(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084853
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】気密パッケージ、電子装置及び気密パッケージ用の蓋材
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20230613BHJP
C03C 3/32 20060101ALI20230613BHJP
C03C 4/10 20060101ALI20230613BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230613BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20230613BHJP
H01S 5/0222 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L23/02 J
C03C3/32
C03C4/10
G02B5/22
H01S5/02257
H01S5/0222
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199210
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】富田 充
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩輝
【テーマコード(参考)】
2H148
4G062
5F173
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA05
2H148CA12
2H148CA18
2H148CA22
2H148CA23
2H148CA25
4G062AA01
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5F173MA08
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5F173MF22
(57)【要約】
【課題】ガラス製の赤外光透過部を有する蓋材を通じた外観検査によって、気密パッケージの気密性を阻害する欠陥の有無を簡単に確認できる構成を提供する。
【解決手段】基材4と、基材4の主面4a上に設けられた枠体5と、枠体5上に設けられた蓋材6と備える気密パッケージ3であって、蓋材6は、ガラス製の赤外光透過部7と、赤外光透過部7の外周面7cを保持する保持部8cを有するガラス製の可視光透過部8とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する基材と、前記基材の前記主面上に設けられた枠体と、前記枠体上に設けられた蓋材と備える気密パッケージであって、
前記蓋材は、ガラス製の赤外光透過部と、前記赤外光透過部の外周を保持する保持部を有するガラス製の可視光透過部とを備えることを特徴とする気密パッケージ。
【請求項2】
前記赤外光透過部は、厚みが2mmの場合に、3~14μmの波長域での内部透過率が70~99%であり、かつ、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が2%以下であり、
前記可視光透過部は、厚みが2mmの場合に、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が50%以上である請求項1に記載の気密パッケージ。
【請求項3】
前記赤外光透過部は、カルコゲナイドガラスから構成される請求項1又は2に記載の気密パッケージ。
【請求項4】
前記カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、S 50~80%、Sb 0~40%(ただし0%を含まない)、Ge 0~18%(ただし0%を含まない)、Sn 0~20%、Bi 0~20%を含有する請求項3に記載の気密パッケージ。
【請求項5】
前記カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、Te 4~80%、Ge 0~50%(ただし0%を含まない)、Ga 0~20%を含有する請求項3に記載の気密パッケージ。
【請求項6】
前記保持部において、前記赤外光透過部と前記可視光透過部とは、互いに接合された接合部を有し、
前記赤外光透過部と前記可視光透過部との前記接合部は、シリコン層を有する請求項1~5のいずれか1項に記載の気密パッケージ。
【請求項7】
前記赤外光透過部と前記枠体とは、互いに接合された接合部を有し、
前記赤外光透過部と前記枠体との前記接合部は、前記赤外光透過部側から順に、シリコン層と、はんだ層とを有する請求項1~6のいずれか1項に記載の気密パッケージ。
【請求項8】
前記可視光透過部と前記枠体とは、互いに接合された接合部を有し、
前記可視光透過部と前記枠体との前記接合部は、はんだ層を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の気密パッケージ。
【請求項9】
前記赤外光透過部は、前記保持部において、前記可視光透過部と厚み方向で係合する抜け止め部を有する請求項1~8のいずれか1項に記載の気密パッケージ。
【請求項10】
前記抜け止め部は、前記赤外光透過部の前記枠体側の端部に設けられており、
前記抜け止め部の少なくとも一部が、前記枠体と重なっている請求項9に記載の気密パッケージ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の気密パッケージと、前記気密パッケージの内部空間に収容され、前記赤外光透過部を介して赤外光を外部に照射する電子部品とを備えることを特徴とする電子装置。
【請求項12】
気密パッケージ用の蓋材であって、
ガラス製の赤外光透過部と、前記赤外光透過部の外周を保持する保持部を有するガラス製の可視光透過部とを備え、
前記赤外光透過部は、厚みが2mmの場合に、3~14μmの波長域での内部透過率が70~99%であり、かつ、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が2%以下であり、
前記可視光透過部は、厚みが2mmの場合に、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が50%以上であることを特徴とする気密パッケージ用の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密パッケージ、電子装置及び気密パッケージ用の蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ素子などの電子部品を備えた電子装置では、電子部品が気密パッケージ内に収容されるのが通例である。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、気密パッケージは、主面を有する基材(同文献では第1の部材)と、基材の主面上に設けられた枠体(同文献では第2の部材)と、枠体上に設けられた蓋材(同文献ではカバー部材)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の電子装置には、電子部品として赤外光を出射するレーザ素子を備えたものもあり、ガス分析や精密加工などの分野に利用される。このように電子装置において赤外光を利用する場合、蓋材は、赤外光を透過する赤外光透過部を備えている必要がある。また、蓋材は、長期間に亘る気密性を確保するために、ガスバリア性の高いガラス製であることが好ましい。
【0006】
しかしながら、赤外光透過ガラスは、可視光の透過率が低いのが一般的である。そのため、蓋材を赤外光透過ガラスで構成した場合、枠体と蓋材との界面の接合状態などを、蓋材を通じた目視等の外観検査によって確認することが難しい。したがって、枠体と蓋材との界面等における欠陥が見逃されるおそれがあった。そして、このような欠陥が見逃されると、欠陥に起因して気密パッケージ内の気密性が確保できず、気密パッケージ内の電子部品の信頼性を損なうおそれがあった。
【0007】
本発明は、ガラス製の赤外光透過部を有する蓋材を通じた外観検査によって、気密パッケージの気密性を阻害する欠陥の有無を簡単に確認できる構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、主面を有する基材と、基材の主面上に設けられた枠体と、枠体上に設けられた蓋材と備える気密パッケージであって、蓋材は、ガラス製の赤外光透過部と、赤外光透過部の外周を保持する保持部を有するガラス製の可視光透過部とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、可視光透過部を通じた目視等の外観検査によって、枠体と蓋材との界面の状態や赤外光透過部と可視光透過部との界面の状態等を観察できる。そのため、気密パッケージの気密性を阻害する欠陥の有無を外観検査よって簡単に確認できる。
【0010】
(2) 上記の(1)の構成において、赤外光透過部は、厚みが2mmの場合に、3~14μmの波長域での内部透過率が70~99%であり、かつ、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が2%以下であり、可視光透過部は、厚みが2mmの場合に、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が50%以上であることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、赤外光透過部において赤外光が十分に透過しつつ、可視光透過部において可視光が十分に透過する。したがって、可視光透過部を通じて枠体と蓋材との界面等における欠陥を、目視等による外観検査で発見し易くなる。
【0012】
(3) 上記の(1)又は(2)の構成において、赤外光透過部は、カルコゲナイドガラスから構成されることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、赤外光透過部において、良好な赤外光透過性を実現できる。
【0014】
(4) 上記の(3)の構成において、カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、S 50~80%、Sb 0~40%(ただし0%を含まない)、Ge 0~18%(ただし0%を含まない)、Sn 0~20%、Bi 0~20%を含有していてもよい。
【0015】
(5) 上記(3)の構成において、カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、Te 4~80%、Ge 0~50%(ただし0%を含まない)、Ga 0~20%を含有していてもよい。
【0016】
(6) 上記の(1)~(5)のいずれか1つの構成において、保持部において、赤外光透過部と可視光透過部とは、互いに接合された接合部を有し、赤外光透過部と可視光透過部との接合部は、シリコン層を有することが好ましい。
【0017】
赤外光透過ガラスは、他部材との密着性や接合性が悪い場合が多いが、シリコン層との密着性や接合性は良好である。したがって、シリコン層を介在させることで、赤外光透過部と可視光透過部との接合強度(気密性)を上げることができる。
【0018】
(7) 上記の(1)~(6)のいずれか1つの構成において、赤外光透過部と枠体とは、互いに接合された接合部を有し、赤外光透過部と枠体との接合部は、赤外光透過部側から順に、シリコン層と、はんだ層とを有することが好ましい。
【0019】
赤外光透過ガラスは、他部材との密着性や接合性が悪い場合が多いが、シリコン層との密着性や接合性は良好である。一方、はんだ層は、接合部の気密性を確保し易いという利点がある。したがって、シリコン層とはんだ層とを介在させることで、赤外光透過部と枠体との接合強度(気密性)を上げることができる。
【0020】
(8) 上記の(1)~(7)のいずれか1つの構成において、可視光透過部と枠体とは、互いに接合された接合部を有し、可視光透過部と枠体との接合部は、はんだ層を有することが好ましい。
【0021】
可視光透過ガラスは赤外光透過ガラスに比べて、他部材との密着性や接合性が良好な場合が多い。したがって、可視光透過部と枠体とは、はんだ層を介して接合すれば、可視光透過部と枠体との接合強度(気密性)を上げることができる。
【0022】
(9) 上記の(1)~(8)のいずれか1つの構成において、赤外光透過部は、保持部において、可視光透過部と厚み方向で係合する抜け止め部を有することが好ましい。
【0023】
このようにすれば、可視光透過部に対して赤外光透過部を確実に保持できる。
【0024】
(10) 上記の(9)の構成において、抜け止め部は、赤外光透過部の枠体側の端部に設けられており、抜け止め部の少なくとも一部が、枠体と重なっていることが好ましい。
【0025】
このようにすれば、抜け止め部が枠体側の端部に設けられているため、抜け止め部を形成するための加工が容易である。また、抜け止め部の少なくとも一部が、枠体によって押えられるため、可視光透過部に対して赤外光透過部をより確実に保持できる。
【0026】
(11) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、電子装置であって、上記の(1)~(10)のいずれか1つの構成を有する気密パッケージと、気密パッケージの内部空間に収容され、赤外光透過部を介して赤外光を外部に照射する電子部品とを備えることを特徴とする。
【0027】
このようにすれば、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受できる。
【0028】
(12) 上記の課題を解決するために創案された本発明は、気密パッケージ用の蓋材であって、ガラス製の赤外光透過部と、赤外光透過部の外周を保持する保持部を有するガラス製の可視光透過部とを備え、赤外光透過部は、厚みが2mmの場合に、3~14μmの波長域での内部透過率が70~99%であり、かつ、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が2%以下であり、可視光透過部は、厚みが2mmの場合に、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が50%以上であることを特徴とする。
【0029】
このような蓋材であれば、気密パッケージに用いることで、既に述べた対応する構成と同様の効果を享受できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ガラス製の赤外光透過部を有する蓋材であっても、蓋材のガラス製の可視光透過部を通じた外観検査によって、気密パッケージの気密性を阻害する欠陥の有無を簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第一実施形態に係る電子装置を示す断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る蓋材の製造方法(蓋材準備工程)を示す断面図である。
【
図4】第一実施形態に係る蓋材の製造方法(蓋材準備工程)を示す断面図である。
【
図5】第二実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図6】第三実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図7】第四実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図8】第五実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図9】第六実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図10】第七実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【
図11】第八実施形態に係る蓋材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0033】
図1は、本発明の第一実施形態に係る電子装置1を例示している。なお、以下の実施形態では、蓋材6側を「上」、基材4側を「下」として説明するが、上下方向はこれに限定されない。
【0034】
本実施形態に係る電子装置1は、電子部品2と、電子部品2を内部に収容する気密パッケージ3とを備える。
【0035】
電子部品2は、本実施形態では、赤外光Lを出射するレーザ素子(光源)である。レーザ素子としては、例えば量子カスケードレーザ素子が挙げられる。電子部品2が量子カスケードレーザ素子である場合、電子装置1は、例えば、ガス分析装置やレーザ加工装置として利用される。
【0036】
気密パッケージ3は、電子部品2が搭載される上面(主面)4aを有する基材4と、基材4の上面4aに電子部品2を包囲するように設けられた枠体5と、枠体5上に設けられた蓋材6とを備える。
【0037】
基材4は、上面4a及び下面4bがともに平面から構成される板状体である。なお、基材4の上面4aは、電子部品2が搭載される部分に凹部が設けられていてもよい。
【0038】
枠体5は、中心に上下方向(厚み方向)に延びる貫通部(例えば、平面視で円形又は矩形をなす貫通孔)5cを有する筒状体である。枠体5は、貫通部5cに対応する空間に配置された電子部品2を包囲する。本実施形態では、枠体5は、四角筒で構成されているが、円筒などの他の筒状形状であってもよい。
【0039】
基材4及び枠体5は、例えば、窒化アルミニウムや酸化アルミニウムなどのセラミックス、ガラス、ガラスセラミックス、シリコンなどのケイ素化合物、或いはこれらとAg、Cuなどの金属との複合材などで構成される。本実施形態では、基材4及び枠体5は、金属から構成されている。なお、基材4及び枠体5を同素材から構成する場合、基材4及び枠体5を一体品から構成してもよいし、基材4及び枠体5をそれぞれ別体品から構成して互いに接合してもよい。基材4の上面4aと枠体5の下面5bとを接合する場合、その接合方法としては、レーザ接合、はんだ接合、ガラスフリット接合などの任意の方法が利用できる。
【0040】
蓋材6は、上面6a及び下面6bがともに平面から構成される板状体であり、枠体5の貫通部5cを閉塞するように枠体5の上面5aに接合されている。なお、蓋材6は、上面6a及び下面6bの少なくとも一部が、レンズ機能を有するように、凸曲面又は凹曲面から構成されていてもよい。
【0041】
蓋材6は、ガラス製の赤外光透過部7と、赤外光透過部7の外周面7cを包囲するように、赤外光透過部7の外側に配置されたガラス製の可視光透過部8とを備える。
【0042】
蓋材6を板状体とする場合、赤外光透過部7の上面7aと可視光透過部8の上面8aとは面一であることが好ましく、赤外光透過部7の下面7bと可視光透過部8の下面8bとは面一であることが好ましい。
【0043】
赤外光透過部7は、例えば、厚みが2mmの場合に、3~14μmの波長域での内部透過率が70~99%であり、かつ、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が2%以下である。内部透過率は、例えば、日立ハイテクサイエンス製UH-4150を用いて測定できる。
【0044】
赤外光透過部7は、本実施形態では、カルコゲナイドガラスから構成される。なお、赤外光透過部7は、上記の内部透過率を有するガラスであれば、カルコゲナイドガラスに限定されない。
【0045】
カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、S 50~80%、Sb 0~40%(ただし0%を含まない)、Ge 0~18%(ただし0%を含まない)、Sn 0~20%、Bi 0~20%を含有していてもよい。
【0046】
カルコゲナイドガラスにおいて、Sの含有量は、モル百分率で、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、より好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下である。ガラス中のSの含有量が50%未満になると、ガラス化し難くなる。一方、ガラス中のSの含有量が80%を超えると、ガラスの耐候性が低下することにより、電子装置1の使用環境が制限されることになる。
【0047】
カルコゲナイドガラスにおいて、Sbの含有量は、モル百分率で、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、より好ましくは35%以下、更に好ましくは33%以下である。ガラス中にSbを含有しない場合、または、その含有量が40%を超えると、ガラス化し難くなる。
【0048】
カルコゲナイドガラスにおいて、Geの含有量は、モル百分率で、より好ましくは2%以上、更に好ましくは4%以上、より好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下である。ガラス中にGeを含有しない場合、ガラス化し難くなる。一方、ガラス中のGeの含有量が18%を超えると、ガラス中からGe系の結晶が析出することにより、赤外光透過部7の特性を満たす内部透過率を得難くなる。
【0049】
カルコゲナイドガラスにおいて、Snの含有量は、モル百分率で、より好ましくは1%以上、更に好ましくは5%以上、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。ガラス中のSnは、ガラス化を促進する成分である。しかし、ガラス中のSnの含有量が20%を超えると、ガラス化し難くなる。
【0050】
カルコゲナイドガラスにおいて、Biの含有量は、モル百分率で、より好ましくは0.5%以上、更に好ましくは2%以上、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下である。ガラス中のBiは、ガラスの溶融時に、原料がガラス化するのに必要なエネルギーを抑える成分である。一方、ガラス中のBiの含有量が20%を超えると、ガラス中からBi系の結晶が析出することにより、赤外光透過部7の特性を満たす内部透過率を得難くなる。
【0051】
上記の組成に限らず、カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、Te 4~80%、Ge 0~50%(ただし0%を含まない)、Ga 0~20%を含有するものでもよい。
【0052】
カルコゲナイドガラスにおいて、Teの含有量は、モル百分率で、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上、より好ましくは75%以下、更に好ましくは70%以下である。ガラス中のTeの含有量が4%未満になると、ガラス化し難くなる。一方、ガラス中のTeの含有量が80%を超えると、ガラスからTe系の結晶が析出することにより、赤外光透過部7の特性を満たす内部透過率を得難くなる。
【0053】
カルコゲナイドガラスにおいて、Geの含有量は、モル百分率で、より好ましくは1%以上、更に好ましくは5%以上、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下である。ガラス中にGeを含有しない場合、ガラス化し難くなる。一方、ガラス中のGeの含有量が50%を超えると、ガラスからGe系の結晶が析出することにより、赤外光透過部7の特性を満たす内部透過率を得難くなる。
【0054】
カルコゲナイドガラスにおいて、Gaの含有量は、モル百分率で、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは1%以上、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下である。ガラス中にGaを含有することにより、ガラス化範囲を広げ、ガラスの熱的安定性(ガラス化の安定性)を高めることができる。
【0055】
可視光透過部8は、例えば、厚みが2mmの場合に、0.4~0.8μmの波長域での内部透過率が50%以上である。内部透過率は、例えば、日立ハイテクサイエンス製UH-4150を用いて測定できる。
【0056】
可視光透過部8は、特に限定されるものではないが、例えば、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、無アルカリガラスなどから構成される。
【0057】
カルコゲナイドガラスの熱膨張係数は、ケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、無アルカリガラスの熱膨張係数よりも顕著に大きい。したがって、赤外光透過部7にカルコゲナイドガラスを用い、可視光透過部8に上記に列挙したガラスを用いる場合、両者の熱膨張係数の不整合により、赤外光透過部と可視光透過部との接合部であるシリコン層が破損して、蓋材の機械的強度が低下するおそれがある。これを解決すべく、赤外光透過部に適用するカルコゲナイドガラスの熱膨張係数と、可視光透過部に適用する上記ガラスの熱膨張係数の差は、好ましくは150×10-7/℃以下、より好ましくは130×10-7/℃以下、更に好ましくは110×10-7/℃以下、特に好ましくは90×10-7/℃以下に規定する。
【0058】
可視光透過部8は、枠体5の貫通部5cに対応する位置に、赤外光透過部7を保持するための保持部8cを有する。本実施形態では、保持部8cは、貫通部(例えば、平面視で円形又は矩形をなす貫通孔)から構成されており、その内周面で赤外光透過部7の外周面7cが保持されている。
【0059】
赤外光透過部7の外周面7cは、抜け止め部9を有する。
【0060】
抜け止め部9は、赤外光透過部7の外周面7cの下端部(枠体5側の端部)にのみ設けられている。抜け止め部9は、枠体5側に移行するに連れて、外径側に漸次拡径するテーパ部から構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、抜け止め部9に倣った形状(テーパ部)をなし、抜け止め部9と上下方向で係合する係合部10を備える。赤外光透過部7の抜け止め部9と、可視光透過部8の係合部10とを係合させることにより、赤外光透過部7の上方側への移動が規制される。
【0061】
抜け止め部9の少なくとも一部(赤外光透過部7の下面7bの一部)は、枠体5の上面5aと重なっている。これにより、抜け止め部9の少なくとも一部が、枠体5によって押えられるため、赤外光透過部7の下方側への移動が規制される。その結果、赤外光透過部7の上下方向の両側への移動が規制されるため、赤外光透過部7が、可視光透過部8の保持部8cから脱落することなく、確実に保持された状態を維持する。
【0062】
図2に示すように、赤外光透過部7の外周面7cと可視光透過部8の保持部8cとは、互いに接合された第一接合部11を有する。第一接合部11はシリコン層12を含む。赤外光透過部7を構成する赤外光透過ガラス(例えば、カルコゲナイドガラス)は、他部材との密着性や接合性が非常に悪い場合が多いが、シリコン層との密着性や接合性は良好である。したがって、シリコン層12を介在させることで、赤外光透過部7と可視光透過部8との接合強度(気密性)を上げることができる。また、シリコン層は緩衝機能を有する。このため、第一接合部11にシリコン層12を形成すると、赤外光透過部7にカルコゲナイドガラスを適用し、可視光透過部8にケイ酸塩ガラス、シリカガラス、ホウ珪酸ガラス、ソーダガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、無アルカリガラスなどを適用した場合、両者の熱膨張係数の不整合により相互に発生する残留応力を緩和することができ、蓋材が破損する危険性を低減する効果ができる。本実施形態では、シリコン層12は、抜け止め部9及び係合部10に対応する位置に設けられている。つまり、抜け止め部9及び係合部10は、シリコン層12を介して接触しており、抜け止め部9を除外した位置では、赤外光透過部7及び可視光透過部8は直接接触している。
【0063】
シリコン層12は、蒸着やスパッタなどにより、赤外光透過部7及び可視光透過部8のいずれか一方のガラス面に形成された膜であり、赤外光透過部7と他部材との密着性を向上させる役割を有する。
【0064】
シリコン層12の厚みは、例えば、0.01~0.50μm、0.02~0.30μm、特に0.03~0.10μmであることが好ましい。
【0065】
赤外光透過部7の下面7b(抜け止め部9の下面)と枠体5の上面5aとは、互いに接合された第二接合部13を有する。第二接合部13は、枠体5の貫通部5cを包囲するように、枠体5の上面5aに環状に形成される。第二接合部13は、赤外光透過部7側から順に、シリコン層14と、メタライズ層15と、はんだ層16とを含む。赤外光透過部7を構成する赤外光透過ガラスは、上述の通り、他部材との密着性や接合性が非常に悪い場合が多いが、シリコン層14との密着性や接合性は良好である。シリコン層14は、メタライズ層15との密着性や接合性が良好である。はんだ層16は、メタライズ層15との密着性や接合性が良好であると共に、第二接合部13の気密性を確保し易いという利点がある。したがって、シリコン層14、メタライズ層15及びはんだ層16を介在させることで、赤外光透過部7と枠体5との接合強度(気密性)を上げることができる。
【0066】
シリコン層14は、蒸着やスパッタなどにより、赤外光透過部7のガラス面に形成された膜であり、赤外光透過部7と他部材との密着性を向上させる役割を有する。メタライズ層15は、蒸着やスパッタなどにより、シリコン層14に形成された金属膜であり、はんだ層16との密着性を向上させる役割を有する。なお、枠体5とはんだ層16との密着性が悪い場合には、枠体5とはんだ層16の間にも、メタライズ層を形成することが好ましい。
【0067】
メタライズ層15の材質としては、例えばCr、Ti、Ni、Pt、Au、W、Pdおよびこれらを含む合金層、或いはこれら金属、合金の多層膜などが利用できる。はんだ層16の材質としては、例えばAu、Sn、Ag、Pb、In、Bi、およびこれら金属を含む合金、すなわち、Au-Sn系はんだ、Sn-Ag系はんだ、Sn-In系はんだ、Sn-Bi系はんだ、Pb系はんだなどが利用できる。
【0068】
シリコン層14の厚みは、例えば、0.01~0.50μm、0.02~0.30μm、特に0.03~0.10μmであることが好ましい。メタライズ層15の厚みは、例えば、0.10~10.0μm、0.50~5.00μm、特に1.00~3.00μmであることが好ましい。はんだ層16の厚みは、例えば、1~300μm、5~100μm、特に15~50μmであることが好ましい。
【0069】
可視光透過部8の下面8bと枠体5の上面5aとは、互いに接合された第三接合部17を有する。第三接合部17は、枠体5の貫通部5c及び第二接合部13を包囲するように、枠体5の上面5aに環状に形成される。第三接合部17は、可視光透過部8側から順に、メタライズ層18と、はんだ層19とを含む。可視光透過部8を構成する可視光透過ガラスは赤外光透過ガラスに比べて、他部材との密着性や接合性が良好な場合が多い。したがって、可視光透過部8と枠体5とは、メタライズ層18及びはんだ層19を介して接合すれば、可視光透過部8と枠体5との接合強度(気密性)を上げることができる。
【0070】
メタライズ層18は、蒸着やスパッタなどにより、可視光透過部8のガラス面に形成された金属膜であり、はんだ層19との密着性を向上させる役割を有する。なお、枠体5とはんだ層19との密着性が悪い場合には、枠体5とはんだ層19の間にも、メタライズ層を形成することが好ましい。
【0071】
メタライズ層18の厚みは、例えば、0.01~0.50μm、0.02~0.30μm、特に0.03~0.10μmであることが好ましい。はんだ層19の厚みは、例えば、1~300μm、5~100μm、特に15~50μmであることが好ましい。なお、
図2では、便宜上、第三接合部17のメタライズ層18の厚みを、第二接合部13のメタライズ層15の厚みよりも大きく図示しているが、実際には、第二接合部13のシリコン層14の厚みは非常に小さく、メタライズ層18及びメタライズ層15の厚み差は無視できる程度である。
【0072】
第二接合部13のシリコン層14は、第三接合部17内に食み出していてもよい。つまり、シリコン層14の形成領域の一部が、可視光透過部8の下面8bの範囲内に位置していてもよい。
【0073】
第二接合部13は、第三接合部17と接触した状態で連続しており、第一接合部11は、第二接合部13及び第三接合部17の少なくとも一方と接触した状態で連続している。なお、第一接合部11、第二接合部13及び第三接合部17の少なくとも一つが、他の接合部と連続していなくてもよい。
【0074】
以上のように構成された電子装置1によれば、可視光透過部8を通じた目視等の外観検査によって、枠体5と蓋材6との接合部の状態や赤外光透過部7と可視光透過部8との接合部の状態等を観察できる。そのため、電子装置1の気密パッケージ3の気密性を阻害する欠陥の有無を外観検査よって簡単に確認できる。
【0075】
次に、以上のように構成された電子装置1の製造方法の一例を説明する。
【0076】
本製造方法は、電子部品2が実装された基材4を準備する基材準備工程と、枠体5を準備する枠体準備工程と、蓋材6を準備する蓋材準備工程と、基材4、枠体5及び蓋材6を接合する組立工程とを含む(
図1を参照)。
【0077】
基材準備工程では、基材4の上面4aに電子部品2を実装する。
【0078】
枠体準備工程では、枠体5の母材に貫通部5cを形成する。貫通部5cの形成方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、エッチング加工、レーザ加工、サンドブラスト加工などが挙げられる。本実施形態では、プレス加工が利用される。
【0079】
蓋材準備工程では、可視光透過部8の母材ガラスに保持部8cを形成する可視光透過部形成工程と、赤外光透過部7の母材ガラスを加熱変形させて、可視光透過部8の保持部8cに外周面7cが保持された赤外光透過部7を形成する赤外光透過部形成工程とを含む。
【0080】
可視光透過部形成工程では、可視光透過部8と同一のガラス組成を有する板状の母材ガラスに係合部10を有する保持部8cを形成する。保持部8cの形成方法としては、例えば、プレス加工、切削加工、エッチング加工、レーザ加工、サンドブラスト加工などが挙げられる。本実施形態では、エッチング加工が利用される。
【0081】
図3及び
図4に示すように、赤外光透過部形成工程では、赤外光透過部7と同一のガラス組成を有する柱状(例えば円柱状)の母材ガラス20を可視光透過部8の保持部8c内に挿通した状態で、母材ガラス20を加熱しながら成形型21によって押圧する。
【0082】
成形型21は、赤外光透過部7の上面7aを成形する成形面22aを有する第一成形型22と、第一成形型22の下方に配置され、赤外光透過部7の下面7bを成形する成形面23aを有する第二成形型23とを備える。第一成形型22及び第二成形型23は、例えば超硬合金やSUS等の鋼材により構成される。
【0083】
母材ガラス20が加熱環境下において酸素にさらされる場合、母材ガラス20表層が酸化され易くなる。したがって、成形型21と母材ガラス20は、減圧環境下、又は、不活性ガス(例えば窒素ガス)が充填されたチャンバ内に配置されていることが好ましい。これにより、母材ガラス20の光学特性が劣化する可能性や、母材ガラス20と保持部8c界面における気密密着性が低下する可能性を回避できる。なお、チャンバの外側には、成形型21及び母材ガラス20を加熱するための図示しないヒータが設けられている。
【0084】
赤外光透過部形成工程では、可視光透過部8の保持部8cに母材ガラス20を挿通する(
図3を参照)。この状態で、母材ガラス20の上面20a及び下面20bのいずれか一方の面は可視光透過部8の外側に食み出し、母材ガラス20の他方の面は可視光透過部8と面一とされている(
図3では下面20bが食み出した状態を例示)。第一成形型22の成形面22aと第二成形型23の成形面23aとにより、保持部8cに挿通された母材ガラス20の上面20a及び下面20bを上下両側から挟持する。その後、ヒータによって成形型21及び母材ガラス20を加熱した状態で、第一成形型22の成形面22a及び第二成形型23の成形面23aを互いに接近させて母材ガラス20を押圧する(
図4を参照)。
【0085】
赤外光透過部形成工程において、母材ガラス20は、例えば160~260℃に加熱される。加熱された母材ガラス20は軟化し、第一成形型22の成形面22a及び第二成形型23の成形面23aによって加えられる圧力によって変形する。これにより、母材ガラス20は、上下方向に縮小しながら幅方向に拡大し、保持部8cに密着する。そのため、母材ガラス20の外周面20cは、保持部8cに倣った形状となる。この母材ガラス20を徐冷することにより、抜け止め部9を有する可視光透過部8が、保持部8cに保持された状態で成形される。
【0086】
赤外光透過部形成工程では、母材ガラス20を成形型21によって押圧する前に、可視光透過部8の保持部8cの少なくとも一部には、蒸着やスパッタなどによりシリコン層12が予め形成される。本実施形態では、係合部10のガラス面にシリコン層12が形成される。そのため、上述のように、母材ガラス20を保持部8cに接触するように変形させると、可視光透過部8と母材ガラス20とが、シリコン層12を介して密着する。これにより、可視光透過部8と赤外光透過部7とを接合する第一接合部11が形成され、気密性が確保される。
【0087】
組立工程では、基材4と枠体5とを接合する第一接合工程と、枠体5と蓋材6とを接合する第二接合工程とを含む。
【0088】
第一接合工程では、基材4の上面4aと枠体5の下面5bとを、レーザ接合、はんだ接合、ガラスフリット接合などの任意の方法により接合する。基材4と枠体5とを一体品で構成する場合、第一接合工程は省略される。
【0089】
第二接合工程では、枠体5の上面5aと蓋材6の下面6bとを接合する。詳細には、枠体5の上面5aと蓋材6の赤外光透過部7の下面7bとは、赤外光透過部7側から順に、シリコン層14と、メタライズ層15と、はんだ層16とを含む第二接合部13を形成することにより接合する(
図2を参照)。枠体5の上面5aと蓋材6の可視光透過部8の下面8bとは、可視光透過部8側から順に、メタライズ層18と、はんだ層19とを含む第三接合部17を形成することにより接合する(
図2を参照)。シリコン層14及びメタライズ層15,18は、蒸着やスパッタなどにより形成される。はんだ層16,19は、はんだ材料を溶融させ、その後固化することにより形成される。
【0090】
図5~
図11は、本発明の他の実施形態に係る蓋材6をそれぞれ示す。蓋材6の赤外光透過部7は、蓋材6のみの状態(枠体5と接合する前の状態)で、(1)可視光透過部8の保持部8cに対する赤外光透過部7の厚み方向の一方側への移動を規制する抜け止め部を有するもの(第一~三実施形態)、(2)可視光透過部8の保持部8cに対する赤外光透過部7の厚み方向の両側への移動を規制する抜け止め部を有するもの(第四~七実施形態)、(3)抜け止め部を有さないもの(第八実施形態)に大別される。
【0091】
図5に示すように、第二実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部31が、赤外光透過部7の外周面7cの上下方向(厚み方向)の全域に設けられている。抜け止め部31は、枠体5側に移行するに連れて、外径側に漸次拡径するテーパ部から構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、抜け止め部31と上下方向で係合する係合部32を備える。赤外光透過部7の抜け止め部31と、可視光透過部8の係合部32とを係合させることにより、赤外光透過部7の上方側(枠体5と反対側)への移動が規制される。抜け止め部31の少なくとも一部を枠体5の上面5aと重なるようにすれば、赤外光透過部7の下方側(枠体5側)への移動も規制される。
【0092】
図6に示すように、第三実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部41が、赤外光透過部7の外周面7cの下端部にのみ設けられている。抜け止め部9は、赤外光透過部7の外周面7cのうち抜け止め部41が形成されていない部分(小径部)の径よりも大きい一定径をなす大径部で構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、抜け止め部41と上下方向で係合する係合部42を備える。赤外光透過部7の抜け止め部41と、可視光透過部8の係合部42とを係合させることにより、赤外光透過部7の上方側への移動が規制される。抜け止め部41の少なくとも一部を枠体5の上面5aと重なるようにすれば、赤外光透過部7の下方側への移動も規制される。
【0093】
図7に示すように、第四実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部51,52が、赤外光透過部7の外周面7cの下端部及び上端部に設けられている。赤外光透過部7の外周面7cの下端部に設けられた第一抜け止め部51は、下方側に移行するに連れて、外径側に漸次拡径するテーパ部から構成されている。赤外光透過部7の外周面7cの上端部に設けられた第二抜け止め部52は、上方側に移行するに連れて、外径側に漸次拡径するテーパ部から構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、第一抜け止め部51と上下方向で係合する第一係合部53と、第二抜け止め部52と上下方向で係合する第二係合部54とを備える。赤外光透過部7の抜け止め部51,52と、可視光透過部8の係合部53,54とを係合させることにより、赤外光透過部7の上下方向の両側への移動が規制される。したがって、赤外光透過部7の下面7bが、枠体5の上面5aと重なっていなくても、赤外光透過部7の移動が確実に規制される。
【0094】
図8に示すように、第五実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部61,62が、赤外光透過部7の外周面7cの下端部及び上端部に設けられている。赤外光透過部7の外周面7cの下端部に設けられた第一抜け止め部61は、赤外光透過部7の外周面7cのうち抜け止め部61,62が形成されていない部分(小径部)の径よりも大きい一定径をなす大径部で構成されている。同様に、赤外光透過部7の外周面7cの上端部に設けられた第二抜け止め部62は、赤外光透過部7の外周面7cのうち抜け止め部61,62が形成されていない部分(小径部)の径よりも大きい一定径をなす大径部で構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、第一抜け止め部61と上下方向で係合する第一係合部63と、第二抜け止め部62と上下方向で係合する第二係合部64とを備える。赤外光透過部7の抜け止め部61,62と、可視光透過部8の係合部63,64とを係合させることにより、赤外光透過部7の上下方向の両側への移動が規制される。したがって、赤外光透過部7の下面7bが、枠体5の上面5aと重なっていなくても、赤外光透過部7の移動が確実に規制される。
【0095】
図9に示すように、第六実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部71,72が、赤外光透過部7の外周面7cの下端部及び上端部に設けられている。赤外光透過部7の外周面7cの下端部に設けられた第一抜け止め部71は、枠体5側に移行するに連れて、内径側に漸次縮径するテーパ部から構成されている。赤外光透過部7の外周面7cの上端部に設けられた第二抜け止め部72は、枠体5と反対側に移行するに連れて、内径側に漸次縮径するテーパ部から構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、第一抜け止め部71と上下方向で係合する第一係合部73と、第二抜け止め部72と上下方向で係合する第二係合部74とを備える。赤外光透過部7の抜け止め部71,72と、可視光透過部8の係合部73,74とを係合させることにより、赤外光透過部7の上下方向の両側への移動が規制される。したがって、赤外光透過部7の下面7bが、枠体5の上面5aと重なっていなくても、赤外光透過部7の移動が確実に規制される。
【0096】
図10に示すように、第七実施形態に係る蓋材6では、抜け止め部81が、赤外光透過部7の外周面7cの上下方向の中間部に設けられている。抜け止め部81は、赤外光透過部7の外周面7cのうち抜け止め部81が形成されていない部分(小径部)の径よりも大きい一定径をなす大径部で構成されている。可視光透過部8は、保持部8cにおいて、抜け止め部81と上下方向で係合する係合部82を備える。赤外光透過部7の抜け止め部81と、可視光透過部8の係合部82とを係合させることにより、赤外光透過部7の上下方向の両側への移動が規制される。したがって、赤外光透過部7の下面7bが、枠体5の上面5aと重なっていなくても、赤外光透過部7の移動が確実に規制される。
【0097】
図11に示すように、第八実施形態に係る蓋材6では、赤外光透過部7の外周面7cは、上下方向の全域で一定径をなす。つまり、赤外光透過部7は、抜け止め部を有していない。この場合でも、赤外光透過部7の下面7bの一部を、枠体5の上面5aと重なるようにすれば、赤外光透過部7の下方側への移動は規制される。
【0098】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0099】
上記の実施形態において、可視光透過部8の保持部8cは、非貫通部で構成されていてもよい。つまり、可視光透過部8の保持部8cは、底付きの凹部であってもよい。このようにすれば、赤外光透過部7が保持部8cから脱落し難くなる。ただし、赤外光Lの透過率を上げる観点からは、可視光透過部8の保持部8cを貫通部から構成し、赤外光Lの透過領域に可視光透過部8を位置させないことが好ましい。
【0100】
上記の実施形態において、赤外光透過部7の下面7bの一部が、枠体5の上面5aと重なっていなくてもよい。ただし、高い気密性を確保する観点からは、第二接合部13を形成するために、赤外光透過部7の下面7bの一部が、枠体5の上面5aと重なっていることが好ましい。
【0101】
上記の実施形態において、第二接合部13及び第三接合部17の気密性が高ければ、第一接合部11の気密性が低くても、気密パッケージ3内の気密性は確保できる。したがって、抜け止め部9等の構成により、赤外光透過部7を可視光透過部8の保持部8cに確実に保持できる構成であれば、第一接合部11のシリコン層12は省略してもよい。ただし、気密パッケージ3の気密性を高める観点や、良好な組立性を維持する観点からは、第一接合部11にはシリコン層12を設けることが好ましい。
【0102】
また、本発明は、下記の(1)~(7)の発明も含む。
【0103】
(1) 赤外光透過ガラスと、他部材とをシリコン層を介して接合したことを特徴とする接合構造。
(2) 上記の(1)の構成において、前記赤外光透過ガラスが、カルコゲナイドガラスである接合構造。
(3) 上記の(2)の構成において、前記カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、S 50~80%、Sb 0~40%(ただし0%を含まない)、Ge 0~18%(ただし0%を含まない)、Sn 0~20%、Bi 0~20%を含有する接合構造。
(4) 上記の(2)の構成において、前記カルコゲナイドガラスは、モル百分率で、Te 4~80%、Ge 0~50%(ただし0%を含まない)、Ga 0~20%を含有する接合構造。
(5) 上記の(1)~(4)のいずれか1つの構成において、前記他部材が、ガラスを含む接合構造。
(6) 上記の(1)~(5)のいずれか1つの構成において、前記他部材が、メタライズ層を含む接合構造。
(7) 上記の(6)の構成において、前記他部材は、前記メタライズ層に形成されたはんだ層をさらに含む接合構造。
【0104】
赤外光透過ガラスは、他部材との密着性や接合性が悪い場合が多いが、上記(1)~(7)のようにシリコン層を介在させることで、赤外光透過ガラスと他部材とを強固に接合できる。
【符号の説明】
【0105】
1 電子装置
2 電子部品
3 気密パッケージ
4 基材
4a 上面(主面)
4b 下面
5 枠体
5a 上面
5b 下面
5c 貫通部
6 蓋材
6a 上面
6b 下面
7 赤外光透過部
7a 上面
7b 下面
7c 外周面
8 可視光透過部
8a 上面
8b 下面
8c 保持部
9 抜け止め部
10 係合部
11 第一接合部
12 シリコン層
13 第二接合部
14 シリコン層
15 メタライズ層
16 はんだ層
17 第三接合部
18 メタライズ層
19 はんだ層
20 母材ガラス
20a 上面
20b 下面
20c 外周面
21 成形型
22 第一成形型
22a 成形面
23 第二成形型
23a 成形面
31 抜け止め部
32 係合部
41 抜け止め部
42 係合部
51 第一抜け止め部
52 第二抜け止め部
53 第一係合部
54 第二係合部
61 第一抜け止め部
62 第二抜け止め部
63 第一係合部
64 第二係合部
71 第一抜け止め部
72 第二抜け止め部
73 第一係合部
74 第二係合部
81 抜け止め部
82 係合部
L 赤外光