(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084793
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20230613BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20230613BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
H02K5/20
H02K5/173 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199090
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605AA04
5H605AA07
5H605CC02
5H605CC04
5H605DD12
5H605DD13
5H605EB21
(57)【要約】
【課題】ベアリングへのオイルの供給構造を改善した回転電機を提供することである。
【解決手段】本発明の一態様に係る回転電機は、中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、前記ロータとエアギャップを介して配置されたステータと、前記シャフトを軸支するベアリングと、前記ベアリングの径方向外側に配置されたブラケットと、を備え、前記ブラケットは、径方向に延びるリブを有し、前記リブは、前記ベアリングにオイルを供給する油路を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、
前記ロータとギャップを介して配置されたステータと、
前記シャフトを軸支するベアリングと、
前記ベアリングの径方向外側に配置されたブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、径方向に延びるリブを有し、
前記リブは、前記ベアリングにオイルを供給する油路を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記油路は、前記ベアリングの鉛直方向上側から前記ベアリングに向けて延びる、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記油路を有する面の反対側の面に突起部を有する、
請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ブラケットは、径方向内側から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状リブと、前記ベアリングの配置位置を円内に含む複数の円状リブと、を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記油路を有するリブと前記複数の放射状リブ及び前記複数の円状リブにより振動を抑制する、
請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記ブラケットは、前記ロータの軸方向一方側に配置された一方側ブラケットであり、前記一方側ブラケットは、前記ロータの回転を制御するインバータを収容するインバータケースを兼ねる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却や潤滑のため、ステータやペアリングにオイルを供給する回転電機が知られている。特許文献1に記載の発明では、ステータを冷却したオイルがベアリングに到達するように油路を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ベアリングにオイルを到達させるための油路を設ける必要があるために構造が複雑化し、コストも高くなってしまうという問題があった。
【0005】
また、上部からベアリングに向けてオイルを噴射するような場合、ベアリングまで距離があるとオイルが拡散しやすく、冷却や潤滑の効率が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、ベアリングへのオイルの供給構造を改善した回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る回転電機は、中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、前記ロータとエアギャップを介して配置されたステータと、前記シャフトを軸支するベアリングと、前記ベアリングの径方向外側に配置されたブラケットと、を備え、前記ブラケットは、径方向に延びるリブを有し、前記リブは、前記ベアリングにオイルを供給する油路を有する。
【0008】
上記の一態様の回転電機において、前記油路は、前記ベアリングの鉛直方向上側から前記ベアリングに向けて延びる。
【0009】
上記の一態様の回転電機において、前記ブラケットは、前記油路を有する面の反対側の面に突起部を有する。
【0010】
上記の一態様の回転電機において、前記ブラケットは、径方向内側から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状リブと、前記ベアリングの配置位置を円内に含む複数の円状リブと、を有する。
【0011】
上記の一態様の回転電機において、前記ブラケットは、前記油路を有するリブと前記複数の放射状リブ及び前記複数の円状リブにより振動を抑制する。
【0012】
上記の一態様の回転電機において、前記ブラケットは、前記ロータの軸方向一方側に配置された一方側ブラケットであり、前記一方側ブラケットは、前記ロータの回転を制御するインバータを収容するインバータケースを兼ねる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、ベアリングへのオイルの供給構造を改善した回転電機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係るモータユニットの斜視図である。
【
図2】
図1のモータユニット10を、X軸と直交し中心軸Jを通る面で切断して示す側断面図である。
【
図3】インバータケース200を軸方向他方側から見た側面図である。
【
図4】ブラケット300を軸方向一方側から見た側面図である。
【
図5】ブラケット300を軸方向他方側から見た側面図である。
【
図6】
図5のブラケット300のC-C´断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る回転電機の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0016】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Y軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Z軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1の上下方向とする。X軸方向は、Y軸方向及びZ軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0017】
また、以下の説明においては、Y軸方向の正の側(+Y側)を「一方側」と呼び、Y軸方向の負の側(-Y側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0018】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Y軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Y軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【実施例0019】
図1は、本発明の実施例1に係るモータユニットの斜視図である。
図1のモータユニット10は、回転電機の一例である。
図2は、
図1のモータユニット10を、X軸と直交し中心軸Jを通る面で切断して示す側断面図である。
【0020】
モータユニット10は、モータケース100に、モータ150(
図2参照)を収容して構成される。モータケース100は、円筒形状の部材であり、軸方向一方側及び軸方向他方側が開口している。モータケース100の軸方向一方側の開口はインバータケース200で塞がれ、モータケース100の軸方向他方側の開口はブラケット300で塞がれる。モータユニット10は、例えば、電気自動車の駆動用モータとして用いることが出来る。
【0021】
モータ150は、中心軸Jに沿って延びるシャフト400を有するロータ170と、ロータ170の径方向外側にエアギャップを介して配置されたステータ160と、を有する。シャフト400は、中心軸Jを回転軸にして回転可能なようにベアリング501及び502によって軸支される。モータケース100は、ステータ160を径方向外側から覆うことで、モータ150を収容する。ステータ160は、軸方向一方側にコイルエンド161を有し、軸方向他方側にコイルエンド162を有する。
【0022】
インバータケース200は、ロータ170の回転を制御するインバータ(不図示)を収容するケースであり、中空のほぼ立方体形状である。インバータケース200は、インバータケース200の軸方向他方側の面が軸方向と直交するように配置される。
【0023】
インバータケース200の軸方向他方側の壁部は、モータケース100の軸方向一方側の開口を塞ぐブラケットの役割を果たす。インバータケース200は、軸方向他方側の壁部に、軸方向に貫通する孔220(
図3参照)を有する。孔220は、軸方向他方側に、軸方向一方側の径よりも大径の大径部221を有する。ベアリング501の外輪は孔220の大径部221に嵌まって固定される。すなわち、インバータケース200の軸方向他方側の壁部は、ベアリング501を径方向外側から覆う。ベアリング501の内輪には、シャフト400が固定される。インバータケース200は、軸方向他方側の壁部に、軸方向他方側の面から軸方向他方側に延びるリブ211を有する。リブ211は、インバータケース200の軸方向他方側の壁部の強度を補強する。インバータケース200は、軸方向他方側端部に、モータケース100と接する面210を有する。
【0024】
ブラケット300は、モータケース100の軸方向他方側の開口を塞ぐブラケットである。ブラケット300は、ほぼ円板形状であり、その円板の面が軸方向と直交するように配置される。
【0025】
ブラケット300は、軸方向に貫通する孔320(
図4参照)を有する。孔320は、軸方向一方側に、軸方向他方側の径よりも大径の大径部321を有する。ベアリング502の外輪は孔320の大径部321に嵌まって固定される。ベアリング502の内輪には、シャフト400が固定される。ブラケット300は、軸方向一方側の面から軸方向一方側に延びるリブ311を有する。リブ311は、ブラケット300の強度を補強する。ブラケット300は、軸方向一方側端部に、モータケース100と接する面310を有する。
【0026】
モータケース100は、円筒形状の壁面を軸方向に貫通する孔102を有する。また、モータケース100は、孔102から-X側に延びて、円筒形状の壁面を貫通する孔101を有する。孔101は、外部からモータケース100内にオイルを供給するための孔である。孔101から孔102へ流入したオイルは、図中の矢印Aが指す方向(軸方向一方側)及び矢印Bが指す方向(軸方向他方側)へと流れる。
【0027】
モータユニット10は、ベアリング501及び501の配置位置の鉛直方向上側に、モータケース100の孔102が位置する向きで、使用環境に設置される。モータケース100は、孔102からコイルエンド161の鉛直方向上側へと貫通する孔104を有する。孔102から孔104へ流入したオイルは、自重によりコイルエンド161に達し、コイルエンド161を冷却する。モータケース100は、孔102からコイルエンド162の鉛直方向上側へと貫通する孔103を有する。孔102から孔103へ流入したオイルは、自重によりコイルエンド162に達し、コイルエンド162を冷却する。
【0028】
インバータケース200は、孔102からベアリング501の鉛直方向上側へと貫通する孔201を有する。孔102から孔201へ流入したオイルは自重により落下する。ブラケット300は、孔102からベアリング502の鉛直方向上側へと貫通する孔301を有する。孔102から孔301へ流入したオイルは自重により落下する。
【0029】
図3は、インバータケース200を軸方向他方側から見た側面図である。インバータケース200の面210は、モータケース100と接する面である。面210は、孔201がモータケース100の孔102に向けて開口したオイルの流入口である開口201aを有する。
【0030】
インバータケース200は、軸方向他方側の面である面250に、面250から軸方向他方側に突出するリブ251及びリブ252を有する。リブ251は、ベアリングの配置位置である大径部221を円内に含む複数の円状リブである。リブ252は、径方向内側から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状リブである。インバータケース200は、リブ211、212、251及び252により強度が補強されて、振動を抑制する。ブラケットの役割を果たすインバータケース200のリブ211、212、251及び252は。中心から複数の放射状及び円状のリブが交差する構造であり、インバータケース200の肉厚を薄くすることで重量を大幅に下げ、一方リブ構造で剛性を確保し振動を抑制する効果がある。
【0031】
リブ211及びリブ212は、放射状リブであるリブ252の一例である。リブ211及びリブ212は、その間に油路213を有する。油路213は、リブ211及びリブ212よりも軸方向一方側に凹んでいる。油路213の鉛直方向上側の開口は、孔201に繋がる。油路213は、孔201から鉛直方向下側に延び、大径部221に達する。油路213の鉛直方向下側の開口は、大径部221に繋がる。本実施形態によれば、インバータケース200を補強するリブ211及び212が油路213を有する構造としたため、構造を複雑化することなく、コストの上昇も防ぐことが出来る。
【0032】
インバータケース200の大径部221は、面250よりも軸方向他方側に位置する面253の径方向内側部分を、軸方向一方側に凹ませることで形成される。大径部221にはベアリング501が固定される。油路213は、ベアリング501にオイルを供給する。孔201から流れ出たオイルは、油路213がない場合には、飛散してしまい、ベアリング501の潤滑に十分な量がベアリング501に到達しないおそれがある。本実施形態によれば、孔201から流れ出たオイルは、油路213に沿って流下するため、ベアリング501の潤滑に十分な量がベアリング501に到達する。本実施形態によれば、油路213からベアリング501までの距離が短いため、オイルが拡散せず、冷却や潤滑の効率をよくすることが出来る。
【0033】
図4は、ブラケット300を軸方向一方側から見た側面図である。ブラケット300の面310は、モータケース100と接する面である。面310は、孔301がモータケース100の孔102に向けて開口したオイルの流入口である開口301aを有する。
【0034】
ブラケット300は、軸方向一方側の面である面350に、面350から軸方向一方側に突出するリブ351及びリブ352を有する。リブ351は、ベアリングの配置位置である大径部321を円内に含む複数の円状リブである。リブ352は、径方向内側から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状リブである。ブラケット300は、リブ311,312、351及び352により強度が補強されて、振動を抑制する。ブラケット300のリブ311、312、351及び352は。中心から複数の放射状及び円状のリブが交差する構造であり、ブラケット300の肉厚を薄くすることで重量を大幅に下げ、一方リブ構造で剛性を確保し振動を抑制する効果がある。
【0035】
リブ311及びリブ312は、放射状リブであるリブ352の一例である。リブ311及びリブ312は、その間に油路313を有する。油路313は、リブ311及びリブ312よりも軸方向一方側に凹んでいる。油路313の鉛直方向上側の開口は、孔301に繋がる。油路313は、孔301から鉛直方向下側に延び、大径部321に達する。油路313の鉛直方向下側の開口は、大径部321に繋がる。本実施形態によれば、ブラケット300を補強するリブ311及び312が油路313を有する構造としたため、構造を複雑化することなく、コストの上昇も防ぐことが出来る。
【0036】
ブラケット300の大径部321は、面350よりも軸方向一方側に位置する面353の径方向内側部分を、軸方向他方側に凹ませることで形成される。大径部321にはベアリング502が固定される。油路313は、ベアリング502にオイルを供給する。孔301から流れ出たオイルは、油路313がない場合には、飛散してしまい、ベアリング502の潤滑に十分な量がベアリング501に到達しないおそれがある。本実施形態によれば、孔301から流れ出たオイルは、油路313に沿って流下するため、ベアリング502の潤滑に十分な量がベアリング502に到達する。本実施形態によれば、油路313からベアリング502までの距離が短いため、オイルが拡散せず、冷却や潤滑の効率をよくすることが出来る。
【0037】
図5は、ブラケット300を軸方向他方側から見た側面図である。
図6は、
図5のブラケット300のC-C´断面図である。ブラケット300は、軸方向他方側の面である面315に、面315から軸方向他方側に突出するリブ317を有する。リブ317は、径方向内側から径方向外側に向けて放射状に延びる複数の放射状リブである。
【0038】
また、ブラケット300は、軸方向他方側の面における、軸方向一方側に設けた油路313と軸方向で対向する位置に、面315から軸方向他方側に突出する突起部316を有する。すなわち、ブラケット300は、油路313を有する面の反対側の面に突起部316を有する。突起部316を設けることで、ベアリング502の軸方向位置に合わせて、油路313の軸方向深さを定めることが出来る。また突起部316は、ブラケット300の強度を補強する効果も備えている。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。