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特開2023-84810個別工程判定システム、及び個別工程判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084810
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】個別工程判定システム、及び個別工程判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230613BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20230613BHJP
   E21D 9/10 20060101ALI20230613BHJP
   E21F 17/06 20060101ALI20230613BHJP
   E21F 1/00 20060101ALI20230613BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
G06Q50/08
E21F17/00
E21D9/10 Z
E21F17/06
E21F1/00 Z
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199130
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(71)【出願人】
【識別番号】591168426
【氏名又は名称】菅機械工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515163483
【氏名又は名称】K’zシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】富井 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】森山 恭衡
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 和志
(72)【発明者】
【氏名】山口 和秀
【テーマコード(参考)】
2D054
5L049
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054GA06
2D054GA66
5L049AA07
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して容易かつ高精度で個別工程を判定し、その工程の作業時間を求めることによって、サイクルタイムの自動取得を可能にする個別工程判定システムと個別工程判定方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の個別工程判定システムは、建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいてトンネル掘削で行われる複数の異なる個別工程の中から1の個別工程を選定するシステムであり、トリガー信号受信手段と選定手段を備えたものである。このうちトリガー信号受信手段は、個別工程に用いられる建設機械に搭載され、電気機器の電源操作に係る「トリガー信号」を受信するものである。選定手段は、トリガー信号受信手段が受信したトリガー信号に基づいて個別工程を選定するものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいて、トンネル掘削で行われる複数の異なる個別工程の中から1の該個別工程を選定するシステムであって、
前記個別工程に用いられる前記建設機械に搭載され、前記電気機器の電源操作に係るトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段と、
前記トリガー信号受信手段が受信した前記トリガー信号に基づいて、前記個別工程を選定する選定手段と、を備え、
前記トリガー信号受信手段は、前記建設機械に設けられる前記電気機器のうちあらかじめ定められた特定電気機器の電源がONとされたときの起動トリガー信号を受信するとともに、該特定電気機器の電源ONが解除されたときの停止トリガー信号を受信し、
前記選定手段は、前記トリガー信号を受信した前記トリガー信号受信手段に係る前記建設機械に基づいて前記個別工程を選定し、前記起動トリガー信号の受信時刻と前記停止トリガー信号の受信時刻に基づいて該個別工程の作業時間を算出する、
ことを特徴とする個別工程判定システム。
【請求項2】
トンネル坑内に設置され、前記トリガー信号受信手段が受信した前記トリガー信号を送信する通信機器を、さらに備え、
トンネル坑外に配置された前記選定手段は、前記通信機器から送信された前記トリガー信号を受信して前記個別工程を選定する、
ことを特徴とする請求項1記載の個別工程判定システム。
【請求項3】
前記建設機械に2以上の前記特定電気機器が設定されるとともに、それぞれの該特定電気機器の前記トリガー信号を受信する前記トリガー信号受信手段が該建設機械に搭載され、
前記選定手段は、前記トリガー信号受信手段による前記起動トリガー信号の受信から前記停止トリガー信号の受信までの間は該トリガー信号受信手段に係る前記特定電気機器を稼働状態として設定するとともに、前記停止トリガー信号の受信から前記起動トリガー信号の受信までの間は該特定電気機器を休止状態として設定し、
また前記選定手段は、同一の前記建設機械に設定された2以上の前記特定電気機器に係る前記稼働状態と前記休止状態の組み合わせに基づいて前記個別工程を選定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の個別工程判定システム。
【請求項4】
前記選定手段は、前記起動トリガー信号の受信時刻から前記停止トリガー信号の受信時刻までの使用時間を求めるとともに、選定した前記個別工程に係る補正時間を該使用時間から減じることによって作業時間を算出し、
前記補正時間は、前記個別工程ごとにあらかじめ設定された、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の個別工程判定システム。
【請求項5】
トンネル坑口に設置される工程表示手段に、現在行われている前記個別工程を表示させる工程表示制御手段を、さらに備え、
前記工程表示制御手段は、前記選定手段によって選定された前記個別工程を表示させる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の個別工程判定システム。
【請求項6】
トンネル坑内の風管に空気を送る送風機、及び/又はトンネル坑内に設置された集塵機の出力を調整する設備制御手段を、さらに備え、
前記設備制御手段は、前記選定手段によって選定された前記個別工程に応じて前記送風機、及び/又は前記集塵機の出力を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の個別工程判定システム。
【請求項7】
建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいて、トンネル掘削で行われる複数の異なる個別工程の中から1の該個別工程を選定する方法であって、
前記個別工程に用いられる前記建設機械に搭載されたトリガー信号受信手段によって、前記電気機器の電源操作に係るトリガー信号を受信するトリガー信号受信工程と、
前記トリガー信号受信手段が受信した前記トリガー信号に基づいて、前記個別工程を選定する選定工程と、を備え、
前記トリガー信号受信工程では、前記建設機械に設けられる前記電気機器のうちあらかじめ定められた特定電気機器の電源がONとされたときの起動トリガー信号を受信するとともに、該特定電気機器の電源ONが解除されたときの停止トリガー信号を受信し、
前記選定工程では、前記トリガー信号を受信した前記トリガー信号受信手段に係る前記建設機械に基づいて前記個別工程を選定し、前記起動トリガー信号の受信時刻と前記停止トリガー信号の受信時刻に基づいて該個別工程の作業時間を算出する、
ことを特徴とする個別工程判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、トンネル掘削で行われる工種を判定する技術に関するものであり、より具体的には、建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいて実施中の工種を把握することができる個別工程判定システムと個別工程判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国の国土は、およそ2/3が山地であるといわれており、そのため道路や線路など(以下、「道路等」という。)は必ずといっていいほど山地部を通過する区間がある。この山地部で道路等を構築するには、斜面の一部を掘削する切土工法か、地山の内部をくり抜くトンネル工法のいずれかを採用するのが一般的である。トンネル工法は、切土工法に比べて施工単価(道路等延長当たりの工事費)が高くなる傾向にある一方で、切土工法よりも掘削土量(つまり排土量)が少なくなる傾向にあるうえ、道路等の線形計画の自由度が高い(例えば、ショートカットできる)といった特長があり、これまでに建設された国内のトンネルは10,000を超えるといわれている。
【0003】
山岳トンネルの施工方法としては、昭和50年代までは鋼アーチ支保工に木矢板を組み合わせて地山を支保する「矢板工法」が主流であったが、現在では地山強度を積極的に活かすNATM(New Austrian Tunnelling Method)が主流となっている。NATMは、地山が有する強度(アーチ効果)に期待する設計思想が主な特徴であり、そのため従来の矢板工法に比べトンネル支保工の規模を小さくすることができ、しかも施工速度が向上するため施工コストを減縮することができる。
【0004】
また我が国におけるNATMは、本格的に実施されて以来、飛躍的に掘削技術が進歩しており、種々の補助工法が開発されることによって様々な地山に対応することができるようになり、さらに掘削機械(特に、自由断面掘削機)の進歩によって発破掘削のほか機械掘削も選択できるようになった。この機械掘削は、掘削断面積や線形にもよるものの一般的には比較的低い強度(例えば、一軸圧縮強度が49N/mm以下)の地山に対して採用されることが多く、他方、対象地山に岩盤が存在する場合はやはり発破掘削が採用されることが多い。
【0005】
ここでNATMによる掘削手順について簡単に説明する。はじめに、トンネル切羽の掘削を行う。発破掘削の場合は、ドリルジャンボによって削孔して火薬(ダイナマイト)を装填し、作業員とドリルジャンボが退避したうえで発破を実行し、一方、機械掘削の場合は、自由断面掘削機によってトンネル切羽を切削していく。1回(1サイクル)の掘削進行長(1スパン長)は地山の強度に応じて設定される支保パターンによって異なるが、一般的には1.0~2.0mのスパン長で掘削が行われる。1スパン長の掘削を行うと、不安定化した地山部分(浮石など)を払い落とす「こそく」を行いながらダンプトラック(あるいはレール工法)によってズリを搬出(ズリ出し)していく。そしてズリ出し後に、鏡吹付けや1次コンクリート吹付けを行ったうえで必要に応じて(支保パターンによって)鋼製支保工を建て込み、2次コンクリート吹付けを行い、その後ロックボルトの打設を行う。なお、1次コンクリート吹付け工と2次コンクリート吹付け工、ロックボルト工は、掘進したスパン長分、すなわち素掘り部分のトンネル内周面(側壁から天端にかけた周面)に対して行われる。
【0006】
このようにNATMは、削岩(例えば、切羽削孔~発破)、ズリ出し、鋼製支保工建込み、コンクリート吹付け、ロックボルト打設といった一連の各工程(以下、便宜上ここでは「個別工程」という。)を繰り返し行うことによって、1スパン(1.0~2.0m)ずつ掘進していく工法である。そしてこれら一連の個別工程の流れは「掘削サイクル」と呼ばれ、また1の掘削サイクルをタイムテーブルで表したものを「サイクルタイム」と呼んでおり、掘削サイクルを構成する各個別工程はそれぞれクリティカルパスとなっている。したがって、これらの個別工程にかかる作業時間を把握してサイクルタイムを分析することは、トンネル掘削の効率化にとって極めて重要である。すなわち、サイクルタイムを分析することによって、トンネル掘削における無理や無駄を把握することができ、その結果、実績に基づく適切な原価管理と工程管理を行うことができるようになるわけである。そのため、多くのトンネル掘削現場でサイクルタイムの調査が実施されている。
【0007】
従来、サイクルタイムの調査を行う、つまり個別工程(削岩、ズリ出し、鋼製支保工建込み、コンクリート吹付け、ロックボルト打設)ごとに施工時間を計測するにあたっては、トンネル切羽周辺にいる調査者が目視観察を行いながらストップウォッチなどでその時間を計測して野帳等に記録していた。この調査者として施工管理者や掘削作業者(いわゆる坑夫)に担当させるのが主流であるが、他の業務や作業と兼務しながら行うことが求められ、さらにデータの未取得や誤取得が生じることもあることからそのチェックや修正が必要となり、その労力は相当な負担となっていた。
【0008】
そこで、トンネル切羽に調査者を配置することなく、サイクルタイムを自動取得することが考えられる。例えば、重機にICタグ(RFIDなど)を取り付け、そのICタグからのログ情報を取得すれば、サイクルタイムを自動取得することができる。しかしながら、このようにICタグを利用する手法では、実際に稼働する重機等に新たな設備を設ける必要があり、モデル現場では実施することができたとしても、すべてのトンネル掘削現場に適用するとなるとその設置費やメンテナンスなどの面から容易ではない。
【0009】
またサイクルタイムを自動取得する手法としては、画像を利用することも考えられる。つまり、トンネル切羽を撮影した映像や画像を自動認識することによってトンネル切羽での作業状況(個別工程の別)を把握するとともに、撮影時間に基づいて当該作業にかかった時間を把握するわけである。トンネル切羽の画像を自動認識するにあたってはディープラーニングといった機械学習を利用することが考えられるが、現状の技術水準では画像内における施工機械などの位置やサイズにばらつきがあると正しく認識することができず、その結果、サイクルタイムを正確に取得することできないという問題があった。
【0010】
そのほか、各個別工程で用いられる建設機械の稼働状況に基づいてサイクルタイムを自動取得することも考えられる。例えば特許文献1は、トンネル掘削のサイクルタイムを取得するものではないが、エンジン回転数に基づいて建設機械(例えばタイヤローラ)の稼働履歴を把握する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-56938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に開示される技術は、エンジン回転数が閾値を超えるとそのタイヤローラが稼働していると考え、この閾値を超えた連続時間をタイヤローラの稼働時間とするものである。つまり、推定しようとする稼働時間の精度は、事前に設定する閾値に大きく依存することとなり、換言すれば閾値を適切に設定しなければ正しい稼働時間が得られない。また、特許文献1の技術をトンネル掘削におけるサイクルタイム取得に適用した場合、個別工程ごとに異なる建設機械が用いられるためそれぞれの建設機械に対して適切な閾値を設定することが求められる。しかしながら、複数種類の建設機械にそれぞれ適切な閾値を設定することはより困難であり、仮に事前に試験等を行ったうえで閾値を設定するとしてもその労力やコストをかけるほど効果があるとは考えにくい。さらに、トンネル掘削における建設機械は作業中であっても稼働と休止が繰り返されることも珍しくなく、そのため特許文献1の技術では1の個別工程を分断して(つまり2以上の個別工程として)稼働時間を認定してしまう不都合も考えられる。
【0013】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、従来技術に比して容易かつ高精度で個別工程(工種)を判定し、その工程の作業時間を求めることによって、サイクルタイムの自動取得を可能にする個別工程判定システムと個別工程判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいて個別工程の工種を判定する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
【0015】
本願発明の個別工程判定システムは、建設機械に設けられる電気機器の電源操作に基づいてトンネル掘削で行われる複数の異なる個別工程の中から1の個別工程を選定するシステムであり、トリガー信号受信手段と選定手段を備えたものである。このうちトリガー信号受信手段は、個別工程に用いられる建設機械に搭載され、電気機器の電源操作に係る「トリガー信号」を受信するものである。また選定手段は、トリガー信号受信手段が受信したトリガー信号に基づいて個別工程を選定するものである。なおトリガー信号受信手段は、建設機械に設けられる電気機器のうちあらかじめ定められた「特定電気機器」の電源がONとされたときの「起動トリガー信号」を受信し、特定電気機器の電源ONが解除されたときの「停止トリガー信号」を受信(検知)する。そして選定手段が、トリガー信号を受信したトリガー信号受信手段に係る建設機械に基づいて個別工程を選定し、さらに起動トリガー信号の受信時刻と停止トリガー信号の受信時刻に基づいてその個別工程の作業時間を算出する。これにより、選定手段によって選定された個別工程が、現在、トンネル切羽で行われている個別工程であると判定することができる。
【0016】
本願発明の個別工程判定システムは、トンネル坑内に設置される通信機器をさらに備えたものとすることもできる。この通信機器は、トリガー信号受信手段が受信したトリガー信号を選定手段に送信するものである。この場合、選定手段はトンネル坑外に配置され、受信したトリガー信号に基づいて個別工程を選定する。
【0017】
本願発明の個別工程判定システムは、同一の建設機械に設定された2以上の特定電気機器に係る状態に基づいて個別工程を選定することもできる。この場合、建設機械にはそれぞれの特定電気機器のトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段が搭載される。またこの場合の選定手段は、トリガー信号受信手段による起動トリガー信号の受信から停止トリガー信号の受信までの間はトリガー信号受信手段に係る特定電気機器を「稼働状態」として設定し、停止トリガー信号の受信から起動トリガー信号の受信までの間はこの特定電気機器を「休止状態」として設定する。そして選定手段は、2以上の種類の特定電気機器に係る稼働状態と休止状態の組み合わせに基づいて個別工程を選定する。
【0018】
本願発明の個別工程判定システムは、「使用時間」から「補正時間」を減じることによって作業時間を算出することもできる。この使用時間は、起動トリガー信号の受信時刻から停止トリガー信号の受信時刻までの時間であり、一方の補正時間は、個別工程ごとにあらかじめ設定された準備や移動などを含む時間である。
【0019】
本願発明の個別工程判定システムは、工程表示制御手段をさらに備えたものとすることもできる。この工程表示制御手段は、トンネル坑口に設置される工程表示手段に個別工程を表示させるものであって、選定手段によって選定された個別工程を現在切羽で行われている個別工程として表示させるものである。
【0020】
本願発明の個別工程判定システムは、設備制御手段をさらに備えたものとすることもできる。この設備制御手段は、トンネル坑内の風管に空気を送る送風機や、トンネル坑内に設置された集塵機に対して、選定手段によって選定された個別工程に応じた出力で調整するものである。
【0021】
本願発明の個別工程判定方法は、本願発明の個別工程判定システムを用いて個別工程を選定する方法であり、トリガー信号受信工程と選定工程を備えた方法である。このうちトリガー信号受信工程では建設機械に搭載されたトリガー信号受信手段によって特定電気機器の電気機器のトリガー信号(起動トリガー信号と停止トリガー信号)を受信する。また選定工程では、トリガー信号を受信したトリガー信号受信手段に係る建設機械に基づいて個別工程を選定し、さらに起動トリガー信号の受信時刻と停止トリガー信号の受信時刻に基づいてその個別工程の作業時間を算出する。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の個別工程判定システム、及び個別工程判定方法には、次のような効果がある。
(1)トンネル切羽にサイクルタイムの調査者を常時配置することなく、しかも昼夜2交代制であっても随時サイクルタイムを取得することができる。
(2)電気機器の電源のON/OFF(入り/切り)の信号を取得するだけでサイクルタイムを把握することができ、すなわち大規模な装置等を用意することなく容易かつ低コストで実現することができる。
(3)実施中の個別工程を判定することができるため、その個別工程に応じて各設備の出力を調整することができる。例えば、個別工程に必要な風量を送るように送風機の出力を調整したり、その個別工程に応じて集塵機の出力を調整したりすることができ、その結果、使用電力が抑制され、延いては全体工事費を低減することができる。
(4)工程表示手段に現在行われている個別工程を表示することによって、来客者など関係者以外の者に案内することができ、トンネル郊外で待機する作業者は次工程に関する適切な準備を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】個別工程と使用機械、特定電気機器の関係を模式的に示すモデル図。
図2】トンネル掘削で行われる個別工程と、それぞれの個別工程で用いられる使用機械、そして使用機械で設定される特定電気機器の例を示すモデル図。
図3】本願発明の個別工程判定システムの主な構成を示すブロック図。
図4】使用時間と補正時間、作業時間の関係を模式的に表すモデル図。
図5】本願発明の個別工程判定システムの主な処理の流れを示すフロー図。
図6】(a)は特定電気機器の「稼働状態」と「休止状態」を模式的に示すモデル図であり、(b)は稼働状態と休止状態の組み合わせに応じて個別固定が選定されることを模式的に示すモデル図。
図7】異なる使用機械のトリガー信号の組み合わせに応じて個別工程が選定されることを模式的に示すモデル図。
図8】本願発明の個別工程判定方法の主な工程を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明の個別工程判定システム、及び個別工程判定方法の実施の例を図に基づいて説明する。
【0025】
1.全体概要
本願発明は、切羽掘削やズリ出し、鋼製支保工建込み、コンクリート吹付け、ロックボルト打設といった「個別工程」ごとにそれぞれ異なる種類の建設機械が使用されることに着目するとともに、この建設機械に設けられた電気機器の電源操作に着目してなされた発明である。なお、建設機械には複数種類の電気機器が設けられることもあり、着目すべき電気機器はあらかじめ設定される。便宜上ここでは、着目すべき電気機器のことを特に「特定電気機器」ということとし、また個別工程に使用される建設機械のことを「使用機械」ということとする。
【0026】
図1は、個別工程と使用機械、特定電気機器の関係を模式的に示すモデル図である。この図では3つの個別工程(個別工程01~03)が示されており、例えば個別工程01では使用機械Aが用いられ、この使用機械Aに設けられた電気機器のうち特定電気機器Aが設定されている。そして使用機械Aには、特定電気機器Aを電源操作したときの信号(以下、「トリガー信号」という。)を受信するトリガー信号受信手段Aが搭載されている。より詳しくは、特定電気機器Aに接続されたトリガー信号受信手段Aは、特定電気機器Aの電源がONとされたときのトリガー信号(以下、特に「起動トリガー信号」という。)を受信するとともに、特定電気機器Aの電源ONが解除されたタイミング、つまり電源ONから電源OFFに切り替わった状況を検知する。なお、特定電気機器の電源ONが解除された(電源OFFとされた)タイミングでトリガー信号受信手段が検知する情報のことを特に「停止トリガー信号」ということとし、トリガー信号受信手段がこの停止トリガー信号を検知することを便宜上ここでは停止トリガー信号を「受信する」ということとする。
【0027】
個別工程01では使用機械Aに対して1の特定電気機器Aを設定しているが、これに限らず1の使用機械に対して2以上の種類の特定電気機器を設定することもできる。例えば、個別工程02では使用機械Bが用いられ、この使用機械Bに設けられた電気機器のうち特定電気機器B1と特定電気機器B2が設定されている。そして使用機械Bには、特定電気機器B1のトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段B1と、特定電気機器B2のトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段B2が搭載されている。
【0028】
また、個別工程01や個別工程02では1の個別工程で1の使用機械(使用機械Aや使用機械B)が使用されるが、個別工程の工種によっては2以上の種類の使用機械が用いられることもある。この場合は、それぞれの使用機械に対して特定電気機器を設定するとよい。例えば、個別工程03では使用機械Cと使用機械Dが用いられ、使用機械Cに設けられた電気機器のうち特定電気機器Cが設定され、さらに使用機械Dに設けられた電気機器のうち特定電気機器Dが設定されている。そして、使用機械Cには特定電気機器Cのトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段Cが搭載され、使用機械Dには特定電気機器Dのトリガー信号を受信するトリガー信号受信手段Dが搭載されている。
【0029】
このように、1の特定電気機器には1のトリガー信号受信手段が接続される。したがって、トリガー信号受信手段を特定することができれば、特定電気機器を特定することができ、すなわちその特定電気機器が設けられた使用機械を特定することができ、その結果、その使用機械に係る個別工程を判定することができるわけである。トリガー信号受信手段を特定するにあたっては、他と識別可能な識別子(ID:IDentification)をあらかじめトリガー信号受信手段に付与しておき、この識別子を組み合わせたトリガー信号を取り扱う仕様にすることができる。トリガー信号受信手段は、特定電気機器の電源操作に係る電気コードに連結するなど、特定電気機器側のリレーによるON/OFF(入り/切り)のトリガー信号を受信することができる状態とされる。この場合、トリガー信号はアナログ信号であるから、トリガー信号受信手段がこれをデジタル信号に変換(A/D変換)することになるが、このときにそのトリガー信号受信手段の識別子をデジタル信号に付与するとよい。
【0030】
上記したとおり、トリガー信号受信手段はトリガー信号として起動トリガー信号と停止トリガー信号を受信する。したがって、起動トリガー信号と停止トリガー信号を利用すれば特定電気機器が稼働した時間を推定することができ、すなわちその特定電気機器が設けられた使用機械が稼働した時間を推定することができ、その結果、その使用機械に係る個別工程が実施された時間(以下、「作業時間」という。)を推定することができる。すなわち、トリガー信号受信手段が受信したトリガー信号を利用すれば、トンネル切羽で実施中の(あるいは実施された)個別工程を判定することができるうえ、その個別工程の作業時間を推定することができるわけである。
【0031】
図2は、トンネル掘削で行われる個別工程と、それぞれの個別工程で用いられる使用機械、そして使用機械で設定される特定電気機器の例を示すモデル図である。この図の例では、個別工程が「切羽掘削」と「ズリ出し」、「1次コンクリート吹付け」、「鋼製支保工建込み」、「2次コンクリート吹付け」、「ロックボルト打設」の組み合わせからからなり、図に示す順で実施される掘削サイクルが構成されている。そして切羽掘削では、機械掘削の場合は「ツインヘッダ(自由断面掘削機)」が使用機械とされるとともにその「前照灯」が特定電気機器として設定され、発破掘削の場合は「ドリルジャンボ」が使用機械とされるとともにその「油圧ポンプ」が特定電気機器として設定されている。またズリ出しでは、ズリ積込み用の「サイドダンプ」が使用機械とされるとともにその「前照灯」が特定電気機器として設定されている。すなわち、この図に示す切羽掘削とズリ出しは、図1に示す「個別工程01」のパターンで使用機械や特定電気機器が設定されている。
【0032】
また、1次コンクリート吹付けと鋼製支保工建込み、2次コンクリート吹付けでは、いずれも「コンクリート吹付機(エレクター付き)」が使用機械とされるとともに、その「コンプレッサ」と「油圧ポンプ」が特定電気機器として設定されている。なお、コンクリート吹付機のコンプレッサは、コンクリートを吹付ける際に使用され、一方の油圧ポンプはコンクリートを吹付ける際(ブームの移動)にも鋼製支保工を建込む際(エレクタの移動)にも使用される。すなわち、この図に示す1次コンクリート吹付けと鋼製支保工建込み、2次コンクリート吹付けは、図1に示す「個別工程02」のパターンで使用機械や特定電気機器が設定されている。もちろんこの例に限らず、1次コンクリート吹付け2次コンクリート吹付けでは「コンプレッサ」のみを特定電気機器として設定し、鋼製支保工建込みでは「油圧ポンプ」のみを特定電気機器として設定することもできる。
【0033】
さらに、ロックボルト打設では、「ドリルジャンボ」と「モルタル注入ポンプ」が使用機械とされるとともに、ドリルジャンボに対してはその「油圧ポンプ」が特定電気機器として設定され、モルタル注入ポンプに対してはその「電動モータ」が特定電気機器として設定されている。なお、ロックボルト打設におけるドリルジャンボは、ロックボルト用の削孔とロックボルト挿入に用いられ、一方のモルタル注入ポンプは、ロックボルト孔へのモルタル注入に用いられる。すなわち、この図に示すロックボルト打設は、図1に示す「個別工程03」のパターンで使用機や特定電気機器が設定されている。もちろんこの例に限らず、ロックボルト打設では、「ドリルジャンボ」のみを使用機械としたうえで、その「油圧ポンプ」を特定電気機器として設定することもできる。
【0034】
2.個別工程判定システム
次に、本願発明の個別工程判定システムについて詳しく説明する。なお、本願発明の個別工程判定方法は、本願発明の個別工程判定システムを用いて各個別工程を判別する方法である。したがって、まずは本願発明の個別工程判定システムについて説明し、その後に本願発明の個別工程判定方法について説明することとする。
【0035】
図3は、本願発明の個別工程判定システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の個別工程判定システム100は、トリガー信号受信手段101と選定手段102を含んで構成され、さらに通信機器103や工程表示制御手段104、工程表示手段105、設備制御手段106、補正時間記憶手段107などを含んで構成することもできる。
【0036】
個別工程判定システム100を構成する主な要素のうち選定手段102と工程表示制御手段104、設備制御手段106は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するもので、パーソナルコンピュータ(PC)や、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成することができる。
【0037】
また、後述する「補正時間」を記憶する補正時間記憶手段107は、汎用的コンピュータの記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(つまり無線通信)で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0038】
以下、個別工程判定システム100の主な構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0039】
(トリガー信号受信手段)
トリガー信号受信手段101は、既述したとおり使用機械に搭載されるとともに特定電気機器に接続され、その特定電気機器のトリガー信号(起動トリガー信号と停止トリガー信号)を受信するものである。より具体的には、特定電気機器の電源操作に係る電気コードにトリガー信号受信手段を連結することによって、特定電気機器側のリレー開閉による電流の有無を検知し、これにより特定電気機器側の電源ON/OFF(入り/切り)のトリガー信号を受信する。またトリガー信号受信手段101は、受信したアナログ形式のトリガー信号をデジタル信号に変換(A/D変換)するとともに、そのデジタル形式のデジタル信号に当該トリガー信号受信手段の識別子を付与したうえで、一時的に(あるいは不揮発的に)記憶することもできる。
【0040】
(通信機器)
通信機器103は、トンネル坑内に設置され、トリガー信号受信手段101が受信したトリガー信号を選定手段102に送信するもので、WiFi(登録商標)などを利用したいわゆるアクセスポイントである。そのため、通信機器103と選定手段102は無線(あるいは有線)によって接続されており、また通信機器103とトリガー信号受信手段101も無線(あるいは有線)によって接続されている。したがって、通信機器103を設置すると選定手段102はリアルタイムでトリガー信号を受け取ることができ、後続の処理(例えば、個別工程の選定)もやはりリアルタイムで実行することができる。なお、通信機器103を省略することもできるが、その場合は個別工程の選定などの処理はリアルタイムで実行することが難しく、事後的に判定することとなる。すなわち、通信機器103を設置すれば現在トンネル切羽で実施中の個別工程を把握することができるが、通信機器103を省略すればその分のコストは削減できるものの実施後の個別工程を把握するに留まることとなる。
【0041】
(選定手段)
選定手段102は、トリガー信号を受信し、受信したトリガー信号を利用して個別工程を選定するとともに、受信した起動トリガー信号と停止トリガー信号に基づいてその個別工程の作業時間を算出するものである。より詳しくは、選定手段102がトリガー信号に含まれる識別子によって特定電気機器を特定するとともに、その特定電気機器が設けられた使用機械を特定し、さらに当該掘削サイクルを構成する複数の個別工程の中からその使用機械に係る個別工程を選定する。また選定手段102は、起動トリガー信号を受信した時刻を起点とし、停止トリガー信号を受信した時刻を終点としたうえで、起点から終点までの期間のうち一部(あるいは全部)をその個別工程の作業時間として算出する。なお選定手段102は、トンネル坑内に設置することもできるが、トンネル郊外にある管理棟や施工現場事務所など比較的環境が整った場所に設置するとよい。
【0042】
(工程表示制御手段)
工程表示制御手段104は、選定手段102によって選定された個別工程を工程表示手段105に表示させるものである。この工程表示手段105は、トンネル坑口の周辺に設置され、例えば現在トンネル切羽で実施中の個別工程を表示する電光掲示板等である。あるいは、実施中の個別工程とともに、前工程や後続工程の個別工程を表示する仕様とすることもできる。実施中の個別工程を表示することにより、来客者など関係者以外の者に案内することができるため、危険な工種の場合はトンネル坑内への進入が回避されるなど安全性が向上する。またトンネル郊外で待機する作業者にとっては、後続工程に関する適切な準備を行うことができ、効率的に次の工程の作業を行うことができる。なお工程表示制御手段104は、選定手段102と同じ場所(例えば、管理棟や施工現場事務所など)に設置するとよい。
【0043】
(設備制御手段)
設備制御手段106は、トンネル坑内の風管に空気を送る送風機や、トンネル坑内に設置された集塵機の出力を調整するものである。坑夫の主な作業場所であるトンネル切羽では、工種によってその環境(特に、空気環境)が大きく異なる。例えば、鋼製支保工を建込むときにはそれほど環境は悪くないが、他方、切羽掘削やコンクリート吹付けを行うときは粉塵が多発しその環境は劣悪となる。つまり、送風機や集塵機は、工種に応じた強弱を付けて稼働させるのが望ましい。そこで、設備制御手段106が、選定手段102によって選定された個別工程に応じて送風機や集塵機の出力を調整するわけである。例えば、選定手段102が個別工程として鋼製支保工建込みを選定した場合、設備制御手段106は送風機や集塵機を比較的小さい出力で稼働させ、選定手段102が個別工程として切羽掘削やコンクリート吹付けを選定した場合、設備制御手段106は送風機や集塵機を比較的大きい出力で稼働させるとよい。なお設備制御手段106は、工程表示制御手段104と同様、選定手段102と同じ場所(例えば、管理棟や施工現場事務所など)に設置するとよい。
【0044】
(補正時間記憶手段)
既述したとおり選定手段102は、起動トリガー信号を受信した時刻を起点とし、停止トリガー信号を受信した時刻を終点としたうえで、起点から終点までの期間のうち一部(あるいは全部)をその個別工程の作業時間として算出する。ところが個別工程によっては、使用機械が移動する時間や、種々の準備に係る時間など、個別工程の作業時間としてはふさわしくない時間帯が生じることもある。そこで、あらかじめ個別工程ごとに「ふさわしくない時間」を「補正時間(正負で設定可能)」として設定しておき、この補正時間を補正時間記憶手段107に記憶しておくとよい。この場合、選定手段102は、補正時間を勘案したうえで作業時間として算出する。より具体的には、選定手段102が選定した個別工程で補正時間記憶手段107に照会するとともに、その個別工程に係る補正時間を補正時間記憶手段107から読み出す。そして、図4に示すように起動トリガー信号の受信時刻(起点)から停止トリガー信号の受信時刻(終点)までを使用機械の「使用時間」とし、この使用時間から補正時間を差し引くことで「作業時間」を算出する。もちろん、個別工程ごとに異なる補正時間を設定することができ、特定の個別工程には補正時間を設定しないこともできる。
【0045】
図5を参照しながら本願発明の個別工程判定システム100を使用したときの主な処理の流れについて説明する。図5は、個別工程判定システム100の主な処理の流れを示すフロー図であり、中央の列に実施する処理を示し、左列にはその処理に必要な入力情報を、右列にはその処理から生まれる出力情報を示している。
【0046】
例えば、坑夫がツインヘッダ(あるいはロードヘッダ)の前照灯の電源をONにすると、トリガー信号受信手段101が起動トリガー信号を受信する(図5のStep210)。起動トリガー信号を受信したタイミングで選定手段102が個別工程を選定することもできるが、操作ミスなどのノイズを排除するため起動トリガー信号の受信後に一定期間だけ待機するとよい(図5のStep220)。そして、あらかじめ定めた一定期間が経過すると(図5のStep230のYes)後続の処理に進み、一定期間が経過していなければ(図5のStep230のNo)引き続き待機する。
【0047】
起動トリガー信号の受信後に一定期間が経過すると、選定手段102がトリガー信号(起動トリガー信号)に基づいて掘削サイクルを構成する複数の個別工程の中から個別工程を選定する(図5のStep240)。このとき、前工程として選定した個別工程を参考にしたうえで選定するとよい。例えば、サイドダンプ(使用機械)の前照灯(特定電気機器)に係る起動トリガー信号を受信した場合、前工程として切羽掘削が選定されていることを確認したうえで、ズリ出しを個別工程として選定するわけである。ところで、図1に示す「個別工程01」のパターンであれば、選定手段102は1の特定電気機器を特定することができ、1の使用機械を特定することができるが、図1に示す「個別工程02」や「個別工程03」のパターンでは複数の情報が得られるため種々の手法で個別工程を選定することができる。
【0048】
例えば個別工程02のパターンでは、1の使用機械に対して複数の特定電気機器が設定されているため、複数のトリガー信号を利用することができる。この場合、それぞれの特定電気機器の「稼働状態」と「休止状態」を判定したうえで個別工程を選定するとよい。図6(a)は、特定電気機器の「稼働状態」と「休止状態」を模式的に示すモデル図であり、図6(b)は、稼働状態と休止状態の組み合わせに応じて個別工程が選定されることを模式的に示すモデル図である。この図に示すように、同一の特定電気機器に係る起動トリガー信号の受信時刻から停止トリガー信号の受信時刻までが「稼働状態」とされ、同一の特定電気機器に係る停止トリガー信号の受信時刻から次の起動トリガー信号の受信時刻までが「休止状態」とされる。そして選定手段102は、例えばコンクリート吹付機(使用機械)の油圧ポンプ(特定電気機器)が稼働状態であって油圧ポンプ(特定電気機器)が休止状態であれば個別工程として「鋼製支保工建込み」を選定し、コンクリート吹付機の油圧ポンプと油圧ポンプがともに稼働状態であれば個別工程として「コンクリート吹付け」を選定する。
【0049】
また個別工程03のパターンでは、1の個別工程に対して複数の使用機械が設定されているため、複数のトリガー信号を利用することができる。この場合、作業時間の起点と終点を、それぞれ異なる使用機械のトリガー信号によって判定するとよい。図7は、異なる使用機械のトリガー信号の組み合わせに応じて個別工程が選定されることを模式的に示すモデル図である。発破掘削の場合、ロックボルト打設の後に切羽掘削が行われるため、ロックボルト打設の開始時にドリルジャンボ(使用機械)の油圧ポンプ(特定電気機器)に係る起動トリガー信号を受信した後に、切羽掘削の終了時にドリルジャンボの油圧ポンプに係る停止トリガー信号を受信することも考えられる。つまり、ロックボルト打設と切羽掘削の間に区切りとなるトリガー信号を受信することがなく、ロックボルト打設と切羽掘削が一連の個別工程(この場合、ロックボルト打設が継続している)と判定され、ロックボルト打設と切羽掘削を適切に選定することができない。
【0050】
そこで、図7に示すように選定手段102は、ドリルジャンボとは異なる使用機械(モルタル注入ポンプ)に係るトリガー信号を利用する。例えば選定手段102は、ドリルジャンボの油圧ポンプに係る起動トリガー信号を受信したときに「ロックボルト打設」が開始されたと判定し、モルタル注入ポンプに係る停止トリガー信号を受信したときに「ロックボルト打設」が終了するとともに「切羽掘削」が開始されたと判定する。そして、ドリルジャンボの油圧ポンプに係る停止トリガー信号を受信したときに「切羽掘削」が終了したと判定する。すなわち選定手段102は、ドリルジャンボの油圧ポンプに係る起動トリガー信号の受信からモルタル注入ポンプに係る停止トリガー信号の受信までの間は「ロックボルト打設」を選定し、モルタル注入ポンプに係る停止トリガー信号の受信からドリルジャンボの油圧ポンプに係る停止トリガー信号の受信までの間は「切羽掘削」を選定するわけである。ここでトリガー信号受信手段101がドリルジャンボの油圧ポンプに係る起動トリガー信号を受信した後にモルタル注入ポンプに係る起動トリガー信号を受信することになるが、そのときは「ロックボルト打設」が継続していると判定する。なお、モルタル注入ポンプに係る停止トリガー信号を受信したときに「切羽掘削」が開始されたと判定する場合、実際よりも長い作業時間が算出される可能性もあることから、この場合は「補正時間」を減じることで作業時間を調整したうえで求めるとよい。
【0051】
選定手段102によって個別工程が選定されると、工程表示制御手段104がその個別工程を工程表示手段105に表示させ(図5のStep250)、設備制御手段106がその個別工程に応じて送風機や集塵機の出力を調整する(図5のStep260)。
【0052】
実施中の個別工程が終了し、例えば坑夫がツインヘッダ(あるいはロードヘッダ)の前照灯の電源をOFFとすると、トリガー信号受信手段101が停止トリガー信号を受信する(図5のStep270)。そして選定手段102が、起動トリガー信号を受信した時刻を起点、停止トリガー信号を受信した時刻を終点としたうえで、当該個別工程の作業時間を算出する(図5のStep280)。このとき、「補正時間」を用いることで作業時間を求めることができることは既述したとおりである。
【0053】
3.個別工程判定方法
続いて本願発明の個別工程判定方法について図8を参照しながら説明する。なお、本願発明の個別工程判定方法は、ここまで説明した個別工程判定システム100を用いて各個別工程を判別する方法であり、したがって個別工程判定システム100で説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の個別工程判定方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2.個別工程判定システム」で説明したものと同様である。
【0054】
図8は、本願発明の個別工程判定方法の主な工程を示すフロー図である。この図に示すように、まずはトリガー信号受信手段101が起動トリガー信号を受信する(図8のStep10)。例えば、坑夫によってサイドダンプの前照灯の電源がONにされると、トリガー信号受信手段101がサイドダンプの前照灯に係る起動トリガー信号を受信する。
【0055】
起動トリガー信号を受信すると、選定手段102によってそのトリガー信号(起動トリガー信号)に応じた個別工程を選定する(図8のStep20)。そして、工程表示制御手段104がその個別工程を工程表示手段105に表示させ(図8のStep30)、設備制御手段106がその個別工程に応じて送風機や集塵機の出力を調整する(図8のStep40)。
【0056】
実施中の個別工程が終了し、例えば坑夫がサイドダンプの前照灯の電源をOFFとすると、トリガー信号受信手段101が停止トリガー信号を受信する。そして選定手段102が、起動トリガー信号を受信した時刻を起点、停止トリガー信号を受信した時刻を終点としたうえで、当該個別工程の作業時間を算出する(図8のStep50)。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明の個別工程判定システム、及び個別工程判定方法は、トンネル掘削のほか、土工事やコンクリート工事など複数の異なる個別工程が交代制で行われる建設現場で利用することができる。本願発明によれば、工事のサイクルタイムを効率的に分析することができ、その結果、実績に基づく適切な原価管理を行うことができるようになり、延いては建設インフラストラクチャーにかかる費用の低減化を図ることができることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0058】
100 本願発明の個別工程判定システム
101 (個別工程判定システムの)トリガー信号受信手段
102 (個別工程判定システムの)選定手段
103 (個別工程判定システムの)通信機器
104 (個別工程判定システムの)工程表示制御手段
105 (個別工程判定システムの)工程表示手段
106 (個別工程判定システムの)設備制御手段
107 (個別工程判定システムの)補正時間記憶手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8