(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084848
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230613BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/34
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199204
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユンキ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AD042
4C083AD112
4C083AD201
4C083AD211
4C083AD212
4C083CC03
4C083DD27
4C083EE03
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】
【課題】皮膚の引き上げ効果を有し、かつ、こすりに対する耐性が改善された皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(A)プルランまたはその誘導体、(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコール、および(C)水を含んでなる皮膚外用剤であって、(A)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、4~20質量%である、皮膚外用剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プルランまたはその誘導体、
(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコール、および
(C)水
を含んでなる皮膚外用剤であって、
(A)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、4~20質量%である、皮膚外用剤。
【請求項2】
(A)成分がプルランである、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
(A)成分の重量平均分子量が、5,000~1,000,000である、請求項1または2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
(B)成分が、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロースおよびフルクトースからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
(B)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、0.12~9.5質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
(B)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、0.18~4質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
皮膚用化粧料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
顔の皮膚のリフトアップ剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルランまたはその誘導体を含んでなる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚および筋肉組織は、加齢等によりハリや弾力が低下し、シワやたるみを発生させる。皮膚のシワやたるみを解消するために、皮膚の引き上げ効果を有する皮膜形成剤が配合された皮膚外用剤を使用することが提案されている。皮膜形成剤としては、プルランが知られている。例えば、プルランとアルカリ膨潤型高分子を組み合わせて、使用性を改善させた皮膚外用剤が提案されている(特許文献1)。
【0003】
プルランは、上記したように皮膜形成剤や、増粘剤として、皮膚外用剤に用いられる。その場合、低配合量で配合されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明者らの検討によると、プルランまたはその誘導体を皮膜形成剤として用いる場合に、形成された皮膜のこすりに対する耐性が低いことがあることがわかってきた。本発明者らは、高配合量のプルランまたはその誘導体と、特定の糖との組み合わせを含む皮膚外用剤を用いることで、驚くべきことに、皮膚の引き上げ効果を有し、こすりに対する耐性が改善されることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1](A)プルランまたはその誘導体、
(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコール、および
(C)水
を含んでなる皮膚外用剤であって、
(A)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、4~20質量%である、皮膚外用剤。
[2](A)成分がプルランである、[1]に記載の皮膚外用剤。
[3](A)成分の重量平均分子量が、5,000~1,000,000である、[1]または[2]に記載の皮膚外用剤。
[4](B)成分が、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロースおよびフルクトースからなる群から選択される、[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[5](B)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、0.12~9.5質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[6](B)成分の配合量が、皮膚外用剤の総量に対して、0.18~4質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[7]皮膚用化粧料である、[1]~[6]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
[8]顔の皮膚のリフトアップ剤である、[1]~[7]のいずれかに記載の皮膚外用剤。
【0007】
本発明によれば、皮膚の引き上げ効果を有し、かつ、こすりに対する耐性が改善された皮膚外用剤を提供することができる。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明は、(A)プルランまたはその誘導体(以下、(A)成分と称することがある。他の成分についても同様である。)、(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコール、および(C)水を含んでなる皮膚外用剤に関するものである。
【0009】
(A)プルランまたはその誘導体
本発明による皮膚外用剤は、(A)プルランまたはその誘導体を含んでなる。本明細書において、プルランは、グルコース3分子がα-1,4結合で結合されたマルトトリオースを構成単位とし、マルトトリオースがα-1,6結合を介して結合された構造を有する水溶性高分子を意味する。プルランの製造方法は特に限定されないが、例えばプルラン産生能を有する微生物を培養し、培養物からプルランを採取する方法が挙げられる。
プルラン誘導体としては、例えば、プルランエーテル、プルランエステル、アミノアルキル化プルラン、シリコーン化プルラン等が挙げられる。(A)成分は、好ましくはプルランである。
【0010】
(A)成分の重量平均分子量は、皮膜形成能を有する限り特に限定されないが、好ましくは5,000~1,000,000であり、より好ましくは50,000~500,000である。
【0011】
(A)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(A)成分の配合量は、皮膚外用剤の総量に対して、4~20質量%であり、好ましくは5~15質量%であり、より好ましくは7~12質量%である。
【0012】
(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコール
本発明による皮膚外用剤は、(B)単糖、オリゴ糖または糖アルコールを含んでなる。本発明において、オリゴ糖とは、単糖が2~10分子脱水縮合したものを意味する。
【0013】
単糖としては、例えば、例えば、エリトルロース、エリトロース、トレオース等のテトロース類;アラビノース、キシロース、リキソース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース類;ガラクトース、グルコース、タロース、マンノース、ソルボース、タガトース、プシコース、フルクトース等のヘキソース類;アピオース、ハマメロース等の分枝糖類;グルコサミン、ガラクトサミン等のアミノ糖、これらの単糖の誘導体等が挙げられる。
【0014】
オリゴ糖としては、上述した単糖を1種のみ含むホモオリゴ糖、または二種以上を含むヘテロオリゴ糖が挙げられる。ホモオリゴ糖としては、例えば、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース等のキシロオリゴ糖類;アガロビオース、カラビオース等のガラクトオリゴ糖類;マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、イソマルトース、ソホロース、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース等のグルコオリゴ糖類;マンノオリゴ糖類;イヌロビオース、イヌロトリオース、イヌロテトラオース、イヌロペンタオース等のフルクトオリゴ糖類等が挙げられる。ヘテロオリゴ糖としては、ビシアノース、イソプリメベロース、サンブビオース、プリメベロース、リコテトラオース、ソラビオース、メリビオース、マンニノトリオース、ラクトース、リコビオース、リコトリオース、エピセロビオース、スクロース、ツラノース、マルツロース、イソケストース、エルロース、ケストース、ゲンチアノース、ラクツロース、エピゲンチビオース、イソリクノース、ウンベリフェロース、セサモース、ラフィノース、リクノース、ロビノビオース、シラノビオース、ルチノース、カコトリオース、ソラトリオース、α-グルカンオリゴサッカリド(重合度が2~10のグルコースオリゴマー)等が挙げられる。オリゴ糖の中では、二糖が好ましい。
【0015】
糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトール等が挙げられる。
【0016】
(B)成分の炭素数は、好ましくは4~20であり、より好ましくは4~15である。
(B)成分は、好ましくは、単糖、二糖、および糖アルコールからなる群から選択され、より好ましくはマルチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロースおよびフルクトースからなる群から選択される。
【0017】
(B)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(B)成分の配合量は、皮膚外用剤の総量に対して、好ましくは0.12~9.5質量%であり、より好ましくは0.18~4質量%である。
【0018】
(C)水
本発明による皮膚外用剤は、(C)水を含んでなる。水としては、化粧品、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、本発明による皮膚外用剤の総量に対して、好ましくは50~95質量%であり、より好ましくは55~93質量%である。
【0019】
本発明による皮膚外用剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の任意成分を含んでいてもよい。他の任意成分としては、例えば、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、粉末成分、酸化防止剤、防腐剤、薬剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
本発明による皮膚外用剤の剤型は、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系粉末分散系、水2-油二層系、水-油-粉末三層系等であり、特に限定されない。本発明による皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品(軟膏剤等)、および洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスク等の基礎化粧品;ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧品;日焼け止め等のサンケア商品;芳香化粧品;ボディ化粧品等の形態に広く適用可能である。
【0021】
本発明による皮膚外用剤は、皮膚の引き上げ効果を有しているため、好ましくは、顔、首、腹、尻、脚などの皮膚の皮膚用化粧料であり、より好ましくは顔の皮膚のリフトアップ剤である。
【実施例0022】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、総量に対する質量%で示す。
【0023】
[実施例1~14および比較例1~12]
表1および2に示される配合で、実施例1~14および比較例1~12の皮膚外用剤を調製した。表中の各成分の数値は質量%を示す。
【表1】
【表2】
表中、プルランは、「化粧品用プルラン」(株式会社林原販売)であり、重量平均分子量は約200,000である。
【0024】
[こすり耐性]
手の甲の4cm×4cmの範囲に、上記で調製した皮膚外用剤を0.05gを均一に塗布し、乾燥させて、皮膜を形成した。皮膜を手でこすり、皮膜が剥がれたるまでに要したこすり回数を記録した。こすり回数が大きいほど、こすり耐性が優れていると評価できる。得られた結果は表1および表2のとおりである。
【0025】
[引っ張り力]
上記と同様に、人工皮革に皮膚外用剤を塗布して皮膜を形成させた。皮膜形成後の人工皮革の曲がり具合を目視で観察し、以下の基準で評価した。人工皮革の曲がりが大きいほど、皮膚外用剤の引っ張り力が強い、つまり高い引き上げ効果を有すると評価できる。得られた結果は表1および表2のとおりである。
A+:人工皮革がAよりもさらに大きく曲がり、端が大きく浮き上がっていた。
A:人工皮革の大きく曲がりが見られ、端が大きく浮き上がっていた。
B:人工皮革に曲がりが見られ、端が浮き上がっていた。
C:人工皮革に全体的にわずかに曲がりが見られた。
D:人工皮革に部分的にわずかに曲がりが見られた。
E:人工皮革に全く曲がっていなかった。