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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084723
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198954
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博信
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 知克
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707CY36
3C707DS02
3C707ES03
3C707ET08
3C707EU01
3C707EU18
3C707EV02
3C707EW14
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】微細部品の自動組立に対応するため、小型のアクチュエータを使用することで、小さな把持力で対象物を把持することが可能なグリッパにおいて、グリッパ本体を小型化する。
【解決手段】対象物を把持する第1爪4及び第2爪5と、第1爪4が固定されハウジング7の内部を直動方向に移動する第1スライド部材12と、第2爪5が固定されハウジング7の内部を直動方向に移動する第2スライド部材13と、第1スライド部材12を駆動する第1アクチュエータと、第2スライド部材13を駆動する第2アクチュエータと、を備え、第1アクチュエータと第2アクチュエータを、第1爪4と第2爪5の移動方向に対して直交する方向にハウジング7内でオフセットしたことを特徴とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する第1爪及び第2爪と、
前記第1爪が固定されハウジングの内部を直動方向に移動する第1スライド部材と、前記第2爪が固定され前記ハウジングの内部を直動方向に移動する第2スライド部材と、
前記第1スライド部材を駆動する第1アクチュエータと、前記第2スライド部材を駆動する第2アクチュエータと、を備え、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータはそれぞれ、前記第1爪と前記第2爪の移動方向に対して直交する方向に前記ハウジング内でオフセットした位置にあることを特徴とするグリッパ。
【請求項2】
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータは、前記ハウジング内部を仕切る壁部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記第1スライド部材と前記第2スライド部材は、同一形状であり、前記ハウジングの下側に前記第1爪と前記第2爪の移動方向に対して平行かつ対向して配置されたリニアガイドを構成するリニアガイドブロックのうち、前記第1爪と前記第2爪の移動方向に対して直交に対向する一対の前記リニアガイドブロックにそれぞれ固定されている請求項1または2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記第1アクチュエータ及び第2アクチュエータは、リードスクリューのネジ部を回転駆動するモータであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のグリッパ。
【請求項5】
前記リードスクリューのネジ部に螺合されたナット部材が、前記第1スライド部材及び第2スライド部材と別部材として構成され、前記第1スライド部材及び第2スライド部材に固定されていることを特徴とする請求項4に記載のグリッパ。
【請求項6】
前記第1スライド部材と前記第2スライド部材とは、独立に移動が可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のグリッパ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に微細部品や壊れやすい部品を把持するグリッパに関し、特に部品を把持した状態で位置決め可能なグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壊れやすい部品を把持したり、把持力を微調整したりすることが可能なグリッパとして、把持部である左右2つの爪をそれぞれ独立に駆動できるようにしたグリッパが知られている。例えば、特許文献1では、互いに独立に運動可能な第1爪と第2爪をそれぞれ第1アクチュエータと第2アクチュエータで駆動制御することで、把持位置や把持力の調整を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-120990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、様々な製品の小型化に伴い、それらの製品を構成する微細部品の自動組立に対するニーズが高まっている。そのため、自動機やロボットに適用されるグリッパに関しても、把持する部品のサイズや小さな把持力に対応するため、小型化が求められている。
【0005】
特許文献1のグリッパは、第1爪と第2爪にそれぞれ係合するネジ軸とこれを回転駆動するそれぞれのモータが同一軸線上に配置されているため、各爪の可動範囲に対してモータを配置するためのスペースが増大し、グリッパ本体が大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るグリッパは、
対象物を把持する第1爪及び第2爪と、
前記第1爪が固定されハウジングの内部を直動方向に移動する第1スライド部材と、
前記第2爪が固定され前記ハウジングの内部を直動方向に移動する第2スライド部材と、
前記第1スライド部材を駆動する第1アクチュエータと、前記第2スライド部材を駆動する第2アクチュエータと、
を備え、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータはそれぞれ、前記第1爪と前記第2爪の移動方向に対して直交する方向に前記ハウジング内でオフセットした位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、グリッパ本体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るグリッパの全体を示す外観斜視図
図2】グリッパの内部構成を示す斜視図
図3】グリッパ内部の主要部のみを示す斜視図
図4】リニアガイドの構成を示す斜視図
図5】グリッパの内部構成を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は正面図AにおけるA-A断面図、(D)は側面図BにおけるB―B断面図
図6】スライド部材の構成を示す図で、(A)は斜視図、(B)は分解斜視図
図7】スライド部材のハウジングへの組込み方法を示す分解斜視図
図8】グリッパ駆動部の配置構成を示す下面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に沿って、本発明に係るグリッパの一実施形態について説明する。本実施形態のグリッパは、一例として、自動機やロボットなどの製造装置のアーム先端に取り付けられ、製造装置に設けられた制御部によって制御されることで微細部品をグリップして製品に実装することを可能にするものに適用される。
<実施形態>
【0010】
図1は本発明に係るグリッパの全体を示す斜視図である。図2はグリッパの内部構成を示す斜視図である。図3はグリッパの内部の主要部のみを示す斜視図である。
【0011】
図1において、本発明の一実施形態のグリッパ1は、下カバー2と上カバー3によって収納される略直方体形状からなり、下カバー2の下方に把持部である第1爪4及び第2爪5が突出している。また、上カバー3の上方には配線用の接続コネクタ6が突出している。なお、図1に示すX、Y、Z方向を以下の説明において使用する。
図2及び図3において、グリッパ1の内部のハウジング7には、第1爪4と第2爪5をそれぞれ独立に駆動するための駆動部のうちの第1モータ15(第1アクチュエータ)及び第2モータ16(第2アクチュエータ)が収納支持されている。本実施形態における、第1爪4と第2爪5は、同一部品を左右対称に配置したものであり、第1爪4の駆動部の構成は、第2爪5の駆動部の構成と同様である。
【0012】
図2に示すハウジング7の下側には、一対のリニアガイド8が第1爪4と第2爪5の移動方向に対して平行かつY方向に対向して配置されている。図4はリニアガイド8の構成を示す斜視図である。一対のリニアガイド8のそれぞれは、レール81と、レール81を共用してレール81に沿って直動方向に移動自在に係合支持された2つのリニアガイドブロック82、83によって構成されている。レール81は、ハウジング7に形成された直線状の溝部71、72に沿って平行に配置され、それぞれハウジング7の溝部内に、レール81に形成された貫通孔811を介して、外側からビス84で固定されている。
【0013】
また、図2に示すようにハウジング7の上側には、プリント基板9が固定されている。プリント基板9の両面にはそれぞれ、配線用の接続コネクタ6を含む各種コネクタ及び、第1フォトインタラプタ10、第2フォトインタラプタ11が実装されている(いずれも図2に不図示)。
【0014】
第1爪4、第2爪5は、それぞれ第1スライド部材12、第2スライド部材13にビスで連結固定されている。なお、第1爪4及び第2爪5の形状は把持する対象物に応じて変更可能である。第1スライド部材12と第2スライド部材13は、同一形状であり、第1爪4と第2爪5の移動方向に対して直交する方向に対向する一対のリニアガイドブロック82、83にそれぞれ複数のビス14(図5参照)で連結固定されている。
【0015】
図5はグリッパの内部構成を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は正面図AにおけるA-A断面図、(D)は側面図BにおけるB-B断面図である。
図5に示すように、第1モータ15及び第2モータ16の出力軸151、161には、リードスクリューのネジ部152、162がそれぞれ一体に形成されている。また、モータのフランジ部153、163には、モータ固定用の取付孔が形成されている。出力軸151、161のリードスクリューのネジ部152、162には、第1ナット部材17及び第2ナット部材18に形成されたナット部がそれぞれ螺合している。第1ナット部材17と第2ナット部材18は同一形状であり、第1スライド部材12、第2スライド部材13と同様に、一対のリニアガイド8上に対向して配置されている。
【0016】
図6は第1スライド部材12と第1ナット部材17の構成を示し、(A)は斜視図、(B)は分解斜視図である。第1スライド部材12には、位置決め用のダボ121、122と、タップ穴123、124が設けられている。第1ナット部材17には、ナット部171と、第1スライド部材12のダボ121、122に対応する孔172、長孔173及びタップ穴123、124に対応するビス孔174、175が形成されている。また、第1フォトインタラプタ10に対応する被検出部となる突起部176が一体に形成されている。第1スライド部材12と第1ナット部材17は、位置決めされた状態で、ビス19により連結固定されている。第2スライド部材13と第2ナット部材18に関しても同様である。
【0017】
図5に示すように、第1モータ15及び第2モータ16は、ハウジング7の内部を仕切る中央壁部73の異なる面側から所定の間隔を空けて、モータのフランジ部153、163の凸部154、164とそれぞれ嵌合する2つのモータ取付用貫通孔74、75に設けられている。この位置で第1モータ15及び第2モータ16は、フランジ部153、163のビス取付孔を介して、ハウジング7内にビスで固定されている。
【0018】
出力軸151、161の先端部は、ハウジング7のモータ取付用貫通孔74、75とそれぞれ同軸上に配置固定されたベアリング21、22を介して、回転自在に支持されている。さらに、出力軸151、161の先端には、ネジ部155、165が形成され、それぞれ六角ナット23、24と螺合している。これにより、六角ナット23、24は、ベアリング21、22の内輪に接触し、出力軸151、161は、スラスト方向の動きが規制され、スラストガタの発生を防止することができる。
【0019】
上述した構成に基づき、本実施形態のグリッパ1は、第1モータ15及び第2モータ16をそれぞれ回転駆動することで、第1爪4及び第2爪5の直動方向の移動(開閉動作)を独立に行うことが可能である。
【0020】
まず、第1モータ15及び第2モータ16をそれぞれモータの出力軸側から見て時計(CW)方向に回転させることにより、第1爪4及び第2爪5がそれぞれ外側(互いに離隔する方向)に移動する。図5(D)に示すように、第1スライド部材12及び第2スライド部材13に連結した第1ナット部材17及び第2ナット部材18の各突起部176、186が、第1フォトインタラプタ10、第2フォトインタラプタ11によって検知されることで、第1爪4及び第2爪5の原点基準位置が検知され、原点復帰動作が行われる。
【0021】
一方、第1爪4及び第2爪5の原点基準位置から、第1モータ15及び第2モータ16をそれぞれ反時計(CCW)方向に回転させることにより、第1爪4及び第2爪5は、それぞれ内側(互いに接近する方向)に移動し、対象物を把持することが可能である。
【0022】
第1爪4及び第2爪5の可動範囲において、第1モータ15及び第2モータ16の回転方向や回転移動量をそれぞれ独立に制御することで、対象物の把持位置や把持力の調整を行うことが可能である。即ち、第1爪4と第2爪5で対象物を把持した状態で、各爪の位置を移動させることにより、対象物の位置を動かしたり、対象物に加わる爪の把持力の強さを調節したりすることができる。
【0023】
なお、各爪の位置制御は、ステッピングモータによるオープンループ制御を前提としているが、各モータの出力軸にエンコーダを設けて、該エンコーダにより各爪の位置を間接的に検出して位置決め制御を行うことも可能である。
【0024】
本実施形態のグリッパ1においては、図8のグリッパ駆動部の配置構成を示す下面図に示すように、第1爪4及び第2爪5の駆動手段である第1モータ15及び第2モータ16が、それぞれ、図8に示す爪の中心線(第1爪4、第2爪5のY方向における概略中心を通る線)から、爪の移動方向に対して直交するY方向にオフセットした位置に設置されている。
【0025】
第1モータ15(第1アクチュエータ)及び第2モータ16(第2アクチュエータ)は、ハウジング7の内部を仕切る中央壁部73の異なる面側から配置されているため、換言すると、Y方向において、一方のモータ16又は15と他方のモータの出力軸のリードスクリューのネジ部152又は162とが並ぶように配置されている。
【0026】
この構成により、第1爪4及び第2爪5が固定された第1スライド部材12及び第2スライド部材13の可動範囲を確保しつつ、ハウジング7内のスペースを有効に活用することでハウジング7の幅方向のサイズを削減し、グリッパ1をX方向に小型化することができる。
【0027】
なお、オフセットの方向は水平方向(Y方向)に限らず、どの方向でも構わない。また、オフセットの量に関しては、第1爪4と第2爪5の形状を同じに設定できるため、同一であることが望ましいが、異なる量に設定しても良い。
【0028】
オフセットの方向を水平方向ではなくZ方向にした場合、上述したように一方の駆動部ともう一方のリードスクリューのネジ部152又は162がY方向に並ぶことはないが、Z方向にのみ広がるのでX方向とY方向に小型化することができる。
【0029】
本実施形態においては、ハウジング7の内部を仕切る中央壁部73の両面に各モータを対向配置したが、中央壁部73はハウジング7とは別部材であっても良い。また、1つの壁部の両面ではなく、互いに略平行に設けられた別々の壁部の外面側を基準にして対向配置しても良い。
【0030】
また、本実施においては、スライド部材とナット部材を別部材として構成しているが、第1スライド部材12及び第2スライド部材13を第1ナット部材17及び第2ナット部材18と一体化した形状として、第1スライド部材12及び第2スライド部材13にナット部を設けても良い。
【0031】
しかし、別部材とすることで、図7の分解斜視図に示すように、第1スライド部材12をハウジング7に組込む際に、ハウジング7の下側の開口部76に下方から真っすぐに挿入して、一対のリニアガイドブロック82にビス14で連結固定することができる。さらに、第1ナット部材17をハウジング7の上側から開口部76に真っすぐに差し込み、第1スライド部材12と第1ナット部材17に設けた位置決め手段(ダボ121、122と孔172及び長孔173)により位置決めした状態で、側面からビス19によりビス固定する。第2スライド部材13及び第2ナット部材18に関しても同様である。
【0032】
このようにスライド部材とナット部材を別部材として構成することにより、グリッパ1の組立作業性が大幅に向上する効果がある。
【0033】
また、別部材とすることで、部材の中で太くなってしまう部分である、リードスクリューのネジ部152及び162の部分と、リニアガイドブロック82及び83に取り付ける部分を通すためにリニアガイド8間を大きく広げずにすむため、Y方向に小型化できる。
【0034】
また、別部材とすることで、各部材に適した材質を選択することができる。例えば、スライド部材12、13の材質を剛性の高い金属とし、ナット部を備えたナット部材17、18の材質を摺動性の高い樹脂とすることが可能である。
【0035】
本実施形態においては、グリッパ1の第1爪4及び第2爪5を駆動する駆動手段として、モータの出力軸に一体に形成したリードスクリューのネジ部152、162と、これに螺合するナット部材による構成としているが、これに限らず、ミニチュアボールネジ等の直動機構や電動シリンダ、リニアボイスコイルアクチュエータ等のリニアアクチュエータでも良い。
【符号の説明】
【0036】
1 グリッパ
4 第1爪
5 第2爪
7 ハウジング
73 中央壁部
76 下側開口部
8 リニアガイド
81 レール
82、83 リニアガイドブロック
12 第1スライド部材
13 第2スライド部材
15 第1モータ
152 リードスクリューのネジ部
16 第2モータ
162 リードスクリューのネジ部
17 第1ナット部材
171 ナット部
18 第2ナット部材
181 ナット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8