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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084802
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】アンテナおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 19/13 20060101AFI20230613BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01Q19/13
H01Q1/40
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199101
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬在 俊浩
【テーマコード(参考)】
5J020
5J046
【Fターム(参考)】
5J020BA08
5J020BC06
5J020BC09
5J020DA02
5J046AA03
5J046AA07
5J046AB05
5J046AB13
5J046QA02
(57)【要約】
【課題】広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、アンテナ利得を大きくし、あるいはアンテナビームの指向特性を調整することができるアンテナを提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るアンテナは、一次放射器と、反射鏡と、導電性の円環部とを具備する。上記一次放射器は、電波を放射する。上記反射鏡は、上記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が上記電波の波長の1.7倍以下であり、鏡面形状がパラボラ面である。上記円環部は、上記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ、上記反射鏡の外側に向かって突出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する一次放射器と、
前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であり、鏡面形状がパラボラ面である反射鏡と、
前記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ前記反射鏡の外側に向かって突出する導電性の円環部と
を具備するアンテナ。
【請求項2】
電波を放射する一次放射器と、
前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面形状が非パラボラ面である反射鏡と、
前記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ前記反射鏡の外側に向かって突出する導電性の円環部と
を具備するアンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナであって、
前記非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を組み合わせた形状である
アンテナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記円環部は、前記開口面と一致する面内に前記開口面の外側と接して設置される
アンテナ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記円環部の幅は、前記反射鏡の開口径の50%以下である
アンテナ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記一次放射器は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置される
アンテナ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記反射鏡は、前記開口面から内側の領域に充填された誘電体層を有する
アンテナ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のアンテナの被搭載側の表面、又は被搭載側の内部に設けられた空洞に、前記アンテナが埋め込まれた
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナには、電波を広範囲に均一に放射すること、飛行中に発生する空力荷重、空力加熱に耐えることが要求される。この要求を満足させるアンテナとして、本発明者は特許文献1に示すアンテナを提唱した。
【0003】
特許文献1のアンテナは、一次放射器とパラボラ反射鏡を具備し、反射鏡の開口径を波長の1.7倍以下とすることで、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-120153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナ利得はアンテナ開口長に反比例する。特許文献1のアンテナでは、パラボラ反射鏡の開口径は波長の1.7倍以下と小型であるため、一般的なパラボラアンテナと比較して、アンテナ利得は小さい。このため、このようなアンテナを通信に使用すると、通信距離を大きくすることができなくなる。また、このようなアンテナを観測や計測に使用すると、電波の受信強度を大きくすることができず、十分な信号対雑音比での電波の取得ができなくなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、アンテナ利得を大きくし、あるいはアンテナビームの指向特性を調整することができるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係るアンテナは、一次放射器と、反射鏡と、導電性の円環部とを具備する。
上記一次放射器は、電波を放射する。
上記反射鏡は、上記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が上記電波の波長の1.7倍以下であり、鏡面形状がパラボラ面である。
上記円環部は、上記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ、上記反射鏡の外側に向かって突出する。
【0008】
本発明の一形態に係るアンテナにおいては、開口径が電波の波長の1.7倍以下であるため、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる。
また、反射鏡の開口面の周縁部に設けられた円環部には、一次放射器から放射された電波のうち反射鏡に照射される電波、あるいは円環部に照射される電波を受けて電流が流れ、電磁界を生じさせる。これにより、アンテナ利得の向上、あるいは、アンテナビームの指向特性の調整が可能となる。
【0009】
上記反射器の鏡面形状は、パラボラ面に限られず、開口径が上記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しい非パラボラ面であってもよい。
非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を組み合わせた形状であってもよい。
【0010】
上記円環部は、上記開口面と一致する面内に上記開口面の外側と接して設置されてもよい。
【0011】
上記円環部の幅は、上記反射鏡の開口径の50%以下であってもよい。
【0012】
上記一次放射器は、上記反射鏡の開口面から内側の領域に配置されてもよい。
【0013】
上記反射鏡は、上記開口面から内側の領域に充填された誘電体層を有してもよい。
【0014】
被搭載側の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けること、および円環部と等しい形状、寸法の溝を設けることで、アンテナを被搭載側の表面から突き出さずに設置することができる。これにより、例えばロケットや航空機等の飛翔体の場合には、空力荷重・加熱が大幅に軽減される。本発明の一形態に係るアンテナは開口径が小さいため、穴などを開けることによる飛翔体への影響は無視することが可能なレベルまで小さくなる。また、PC等の無線通信機能を有する電子機器や建物の内外に本発明の一形態に係るアンテナを搭載する場合には、例えば電子部品等を実装する基板、建物の外壁、室内の壁や天井の表面、又は被搭載側の内部に反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けること、および円環部と等しい形状、寸法の溝を設けることで、アンテナを表面から突き出さずに設置することができ、また、開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比較すると、薄型軽量化が可能であり、反射鏡アンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。開口面を壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持した状態で、アンテナ利得を大きくし、あるいはアンテナビームの指向特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るアンテナの構成を示す斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状がパラボラ反射鏡の場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内を極座標表示したものである。
図4】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状がパラボラ反射鏡の場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内の一部領域を直交座標表示したものである。
図5】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が円錐台である場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内を極座標表示したものである。
図6】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が円錐台である場合のアンテナのパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内の一部領域を直交座標表示したものである。
図7】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状がパラボラ反射鏡の場合における導電性円環部の幅と利得の変化(導電性円環部がない場合との利得の差)との関係の一例を示したものである。
図8】上記アンテナの一実施形態を説明する図であって、反射鏡の形状が円錐台の場合における導電性円環部の幅と利得の変化(導電性円環部がない場合との利得の差)との関係の一例を示したものである。
図9】比較例として、反射鏡の開口径が電波の波長の2倍であるパラボラ反射鏡に導電性円環部を設置したときの導電性円環部の幅と利得の変化(導電性円環部がない場合との利得の差)との関係の一例を示したものである。
図10】上記アンテナの他の実施形態を説明する断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係るアンテナを搭載した電子機器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係るアンテナ10の構成を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A断面図である。各図において、x軸、y軸およびz軸は相互に直交する3軸方向を示しており、z軸はアンテナ10の反射鏡12の中心軸に相当する。
【0019】
[アンテナの全体構成]
図1及び図2に示すように、アンテナ10は、一次放射器11と、反射鏡12と、導電性の円環部15とを有する。アンテナ10はさらに、反射鏡12の開口面12aから内側の領域に充填された誘電体層13と、一次放射器11に接続される給電ケーブル14とを有する。本実施形態のアンテナ10は、例えば、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載される。
【0020】
一次放射器11は、電波を放射するアンテナ素子である。一次放射器11は、所定のインピーダンスが得られるアンテナ素子であればいかなるアンテナ素子でも使用可能である。本実施形態では、クロスダイポールアンテナを使用した例を示しているが、ダイポールアンテナやホーンアンテナ等を用いることも可能である。
【0021】
反射鏡12は、開口面12aの直径(開口径)がD、鏡面底部12cから開口面12aまでの高さがHの回転放物面(パラボラ面)形状、あるいは回転放物面形状とは異なる形状(非パラボラ面)の導電性材質で作られた反射鏡である。一次放射器11は反射鏡12の開口面12aから深さがFの位置に配置されている。
【0022】
また、反射鏡12は、一次放射器11より放射された電波を反射し、電波が反射して放射される半球内のアンテナパターンにヌル点が発生しない開口径以下に、開口径Dを小さくしている。本実施形態において、反射鏡12は、電波の波長の1.7倍以下の開口径Dを有する。開口径D、および一次放射器11の寸法は、アンテナとして機能する範囲まで小さくことが可能である。
【0023】
アンテナとして機能する範囲とは、一次放射器11が所定のインピーダンスを得られる範囲であり、別言すると、一次放射器11のVSWR(電圧定在波比)がアンテナを使用するシステムから要求される値以下となる範囲をいう。本実施形態に係るアンテナ10のパターンにはヌル点は発生しないので、当然サイドローブも生じない。つまり、本実施形態に係るアンテナ10は、電波が放射される半球内に広範囲に均一の電波を放射することができる。
【0024】
誘電体層13は、反射鏡12の開口面12aから反射鏡12の内側表面である鏡面12bの範囲に充填される。誘電体層13を構成する誘電体は特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂材料が用いられる。誘電体の誘電率も特に限定されず、アンテナ10が設置される搭載物の種類や仕様等に応じて任意に設定可能である。
【0025】
一次放射器11は、反射鏡12の開口面12aから内側の領域に配置され、本実施形態では誘電体層13内に配置されている。図1および図2では、一次放射器11は誘電体層13内に配置されている例を示したが、開口面12aの位置乃至その位置より外側の位置に配置してもよい。また、給電ケーブル14は、一次放射器11に給電する同軸ケーブルである。図1および図2では、給電ケーブル14が鏡面底部12cより一次放射器11まで配線されている例を示したが、反射鏡12内であれば、給電ケーブル14をどのように配線してもよい。
【0026】
誘電体層13は、一次放射器11と給電ケーブル14を所定の位置に保持する機能を有する。加えて、誘電体層13は、ロケット等の飛行中に発生する空力荷重、空力加熱からこれらを保護する機能を有すると共に、誘電体の波長短縮効果により、アンテナ10の更なる小型化を可能にする。なお、誘電体層13は、空洞部(図示せず)を有していてもよい。これにより、アンテナ10の軽量化が可能である。
【0027】
円環部15は、導電性材質でつくられたアンテナ構成部品であり、反射鏡12の開口面12aの周縁部から反射鏡12の外側に向かって突出するように設置される。本実施形態では図2に示すように、円環部15は、開口面12aと一致する面内(z=0を通るxy平面内)に開口面12aの外側と接して設置される。開口面12aの周縁部に設けられた円環部15は、一次放射器から放射された電波のうち反射鏡に照射される電波、あるいは円環部15に照射された電波を受けて電流が流れ、電磁界を生じさせる。これにより、円環部15が無い場合と比較して、アンテナ利得を大きくすることができる。
【0028】
円環部15の幅Wは、解析、あるいは実測により、利得の増加量を考慮して決めることができる。また、アンテナ10を飛翔体などに搭載する場合は、被搭載側表面の設置可能な範囲内で、同様にして円環部15の幅Wを決めることができる。円環部15の幅Wは、例えば、反射鏡12の開口径Dの例えば50%以下に設定され、好適には、開口径Dの例えば10%以上40%以下である。
【0029】
円環部15は、典型的には、金型成形あるいはプレス加工等により、反射鏡12と一体的に形成される。円環部15の外形は円形であるが、楕円等の任意の形状が採用可能である。また、円環部15の表面形状も特に限定されず、典型的には、表面が平坦な板状に形成されるが、円環部15の表面の少なくとも一部が、アンテナ特性に悪影響を及ぼさない限度において孔やスリットなどの任意の形状の構造面で形成されてもよい。
【0030】
なお、導電性の円環部の反射鏡12の開口面12aの周縁部からの突出方向は、開口面12aに平行な方向に限られない。例えば、導電性の円環部は、反射鏡12の開口面12aの周縁部から+z方向あるいは-z方向に向けて所定角度傾斜したテーパ面であってもよい。この場合、アンテナビームの指向性を調整することができる。例えば図10に、反射鏡12の開口面12aの周縁部から+z方向へ角度α傾斜する円環部25を備えたアンテナ20を示す。円環部25を開口面12aの周縁部から+z方向に傾斜させた場合、アンテナ20から放射されるアンテナビームの集光性を高めることができる。開口面12aに対する円環部15の傾斜角度αは、目的とする指向特性に応じて+z方向あるいは-z方向へ任意の値に設定可能である。
【0031】
本実施形態のアンテナ10は、電波の周波数が2.28GHzで、一次放射器11、反射鏡12、円環部15を銅で構成し、誘電体層13として高密度ポリエチレンを充填し、開口径Dを96mm、反射鏡12の高さHを28mm、開口面12aから一次放射器11までの深さFを7mm、円環部の幅Wを30mmとした。なお、波長は約132mmであるので、開口径Dは約0.73波長である。
【0032】
[反射鏡の詳細]
反射鏡12は、開口径と高さから定まるパラボラ反射鏡、あるいはパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面12bの形状が非パラボラ面である。上記パラボラ反射鏡の開口径および高さは、それぞれ開口径Dおよび高さHに相当する。開口径Dは、上述のように一次放射器11から放射される電波の波長の1.7倍以下である。上述のように、本実施形態のアンテナ10における反射鏡12には、その開口面の外側で接する円環部が追加される点で特許文献1に記載のアンテナと相違する。
【0033】
ここで、非パラボラ面とは、例えば、(1)鏡面12bの鏡面底部12cからの高さが反射鏡12の中心軸(z軸)からの距離の2を除くべき乗に比例する形状、(2)円錐台面、(3)部分球面、(4)円錐面、(5)円筒面などをいう。非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を任意に組み合わせた形状であってもよい。また、上記(1)におけるべき乗の指数は、例えば、1~3(但し2を除く)の任意の値が適用可能である。非パラボラ面は、典型的には、連続面であり、例えば、反射鏡12の中心軸(z軸)を中心とする回転曲面形状である。
【0034】
反射鏡12の鏡面形状を非パラボラ面にすることで、一次放射器11のインピーダンス特性を変えることができる。より具体的には、一次放射器11の給電系と整合がとれる周波数帯域を、鏡面形状がパラボラ面である反射鏡よりも狭く、あるいは広くすることができる。
【0035】
(構成例1)
図3は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、反射鏡面がパラボラ形状で、その開口面の外側で接する幅W=30mmの導電性円環部(円環部15)を設置した場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内を極座標表示したものである。なお、同図中の点線は導電性円環部を設置していない場合、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
【0036】
図3に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンとほぼ同じであることから、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持していることがわかる。また、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンの正面方向(0°方向)の利得は大きくなっていることもわかる。
【0037】
図4は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、反射鏡面がパラボラ形状で、その開口の外周と接する幅W=30mmの導電性円環部(円環部15)を設置した場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内の一部領域を直交座標表示したものである。なお、同図中の点線は導電性円環部を設置していない場合、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンよりも利得が大きくなっていることがわかる。
【0039】
(構成例2)
図5は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bが円錐台形状で、その底面直径が24mmであって、開口面と外側で接する幅W=30mmの導電性円環部(円環部15)を設置した場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内を極座標表示したものである。なお、同図中の点線は、上記円錐台形状のアンテナであって、導電性円環部を設置していない場合のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
【0040】
図5に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンとほぼ同じであることから、広範囲に均一に安定したパターン特性を維持していることがわかる。また、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンの正面方向(0°方向)の利得は大きくなっていることもわかる。
【0041】
図6は、D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bが円錐台形状で、その底面直径が24mmであって、開口面と外側で接する幅W=30mmの導電性円環部(円環部15)を設置した場合の本実施形態のアンテナ10のアンテナパターン(右旋偏波)の解析値のxz面内の一部領域を直交座標表示したものである。なお、同図中の点線は導電性円環部を設置していない場合、すなわち特許文献1のアンテナのアンテナパターン(右旋偏波)の解析値である。
【0042】
図6に示すように、本実施形態に係るアンテナ10のアンテナパターンは、特許文献1のアンテナのアンテナパターンよりも利得が大きくなっていることがわかる。
【0043】
続いて、円環部15の幅Wと利得との関係について説明する。
【0044】
図7は、上記構成例1(D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bがパラボラ形状)における反射鏡12に設置された円環部15の幅と利得の変化との関係を示すグラフである。ここでは利得の変化は、導電性円環部を設置していない場合との差分とした(以下、同じ)。図7に示すように、円環部15の幅Wが0~約48mmの範囲で利得の増加が認められ、幅Wが約30mmのときに利得の最大値が確認された。つまり、円環部15の幅Wが開口径Dの50%以下のときに利得の増加が認められた。
【0045】
図8は、上記構成例2(D=96mm、H=28mm、F=7mmであって、鏡面12bが円錐台形状で、その底面直径が24mm)における反射鏡12に設置された円環部15の幅と利得の変化との関係を示すグラフである。図8に示すように、本例においても、円環部15の幅Wが0~約48mmの範囲で利得の増加が認められ、幅Wが約30mmのときに利得の最大値が確認された。つまり、反射鏡12の鏡面12bの形状が非パラボラ面である場合においても、円環部15の幅Wが開口径Dの50%以下のときに利得の増加が認められた。
【0046】
比較例として、図9に、D=264mm、H=28mm、F=7mmであって、反射鏡面がパラボラ形状である反射鏡に設置された導電性円環部の幅と利得の変化との関係を示すグラフである。この比較例では、反射鏡の開口径Dが電波の波長の2倍と大きく、また、反射鏡の開口内に誘電体が充填されていない点で、上記構成例1と相違する。
【0047】
図9に示すように、この比較例においては、円環部の幅Wが0~50mmの範囲にわたって利得が減少した。つまり、開口径が波長の2倍のアンテナの場合、円環部の設置は、アンテナの利得の増加に何ら寄与しないことが確認された。
【0048】
[本実施形態の作用]
以上のように本実施形態に係るアンテナ10によれば、反射鏡12は電波の波長の1.7倍以下の開口径Dを有するため、電波が放射される半球内のアンテナパターンにヌル点を発生させることなく、広範囲に均一に安定したパターン特性を得ることができる(特許文献1の図4参照)。より具体的には、以下の作用を得ることができる。
・アンテナビームが広がり、広範囲に電波が放射される。アンテナ開口面より下方への放射もある。
・アンテナ開口面より上方の半球内にヌル点や落ち込みが存在しない。
・反射鏡アンテナであるため、アンテナパターンはアンテナを搭載する被搭載側の形状やアンテナ取付部の影響をほとんど受けない。
【0049】
したがって、本実施形態のアンテナ10によれば、
・広範囲に均一に安定したパターン特性を有し、現在飛翔体に搭載されているアンテナと比較すると利得も高くなる。
・アンテナ10が飛翔体に搭載される場合に、飛翔体である被搭載側でパターン特性からの運用制約を受けることがなくなる。
・アンテナ10を飛翔体に搭載する場合に、アンテナ10に発生する空力荷重・加熱が大幅に軽減される。
・従来のアンテナと比べて薄型軽量化でき、より目立たなくなる。
【0050】
また本実施形態によれば、被搭載側の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けること、および円環部の形状に一致する溝を設けることで、アンテナを被搭載側の表面から突き出さずに設置することができる。これにより、例えばロケットや航空機等の飛翔体の場合には、空力荷重・加熱が大幅に軽減される。本実施形態に係るアンテナは開口径が小さいため、穴および溝を開けることによる飛翔体への影響は無視することが可能なレベルまで小さくなる。また、PC等の無線通信機能を有する電子機器や建物の内外に本発明の一形態に係るアンテナを搭載する場合には、例えば電子部品等を実装する基板、建物の外壁、室内の壁や天井の表面、又は被搭載側の内部にパラポラ反射鏡と等しい形状、寸法の穴を開けること、および円環部の形状に一致する溝を設けることで、アンテナを表面から突き出さずに設置することができ、また開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比べて薄型軽量化が可能であり、パラボラアンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。開口面を壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【0051】
さらに本実施形態のアンテナ10によれば、円環部15を備えているため、特許文献1に記載のアンテナのパターン特性を維持しながら、アンテナの利得を大きくすることが可能である。これにより、特許文献1のアンテナよりも、通信距離を大きくすることができ、また、受信電波の信号対雑音比を大きくすることができる。
【0052】
<第2の実施形態>
図11は本発明の他の実施形態に係る電子機器100の要部断面図である。電子機器100は、基板91と、基板91の表面に埋め込まれたアンテナ90とを備える。
【0053】
図12に示すように、基板91上には、反射鏡の形状に一致する穴92が設けられ、穴92の表面に導電性薄膜96が形成されている。導電性薄膜96は、アンテナ90の反射鏡として機能する。また、基板91上には、円環部の形状に一致する溝が設けられ、導電性薄膜からなる導電性円環部97が形成されている。穴92の開口面より内側の領域には、高密度ポリエチレンなどの誘電体で構成された誘電体層93が充填されている。アンテナ90の一次放射器94は、穴92の開口面上に配置され、誘電体層93により保持されている。
【0054】
穴92は、アンテナ90の被搭載側の表面、又は被搭載側の内部に設けられた空洞に相当し、アンテナ90はこの空洞に埋め込まれる。穴92は、パラボラ面、あるいは、非パラボラ面で形成される。したがって、穴92の表面に形成された導電性薄膜96は、パラボラ面、あるいは、非パラボラ面の鏡面を形成する。
【0055】
穴92(導電性薄膜96)の開口径は、一次放射器94より放射された電波が上記反射鏡部で反射して放射される半球内のアンテナパターンにヌル点が発生しない大きさ(波長の1.7倍以下)に形成されている。給電ケーブル95は、誘電体層93により保持されて一次放射器94に接続されている。
【0056】
本実施形態では、導電性薄膜96が形成された穴92と導電性円環部97と誘電体層93と一次放射器94とによってアンテナ90が構成される。このようなアンテナ90を搭載する電子機器100では、アンテナ90を基板91の表面から突き出さずに設置することができ、また、アンテナ90の開口径が小さいためにフットプリントも小さくできる。従って、従来の棒状アンテナ等と比較すると、薄型軽量化が可能であり、反射鏡アンテナを基本構成とする故、アンテナ利得も高い。
【0057】
また、アンテナ90は、開口面の外側に接する導電性円環部97を有するため、特許文献1に記載のアンテナよりも、利得を大きくすることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0059】
例えば以上の実施形態では、ロケット、航空機等の飛翔体に搭載されるアンテナに本発明を適用したが、これ以外にも、列車や自動車、潜水艦などの移動体、更に携帯端末やPC等の電子機器、建物にも適用できる。本発明に係るアンテナを建物の外側や内側に設置する場合には、アンテナの開口面を建物の壁や天井と同一の色や模様とすることで、アンテナを目立たなくすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10,20,90…アンテナ
11,94…一次放射器
12…反射鏡
12a…開口面
12b…鏡面
12c…鏡面底部
13,93…誘電体層
15,25,97…円環部
92…穴(空洞)
100…電子機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する一次放射器と、
前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であり、鏡面形状がパラボラ面である反射鏡と、
前記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ前記反射鏡の外側に向かって突出する導電性の円環部と
を具備し、
前記円環部の幅が前記開口径の50%以下である
アンテナ。
【請求項2】
電波を放射する一次放射器と、
前記一次放射器より放射された電波を反射し、開口径が前記電波の波長の1.7倍以下であるパラボラ反射鏡と開口径および高さが等しく、鏡面形状が非パラボラ面である反射鏡と、
前記反射鏡の開口面の周縁部に設けられ前記反射鏡の外側に向かって突出する導電性の円環部と
を具備し、
前記円環部の幅が前記開口径の50%以下である
アンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナであって、
前記非パラボラ面は、2以上の異なる形状の非パラボラ面を組み合わせた形状である
アンテナ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記円環部は、前記開口面と一致する面内に前記開口面の外側と接して設置される
アンテナ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記一次放射器は、前記反射鏡の開口面から内側の領域に配置される
アンテナ。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナであって、
前記反射鏡は、前記開口面から内側の領域に充填された誘電体層を有する
アンテナ。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載のアンテナの被搭載側の表面、又は被搭載側の内部に設けられた空洞に、前記アンテナが埋め込まれた
電子機器。