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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084797
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】凍結乾燥食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230613BHJP
   A23L 3/44 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A23L7/10 E
A23L3/44
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199096
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511216075
【氏名又は名称】株式会社世田谷自然食品
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 聡
(72)【発明者】
【氏名】園田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】河西 英治
(72)【発明者】
【氏名】有村 大志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由衣
(72)【発明者】
【氏名】松本 千奈美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修太
(72)【発明者】
【氏名】清水 篤子
(72)【発明者】
【氏名】上田 彩華
(72)【発明者】
【氏名】平山 駿介
【テーマコード(参考)】
4B022
4B023
【Fターム(参考)】
4B022LA02
4B022LB06
4B022LJ01
4B022LR06
4B023LC05
4B023LC07
4B023LE20
4B023LG01
4B023LK13
4B023LL01
4B023LP20
(57)【要約】
【課題】カリフラワーライスよりも米飯に近い食感・風味を有し、かつ、短時間での凍結乾燥が可能な、お粥の凍結乾燥食品の製造方法を提供する。
【解決手段】下記工程(a)~(c)を含む、凍結乾燥食品の製造方法:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を凍結乾燥させる工程。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)~(c)を含む、凍結乾燥食品の製造方法:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を凍結乾燥させる工程。
【請求項2】
前記工程(c)における凍結時間が、10~45時間である、請求項1に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項3】
前記工程(b)が、下記手順(i)~(iv)を含む、請求項1又は2に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(i)米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
【請求項4】
前記工程(c)が、下記手順(v)~(vii)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;及び
(vii)凍結したお粥を容器ごと真空凍結乾燥する。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、凍結乾燥食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カリフラワーライスを含むお粥の凍結乾燥食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満症や糖尿病の予防、改善等を目的として、食事の糖質量を制限する、糖質制限食が注目されている。糖質制限食の一つとして、米粒大にカットしたカリフラワー(以下、「カリフラワーライス」という)を米飯の代わりとして各種料理に使用する手法がとられている。カリフラワーは、生重量当たりの糖質量が米飯と比較して非常に少ないにもかかわらず、繊維質を多く含み満腹感を得やすいこと、風味等にクセが少なく米飯の代わりとしても料理の味を損ねにくい、という利点を有することが知られる。
【0003】
保存食品の形態の一つとして、凍結乾燥(以下、「フリーズドライ」ともいう)食品が広く使用されている。凍結乾燥食品は、腐敗等が生じにくく長期間の保存に適するのみでなく、軽量で保存運搬に適すること、熱湯をかけることで比較的短時間に乾燥前に近い状態に復元することができることから、保存食品として広く使用されている。凍結乾燥食品は、通常、多孔質構造を有し、比表面積が大きいことが特徴であり、この構造は、熱湯での短時間の復元を可能とする、という利点を有する。
【0004】
米飯やカレーペーストのような、デンプンを多く含む粘度の高い食品は、凍結乾燥処理に適さないことが指摘されている。例えば、特許文献1には、カレーペーストの凍結乾燥食品の製造に際して、繊維質として一定量のオニオンペーストを含ませる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-273410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、カリフラワーライスは、米飯の代替食品として普及しているが、その食感・風味は、依然として米飯とは異なるものであり、より米飯らしい食感・風味が求められる。一方、上記の通り、米飯を含むお粥のようなデンプンを多く含む粘度の高い食品は、通常の凍結条件では復元性が低くなる、という問題があった。これを防止するためには、凍結時の温度低下の速度を低下させ、より長時間の凍結とする必要があった。
【0007】
本発明は、カリフラワーライスよりも米飯に近い食感・風味を有し、かつ、短時間での凍結が可能な、お粥の凍結乾燥食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、カリフラワーライスと通常の米飯とを一定の割合で混合することで、通常の米飯よりも糖質量が低く、かつ、食感・風味が通常の米飯に近いお粥の凍結乾燥食品を得ることができることを見出した。これに加えて、本発明者らは、カリフラワーライスと通常の米飯とを一定の割合で混合することで、短時間の凍結条件で、復元性の高いお粥の凍結乾燥食品を製造可能であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
(1)下記工程(a)~(c)を含む、凍結乾燥食品の製造方法:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を凍結乾燥させる工程。
(2)前記工程(c)における凍結時間が、10~45時間である、(1)の凍結乾燥食品の製造方法。
(3)前記工程(b)が、下記手順(i)~(iv)を含む、(1)又は(2)に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(i)米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
(4)前記工程(c)が、下記手順(v)~(vii)を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;及び
(vii)凍結したお粥を容器ごと凍結乾燥する。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法で製造された、凍結乾燥食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カリフラワーライスよりも米飯に近い食感・風味を有し、かつ、短時間での凍結が可能な、お粥の凍結乾燥食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、パーセント(%)表示は、他に説明がない限り、「重量%」を示す。本明細書で使用される「復元性」の用語は、熱湯をかけること(湯戻し)で、より乾燥前に近い状態に復元できることを指す。具体的には、パネリストによる、ダマの解れやすさの指標に基づいて評価されるものとする。
【0012】
1.凍結乾燥食品の製造方法
1-1 概要及び定義
本発明の凍結乾燥食品の製造方法(以下、「本発明の方法」とも称する)は、下記工程(a)~(c)を含む、ことを特徴とする。
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を凍結乾燥させる工程。
本発明の凍結乾燥食品の製造方法は、上記特徴を有することで、米飯に近い食感・風味を有するお粥を製造することが可能であり、かつ、短時間で凍結を完了することが可能である。
【0013】
本明細書において、「凍結乾燥食品」とは、水分量6.0重量%以下の食品を示すものとする。本発明の乾燥食品の水分量は、3.0重量%以下とすることが好ましく、1.5重量%以下とすることがより好ましく、1.0重量%とすることがさらに好ましい。なお、「水分6.0%以下」は、「乾燥スープの日本農林規格」(昭和五十年五月三十日農林省告第六百二号)の乾燥ポタージュの規格(第4条)に準ずる。
【0014】
本明細書において「水分量」とは、常圧加熱乾燥法を用いて測定する値を示す。具体的には、秤量済みの10gの対象を強制循環通風式の乾燥機を用いて105℃で4時間の条件で加熱し、加熱後の対象の重量変化に基づいて、下記式で算出される量をいう。
(加熱前重量-加熱後重量)/加熱前重量×100(%)
【0015】
本明細書において「カリフラワー」とは、アブラナ科アブラナ属のBrassica oleracea var.botrytisを指し、より具体的には、その白色の花蕾と周辺の茎部分を指す。カリフラワーは、個体差はあるが、その生材料において、水分量は、通常、90.8%程度である。また、生材料100gあたり、食物繊維を2.9g程度含むことも知られる(文部科学省「五訂 日本食品標準成分表」より)。
【0016】
本明細書において「米」とは、イネ科イネ属アジアイネ(Oryza sativa L.)の籾から外皮を取り除いた粒状の穀物を指す。米は、主に、外皮のみを除いた玄米、外皮と糠を除いた胚芽米、さらに胚芽を除いた白米に分けられるが、特に白米が好適に使用される。本明細書において、「米」は調製前の生米を指し、「米飯」は米を炊飯した後の状態を指す。生米は、精米前の乾燥状態や、精米後の時間経過によって異なるが、通常は14.9%程度の水分量を有するものが使用される(文部科学省「五訂 日本食品標準成分表」より)。米飯は、生米を炊飯して得られるが、ここでいう「炊飯」は、生米に生米の重量の1.3~1.5倍程度の水を加えて、容器に蓋をして、外観上水分を全て米が吸収するまで、15~40分間程度加熱する工程を指す。
【0017】
本明細書において「お粥」とは、炊飯済みの米飯を水に添加してさらに加熱調製したもの、又は、生米に炊飯時よりも多量の水を加えて加熱調製したものを指す。好適には、炊飯済みの米飯を水に添加してさらに加熱調製したものを使用できる。この場合、「お粥」ではなく、「雑炊」、「おじや」等と称される場合もある。お粥には、米と水分以外に、調味料が添加されていてもよく、さらに、肉、魚、卵、野菜等の他の具材が添加されていてもよい。
【0018】
1-2 工程(a)カリフラワーライスの調製
本発明の方法において、工程(a)は、カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程である。
【0019】
本発明の方法で使用される材料としてのカリフラワーは、好適には生のカリフラワーである。本発明の方法において、カリフラワーは米粒大にカットされるが、ここでいう米粒大とは、米飯の大きさに相当し、粒径3~6mm程度の大きさを指す。カリフラワーは、例えば、ダイスカット装置(例えば、アーシェルジャパン社製品番DC2110A)等を使用して、刃の幅を4.8mmにセットしてカットすることができる。
【0020】
カットしたカリフラワーの加熱手法は、特に限定されないが、例えばボイル、蒸煮等による加熱とすることができる。加熱後のカリフラワーを水切りすることで、カリフラワーライスを得ることができる。
【0021】
1-3 工程(b)お粥の調製
本発明の方法において、工程(b)は、米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程である。
【0022】
工程(b)の手順は、お粥の材料となる米とカリフラワーライスとの重量比が上記の範囲内である限り、特に限定されないが、下記の手順(i)~(iv)を含むことが好ましい。
(i)米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
【0023】
本発明の方法において、米は、生米の状態でカリフラワーライスと混合調理されてもよいが、水分量の調整がより容易であることから、炊飯して米飯となった状態でカリフラワーライスと混合調理されることが好ましい。すなわち、工程(b)には、米を炊飯して米飯を調製する工程(手順(i))が含まれることが好ましい。生米の状態で調製する場合、使用する生米の量は、使用するカリフラワーライスの生材料重量との比が2:8~8:2、好ましくは3:7~7:3、より好ましくは4:6~6:4となるように添加することを要する。
【0024】
お粥には、米飯とカリフラワーライスの他に、調味料、及び他の具材が含まれていてもよい。調味料としては、食塩、アミノ酸、みりん、甘味料、デンプン等を使用することができる。他の具体としては、肉、魚、卵、野菜等を使用することができる。他の具材は、必要に応じて、カット、加熱(例えば、ボイル、蒸煮等)等の前処理が行われる(手順(ii))。前処理は、具材の種類によって、カットのみ、又はカットと加熱の両方が行われる。例えば、加熱に時間がかかる具材や生のままでは生臭さを有する具材は、前もって加熱することが好ましい。また、加熱により色や風味が変化しやすい具材は、カットのみを行い、直接スープに添加することが好ましい。
【0025】
工程(b)には、米飯の調製前に、水と、カリフラワーライスと、手順(ii)で前処理された具材と、調味料とを攪拌混合して、スープを調製する手順(手順(iii))が含まれることが好ましい。米飯を加える前にスープを攪拌混合することで、粘度が低い状態で材料を十分に攪拌混合することが可能である。手順(iii)では、スープに加熱を行うことがより好ましい。加熱しながら攪拌混合する手段としては、例えばレオニーダーを使用することができる。
【0026】
工程(b)は、手順(iii)で調製されたスープに、米飯を添加して攪拌混合する手順(手順(iv))を含むことが好ましい。ここで、使用する米飯の量は、元となる生米の重量に換算して、使用するカリフラワーライスの生材料重量との比が2:8~8:2、好ましくは3:7~7:3、より好ましくは4:6~6:4となるように添加することを要する。手順(iv)では、さらに加熱を行うことがより好ましい。米の含有量がこれを超えると、良好な復元性を維持するために、後述の凍結乾燥工程における凍結の段階で、より長い時間を要し得る。一方で、米の含有量がこれを下回ると、得られる凍結乾燥食品の食感・風味が米飯に近いものではなくなる、という問題が生じ得る。
【0027】
1-4 工程(c)凍結乾燥
本発明の方法の工程(c)は、工程(b)で調製されたお粥を凍結乾燥する工程である。凍結乾燥とは、水分を含む食品等を低温で凍結させ、凍結したまま真空状態において水分を昇華させ、乾燥させる方法である。低温での乾燥となるため、成分の変質等が生じにくく、食品の色、香り、風味、栄養等が損なわれにくい。また、凍結した状態から水分のみが昇華するため、乾燥前後で形状の変化はほとんどなく、多孔質となる。この多孔質による比表面積の高さから、復元する際に熱湯との接触効率がよく短時間で復元することができる。このような凍結乾燥は、例えば、真空凍結乾燥機(例えば、共和真空技術株式会社製RLE II-103)を用いて実施することができる。
【0028】
お粥のようなデンプンを多く含む粘度の高い食品の場合、食品を凍結して水分を昇華させる過程で、アルファ化したデンプンの老化が生じ、これにより、後の復元時に元の食感に復元できない、という問題がある。このような食品については、従来は、凍結時間を60時間程度としてゆっくりと凍結し、食品中に生成される氷結晶を大きくすることで、急速な凍結によるデンプンの老化を防ぐ必要があった。
【0029】
本発明の工程(c)では、凍結時間を、10~45時間、特に、15~36時間、さらに、20~30時間で実施することが好ましい。このような短時間の凍結を行うためには、例えば、-5~-40℃、特に-15~-35℃の条件下で行うことが好ましい。本発明の方法で製造される凍結乾燥食品は、急速な冷却により上記のように凍結時間を短時間化しても、その復元性が損なわれない、という利点を有する。そのため、より短時間で効率的に製造することが可能である。
【0030】
工程(c)の手順は、お粥の凍結乾燥が可能である限り、特に限定されないが、下記の手順(v)~(vii)を含むことが好ましい。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;
(vii)凍結したお粥を容器ごと真空凍結乾燥する。
【0031】
上記手順(v)において、お粥を充填する容器は、例えば、1人分の分量のお粥を充填するのに適した大きさのトレイ等であってもよい。特に、均一な凍結乾燥を可能とするために、お粥を平板状に維持できる形状であることが好ましい。容器にお粥を充填した後、室温又は冷蔵条件下で粗熱をとる手順を加えてもよい。
【0032】
上記手順(vi)は、お粥を凍結する手順である。凍結は、可能な限り短時間とすることが好ましく、10~45時間以内、特に15~36時間以内、さらに20~30時間以内に凍結させることが好ましい。凍結温度は、特に限定されないが、例えば-5~-40℃、特に-15~-35℃とすることができる。
【0033】
上記手順(vii)は、手順(vi)で凍結したお粥を真空凍結乾燥する手順である。真空凍結乾燥は、真空凍結乾燥機(例えば、共和真空技術株式会社製RLE II-103)を用いて、例えば、棚温65℃、20~100Pa、24時間の条件で実施することができる。
【0034】
1-5 包装工程その他
工程(c)で凍結乾燥させたお粥は、そのまま、あるいは別途調製された凍結乾燥食品、例えば他の具材等の凍結乾燥食品と組み合わせて包装されてもよい。凍結乾燥食品は、通常は常温で保存可能であるが、空気に触れると酸化しやすいため、樹脂フィルム等で密封することが好ましい。その際、包装内に、乾燥剤、脱酸素剤等を併せて封入してもよい。
【0035】
2.凍結乾燥食品
本発明の凍結乾燥食品は、本明細書の「1.凍結乾燥食品の製造方法」の項に記載の製造方法で製造される、ことを特徴とする。本発明の凍結乾燥食品は、米飯の一部をカリフラワーライスに置き換えることで、糖質含有量が低いにも関わらず、食感・風味が米飯に近く、食した際に満腹感が得られやすい、という特徴を有する。また、お湯で戻した時の復元性がよい、という利点も有する。
【実施例0036】
<実施例:凍結乾燥雑炊の官能評価>
(1)各種凍結乾燥雑炊の調製
雑炊の材料について、下記の通り前処理を行った。
カリフラワーライス:カリフラワーを、ダイスカット装置(アーシェルジャパン社製品番DC2110A)を使用して、刃の幅を4.8mmにセットしてカットした。90℃以上のお湯で90秒間ボイルした後、水で冷却して水切りを行い、カリフラワーライスを得た。
米飯:米を20分間吸水させた後、水切りを行った。米の1.5倍量の水を加えて、炊飯器を用いて炊飯し、米飯を調製した。
【0037】
レオニーダー(カジワラ社製KHS-8FTL)内で水と調味料を混合し、赤しそを加えて80℃になるまで加熱した。カリフラワーライス、しそ梅酢、その他の具材(梅以外)を投入して、80℃になるまで加熱した。梅、米飯を投入して所定の容量となるまで水を加えて雑炊を調製した。各材料の1人分相当量を表1に示す。米飯、カリフラワーライスの量は、1人分の合計含有量を生材料重量で21.29gとして、米:カリフラワー配合比が10:0、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、1:9、0:10(試験例1~11)となるようにそれぞれ調製した。
【0038】
【表1】
【0039】
(2)凍結乾燥
各種雑炊を100ccずつトレイに充填し、-30℃、24時間で凍結した。凍結した雑炊を、トレイごと真空凍結乾燥機(共和真空技術株式会社製RLE II-103)に入れて、最終棚温65℃、20~100Pa、24時間の条件で真空凍結乾燥した。
【0040】
(3)官能評価
各試験例の雑炊の復元性、食感・風味について、パネリスト5人が評価した。凍結乾燥させた雑炊を、それぞれ耐熱性の食器に移し、90℃以上のお湯を170ccずつ投入し、1分間雑炊をほぐした後に、復元性(ダマの解れやすさ)及び外観を評価した。また、雑炊を実際に食して、風味、食感を評価した。各項目の評価基準は以下の通りとした。
(復元性)5点:ほぐさなくても戻る;4点:少しほぐせば戻る;3点:しっかりほぐせば戻る;2点:1分間ほぐしても僅かにダマが残る;1点:1分以上ほぐしてもダマが残る
(官能評価)5点:雑炊と同等である;4点:雑炊とほとんど同等である;3点:雑炊として違和感がない;2点:雑炊として違和感がある;1点:雑炊とは言えない
各評価項目について、パネリストの評価結果の平均値(四捨五入した整数)を示す(表2)。復元性(a)、官能評価(外観(b)、風味(c)、食感(d))の各評価結果に基づいて、下記式を用いて総合評点を算出した。
{a+(b+c+d)/3}/2
各試験例の評価結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示す通り、米とカリフラワーの合計量において、カリフラワーの配合比率を20~80%とすることで、雑炊として喫食可能な、復元性、外観、食感及び風味を有する食品が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の凍結乾燥食品の製造方法は、主に食品産業分野で利用可能である。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)~(c)を含み:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)白米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を-15~-40℃の条件下で10~45時間凍結し、凍結乾燥させる工程;
前記工程(c)の凍結には、0℃未満-15℃超の条件下での緩慢凍結を含まない、
凍結乾燥食品の製造方法
【請求項2】
前記工程(b)が、下記手順(i)~(iv)を含む、請求項に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(i)白米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)白米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
【請求項3】
前記工程(c)が、下記手順(v)~(vii)を含む、請求項1又は2に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;及び
(vii)凍結したお粥を容器ごと真空凍結乾燥する。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法で製造された、凍結乾燥食品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
(1)下記工程(a)~(c)を含み:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)白米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を-15~-40℃の条件下で10~45時間凍結し、凍結乾燥させる工程;
前記工程(c)の凍結には、0℃未満-15℃超の条件下での緩慢凍結を含まない、
凍結乾燥食品の製造方法
)前記工程(b)が、下記手順(i)~(iv)を含む、(1)に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(i)白米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)白米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
)前記工程(c)が、下記手順(v)~(vii)を含む、(1)又は(2)に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;及び
(vii)凍結したお粥を容器ごと凍結乾燥する。
)(1)~()のいずれかに記載の製造方法で製造された、凍結乾燥食品。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
表2に示す通り、米とカリフラワーの合計量において、カリフラワーの配合比率を20~80%とすることで、雑炊として喫食可能な、復元性、外観、食感及び風味を有する食品が得られることが分かった。
本願発明は、下記実施形態を包含する。
(1)下記工程(a)~(c)を含む、凍結乾燥食品の製造方法:
(a)カリフラワーを米粒大にカットして、加熱及び水切りをしてカリフラワーライスを調製する工程;
(b)米とカリフラワーライスとを、生材料の重量比が2:8~8:2となるように含むお粥を調製する工程;及び
(c)前記お粥を凍結乾燥させる工程。
(2)前記工程(c)における凍結時間が、10~45時間である、(1)の凍結乾燥食品の製造方法。
(3)前記工程(b)が、下記手順(i)~(iv)を含む、(1)又は(2)に記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(i)米を炊飯して米飯を調製する;
(ii)米及びカリフラワーライス以外の具材の前処理を行う;
(iii)水、カリフラワーライス、前記(ii)の前処理済みの具材、及び調味料を攪拌混合してスープを調製する;及び
(iv)前記(iii)のスープに前記(i)の米飯を入れて攪拌混合して、お粥を調製する。
(4)前記工程(c)が、下記手順(v)~(vii)を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の凍結乾燥食品の製造方法。
(v)前記工程(b)で調製されたお粥を容器に充填する;
(vi)容器ごと充填されたお粥を凍結する;及び
(vii)凍結したお粥を容器ごと凍結乾燥する。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の製造方法で製造された、凍結乾燥食品。