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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084851
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
F15B15/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199208
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 信吾
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA18
3H081BB02
3H081CC24
(57)【要約】
【課題】スリーブを係止する係止部材を用いつつ、より確実にスリーブが封止部材からの抜け止めを実現し得る流体圧アクチュエータを提供する。
【解決手段】流体圧アクチュエータは、アクチュエータ本体部100と、封止機構200とを備える。封止機構200は、封止機構200が挿通される封止部材210と、封止部材210に挿通された封止機構200の外周面に設けられ、封止機構200を拘束するかしめリング230と、封止部材210にスリーブを係止する係止ワイヤ220とを備える。封止部材210は、胴体部212よりも外側に設けられる頭部211と、胴体部212と頭部211との間に設けられ、中間部213とを有する。中間部213は、頭部211よりも封止機構200の径方向におけるサイズが小さく、胴体部212よりもアクチュエータ本体部100の径方向外側に向けて膨らんだ拡径部分214を有する。係止ワイヤ220は、圧縮変形させられ、かしめリング230と中間部213との間に形成される空間を埋める。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブとによって構成されるアクチュエータ本体部と、
前記アクチュエータ本体部の軸方向において、前記アクチュエータ本体部の端部を封止する封止機構と
を備える流体圧アクチュエータであって、
前記封止機構は、
前記アクチュエータ本体部が挿通される封止部材と、
前記封止部材に挿通された前記アクチュエータ本体部の外周面に設けられ、前記アクチュエータ本体部を拘束する拘束部材と、
前記封止部材に前記スリーブを係止する係止部材と
を備え、
前記封止部材は、
前記チューブが挿通される胴体部と、
前記軸方向において、前記胴体部よりも外側に設けられる頭部と、
前記胴体部と前記頭部との間に設けられる中間部と
を有し、
前記中間部は、
前記頭部よりも前記アクチュエータ本体部の径方向におけるサイズが小さく、
前記胴体部よりも前記アクチュエータ本体部の径方向外側に向けて膨らんだ拡径部分を有し、
前記係止部材は、圧縮変形させられ、前記拘束部材と前記中間部との間に形成される空間を埋める流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記拡径部分は、前記頭部から前記胴体部に向かうに連れて径サイズが大きくなる請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記拘束部材と前記中間部との間隔は、前記頭部から前記胴体部に向かうに連れて狭くなる請求項1または2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記係止部材は、前記軸方向の強度が前記径方向の強度よりも低い異方性を有する材料によって形成される請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記係止部材は、アルミニウムを含む材料によって形成される請求項1乃至3の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項6】
前記係止部材は、前記中間部の外周面にワイヤを巻き付けることによって形成される請求項1乃至5の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項7】
前記スリーブの前記軸方向における端部は、前記係止部材を介して折り返されている請求項1乃至6の何れか一項に記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体または液体を用いてチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータに関し、具体的には、いわゆるマッキベン型の流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したようなチューブを膨張及び収縮させる流体圧アクチュエータとしては、空気圧によって膨張、収縮するゴム製のチューブ(管状体)と、チューブの外周面を覆うスリーブ(網組補強構造)とを有する構造(いわゆるマッキベン型)が広く用いられている。
【0003】
チューブ及びスリーブによって構成されるアクチュエータ本体部の両端は、金属で形成された封止部材を用いて封止される。
【0004】
スリーブは、ポリアミド繊維などの高張力繊維または金属のコードを編み込んだ筒状の構造体であり、チューブの膨張運動を所定範囲に規制する。
【0005】
このようなマッキベン型の流体圧アクチュエータ作動時の負荷によって、スリーブが封止部材から抜けてしまうことを防止するため、係止部材(係止用リング)を用いて、封止部材に形成されたフランジ部にスリーブを係止する構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-035930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した係止部材を用いた構造によれば、流体圧アクチュエータの故障を防止でき、流体圧アクチュエータの耐久性が向上する。
【0008】
しかしながら、流体圧アクチュエータにより高い圧力が掛かる場合(油圧駆動とした場合など)があり、さらに高い耐久性が求められていた。
【0009】
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、スリーブを係止する係止部材を用いつつ、より確実にスリーブの封止部材からの抜け止めを実現し得る流体圧アクチュエータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状のチューブと、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、前記チューブの外周面を覆うスリーブとによって構成されるアクチュエータ本体部と、前記アクチュエータ本体部の軸方向において、前記アクチュエータ本体部の端部を封止する封止機構とを備える流体圧アクチュエータであって、前記封止機構は、前記アクチュエータ本体部が挿通される封止部材と、前記封止部材に挿通された前記アクチュエータ本体部の外周面に設けられ、前記アクチュエータ本体部を拘束する拘束部材と、前記封止部材に前記スリーブを係止する係止部材とを備える。
【0011】
前記封止部材は、前記チューブが挿通される胴体部と、前記軸方向において、前記胴体部よりも外側に設けられる頭部と、前記胴体部と前記頭部との間に設けられる中間部とを有する。
【0012】
前記中間部は、前記頭部よりも前記アクチュエータ本体部の径方向におけるサイズが小さく、前記胴体部よりも前記アクチュエータ本体部の径方向外側に向けて膨らんだ拡径部分を有する。前記係止部材は、圧縮変形させられ、前記拘束部材と前記中間部との間に形成される空間を埋める。
【発明の効果】
【0013】
上述した流体圧アクチュエータによれば、スリーブを係止する係止部材を用いつつ、より確実にスリーブの封止部材からの抜け止めを実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、流体圧アクチュエータ10の側面図である。
図2図2は、流体圧アクチュエータ10の一部拡大斜視図である。
図3図3は、封止機構200の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
図4図4は、かしめリング230がかしめられる前における封止機構200の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
図5図5は、変更例に係る封止機構200Aの軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0016】
(1)流体圧アクチュエータの全体概略構成
図1は、本実施形態に係る流体圧アクチュエータ10の側面図である。図1に示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100、封止機構200及び封止機構300を備える。
【0017】
封止機構200及び封止機構300は、軸方向DAXにおけるアクチュエータ本体部100の両端部を封止する。具体的には、封止機構200は、封止部材210及びかしめリング230を含む。封止部材210は、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXの端部を封止する。また、かしめリング230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる(「加締める」と表記されてもよい)。かしめリング230の外周面には、治具によってかしめリング230がかしめられた痕である圧痕231が形成される。
【0018】
封止機構200と封止機構300との相違点は、流体用の接続口211aが設けられているか否かである。
【0019】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。アクチュエータ本体部100には、接続口211aを介して流体が流入する。
【0020】
アクチュエータ本体部100は、チューブ110内への流体の流入によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて収縮し、径方向DRにおいて膨張する。また、アクチュエータ本体部100は、チューブ110から流体の流出によって、アクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおいて膨張し、径方向DRにおいて収縮する。このようなアクチュエータ本体部100の形状変化によって、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータとしての機能を発揮する。
【0021】
流体圧アクチュエータ10の駆動に用いられる流体は、空気などの気体、または水、鉱物油などの液体のどちらでもよいが、特に、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100に高い圧力が掛かる油圧駆動にも耐え得る高い耐久性を有する。
【0022】
また、このような流体圧アクチュエータ10は、いわゆるマッキベン型であり、人工筋肉用として適用できることは勿論のこと、より高い能力(収縮力)が要求されるロボットの体肢(上肢や下肢など)用としても好適に用い得る。
【0023】
さらに、流体圧アクチュエータ10は、人体装着型のパワーアシスト装置、歩行アシスト装置、筋力などのトレーニング装置としても用い得る。
【0024】
図2は、流体圧アクチュエータ10の一部分解斜視図である。図2示すように、流体圧アクチュエータ10は、アクチュエータ本体部100及び封止機構200を備える。
【0025】
アクチュエータ本体部100は、上述したように、チューブ110とスリーブ120とによって構成される。
【0026】
チューブ110は、流体の圧力によって膨張及び収縮する円筒状の筒状体である。チューブ110は、流体による収縮及び膨張を繰り返すため、ブチルゴムなど弾性材料によって構成される。チューブ110の内径Φは、特に限定されないが、本実施形態では、10mm程度である。
【0027】
流体圧アクチュエータ10を油圧駆動とする場合には、チューブ110の材料として、耐油性が高いNBR(ニトリルゴム)、またはNBR、水素化NBR、クロロプレンゴム、及びエピクロロヒドリンゴムからなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0028】
スリーブ120は、円筒状であり、チューブ110の外周面を覆う。スリーブ120は、所定方向に配向されたコードを編み込んだ構造体であり、配向されたコードが交差することによって菱形の形状が繰り返されている。スリーブ120は、このような形状を有することによって、パンタグラフ変形し、チューブ110の収縮及び膨張を規制しつつ追従する。
【0029】
スリーブ120を構成するコードとしては、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)やポリエチレンテレフタラート(PET)の繊維コードを用いることが好ましい。但し、このような種類の繊維コードに限定されるものではなく、例えば、PBO繊維(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)などの高強度繊維や、極細のフィラメントによって構成される金属製のコードでもよい。
【0030】
封止機構200はアクチュエータ本体部100の軸方向DAXにおける端部を封止する。封止機構200は、封止部材210、係止ワイヤ220及びかしめリング230によって構成される。
【0031】
封止部材210には、アクチュエータ本体部100が挿通される。封止部材210としては、ステンレス鋼などの金属を好適に用い得るが、このような金属に限定されず、硬質プラスチック材料などを用いてもよい。
【0032】
係止ワイヤ220は、封止部材210にスリーブ120を係止する。本実施形態において、係止ワイヤ220は、係止部材を構成する。具体的には、スリーブ120は、係止ワイヤ220を介して径方向DR外側に折り返される(図2において不図示、図3参照)。
【0033】
本実施形態では、係止ワイヤ220は、直径が1mm程度のワイヤを複数回巻き廻すことによって形成される。
【0034】
例えば、係止ワイヤ220は、金属材料によって形成することができるが、比較的柔らかく、延性・展性に富む材料、例えば、アルミニウムを含む材料(アルミニウム合金など)が好ましい。係止ワイヤ220を形成する部材は、封止部材210を形成する部材よりも変形し易いことが好ましく、かしめリング230を形成する部材よりも変形し易いことがより好ましい。
【0035】
なお、係止ワイヤ220としては、封止部材210と同様の金属を用いられてもよいし、かしめリング230と同様の金属が用いられてもよい。
【0036】
なお、係止ワイヤ220は、後述するようにかしめリング230とともにかしめられることによって変形するような硬さを有する材料(必ずしも金属に限定されない)によって形成される。また、係止ワイヤ220(係止部材)に代えて、リング状の部材によって形成されてもよい。
【0037】
かしめリング230は、封止部材210に挿通されたアクチュエータ本体部100の外周面に設けられ、アクチュエータ本体部100を拘束する。本実施形態において、かしめリング230は、拘束部材を構成する。
【0038】
かしめリング230は、アクチュエータ本体部100を封止部材210とともにかしめる。かしめリング230としては、アルミニウム合金、真鍮及び鉄などの金属を用いることができる。かしめ用の治具によってかしめリング230がかしめられると、圧痕231(図1参照)が形成される。
【0039】
かしめ用の治具は特に限定されないが、かしめリング230の外周面と接触する複数のダイス(例えば、周上に7分割されたダイス)を径方向内側にかしめることによってアクチュエータ本体部100が拘束され、軸方向DAXに沿った直線状の圧痕231が形成される。
【0040】
(2)封止機構の構成
次に、図3及び図4を参照して、封止機構200の具体的な構成について説明する。図3は、封止機構200の軸方向DAXに沿った一部断面図である。図4は、かしめリング230がかしめられる前における封止機構200の軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【0041】
図3及び図4に示すように、封止部材210は、頭部211、胴体部212及び中間部213を備える。
【0042】
頭部211は、軸方向DAXにおいて、胴体部212よりも外側に設けられる。頭部211には、接続口211aが形成される。
【0043】
接続口211aは、流体圧アクチュエータ10の駆動圧力源、具体的には、気体や液体のコンプレッサなどと接続されたホース(管路)が接続される。
【0044】
また、頭部211は、軸方向DAXにおけるかしめリング230の端面232と当接する当接面211bを有する当接面211bは、端面232と面接触できる平坦な面である。
【0045】
胴体部212は、チューブ110(図1,2参照)が挿通される部分である。具体的には、胴体部212は、封止部材210に挿通されたチューブ110の内周面と接する。
【0046】
胴体部212の外周面には、チューブ110が封止部材210から抜け難くするため、段状部分212aが形成される。段状部分212aは、チューブ110の胴体部212からの引き抜き方向に対して抵抗となるように、径方向DR外側に向けて凸となっている。
【0047】
中間部213は、胴体部212と頭部211との間に設けられる。中間部213は、頭部211よりも径方向DRにおけるサイズが小さい。なお、軸方向DAXにおける中間部213の一部のみが、頭部211よりも径方向DRにおけるサイズが小さくてもよい。
【0048】
例えば、軸方向DAXにおける頭部211寄りの中間部213は、頭部211よりも径方向DRにおけるサイズが小さく、胴体部212寄りの中間部213は、頭部211と径方向DRにおけるサイズが同等或いは多少大きくてもよい。本実施形態では、頭部211寄りの中間部213の直径Φは、8mm程度である。
【0049】
中間部213は、軸方向DAXにおいて、かしめリング230の端面232の位置から、胴体部212に挿通されたチューブ110の外側端までの領域と解釈されてよい。
【0050】
中間部213は、胴体部212よりもアクチュエータ本体部100の径方向外側に向けて膨らんだ拡径部分214を有する。スリーブ120が折り返された係止ワイヤ220は、拡径部分214によって係止されてよい。つまり、係止ワイヤ220が形成する直径は、拡径部分214の直径よりも小さい。
【0051】
拡径部分214は、胴体部212よりも径方向DR外側に凸状である。拡径部分214は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて大きくなってよい。つまり、中間部213は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて直径(径サイズ)が徐々に大きくなる部分を有してよい。換言すると、中間部213は、図3に示すような断面において、テーパー状となる部分を有してもよい。当該テーパー状となる部分が拡径部分214と解釈されてもよい。
【0052】
このように、中間部213は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて大きく直径が大きくなる拡径部分214を有するため、かしめリング230(拘束部材)と中間部213との間隔は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて狭くなる。
【0053】
本実施形態では、拡径部分214の最大直径Φは、13mm程度である。上述したように、頭部211寄りの中間部213の直径Φが8mm程度であるため、拡径部分214と、頭部211寄りの中間部213との段差は、2.5mm程度である。
【0054】
封止部材210の内部には、軸方向DAXに沿って貫通孔215が形成される。貫通孔215は、接続口211aに連通しており、貫通孔215を介してアクチュエータ本体部100に流体が流入する。本実施形態では、貫通孔215の直径Φは、3mm程度である。
【0055】
また、封止部材210には、連結部216が設けられる。具体的には、連結部216は、頭部211の軸方向DAX外側に設けられる。連結部216には、流体圧アクチュエータ10を用いた装置を構成する部材などを係合するために、係合孔216aが形成される。
【0056】
上述したように、チューブ110は、胴体部212に挿通される。上述したように、拡径部分214のは、チューブ110の端面111(図2も参照)と当接する。また、段状部分212aは、かしめリング230によってアクチュエータ本体部100が封止部材210とともにかしめられることによって、チューブ110の内周面に食い込み、チューブ110が胴体部212から抜けることをより確実に防止する。
【0057】
係止ワイヤ220は、スリーブ120の外周面に設けられるとともに、中間部213の外周面にワイヤを巻き付けることによって形成される。スリーブ120は、係止ワイヤ220を介して軸方向DAX中央側に折り返される。つまり、スリーブ120の軸方向DAXにおける端部は、係止ワイヤ220(係止部材)を介して折り返されている。
【0058】
具体的には、スリーブ120は、係止ワイヤ220を介して折り返された折り返し部分120aを有する。また、折り返し部分120aは、係止ワイヤ220を介して径方向DR外側に折り返されており、かしめリング230の内周面と当接する。
【0059】
また、かしめリング230は、上述したように、頭部211の当接面211bは、かしめリング230の端面232と当接する。具体的には、当接面211bは、端面232と面接触する。
【0060】
かしめリング230は、チューブ110及び係止ワイヤ220を介して折り返されたスリーブ120を封止部材210とともにかしめることによって、アクチュエータ本体部100を封止部材210に固定する。
【0061】
また、係止ワイヤ220は、かしめリング230をかしめる治具によって、アクチュエータ本体部100とともにかしめられると、圧縮変形させられ、かしめリング230と中間部213との間に形成される空間を埋める。
【0062】
具体的には、図4に示す状態から、係止ワイヤ220は、当該治具によってかしめられると、潰れるように変形し、かしめリング230と中間部213との間の空間に隙間が少なくなるように変形する。
【0063】
この結果、係止ワイヤ220の少なくとも一部は、圧縮変形し、圧縮変形部221が形成される。圧縮変形部221は、かしめリング230と中間部213との間隔が狭くなる胴体部212寄りの領域において多く形成されてよい。
【0064】
係止ワイヤ220は、このような圧縮変形の容易性を考慮し、軸方向DAXの強度が径方向DRの強度よりも低い異方性を有する材料によって形成されることが好ましい。
【0065】
また、かしめリング230と中間部213との間の空間の体積(A)と、係止ワイヤ220及びスリーブ120との体積(B)とは、当該空間を十分に埋め、スリーブ120の引き抜け防止を考慮すると、0.5A<B<1.5Aとすることが好ましく、0.8A<B<1.2Aとすることが、より好ましい。
【0066】
(3)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、封止機構200の中間部213は、頭部211よりもアクチュエータ本体部100の径方向DRにおけるサイズが小さく、
胴体部212よりもアクチュエータ本体部100の径方向DR外側に向けて膨らんだ拡径部分214を有する。また、係止ワイヤ220は、圧縮変形させられ、かしめリング230と中間部213との間に形成される空間を埋める。
【0067】
このように、チューブ110及び係止ワイヤ220を介して折り返されたスリーブ120を封止部材210とともにかしめる際に、係止ワイヤ220が変形し、スリーブ120が係止ワイヤ220から滑る抜けることをより確実に防止でき、スリーブ120が抜け難くなる。
【0068】
すなわち、流体圧アクチュエータ10によれば、スリーブ120を係止する係止部材(係止ワイヤ220)を用いつつ、より確実にスリーブ120の封止部材210からの抜け止めを実現し得る。
【0069】
なお、係止ワイヤ220の体積と、係止ワイヤ220を囲むスリーブ120の体積を合わせた体積(B)が、かしめリング230と中間部213(封止部材210)により囲まれる空隙の体積(A)に対して少ないと、かしめた後に軸方向DAXに力が掛かった時に、かしめリング230とスリーブ120と係止ワイヤ220とが軸方向DAXに引っ張られて、封止部材210との間に隙間が生じる。
【0070】
結果的に、流体圧アクチュエータ10の長さが変化する。逆に係止ワイヤ220とスリーブ120との体積(B)が多すぎると、かしめ時に係止ワイヤ220がかしめリング230と干渉して、係止ワイヤ220の変形を阻害し、形状の歪みを発生させる。係止ワイヤ220の体積を適切な範囲にすることで、両方の課題を解決し得る。
【0071】
本実施形態では、封止部材210の拡径部分214は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて大きくなる。換言すると、かしめリング230と中間部213との間隔は、頭部211から胴体部212に向かうに連れて狭くなる。
【0072】
このため、かしめリング230と中間部213との空間を軸方向DAX中央側に行くに連れて小さくでき、かしめ時に係止ワイヤ220をより変形し易くできる。これにより、さらに確実にスリーブ120の封止部材210からの抜け止めを実現し得る。
【0073】
本実施形態では、係止ワイヤ220は、軸方向DAXの強度が径方向DRの強度よりも低い異方性を有する材料、例えば、銅または鉛の少なくとも何れかを含む材料によって形成されてよい。
【0074】
このため、係止ワイヤ220の軸方向DAXにおける圧縮変形が容易となり、かしめリング230と中間部213との空間をより確実に埋めることができる。これにより、さらに確実にスリーブ120の封止部材210からの抜け止めを実現し得る。
【0075】
本実施形態では、係止ワイヤ220は、中間部213の外周面にワイヤを巻き付けることによって形成される。このため、係止ワイヤ220を容易に円環状に形成でき、アクチュエータ本体部100のかしめ作業を容易にし得る。
【0076】
本実施形態では、スリーブ120の軸方向DAXにおける端部は、係止ワイヤ220を介して折り返されている。このため、さらに確実にスリーブ120の封止部材210からの抜け止めを実現し得る。
【0077】
(4)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0078】
例えば、封止機構200は、次のように変更されてもよい。図5は、変更例に係る封止機構200Aの軸方向DAXに沿った一部断面図である。
【0079】
図5に示すように、封止機構200Aは、封止部材210A及び係止ワイヤ220Aを備える。封止部材210Aでは、拡径部分214Aの形状が、上述した拡径部分214と異なっている。拡径部分214は、軸方向DAX中央側(胴体部212)に向かうに連れて径サイズが大きくなる形状を有していたが、拡径部分214Aのように、軸方向DAXにおいて均一の径サイズを有していてもよい。
【0080】
係止ワイヤ220Aは、上述した係止ワイヤ220と同様である。但し、係止ワイヤ220Aの体積は、封止部材210Aの形状(かしめリング230と中間部213との空間)に応じて変更されてよい。このような封止機構200Aの場合でも、係止ワイヤ220Aは、かしめ時に圧縮変形し、当該空間を埋めることができる。これにより、より確実にスリーブ120の封止部材210からの抜け止めを実現し得る。
【0081】
また、上述した実施形態では、スリーブ120の軸方向DAXにおける端部は、係止ワイヤ220を介して折り返されていたが、当該端部は、必ずしも係止ワイヤ220を介して折り返されていなくても構わない。
【0082】
さらに、上述した実施形態では、ワイヤを複数回巻き廻すことによって係止ワイヤ220が形成されていたが、係止部材は、係止ワイヤ220に代えて、リング状の部材によって形成されてもよい。
【0083】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0084】
10 流体圧アクチュエータ
100 アクチュエータ本体部
110 チューブ
111 端面
120 スリーブ
120a 折り返し部分
200, 200A 封止機構
210, 210A 封止部材
211 頭部
211a 接続口
211b 当接面
212 胴体部
212a 段状部分
213 中間部
214, 214A 拡径部分
215 貫通孔
216 連結部
216a 係合孔
220, 220A 係止ワイヤ
221 圧縮変形部
230 かしめリング
231 圧痕
232 端面
233 面取り部
300 封止機構
図1
図2
図3
図4
図5