(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008470
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持装置
(51)【国際特許分類】
B21D 43/04 20060101AFI20230112BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B21D43/04 C
B25J15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112062
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】000100861
【氏名又は名称】アイダエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134212
【弁理士】
【氏名又は名称】提中 清彦
(72)【発明者】
【氏名】竹田 桂輔
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS15
3C707CT04
3C707CV07
3C707CW07
3C707FS01
3C707FT11
3C707GS01
3C707HS14
3C707HS27
3C707HT20
(57)【要約】
【課題】 簡単な操作で精度良く確実にワーク搬送装置にワーク保持装置を着脱可能に支持させることができる着脱支持機構を提供する。
【解決手段】 本発明は、可動部材112、第1連結軸112A、第1連結部材115、第2連結軸116A、第2連結部材116、第3連結軸116Cと、からなるリンク機構Lを含んで構成され、可動部材112が所定の係合位置へ移動したときに、第1連結軸112Aと第2連結軸116Aとをこれらと直交する面において結ぶ直線S1と、第2連結軸116Aと第3連結軸116Cとをこれらと直交する面において結ぶ直線S2と、が直交するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを着脱自在に保持するワーク保持装置をワーク搬送装置に着脱自在に支持させる着脱支持機構であって、
ワーク搬送装置には位置決めオス要素或いは位置決めメス要素が備えられ、ワーク保持装置にはこれに対応した位置決めメス要素或いは位置決めオス要素が備えられていて、
ワーク搬送装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に、ワーク保持装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を挿入して、所定の位置でワーク保持装置とワーク搬送装置とを当接させて相互間における位置決めを行うものにおいて、
ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に搭載され、前記挿入方向に沿って直線駆動機構により往復直線移動可能に構成される可動部材と、
該可動部材と一体的に前記往復直線移動方向と略直交する方向に沿って延在される第1連結軸と、
当該第1連結軸廻りに回動自在に連結される第1連結部材と、
第1連結軸に対して平行かつ所定間隔をもって第1連結部材に一体的に延在される第2連結軸と、
当該第2連結軸廻りに回動自在に連結される第2連結部材と、
を含んで構成され、
第2連結部材は、
第2連結軸に対して平行かつ所定間隔をもって前記ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に一体的に延在される第3連結軸により回動自在に支持されると共に、
前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに第1連結部材を介して第3連結軸廻りを所定方向に回動されワーク搬送装置或いはワーク保持装置の他方の被係合部を前記ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に当接して係止し、前記可動部材が所定の退避位置へ移動したときに第1連結部材を介して第3連結軸廻りを前記所定方向とは逆方向に回動され前記被係合部から退避される係止部を備える一方、
前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに、第1連結軸と第2連結軸とをこれらと直交する面において結ぶ直線と、第2連結軸と第3連結軸とをこれらと直交する面において結ぶ直線と、が直交するように構成されている
ことを特徴とするワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構。
【請求項2】
ワーク保持装置には、ワークを着脱自在に保持するワーク保持ツールに設けられた位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に対応した位置決めメス要素或いは位置決めオス要素が備えられていて、
ワーク保持ツールの位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を、ワーク保持ツールの位置決めメス要素或いは位置決めオス要素に挿入して、所定の位置でワーク保持ツールとワーク保持装置とを当接させて相互間における位置決めを行った状態において、
ワーク搬送装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に、ワーク保持装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を挿入して、所定の位置でワーク保持装置とワーク搬送装置とを当接させて相互間における位置決めを行ったときに、
ワーク搬送装置に設けた規制部がワーク保持ツールの一部に作用して、ワーク保持ツールがワーク保持装置から離間する方向へ移動するのを規制するように構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構。
【請求項3】
前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに、前記所定の係合位置へ前記可動部材を弾性付勢する弾性要素或いは前記所定の係合位置に前記可動部材を吸着保持させる磁着要素を含んで構成したこと
を特徴とする請求項1又は2に記載のワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プレス機械(プレスマシン)などに採用されるワーク搬送装置に対するワーク保持装置の着脱支持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレスマシンへの搬入・搬出、プレスマシン間などにおけるワークの搬送装置として、種々のものが提案されている。
一般に、ワークを上流工程から下流工程へと搬送するワーク搬送装置は、ワーク保持装置が備えられ、ワーク保持装置は、上流工程で、真空吸着や磁着などの吸着手段によってワークを保持した後、その保持状態で下流工程へと移動され、そこで吸着手段による吸着を解放してワークを解放するように動作される。
【0003】
ここで、搬送すべきワークの形状などが変更され、吸着手段の配置や数などの仕様を変更する必要が生じた場合において、それまで使用していたワーク保持装置をワーク搬送装置から脱して(取り外して)、その仕様に適合しているワーク保持装置をワーク搬送装置に装着する(付け替える)ことができる、いわゆる着脱式(脱着式)のワーク保持装置を採用することが考えられる。
【0004】
このような場合、例えば、特許文献1では、
図9に示すように、ワーク搬送装置用ホルダ1000が、ホルダ本体1100と、掛合機構1200と、を備え、ホルダ本体の貫通穴1110に、吸着カップを有するアタッチメント2000を挿入し、アタッチメント2000の先端付近に刻設されている環状溝2100に、掛合機構の掛合レバー1210を弾性付勢しつつ係合させることで、アタッチメント2000をホルダ本体1100に装着した状態とし、取り外すときは、前記掛合レバー1210と前記環状溝との係合を解いた状態としてアタッチメント2000をホルダ本体1100から引き抜くといった構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の装置では、アタッチメントの環状溝2100に掛合レバー1210を挿入して係合させる構成であるため、アタッチメントの軸方向における、環状溝の幅と、掛合レバーの幅と、の間の隙間(ガタツキ)により、アタッチメントが、その軸方向において、ワーク搬送装置用ホルダに対して遊動してしまうおそれがある。
かかる機構では、ワークを高速搬送しようとすると、そのガタツキにより、振動や騒音が大きくなり、高速搬送の実現を阻害することとなっていた。
【0007】
また、引用文献1では、このガタツキを抑制するために、作業者がロープ等を使ってホルダ本体にアタッチメントを固定することを提案している。しかし、この提案方法では、より確実なガタツキ抑制や実用上の作業効率面において改善が求められる。
【0008】
また、アタッチメントの自動交換を想定すると、引用文献1の装置では、例えば、掛合解除ピン1220をエアシリンダ等のアクチュエータにて押し引きする構造が考えられる。このような場合、アタッチメント2000の環状溝2100が掛合レバー1210と掛り合える位置にある場合は問題ないが、環状溝2100が少しずれた位置にある場合には、掛合レバー1210が環状溝2100に適切に掛合することが困難となる。例えば、長年使用していると、当接部や摺動部等の摩耗等により、掛合レバー1210と環状溝2100の位置関係に変化が生じうるからである。両者の掛合は、ワーク搬送動作の実行において、ワーク搬送装置用ホルダ1000からのアタッチメント2000の脱落防止や、機械の故障防止に影響を与えるため、アタッチメント2000を安定保持することが求められる。
【0009】
本発明は、上述した実情に鑑みなされたもので、ワーク搬送装置に対してワーク保持装置を遊動などさせることなく精度良く確実に、かつ、簡単な操作で着脱可能に係合させて支持させることができ、延いてはワーク保持装置の交換作業を簡単なものとすることができると共にワークの高速搬送の実現に貢献可能なワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構は、
ワークを着脱自在に保持するワーク保持装置をワーク搬送装置に着脱自在に支持させる着脱支持機構であって、
ワーク搬送装置には位置決めオス要素或いは位置決めメス要素が備えられ、ワーク保持装置にはこれに対応した位置決めメス要素或いは位置決めオス要素が備えられていて、
ワーク搬送装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に、ワーク保持装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を挿入して、所定の位置でワーク保持装置とワーク搬送装置とを当接させて相互間における位置決めを行うものにおいて、
ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に搭載され、前記挿入方向に沿って直線駆動機構により往復直線移動可能に構成される可動部材と、
該可動部材と一体的に前記往復直線移動方向と略直交する方向に沿って延在される第1連結軸と、
当該第1連結軸廻りに回動自在に連結される第1連結部材と、
第1連結軸に対して平行かつ所定間隔をもって第1連結部材に一体的に延在される第2連結軸と、
当該第2連結軸廻りに回動自在に連結される第2連結部材と、
を含んで構成され、
第2連結部材は、
第2連結軸に対して平行かつ所定間隔をもって前記ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に一体的に延在される第3連結軸により回動自在に支持されると共に、
前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに第1連結部材を介して第3連結軸廻りを所定方向に回動されワーク搬送装置或いはワーク保持装置の他方の被係合部を前記ワーク搬送装置或いはワーク保持装置の少なくとも一方に当接して係止し、前記可動部材が所定の退避位置へ移動したときに第1連結部材を介して第3連結軸廻りを前記所定方向とは逆方向に回動され前記被係合部から退避される係止部を備える一方、
前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに、第1連結軸と第2連結軸とをこれらと直交する面において結ぶ直線と、第2連結軸と第3連結軸とをこれらと直交する面において結ぶ直線と、が直交するように構成されている
ことを特徴とする。
【0011】
本発明において、ワーク保持装置には、ワークを着脱自在に保持するワーク保持ツールに設けられた位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に対応した位置決めメス要素或いは位置決めオス要素が備えられていて、
ワーク保持ツールの位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を、ワーク保持ツールの位置決めメス要素或いは位置決めオス要素に挿入して、所定の位置でワーク保持ツールとワーク保持装置とを当接させて相互間における位置決めを行った状態において、
ワーク搬送装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素に、ワーク保持装置の位置決めオス要素或いは位置決めメス要素を挿入して、所定の位置でワーク保持装置とワーク搬送装置とを当接させて相互間における位置決めを行ったときに、
ワーク搬送装置に設けた規制部がワーク保持ツールの一部に作用して、ワーク保持ツールがワーク保持装置から離間する方向へ移動するのを規制するように構成されていること
を特徴とすることができる。
【0012】
本発明において、前記可動部材が所定の係合位置へ移動したときに、前記所定の係合位置へ前記可動部材を弾性付勢する弾性要素或いは前記所定の係合位置に前記可動部材を吸着保持させる磁着要素を含んで構成したこと
を特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ワーク搬送装置に対してワーク保持装置を遊動などさせることなく精度良く確実に、かつ、簡単な操作で着脱可能に係合させて支持させることができ、延いてはワーク保持装置の交換作業を簡単なものとすることができると共にワークの高速搬送の実現に貢献可能なワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の搬送アームの先端及びワーク保持装置(係合状態)を拡大して示す斜視図である。
【
図3】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の搬送アームの先端及びワーク保持装置(分離状態)を拡大して示す斜視図である。
【
図4】(A)は同上実施の形態に係る係合装置の係合状態を拡大して示す断面図(第4関節20Xを通る垂直面による断面図)であり、(B)は同上係合装置の非係合状態を拡大して示す同上断面図であり、(C)は同上係合装置の分離状態を拡大して示す同上断面図である。
【
図5】(A)は同上実施の形態に係る係合装置の係合状態におけるリンク機構部分を拡大して示す同上断面図であり、(B)は同上係合装置の非係合状態におけるリンク機構部分を拡大して示す同上断面図であり、(C)は同上係合装置の分離状態におけるリンク機構部分を拡大して示す同上断面図である。
【
図6】同上実施の形態に係る係合装置のリンク機構部分(非係合状態)を抜き出して示す拡大斜視図である。
【
図7】(A)は同上実施の形態に係るワーク保持装置の着脱可能なクロスバーの一構成例(分離状態)を示す斜視図であり、(B)は(A)とは別の方向から見た斜視図である。
【
図8】同上実施の形態に係るワーク保持装置に対するクロスバーの着脱機構の一例を拡大して示す斜視図である。 すなわち、本実施の形態に係るワーク保持装置3は、例えば、脚部4や吸着装置5の数や配置(位置)が異なるクロスバーCBを、フレーム50に対して、簡単に付け替えることができるようになっている。
【
図9】従来のワーク搬送装置に対するワーク保持ツールであるアタッチメントの着脱可能な取り付け例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るワーク搬送装置に対するワーク保持装置の着脱支持機構の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0016】
ここで、本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置の構成例を説明する。
図1は、本実施の形態に係るワーク搬送装置の全体構成を示す斜視図であり、
図2は本実施の形態に係るワーク搬送装置の先端及びワーク保持装置を拡大して示す斜視図である。
【0017】
本実施の形態に係るプレス機械のワーク搬送装置1は、
図1に示すように、2台のスカラロボット(ロボット)1A、1Bが、ワーク搬送方向の幅方向(ワーク搬送幅方向)に沿ってプレスライン(プレスマシン)等に固定的に設置される固定フレームFに対して上下方向(鉛直方向)に移動可能に支持されている。
2台のスカラロボット(ロボット)1A、1Bは、それぞれ、2つのアーム(第1アーム11(上腕)と第2アーム12(前腕))を有するアームユニット10A,10Bを備えている。
また、2台のスカラロボット1A、1Bを夫々独立して(相互独立に)固定フレームFに対して昇降動作させる昇降機構2A、2Bが備えられている。
そして、2つのアームユニット10A、10Bのそれぞれの第2アームa2の先端には、ワーク保持装置3が支持されている。
ただし、本発明に係るワーク搬送装置においては、スカラロボットが1台の場合も含まれると共に、昇降機構(2A、2B)を備えない構成を採用することも可能である。
【0018】
本実施の形態に係るワーク保持装置3は、クロスバーCBに取り付けられた脚部4に支持される吸着装置5(磁着、バキュームカップ等の真空(或いは負圧)吸着などを利用したワーク保持装置)によりワークWを保持・解放可能に構成されている。
【0019】
スカラロボット1A(1B)を昇降させる昇降機構2A(2B)は、電動モータ(サーボモータ等。以下、同様。)、ボールネジ、ボールネジナット(スクリュウ)、リニアガイドレール等を含んで構成され、略垂直(略鉛直)に配設されるボールネジに対して昇降(上下動)されるボールネジナットに昇降フレーム13を介してスカラロボット1A(1B)が接続された構成になっている。
【0020】
そして、電動モータの駆動力によりボールネジを所定回転(或いは反対方向)に回転することで、スカラロボット1A(1B)を上方向或いは下方向に昇降動作させることができるようになっている。
【0021】
ここで、本実施の形態に係るアームユニット10A(10B)は、
昇降フレーム13に第1関節10X(略垂直軸、肩部分)を介して略水平面内を回転自在に支持される第1アーム11(上腕)と、
第1アーム11の先端に第2関節10Y(略垂直軸、肘関節)を介して略水平面内を回転(或いは回動、枢動。以下、同様)自在に支持される第2アーム12(前腕)と、
アームユニット10A(10B)の夫々の第2アーム12の先端に、第3関節10Zを介して略水平面内を回転自在に連結されるワーク保持装置3(クロスバーCB)と、
第1アーム11を昇降フレーム13に対して第1関節10X廻りに回転(旋回)駆動する第1アーム駆動機構DM1(電動モータ(サーボモータ等)、必要に応じて減速機)と、
第2アーム12を第1アーム11に対して第2関節10Y廻りに回転(旋回)駆動する第2アーム駆動機構DM2(電動モータ(サーボモータ等)、必要に応じて減速機)と、
ワーク保持装置3を第2アーム12の先端に対して第3関節10Z廻りに回転(旋回)駆動するワーク保持装置旋回(回転)駆動機構DM3と、
を備えて構成されている。
【0022】
かかる構成を有する2台のロボット1A(1B)のアームユニット10A(10B)を、互いに独立に駆動制御することで、例えば、各第1アーム駆動機構DM1、各第2アーム駆動機構DM2により、各第1アーム11と各第2アーム12を各関節廻りに回転させることで、2つのワークWをそれぞれ独立にワーク搬送方向へ移動(ワーク搬送)させることができるようになっている。
【0023】
ここで、搬送するワークWの形状などの仕様を変更する場合、ツールホルダーであるワーク保持装置3では、例えば、クロスバーCBの長さの変更、クロスバーCBに対する脚部4や吸着装置5の数や配置(位置)の変更を行うことが必要となるが、ワークの仕様変更に応じてその都度調整するのでは、作業が煩雑であると共に、その段取り作業の間プレス加工ラインを停止する必要があり、生産効率が低下するといった問題がある。
【0024】
このため、予め搬送するワークWの異なる仕様毎に適合された着脱可能なワーク保持装置3を複数準備しておいて、ワークWの仕様に合わせたワーク保持装置3を第2アーム12の先端に対して付け替えるといったことが想定される。
【0025】
しかしながら、ワーク搬送装置(ここでは第2アーム12の先端)に対してワーク保持装置3を遊動などすることなく精度良く確実に、かつ、簡単な操作で着脱可能に係合させることができ、延いてはワーク保持装置3の交換作業を簡単なものとすることができると共にワークの高速搬送の実現に貢献可能な着脱機構を提供することが求められる。
【0026】
このため、本実施の形態では、以下のような構成のワーク保持装置の着脱支持機構により、ワーク搬送装置1に対してワーク保持装置3を着脱可能(着脱自在)に支持させる。
すなわち、
図2、
図3に示すように、ワーク搬送装置1の第2アーム12の先端には、第2アーム12の先端に対して第3関節10Z廻りにワーク保持装置旋回(回転)駆動機構DM3、チルト駆動機構TMを介して回転(旋回)自在に係合装置100が支持されている。
そして、係合装置100を介して、ワーク搬送装置1(第2アーム12)に対して着脱自在にワーク保持装置3が支持される構成となっている。
【0027】
なお、ワーク保持装置旋回駆動機構DM3により、ワーク保持装置3を第2アーム12に対して第3関節10Z廻りに回転(旋回)させることで、ワークWの搬送中における水平面内における姿勢を制御することができるよう構成されている。
【0028】
また、チルト駆動機構TMは、電動モータ(サーボモータ等)や必要に応じて備えられる減速機により、第2アーム12に対して、第4関節20X廻りに、係合装置100やワーク保持装置3(吸着装置5)延いてはこれに支持されているワークWを相対回転させることができるように構成されている。
【0029】
係合装置100は、ワーク搬送装置1(第2アーム12)側に支持されていて、ワーク保持装置3側に支持されている被係合部30(40)と着脱自在に係合されるように構成されている。
【0030】
図2の係合状態から、係合装置100に係合解除動作を行わせることで、係合装置100と被係合部30(40)との間の係合が解除されることでき、これにより、
図3に示すように、ワーク搬送装置1(第2アーム12)とワーク保持装置3とが分離され、ワーク搬送装置1(第2アーム12)からワーク保持装置3を取り外すことができるように構成されている。
【0031】
本実施の形態では、
図4(A)~
図4(C)に示すように、ワーク搬送装置1(第2アーム12)に対してワーク保持装置旋回駆動機構DM3を介して第3関節10Z廻りに回転(旋回)可能に支持されている支持部材20が備えられ、この支持部材20に対してチルト駆動機構TMなどを介して第4関節20X廻りに回転可能に係合装置100が支持されている。
【0032】
より詳細には、係合装置100は、
図4(A)~
図4(C)、これらの一部を拡大した図である
図5(A)~
図5(C)に示すように、チルト駆動機構TMの回転出力軸に連結されていると共にベアリング110Aなどを介して支持部材20に対して第4関節20X廻りに回転可能に支持されている第1係合部110と、第3関節10Zを挟んで反対側で第4関節20X廻りに回転自在なベアリング120Aなどを介して支持部材20に対して第4関節20X廻りに回転自在に支持されている第2係合部120と、を含んで構成されている。
【0033】
第1係合部110は、その内側に断面略円形状の中空のシリンダ111が第4関節20X方向に沿って延在されている。シリンダ111の内側には、ピストン112が第4関節20X方向に沿って摺動可能に挿入(嵌挿)されている。
【0034】
また、第1係合部110の先端側には、直線駆動機構であるエアシリンダ等のアクチュエータ113が備えられ、このアクチュエータ113の往復直動される出力移動部材114が、ピストン112に連結されている。本実施の形態における往復直線移動の方向は、
図4、
図5においてX方向に沿った方向である。
従って、アクチュエータ113を駆動して出力移動部材114を移動させると、これに連結されているピストン(可動部材)112がシリンダ111の内側において、第4関節20X方向に沿って移動するように構成されている。なお、ピストン112が本発明に係る可動部材に相当する。
【0035】
また、ピストン112には、枢軸として機能する第1連結ピン(或いは孔)112Aが第4関節20X方向と略直交する方向に延在するように一体的に備えられている。
この第1連結ピン112Aには、第1連結部材115が第1連結孔(或いはピン)115Aを介して回動自在に連結されている。
なお、後述するものも含めて、各連結孔と各連結ピンの間に、ベアリングなどの回転支持要素を介在させた構成とすることができる。
ここで、第1連結ピン(或いは孔)112A或いは第1連結孔(或いはピン)115Aが本発明に係る第1連結軸に相当する。
【0036】
また、第1連結部材115には、第2連結孔(或いはピン)115Bが、第1連結孔115Aから所定距離をもって備えられている。
【0037】
第2連結孔115Bには、第1連結ピン112Aと平行に延在される第2連結ピン(或いは孔)116Aを介して第2連結部材116が回動自在に連結され、第2連結部材116には、第3連結孔(又はピン)116Bが第2連結ピン116Aから所定距離をもって備えられている。
ここで、第2連結孔(或いはピン)115B或いは第2連結ピン(或いは孔)116Aが本発明に係る第2連結軸に相当する。
【0038】
すなわち、第2連結ピン116Aは、第1連結部材115と、第2連結部材116と、を回動自在に連結している。
そして、第3連結孔116Bには、枢軸としての第3連結ピン116Cが挿入され、当該第3連結ピン116Cは第1係合部110(延いてはワーク搬送装置1)本体に固定されている。第3連結ピン116Cは、第1連結ピン112Aや第2連結ピン116Aと平行に延在されている。
ここで、第3連結孔(或いはピン)116B或いは第3連結ピン(或いは孔)116Cが本発明に係る第3連結軸に相当する。
【0039】
また、第2連結部材116には、第3連結孔116Bの回動中心から、第2連結孔115B(第2連結ピン116A)の回動中心と、第3連結孔116Bの回動中心と、を結ぶ直線と交差する方向(例えば、略直交する方向)に延在する係止部(ストッパー)116Dが備えられている。
従って、第2連結部材116は、第2連結ピン116Aや第3連結孔116Bの回動中心の軸方向から見たときに、L字形状(
図4(B)、
図5(B)では逆L字形状)を有している。
【0040】
図4(A)、
図5(A)は、アクチュエータ113の出力移動部材114(ピストン112)が所定の係合位置(左端:X方向上流端)まで移動した係合状態を示している。
この係合状態では、第1連結ピン112A(第1連結孔115A)の回動中心(軸中心)と、第2連結ピン116A(第2連結孔116B)の回動中心(軸中心)と、が、ピストン112の往復直線移動方向と略直交する線上(
図5(A)において垂直方向)に並んだ状態となり、係止部(ストッパー)116Dが、ワーク保持装置3の被係合部30を、第1係合部110の当接部117の当接面117Aとの間で(当接面117Aに当接させて)位置規制を行う状態(係合状態)となっている。
【0041】
なお、ワーク保持装置3の被係合部30は、ワーク保持装置3と一体的に構成され、
図4(A)、
図5(A)及び
図4(C)、
図5(C)に示すように、第1係合部110の係止部(ストッパー)116Dが当接される第1当接面30Aと、この反対側の面で、第1係合部110の当接部117に当接される第2当接面30Bと、を備えて構成されている。
【0042】
また、位置決めピン30Cが第1当接面30A(第2当接面30B)と略直交する方向に延在され、
図4(A)、
図5(A)の係合状態において、第1係合部110に当該位置決めピン30Cに対応して形成されている位置決めピン孔118に挿入され、
図5のY、Z方向における位置決めがなされるように構成されている。
なお、後述するものも含めて、位置決めピンは本発明に係る位置決めオス要素の一例に相当し、位置決めピン孔は位置決めメス要素の一例に相当する。
X方向の位置決めは、第1係合部110の当接部117の当接面117Aと、被係合部30の第2当接面30Bと、の当接、及び、第1係合部110の係止部(ストッパー)116Dと、被係合部30の第1当接面30Aと、の当接によりなされる。
【0043】
なお、本実施の形態では、より確実に、安定して、ワーク搬送装置1(第2アーム12)がワーク保持装置3を支持することができるように、第3関節10Zを挟んで第1係合部110の反対側に第2係合部120が備えられているが、第2係合部120には、位置決めピン30Cと同様の構成の位置決めピン40Bが挿入される位置決めピン孔121が備えられている。位置決めピン40Bは、第2係合部120に対応して設けられている被係合部40に備えられている。
【0044】
また、第2係合部120の左端(X方向上流端)には、位置決めピン40Bが位置決めピン孔121に挿入され所定の係合状態となった時に、被係合部40の当接面40A(X方向下流端)と当接する当接面120Bが設けられている。なお、被係合部40はフレーム50を介して被係合部30と一体的に構成されている。
従って、
図4(A)の係合状態では、第1係合部110と被係合部30との係合と、第2係合部120と被係合部40との係合により、ワーク搬送装置1(第2アーム12)はワーク保持装置3を遊動など生じさせることなく高精度かつ確実に支持することができる。
【0045】
また、
図4(B)、
図5(B)は、アクチュエータ113の出力移動部材114(ピストン112)が所定の退避位置(非係合位置:右端:X方向下流端)まで移動した退避(非係合)状態を示している。例えば、アクチュエータ113への作動圧(例えばエア圧)の供給した状態を示している。
この退避状態では、第1連結ピン112A(第1連結孔115A)の回動中心と、第2連結ピン116A(第2連結孔116B)の回動中心と、が、ピストン112の往復直線移動方向と平行な線上(
図4、
図5において水平方向)に並んだ状態となり、係止部(ストッパー)116Dが、ワーク保持装置3の被係合部30から退避し、被係合部30から第1係合部110の当接部117がピストン112の往復直線移動方向に沿って(同上水平方向に沿って)離間することができる状態(非係合状態)となる。
【0046】
なお、
図4(B)、
図5(B)の状態から、ワーク搬送装置1(第2アーム12)を操作して、ワーク搬送装置1(第2アーム12)と一体的な係合装置100を、位置決めピン30Cや位置決めピン40Bの長軸方向に沿ってワーク保持装置3の被係合部30や被係合部40から離間する方向に移動させることで、ワーク搬送装置1(第2アーム12)の係合装置100と、ワーク保持装置3と、を水平方向(X方向)において分離させることができる。
図4(C)、
図5(C)は、かかる分離した状態から、更に、ワーク搬送装置1(第2アーム12)を上昇させた状態(Y方向下流側に移動させた状態)を示している。
【0047】
この逆に、
図4(C)、
図5(C)の状態から、ワーク保持装置3を備えていない状態のワーク搬送装置1(第2アーム12)を下降させた後、X方向上流方向に移動させることで、
図4(B)、
図5(B)の状態とすることができる。
その後、アクチュエータ113を駆動(例えば、エア圧の供給を停止)して、その出力移動部材114(ピストン112)を所定の係合位置(左端:X方向上流端)まで移動させることで、上部に出力移動部材114(ピストン112)が連結されたリンク機構Lにより、係止部(ストッパー)116Dをワーク保持装置3の被係合部30の第1当接面30Aに当接させ、かつ、被係合部30の第2当接面30Bを第1係合部110の当接部117の当接面117Aに当接させた(押し付けた)状態(係合状態)とすることができる。
【0048】
すなわち、本実施の形態では、出力移動部材114(ピストン112)に連結(リンク結合)された第1連結部材115と、これに連結(リンク結合)された第2連結部材116と、からなるリンク機構Lを介して、
係合時(装着時)には、出力移動部材114(ピストン112)を所定の係合位置(装着位置)に移動させることで、第2連結部材116の係止部(ストッパー)116Dを係合位置へ移動させて、ワーク保持装置3の被係合部30を第1係合部110の当接部117の当接面117Aに当接させた(押し付けた)状態(係合状態)とし、
非係合時(取り外し時:脱時)には、出力移動部材114(ピストン112)を所定の非係合位置(取り外し位置:脱位置)に移動させることで、第2連結部材116の係止部(ストッパー)116Dをワーク保持装置3の被係合部30から退避させ、これにより、ワーク保持装置3の被係合部30を第1係合部110の当接部117の当接面117Aから離間させた状態(非係合状態)とすることができる。
【0049】
なお、本実施の形態の上記リンク機構Lは、
図4(A)、
図5(A)に示した係合時には、第1連結ピン112A(第1連結孔115A)の回動中心と、第2連結ピン116A(第2連結孔116B)の回動中心と、が、ピストン112の往復直線移動方向と略直交する線上(
図4、
図5において垂直方向、Y方向)に並んだ状態(配置)となる一方で、第2連結ピン116A(第2連結孔116B)の回動中心と、第3連結ピン116C(第3連結孔116B)の回動中心と、が、ピストン112の往復直線移動方向に平行な線上(沿った線上)(
図4、
図5において水平方向、X方向)に並んだ状態(配置)となるように構成されている。
【0050】
このため、係合状態において、ワーク保持装置3の被係合部30が、第1係合部110の当接部117の当接面117Aから離れようとして、係止部(ストッパー)116Dを押し戻す動きをしようとしたときに、係止部(ストッパー)116Dに伝わる力は、第3連結ピン116C廻りに、第2連結部材116を
図4、5において時計方向に回動させようとする。しかし、第2連結部材116の第2連結ピン116Aと第3連結ピン116Cとを結ぶ直線S2(
図5(A)参照)と、第1連結部材115の第2連結ピン116Aと第1連結ピン112Aとを結ぶ直線S1(
図5(A)参照)と、が直交するように配置されているため、直線S1を通る方向にのみ、その力は伝達されることになる。したがって、第1連結部材115の第1連結ピン112Aにピストン112(出力移動部材114)を退避位置方向(X方向下流側)へ移動させる力の成分を生じさせることがない。
すなわち、本実施の形態において、係合状態にあるときには、アクチュエータ113の作動によりピストン112が移動しない限り、係止部(ストッパー)116Dがワーク保持装置3の被係合部30から離れることはない。
【0051】
この一方で、係合状態から、アクチュエータ113の出力移動部材114を退避位置へ戻せば、この動作に連動して、上記リンク機構Lを介して、係止部(ストッパー)116Dをワーク保持装置3の被係合部30から退避させることができる。
【0052】
従って、本実施の形態の係合装置によれば、ワーク搬送装置に対してワーク保持装置3を遊動などさせることなく精度良く確実に、かつ、簡単な操作で着脱可能に係合させて支持させることができ、延いてはワーク保持装置の交換作業を簡単なものとすることができると共にワークの高速搬送の実現に貢献可能なワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構を提供することができる。
【0053】
また、本実施の形態に係るワーク保持装置3は、
図7に示すように、被係合部30や被係合部40を支持しているフレーム50に対して、着脱可能にクロスバーCBは取り付けられている。脚部4、吸着装置5等を備えたクロスバーCBは、本発明に係るワーク保持ツールに相当する。
すなわち、本実施の形態に係るワーク保持装置3は、例えば、脚部4や吸着装置5の数や配置(位置)が異なるクロスバーCBを、フレーム50に対して、簡単に付け替えることができるようになっている。
【0054】
具体的には、
図8に拡大して示すように、クロスバーCBには係合ブロック70が一体的に取り付けられ、この係合ブロック70には断面逆T字状の係合レール71がクロスバーCBの長手方向に沿って配設されている。
また、クロスバーCBにはクロスバーCBの長手方向と略直交する方向に延在される係合プレート80が一体的に取り付けられ、この係合プレート80には、クロスバーCBと平行に位置決めピン81が立設されている。この位置決めピン81の先端はその上面がテーパー状に削られたテーパー面81Aを有している。
【0055】
また、係合ブロック70の係合レール71に対応して、フレーム50側にはレール被係合部60が設けられていて、レール被係合部60には係合レール71を収容するための断面逆T字状の溝61が刻設されている。
なお、断面逆T字状の係合レール71は本発明に係る位置決めオス要素の一例に相当し、断面逆T字状の溝61は位置決めメス要素の一例に相当する。
【0056】
また、係合プレート80の位置決めピン81に対応して、フレーム50側の被係合部40には位置決め孔41が開口されていると共に、略直交する方向から位置決め孔41に対して突出或いは退避可能に構成されている固定用プランジャ42が設けられている。なお。固定用プランジャ42は、位置決め孔41に対して突出する方向にばねなどにより付勢されている。
【0057】
図8の非係合状態から、係合ブロック70、係合プレート80と、被係合部40、60と、を係合させて、クロスバーCBをフレーム50(延いてはワーク保持装置3)に支持させる際には、
図8の挿入経路に沿って移動させて、係合レール71を溝61に挿入させると共に、位置決めピン81を位置決め孔41に挿入する。この際に、位置決めピン81の進行に伴いテーパー面81Aが、その付勢力に抗して固定用プランジャ42を押し上げながら挿入される。
そして、係合ブロック70、係合プレート80と被係合部40、60とが所定の係合位置となると、位置決めピン81の長手方向に略直交する方向に開口されている固定用プランジャ係合穴82に固定用プランジャ42がその付勢力により挿入されることとなって、係合プレート80と被係合部40とが係合され、クロスバーCBがフレーム50(延いてはワーク保持装置3)に支持されることになる。
【0058】
なお、
図7(A)、
図7(B)に示すように、クロスバーCB上の長手方向処置位置には、もう一つ係合ブロック70が設けられていると共に、これに対応する被係合部60がフレーム50に設けられている。
これにより、遊動などさせることなく、安定して確実にクロスバーCBをフレーム50延いてはワーク保持装置3に支持させることができ、以ってワークの高速搬送の実現に貢献することができる。
【0059】
また、本実施の形態では、ワーク保持装置3を、ワーク搬送装置1の搬送アーム(第2アーム12)の先端に装着する際に、ワーク保持装置3の位置決めピン40B(30C)に、ワーク搬送装置3(第2アーム12)側の位置決めピン孔121(118)にX方向に沿って挿入するが、このとき、第2係合部120に設けている規制部122が、ワーク保持装置3に着脱自在に装着されているクロスバーCBに一体的に設けられている係合プレート80の規制面80Aに対して、当該係合プレート80延いてはクロスバーCBが被係合部40から離間する方向へ移動しないように作用して、その移動を規制(邪魔)するように構成されている。
従って、本実施の形態では、ワーク保持装置3を、ワーク搬送装置1の搬送アーム(第2アーム12)から取り外さない限り、ワーク保持装置3からクロスバーCBが外れることのない安全性の高い構成を実現している。
【0060】
なお、本実施の形態に係るワーク蛙搬送装置のワーク保持装置の着脱支持機構のリンク機構Lは、
所定方向に往復直線移動可能な可動部材(112)と一体的に前記往復直線移動方向と略直交する方向に備えられる(延在される)第1連結軸(112A)廻りに回動(回転)自在に連結された第1連結部材(115)と、第1連結軸(112A)に対して平行かつ所定間隔をもって第1連結部材(115)に備えられる(延在される)第2連結軸(116A)廻りに回動自在に連結される第2連結部材(116)と、を含んで構成され、
第2連結部材(116)は、
第2連結軸(116A)に対して平行かつ所定間隔をもってワーク搬送装置(3)(第2アーム12)に一体的に備えられる(延在される)第3連結軸(116C)により回動自在に支持されると共に、
前記可動部材(112)が所定の係合位置へ移動したときに第1連結部材(115)を介して第3連結軸(116C)廻りを所定方向に回動(移動)して被係合部(30)をワーク搬送装置(3)(第2アーム12)に当接して係止し、前記可動部材(112)が所定の退避位置へ移動したときに第1連結部材(115)を介して第3連結軸(116C)廻りを前記所定方向とは逆方向に回動(移動)して被係合部(30)から退避される係止部(ストッパー)(116D)を備える一方、
前記可動部材(112)が所定の係合位置へ移動したときに、第1連結軸(112A)と第2連結軸(116A)とを回動平面(
図4、
図5の平面)において結ぶ直線S1と、第2連結軸(116A)と第3連結軸(116C)とを回動平面(
図4、
図5の平面)において結ぶ直線S2と、が直交し、
その状態で、係止部(ストッパー)116Dが、ワーク保持装置(3)の被係合部(30)を、第1係合部(110)の当接部117の当接面117Aとの間で(当接面117Aに当接させて)位置規制を行う状態(係合状態)となるように構成されている。
当該構成により、本実施の形態によれば、係止部(ストッパー)116D側からの作用で、第2連結部材(116)、第1連結部材(115)を介して、第1連結軸(112A)に可動部材(112)を退避位置方向(X方向下流側)へ移動させる力の成分を生じさせることがない。
すなわち、本実施の形態には、係合状態にあるときには、アクチュエータ113の作動によりピストン112が移動しない限り、係止部(ストッパー)(116D)がワーク保持装置(3)の被係合部(30)から離れることはない、といった作用効果がある。
【0061】
この一方で、係合状態から、可動部材(112)を退避位置へ戻せば、この動作に連動して、上記リンク機構Lを介して、係止部(ストッパー)116Dをワーク保持装置3の被係合部30から退避させることができる。
【0062】
つまり、本実施の形態のリンク機構Lを備えた係合装置によれば、ワーク搬送装置に対してワーク保持装置(ツールホルダー)を遊動などさせることなく精度良く確実に、かつ、簡単な操作で着脱可能に係合させて支持させることができ、延いてはワーク保持装置の交換作業を簡単なものとすることができると共にワークの高速搬送の実現に貢献可能なワーク搬送装置のワーク保持装置の着脱機構を提供することができる。
【0063】
なお、本実施の形態に係る係合装置100はチルト駆動機構TMと同じかそれより低い高さ(鉛直方向:
図4,5において上下方向)に配置されるため、ワーク搬送装置の先端部分の厚さを薄く維持することができる。
ワーク搬送装置の先端部分を薄くすることによる効果について、以下に説明する。
まず、上流工程のプレスマシンにおいては、ワークに対するプレス加工が完了すると、上型が上昇して加工済みワーク及び下型から離れる。その後、加工済みワークを搬出するため、上流工程のプレスマシン内にワーク搬送装置のワーク保持装置が進入する。ここで、ワーク保持装置の先端部分である係合装置100が厚い場合、ワーク保持装置と上型との間の干渉を回避しなければならないので、係合装置100は、その係合装置100の厚さ分以上の高さだけ上型が上昇した後に、上流工程のプレスマシン内に進入する。これに対して、係合装置100の厚さが薄い場合は、上型の上昇量が少なかったとしても、係合装置100はその薄さ故に上流工程のプレスマシン内に進入することが可能となる。つまり、上型が比較的低い高さ位置までしか上昇していなくても、係合装置100を含むワーク保持装置は上型と干渉することなく上流工程のプレスマシン内に進入することができる。よって、より早いタイミングで、上流工程のプレスマシン内の加工済みワークをプレスマシン外へ搬出させることができる。
その後、下流工程のプレスマシン内には、加工済みワークを保持したワーク搬送装置のワーク保持装置が進入し、加工済みワークが下型に載置される。加工済みワークを解放したワーク保持装置は、下流工程のプレスマシン外へ退避する。これら進入・ワーク載置・退避の各動作において、係合装置100を含むワーク保持装置は、金型との干渉を回避する必要がある。
ここで、ワーク保持装置の先端部分である係合装置100が厚い場合を考える。この場合、下流工程のプレスマシンが低速動作を実行しているのであれば、上型が上昇して下降するまでの時間が長くなるので、ワーク保持装置と上型との干渉の可能性は低い。しかし、高速動作になればなるほど、金型が上昇して下降するまでの時間が短くなるので、上述の干渉の可能性を抑制することが困難になる。これに対して、係合装置100が薄い場合を考える。この場合、下流工程のプレスマシンが低速動作を実行しているときは当然のこと、高速動作のときであっても、つまり、金型が上昇してから加工するまでの時間が短い動作のときであっても、係合装置100が薄い分だけ、干渉の可能性を抑制することができる。よって、高速動作のプレスマシンであっても、ワーク保持装置の進入・ワーク載置・退避を安全に実行することが可能となる。
したがって、本発明におけるワーク搬送装置によれば、プレスマシンとの連動動作にてプレスラインの高速化、言い換えればワーク搬送速度の高速化に貢献可能である。
【0064】
また、本実施の形態では、直線駆動機構であるエアシリンダ等のアクチュエータ113は、エア圧の供給を停止したときに、出力移動部材114(ピストン112)を所定の係合位置(
図4(A)、
図5(A)の位置)へ移動させ、エア圧を供給したときに、出力移動部材114(ピストン112)を所定の退避位置(
図4(B)、
図5(B)の位置)へ移動させるように構成されているが、これはエア圧供給が異常そのたの何らかの要因で停止された場合に、振動その他の外部からの入力などにより係合状態が解除され(退避位置方向へと移動し)、ワーク保持装置がワーク搬送装置から不用意に外れてしまうといったおそれを回避するために、エア圧の供給停止状態で係合位置へ移動してその位置に維持されるように構成している。
なお、エア圧が停止された状態で出力移動部材114(ピストン112)を係合位置に維持するが、振動その他の外部からの入力などにより係合状態が解除されてしまう(退避位置方向へと微小移動する)おそれも想定されるため、出力移動部材114(ピストン112)を所定の係合位置へバネなどの弾性要素300により弾性付勢するような構成、或いはマグネット等の磁着要素301により吸着保持させるような構成とすることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、アクチュエータ113、出力移動部材114(ピストン112)、リンク機構Lなどをワーク搬送装置1(係合装置100)側に搭載した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ワーク保持装置3側にアクチュエータ113、出力移動部材114(ピストン112)、リンク機構Lなどを搭載し、被係合部30,40をワーク搬送装置1(係合装置100)側に搭載する構成とすることもできる。
【0066】
また、本実施の形態では、ワーク搬送装置として、
図1に示したような略水平面内を揺動可能に構成されたアームユニット(第1アーム及び第2アーム等)を備えたワーク搬送装置1を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成のワーク搬送装置に、本発明に係るワーク保持装置の着脱支持機構を適用することが可能である。
【0067】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 ワーク搬送装置
1A、1B ロボット(スカラロボット)
3 ワーク保持装置
10A,10B アームユニット
10X 第1関節(肩関節)
10Y 第2関節(肘関節)
10Z 第3関節(手首)
11 第1アーム(上腕)
12 第2アーム(前腕)
20 支持部材
20X 第4関節
30 被係合部
30A 第1当接面
30B 第2当接面
30C 位置決めピン
40 被係合部
40A 当接面
40B 位置決めピン
50 フレーム
100 係合装置
110 第1係合部
111 シリンダ
112 ピストン
112A 第1連結ピン(或いは孔)
113 アクチュエータ
114 出力移動部材
115 第1連結部材
115A 第1連結孔(或いはピン)
115B 第2連結孔(或いはピン)
116 第2連結部材
116A 第2連結ピン(或いは孔)
116B 第3連結孔(又はピン)
116C 第3連結ピン(或いは孔)
116D 係止部(ストッパー)
117 当接部
117A 当接面
118 位置決めピン孔
120 第2係合部
121 位置決めピン孔