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  • 特開-鉄道台車の点検方法 図1
  • 特開-鉄道台車の点検方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084752
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】鉄道台車の点検方法
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/00 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B61F5/00 D
B61F5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199009
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】亀甲 智
(72)【発明者】
【氏名】牧野 泰三
(72)【発明者】
【氏名】横関 耕一
(72)【発明者】
【氏名】谷峰 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】渡里 宏二
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
(72)【発明者】
【氏名】水野 将明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 修
(57)【要約】
【課題】疲労損傷に関して、定期点検時に、検査精度を確保しつつ、検査効率を向上できる鉄道台車の点検方法を提供する。
【解決手段】点検方法は、各々が台車枠を備える複数の鉄道台車の点検方法である。複数の台車は、同一の寸法形状を有し且つ同一の路線で使用される。当該点検方法は、設定工程(#10)と、使用工程(#20)と、検査工程(#30)と、を備える。設定工程(#10)では、複数の鉄道台車を第1台車及び第2台車のいずれかに割り付ける。第1台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に劣る第1台車枠であり、第2台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に優れる第2台車枠である。検査工程(#30)では、路線で使用された第1台車及び第2台車を定期点検する。検査工程(#30)では、第1台車枠の全面を非破壊検査し、第2台車枠について設計上の重要点検箇所を非破壊検査する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が台車枠を備え、同一の寸法形状を有し且つ同一の路線で使用される複数の鉄道台車の点検方法であって、
前記複数の鉄道台車を第1台車及び第2台車のいずれかに割り付ける設定工程であって、前記第1台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に劣る第1台車枠であり、前記第2台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に優れる第2台車枠である、前記設定工程と、
前記第1台車及び前記第2台車を前記路線で使用する使用工程と、
前記第1台車及び前記第2台車を定期点検する検査工程であって、前記第1台車枠の全面を非破壊検査し、前記第2台車枠について設計上の重要点検箇所を非破壊検査する、前記検査工程と、を備える、鉄道台車の点検方法。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道台車の点検方法であって、
前記第1台車枠は、前記設定工程でメッキを施された前記台車枠である、鉄道台車の点検方法。
【請求項3】
請求項1に記載の鉄道台車の点検方法であって、
前記第2台車枠は、前記設定工程でショットピーニング又は溶射を施された前記台車枠である、鉄道台車の点検方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道台車の点検方法であって、
前記設定工程にて、前記第1台車枠にひずみセンサを取り付け、
前記使用工程にて、前記ひずみセンサの検出値より前記第1台車枠の状態を監視する、鉄道台車の点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道台車(以下、単に「台車」とも言う。)の点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、1つの鉄道路線で、多数の列車が運行する。通常、列車は複数の車両から構成され、各車両は2つの台車を備える。つまり、1つの路線で、例えば100台以上の多数の台車が繰り返し使用される。列車の安全な走行を維持するためには、台車の定期点検は欠かせない。定期点検時、台車の疲労損傷を確認するため、非破壊検査が行われる。台車のうちで台車枠の占める範囲は広い。このため、各台車枠を全面にわたって非破壊検査することは、多大な労力を要する。
【0003】
例えば特開2005-164247号公報(特許文献1)は、疲労センサに関する技術を開示する。特許文献1に開示される疲労センサは、箔状であり、数ミリ角の大きさを有する。特許文献1には、疲労センサを台車枠に貼り付けることにより、鉄道台車の使用中に台車枠の疲労損傷を検知できることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-164247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疲労センサは、特定の一方向に発生する疲労損傷を検知できる。しかしながら、台車枠には、様々な荷重が複雑に作用する。そのため、台車枠において、疲労が蓄積する位置や方向は不確かである。さらに、どのような疲労損傷が発生するのかも不確かである。そうすると、疲労センサを貼り付ける位置や方向を特定することは困難である。この場合、疲労センサのみによって疲労損傷を精度よく検知できるとは言えない。したがって、特許文献1に記載された技術では、依然として、定期点検時に、各台車枠を全面にわたって非破壊検査することが必要になる。
【0006】
本開示の目的は、疲労損傷に関して、定期点検時に、検査精度を確保しつつ、検査効率を向上できる鉄道台車の点検方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る鉄道台車の点検方法は、各々が台車枠を備える複数の鉄道台車の点検方法である。複数の鉄道台車は、同一の寸法形状を有し且つ同一の路線で使用される。当該点検方法は、設定工程と、使用工程と、検査工程と、を備える。設定工程では、複数の鉄道台車を第1台車及び第2台車のいずれかに割り付ける。第1台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に劣る第1台車枠であり、第2台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に優れる第2台車枠である。使用工程では、第1台車及び第2台車を路線で使用する。検査工程では、第1台車及び第2台車を定期点検する。検査工程では、第1台車枠の全面を非破壊検査し、第2台車枠について設計上の重要点検箇所を非破壊検査する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る鉄道台車の点検方法によれば、疲労損傷に関して、定期点検時に、検査精度を確保しつつ、検査効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係る鉄道台車の点検方法を示すフロー図である。
図2図2は、本実施形態に係る点検方法の適用条件の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明において特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本開示はそれらの例示に限定されない。
【0011】
本実施形態に係る鉄道台車の点検方法は、各々が台車枠を備える複数の鉄道台車の点検方法である。複数の鉄道台車は、同一の寸法形状を有し且つ同一の路線で使用される。当該点検方法は、設定工程と、使用工程と、検査工程と、を備える。設定工程では、複数の鉄道台車を第1台車及び第2台車のいずれかに割り付ける。第1台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に劣る第1台車枠であり、第2台車が備える台車枠は、相対的に疲労強度に優れる第2台車枠である。使用工程では、第1台車及び第2台車を路線で使用する。検査工程では、第1台車及び第2台車を定期点検する。検査工程では、第1台車枠の全面を非破壊検査し、第2台車枠について設計上の重要点検箇所を非破壊検査する(第1の構成)。
【0012】
第1の構成の点検方法では、複数の台車は、第1台車及び第2台車から構成され、同一の寸法形状を有し、且つ同一の路線で使用される。つまり、第1台車及び第2台車は、同一の条件で使用される。この場合、第1台車と第2台車の間で、疲労損傷に関する傾向が一致する。ただし、第1台車の第1台車枠は相対的に疲労強度に劣り、第2台車の第2台車枠は相対的に疲労強度に優れる。つまり、第1台車枠の疲労強度は、第2台車枠の疲労強度よりも低い。この場合、疲労損傷は、第2台車枠よりも早い時期に第1台車枠で発生することになる。そうすると、定期点検する検査工程にて、第1台車枠を集中的に非破壊検査すれば、第1台車枠の検査結果で第2台車枠の品質を保証できる。本明細書において、台車枠(第1台車枠及び第2台車枠)の全面は、走行に無関係な付加物(例:台車吊り金具)を含まなくてもよいし、含んでもよい。
【0013】
したがって、第2台車枠については設計上の重要点検箇所といった一部を非破壊検査すれば、複数の鉄道台車すべての検査精度を確保できる。この場合、第2台車枠の非破壊検査は、全面ではなくて一部で十分となる。このため、検査効率を向上できる。
【0014】
複数の台車のうちの第1台車の数、すなわち第1台車枠の数は、少なくとも1つあればよい。第1台車枠の非破壊検査は全面に行う必要があるため、第1台車枠の数が少ないほど、検査効率を高めることができる。
【0015】
典型的な例では、1つの列車において、第1台車枠の数は1つであり、第1台車枠以外の残りの台車枠が第2台車枠である。1つの列車において、第1台車枠の数が2つ又はそれ以上であってもよい。また、複数の列車において、第1台車枠の数が1つであってもよい。つまり、複数の列車のうちの1つの列車が第1台車枠を有していれば、第1台車枠を有さずに第2台車枠のみを有する列車があってもよい。
【0016】
第1の構成の点検方法において、好ましくは、第1台車枠は、設定工程でメッキを施された台車枠である(第2の構成)。メッキを施された台車枠の疲労強度は、メッキを施されていない台車枠の疲労強度と比較して、低下する。このため、台車枠にメッキを施せば、第1台車枠を作製することができる。この場合、台車枠に、設計仕様以外の表面処理を施さなければ、その台車枠はそのまま第2台車枠と扱うことができる。ここで設計仕様では、台車枠にメッキは施されない。
【0017】
検査効率を高める観点では、上記の通り、第1台車枠の数は少ないほどよい。第2の構成の場合、第1台車枠の数が少なければ、設定工程で表面処理(メッキ)の工数が少なくて済み、設定工程が簡素になる。したがって、第2の構成の点検方法は、設定工程の作業効率が高い点で有用である。
【0018】
第1の構成の点検方法において、第2台車枠は、設定工程でショットピーニング又は溶射を施された台車枠であってもよい(第3の構成)。ショットピーニングを施された台車枠の疲労強度は、ショットピーニングを施されていない台車枠の疲労強度と比較して、上昇する。このため、台車枠にショットピーニングを施せば、第2台車枠を作製することができる。この場合、台車枠に、設計仕様以外の表面処理を施さなければ、その台車枠はそのまま第1台車枠と扱うことができる。溶射の場合もショットピーニングの場合と同様のことが言える。ここで設計仕様では、台車枠にショットピーニングも溶射も施されない。
【0019】
検査効率を高める観点では、上記の通り、第1台車枠の数は少ないほどよい。この点、第3の構成の場合、第1台車枠の数が少なければ、第2台車枠の数が多くなり、設定工程で表面処理(ショットピーニングや溶射)の工数が多くなる。このため、設定工程が複雑になることは否めない。もっとも、いずれの台車枠(第1台車枠及び第2台車枠)も疲労強度が低下しない。したがって、第3の構成の点検方法は、安全性が高い点で有用である。
【0020】
第1の構成から第3の構成のいずれか1つの点検方法において、好ましくは、設定工程にて、第1台車枠にひずみセンサを取り付け、使用工程にて、ひずみセンサの検出値より第1台車枠の状態を監視する(第4の構成)。第4の構成の点検方法の場合、使用工程において、相対的に疲労強度が劣る第1台車枠に仮に異常が発生しても、その異常を検知することができる。これにより、使用工程での第1台車枠の信頼性を保証することができ、その結果として、使用工程で全ての台車枠の信頼性を担保することができる。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る鉄道台車の点検方法の具体例を説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る鉄道台車の点検方法を示すフロー図である。図1を参照して、本実施形態の点検方法は、大きくは、設定工程(#10)と、使用工程(#20)と、検査工程(#30)と、を含む。図1に示す本実施形態の点検方法のフローは、後述する各実施形態に共通する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る点検方法の適用条件の一例を示す模式図である。本実施形態の点検方法は、複数の鉄道台車1の点検方法である。これらの台車1の各々は、台車枠2を含む。各台車1は、さらに車軸、車輪、軸箱、歯車装置、電動機(例:電動モータ)、牽引装置、ボルスタ、及び車体支持用ばね(例:空気ばね)等を含む。各台車1は、同一の寸法形状を有し、同一の設計仕様で製造されたものである。
【0024】
台車1は、例えば、車体3の前部と後部にそれぞれ配置される。つまり、1つの車体3と2つの台車1によって1つの車両4が構成される。複数の車両4が連結されて、1つの列車5が構成される。列車5は、ターミナル駅同士の間の同一の路線Lを繰り返し走行する。また、同じように構成された複数の列車5が同一の路線Lを繰り返し走行する。この場合、各台車1は、同一の路線Lで使用される。このため、各台車1は、同一の条件で使用される。図2に示す例では、列車5が6つの台車1を備える。
【0025】
図1及び図2を参照して、本実施形態の点検方法について説明を続ける。上記の通り、本実施形態の点検方法は、設定工程(#10)と、使用工程(#20)と、検査工程(#30)と、を含む。本実施形態の点検方法では、実際に列車5が路線Lを走行する前に、すなわち各台車1が使用される前に、設定工程(#10)が実施される。つまり、設定工程(#10)の後、使用工程(#20)が実施される。そして、使用工程(#20)の後、定期点検として検査工程(#30)が実施される。
【0026】
設定工程(#10)では、複数の台車1を第1台車11及び第2台車12のいずれかに割り付ける。図2に示す例では、6つの台車1が、1つの第1台車11と、5つの第2台車12に割り付けられている。第1台車11が備える台車枠2は、第2台車12が備える台車枠2と異なる疲労強度を有する。第1台車11の台車枠2は第1台車枠21であり、第1台車枠21の疲労強度は相対的に低い。第2台車12の台車枠2は第2台車枠22であり、第2台車枠22の疲労強度は相対的に高い。つまり、第1台車枠21の疲労強度は、第2台車枠22の疲労強度よりも低い。第1台車枠21の数は1つであり、第2台車枠22の数は5つである。
【0027】
第1台車枠21は、メッキを施された台車枠2である。第2台車枠22は、メッキを施されていない台車枠2である。ここで、設計仕様では、台車枠2にメッキは施されない。したがって、第2台車枠22は、設計仕様以外の表面処理を施されていない設計仕様ままの台車枠2である。メッキを施された台車枠2(第1台車枠21)の疲労強度は、メッキを施されていない台車枠2(第2台車枠22)の疲労強度と比較して、低下する。この場合、疲労強度の低下量は30%程度である。
【0028】
次に、使用工程(#20)では、第1台車11(第1台車枠21)及び第2台車12(第2台車枠22)を備える列車5を路線Lで走行させる。この場合、第1台車11及び第2台車12は、同一の路線Lで使用される。このため、第1台車11及び第2台車12は、同一の条件で使用される。定期点検の時期が来るまで、このような第1台車11及び第2台車12の使用は繰り返される。
【0029】
検査工程(#30)では、第1台車11及び第2台車12を定期点検する。このとき、第1台車枠21の全面を非破壊検査する。一方、第2台車枠22について設計上の重要点検箇所を非破壊検査する。重点点検箇所は、設計仕様で定められている。
【0030】
非破壊検査の方法は特に限定されない。非破壊検査の方法として、鉄道台車の定期点検で用いられる周知の方法を適用できる。例えば、非破壊検査の方法として、目視検査、超音波探傷試験、渦電流探傷試験、磁粉探傷試験、及び浸透探傷試験等を適用できる。
【0031】
なお、検査工程(#30)では、第1台車枠21及び第2台車枠22それぞれの非破壊検査とともに、第1台車11及び第2台車12それぞれを構成する各要素(車軸、車輪、軸箱、歯車装置、電動機、牽引装置、ボルスタ、及び車体支持用ばね等)の検査も実施される。
【0032】
[効果]
本実施形態の点検方法では、使用工程(#20)において、第1台車11及び第2台車12は、同一の条件で使用される。この場合、第1台車11と第2台車12の間で、疲労損傷に関する傾向が一致する。つまり、第1台車枠21と第2台車枠22の間で、疲労が蓄積する位置や方向が一致し、疲労損傷が発生する位置が一致する。ただし、第1台車枠21の疲労強度は、第2台車枠22の疲労強度よりも低い。この場合、疲労損傷は、第2台車枠22よりも早い時期に第1台車枠21で発生することになる。そうすると、定期点検する検査工程(#20)にて、第1台車枠21を集中的に全面にわたって非破壊検査すれば、第1台車枠21の検査結果で第2台車枠22の品質を保証できる。
【0033】
したがって、第2台車枠22については設計上の重要点検箇所といった一部を非破壊検査すれば、複数の鉄道台車1すべての検査精度を確保できる。この場合、第2台車枠22の非破壊検査は、全面ではなくて一部で十分となる。例えば、第1台車枠21の非破壊検査で疲労損傷が確認されなかった場合、第2台車枠22の非破壊検査は、重要点検箇所のみで行えば十分である。仮に第1台車枠21の非破壊検査で疲労損傷が確認された場合、第2台車枠22の非破壊検査は、重要点検箇所に加えて、第1台車枠21の疲労損傷が確認された位置で行えば十分である。このため、検査効率を向上できる。要するに、疲労損傷に関して、定期点検時に、検査精度を確保しつつ、検査効率を向上することができる。
【0034】
本実施形態では、1つの列車5において、第1台車枠21の数は1つであり、第2台車枠22の数は5つである。第1台車枠21の数は、少なくとも1つあればよい。第1台車枠21の非破壊検査は全面に行う必要があるため、第1台車枠21の数が少ないほど、検査効率を高めることができる。換言すれば、第2台車枠22の数が相対的に多いほど、検査効率を高めることができる。
【0035】
検査効率を高める観点では、上記の通り、第1台車枠21の数は少ないほどよい。第1台車枠21の数が少なければ、設定工程(#10)で表面処理(メッキ)の工数が少なくて済む。数の多い第2台車枠22に表面処理は行わない。このため、設定工程(#10)が簡素になり、設定工程(#10)の作業効率が高い。
【0036】
[第2実施形態]
第2実施形態の点検方法は、上記した第1実施形態における設定工程(#10)を変更したものである。以下、上記の図1及び図2を参照して、本実施形態の点検方法を説明する。
【0037】
設定工程(#10)において、第2台車枠22は、ショットピーニングを施された台車枠2である。第1台車枠21は、ショットピーニングを施されていない台車枠2である。ここで、設計仕様では、台車枠2にショットピーニングも溶射も施されない。したがって、第1台車枠21は、設計仕様以外の表面処理を施されていない設計仕様ままの台車枠2である。ショットピーニングを施された台車枠2(第2台車枠22)の疲労強度は、ショットピーニングを施されていない台車枠2(第1台車枠21)の疲労強度と比較して、上昇する。つまり、上記した第1実施形態と同様に、第1台車枠21の疲労強度は、第2台車枠22の疲労強度よりも低い。
【0038】
さらに、使用工程(#20)及び検査工程(#30)は、上記した第1実施形態と同様である。したがって、上記した第1実施形態と同様に、疲労損傷に関して、定期点検時に、検査精度を確保しつつ、検査効率を向上することができる。
【0039】
また、第1実施形態と同様に、検査効率を高める観点では、第1台車枠21の数は少ないほどよい。この点、本実施形態の場合、第1台車枠21の数が少なければ、設定工程(#10)で表面処理(ショットピーニング)の工数が多くなる。第2台車枠22の数が多くなるからである。そうすると、設定工程(#10)が複雑になることは否めない。もっとも、いずれの台車枠2(第1台車枠21及び第2台車枠22)も疲労強度が低下しない。このため、安全性が高い。
【0040】
本実施形態では、ショットピーニングに代えて溶射を採用することができる。ショットピーニングの場合と同様に、溶射を施された台車枠2(第2台車枠22)の疲労強度は、溶射を施されていない台車枠2(第1台車枠21)の疲労強度と比較して、上昇するからである。
【0041】
[第3実施形態]
第3実施形態の点検方法は、上記した第1実施形態における設定工程(#10)及び使用工程(#20)を変更したものである。以下、上記の図1及び図2を参照して、本実施形態の点検方法を説明する。
【0042】
設定工程(#10)では、さらに、第1台車枠21にひずみセンサ(図示略)を取り付ける。ひずみセンサの取付け位置や数は、特に限定されない。ただし、ひずみセンサは、設計上で応力が集中しやすい部分(例:重点点検箇所)に取り付けられるのが好ましい。一方、第2台車枠22にひずみセンサを取り付ける必要はない。
【0043】
使用工程(#20)では、ひずみセンサの検出値より第1台車枠21の状態を監視する。具体的には、列車5の走行中、ひずみセンサからの検出値が鉄道路線の管理センタに送信され、管理センタにて検出値の変動が監視される。これにより、第1台車枠21の状態を監視できる。
【0044】
本実施形態では、上記した第1実施形態と同様に、第1台車枠21の疲労強度が相対的に劣る。このため、第1台車枠21の信頼性が危惧されるかもしれない。しかしながら、使用工程(#20)において、第1台車枠21に仮に異常が発生しても、その異常を検知することができる。これにより、使用工程(#20)での第1台車枠21の信頼性を保証することができ、その結果として、使用工程(#20)で全ての台車枠2の信頼性を担保することができる。
【0045】
なお、本実施形態の点検方法は、第2実施形態に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1:台車
11:第1台車
12:第2台車
2:台車枠
21:第1台車枠
22:第2台車枠
3:車体
4:車両
5:列車
L:路線
図1
図2