(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084736
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】内接歯車ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20230613BHJP
F04C 15/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F04C2/10 341B
F04C15/00 B
F04C15/00 H
F04C2/10 341G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198985
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】海野 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
【テーマコード(参考)】
3H041
3H044
【Fターム(参考)】
3H041BB03
3H041CC03
3H041CC07
3H041CC20
3H041DD05
3H041DD17
3H041DD18
3H041DD23
3H044BB03
3H044CC03
3H044CC07
3H044CC19
3H044DD05
3H044DD15
3H044DD16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吐出ポートから吸入ポートへの漏れを低減して容積効率の低下を抑制しつつ歯車を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制し得る内接歯車ポンプを提供する。
【解決手段】両歯車5、6は軸方向一端面を軸方向に窪ませて凹部5C、6Cを形成する。凹部5C、6Cには周方向へ間隙を有して複数個の梁5G、6Gを形成する。各梁5G、6Gは径方向の外方端を両歯車5、6の外周側に接続すると共に、径方向の内方端を両歯車5、6の内周側に接続する。そして、各梁5G、6Gは軸方向一端面と両歯車5、6の回転方向Aにおける前方側の側面5H、6Hとが交差する交差部5I、6Iを円弧状に形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジングの収容孔に内歯を有するリング状の内歯歯車を回転自在に収容し、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、両歯車間には両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が増加する領域に液体を吸入する吸入ポートに連通して吸入域空間を形成し、両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が減少する領域に液体を吐出する吐出ポートに連通して吐出域空間を形成し、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とによりポンプ室を区画形成し、ポンプ室は両歯車の回転により吸入域空間で容積を増加して吸入ポートより液体を吸入すると共に、吐出域空間で容積を減少して吐出ポートに液体を吐出して設け、両歯車は軸方向一端面を軸方向に窪ませて凹部を形成し、凹部には周方向へ間隙を有して複数個の梁を形成し、各梁は径方向の外方端を両歯車の外周側に接続すると共に、径方向の内方端を両歯車の内周側に接続し、各梁は軸方向一端面と両歯車の回転方向における前方側の側面とが交差する交差部を円弧状に形成したことを特徴とする内接歯車ポンプ。
【請求項2】
前記両歯車は前記各梁の前記交差部を前記円弧状に替えて面取り状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の内接歯車ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の内歯歯車の内部に偏心して外歯歯車を収容し、両歯車を回転駆動して液体を吸入吐出する内接歯車ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内接歯車ポンプは、リング状の内歯歯車の内部に偏心して外歯歯車を収容し、両歯車の回転駆動で液体を吸入ポートより吸入して吐出ポートより吐出している。そして、外歯歯車は両端面を軸方向に窪ませて環状の凹部を形成し、軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の内接歯車ポンプでは、ポンプハウジングに円弧状に形成した吸入ポートと吐出ポートに環状の凹部が連通しないよう凹部の外周縁でシールしているため、外周縁は薄肉で両ポートと凹部との間のシール性が満足のいくものでなく、吐出ポートから凹部を経て吸入ポートへの漏れが増加して容積効率が低下する恐れがあった。これを解消するために、本出願人は、特願2020-208197号に示す如く、両歯車の軸方向一端面を窪ませて凹部を形成し、凹部に周方向へ間隙を有して複数個の梁を形成し、吐出ポートから吸入ポートへの漏れを低減する発明をなした。しかし、両歯車は凹部を形成した軸方向一端面と対向する平坦な軸方向他端面に吐出ポートの圧力が作用すると共に、軸方向一端面には吐出ポートの圧力より低く吸入ポートの圧力より高い中間圧力が作用するため、両歯車が軸方向一端面側に押圧されてポンプハウジングに押し付けられ、歯車を回転駆動する駆動トルクが増加してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明の課題は、吐出ポートから吸入ポートへの漏れを低減して容積効率の低下を抑制しつつ歯車を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制し得る内接歯車ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
ポンプハウジングの収容孔に内歯を有するリング状の内歯歯車を回転自在に収容し、内歯歯車の内歯と内接噛み合いする外歯を有する外歯歯車を内歯歯車の内部に偏心して収容し、両歯車間には両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が増加する領域に液体を吸入する吸入ポートに連通して吸入域空間を形成し、両歯車の回転により両歯間の噛み合い隙間が減少する領域に液体を吐出する吐出ポートに連通して吐出域空間を形成し、内歯歯車の内歯と外歯歯車の外歯とによりポンプ室を区画形成し、ポンプ室は両歯車の回転により吸入域空間で容積を増加して吸入ポートより液体を吸入すると共に、吐出域空間で容積を減少して吐出ポートに液体を吐出して設け、両歯車は軸方向一端面を軸方向に窪ませて凹部を形成し、凹部には周方向へ間隙を有して複数個の梁を形成し、各梁は径方向の外方端を両歯車の外周側に接続すると共に、径方向の内方端を両歯車の内周側に接続し、各梁は軸方向一端面と両歯車の回転方向における前方側の側面とが交差する交差部を円弧状に形成したことを特徴とする内接歯車ポンプがそれである。
【0007】
この場合、前記両歯車は前記各梁の前記交差部を前記円弧状に替えて面取り状に形成してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、両歯車は軸方向一端面を軸方向に窪ませて凹部を形成し、凹部には周方向へ間隙を有して複数個の梁を形成し、各梁は径方向の外方端を両歯車の外周側に接続すると共に、径方向の内方端を両歯車の内周側に接続し、各梁は軸方向一端面と両歯車の回転方向における前方側の側面とが交差する交差部を円弧状に形成した。このため、吐出ポートから漏れる液体は複数個の梁で吸入ポートへの漏れを抑制できると共に、両歯車の回転駆動により各梁の円弧状の交差部より両歯車の軸方向一端面とこの一端面と対向するポンプハウジングの一面との間に液体を導入させ易くできるから、この導入させ易くした液体で両歯車にくさび効果を生じさせて両歯車が軸方向一端面側に押圧されるのを抑制でき、吐出ポートから吸入ポートへの漏れを低減できて容積効率の低下を抑制しつつ歯車を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、両歯車は各梁の交差部を円弧状に替えて面取り状に形成した。このため、吐出ポートから漏れる液体は複数個の梁で吸入ポートへの漏れを抑制できると共に、両歯車の回転駆動により各梁の面取り状の交差部より両歯車の軸方向一端面とこの一端面と対向するポンプハウジングの一面との間に液体を導入させ易くできるから、この導入させ易くした液体で両歯車にくさび効果を生じさせて両歯車が軸方向一端面側に押圧されるのを抑制でき、吐出ポートから吸入ポートへの漏れを低減できて容積効率の低下を抑制しつつ歯車を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示した内接歯車ポンプの横断面図である。
【
図4】他実施形態を示した
図3に相当する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および
図2において、1はポンプ本体で、有底の収容孔2を形成している。3は蓋部材で、収容孔2の開口を閉じるようポンプ本体1に取付けている。そして、ポンプ本体1と蓋部材3は金属製であり、ポンプ本体1と蓋部材3とでポンプハウジング4を構成している。5はリング状の内歯歯車で、7個の内歯5Aを有し、収容孔2へ回転自在に収容している。6は外歯歯車で、内歯5Aと内接噛み合いする6個の外歯6Aを有し、内歯歯車5の内部に偏心して収容している。両歯車5、6はそれぞれ合成樹脂の成形品である。内歯歯車5の軸方向の一端面5Bおよび外歯歯車6の軸方向の一端面6Bは、収容孔2の底面にそれぞれ摺接可能とし、この底面をポンプハウジング4の一面4Aとし、平坦に形成している。
【0012】
両歯車5、6は一端面5B、6Bを軸方向に窪ませて複数の凹部5C、6Cを形成している。内歯歯車5に形成の凹部5Cは各内歯5Aに形成し、内歯5Aと同数の7個を設けている。そして、凹部5Cは外周を内歯歯車5の外周より若干小径に設けると共に、内周を内歯5Aに沿った形状で内歯5Aより若干外方に設けている。また、凹部5Cは軸方向の深さ寸法を内歯歯車5の幅寸法より若干小さく設けている。内歯歯車5は、凹部5C外周に外周薄肉部5Dを形成し、凹部5C内周に内周薄肉部5Eを形成し、凹部5C底面に底面薄肉部5Fを形成している。これで、凹部5Cは平面形状を内歯5Aに相似した若干小さな形状に設けている。
【0013】
5Gは凹部5Cに形成した梁で、周方向へ等間隔に7個を設けている。各梁5Gは内歯歯車5の径方向中心から各凹部5Cの周方向中心をとおり径方向外方へ放射状に形成し、径方向の外方端を内歯歯車5の外周側としての外周薄肉部5Dに接続すると共に、径方向の内方端を内歯歯車5の内周側としての内周薄肉部5Eにおける内歯5Aの各歯先部に接続している。そして、各梁5Gは軸方向の幅寸法を凹部5Cの軸方向の深さ寸法と略同一に設けている。
図3に示す如く、各梁5Gは軸方向一端面5Bと両歯車5、6の回転方向Aにおける前方側の側面5Hとが交差する交差部5Iを円弧状に形成している。
【0014】
5Jは隣接する2個の凹部5C間に有する離壁で、内歯歯車5の周方向へ等間隔に7個を設けている。各離壁5Jは軸方向一端面5Bと両歯車5、6の回転方向Aにおける前方側の側面5Kとが交差する交差部5Lを円弧状に形成している。内歯歯車5は各凹部5Cと各離壁5Jとを周方向へ交互に等間隔に設けている。
【0015】
外歯歯車6に形成の凹部6Cは環状に形成し、外周を外歯6Aに沿った形状で外歯6Aより若干小さく設けている。また、凹部6Cは内周を径方向中心に軸方向へ貫通形成の貫通孔7より大径に設けている。また、凹部6Cは軸方向の深さ寸法を外歯歯車6の幅寸法より若干小さく設けている。外歯歯車6は、凹部6C外周に外周薄肉部6Dを形成し、凹部6C内周にボス部6Eを形成し、凹部6C底面に底面薄肉部6Fを形成している。貫通孔7は縦断面で略二面幅形状で、先端部の縦断面を略二面幅形状にした駆動軸8を嵌合している。駆動軸8はポンプ本体1に配置したシール部材9で軸封し、外歯歯車6を回転駆動する。
【0016】
6Gは凹部6Cに形成した梁で、周方向へ等間隔に12個を設けている。各梁6Gは外歯歯車6の径方向中心から径方向外方へ放射状に形成し、径方向の外方端を外歯歯車6の外周側としての外周薄肉部6Dにおける外歯6Aの各歯先部に接続する6個の梁6G1と、径方向の外方端を外歯歯車6の外周側としての外周薄肉部6Dにおける外歯6Aの各歯底部に接続する6個の梁6G2とから成っている。各梁6G1、6G2は径方向の内方端を外歯歯車6の内周側としてのボス部6Eに接続し、梁6G1と梁6G2とを周方向へ交互に配置している。そして、各梁6G1、6G2は軸方向の幅寸法を凹部6Cの軸方向の深さ寸法と略同一に設けている。各梁6G1、6G2は、軸方向一端面6Bと両歯車5、6の回転方向Aにおける前方側の側面6Hとが交差する交差部6Iを、
図3に示す内歯歯車5の梁5Gの交差部5Iと略同形状の円弧状に形成している。
【0017】
両歯車5、6は一端面5B、6Bと対向する他端面5M、6Mを平坦に形成している。両歯車5、6の他端面5M、6Mは収容孔2の開口を閉じる蓋部材3の側面に摺接し、この側面をポンプハウジング4の他面4Bとし、平坦に形成している。Sは吸入域空間、Pは吐出域空間でそれぞれ両歯車5、6間に備え、吸入域空間Sは両歯車5、6の回転により両歯5A、6A間の噛み合い隙間が増加する領域に形成している。また、吐出域空間Pは両歯車5、6の回転により両歯5A、6A間の噛み合い隙間が減少する領域に形成している。Tはポンプ室で、内歯歯車5の内歯5Aと外歯歯車6の外歯6Aとにより複数個を区画形成し、両歯車5、6の回転により吸入域空間Sで容積を増加すると共に、吐出域空間Pで容積を減少して設ける。
【0018】
10は吸入域空間Sに連通する吸入ポートで、ポンプハウジング4の他面4Bに半円弧状に窪み形成して開口している。11は吸入ポート10に接続する吸入流路で、蓋部材3に形成し、低圧側から吸入する液体を流通する。12は吐出域空間Pに連通する吐出ポートで、ポンプハウジング4の他面4Bに半円弧状に窪み形成し、吸入ポート10と径方向の対称位置に開口している。13は吐出ポート12に接続する吐出流路で、蓋部材3に形成し、負荷側に吐出する液体を流通する。
【0019】
各凹部5Cは、吐出域空間Pでは吐出ポート12に吐出する液体の一部(微量)が、内周薄肉部5E先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して内部に導入すると共に、吸入域空間Sでは内部の液体の一部が内周薄肉部5E先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して吸入ポート10へ導出する。このため、各凹部5Cは、吐出域空間Pでは吐出ポート12の圧力より若干低い中間圧力となり、吸入域空間Sでは吸入ポート10の圧力より若干高い中間圧力となる。
【0020】
各凹部6Cは、吐出域空間Pでは吐出ポート12に吐出する液体の一部(微量)が、外周薄肉部6D先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して内部に導入すると共に、吸入域空間Sでは内部の液体の一部が外周薄肉部6D先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して吸入ポート10へ導出する。このため、各凹部6Cは、吐出域空間Pでは吐出ポート12の圧力より若干低い中間圧力となり、吸入域空間Sでは吸入ポート10の圧力より若干高い中間圧力となる。
【0021】
次に、かかる構成の作動を説明する。
駆動軸8により外歯歯車6を回転駆動すると、外歯歯車6と内接噛み合いする内歯歯車5が回転駆動され、低圧側から液体が吸入流路11を流れ、吸入ポート10から吸入域空間Sに吸入されて吐出域空間Pに搬送され、吐出ポート12より吐出流路13を流れて吐出される。
【0022】
このとき、吐出域空間Pより吐出ポート12を流れて吐出する液体の一部(微量)は、内歯歯車5の内周薄肉部5E先端とポンプハウジング4の一摺接面4Aとの間を介して吐出域空間Pに位置する凹部5Cに導入すると共に、外歯歯車6の外周薄肉部6D先端とポンプハウジング4の一摺接面4Aとの間を介して吐出域空間Pに位置する凹部6Cに導入する。よって、吐出域空間Pに位置する凹部5C、6Cは吐出ポート12の圧力より若干低い中間圧力となる。
【0023】
いっぽうで、吸入域空間Sに位置する凹部5Cの液体の一部(微量)は、内周薄肉部5E先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して吸入域空間Sから吸入ポート10に導出する。また、吸入域空間Sに位置する凹部6Cの液体の一部(微量)は、外周薄肉部6D先端とポンプハウジング4の一面4Aとの間を介して吸入ポート10に導出する。よって、吸入域空間Sに位置する凹部5C、6Cは吸入ポート10の圧力より若干高い中間圧力となる。
【0024】
また、各梁5G、6Gの交差部5I、6Iより各梁5G、6Gの軸方向一端面5B、6Bとポンプハウジング4の一面4Aとの間に液体を導入させてくさび効果を生じさせ、両歯車5、6が軸方向一端面5B、6B側に押圧されるのを抑制する。
【0025】
かかる作動において、両歯車5、6は軸方向一端面5B、6Bを軸方向に窪ませて凹部5C、6Cを形成し、凹部5C、6Cには周方向へ間隙を有して複数個の梁5G、6Gを形成し、各梁5G、6Gは径方向の外方端を両歯車5、6の外周側に接続すると共に、径方向の内方端を両歯車5、6の内周側に接続し、各梁5G、6Gは軸方向一端面5B、6Bと両歯車5、6の回転方向Aにおける前方側の側面5H、6Hとが交差する交差部5I、6Iを円弧状に形成した。このため、吐出ポート12から漏れる液体は複数個の梁5G、6Gで吸入ポート10への漏れを抑制できると共に、両歯車5、6の回転駆動により各梁5G、6Gの円弧状の交差部5I、6Iより各梁5G、6Gの軸方向一端面5B、6Bとこの一端面5B、6Bと対向するポンプハウジング4の一面4Aとの間に液体を導入させ易くできるから、この導入させ易くした液体で両歯車5、6にくさび効果を生じさせて両歯車5、6が軸方向一端面5B、6B側に押圧されるのを抑制でき、吐出ポート12から吸入ポート10への漏れを低減できて容積効率の低下を抑制しつつ歯車5、6を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制することができる。また、両歯車5、6は凹部5C、6Cに形成した複数個の梁5G、6Gで強度を向上することができる。
【0026】
また、両歯車5、6は一端面5B、6Bと対向する他端面5M、6Mを平坦に形成し、ポンプハウジング4は両歯車5、6の一端面5B、6Bが摺接する一面4Aを平坦に形成すると共に、両歯車5、6の他端面5M、6Mが摺接する他面4Bに吸入ポート10と吐出ポート12とを開口した。このため、吸入ポート10と吐出ポート12とを開口したポンプハウジング4の他面4Bには両歯車5、6の平坦に形成した他端面5M、6Mが摺接するから、吸入ポート10と吐出ポート12が両歯車5、6の一端面5B、6Bに窪み形成した凹部5C、6Cに露呈することなくでき、吐出ポート12から吸入ポート10への漏れをより低減できて容積効率の低下を一層抑制できる。
【0027】
図4は本発明の他実施形態を示し、一実施形態と同一個所については同符号を付して説明を省略し、異なる個所についてのみ説明する。
内歯歯車5の各梁5Gの軸方向一端面5Bと前方側の側面5Hとが交差する交差部55Iを面取り状に形成した。また、図示しないが、外歯歯車6の各梁6Gの交差部6Iを、交差部55Iと略同形状の面取り状に形成した。
【0028】
作動は、一実施形態と略同様に、駆動軸8で外歯歯車6を回転駆動し、液体を吸入ポート10から吸入して吐出ポート12より吐出する。
【0029】
かかる作動において、両歯車5、6は各梁5G、6Gの交差部55Iを面取り状に形成した。このため、一実施形態と略同様に、両歯車5、6にくさび効果を生じさせて両歯車5、6が軸方向一端面5B、6B側に押圧されるのを抑制でき、吐出ポート12から吸入ポート10への漏れを低減できて容積効率の低下を抑制しつつ歯車5、6を回転駆動する駆動トルクの増加を抑制することができる。
【0030】
なお、前述の各実施形態では、ポンプハウジング4をポンプ本体1と蓋部材3とで構成したが、ポンプハウジングを両歯車を収容する収容孔を貫通形成する第1部材と第1部材の一方側に取付けて両歯車の一端面が摺接する第2部材と第1部材の他方側に取付けて両歯車の他端面が摺接する第3部材との3つの部材で構成してもよい。また、外歯歯車6を回転駆動する駆動軸8を嵌合する貫通孔7は縦断面で略二面幅形状に形成したが、貫通孔を縦断面で略D字形状やスプライン形状に形成してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
2:収容孔
4:ポンプハウジング
5:内歯歯車
5A:内歯
5B、6B:一端面
5C、6C:凹部
5G、6G、6G1、6G2:梁
5H、6H:側面
5I、6I、55I:交差部
6:外歯歯車
6A:外歯
10:吸入ポート
12:吐出ポート
S:吸入域空間
P:吐出域空間
T:ポンプ室