(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084808
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ブラシ装置、電気集塵機、及び空気清浄機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/74 20060101AFI20230613BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20230613BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B03C3/74 C
B03C3/40 A
B03C3/41 A
B03C3/41 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199120
(22)【出願日】2021-12-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年4月28日付にてアマノ株式会社の自社ウェブサイトで公開 令和3年4月28日付にて株式会社日本経済新聞社が新聞で公開 令和3年4月28日付にて株式会社日本経済新聞社が新聞で公開 令和3年4月28日付にてニュースリリース配信で公開 令和3年5月12日から令和3年11月30日複数社への販売で公開 令和3年7月6日付にて株式会社日刊工業新聞社がウェブサイトで公開 令和3年10月20日から令和3年10月23日開催のメカトロテックジャパン2021で公開
(71)【出願人】
【識別番号】000101617
【氏名又は名称】アマノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中川 祥平
【テーマコード(参考)】
4D054
【Fターム(参考)】
4D054AA09
4D054BA02
4D054BB03
4D054BB08
4D054BB26
4D054BC31
4D054DA12
4D054DA20
4D054EA11
4D054EA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放電ブラシを構成する線電極の脱落やずれを防止すると共に放電ポイントの減少を防止し、荷電性能(放電性能)及び捕集性能(集塵性能)の低下を防止することのできるブラシ装置、電気集塵機、及び空気清浄機を提供する。
【解決手段】本発明は、繊維状の線電極を束ねて形成される複数の放電ブラシ12と、放電ブラシ12を両側から挟持する第1の板状部材40及び第2の板状部材41を有する短冊状の支持基板13と、第1の板状部材40と第2の板状部材41とを接合する接合手段49と、を備え、放電ブラシ12は、その先端部が支持基板13の幅方向に沿って支持基板13から突出した姿勢で支持基板13の長手方向に間隔を空けて配置され、接合手段49は、各放電ブラシ12に隣接して配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を印加することで発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電又は帯電された粒子を除電させるブラシ装置であって、
繊維状の線電極を束ねて形成される複数の放電ブラシと、
前記放電ブラシを両側から挟持する第1の板状部材及び第2の板状部材を有する短冊状の支持基板と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する接合手段と、
を備え、
前記放電ブラシは、その先端部が前記支持基板の幅方向に沿って該支持基板から突出した姿勢で該支持基板の長手方向に間隔を空けて配置され、
前記接合手段は、前記各放電ブラシに隣接して配置されていることを特徴とするブラシ装置。
【請求項2】
前記接合手段は、前記各放電ブラシの片側に離間して配置されていることを特徴とする 請求項1に記載のブラシ装置。
【請求項3】
前記接合手段は、前記放電ブラシの両側に離間して対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシ装置。
【請求項4】
前記支持基板は、第1の板状部材と第2の板状部材の破断面同士が向き合うように接合されて形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項5】
前記支持基板は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材をカシメることで形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項6】
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材のいずれか一方の板状部材には、前記放電ブラシの配置箇所に凸部が設けられ、他方の板状部材には、前記凸部に篏合可能な開口部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項7】
前記凸部は、矩形状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のブラシ装置。
【請求項8】
前記放電ブラシは、その先端部が突出するように該放電ブラシを両側から保持する挟持体を備え、該挟持体は前記凸部の上面に配置され、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材が接合された時に前記挟持体が前記開口部から突出しないように前記凸部の高さが設定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載のブラシ装置。
【請求項9】
前記放電ブラシを挟持する前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成される前記支持基板の幅方向側端面の隙間を覆う侵入防止手段を備えていることを特徴とする請求項1~8のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項10】
前記侵入防止手段は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくともいずれか一方の板状部材の幅方向側端部に形成される曲げ部を備えていることを特徴とする請求項9に記載のブラシ装置。
【請求項11】
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくともいずれか一方の板状部材の幅方向側端部に、隣接する前記曲げ部の間に形成される隙間を埋める突起部が形成されていることを特徴とする請求項10に記載のブラシ装置。
【請求項12】
前記放電ブラシの先端部が突出するように該放電ブラシを両側から挟持する第1の挟持体及び第2の挟持体を備え、
前記第1の挟持体は前記第1の板状部材に対向して配置され、前記第2の挟持体は前記第2の板状部材に対向して配置され、前記第1の挟持体と前記第2の挟持体の少なくともいずれか一方の挟持体は、導電性を有する接着層を介して電圧が印加されることを特徴とする請求項1~11のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項13】
前記放電ブラシは、非磁性で直径5~25μmのステンレス繊維の線電極を10~200本束ねて形成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかの請求項に記載のブラシ装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかの請求項に記載のブラシ装置を備えた電気集塵機において、
前記ブラシ装置により帯電された粒子を捕集するための集塵部と、
含塵空気を吸引するためのファンと、
を備え、前記ブラシ装置と前記集塵部とは一体的に形成され、前記ブラシ装置と前記集塵部と前記ファンとは、含塵空気の流通方向上流側から順に直列に配置されていることを特徴とする電気集塵機。
【請求項15】
請求項1~13のいずれかの請求項に記載のブラシ装置を備えた空気清浄機において、
吸気口と、排気口と、ファンと、集塵部と、を備え、
前記ファンによって吸気口から吸い込まれた空気中に含まれる塵埃・微粒子を、前記ブラシ装置が荷電した後に前記集塵部が吸着し、前記排気口から清浄空気が排出されることを特徴とする空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧の印加によって発生するコロナ放電により、含塵空気中の塵埃や油煙中のミスト等の粒子を帯電させるブラシ装置、帯電された粒子を除電させる除電機のブラシ装置、該ブラシ装置を備える電気集塵機、及び該ブラシ装置を備える空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロナ放電によって空気中の粒子を帯電させる装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の
図4(a)には、2枚の短冊状の長形金属板の間に等長の炭素繊維束が等しい間隔をおいて並べられ、一方の周縁に設けられた爪状突起を折曲げてこれらの金属板を相互に固定するコロナ放電極が開示されている。
また、特許文献2の
図5には、U字状の支持板に挟まれて支持されているブラシ状電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-112549号公報
【特許文献2】特開2016-107193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に開示された発明では、一方の金属板に設けられている爪状突起は、炭素繊維束のすべての間隔に設けられておらず、
図4(a)では、6個の炭素繊維束の間隔のうち2箇所のみに爪状突起が設けられている。すなわち、4個の炭素繊維束の間隔には、爪状突起が設けられていないため、爪状突起が設けられていない4個の炭素繊維束は、爪状突起が設けられている2個の炭素繊維束と比べて、金属板から炭素繊維束が脱落したり、所定の位置からずれたりする恐れが生じる。
【0006】
また、上記した特許文献2に開示された発明では、すべてのブラシに対して、ブラシの抜け強度の向上及び均一化を図ると共に所定の位置からブラシがずれるのを防止することは、構造上難しい。
【0007】
さらに、特許文献1及び2に開示された発明では、放電部のメンテナンス時に行われる洗浄水やエアーブロー(圧縮空気の吹き付け)によって放電ブラシに付着した汚れを除去する際、放電ブラシが撓んだり曲がったりすることで、放電ブラシの一部の線電極が支持板間又はU字状の隙間に入り込んでしまい、結果的に、放電ブラシの放電ポイントが減少し、荷電性能(放電性能)の低下や捕集性能(集塵性能)が低下してしまう恐れが生じる。さらにまた、放電ブラシの線電極が支持板間に入り込んでしまうと、放電することができない恐れもある。
【0008】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、ブラシ装置のメンテナンスや清掃を行う際に、放電ブラシに対して、洗浄水やエアーブローによる圧力や引っ張り方向又は圧縮方向の力が作用したとしても、放電ブラシを構成する線電極が支持基板から脱落したり所定の位置から線電極がずれたりするのを防止すると共に放電ポイントの減少を防止し、荷電性能(放電性能)及び捕集性能(集塵性能)の低下を防止することのできるブラシ装置、電気集塵機、及び空気清浄機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明の第1のブラシ装置は、電圧を印加することで発生するコロナ放電により空気中の粒子を帯電又は帯電された粒子を除電させるブラシ装置であって、繊維状の線電極を束ねて形成される複数の放電ブラシと、前記放電ブラシを両側から挟持する第1の板状部材及び第2の板状部材を有する短冊状の支持基板と、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを接合する接合手段と、を備え、前記放電ブラシは、その先端部が前記支持基板の幅方向に沿って該支持基板から突出した姿勢で該支持基板の長手方向に間隔を空けて配置され、前記接合手段は、前記各放電ブラシに隣接して配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の第1のブラシ装置によれば、接合手段が各放電ブラシに隣接して配置されることにより、すべての放電ブラシの抜け強度を高めると共に位置ずれ防止を図ることができる。
【0011】
本発明の第2のブラシ装置は、前記接合手段が、前記各放電ブラシの片側に離間して配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2のブラシ装置によれば、放電ブラシを傷つけたり切断したりすることがなく、放電ブラシが支持基板から脱落したり、位置ずれしたりするのを防止することができる。
【0013】
本発明の第3のブラシ装置は、前記接合手段が、前記放電ブラシの両側に離間して対向配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3のブラシ装置によれば、放電ブラシを傷つけたり切断したりすることがなく、放電ブラシが支持基板から脱落したり、位置ずれしたりするのを防止する効果をより高めることができる。
【0015】
本発明の第4のブラシ装置は、前記支持基板が、第1の板状部材と第2の板状部材の破断面同士が向き合うように接合されて形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4のブラシ装置によれば、破断面のバリが原因でスパーク(異常放電)が発生するのを防止することができる。
【0017】
本発明の第5のブラシ装置は、前記支持基板が、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材をカシメることで形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の第5のブラシ装置によれば、比較的低コストで、第1の板状部材と第2の板状部材を強固に接合することができる。
【0019】
本発明の第6のブラシ装置は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材のいずれか一方の板状部材には、前記放電ブラシの配置箇所に凸部が設けられ、他方の板状部材には、前記凸部に篏合可能な開口部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明の第6のブラシ装置によれば、凸部を設けることで放電ブラシの取り付け高さに段差が生じて凸部での抵抗分がプラスされるため、放電ブラシを抜け難くすることができると共に、すべての放電ブラシに対して安定的に電圧を印加することができる。
【0021】
本発明の第7のブラシ装置は、前記凸部が、矩形状に形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明の第7のブラシ装置によれば、放電ブラシのすべての線電極を矩形状の凸部の上面に配置させることができるので、放電ブラシを抜け難くすることができる。
【0023】
本発明の第8のブラシ装置は、前記放電ブラシが、その先端部が突出するように該放電ブラシを両側から保持する挟持体を備え、該挟持体は前記凸部の上面に配置され、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材が接合された時に前記挟持体が前記開口部から突出しないように前記凸部の高さが設定されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第8のブラシ装置によれば、支持基板の取り扱い時に、挟持体や該挟持体に保持されている放電ブラシの破損を回避することができる。
【0025】
本発明の第9のブラシ装置は、前記放電ブラシを挟持する前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に形成される前記支持基板の幅方向側端面の隙間を覆う侵入防止手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
本発明の第10のブラシ装置は、前記侵入防止手段が、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくともいずれか一方の板状部材の幅方向側端部に形成される曲げ部を備えていることを特徴とする。
【0027】
本発明の第11のブラシ装置は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材の少なくともいずれか一方の板状部材の幅方向側端部に、隣接する前記曲げ部の間に形成される隙間を埋める突起部が形成されていることを特徴とする。
【0028】
本発明の第9~11のブラシ装置によれば、洗浄水やエアーブロー(圧縮空気の噴射)によって放電ブラシに付着した汚れを除去する際に、放電ブラシが撓んだり曲がったりしたとしても、放電ブラシの一部が板状部材間の隙間に入り込むのを防止することができる。したがって、放電ポイントの減少を防止することができるため、荷電性能(放電性能)及び捕集性能(集塵性能)の低下を防止することができる。
【0029】
本発明の第12のブラシ装置は、前記放電ブラシの先端部が突出するように該放電ブラシを両側から挟持する第1の挟持体及び第2の挟持体を備え、前記第1の挟持体は前記第1の板状部材に対向して配置され、前記第2の挟持体は前記第2の板状部材に対向して配置され、前記第1の挟持体と前記第2の挟持体の少なくともいずれか一方の挟持体は、導電性を有する接着層を介して電圧が印加されることを特徴とする。
【0030】
本発明の第12のブラシ装置によれば、放電ブラシを第1の挟持体と第2の挟持体により挟持させることで、放電ブラシの固定作業を容易に行うことができると共に、放電ブラシが支持基板から抜け難い構造を比較的に低コストで実現することができる。また、比較的簡単な構造となると共に、導電性を有する接着層を備えているため、すべての放電ブラシに対して安定的に電圧を印加することができる。
【0031】
本発明の第13のブラシ装置は、前記放電ブラシが、非磁性で直径5~25μmのステンレス繊維の線電極を10~200本束ねて形成されていることを特徴とする。
【0032】
本発明の第13のブラシ装置によれば、線電極が束状に形成された放電ブラシ(束状部)は離間しやすいため、放電性能を高めることができる。また、流通性と経済性を高めることができると共に、耐久性(錆び難さ)と放電性能(荷電性能)の向上を図ることができる。
【0033】
本発明の電気集塵機は、上記したいずれかのブラシ装置を備えた電気集塵機において、前記ブラシ装置により帯電された粒子を捕集するための集塵部と、含塵空気を吸引するためのファンと、を備え、前記ブラシ装置と前記集塵部とは一体的に形成され、前記ブラシ装置と前記集塵部と前記ファンとは、含塵空気の流通方向上流側から順に直列に配置されていることを特徴とする。
【0034】
本発明の電気集塵機によれば、ブラシ装置と集塵部とファンとを直列に配置することで、電気集塵機の高さ寸法を低く抑えることができる。また、ブラシ装置の長手方向の寸法を短縮化すると共にブラシ装置と集塵部とを一体的に形成することで、電気集塵機の長手方向の寸法も小さくすることができるため、
製品の小型化を図ることができる。
【0035】
本発明の空気清浄機は、上記したいずれかのブラシ装置を備えた空気清浄機において、吸気口と、排気口と、ファンと、集塵部と、を備え、前記ファンによって吸気口から吸い込まれた空気中に含まれる塵埃・微粒子を、前記ブラシ装置が荷電した後に前記集塵部が吸着し、前記排気口から清浄空気が排出されることを特徴とする。
【0036】
本発明の空気清浄機によれば、空気中の塵埃・微粒子を含む粒子を確実に帯電させて捕集することができ、集塵効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ブラシ装置のメンテナンスや清掃を行う際に、放電ブラシに対して、洗浄水やエアーブローによる圧力や放電ブラシに引っ張り方向又は圧縮方向の力が作用したとしても、放電ブラシを構成する線電極が支持基板から脱落したり所定の位置から線電極がずれたりするのを防止すると共に放電ポイントの減少を防止し、荷電性能(放電性能)及び捕集性能(集塵性能)の低下を防止することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気集塵機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る電気集塵機の荷電集塵部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る電気集塵機の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の要部を拡大して示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の曲げ部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の曲がった放電ブラシを拡大して示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置において、(a)は放電ブラシを示す平面図、(b)は(a)のY方向から見た放電ブラシを示す拡大矢視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置において、(a)はベース板を示す平面図、(b)はベース板を示す側面図、(c)は(a)のY1-Y1断面図、(d)は(a)のY2-Y2断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置において、(a)は押え板を示す平面図、(b)は押え板を示す側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置において、(a)はベース板を示す平面図、(b)はベース板の上に放電ブラシを保持した挟持体を接着した状態を示す平面図、(c)は放電ブラシを保持した挟持体が接着されたベース板の上に押え板を固定した状態を示す平面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置において、(a)はベース板と放電ブラシを保持した挟持体とを示す側面図、(b)はベース板の上に放電ブラシを保持した挟持体を接着した状態を示す側面図、(c)は放電ブラシを保持した挟持体が接着されたベース板と押え板とを示す側面図、(d)は放電ブラシが接着されたベース板の上に押え板を固定した状態を示す側面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る電気集塵機の荷電集塵部において、空気中の粒子が帯電及び集塵される状態を示す平面図である。
【
図16a】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の変形例を示す平面図である。
【
図16b】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の変形例を示す平面図である。
【
図16c】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の変形例を示す平面図である。
【
図16d】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の変形例を示す平面図である。
【
図16e】本発明の実施形態に係る電気集塵機のブラシ装置の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
[電気集塵機の全体構成]
先ず、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電気集塵機の全体構成について説明する。ここで、
図1は本発明の実施形態に係る電気集塵機の全体構成を示す斜視図、
図2は本発明の実施形態に係る電気集塵機の荷電集塵部を示す斜視図、
図3は本発明の実施形態に係る電気集塵機の構成を示すブロック図である。
【0040】
図1に示されているように、本実施形態に係る電気集塵機1は、直方体形状の本体ケース2を備えている。本体ケース2には、空気の流通方向の上流側(
図1の左手前側)に吸気口3が開口され、この吸気口3に吸気ダクト(図示省略)が接続される。また、本体ケース2の上面には、空気の流通方向の下流側(
図1の右奥側)に排気口4が開口されている。
【0041】
本体ケース2の内部には、プレフィルタ5と、荷電集塵部6と、ファン7(
図3参照)と、が空気の流通方向に沿って順に直列に配置されている。また、本体ケース2には、ファン7を回転させるための駆動源としてモータ(図示省略)が取り付けられている。また、本体ケース2の前面側(
図1の右手前側)には、開閉扉(図示省略)が開閉可能に取り付けられている。なお、
図1では、電気集塵機1の内部の状態が視認できるように、便宜上、開閉扉を省略して示している。
【0042】
図2に示されているように、荷電集塵部6は、全体の骨組みを形成する枠体8の内部に設けられて外形が略直方体形状を有しており、ブラシ装置としての荷電部10と集塵部11とが一体的に形成されて構成されている。
【0043】
荷電部(ブラシ装置)10は、複数の放電ブラシ12と、放電ブラシ12を支持する複数の支持基板13と、支持基板13に対向するように該支持基板13に平行に配置される複数の荷電用アース板14(接地電極)と、を備えて構成され、支持基板13と荷電用アース板14との間に空気の流通路が形成されている。なお、荷電部(ブラシ装置)10の詳細については、後述する。
【0044】
集塵部11は、支持基板13及び荷電用アース板14の空気の流通方向下流側に設けられており、支持基板13及び荷電用アース板14に平行な向きに並設される複数の集塵板15と、集塵板15に対向するように平行に配置される複数の集塵用電圧極板16と、を備えて構成されている。
【0045】
枠体8は、互いに対向するように設けられる端板17と、端板17間に水平姿勢で貫設される10本の連結シャフト18と、を備えて構成されている。10本の連結シャフト18のうち、2本の連結シャフト18は支持基板13の上下両端部を支持し、別の4本の連結シャフト18は集塵板15の上下左右両端部を支持し、さらに別の4本の連結シャフト18は集塵用電圧極板16の上下左右両端部を支持する。
【0046】
支持基板13の連結シャフト18と集塵用電圧極板16の連結シャフト18には、給電部材20が取り付けられており、支持基板13の給電部材20は、絶縁碍子29を介して端板17に立設されたステー19に固定され、集塵用電圧極板16の給電部材20は、絶縁碍子29を介して枠体8に固定されている。給電部材20には、電圧電源部(図示省略)の電圧供給部21(
図3参照)が電気的に接続されている。給電部材20の給電接続部22と前記開閉扉の給電部(図示省略)とが接続することで、支持基板13と集塵用電圧極板16に電圧が印加される。前記電圧電源部は、交流の元電源を高圧トランス(図示省略)で昇圧した後、倍圧部(図示省略)で交流電流を直流に変換すると共にさらに昇圧して電圧を生成するように構成されている。なお、本実施形態では、荷電部10と集塵部11に印加される電圧の出力は別々であるが、同一出力の電圧を印加しても良い。
【0047】
図3に示されているように、前記開閉扉には、表示部23、設定操作部24、運転・停止スイッチ25、安全スイッチ26、リセットスイッチ27を有するコントロールパネル28が設けられている。また、電気集塵機1には、記憶部31とCPU32を有する制御部30が設けられており、制御部30には、インターフェイス部33を介して、コントロールパネル28及び各機器(ファン7、電圧供給部21等)が接続されている。
【0048】
[荷電部(ブラシ装置)]
次に、
図4~
図14を参照しつつ、本発明の実施形態に係る電気集塵機1の荷電部(ブラシ装置)10について詳細に説明する。
【0049】
<放電ブラシ>
上記したように荷電部(ブラシ装置)10は、複数の放電ブラシ12を備えている。各放電ブラシ12は、繊維状の線電極を束ねてブラシ状に形成された束状部を有している。線電極は、直径14μmの非磁性のステンレス繊維で形成されており、ステンレスは、流通性と経済性と耐食性に優れた、18%のCrと12%のNiにモリブデン(Mo)を添加したSUS316を使用している。なお、線電極は、非磁性のステンレスであれば、例えば、18%のCrと8%のNiを含むSUS304等、他の材質を使用しても良い。
【0050】
このように放電ブラシ12の線電極を非磁性のステンレスにより形成することで、線電極が放電ブラシ12の束状部から離間しやすく、放電性能を高めるこができる。仮に線電極が磁性を備えたフェライト系の繊維で形成された場合には、線電極が放電ブラシ12の束状部から離間し難くなるため、放電ブラシ12との電界干渉による影響が大きく、強電界のコロナ放電を発生させることが難しい。
【0051】
1つの放電ブラシ12の束状部は、例えば、約100本の線電極が束ねられることで形成されている。
なお、放電ブラシ12は、直径5~25μmの線電極を10~200本束ねて形成されていても良い。このように放電ブラシ12を形成することで、流通性と経済性を高めることができると共に、耐久性(錆び難い)と放電性能(荷電性能)の向上を図ることができる。
【0052】
各放電ブラシ12は、支持基板13の幅方向に沿って支持基板13から空気の流通方向の上流側と下流側の両側に向かって延びた状態で設けられている。これにより、支持基板13の空気の流通方向の片側に放電ブラシ12を設けた場合に比べて、放電ブラシ12の数を増加させることができ、コロナ放電の発生箇所を増加させることができるため、空気中の粒子を効率良く帯電させることができる。なお、後述するように、放電ブラシ12は、支持基板13から空気の流通方向の上流側のみに配置されても良いし、或いは、支持基板13から空気の流通方向の下流側のみに配置されても良い。
【0053】
各放電ブラシ12はすべて略同じ全長に形成され、各放電ブラシ12の先端は略揃えられている。各放電ブラシ12の突出長さ(支持基板13の縁部から放電ブラシ12の先端までの長さ)は、約5mmに設定されている。なお、放電ブラシ12の突出長さは、離間可能な長さが3mm以上であり、自立可能な長さが7mm以下であるから、3~7mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0054】
また、各放電ブラシ12は、支持基板13の長手方向に沿って所定のピッチで間欠的に設けられている。隣接する放電ブラシ12間のピッチは、5~10mmの範囲であることが好ましい。これにより、装置の小型化(高密度配置)を実現することができると共に、集塵性能(捕集性能)を向上させることができる。
【0055】
放電ブラシ12に印加される電圧は、4~8kVの範囲である(本実施形態では、8kV)。放電ブラシ12には、直流でマイナスの電圧が印加される。直流方式を採用することで、他の方式(交流、パルス)に比べて、比較的簡単な構成とすることができる。また、マイナス荷電方式を採用することで、プラス荷電方式に比べて、同じ空間(隙間)でも放電ブラシ12に放電電流を多く流すことができると共に、放電安定性(異常放電し難い特性)を向上させることができる。
【0056】
<挟持体>
複数の放電ブラシ12は、その両先端部が突出するように挟持体34によって保持されている。
図9(b)に示されているように、挟持体34は、複数の放電ブラシ12を両側から挟持する第1の挟持体35及び第2の挟持体36を備えている。第1の挟持体35は、アルミテープ製の金属箔帯状体で、第2の挟持体36は、導電性の両面テープであり、接着層37を備えており、挟持体34を支持基板13に取り付ける際には、第2の挟持体36の両面テープを剥がして支持基板13に接着する。なお、この場合、第1の挟持体35と第2の挟持体36の少なくともいずれか一方の挟持体が導電性を有する接着層37を備えていれば良い。
【0057】
挟持体34は、除電目的の部材として市販に広く流通しているアルミテープ型ブラシを利用することができる。この場合、製造工程において放電ブラシ12を供給する製造設備等を用意する必要がなくなるため、挟持体34をより容易且つより安価に製造することができ、挟持体34のイニシャルコストを低減させることができる。また、放電ブラシ12の製造工程の簡素化を図ることができるため、放電ブラシ12の製造コストの削減を図ることもできる。
【0058】
<支持基板>
上記したように荷電部(ブラシ装置)10は、複数の支持基板13を備えている。本実施形態において、支持基板13は、空気の流通方向に対して平行な向きに7列設けられている。支持基板13は、第1の板状部材であるベース板40と第2の板状部材である押え板41とを接合させることで形成され、ベース板40と押え板41との間に挟持体34によって保持された複数の放電ブラシ12が固定される。ベース板40及び押え板41は、いずれも細長短冊状で導電性を有する金属により形成されている。
【0059】
ベース板40は、加工性に優れているアルミ製で、長尺状を成している。ベース板40は、押え板41と向かい合う側が破断面になるようにプレス抜き加工されている。このようにせん断面を外側にすることで、破断面のバリが原因でスパーク(異常放電)が発生するのを防止することができる。
【0060】
ベース板40には、プレスで抜き加工を行うことにより、一方の端部(下端部)にU字型の溝部42が形成され、他方の端部(上端部)に半円状の溝部43が形成されている。U字型の溝部42及び半円状の溝部43はそれぞれ連結シャフト18に係合可能に形成されている。U字型の溝部42が係合する連結シャフト18には、U字型の溝部42に係合可能な溝が等間隔で平行に加工されている。半円状の溝部43が係合する連結シャフト18には、複数のスペーサ44(
図2参照)が周設されており、これらのスペーサ44の
押し付け力によって各支持基板13は、等間隔で平行に固定且つ保持されている。
【0061】
このように構成することにより、支持基板13は、一方の連結シャフト18の締め付け力を弱めてスライドさせると、半円状の溝部43と連結シャフト18との係合が解除されるため、支持基板13を回動させて連結シャフト18から引き離すことで荷電集塵部6から簡単に取り外すことができる。また、ベース板40の一方の溝部42をU字型として溝の深さを他方の溝部43より大きく形成することで、支持基板13の交換が必要となった場合に支持基板13の取り出し及び取付け作業を容易に行うことができる。なお、支持基板13を荷電集塵部6に装着させる場合には、上記した手順と逆の手順で行うことができる。
【0062】
図5及び
図10(a)~(d)に良く示されているように、ベース板40には、複数の矩形状の第1の凸部45と、複数の円形状の第2の凸部46と、複数の円形状の凹部47及び丸穴48と、複数の突起部50と、が設けられている。
【0063】
第1の凸部45及び第2の凸部46は、いずれも半抜き加工により形成されている。第1の凸部45は、ベース板40の長手方向の中心線に沿って所定の間隔を空けて形成されている。第2の凸部46は、ベース板40の幅方向の両端側においてそれぞれ長手方向に所定の間隔を空けて形成されており、第1の凸部45の間隔に対応した位置及び長手方向の両端部の第1の凸部45の外側部分に対応した位置にそれぞれ配置されている。また、第1の凸部45及び第2の凸部46の高さは、ベース板40と押え板41との接合時に第1の凸部45の上面に配置された挟持体34が支持基板13から上方に突出しないように設定されている。
【0064】
凹部47は、挟持体34の位置合わせ用のセンターポンチであり、長手方向の両端部の第1の凸部45の外側部分(長手方向の両端部の対向する第2の凸部46の間)にそれぞれ形成されている。また、丸穴48は、ベース板40と押え板41の位置合わせ用の穴であり、長手方向の両端部の凹部47のさらに外側部分にそれぞれ形成されており、製造治具のピンが係合可能となっている。
【0065】
突起部50は、ベース板40の幅方向側の両端面において長手方向に所定の間隔を空けて形成されており、各第1の凸部45に対応した位置にそれぞれ配置されている。これにより、ベース板40の幅方向側の両端面には各突起部50の間に溝部51が形成され、各溝部51は各第2の凸部46に対応した位置にそれぞれ配置されている。
【0066】
押え板41は、強度に優れているステンレス製で、長尺状を成している。
図5及び
図11(a)及び(b)に良く示されているように、押え板41には、プレスで抜き加工を行うと共に幅方向の端部で曲げ加工を行うことにより、複数の矩形状の第1の開口部52と、複数の円形状の第2の開口部53と、複数の丸穴54と、複数の曲げ部55と、が形成されている。
【0067】
第1の開口部52は、押え板41の長手方向の中心線に沿って所定の間隔を空けて形成されている。第1の開口部52は、ベース板40の第1の凸部45が内部に納まるように、第1の凸部45よりも一回り大きな寸法に設定されている。
【0068】
第2の開口部53は、押え板41の幅方向の両端側においてそれぞれ長手方向に所定の間隔を空けて形成されている。第2の開口部53は、ベース板40の第2の凸部46とのカシメ加工が適正に行われて、接合手段であるカシメ部49が形成されるように、第2の凸部46よりも一回り大きな寸法に設定されている。
【0069】
丸穴54は、ベース板40と押え板41の位置合わせ用の穴であり、押え板41の長手方向の両端部においてベース板40の丸穴48に対応した位置に形成されており、製造治具のピンが係合可能となっている。
【0070】
曲げ部55は、押え板41の幅方向側の両端面において長手方向に所定の間隔を空けて形成されている。曲げ部55は、対向するベース板40側に曲げられており、ベース板40と押え板41との接合時にベース板40の溝部51に篏合して、曲げ部55の先端部がベース板40の非接合面と同一面を形成するか、或いはベース板40非接合面から僅かに後退して、該非接合面から突出しないように形成されている(
図7参照)。
【0071】
このように曲げ部55を形成することにより、押え板41の幅方向側の両端面には、各曲げ部55の間に曲げ逃げ部56が形成される。
図11(b)に示されているように、曲げ部55の長さAは放電ブラシ12に接触しない程度の長さに設定され、曲げ逃げ部56の長さBは放電ブラシ12の幅寸法より大きく設定され、押え板41の加工性も考慮してA>Bに設定されている。
【0072】
図8に示すように、メンテナンス等により支持基板13を洗浄水により洗浄したり、エアーブロー(圧縮空気による吹き付け)を行ったりすると、放電ブラシ12の線電極は、柔らかいため曲がってしまうことがある。そして、曲がってしまった放電ブラシ12の線電極は、ベース板40と押え板41との間の隙間に入り込んでしまい、放電することができなくなり、放電ポイントの減少が生じるといった問題がある。なお、実際には多数の放電ブラシが曲がったり撓んだりすることがあるが、多数の放電ブラシを図示すると分かり難くなるため、
図8では、上下の放電ブラシの2本のみを簡略的に示している。
【0073】
しかしながら、上記したように、本発明の実施形態に係る荷電部(ブラシ装置)10には、曲げ部55が形成されているため、上記した問題が生じるのを防止することができる。さらに、ベース板40には、押え板41の曲げ部55間の隙間を埋めるために突起部50が設けられており、この突起部50により、洗浄時やエアーブロー時においても、放電ブラシ12の一部の線電極がベース板40と押え板41との間の隙間(
図7の斜線部)に入り込むのを確実に防止することができる。なお、突起部50の突出長は、曲げ部55の厚みと略同等に設定されているのが好ましい。
【0074】
なお、曲げ部55は、ベース板40の幅方向側の一方の端面と押え板41の幅方向側の他方の面にそれぞれ設けたり、或いはベース板40及び押え板41の幅方向側の両端面に互い違いに設けたりすることもできる。
【0075】
<支持基板による放電ブラシの支持方法>
次に、
図12(a)~(c)、
図13(a)~(d)、及び
図14を参照しつつ、上記した構成を備えた支持基板13によって放電ブラシ12を支持する方法について説明する。ここで、
図12(a)はベース板40を示す平面図、
図12(b)はベース板40の上に放電ブラシ12を保持した挟持体34を接着した状態を示す平面図、
図12(c)は放電ブラシ12を保持した挟持体34が接着されたベース板40の上に押え板41を固定した状態を示す平面図、
図13(a)はベース板40と放電ブラシ12を支持した挟持体34とを示す側面図、
図13(b)はベース板40の上に放電ブラシ12を保持した挟持体34を接着した状態を示す側面図、
図13(c)は放電ブラシ12を保持した挟持体34が接着されたベース板40と押え板41とを示す側面図、
図13(d)は放電ブラシ12を保持した挟持体34が接着されたベース板40の上に押え板41を固定した状態を示す側面図、
図14は
図13(d)のX-X断面図である。
【0076】
まず、
図12(a)及び
図13(a)に示すように、第1の凸部45と第2の凸部46を上側に向けた姿勢でベース板40を製造治具(図示省略)にセットする。この時、製造治具に立設されている2本のピンをベース板40の両端部の丸穴48に貫通させることで、ベース板40は製造治具に位置決めされた状態でセットされる。
【0077】
次に
図12(b)及び、
図13(b)に示すように、第2の挟持体36の両面テープを剥がし、ベース板40の凹部47(位置合わせ用のセンターポンチ)を利用して、放電ブラシ12を保持した挟持体34をベース板40の所定の位置に接着させる。
なお
図12(a)及び
図13(a)に示す工程より先に、
図12(b)及び、
図13(b)に示す工程を行っても良い。
【0078】
次に、
図13(c)に示すように、曲げ部55の先端部を下方に向けた姿勢で押え板41の丸穴54を前記製造治具の2本のピンに貫通させて、放電ブラシ12を保持した挟持体34が接着されたベース板40上に押え板41を載せる。これにより、ベース板40の第1の凸部45、第2の凸部46、及び曲げ部55がそれぞれ押え板41の第1の開口部52、第2の開口部53、及び溝部51に係合する。
【0079】
次に、
図12(c)、
図13(d)、及び
図14に示すように、カシメ装置(図示省略)を用いて、ベース板40の各第2の凸部46と押え板41の各第2の開口部53をカシメることで、接合手段である複数のカシメ部49を形成させる。このカシメ部49により、ベース板40と押え板41とが接合され、挟持体34によって保持された複数の放電ブラシ12の両側にカシメ部49が隣接して対向配置された状態で、ベース板40と押え板41との間に複数の放電ブラシ12が固定される。
【0080】
なお、
図14では、見易いように、放電ブラシ12の挟持部分12aの上面と押え板41の下面との間及び放電ブラシ12の挟持部分12aの下面とベース板40の上面との間に隙間が生じているように示されているが、実際には、ベース板40と押え板41は、カシメによる接合で密着しているので、放電ブラシ12の挟持部分12aは、前記各隙間がほぼない状態でベース板40と押え板41により挟持されている。
また
図14より挟持体34が、押え板41の開口部52から突出しない(開口部から外側に、はみ出さない)ように凸部45の高さが設定されていので、支持基板13の取り扱い時においても、挟持体34の破損および、該挟持体34に保持されている放電ブラシ12の破損を回避することができる。
【0081】
このようにベース板40と押え板41とを接合する場合、ベース板40と押え板41の一方の部材が他方の部材よりも変形しやすいのが好ましい。例えば、ベース板40の板厚を厚くして強くする一方、押え板41の板厚を薄くて撓みやすくすることにより、ベース板40と押え板41を接合する際、ベース板40に押え板41が沿って密着することで、ベース板40と押え板41との間の隙間を最小限に留めることができる。
【0082】
また、本発明の実施形態では、挟持体34がベース板40と押え板41の接合箇所(カシメ部49)に干渉しない位置に設置されており、ベース板40と押え板41を接合する際に、挟持体34が一緒にカシメられることがないため、接合不良が発生する恐れがない。
【0083】
なお、ベース板40と押え板41を接合する方法として、溶接(スポット溶接など)、溶着(超音波溶着など)、ネジ止め、接着などの様々な接合方法があるが、本発明の実施形態のようにカシメによる接合方法は、低コストで強固に接合することができるので好適な接合方法である。また、本発明の実施形態では、カシメ部49の形状が丸型となっているが、例えば、楕円形や長方形、四角形、多角形等、他の形状であっても良い。
【0084】
また、放電ブラシ12の密着性を上げるためには、第1の凸部45に乗り上げる放電ブラシ12の長さを長くした方が有効であるため、第1の凸部45の形状は、中心以外で乗り上げる長さが短くなる丸型にするより、中心以外でも乗り上げる長さの変わらない矩形状とするのが好ましい。
【0085】
[電気集塵機の作用]
次に、
図1~
図3、及び
図15を参照しつつ、上記した構成を備えた本発明の実施形態に係る電気集塵機1の作用について説明する。
【0086】
ファン7の駆動により、吸気口3から本体ケース2内に流入した含塵空気は、プレフィルタ5で濾過された後、荷電部(ブラシ装置)10に流入する。
【0087】
荷電部(ブラシ装置)10では、支持基板13と挟持体34を介して放電ブラシ12に電圧が印加され、含塵空気が支持基板13に支持された放電ブラシ12と荷電用アース板14との間に形成された帯電エリアを通過することで、含塵空気中の微粉塵又はミスト等の粒子や微細なウィルス等は均一に帯電される。
【0088】
帯電された粒子や微細なウィルス等は、その後、集塵部11において、集塵板15に捕集された後、濾過されて清浄空気となり、排気口4から電気集塵機1の外へ排出される。
【0089】
[荷電部(ブラシ装置)の変形例]
次に、
図16a~
図16eを参照しつつ、荷電部(ブラシ装置)10の変形例について説明する。
【0090】
図16aは、放電ブラシ12が支持基板13の片側(図示では上側)から突出し、放電ブラシ12の数とカシメ部49の数の割合が1:1の場合の変形例を示している。
【0091】
図16bは、放電ブラシ12が支持基板13の片側(図示では上側)から突出し、放電ブラシ12の数とカシメ部49の数の割合が2:1の場合の変形例を示している。なお、
図16a及び
図16bに示す変形例では、挟持体34から一方側(図示では下側)に突出した放電ブラシ12をカットしたものを使用している。
【0092】
図16cは、放電ブラシ12が支持基板13の両側から突出し、放電ブラシ12とカシメ部49がそれぞれ千鳥掛けに配置されており、放電ブラシ12の数とカシメ部49の数の割合が1:1の場合の変形例を示している。
【0093】
図16dは、放電ブラシ12が支持基板13の片側(図示では上側)から突出し、放電ブラシ12の数とカシメ部49の数の割合が1:1の場合の変形例を示している。
【0094】
図16eは、放電ブラシ12が支持基板13の片側(図示では上側)から突出し、放電ブラシ12の数とカシメ部49の数の割合が2:1の場合の変形例を示している。
【0095】
なお、
図16d及び
図16eに示す変形例では、一方側(図示では下側)の放電ブラシ12は、支持基板13から突出していないが、挟持体34からは突出していて、カシメ部49に対応した位置まで延出している(なお、カシメ部49より下側に延出していても良い)。
【0096】
また、
図16d及び
図16eの変形例では、第1の凸部45及び第1の開口部52とカシメ部49の配置が、
図16a~
図16cの変形例と比較して、反対側に配置されている。(
図16a~
図16cの変形例は、支持基板の13の幅方向の略中央部に第1の開口部52が配置され、
図16d及び
図16eの変形例では、支持基板の13の幅方向の略中央部にカシメ部49が配置されている)
【0097】
なお、上記した本発明の実施形態では、荷電部(ブラシ装置)10と集塵部11が一体型となった、いわゆる一段式の荷電集塵部6を備えた電気集塵機1について説明したが、本発明は、荷電部10と集塵部11が別々に構成された2段式の電気集塵機にも適用可能であることは言う迄もない。また、本発明は空気清浄機の荷電部に使用することも可能である。
【0098】
また、上記した本発明の実施形態の説明では、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の技術は、帯電された粒子を除電させる除電装置のブラシ装置、加工工場等で発生する粉塵やオイルミストを吸引して捕集する電気集塵機で利用されることが見込まれると共に、家庭用や業務用の空気清浄機において利用されることが見込まれるものである。
【符号の説明】
【0100】
1 電気集塵機
3 吸気口
4 排気口
7 ファン
10 荷電部(ブラシ装置)
11 集塵部
12 放電ブラシ
13 支持基板
34 挟持体
37 接着層
40 ベース板(第1の板状部材)
41 押え板(第2の板状部材)
45 第1の凸部(凸部)
49 カシメ部(接合手段)
50 突起部
52 第1の開口部(開口部)
55 曲げ部(侵入防止手段)