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  • 特開-冷蔵庫 図1
  • 特開-冷蔵庫 図2A
  • 特開-冷蔵庫 図2B
  • 特開-冷蔵庫 図3A
  • 特開-冷蔵庫 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084868
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/04 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
F25D23/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199231
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】穂高 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 拓也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】津久井 直登
(72)【発明者】
【氏名】小松 肇
(72)【発明者】
【氏名】関根 幸恵
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数列に収納物が収納されていても奥側の収納物を容易に出し入れできるとともに、収納容量が減ることのない収納ラックが回転扉に取り付けられた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫2は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、冷蔵庫本体の前面側に配置され、貯蔵室を開閉する回転扉6と、回転扉6の裏面6Aに取り付けられ、上面が開口した収納ラック10と、を備え、回転扉6の裏面6Aに近い側を奥側、裏面6Aから離れた側を手前側とすると、収納ラック10が、裏面6Aに取り付けられた固定ラック14と、固定ラック14よりも手前側に配置され、固定ラック14に回転自在に取り付けられたチルトラック12とから構成され、チルトラック12が、チルトラック12の下側に位置する略水平な軸を回転軸として、収納位置と、チルトラック12の上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面側に配置され、前記貯蔵室を開閉する回転扉と、
前記回転扉の裏面に取り付けられ、上面が開口した収納ラックと、
を備え、
前記回転扉の前記裏面に近い側を奥側、前記裏面から離れた側を手前側とすると、
前記収納ラックが、前記裏面に取り付けられた固定ラックと、前記固定ラックよりも手前側に配置され、前記固定ラックに回転自在に取り付けられたチルトラックとから構成され、
前記チルトラックが、前記チルトラックの下側に位置する略水平な軸を回転軸として、収納位置と、前記チルトラックの上側が前記収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転することを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記固定ラックの底面が略水平な状態で固定され、
前記収納位置で、前記チルトラックの底面が略水平な状態にあり、
前記チルト位置で、前記チルトラックの前記底面が、その奥側が高くなり手前側が低くなるように傾斜することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記固定ラック及び前記チルトラックの一方に弧状に延びたリンク穴またはリンク溝が設けられ、他方に前記リンク穴または前記リンク溝に挿入され、前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿って移動可能な凸部が設けられてリンク機構が構成され、
前記収納位置で、前記凸部が前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿った方向の一方の端部に位置し、前記凸部が前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿った方向の他方の端部に位置することを特徴とする請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記チルトラックを収納位置側に付勢するバネを更に備え、
前記バネが、収納物が前記チルトラックに収納された状態で前記チルトラックが前記収納位置で保持されるとともに、使用者の力で前記チルトラックを前記収納位置から前記チルト位置まで回転させることができる範囲のバネ定数を有することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記収納位置及び前記チルト位置の間で前記チルトラックが略30度回転することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納ラックが取り付けられた回転扉を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの冷蔵庫では、飲料容器をはじめとする収納物を収納可能な収納ラックが取り付けられた回転扉を備えている。そのような冷蔵庫の中には、回転扉の最下段に飲料容器を収納する収納ラックを備え、その上方に幅方向に伸縮可能なスライド機構を有する収納ラックを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷蔵庫では、下側の収納ラックに背の高い飲料容器を収納するとき、上側の収納ラックを縮めて、下側の収納ラックの上方を開放することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-40787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷蔵庫では、収納ラック内で、手前側及び奥側の複数の列に収納物を収納する場合、前側の列に収納物があると、奥側の収納物の出し入れが困難になる問題が生じる。また、伸縮可能なラックを縮めた場合には、収納量が減る問題も生じる。
【0005】
従って、本発明の目的は、複数列に収納物が収納されていても奥側の収納物を容易に出し入れできるとともに、収納容量が減ることのない収納ラックが回転扉に取り付けられた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵庫は、
貯蔵室を有する冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の前面側に配置され、前記貯蔵室を開閉する回転扉と、
前記回転扉の裏面に取り付けられ、上面が開口した収納ラックと、
を備え、
前記回転扉の前記裏面に近い側を奥側、前記裏面から離れた側を手前側とすると、
前記収納ラックが、前記裏面に取り付けられた固定ラックと、前記固定ラックよりも手前側に配置され、前記固定ラックに回転自在に取り付けられたチルトラックとから構成され、
前記チルトラックが、前記チルトラックの下側に位置する略水平な軸を回転軸として、収納位置と、前記チルトラックの上側が前記収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、チルトラックが、収納位置と、チルトラックの上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転する。チルトラックの上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置では、収納ラックの上側の開口が手前側に広がるので、複数列に収納物が収納されても、固定ラックに収納された奥側の収納物を容易に出し入れできる。また、チルトラックを収納位置に戻せば、通常と変わらない状態で収納物を複数列で収納でき、回転扉を閉じた状態でも、チルトラックが冷蔵庫本体の他の部材と干渉することもない。これにより、複数列に収納物が収納されていても奥側の収納物を容易に出し入れできるとともに、収納容量が減ることのない収納ラックを回転扉に備えた冷蔵庫を提供することができる。
【0008】
また、本発明の冷蔵庫は、
前記固定ラックの底面が略水平な状態で固定され、
前記収納位置で、前記チルトラックの底面が略水平な状態にあり、
前記チルト位置で、前記チルトラックの前記底面が、その奥側が高くなり手前側が低くなるように傾斜することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、チルト位置で、チルトラックの底面の奥側が高くなり、手前側が低くなるように傾斜する。チルトラックに収納されている収納物は、底面の傾斜に伴い、上部が手前側に倒れるように傾斜する。これにより、固定ラックの手前側上方の空間が大きく開放され、固定ラックに収納された奥側の収納物の出し入れがより容易になる。
【0010】
また、本発明の冷蔵庫は、
前記固定ラック及び前記チルトラックの一方に弧状に延びたリンク穴またはリンク溝が設けられ、他方に前記リンク穴または前記リンク溝に挿入され、前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿って移動可能な凸部が設けられてリンク機構が構成され、
前記収納位置で、前記凸部が前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿った方向の一方の端部に位置し、前記凸部が前記リンク穴または前記リンク溝の弧に沿った方向の他方の端部に位置することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、固定ラック及びチルトラックの間に設けられたリンク機構により、チルトラックをスムーズに回転させるとともに、確実に収納位置及びチルト位置で保持することができる。
【0012】
また、本発明の冷蔵庫は、
前記チルトラックを収納位置側に付勢するバネを更に備え、
前記バネが、収納物が前記チルトラックに収納された状態で前記チルトラックが前記収納位置で保持されるとともに、使用者の力で前記チルトラックを前記収納位置から前記チルト位置まで回転させることができる範囲のバネ定数を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、バネが適度な付勢力を発揮することにより、収納物を確実に収納位置に保持するとともに、使用者が容易にチルトラックを手前側のチルト位置まで引き出すことができる。
【0014】
また、本発明の冷蔵庫は、
前記収納位置及び前記チルト位置の間で前記チルトラックが略30度回転することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、収納位置からチルト位置までチルトラックが略30度回転するので、収納ラックの上方を大きく開放することができ、容易に奥側の収納物の出し入れを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明においては、複数列に収納物が収納されていても固定ラックに収納された奥側の収納物を容易に出し入れできるとともに、収納容量が減ることのない収納ラックが回転扉に取り付けられた冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫の概要を示す斜視図である。
図2A図1に示す冷蔵庫の回転扉を裏面側から見た斜視図であって、チルトラックが収納位置にある状態を示す図である。
図2B図1に示す冷蔵庫の回転扉を裏面側から見た斜視図であって、チルトラックがチルト位置にある状態を示す図である。
図3A図2Aの矢視A-Aを模式的に示す側面図である。
図3B図2Bの矢視B-BAを模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
以下においては、冷蔵庫が水平面に載置され、冷蔵庫の奥行き方向を前後方向とし、冷蔵庫の幅方向を左右方向とする。前後方向において、冷蔵庫の扉側を前側とし、奥側を後側として記載する。
【0019】
(1つの実施形態に係る冷蔵庫)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の概要を示す斜視図である。冷蔵庫2は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体4と、冷蔵庫本体4の前面側に配置され、貯蔵室を開閉する回転扉6とを備える。貯蔵室としては、例えば、冷蔵室の場合もあり得るし、冷凍室の場合もあり得る。
【0020】
(1つの実施形態に係る収納ラックを有する回転扉)
図2A及び図2Bは、図1に示す冷蔵庫2の回転扉6を裏面6A側から見た斜視図であって、図2Aは、チルトラック12が収納位置にある状態を示し、図2Bは、チルトラック12がチルト位置にある状態を示す。図3Aは、図2Aの矢視A-Aを模式的に示す側面図である。図3Bは、図2Bの矢視B-Bを模式的に示す側面図である。
以下の収納ラック10の説明では、使用者が回転扉6の裏面6Aに向いた場合を想定して、回転扉6の裏面6Aに近い側を奥側、裏面6Aから離れた側を手前側として記載する。
【0021】
次に、図2Aから図3Bを参照しながら、本発明の1つの実施形態に係る収納ラック10の説明を行う。収納ラック10は、回転扉6の裏面6Aに取り付けられ、上面が開口していて、飲料容器をはじめとする収納物を出し入れできるようになっている。収納ラック10は、チルトラック12及び固定ラック14から構成される。固定ラック14は、回転扉6の裏面6Aに取り付けられ、位置が固定されている。一方、チルトラック12は、固定ラック14よりも手前側に配置され、固定ラック14に回転自在に取り付けられている。
【0022】
更に詳細に述べれば、チルトラック12は概ね四角形の底板12Cを有する。底板12Cの対向する2辺のうち、手前側の辺に前板12Aが立設するように繋がっており、奥側の辺に仕切板16が立設するように繋がっている。底板12Cのもう一組の左右に対向する2辺には、それぞれ側板12Bが立設するように繋っている。前板12A、側板12B及び仕切板16もそれぞれ端部で繋がっている。例えば、チルトラック12を、樹脂材料等で一体的に形成することができる。これにより、前板12Aと、両側の側板12Bと、仕切板16と、底板12Cとで囲まれ、上面が開口したチルト収納領域18Aが形成されている。ただし、仕切板16を有さない場合もあり得る。
【0023】
固定ラック14は、本体部14Aと、ブラケット部14Bとから構成される。本体部14Aは、略四角形の底板14A2を有する。底板14A2の左右の対向する2辺に、それぞれ側板14A1が立設するように繋っている。底板12Cのもう一組の対向する2辺には板部材が存在せず開口となっている。また、両側の側板14A1及び底板14A2の奥側の端部が、回転扉6の裏面6Aに接するような状態で取り付けられている。
【0024】
ブラケット部14Bは、本体部14Aの両側の側板14A1の手前側の端部から、更に手前側に延びるように形成されている。本体部14A及びブラケット部14Bから構成される固定ラック14も、樹脂材料等で一体的に形成することができる。これにより、両側の側板14A1及びブラケット部14Bと、回転扉6の裏面6Aと、底板14A2とで囲まれ、上面が開口した固定収納領域18Bが形成されている。それぞれのブラケット部14Bは、僅かな隙間を空けて、チルトラック12の側板12Bの外側に重なるように配置されている。よって、固定収納領域18Bの手前側の領域内に、チルトラック12の奥側の領域が回転移動可能な状態で配置されていることになる。
【0025】
<回転機構>
本実施形態では、ブラケット部14Bの手前側の下側に、略円形の軸受穴部22が設けられている。チルトラック12の側板12Bの奥側の下側に、略円筒形状の突起部24が設けられている。突起部24は、軸受穴部22に挿入されており、これで回転機構20が構成されている。回転機構20により、チルトラック12は、固定ラック14(ブラケット部14B)に回転自在に取り付けられている。略円筒形状の突起部24の中心軸や両側の突起部24を結ぶ仮想線で示される回転軸は略水平であって、回転扉6の裏面6Aに対して略平行な方向に延びている。
【0026】
これにより、チルトラック12は、チルトラック12の下側に位置する略水平な軸を回転軸として、図2A及び図3Aに示すような収納位置と、図2B及び図3Bに示すような、チルトラック12の上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転できるようになっている。別の表現をすれば、
-チルトラック12が、収納位置と、チルトラックの上側が収納位置よりも回転扉6の裏面6Aから離れたチルト位置の間を回転できる、または、
-チルトラック12が、収納位置と、チルトラック12の前面12A1が収納位置よりも手前側に倒れ込んだ(傾斜した)チルト位置の間を回転できる、
と記載することもできる。
【0027】
収納位置における回転扉6の裏面6Aからチルトラック12の前板12Aの上端までの距離をL1とし、チルト位置における回転扉6の裏面6Aからチルトラック12の前板12Aの上端までの距離をL2とすると、L1<L2の関係を有する。
【0028】
例えば、収納位置で、チルトラック12の側板12Bの奥側の端部が固定ラック14に当接するようにすることで、チルトラック12を収納位置で保持することができる。同様に、例えば、チルト位置で、チルトラック12の底板12Cの奥側の端部が固定ラック14に当接するようにすることで、チルトラック12をチルト位置で保持することができる。
【0029】
何れの場合も、回転機構20において、軸受穴部22及び突起部24の間に若干の摩擦を持たせることにより、より確実にチルトラック12の位置を保持することができる。若干の摩擦を持たせた場合でも、使用者がチルトラック12を手前側に引くまたは奥側に押すことにより、容易にチルトラック12を回転移動させることができる。また、チルトラック12の位置を保持するために、後述するようなリンク機構を用いることもできる。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫2は、貯蔵室を有する冷蔵庫本体4と、冷蔵庫本体4の前面側に配置され、貯蔵室を開閉する回転扉6と、回転扉6の裏面6Aに取り付けられ、上面が開口した収納ラック10と、を備え、回転扉6の裏面6Aに近い側を奥側、裏面6Aから離れた側を手前側とすると、収納ラック10が、裏面6Aに取り付けられた固定ラック14と、固定ラック14よりも手前側に配置され、固定ラック14に回転自在に取り付けられたチルトラック12とから構成され、チルトラック12が、チルトラック12の下側に位置する略水平な軸24を回転軸として、収納位置と、チルトラック12の上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置の間を回転する。
【0031】
これにより、チルトラック12の上側が収納位置よりも手前側に移動したチルト位置では、収納ラック10の上側の開口が手前側に広がる(L2>L1)。よって、複数列に収納物が収納されても、固定ラック14に収納された奥側の収納物を容易に出し入れできる。また、チルトラック12を収納位置に戻せば、通常と変わらない状態で収納物を複数列で収納でき、回転扉6を閉じた状態でも、チルトラック12が冷蔵庫本体4の他の部材と干渉することがない。
【0032】
これにより、複数列に収納物が収納されていても、固定ラック14に収納された奥側の収納物を容易に出し入れできるとともに、収納容量が減ることのない収納ラック10が回転扉6に取り付けられた冷蔵庫2を提供できる。
【0033】
一体的に形成されたチルトラック12がチルト位置に回転移動するとき、チルトラック12の前面12A1が手前側に倒れ込むだけでなく、側板12B及び底板12Cも同様に傾く。固定ラック14の底板14A2の上面である底面は、常に略水平な状態で固定されている。収納位置では、チルトラック12の底板12Cの上面である底面12C1も略水平な状態にある。よって、収納位置では、チルト収納領域18A及び固定収納領域18Bの両方の底面が略水平な状態になっている。これにより、飲料容器をはじめとする収納物を並んで配置することができる。
【0034】
一方、チルト位置では、チルトラック12の底面12C1は、その奥側が高くなり手前側が低くなるように傾斜する。これにより、チルトラック12に収納されている収納物は、底面12C1の傾斜に伴い、上部が手前側に倒れるように傾斜する。これにより、固定ラック14の手前側上方の空間が大きく開放され、固定ラック14に収納された奥側の収納物の出し入れがより容易になる。
【0035】
<リンク機構>
次に、本実施形態に係る収納ラック10に備えられてリンク機構30の説明を行う。本実施形態では、固定ラック14のブラケット部14Bに弧状に延びたリンク穴32が設けられている。一方、チルトラック12には、リンク穴32に挿入され、リンク穴32の弧に沿って移動可能な凸部34が設けられている。凸部34は、略円筒形状に形成することができる。リンク穴32及び凸部34によりリンク機構30が構成されている。これにより、チルトラック12の回転移動に伴って、凸部34がリンク穴32の弧に沿って、リンク穴32内面と干渉することなくスムーズに移動する。従って、チルトラック12をスムーズに回転させることができる。
【0036】
図2Aに示すように、収納位置では、凸部34がリンク穴32の弧に沿った方向の奥側の端部(一方の端部)に位置する。一方、チルト位置では、凸部34がリンク穴32の弧に沿った方向の手前側の端部(他方の端部)に位置するようになっている。このように、凸部34がリンク穴32の内面に当接することにより、チルトラック12を収納位置及びチルト位置で確実に保持することができる。
【0037】
上記では、ブラケット部14Bの両面に貫通したリンク穴32が設けられているが、これに限られるものではない。例えば、リンク穴32の代わりに、ブラケット部14Bに貫通していないリンク溝を設けることもできる。また、上記では、ブラケット部14B側にリンク穴(リンク溝)32が設けられ、チルトラック12側に凸部34が設けられているが、これに限られるものではない。例えば、ブラケット部14B側に凸部が設けられ、チルトラック12側にリンク穴(リンク溝)が設けられる場合もあり得る。
【0038】
以上のように、本実施形態では、固定ラック14及びチルトラック12の一方に弧状に延びたリンク穴32またはリンク溝が設けられ、他方にリンク穴32または前記リンク溝に挿入され、リンク穴32またはリンク溝の弧に沿って移動可能な凸部34が設けられてリンク機構30が構成され、収納位置で、凸部34がリンク穴32またはリンク溝の弧に沿った方向の一方の端部に位置し、凸部34がリンク穴32またはリンク溝の弧に沿った方向の他方の端部に位置するようになっている。
【0039】
このような固定ラック14及びチルトラック12の間に設けられたリンク機構30により、チルトラック12をスムーズに回転させるとともに、確実に収納位置及びチルト位置で保持することができる。
【0040】
本実施形態では、収納ラック10の収納位置及びチルト位置の間の回転角度θ(図2B参照)を略30度回転とすることができる。このように、収納位置からチルト位置までチルトラック12が略30度回転する場合には、収納ラック10の上方を大きく開放することができ、容易に固定ラック14に収納された奥側の収納物の出し入れを行うことができる。
【0041】
<付勢機構>
本実施形態では、付勢機構として、チルトラック12を収納位置側に付勢する引張バネ40を備える。更に詳細に述べれば、引張バネ40は、固定側端部40Aで固定ラック14のブラケット部14Bに取り付けられ、チルト側端部40Bでチルトラック12の側板12Bに取り付けられている。チルトラック12が収納位置にあるとき、引張バネ40は縮んだ状態にある。チルトラック12が収納位置からチルト位置の方へ回転すると、引張バネ40は徐々に伸ばされていく。このときの引張バネ40が縮もうとするバネ力により、チルトラック12を収納位置側に付勢することができる。
【0042】
引張バネ40の適正な付勢力を考慮すると以下のようになる。
引張バネ40のバネ定数が小さすぎると、チルトラック12に収納された収納物の重みで、チルトラック12が収納位置からチルト位置側へ回転して、収納位置が保持できない虞がある。一方、引張バネ40のバネ定数が大きすぎると、使用者がチルトラック12を手前に引いて、チルトラック12を収納位置からチルト位置へ移動させるのが困難になる虞がある。
【0043】
そこで、引張バネ40が適正な付勢力を有するため、収納物がチルトラック12に収納された状態でチルトラック12が収納位置で保持されるとともに、使用者の力でチルトラック12を収納位置からチルト位置まで回転させることができる範囲のバネ定数を設定することが重要である。
【0044】
上記では、チルトラック12を収納位置側に付勢するのに引張バネ40を用いたが、これに限られるものではない。例えば、回転機構20より下方の位置で圧縮バネを取り付けることにより、チルトラック12を収納位置側に付勢することもできる。また、回転機構20に捻りバネを取り付けることにより、チルトラック12を収納位置側に付勢することもできる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る冷蔵庫2では、チルトラック12を収納位置側に付勢するバネ40を更に備え、バネ40が、収納物がチルトラック12に収納された状態でチルトラックが収納位置で保持されるとともに、使用者の力でチルトラック12を収納位置からチルト位置まで回転させることができる範囲のバネ定数を有するようになっている。
【0046】
このように、バネ40が適度な付勢力を発揮することにより、収納物を確実に収納位置に保持するとともに、使用者が容易にチルトラック12を手前側のチルト位置まで引き出すことができる。
【0047】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0048】
2 冷蔵庫
4 冷蔵庫本体
6 回転扉
6A 裏面
10 収納ラック
12 チルトラック
12A 前板
12A1 前面
12B 側板
12C 底板
12C1 底面
14 固定ラック
14A 本体部
14A1 側板
14A2 底板
14B ブラケット部
16 仕切板
18A チルト収納領域
18B 固定収納領域
20 回転機構
22 軸受穴部
24 突起部
30 リンク機構
32 リンク穴
34 凸部
40 引張バネ
40A 固定側端部
40B チルト側端部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B