関する電流値に基づいて、埋設部材4への棒状部材6の螺合が開始されたことと、螺合が完了したこととを判定している。具体的には、埋設部材4への棒状部材6の螺合が始まる際には、ねじ込み抵抗によって電動モータ27のトルクがある程度上昇することから、電動モータ27のトルクが予め設定された第1閾値を超えたとき、螺合が開始されたと判定する。
【0095】
一方、埋設部材4の雌ネジ穴4aの全長にわたって棒状部材6が螺合された状態に至ったときや、かじりが生じたり、雌ネジ穴4a内に異物があったりすることによって埋設部材4への棒状部材6の螺合が妨げられた状態となったときには、電動モータ27のトルクが大幅に上昇する。このため、電動モータ27のトルクが第1閾値よりも大きい第2閾値を超えたとき、制御部50は、螺合が完了した、または、実際には完了していないが見かけ上、螺合が完了したと判定する。
【0096】
このような判定とともに、制御部50は、電動モータ27のトルクの大きさが螺合の開始を示す値から螺合を終了の完了を示す値に変化するまでの間に、電動スライド30がレール31に沿って移動した量を埋設部材4への棒状部材6の差込量として検出する。
【0097】
このように検出された埋設部材4への棒状部材6の差込量が所定の閾値、例えば、埋設部材4の雌ネジ穴4aの全長の60%を超えている場合、埋設部材4への棒状部材6の取付けが正常に行われたとして、ステップS30に進む。一方、差込量が所定の閾値以下である場合、かじり等の異常が生じたおそれがあることから、埋設部材4への棒状部材6の取付けが正常に行われなかったとして、ステップS20に進む。つまり、ステップS19では、埋設部材4に対する棒状部材6の取付けの適否が判定される。
【0098】
続くステップS30では、棒状部材6の傾きを修正する工程が行われる。
【0099】
ここで、傾いた埋設部材4に挿入された棒状部材6は当然ながら天井面1に対して傾いた状態になる。このため、棒状部材6を吊りボルトとして用いる天井パネルの枠部材の取付け作業等に支障が生じてしまうおそれがある。
【0100】
そこで、本実施形態では、
図9に示すフロー図に沿って、天井面1に対して棒状部材6が略垂直となるように、棒状部材6の傾きが修正される。
【0101】
まず、ステップS31では、棒状部材6の傾きの修正の要否が判定される。棒状部材6の傾きが、棒状部材6を吊りボルトとして用いる作業において、支障がない程度の傾きであれば、当然ながら傾きを修正する必要はない。
【0102】
そこで、ステップS31では、制御部50は、ステップS16で検出された埋設部材4の傾きが所定の閾値よりも小さい場合、傾きの修正が不要であると判定し、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6が部材取付ロボット100から解放されるように解放作動を行う。具体的には、電動シリンダ40を収縮させてガイドスリーブ45をアームプレート25に引き寄せるとともに、ガイドスリーブ45を構成する二つの部材45a,45bが互いに離れた状態とし、さらに、すべての保持部32の回動ブロック34の位置を、U字溝33aを開放する位置へと回動させることによって、棒状部材6の保持が解除された状態とされる(
図3参照)。
【0103】
このような解放作動を経て、部材取付ロボット100による棒状部材6の保持が解除され、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6が部材取付ロボット100から離れたことが確認されると、ステップS35に進む。なお、棒状部材6が部材取付ロボット100から離れたか否か、すなわち、2つの固定ブロック33のU字溝33a内に棒状部材6があるか否かは、図示しない近接センサ等によって検知される。
【0104】
一方、ステップS16で検出された埋設部材4の傾きが所定の閾値以上である場合、制御部50は、傾きの修正が必要であると判定してステップS32に進む。
【0105】
続くステップS32では、棒状部材6の傾きを修正するために必要な部材取付ロボット100の移動距離D1が算出される。
【0106】
棒状部材6の傾きの修正は、
図10に示すように、棒状部材6に対して傾きとは反対の方向の修正荷重を付与し、埋設部材4の周辺において棒状部材6を塑性変形させることによって行われる。つまり、ステップS32で算出される部材取付ロボット100の移動距離D1とは、
図8に示されるように棒状部材6の取付けが行われる位置から、
図10に示されるように、棒状部材6に所定の大きさの修正荷重が付与された状態となる位置まで部材取付ロボット100を、
図10に矢印で示される移動方向に沿って、移動させる距離である。
【0107】
棒状部材6に対してどの程度の荷重を付与すればどの程度の塑性変形が生じるかといった相関性や部材取付ロボット100をどの程度移動させればどの程度の荷重を棒状部材6に対して付与できるかといった相関性については、予めマップ化され、制御部50に記憶されている。相関性に影響を及ぼすパラメータとしては、埋設部材4の傾き角度、棒状部材6の外径や材料、剛性の他、棒状部材6に荷重を付与する作用点となる保持部32と固定点となる埋設部材4との間の距離などが挙げられる。
【0108】
ステップS32では、制御部50に記憶されたマップから、傾いた埋設部材4に取り付けられた棒状部材6を天井面1に対して略垂直な状態とするためには、棒状部材6をどの程度塑性変形させる必要があり、そのような塑性変形を棒状部材6に生じさせるためには、部材取付ロボット100をどの程度の移動距離D1だけ移動させる必要があるかが求められる。
【0109】
このように部材取付ロボット100の移動距離D1が求められると、続くステップS33において、部材取付ロボット100の移動の可否が判定される。
【0110】
ステップS33では、制御部50は、台車部10の情報取得器(撮像部)15によって撮像された部材取付ロボット100の周辺の画像、特に、棒状部材6の傾きを修正するために部材取付ロボット100を移動させる方向の画像を取得し、取得された画像に基づいて、棒状部材6に対して修正荷重を付与することが可能か否かを判定する。
【0111】
移動予定経路上に障害物や段差等がなく部材取付ロボット100を移動させることが可能と判定されると棒状部材6に対して修正荷重を付与することができるとしてステップS34に進み、移動予定経路上に障害物や段差等があり部材取付ロボット100を移動させることが不可能と判定されると棒状部材6に対して修正荷重を付与することができないとしてステップS36に進む。なお、ステップS36に進む場合、これ以降、棒状部材6に対して、部材取付ロボット100が行う作業はない。このため、ステップS36に進む場合、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6が部材取付ロボット100から解放されるように、上述の解放作動を経て部材取付ロボット100による棒状部材6の保持が解除される。
【0112】
ステップS34では、
図10に示されるように、ステップS32で求められた移動距離D1だけ部材取付ロボット100が移動されることによって、棒状部材6の傾きの修正が行われる。
【0113】
棒状部材6の傾きの修正を行う際、アームプレート25は支持軸23を中心に自由に回動可能な状態、すなわち、回動モータ22の駆動力やブレーキ力が作用しない状態とされる。また、ガイドスリーブ45は、
図10に示されるように、電動シリンダ40が収縮することによってアームプレート25に引き寄せられるとともに、二つの部材45a,45bが互いに離れた状態、すなわち、棒状部材6にガイドスリーブ45が接しない状態とされる。換言すれば、棒状部材6の傾きの修正を行う際、棒状部材6は、保持部32のみによって保持された状態となり、上述の修正荷重は、保持部32を介して棒状部材6に付与されることとなる。
【0114】
ステップS34において部材取付ロボット100の移動が完了すると、部材取付ロボット100による棒状部材6の保持が上述の解放作動を経て解除され、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6が部材取付ロボット100から離れたか否かが確認される。棒状部材6が部材取付ロボット100から離れたことが確認されると、ステップS35に進む。
【0115】
なお、
図10に示す状態において棒状部材6の保持が解除されると棒状部材6が復元力によって大きく振動し、部材取付ロボット100にぶつかって部材取付ロボット100が損傷するおそれがある。このため、部材取付ロボット100による棒状部材6の保持の解除は、部材取付ロボット100を、埋設部材4の下方へと移動させ、棒状部材6及びアームプレート25の傾斜が天井面1に対してほぼ垂直になってから行われる。
【0116】
ステップS35では、制御部50は、所定の埋設部材4に対する棒状部材6の一連の取付け作業が完了したとして、作業の完了を記憶する。
【0117】
一方、ステップS36では、所定の埋設部材4に対して棒状部材6の挿入は完了したものの、棒状部材6の傾きの修正が完了していないとして、制御部50は、傾き修正作業の未完了を記憶する。
【0118】
同様に、ステップS20では、所定の埋設部材4に対して棒状部材6の挿入が完了していないとして、制御部50は、取り付け作業不可または取り付け作業未完了をその原因とともに記憶する。なお、ステップS35、ステップS36及びステップS20で制御部50に記憶された作業に関する情報は、制御部50の通信部50aを介してサーバ120へと逐次送信される。
【0119】
このため、サーバ120を介して部材取付ロボット100の作業状況を監視するオペレータや現場の作業員は、何れの埋設部材4への棒状部材6の取付けが正常に完了しているかを容易に確認することができるとともに、棒状部材6の取付けや棒状部材6の傾きの修正が行われなかった原因を容易に把握することができる。
【0120】
また、部材取付ロボット100の制御部50に記憶された作業に関する情報は、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6に対して何らかの作業を行う後工程作業ロボットにも送信される。このため、この後工程作業ロボットには、正常に取り付けられた棒状部材6に対してのみ作業を行わせることができる。
【0121】
このようにステップS20、ステップS35及びステップ36において作業状況の記憶が完了すると、ステップS21に進み、制御部50は、予定されている作業がすべて完了したか否かを確認する。
【0122】
予定されていた作業がすべて完了した場合、処理を終了し、次の作業の指示をサーバ120から受信するまで待機状態となる。
【0123】
一方、予定されていた作業がまだ完了していない場合、次に棒状部材6が取り付けられる埋設部材4の場所へと移動するために、ステップS13に戻る。
【0124】
ステップS13へ戻るにあたって、ステップS22において棒状部材6の補充が行われる。
【0125】
ステップS22での棒状部材6の補充は、運搬ロボット110から部材取付ロボット100に棒状部材6が受け渡されることによって行われる。
【0126】
具体的には、まず、部材取付ロボット100の制御部50は、回動モータ22によってアームプレート25を床面2に対して垂直な状態とし、部材取付部24が棒状部材6を受け入れ可能な状態、すなわち、ガイドスリーブ45の他方の部材45bが一方の部材45aから離れた状態となっており、すべての保持部32の回動ブロック34がU字溝33aを開放する位置に回動した状態となっているかを確認する。
【0127】
棒状部材6の受け入れが可能な状態にあることが確認されると、部材取付ロボット100は、運搬ロボット110に対して、棒状部材6の受け渡しを要求する要求信号を制御部50の通信部50aを介して発信する。
【0128】
なお、部材取付ロボット100では、この工程よりも前の段階であるステップS21に至る時点で、棒状部材6を保持する状態が解除されていることから、通常は棒状部材6を受け入れ可能な状態となっている。このため、棒状部材6を受け入れ可能な状態となっているか否かの確認は省略されてもよい。
【0129】
運搬ロボット110は、制御部90の通信部90aにおいて要求信号を受信すると、棒状部材6を受け渡すために、部材取付ロボット100の近傍へと移動する。なお、1台の部材取付ロボット100に対して運搬ロボット110が1台ずつ配置されておらず、複数の部材取付ロボット100の間で例えば2~3台の運搬ロボット110を共用している場合には、最も近くにいる運搬ロボット110が要求信号に応じて部材取付ロボット100の近傍へと移動する。
【0130】
運搬ロボット110の制御部90は、側方撮像部91によって撮像された画像から、部材取付ロボット100の保持部32の位置、より具体的には、固定ブロック33のU字溝33aの位置を検出する。
【0131】
そして、上下方向に位置する2つの固定ブロック33のU字溝33aの間に、棒状部材6を保持した受け渡し部82が位置するように、受け渡し部82を部材取付ロボット100のアームプレート25へと近付ける。
【0132】
部材取付ロボット100の制御部50は、2つの固定ブロック33のU字溝33a内に棒状部材6が収容されたことを図示しない近接センサにより検知すると、すべての保持部32の回動ブロック34を、U字溝33aを閉塞する位置に回動させるとともに、ガイドスリーブ45の他方の部材45bを一方の部材45aに当接した状態とする。
【0133】
このようにして部材取付ロボット100によって棒状部材6が保持されると、部材取付ロボット100の制御部50は、運搬ロボット110に対して受け渡しの完了を知らせる完了信号を発信する。
【0134】
完了信号を受け取った運搬ロボット110の制御部90は、受け渡し部82の保持部83の磁力を低下させて、保持部83による棒状部材6の保持を解除する。
【0135】
このように受け渡し部82の保持部83によって棒状部材6が保持されない状態になると、棒状部材6は、部材取付ロボット100の複数の保持部32に保持されつつ重力によって下方へと降下する。保持部32の下方には、上述のように、取付操作部26のソケット28が設けられているため、棒状部材6の下端部はソケット28に収容される。したがって、保持部32に保持された棒状部材6は、電動モータ27によって回転可能な状態、すなわち、埋設部材4に螺合可能な状態となる。
【0136】
以上のようにステップS22において棒状部材6の補充が完了したことが確認されると、ステップS13へと進み、部材取付ロボット100は、次に棒状部材6が取り付けられる埋設部材4の場所へと移動する。なお、棒状部材6の補充は、次に棒状部材6が取り付けられる埋設部材4の場所へと部材取付ロボット100が移動した後に行われてもよい。
【0137】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0138】
上記構成の部材取付ロボット100は、部材取付部24により保持された棒状部材6の傾きを、距離センサ51によって検出された埋設部材4の傾きに略一致させてから、部材取付部24によって棒状部材6を埋設部材4に対して取り付けている。
【0139】
このように埋設部材4に対する棒状部材6の取り付けを、棒状部材6の傾きと埋設部材4の傾きとを略一致させてから行うことによって、棒状部材6と埋設部材4のネジ部にかじりが生じることが確実に抑制され、結果として、棒状部材6を埋設部材4に取り付ける作業を作業員が改めて行わなければならないといった事態を避けることができる。したがって、天井面1に設けられた埋設部材4に棒状部材6を取り付ける作業における工数を低減することができる。
【0140】
また、上記構成の部材取付ロボット100は、埋設部材4にガイドスリーブ45を接近させてから、部材取付部24によって棒状部材6を埋設部材4に対して取り付けている。
【0141】
このように埋設部材4に対する棒状部材6の取り付けを、埋設部材4に向けて棒状部材6をガイド可能なガイド穴46bが設けられたガイドスリーブ45を埋設部材4に接近させてから行うことによって、検出された埋設部材4の傾きが実際の傾きとは多少ずれており、棒状部材6の傾きと埋設部材4の傾きとを一致させることができなかった場合であっても、ネジ部にかじりを生じさせることなく、棒状部材6を埋設部材4に螺合することができる。
【0142】
また、上記構成の部材取付ロボット100は、運搬ロボット110から棒状部材6が随時補充される。
【0143】
このように部材取付ロボット100に対して運搬ロボット110から棒状部材6が自動的に補充されることによって、埋設部材4に対する棒状部材6の取り付けを、棒状部材6の補充のために一時的に中断させることなく、継続的に行うことができる。この結果、施工期間を短縮することができる。
【0144】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0145】
上記実施形態では、埋設部材4の傾きは、距離センサ51によって計測された埋設部材4及び天井面1までの距離に基づいて検出されている。これに代えて、
図11A及び
図11Bに示す変形例のように、埋設部材4の傾きは、埋設部材4の画像から抽出される埋設部材4の下端周縁5の形状に基づいて検出されてもよい。この変形例では、距離センサ51に代えて比較的解像度が高いカメラ151が検出部として用いられる。
図11Aは、
図7Aに相当する断面を示した図であり、
図11Bは、
図11Aの矢印Cで示される方向から見た図である。
【0146】
具体的には、傾いて設けられた埋設部材4を、
図11Aに示されるように、鉛直方向下方からカメラ151によって撮像すると、撮像された画像から抽出される埋設部材4の下端周縁5は、
図11Bに示されるように、長軸と短軸とを有する楕円形状となる。一方で、埋設部材4が全く傾いていない場合には、撮像された埋設部材4の下端周縁5は、略真円となる。
【0147】
つまり、
図11Bに示される長軸方向の長さL1と短軸方向の長さL2との比率は、埋設部材4の傾きが小さいほど1:1に近い値となることから、この比率に基づいて埋設部材4の傾きの大きさを求めることが可能である。また、
図11Bに示される短軸方向は、埋設部材4の傾きの方向を示している。したがって、このような変形例によっても埋設部材4の傾きを検出することが可能である。
【0148】
また、上記実施形態では、埋設部材4は、その下端部が天井面1から所定の長さだけ突出した状態となるように取り付けられている。埋設部材4として用いられるインサートやあと施工アンカーは、設計上、コンクリート内に少なくとも一部分が埋設固定され、その下端部が天井面1から所定の長さだけ突出した状態で設置されるが、その取り付け状態によっては、
図12Aに示すように、天井面1から埋設部材4がほとんど突出せず、埋設部材4の下端面と天井面1とがほぼ面一となることがある。特に、埋設部材4があと施工アンカーである場合には、
図13Aに示すように、天井面1に形成された挿入孔1aが深いと、埋設部材4の全体が挿入孔1a内に挿入されることにより、天井面1から埋設部材4がまったく突出していない状態となることもある。
【0149】
このように、埋設部材4の下端部が天井面1から所定の長さだけ突出した状態となっていない場合であっても、以下のような方法によって、埋設部材4の傾きを検出することが可能である。
【0150】
具体的には、
図12A及び
図12Bに示すように、埋設部材4の下端面と天井面1とがほぼ面一となっている場合には、距離センサ51によって、埋設部材4の下端周縁5と認識される線上の複数の測定点P2(図中において黒丸で示される点)までの距離を計測するとともに、埋設部材4の周囲の天井面1と認識される平面上の複数の測定点P1(図中において白丸で示される点)までの距離を計測することによって、上記実施形態と同様の手法により鉛直方向に対する埋設部材4の傾きを算出することが可能である。
図12Aは、
図7Aに相当する断面を示した図であり、
図12Bは、
図12Aの矢印Dで示される方向から見た図である。
【0151】
なお、埋設部材4の下端周縁5の一部分のみが天井面1から突出し、残りの部分が天井面1から窪んでいるような場合には、ランダムに計測された天井面1の複数の測定点P1までの距離に基づいて天井面1の基準平面を求め、この基準平面に対する埋設部材4の下端周縁5上の複数の測定点P2の差分をそれぞれ算出し、複数の測定点P2のうち、差分がプラス側に最も大きい点と差分がマイナス側に最も大きい点とを抽出し、これら2つの点を結んだ線に基づいて、鉛直方向に対する埋設部材4の傾きを算出することが可能である。
【0152】
また、
図13A及び
図13Bに示すように、天井面1から埋設部材4がまったく突出していない場合には、距離センサ51によって、埋設部材4の下端周縁5と認識される線上の複数の測定点P2(図中において黒丸で示される点)までの距離を計測するとともに、天井面1に形成された挿入孔1aの開口端縁と認識される線上の複数の測定点P1(図中において白丸で示される点)までの距離を計測し、挿入孔1aの開口端縁上の複数の測定点P1に基づいて天井面1の角度(基準傾斜角)を算出することによって、上記実施形態とほぼ同様の手法により鉛直方向に対する埋設部材4の傾きを算出することが可能である。
図13Aは、
図7Aに相当する断面を示した図であり、
図13Bは、
図13Aの矢印Eで示される方向から見た図である。
【0153】
ここで、
図12Aや
図13Aに示されるように、埋設部材4の下端部が天井面1から所定の長さだけ突出した状態となっていない場合、上記実施形態におけるガイドスリーブ45に設けられた収容穴46a内に埋設部材4の一部を収容することができないことから、ガイドスリーブ45を介して棒状部材6を埋設部材4に向けて誘導することが困難となるおそれがある。
【0154】
特に、埋設部材4が、天井面1に形成された挿入孔1a内に挿入固定されるあと施工アンカーである場合には、挿入孔1aの削孔深さがばらついたり、挿入孔1aに対する埋設部材4の挿入量がばらついたりすることによって、埋設部材4の下端部が天井面1から突出する状態となることもあれば、埋設部材4の下端部が天井面1から突出しない状態となることもある。
【0155】
このような場合であっても棒状部材6を埋設部材4に向けて精度よく誘導するために、
図14に示す変形例のように、ガイドスリーブ145(スリーブ)の形状及び構造を変更してもよい。
図14は、
図8に示される作業状態に相当する作業状態を示す図であり、ガイドスリーブ145の周辺を拡大して示している。
【0156】
図14に示されるガイドスリーブ145は、上記実施形態のガイドスリーブ45と同様に、貫通孔146の中心軸を通る平面を分割面として二つの部材145a,145bに分割されており、これらの部材145a,145bは、図示しないヒンジを介して連結されている。
【0157】
貫通孔146は、
図14に示されるように、棒状部材6の外径よりも径が大きい内径を有し、保持部32によって保持された棒状部材6に向かって徐々に拡径する形状となっている。つまり、ガイドスリーブ145の貫通孔146は、上記実施形態のガイドスリーブ45のガイド穴46bに相当する機能のみを有し、貫通孔146には、上記実施形態のガイドスリーブ45の収容穴46aに相当する部分が設けられていない。
【0158】
また、ガイドスリーブ145には、埋設部材4に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ部147が設けられる。テーパ部147の先端部の外径は、埋設部材4の外径、すなわち、天井面1に形成される挿入孔1aの内径よりも小さく設定される。
【0159】
このため、例えば、
図14の右側に示されるように、埋設部材4の全体が挿入孔1a内に挿入されることにより、天井面1から埋設部材4がまったく突出していない場合には、テーパ部147の先端部を挿入孔1aに差し込むことにより、ガイドスリーブ145を介して棒状部材6を埋設部材4に向けて確実に誘導することができる。
【0160】
また、テーパ部147の先端部には、埋設部材4に対してテーパ部147の先端部を吸着させることが可能な吸着部148が設けられる。
【0161】
吸着部148は、図示しないバキュームポンプで生じた負圧によってテーパ部147の先端面を埋設部材4の下端面に吸着させた吸着状態と、負圧の供給が遮断されることによって埋設部材4の下端面に対するテーパ部147の先端面の吸着が解除された非吸着状態と、を切り換え可能な構造を有する。なお、吸着部148が生じる吸着力は、負圧によるものに限定されず、例えば、埋設部材4が金属製である場合には、電磁力によるものであってもよい。この場合、電磁力のオンオフによって吸着状態と非吸着状態とが切り換えられる。
【0162】
このようにガイドスリーブ145に吸着部148が設けられることによって、例えば、
図14の左側に示されるように、天井面1から埋設部材4がほとんど突出しておらず、埋設部材4の下端面と天井面1とがほぼ面一となっている場合のように、上記実施形態のガイドスリーブ45の収容穴46a内に埋設部材4の下端部を収容することができず、また、上述のテーパ部147の先端部を挿入孔1aに差し込むことができないような場合であっても、吸着部148によってテーパ部147の先端面を埋設部材4の下端面に吸着させることにより、ガイドスリーブ145を介して棒状部材6を埋設部材4に向けて確実に誘導することができる。
【0163】
また、上記実施形態では、部材取付ロボット100は、運搬ロボット110から棒状部材6が補充される。これに代えて、部材取付ロボット100は、複数の棒状部材6を保持可能な保持部を備えるとともに、自ら棒状部材6を部材取付部24に補充可能な構成を備えていてもよい。具体的には、部材取付ロボット100は、
図15~
図21に示される変形例のような、棒状部材6を部材取付部24へと補充することが可能な補充機構200を備えていてもよい。
図15は、補充機構200を備えた部材取付ロボット100の側面図であり、
図16は、
図15の矢印Fで示される方向から見た上面図であり、
図17は、
図16のG-G線に沿う断面の概略を示した図である。また、
図18から
図21は、棒状部材6を部材取付部24へと受け渡す工程について説明するための図である。なお、
図18から
図20は、
図16と同じ視点から見た図であるが、
図18から
図20では、棒状部材6の延在方向が図面において左右方向となっている。
【0164】
補充機構200は、複数の棒状部材6を貯留するとともに、棒状部材6を1本ずつ供給可能な供給装置210と、供給装置210から供給された棒状部材6を把持し、上述の部材取付部24へと棒状部材6を受け渡す受け渡し装置230と、供給装置210から供給された棒状部材6を、受け渡し装置230が把持する位置へとスライドさせるスライド装置220と、を有する。
【0165】
供給装置210は、
図15に示されるように、台車部10に設けられた支柱12から比較的近い位置に設置されており、
図17に示すように、複数の棒状部材6を貯留する貯留部211と、貯留部211内に貯留された棒状部材6を貯留部211の下方から1本ずつ取り出す取出機構212と、を有する。
【0166】
貯留部211内には、複数の棒状部材6を長手方向が略水平方向となる状態で貯留可能な貯留空間211aが形成されている。貯留空間211aは、上方及び下方において開口しており、下方は取出機構212によって開閉される開口部211cとなっている。
【0167】
また、貯留部211には、
図15に示すように、貯留空間211aへの棒状部材6の補充が作業員によって容易に行われるようにするために、側面において開口する補充開口211bが形成されている。このように側面に補充開口211bを形成しておくことにより、例えば、ロットで納品された複数の棒状部材6を図示しない補充容器に一旦収容し、補充容器から貯留空間211aへと補充開口211bを通じて複数の棒状部材6を一度に補充することが可能である。なお、作業員による棒状部材6の補充は、棒状部材6の補充が必要と自ら判定した部材取付ロボット100が作業エリアからバックヤード等に戻ってきた際、または、作業エリアにおいて作業中の部材取付ロボット100から棒状部材6の補充の要請が発報等された際に行われる。
【0168】
取出機構212は、支持ピン214を中心に回動することによって貯留部211の開口部211cを開閉可能な供給板213と、供給板213に形成されたスリット213bを通じて上下方向に進退可能に設けられた仕切板215と、開口部211cを開放する位置と開口部211cを閉塞する位置とに供給板213の位置を切り替え可能な図示しない電動アクチュエータと、仕切板215の上端が供給板213から突出した状態と仕切板215の上端が供給板213から突出していない状態とに仕切板215の位置を切り替え可能な図示しない電動アクチュエータと、を有する。
【0169】
供給板213には、スリット213bを挟んで支持ピン214とは反対側に、棒状部材6の落下を防止するための突起213aが上方に向かって形成されている。
【0170】
供給板213は、
図16に示すように、貯留部211の長手方向、すなわち、棒状部材6の長手方向に沿って複数設けられており、これらは互いに連動するように構成されている。仕切板215は、すべての供給板213に設けられている必要はなく、少なくとも1つ設けられていればよい。なお、仕切板215が複数設けられている場合、各仕切板215は互いに連動するように構成される。
【0171】
このように構成された取出機構212の作動について、
図17を参照して説明する。
【0172】
供給板213が、
図17(a)において矢印Hで示される方向に回動されると、開口部211cが開放され、貯留空間211a内の棒状部材6は、自重により、開口部211cから供給板213の上面に沿って滑り出す。滑り出た棒状部材6の移動は、供給板213に形成された突起213aによって制限される。
【0173】
供給板213の上面に棒状部材6が滑り出た状態において、仕切板215が、
図17(b)において矢印Jで示される方向に移動すると、隣り合う棒状部材6の間に仕切板215が割り込むことにより、供給板213の突起213aと仕切板215との間には棒状部材6が1本だけある状態となる。
【0174】
この状態から供給板213が開口部211cを閉塞する方向へと回動されると、供給板213上には、1本の棒状部材6が残されることになる。このようにして、取出機構212によって、貯留部211の下方から棒状部材6を1本ずつ取り出すことが可能である。
【0175】
スライド装置220は、貯留部211の長手方向、すなわち、棒状部材6の長手方向に沿って可動片222を往復移動させることが可能な電動スライダ221であり、供給装置210とともに台車部10の本体部11の上面に設置される。
【0176】
可動片222には、棒状部材6の端面に当接する当接板223が取り付けられており、当接板223の先端部は、
図17(a)に示されるように、供給板213の突起213aと貯留部211との間の隙間に進入可能な鉤形状となっている。
【0177】
このように、スライド装置220は、取出機構212によって貯留部211から供給板213上に取り出された棒状部材6を、棒状部材6の軸方向に沿ってスライドさせることが可能な構成となっている。
【0178】
受け渡し装置230は、
図15及び
図16に示すように、棒状部材6を把持可能な把持機構235と、水平方向における把持機構235の位置を変更可能な電動シリンダ231と、電動シリンダ231の伸縮中心軸C1を中心に鉛直平面内において把持機構235を回動させることが可能な回動機構240と、鉛直方向における把持機構235の高さを変更可能なスライダ機構244と、を有する。
【0179】
把持機構235は、一対の把持部237と、把持部237が両端に取り付けられた支持部材236と、を有し、支持部材236を介して、回動機構240に取り付けられている。
【0180】
把持部237は、いわゆる平行開閉グリッパであり、対向して配置される一対の可動片238と、一対の可動片238を互いに近付けたり離したりすることが可能な図示しない電動アクチュエータと、で構成される。
【0181】
電動シリンダ231は、シリンダ部232と、シリンダ部232から突出するロッド部233と、を有し、伸縮中心軸C1に沿って伸縮作動する。ロッド部233の先端には、回動機構240を介して把持機構235が取り付けられている。
【0182】
回動機構240は、図示しない電動シリンダまたは図示しない電動モータによって、把持機構235を、電動シリンダ231の伸縮中心軸C1を中心に鉛直平面内において回動させる機構であり、支持部材236の長手方向が略水平方向となる第1位置と、支持部材236の長手方向が略鉛直方向となる第2位置と、の何れかの位置に把持機構235の位置を切り替え可能な構造となっている。
【0183】
スライダ機構244は、鉛直方向に沿って可動片246を往復移動させることが可能な電動スライダ245であり、電動スライダ245は、台車部10の本体部11の上面に立設されている。なお、電動スライダ245は、アームプレート25の動きを妨げることのない位置に設置されている。
【0184】
スライダ機構244の可動片246には、電動シリンダ231のシリンダ部232が固定されているため、鉛直方向における可動片246の高さを変更することによって、鉛直方向における電動シリンダ231の高さ、すなわち、把持機構235の高さを変更することが可能である。
【0185】
補充機構200の各部の作動は、部材取付ロボット100の作動を制御する制御部50によって制御される。なお、制御部50とは別の制御部が設けられてもよい。
【0186】
続いて、上記構成の補充機構200によって、棒状部材6を部材取付部24へと受け渡す工程について、主に
図18から
図21を参照して説明する。
【0187】
上述のように、取出機構212によって貯留部211の下方から棒状部材6が取り出されると、
図18に示すように、1本の棒状部材6が複数の供給板213によって支持された状態となる。
【0188】
ここで、貯留部211内では、棒状部材6がその軸方方向において、ある程度自由に移動可能であることから、
図18に示される状態において棒状部材6を把持機構235の把持部237によって把持すると、棒状部材6は、毎回、異なる位置で把持されることになる。このため、部材取付部24へと棒状部材6を受け渡す際に、毎回、異なる微調整が必要となってしまう。
【0189】
そこで、この変形例では、
図19に示されるように、把持部237により棒状部材6が把持される前に、スライド装置220によって、棒状部材6の位置を予め所定の位置へとスライドさせている。具体的には、取出機構212によって棒状部材6が取り出されたことが確認されると、スライド装置220は、可動片222を把持機構235に向かって予め設定された距離だけ移動させる。
【0190】
このように可動片222が把持機構235に向かって移動する過程で、当接板223は棒状部材6の端面に当接する。このため、棒状部材6は、当接板223及び可動片222と共にスライドすることになり、結果として、スライド後の棒状部材6の位置は、毎回、同じ位置となる。
【0191】
スライド装置220による棒状部材6のスライドが完了すると、
図20に示されるように、把持機構235が棒状部材6へと近づくように、電動シリンダ231が所定の距離だけ伸長する。そして、電動シリンダ231が伸長した後、把持部237により棒状部材6が把持される。なお、供給板213の設置位置は、把持部237が棒状部材6を把持する位置を避けた位置に予め設定されている。このため、各把持部237は、供給板213の間において棒状部材6をそれぞれ把持することができる。
【0192】
把持機構235により棒状部材6が把持されたことが確認されると、スライダ機構244は、可動片246を上方に向かって予め設定された距離だけ移動させる。
【0193】
棒状部材6を把持した把持機構235の上方への移動が完了すると、続いて、回動機構240によって、把持機構235の位置が、支持部材236の長手方向が略水平方向となる第1位置から支持部材236の長手方向が略鉛直方向となる第2位置へと切り替えられる。なお、回動機構240が把持機構235を回動する方向は毎回同じであり、
図20及び
図21に示される例では、一対の把持部237のうち棒状部材6の端部に近い部分を把持した把持部237の方が、第2位置となったときに、下側に位置するように回動されている。
【0194】
把持機構235の位置が第2位置となると、
図21に示されるように、保持部32の固定ブロック33に形成されたU字溝33a内に、把持機構235により把持された棒状部材6が進入するまで、電動シリンダ231が伸長する。
【0195】
U字溝33a内に棒状部材6が進入したことが確認されると、続いて、スライダ機構244は、可動片246を僅かに下方へと移動させる。ここでの可動片246の移動量は、電動モータ27の回転軸27aに取り付けられたソケット28内に挿入される棒状部材6の長さに応じて設定される(
図3参照)。
【0196】
回動ブロック34の位置がU字溝33aを閉塞する位置となり、保持部32によって棒状部材6が保持されたことが確認されると、把持機構235による棒状部材6の把持が解除される。その後、部材取付ユニット20から把持機構235を遠ざけるために、電動シリンダ231が収縮する。
【0197】
電動シリンダ231が収縮した後、把持機構235の位置は、回動機構240によって第2位置から第1位置へと切り替えられる。把持機構235の位置が切り替えられた後、スライダ機構244は、
図15に示される位置へと可動片246を下方に移動させる。これにより、補充機構200は、
図15に示されるように、棒状部材6を受け渡すことが可能な状態となる。
【0198】
以上のような工程を経て、棒状部材6は、補充機構200によって、部材取付部24へと順次受け渡される。
【0199】
なお、取出機構212によって貯留部211の下方から棒状部材6を取り出し、取り出された棒状部材6を把持機構235によって把持するまでの工程は、部材取付ロボット100が、上述のように棒状部材6を埋設部材4に取り付ける作業を行っている間に行われる。このため、棒状部材6の取り付け作業が終わった部材取付ロボット100に対して
棒状部材6を迅速に補充することができる。なお、補充機構200を部材取付ロボット100に搭載することに代えて、上述の運搬ロボット110を、上記補充機構200と同等の機構を備えたものとしてもよい。
【0200】
また、上記実施形態では、棒状部材6の傾きの修正は、部材取付ロボット100を移動させることだけで行われている。これに代えて、棒状部材6の傾きの修正は、部材取付ロボット100を移動させることに加えて回動モータ22によってアームプレート25を積極的に回動させることによって行われてもよいし、部材取付ロボット100を移動させることなく、回動モータ22によってアームプレート25を回動させることだけで行われてもよい。
【0201】
また、上記実施形態では、部材取付ロボット100は、台車部10の情報取得器15によって取得された周辺の情報に基づいて自己位置を認識している。部材取付ロボット100は、自己位置の認識精度を向上させるために、情報取得器15に加えて、ジャイロセンサや方位センサ、加速度センサを備えていてもよい。
【0202】
また、上記実施形態では、棒状部材6は、埋設部材4に対して螺合されることにより取り付けられている。これに代えて、棒状部材6は、埋設部材4に対して嵌入されることによって取り付けられるものであってもよい。この場合、電動モータ27が不要となる。
【0203】
また、上記実施形態では、棒状部材6には、ハンガーやハンガーの位置決めナットが取り付けられていないが、棒状部材6は、ハンガーやハンガーの位置決めナットが予め取り付けられたものであってもよい。また、埋設部材4に取り付けられた棒状部材6に対してハンガーやハンガーの位置決めナットを取り付ける部材取付ロボットを別途配備してもよい。
【0204】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0205】
100・・・部材取付ロボット
1・・・天井面
2・・・床面
4・・・埋設部材
6・・・棒状部材
10・・・台車部
15・・・情報取得器(撮像部)
20・・・部材取付ユニット
22・・・回動モータ(駆動部)
23・・・支持軸
24・・・部材取付部
26・・・取付操作部
27・・・電動モータ
30・・・電動スライド
32・・・保持部
40・・・電動シリンダ
45,145・・・ガイドスリーブ(スリーブ)
50・・・制御部
51・・・距離センサ(検出部)
52・・・上方撮像部
110・・・運搬ロボット
120・・・サーバ
151・・・カメラ(検出部)
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、
前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、
前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、
前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記検出部は、前記埋設部材及び前記天井面までの距離を検出可能な距離検出部であり、
前記制御部は、
前記距離検出部により検出された前記天井面までの距離から基準傾斜角を算出し、
前記距離検出部により検出された前記埋設部材までの距離から計測傾斜角を算出し、
前記基準傾斜角と前記計測傾斜角との差分を前記埋設部材の傾きとして演算し、
前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記埋設部材の前記傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる、
部材取付ロボット。
【請求項2】
天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、
前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、
前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、
前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記部材取付部は、前記棒状部材を保持する保持部と、前記保持部により保持された前記棒状部材を前記埋設部材に取り付ける操作を行う取付操作部と、を有し、
前記制御部は、
前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させ、傾いた前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記取付操作部を作動させた後、前記天井面に対して前記棒状部材が略垂直となるように修正するための修正荷重が、前記保持部を介して前記棒状部材に付与されるように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させる、
部材取付ロボット。
【請求項3】
天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、
床面を移動可能な台車部と、
前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、
前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、
前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、
前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、
前記部材取付部は、前記埋設部材に向けて前記棒状部材をガイド可能なスリーブを有し、
前記制御部は、
前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材の近傍に前記スリーブが到達したと判定された後、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる、
部材取付ロボット。
【請求項4】
前記部材取付部は、前記棒状部材を保持する保持部と、前記保持部により保持された前記棒状部材を前記埋設部材に取り付ける操作を行う取付操作部と、を有し、
前記制御部は、傾いた前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記取付操作部を作動させた後、前記天井面に対して前記棒状部材が略垂直となるように修正するための修正荷重が、前記保持部を介して前記棒状部材に付与されるように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させる、
請求項1または3に記載の部材取付ロボット。
【請求項5】
前記部材取付ロボットの周囲を撮像可能な撮像部をさらに備え、
前記制御部は、前記撮像部により撮像された画像に基づいて、前記棒状部材に対して前記修正荷重を付与することが可能か否かを判定する、
請求項2に記載の部材取付ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記埋設部材への前記棒状部材の差込量に基づいて、前記棒状部材の取付けの適否を判定する、
請求項1~3及び5の何れか1つに記載の部材取付ロボット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記検出部は、前記埋設部材及び前記天井面までの距離を検出可能な距離検出部であり、前記制御部は、前記距離検出部により検出された前記天井面までの距離から基準傾斜角を算出し、前記距離検出部により検出された前記埋設部材までの距離から計測傾斜角を算出し、前記基準傾斜角と前記計測傾斜角との差分を前記埋設部材の傾きとして演算し、前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記埋設部材の前記傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる。また、本発明は、天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記部材取付部は、前記棒状部材を保持する保持部と、前記保持部により保持された前記棒状部材を前記埋設部材に取り付ける操作を行う取付操作部と、を有し、前記制御部は、前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させ、傾いた前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記取付操作部を作動させた後、前記天井面に対して前記棒状部材が略垂直となるように修正するための修正荷重が、前記保持部を介して前記棒状部材に付与されるように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させる。また、本発明は、天井面に設けられた埋設部材に対してネジ部を有する棒状部材を取り付ける部材取付ロボットであって、床面を移動可能な台車部と、前記床面に平行な支持軸を中心として回動自在に前記台車部によって支持され、前記棒状部材を保持するとともに前記埋設部材への前記棒状部材の取り付けを行う部材取付部と、前記支持軸を中心に前記部材取付部を回動させる駆動部と、前記埋設部材の傾きを検出可能な検出部と、前記台車部、前記部材取付部及び前記駆動部の作動を制御する制御部と、を備え、前記部材取付部は、前記埋設部材に向けて前記棒状部材をガイド可能なスリーブを有し、前記制御部は、前記部材取付部により保持された前記棒状部材の傾きが、前記検出部によって検出された前記埋設部材の傾きと略一致するように、前記駆動部及び前記台車部の少なくとも一方を作動させてから、前記埋設部材の近傍に前記スリーブが到達したと判定された後、前記埋設部材に前記棒状部材を取り付けるように前記部材取付部を作動させる。