(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084884
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/103 20210101AFI20230613BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230613BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20230613BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20230613BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/0585
H01M50/105
H01M10/0562
H01M50/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199252
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉生 剛
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA04
5H011AA09
5H011CC06
5H011CC10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL04
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ03
5H029CJ05
5H029DJ02
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】ケースによって発電要素を好ましく加圧できる固体電池を提供する。
【解決手段】開示される固体電池100は、発電要素112を含む積層体110を含む被収容物101と、被収容物101を収容する金属製のケース(例えば筒状体130)とを含む。積層体110は、対向する2つの主面110mを含む。ケースは、積層体110を挟むように対向する2つの板状部130mを含む。2つの板状部130mから選択される少なくとも1つの板状部は、ケースが被収容物101を収容していない非収容状態においてケースの内側に向かって凸の形状を有するように曲がっている曲がり部130mcを含む。ケースは、2つの板状部130mに対して、2つの板状部130mを結ぶ方向にバネの力を生じる形状を有する。ケースが被収容物101を収容している収容状態において、2つの板状部130mによって2つの主面110mが加圧されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池であって、
発電要素を含む積層体を含む被収容物と、前記被収容物を収容する金属製のケースとを含み、
前記発電要素は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、
前記積層体は、対向する2つの主面を含み、
前記ケースは、前記積層体を挟むように対向する2つの板状部を含み、
前記2つの板状部から選択される少なくとも1つの板状部は、前記ケースが前記被収容物を収容していない非収容状態において前記ケースの内側に向かって凸の形状を有するように曲がっている曲がり部を含み、
前記ケースは、前記2つの板状部に対して、前記2つの板状部を結ぶ方向にバネの力を生じる形状を有し、
前記ケースが前記被収容物を収容している収容状態において、前記2つの板状部によって前記2つの主面が加圧されている、固体電池。
【請求項2】
前記非収容状態において、前記曲がり部は、前記ケースの内側に向かって凸の形状を有する畝状に延びている、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記非収容状態において、前記少なくとも1つの板状部は、畝状に延びる前記曲がり部と、前記曲がり部を挟むように延びる2つの平坦部とを含む、請求項2に記載の固体電池。
【請求項4】
前記非収容状態において、前記ケースのうち前記2つの板状部を結ぶ2つの領域のそれぞれに存在するバネ部は、前記ケースの内側または外側に向かって凸の形状を有するように曲がっている、請求項1~3のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項5】
前記収容状態における前記少なくとも1つの板状部は、前記非収容状態における前記少なくとも1つの板状部よりも平らであり、
前記収容状態における前記バネ部は、前記非収容状態における前記バネ部よりも平らである、請求項4に記載の固体電池。
【請求項6】
前記ケースは、前記2つの板状部と前記2つの領域とを含む筒状体である、請求項4または5に記載の固体電池。
【請求項7】
前記2つの板状部と前記2つの領域との間の境界の断面であって前記筒状体の中心軸が延びる方向に垂直な断面は鋭角を含まない、請求項6に記載の固体電池。
【請求項8】
前記2つの板状部のそれぞれが、前記曲がり部を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項9】
前記正極層、前記負極層、および前記固体電解質層はそれぞれ、液状成分を含まない材料を加圧成形することによって形成された層である、請求項1~8のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項10】
前記被収容物は、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージをさらに含み、
前記積層体は前記パッケージに封入された状態で前記ケースに収容されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の固体電池。
【請求項11】
前記パッケージは、袋状の前記パッケージを形成するために、前記ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部を含み、
前記接合部は、前記2つの主面から選択される少なくとも1つの主面の上に位置するように前記積層体に積層された積層部を含む、請求項10に記載の固体電池。
【請求項12】
固体電池であって、
被収容物と前記被収容物を収容するケースとを含み、
前記被収容物は、発電要素を含む積層体と、前記積層体が封入されたパッケージとを含み、
前記発電要素は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、
前記パッケージは、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージであり、
前記パッケージは、袋状の前記パッケージを形成するために、前記ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部を含み、
前記積層体は、対向する2つの主面を含み、
前記接合部は、前記2つの主面から選択される少なくとも1つの主面の上に位置するように前記積層体に積層された積層部を含み、
前記ケースによって前記積層部が加圧されている、固体電池。
【請求項13】
前記接合部は、前記ラミネートフィルムの表面に存在する樹脂層を熱融着することによって形成されている、請求項12に記載の固体電池。
【請求項14】
前記積層部は、前記少なくとも1つの主面の中央部の上に位置するように、前記積層体に積層されている、請求項13に記載の固体電池。
【請求項15】
前記正極層、前記負極層、および前記固体電解質層はそれぞれ、液状成分を含まない材料を加圧成形することによって形成された層である、請求項12~14のいずれか1項に記載の固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、安全性およびエネルギー密度が高い固体電池が注目されている。固体電池は、正極層、固体電解質層、および負極層を含む発電要素を含む。固体電池は、通常、加圧した状態で用いた方が特性が良いとされる。固体電池を加圧する方法について、従来から提案がなされている。
【0003】
特許文献1(特開2015-95281)は、「車両に搭載される全固体電池の充電システムであって、前記全固体電池を充電する充電部、前記全固体電池に拘束圧を加える加圧部、及び前記拘束圧を制御する圧力制御部、を備え、前記圧力制御部が、充電時の拘束圧が放電時の拘束圧よりも高くなるように、前記加圧部に指示する、充電システム。」を開示している。
【0004】
固体電池の分野では、ラミネートフィルムによって形成されたパッケージに発電要素を封入することも従来から行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的の1つは、ケースによって発電要素を好ましく加圧できる固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面は、固体電池に関する。当該固体電池は、発電要素を含む積層体を含む被収容物と、前記被収容物を収容する金属製のケースとを含み、前記発電要素は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記積層体は、対向する2つの主面を含み、前記ケースは、前記積層体を挟むように対向する2つの板状部を含み、前記2つの板状部から選択される少なくとも1つの板状部は、前記ケースが前記被収容物を収容していない非収容状態において前記ケースの内側に向かって凸の形状を有するように曲がっている曲がり部を含み、前記ケースは、前記2つの板状部に対して、前記2つの板状部を結ぶ方向にバネの力を生じる形状を有し、前記ケースが前記被収容物を収容している収容状態において、前記2つの板状部によって前記2つの主面が加圧されている。
【0008】
本開示の他の一局面は、他の固体電池に関する。当該他の固体電池は、被収容物と前記被収容物を収容するケースとを含み、前記被収容物は、発電要素を含む積層体と、前記積層体が封入されたパッケージとを含み、前記発電要素は、正極層、負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層を含み、前記パッケージは、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージであり、前記パッケージは、袋状の前記パッケージを形成するために、前記ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部を含み、前記積層体は、対向する2つの主面を含み、前記接合部は、前記2つの主面から選択される少なくとも1つの主面の上に位置するように前記積層体に積層された積層部を含み、前記ケースによって前記積層部が加圧されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の固体電池によれば、ケースによって発電要素を好ましく加圧できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の固体電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2A】
図1に示した固体電池を模式的に示す断面図である。
【
図2B】積層体が封入されていないときのケースの形状の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2C】積層体が封入されているときのケースの形状の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】比較例のケースの一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施形態1の固体電池に用いられるケースの他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】実施形態1の固体電池に用いられるケースの他の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図4に示したケースの形状を説明するための断面図である。
【
図7】比較例のケースの一例を用いたときの実験結果を示す面図である。
【
図8】実施形態1のケースの一例を用いたときの実験結果を示す面図である。
【
図9】実施形態2の固体電池の一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図9に示した固体電池の積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図9に示した固体電池の一部を示す上面図である。
【
図12】実施形態2の固体電池の他の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図13】実施形態2の固体電池の他の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図14】実施形態2の固体電池の他の一例の一部を模式的に示す断面図である。
【
図15A】実施形態2の固体電池の製造方法の一例の一工程を模式的に示す図である。
【
図16A】実施形態2の固体電池の製造方法の他の一例の一工程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0012】
この明細書において、固体電池の例には、電解質の構成要素として液状成分を含まない電池が含まれる。例えば、固体電池の例には、電池として機能するために必要な構成要素として液状成分を含まない電池が含まれ、より具体的には、液状成分を含まない電池が含まれる。ここで、「液状成分」とは、室温(25℃)において液状である成分を意味する。固体電池の例には、全固体電池、半固体電池、擬似固体電池、全樹脂電池といった名称で称される電池などが含まれる。これらの中でも、本開示は全固体電池と称される電池に特に適している。そのため、以下の説明において、特に矛盾が生じない限り、「固体電池」を「全固体電池」と読み替えてもよい。
【0013】
固体電池は発電要素を含む。発電要素は、正極層、固体電解質層、および負極層が積層された構造を有する。以下では、正極層、固体電解質層、および負極層が積層されている方向を、「積層方向」と称する場合がある。
【0014】
以下では、本開示に係る2種類の固体電池(第1および第2の固体電池)について説明する。第1の固体電池および第2の固体電池をそれぞれ、以下では、「固体電池(S1)」および「固体電池(S2)」と称する場合がある。
【0015】
(第1の固体電池(S1))
固体電池(S1)は、発電要素を含む積層体を含む被収容物と、被収容物を収容する金属製のケースとを含む。当該被収容物および当該積層体をそれぞれ、以下では、「被収容物(Z)」および「積層体(L)」と称する場合がある。
【0016】
発電要素は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む。積層体(L)は、対向する2つの主面を含む。ケースは、積層体(L)を挟むように対向する2つの板状部を含む。2つの板状部から選択される少なくとも1つの板状部は、ケースが被収容物(Z)を収容していない非収容状態においてケースの内側に向かって凸の形状を有するように曲がっている曲がり部を含む。曲がり部を含む少なくとも1つの板状部を、以下では、「板状部(B)」と称する場合がある。ケースは、2つの板状部に対して、2つの板状部を結ぶ方向(以下では「方向MD」と称する場合がある。)にバネの力を生じる形状を有する。ケースが被収容物を収容している収容状態において、2つの板状部によって、積層体(L)の2つの主面が加圧されている。
【0017】
固体電池(S1)のケースは、曲がり部を含む板状部(B)を含み、さらに、2つの板状部を結ぶ方向にバネの力を生じる形状を有する。バネの力を生じる形状をケースが有さない場合、後述するように、ケースの板状部によって積層体(L)の主面を充分に押すことができない。検討した結果、本願発明者は、バネの力が生じる形状をケースが有することによって、板状部によって主面を良好に押すことができることを見出した。本開示は、この新たな知見に基づく。
【0018】
板状部(B)の曲がり部は、ケースの内側に向かって凸の形状を有するように弓状に曲がっている曲がり部(湾曲部)であってもよい。弓状に曲がっている曲がり部を用いることによって、積層体(L)の2つの主面をより均等に加圧しやすくなる。板状部(B)の全体またはほぼ全体が曲がり部(湾曲部)であってもよい。例えば、板状部(B)の全体の面積の60%以上や80%以上が曲がり部(湾曲部)であってもよい。
【0019】
非収容状態において、上記曲がり部は、ケースの内側に向かって凸の形状を有する畝状に延びていてもよい。例えば、ケースが筒状体である場合、筒状体の伸びる方向に沿って曲がり部が畝状に伸びていてもよい。畝状に伸びる曲がり部は、畝状に伸びる湾曲部であってもよい。
【0020】
非収容状態において、少なくとも1つの板状部(板状部(B))は、ケースの内側に向かって凸の形状を有する畝状に延びる曲がり部と、当該曲がり部を挟むように延びる2つの平坦部とを含んでもよい。
【0021】
非収容状態において、ケースのうち2つの板状部を結ぶ2つの領域のそれぞれに存在するバネ部は、ケースの内側または外側に向かって凸の形状を有するように曲がっていてもよい。バネ部がケースの内側に向かって凸の形状を有するように曲がっている場合、板状部による加圧を特に均一にすることが可能である。
【0022】
バネ部は、ケースの内側または外側に向かって凸の形状を有する畝状に伸びていてもよい。バネ部は、屈曲していてもよいし、弓状に曲がっていてもよい(すなわち湾曲していてもよい)。
【0023】
収容状態における少なくとも1つの板状部(板状部(B))は、非収容状態における板状部(B)よりも平らであってもよく、且つ、収容状態におけるバネ部は、非収容状態におけるバネ部よりも平らであってもよい。この構成によれば、板状部(B)によって、特に効果的に積層体(L)の主面を加圧できる。
【0024】
ケースは、2つの板状部と上記2つの領域とを含む筒状体であってもよい。矛盾がない限り、この明細書において、ケースを筒状体と読み替えてもよい。以下では、ケースのうち、2つの板状部を結ぶ2つの領域に存在する部分を「側壁部」と称する場合がある。また、以下では、側壁部と板状部との境界を、コーナー部と称する場合がある。
【0025】
なお、1つの側壁部は、連続していなくてもよい。例えば、1つの側壁部は、2つの板状部を結ぶ複数のバネ部で構成されていてもよい。当該複数のバネ部の間には、スリット状の隙間が存在してもよい。
【0026】
上述したように、ケースは、バネの力を生じる形状を有する。すなわち、側壁部は、方向MDに沿って伸縮したときに、元の形状に戻ろうとする力を生じる。具体的には、側壁部は、方向MDに沿って伸びたときに方向MDに沿って縮む力を生じ、方向MDに沿って縮んだときに方向MDに沿って伸びる力を生じるように曲がっている。
【0027】
一例では、2つの板状部と2つの領域(側壁部)との間の境界の断面であって筒状体(ケース)の中心軸が延びる方向に垂直な断面は鋭角を含まない。換言すれば、板状部と側壁部との間のコーナー部は、丸められていてもよい。あるいは、当該コーナー部は丸められていなくてもよい。
【0028】
2つの板状部のそれぞれは、上記曲がり部を含んでもよい。この構成によれば、積層体(L)の主面をより効果的に加圧できる。
【0029】
正極層、負極層、および固体電解質層はそれぞれ、液状成分を含まない材料を加圧成形することによって形成された層であってもよい。このような方法で形成された発電要素を含む固体電池では、高い圧力で発電要素(積層体(L))を加圧しなくても、高い圧力で発電要素を加圧したときと比較して性能を大きく低下させることなく使用することが可能である。そのため、電池の外部からの加圧なしでケースのみによる加圧のみでも、使用することが可能である。
【0030】
被収容物(Z)は、積層体(L)のみによって構成されてもよいし、他の構成要素を含んでもよい。例えば、被収容物(Z)は、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージをさらに含んでもよい。その場合、積層体(L)は、パッケージに封入された状態でケースに収容される。
【0031】
パッケージは、袋状のパッケージを形成するために、ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部を含んでもよい。当該接合部は、積層体(L)の2つの主面から選択される少なくとも1つの主面の上に位置するように積層体(L)に積層された積層部を含んでもよい。パッケージ(および接合部の配置)については、以下で説明する固体電池(S2)のパッケージ(および接合部の配置)を用いることができる。そのため、重複する説明は省略する。
【0032】
積層体(L)は、上記2つの主面を結ぶ側面を含みうる。積層体(L)は、上記2つの主面を結ぶ側面であって互いに対向する2つの側面を含んでもよい。ケースの2つのバネ部(2つの側壁部)は、積層体(L)の上記2つの側面に対向していてもよい。積層体(L)の側面は、通常は主面に対して垂直であるが、主面に対して垂直でなくてもよい。側面は、通常は平らな面状であるが、段差を有してもよい。例えば、側面は、積層体(L)を構成する層によって形成された段差を有してもよい。
【0033】
積層体(L)の主面の形状の一例は矩形であり、積層体(L)は直方体状であってもよい。あるいは、積層体(L)の主面の形状は、矩形以外の形状であってもよい。例えば、積層体(L)の主面の形状は、台形であってもよく、円弧を含んでもよく、円形であってもよい。積層体(L)が対向する2つの側面を含む場合、当該2つの側面は、平行であってもよいし平行でなくてもよい。積層体(L)の側面は、曲面を含んでもよい。
【0034】
ケースが筒状体である場合、当該筒状体の内部空間の所定の位置における高さを高さH0とする。高さH0は、筒状体が被収容物(Z)を収容していない状態における筒状体の内部空間の高さであって、且つ、2つの板状部を結ぶ方向MDに隣接する2つのコーナー部間の最長距離である。また、筒状体の内部空間の所定の位置における高さを高さH1とする。高さH1は、筒状体が被収容物(Z)を収容している状態における筒状体の内部空間の高さであって、且つ、2つの板状部を結ぶ方向MDに隣接する2つのコーナー部間の最長距離である。また、被収容物(Z)の所定の高さを高さHzとする。高さHzは、筒状体に収容されていない状態の被収容物(Z)の、方向MDにおける高さであって、筒状体の側壁部に対向する側面における最大高さである。
【0035】
固体電池(S1)は、以下の条件(K1)を満たしてもよく、さらに条件(K2)および/または(K3)を満たしてもよい。
(K1)高さH1は、高さH0より大きい。
(K2)高さH0は、高さHz以下である。高さH0は、高さHzより小さくてもよい。
(K3)高さH1は、高さHz以上である。高さH1は、高さHzより大きくてもよい。
【0036】
固体電池(S1)は、H0<Hz≦H1、H0≦Hz<H1、または、H0<Hz<H1を満たしてもよい。これらの構成によれば、積層体(L)を均一に加圧することが容易になる。
【0037】
(第2の固体電池(S2))
固体電池(S2)は、被収容物と被収容物を収容するケースとを含む。被収容物は、発電要素を含む積層体と、積層体が封入されたパッケージとを含む。発電要素は、正極層、負極層、および正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む。上述したように、積層体および被収容物をそれぞれ、「積層体(L)」および「被収容物(Z)」と称する場合がある。積層体(L)および被収容物(Z)について固体電池(S1)で説明した事項は、固体電池(S2)についても適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。
【0038】
パッケージは、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージである。パッケージは、袋状のパッケージを形成するために、ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部を含む。当該接合部を、以下では「接合部(P)」と称する場合がある。積層体(L)は、対向する2つの主面を含む。接合部(P)は、積層体(L)の2つの主面から選択される少なくとも1つの主面の上に位置するように積層体(L)に積層された積層部を含む。そして、ケースによって積層部(L)が加圧されている。
【0039】
この明細書において、1つの要素Aが他の要素Bに積層される形態には、要素Aが他の部材を間に介さずに要素Bの上に配置される形態に加え、要素Aが他の部材を間に挟んで要素Bの上に配置される形態も含まれる。
【0040】
固体電池の使用時に発電要素(積層体(L))を積層方向に加圧することによって、固体電池の特性が向上することが知られている。また、従来から、固体電池の発電要素をパッケージに封入し、さらにそれらをケースに収容することが行われてきた。従来の固体電池では、ケース内の空間の利用率を高めるために、接合部(P)の面積をできるだけ小さくすることが行われてきた。従来の固体電池では、接合部(P)は、例えば、積層体(L)の側面に配置されてきた。
【0041】
これに対して、固体電池(S2)では、接合部(P)の少なくとも一部である積層部を積層体(L)の主面上に配置し、その積層部をケースによって押す。積層部では、ラミネートフィルムが2層以上(例えば3層)積層されている。固体電池(S2)では、発電要素を効率よくケースで加圧することができる。積層体(L)は硬いため、ケースによって積層体(L)を加圧する場合には、加圧力が積層体(L)の一部に集中しやすい。これに対して、積層部を介して積層体(L)を加圧する場合、2層以上のラミネートフィルムの弾性によって加圧力を積層体(L)に、より均等に加えることが可能になる。また、ケースによる加圧が不充分な箇所に積層部を配置することによって、その部分の加圧力を高めることができる。そのため、固体電池(S2)は、高い特性を示す状態で使用することが可能である。
【0042】
接合部(P)は、ラミネートフィルムの表面に存在する樹脂層を熱融着することによって形成されていてもよい。熱融着の条件は、樹脂層の種類に応じて適宜調整すればよい。具体的には、公知のヒートシールで用いられている条件で熱融着を行うことができる。一例では、60~300℃の範囲にある温度で熱融着してもよい。熱融着の条件は、ラミネートフィルムの材料などに応じて選択すればよい。
【0043】
接合部(P)の積層部は、積層体(L)の少なくとも1つの主面の中央部の上に位置するように、積層体(L)に積層されていてもよい。ケースの板状部で積層体(L)の主面を押す場合、板状部が撓むため、主面の中央部を押す力が弱くなりやすい。そのような場合でも、積層部を主面の中央部の上方に配置することによって、積層体(L)の主面を押す力の均一性を高めることができる。積層体(L)が対向する2つの側面を有する場合、積層部は、積層体(L)の主面のうち2つの側面の間の中央部の上に位置するように、積層体(L)に積層されていてもよい。
【0044】
積層体(L)が対向する2つの側面を有する場合、接合部(P)は、積層体(L)の2つの側面にそって形成された第1の接合部と第2の接合部とを含んでもよい。その場合、第1の接合部の少なくとも一部および第2の接合部の少なくとも一部は、積層体(L)に積層されていてもよい。
【0045】
正極層、負極層、および固体電解質層はそれぞれ、液状成分を含まない材料を加圧成形することによって形成された層であってもよい。
【0046】
積層体(L)の主面に積層される積層部の平面形状の面積X2は、積層体(L)の1つの主面の面積X1の10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、90%以上、または100%以上であってもよい。面積X2は、面積X1の100%以下、または90%以下であってもよい。例えば、面積X2は、面積X1の10~100%の範囲や10~90%の範囲にあってもよい。なお、積層部は、積層体(L)の2つの主面の両方の上に積層されてもよい。その場合、面積X2は、面積X1の100%よりも大きくなりうる。面積X2を面積X1の50%以上(例えば70%以上)とすることによって、積層体(L)の主面をより均一に加圧することが可能になる。
【0047】
接合部(P)は、積層体(L)の上記2つの側面にそって形成された第1の接合部と第2の接合部とを含んでもよい。その場合、第1の接合部の少なくとも一部および第2の接合部の少なくとも一部は、積層体(L)に積層されていてもよい。
【0048】
第1および第2の接合部は、積層体(L)の少なくとも一部が配置される凹部を有するように絞り加工された1枚のラミネートフィルムと、他の1枚のラミネートフィルムとを接合することによって形成された接合部であってもよい。当該他の1枚のラミネートフィルムは、平らなラミネートフィルムであってもよいし、積層体(L)の少なくとも一部が配置される凹部を有するように絞り加工されたラミネートフィルムであってもよい。
【0049】
固体電池(S1)および固体電池(S2)によれば、ケースによって発電要素を好ましく加圧することが可能である。そのため、加圧によって特性が向上する発電要素を含む固体電池の特性を向上できる。なお、固体電池(S1)および固体電池(S2)は、ケースによる加圧に加えて、ケースの外部から加圧機構(例えば加圧装置)によって加圧してもよい。
【0050】
(固体電池(S1)および(S2)の構成要素)
本実施形態の固体電池(S1)および(S2)の構成要素の例について以下に説明する。ただし、以下の構成要素は例示であり、他の構成要素を用いてもよい。なお、以下では、全固体電池(特に全固体リチウムイオン電池)の例について主に説明するが、他の固体電池であってもよい。
【0051】
固体電池(S1)および(S2)はそれぞれ、少なくとも1つの発電要素を含む積層体(L)を含む。積層体(L)は、積層された複数の発電要素を含んでもよい。積層体(L)は、発電要素の両側に配置された2つの集電体(正極集電体および負極集電体)を含んでもよい。
【0052】
(ケース)
固体電池(S1)に用いられるケースは、上述したように、特定の構造を有する。固体電池(S2)のケースに限定はなく、固体電池に用いられる公知のケースを用いてもよい。例えば、固体電池(S2)のケースは、金属製の筒状体であってもよく、断面が矩形の筒状体であってもよい。あるいは、固体電池(S2)のケースは、2つの板状部のみが固体電池(S1)の板状部と同じ形状を有し、2つの側壁部は平らな板状であってもよい。あるいは、固体電池(S2)のケースには、固体電池(S1)で用いられるケースを用いてもよい。固体電池(S1)のケースを固体電池(S2)のケースに用いることによって、積層体(L)を特に好ましく加圧できる。
【0053】
加圧性を高める観点から、ケース(例えば筒状体)を構成する金属板には、板バネに用いられている金属板を用いることが好ましい。ケースを構成する金属板の例には、ステンレス鋼板、炭素鋼板、アルミニウム合金板などが含まれる。
【0054】
ケース(例えば筒状体)を構成する金属板の厚さは、材質や求められる加圧性や金属板の材質に応じて選択すればよい。ただし、金属板が薄すぎると加圧性が低下する。ケースを構成する金属板の厚さは、0.10mm以上、または0.15mm以上であってもよく、0.60mm以下、または0.50mm以下であってもよい。加圧性の観点から、金属板の厚さは、0.20mm以上であることが好ましい。
【0055】
ケースが筒状体である場合、当該筒状体は、1枚の金属板で形成されてもよい。例えば、1枚の金属板を筒状にして、2つの端部を溶接してもよい。あるいは、筒状体は、複数の金属板を溶接等で接合することによって形成されてもよい。筒状体の形成方法に特に限定はなく、絞り加工などの公知の金属加工方法によって形成されてもよい。
【0056】
固体電池(S2)のケースの形成方法に限定はなく、固体電池(S1)のケースについて説明した形成方法で形成してもよいし、公知の金属加工方法で形成してもよい。
【0057】
ケースが筒状体である場合、筒状体の両端の開口部は、必要に応じて封じられる。開口部を封じる材料に限定はなく、金属や樹脂を用いてもよい。開口部を金属板で封じる場合、被収容物(Z)を筒状体に収容した後に、溶接などによって開口部を封じてもよい。ただし、固体電池(S1)の場合、バネの力を生じる形状が維持されるように開口部が封じられる。
【0058】
(パッケージ)
パッケージは、ラミネートフィルムを用いて形成される。ラミネートフィルムは、複数の層で形成されたフィルムである。ラミネートフィルムには、ガスなど(ガスや水分など)の透過を抑制し、熱融着が可能な公知のラミネートフィルムを用いてもよい。パッケージは、好ましくは気密に形成される。
【0059】
ガスなどの透過を抑制するために、ラミネートフィルムは金属層(例えばアルミニウム層)を含むことが好ましい。ラミネートフィルムは、通常、一方の表面または両方の表面に、熱融着が可能な樹脂層を含む。そのような樹脂層の例には、ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂などが含まれる。ラミネートフィルムはこれらの層以外の層を含んでもよく、例えば、機械的強度を向上させるための保護層などを含んでもよい。ラミネートフィルムの厚さは、0.05mm~0.50mmの範囲(例えば0.10mm~0.30mmの範囲)にあってもよい。
【0060】
(正極層)
正極層は、正極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、固体電池の正極層に使用される公知の成分が含まれる。正極層におけるリチウムイオン伝導性を高める観点から、正極層は、正極活物質とともに、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質を含んでもよい。通常、正極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0061】
正極活物質には、固体電池の正極活物質として使用できる材料を特に制限なく用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、正極活物質の例には、リチウム含有複合酸化物や、酸化物以外の化合物が含まれる。リチウム含有複合酸化物の例には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、およびその他のリチウム含有複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、など)が含まれる。酸化物以外の化合物の例には、オリビン系化合物(LiMPO4)、硫黄含有化合物(Li2Sなど)などが含まれる。なお、上記式中、Mは遷移金属を示す。正極活物質は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
粉末の正極活物質を用いる場合、正極活物質の平均粒径は、例えば、3μm以上または4μm以上であってもよく、15μm以下または11μm以下であってもよい。この明細書において、平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)である。
【0063】
(負極層)
負極層は、負極活物質を含み、必要に応じて他の成分を含んでもよい。当該他の成分の例には、固体電池の負極層に使用される公知の成分が含まれる。負極層は、負極活物質と、リチウムイオン伝導性を示す固体電解質とを含んでもよい。通常、負極活物質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0064】
負極活物質には、固体電池の負極活物質として使用できる材料を特に制限なく用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、負極活物質には、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出可能な所定の材料(炭素質材料、金属や半金属の単体または合金、あるいは化合物など)を用いることができる。炭素質材料の例には、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛など)、ハードカーボン、非晶質炭素などが含まれる。金属や半金属の単体、合金の例には、リチウム金属や合金、Si単体などが含まれる。化合物の例には、酸化物(チタン酸化物、ケイ素酸化物など)、硫化物、窒化物、水化物、シリサイド(リチウムシリサイドなど)などが挙げられる。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、ケイ素酸化物と炭素質材料とを併用してもよい。負極活物質として、黒鉛粒子と黒鉛粒子を被覆する非晶質炭素とを含む粒子を用いてもよい。
【0065】
粉末の負極活物質を用いる場合、負極活物質の平均粒径は、例えば、3μm以上または4μm以上であってもよく、50μm以下または30μm以下であってもよい。
【0066】
(固体電解質層)
正極と負極との間に介在する固体電解質層は、電荷担体を伝導する固体電解質を含む。通常、固体電解質は、粒子(粉末)の状態で用いられる。
【0067】
固体電解質には、固体電池の固体電解質として使用できる材料を特に制限なく用いることができる。全固体リチウムイオン電池の場合、固体電解質には、リチウムイオン伝導性を有する物質を用いることができる。そのような固体電解質の例には、硫化物(硫化物系固体電解質)、水素化物(水素化物系固体電解質)などの無機固体電解質が含まれる。
【0068】
硫化物の例には、Li2S-SiS2、Li2S-P2S5、Li2S-GeS2、Li2S-B2S3、Li2S-Ga2S3、Li2S-Al2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-Al2S3-P2S5、Li2S-P2S3、Li2S-P2S3-P2S5、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-B2S3(X:I、Br、またはCl)などが含まれる。水素化物の例には、LiBH4-LiI系錯体水素化物およびLiBH4-LiNH2系錯体水素化物などが含まれる。
【0069】
(正極集電体)
発電要素の正極層の外側には、通常、正極集電体が配置される。正極集電体には、金属箔を用いてもよい。正極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、亜鉛、スズ、またはこれらの合金などが含まれる。正極集電体および負極集電体には、必要に応じてリードが接続される。
【0070】
(負極集電体)
発電要素の負極層の外側には、通常、負極集電体が配置される。負極集電体には、金属箔を用いてもよい。負極集電体(例えば金属箔)の材質の例には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、またはこれらの合金などが含まれる。
【0071】
(固体電池(S1)および(S2)の製造方法)
固体電池(S1)および(S2)の製造方法の一例について説明する。なお、以下の製造方法は一例であり、他の製造方法で固体電池(S1)および(S2)を製造してもよい。固体電池(S1)および(S2)で説明した事項は以下の製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する。また、以下の製造方法で説明した事項は、上記の実施形態に適用してもよい。
【0072】
この一例の製造方法は、工程(i)、工程(ii)、および工程(iii)を含む。ただし、固体電池(S1)を製造する場合、工程(ii)は任意の工程である。それらについて以下に説明する。
【0073】
工程(i)は、積層体(L)を形成する工程である。積層体(L)を形成する方法に特に限定はなく、公知の形成方法で形成してもよい。発電要素は、液状成分を含まない材料を用いて形成することが好ましい。そのような形成方法(乾式の形成方法)によって発電要素を形成する工程を含む積層体(L)の形成方法の一例を以下に説明する。
【0074】
工程(i)の一例では、正極層の材料、固体電解質層の材料、および負極層の材料を、所定の順に金属箔(集電体)上に積層した後、さらに集電体(金属箔)を配置する。次に、積層された材料および金属箔をまとめてプレス(本プレス)することによって積層体(L)を形成する。この本プレスによって、金属箔および各層が一体化されて積層体(L)が得られる。本プレスの圧力は、材料や厚さなどに応じて適宜変更すればよく、50MPa以上5000MPa以下(例えば、300MPa以上3000MPa以下)であってもよい。以上のようにして、金属箔(正極集電体)/正極層/固体電解質層/負極層/負極集電体、または、金属箔(負極集電体)/負極層/固体電解質層/正極層/正極集電体という構造を有する積層体(L)が得られる。なお、積層体(L)は、これらの層以外の層、例えば、薄い導電層などを含んでもよい。
【0075】
正極層の材料を配置した後、固体電解質層の材料を配置した後、負極層の材料を配置した後のいずれかの段階において、配置した材料を予備的にプレスしてもよい。予備的なプレスは通常、上記の本プレスの圧力よりも小さい圧力で行われる。予備的なプレスの圧力に特に限定はなく、1MPa~10MPaの範囲にあってもよい。積層体中の空隙を減らすために、積層体を形成する工程の少なくとも一部は減圧下で行われてもよい。
【0076】
液状成分を含まない材料をプレスする工程を用いて発電要素を形成することによって、高圧の加圧なしで高い性能を示す固体電池(例えば全固体電池)を得ることが可能である。液状成分(分散媒)を含まない材料を層状に配置する方法として、静電スプレー法、スキージ成膜法、または、静電塗装法などを用いてもよい。
【0077】
積層体(L)が複数の発電要素を含む場合、1つの発電要素を含む積層体をプレス成形によって形成した後に、それらの積層体を積層して積層体(L)を形成してもよい。あるいは、複数の発電要素が積層されるようにそれらの材料をプレス成形することによって、積層体(L)を形成してもよい。
【0078】
工程(ii)は、積層体(L)を袋状のパッケージに封入する工程である。なお、固体電池(S1)を製造する場合、工程(ii)は行ってもよいし、行わなくてもよい。工程(ii)では、後述する実施形態で説明するように、ラミネートフィルムの一部を熱融着することによって、固体電池を封入する。このとき、パッケージ内を減圧状態にしてもよい。例えば、減圧されたチャンバ内で固体電池をパッケージ内に封入してもよい。あるいは、ラミネートフィルムで形成された袋状体の中に固体電池を入れた後に袋状体の内部を減圧し、その後に最終の熱融着を行ってもよい。
【0079】
工程(iii)は、積層体(L)が封入されたパッケージを、ケース(例えば筒状体)に収容する工程である。このとき、必要に応じてケースの開口部を広げた状態(例えば、2つの板状部の間の間隔を広げた状態)でパッケージをケースに収容する。パッケージをケースに収容した後に、必要に応じてケースの開口部を封じる。なお、固体電池(S1)を製造する場合には、パッケージに封入されていない積層体(L)をケースに収容してもよい。以上のようにして、固体電池が製造される。
【0080】
以下では、本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して説明する。以下で説明する固体電池は、上述した記載に基づいて変更してもよい。以下で説明する固体電池の構成要素のうち、本開示の固体電池に必須ではない構成要素は省略してもよい。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。なお、以下の図は模式的な図であり、実際の縮尺とは異なる。以下の図では、図を見やすくするために、部材の一部を省略して図示する場合がある。また、以下の図では、ケースおよびラミネートフィルム(パッケージ)の断面を線で示す場合がある。以下の実施形態では、被収容物が1つの発電要素を含む場合について説明するが、被収容物は、積層された複数の発電要素を含んでもよい。以下の実施形態では、ケースが筒状体であり、積層体(L)の平面形状が矩形である例について説明するが、本開示に係る実施形態は以下の例に限定されない。
【0081】
(実施形態1)
実施形態1では、固体電池(S1)の一例について説明する。実施形態1では、積層体(L)がパッケージに封入されている場合について説明するが、積層体(L)はパッケージに封入されていなくてもよい。
【0082】
実施形態1の固体電池100の斜視図を
図1に示し、固体電池100の断面図を
図2Aに示す。固体電池100は、被収容物101と、被収容物101を収容する金属製の筒状体130(ケース)を含む。被収容物101は、積層体110と、積層体110が封入されたパッケージ120とを含む。なお、固体電池100は、正極集電体に接続された正極リードと、負極集電体に接続された負極リードとを含むが、
図1ではそれらリードの図示を省略している。
【0083】
以下では、筒状体130が被収容物101を収容している状態を「収容状態」と称する場合があり、筒状体が被収容物101を収容していない状態を「非収容状態」と称する場合がある。
【0084】
図2Aを参照して、積層体110は、正極集電体111、発電要素112、および負極集電体115を含む。発電要素112は、正極層112a、固体電解質層112b、負極層112cを含む。
【0085】
積層体110は、対向する2つの主面110mと、2つの主面110mを結ぶ2つの側面110sとを含む。2つの側面110sは互いに対向している。2つの主面110mは、積層体110の表面のうち、各層の積層方向SDの両端に存在する面である。筒状体130は、2つの主面110mに対向する2つの板状部130mと、2つの板状部130mを結ぶ2つの領域(側壁部130s)を含む。側壁部130sは、側面110sに対向しており、バネ部130scを含む。
【0086】
以下では、板状部130mと側壁部130sとの境界部をコーナー部130cと称する場合がある。
図2Aの断面図は、筒状体130の中心軸が延びる方向CD(あるいはコーナー部130cが延びる方向、
図1参照)に垂直な方向における断面図である。
図2Aには、2つの板状部130mを結ぶ方向MDを矢印で示す。なお、方向MDは、積層方向SDと平行である。
【0087】
被収容物101を収容していない状態(非収容状態)における筒状体130の断面図を、
図2Bに示す。また、被収容物101を収容している状態(収容状態)における筒状体130の断面図を
図2Cに示す。
図2Bおよび
図2Cでは、積層体110の輪郭および被収容物101の輪郭(パッケージ120の輪郭)を点線で示す。
図2Bに示すように、非収容状態において、2つの板状部130mはそれぞれ、筒状体130の内側に向かって凸の形状を有する曲がり部130mc(湾曲部)を含む。さらに、非収容状態において、2つの側壁部130sはそれぞれ、2つの板状部130mを結ぶ方向に沿ってバネの力を生じるように曲がっている。実施形態1で示す一例では、非収容状態において、2つの側壁部130sはそれぞれ、筒状体130の内側に向かって凸の形状を有するバネ部130scを含む。
図2Bでは、バネ部130scが、筒状体130の内側に向かって凸の形状を有するように湾曲している一例を示す。なお、収容状態では、曲がり部130mcおよび/またはバネ部130scは平らになっていてもよい。
【0088】
図示している筒状体130では、板状部130mのうち、板状部130mの両サイドの2つのコーナー部130cからの距離が等しい中央部は、曲がり部130mcの一部となっている。また、側壁部130sのうち、側壁部130sの両サイドの2つのコーナー部130cからの距離が等しい中央部は、バネ部130scの一部となっている。
【0089】
図2Aに示すように、収容状態において、2つの曲がり部130mcによって積層体110の2つの主面110mが加圧されている。なお、
図2Aに示す一例では曲がり部130mcと積層体110との間にはパッケージ120が存在するが、その場合でも、主面110mが曲がり部130mcによって加圧されていることに変わりはない。より詳細には、主面110mは、パッケージ120を介して曲がり部130mcによって加圧されている。
【0090】
図2Bに示すように、非収容状態において、筒状体130の内部空間の最小高さ(2つの曲がり部130mc間の最短距離)は、筒状体130に収容される被収容物101(積層体110を含むパッケージ120)の高さよりも小さい。そのため、筒状体130に収容された発電要素112は、2つの板状部130m(2つの曲がり部130mc)によって加圧される。内部空間の最小高さは、積層体110の高さより小さくてもよい。
【0091】
図2Bには、上述した高さH0および高さHzを示す。
図2Cには、上述した高さH1を示す。高さH0は、非収容状態における筒状体130の内部空間の高さであって、2つの板状部130mを結ぶ方向MDに隣接する2つのコーナー部130c間の最大高さである。当該2つのコーナー部130cは、1つの側壁部130sを挟む2つのコーナー部130cである。高さH1は、収容状態における筒状体130の内部空間の高さであって、2つの板状部130mを結ぶ方向MDに隣接する2つのコーナー部130c間の最大高さである。高さHzは、筒状体130に収容されていない状態の被収容物101の方向MDにおける高さであって、筒状体130の側壁部130sに対向する側面における最大高さである。高さH0、高さH1、および高さHzは、上述した関係を満たしてもよい。
【0092】
図2A~
図2Cに示す一例では、非収容状態において、曲がり部130mcおよびバネ部130scはそれぞれ、筒状体の内側に向かって凸の形状を有する畝状の形状を有している。当該畝状の形状は、筒状体130の中心軸が延びる方向CDに沿って延びている。
【0093】
収容状態における曲がり部130mcは、非収容状態における曲がり部130mcよりも湾曲の度合いが小さく、より平らである。一方、収容状態における側壁部130s(バネ部130sc)は、非収容状態における側壁部130s(バネ部130sc)よりも、曲がっている度合いが小さく、より平らである。被収容物101を収容することによって伸びた側壁部130sは、元の形状に戻ろうとする力を生じる。バネとして機能する側壁部130sが存在することによって、積層体110をより均一に加圧できるようになると考えられる。
【0094】
一方、非収容状態において側壁部130sが湾曲しておらず平らである場合の筒状体1を用いた場合の一例を
図3に示す。その場合、
図3に示すように、曲がり部130mcによる加圧が端部に集中する。その結果、積層体110への加圧の均一性が大きく低下する。
【0095】
図1には、非収容状態におけるコーナー部130cの断面(コーナー部130cが延びる方向に垂直な断面)が鋭角を含む一例を示したが、当該断面の形状は、他の形状であってもよい。例えば、当該断面の形状は、円弧状であってもよい。
図1には、コーナー部130cが丸められていない一例を示したが、コーナー部130cは丸められていてもよい。すなわち、コーナー部130cは、曲面で構成されていてもよい。そのようなコーナー部130cを有する筒状体130の一例の断面図を
図4および
図5に示す。
図4および
図5に示す曲がり部130mcおよびバネ部130scはそれぞれ、
図2A~
図2Cに関して説明したそれらと同様の形状を有する。
【0096】
図4および
図5の筒状体130のコーナー部130cは曲面で構成されている。
図5の板状部130mは、曲がり部130mcと、その両側につながっている平坦部130mfとを含む。平坦部130mfは、平坦であり、方向CD(
図1参照)に沿って延びている。なお、側壁部130sも、
図5に示す板状部130mと同様に、バネ部130scを挟むように延びる2つの平坦部を含んでもよい。
【0097】
被収容物101が収容されていない状態にある
図4の筒状体130のサイズについて、
図6を参照して説明する。矩形130vは、筒状体130の外側と接触する矩形であり、矩形130vの4つの辺はそれぞれ、筒状体130の板状部130mと側壁部130sとに対応している。筒状体130の外形の幅Wおよび高さHはそれぞれ、矩形130vの幅および高さで表される。
図6には、曲がり部130mcの深さmch、および、バネ部130scの深さschを示す。それらの深さは、矩形130vからの距離で表される。筒状体130の板厚をdとすると、筒状体130の内部空間の幅のうち最も狭い幅は、(W-2sch-2d)で表される。筒状体130の内部空間の高さのうち最も低い高さは、(H-2mch-2d)で表される。筒状体130の内部空間の最小高さは、筒状体130の内部に収容される被収容物101の高さよりも小さい。筒状体130の内部空間の幅は、筒状体130の内部に被収容物101を収容できる幅に設定される。
【0098】
2つの曲がり部130mcの深さmchの合計は、筒状体130の外形の高さH以下(より詳細には、高さHから2つの曲がり部130mcの厚さを引いた高さ以下)であってもよい。すなわち、非収容状態において、2つの第1の湾曲部は接触していてもよい。1つの深さmchは、0.5H以下(高さHの0.5倍以下)、0.4H以下、または0.3H以下、であってもよい。1つの深さmchは、0.05H以上、0.1H以上、または0.2H以上であってもよい。1つの深さmchは、1.0mm~10mmの範囲、1.0mm~5.0mmの範囲、2.0mm~10mmの範囲、または2.0mm~5.0mmの範囲にあってもよい。
【0099】
1つのバネ部130scの深さschは、筒状体130の外形の幅Wの0.3倍以下(すなわち0.3W以下)であってもよい。1つの深さschは、0.2W以下、または0.1W以下であってもよい。1つの深さschは、0.01W以上、0.05W以上、または0.1W以上であってもよい。1つの深さschは、0.5~5.0mmの範囲、または1.0mm~5.0mmの範囲にあってもよい。
【0100】
図6に、最大間隔G0を示す。最大間隔G0は、非収容状態における2つの板状部130m間の間隔であって、方向MDにおける最大間隔である。
図6に示すように、最大間隔G0は、通常、筒状体130の内側に向かって凸の形状を有する曲がり部130mcの端部(板状部130mと側壁部130sとの境界の近傍)の位置における間隔である。最大間隔G1(図示せず)は、最大間隔G0よりも大きくてもよい。最大間隔G1は、収容状態における2つの板状部130m間の間隔であって、方向MDにおける最大間隔である。G0<G1を満たすことによって、主面110mを効果的に加圧できる。なお、
図2Bおよび
図2Cに示す筒状体130の場合、G0=H0でG1=H1と考えることが可能である。
【0101】
上記の条件(K1)~(K3)において、高さH0を最大間隔G0に置き換え、高さH1を最大間隔G1に置き換えてもよい。固体電池(S1)は、G0<Hz≦G1、G0≦Hz<G1、または、G0<Hz<G1を満たしてもよい。これらの式のいずれかを満たすことによって、主面110mを効果的に加圧しやすくなる場合がある。ただし、固体電池(S1)は、これらの式を満たさなくてもよい。
【0102】
図3に示す形状の筒状体1に、積層体110が封入されたパッケージ120を収容する実験を行った。上述したように、
図3に示す筒状体1は、
図1に示す筒状体130の側壁部130sを平板状とした筒状体である。このとき、板状部130mとパッケージ120との間に感圧紙を挟んで、その色の変化を観察した。圧力によって変色した感圧紙を
図7に示す。黒くなっている部分は、圧力が高かった部分である。
図7の点線は、パッケージ120の外形の位置を示す。
図7に示すように、
図3の筒状体1を用いた場合、加圧がパッケージ120の外縁の部分に集中した。そのため、発電要素112に対する加圧も、発電要素112の外縁の部分に集中していると考えられる。
【0103】
さらに、
図4に示す形状と同様の形状を有する筒状体130を用いて、同様の実験を行った。そのときの感圧紙を
図8に示す。
図8に示すように、この場合には、パッケージ120の全体がほぼ均等に加圧されていた。そのため、発電要素112もほぼ均等に加圧されていると考えられる。
【0104】
さらに、
図3に示す筒状体1を用いた固体電池SC1と、
図4に示す形状と同様の形状を有する筒状体130を用いた固体電池SA1とを作製した。固体電池SC1と固体電池SA1とは、筒状体以外は同じ構成とした。固体電池SC1および固体電池SA1について、110℃、1×10
-2Paの雰囲気下において、1Cの電流で充放電サイクルを300回行った。300サイクルの時点での容量維持率は、固体電池SC1は82.0%であったのに対し、固体電池A1は93.5%と良好であった。なお、容量維持率は、初期の放電容量を100%としたときの放電容量の比率である。
【0105】
(実施形態2)
実施形態2では、固体電池(S2)の一例について説明する。実施形態2の固体電池200の断面を
図9に模式的に示す。また、
図9のうち積層体110の断面図を
図10に模式的に示す。
【0106】
実施形態2の固体電池200は、被収容物101と、被収容物101を収容する金属製の筒状体130(ケース)とを含む。被収容物101は、積層体110と、積層体110が封入されたパッケージ120とを含む。
【0107】
パッケージ120は、ラミネートフィルムで形成された袋状のパッケージである。パッケージ120は、袋状のパッケージ120を形成するために、ラミネートフィルムの一部と他の一部とを接合した接合部120Pを含む。積層体110は、対向する2つの主面110mと、2つの主面110mを結ぶ2つの側面であって互いに対向する2つの側面110sとを含む。接合部120Pは、主面110m上に位置するように積層体110に積層された積層部120Lを含む。
図9の断面図では、接合部120Pの部分はそのまま積層部120Lとなっている。積層部120Lは、筒状体130(ケース)によって、積層部120Lが加圧されている。
図9では、2つの板状部130mを結ぶ方向MDを矢印で示す。
【0108】
筒状体130は、2つの主面110mに対向する2つの板状部130mと、2つの板状部130mを結ぶ2つの領域(側壁部130s)を含む。側壁部130sは、側面110sに対向している。
【0109】
図10を参照して、積層体110は、正極集電体111、発電要素112、および負極集電体115を含む。発電要素112は、正極層112a、固体電解質層112b、負極層112cを含む。これらの層は、積層方向SDに沿って積層されている。
図10では、積層体110の各層の積層方向SDを矢印で示す。
図9の方向MDと
図10の積層方向SDとは平行である。
【0110】
パッケージ120の一部を上方から見たときの平面図を
図11に示す。なお、
図11には、積層体110の配置も示す。また、
図11では、積層部120Lの領域をハッチングで示す。
図11に示すように、積層部120Lは、主面110mのうち少なくとも2つの側面110sの間の中央部の上に位置するように、積層体110に積層されている。積層部120Lは、筒状体130の中心軸が延びる方向CD(あるいはコーナー部130cが延びる方向)に沿って延びている。
【0111】
図9は、ケースとして、断面が矩形である筒状体130を用いる一例を示している。ただし、ケースの形状に特に限定はなく、
図3に示す形状のケースや、固体電池(S1)で用いられるケースを用いてもよい。固体電池(S1)で用いられるケースを用いることによって、積層体110を効果的に加圧できる。
【0112】
固体電池200では、積層体110の主面110m上に積層部120Lが配置されている。そのため、積層部120Lの部分が筒状体130によって加圧されやすくなる。積層部120Lがない場合、筒状体130による加圧は、主面110mのうちコーナー部130c近傍に集中しやすい。これに対し、積層部120Lを主面110m上に配置することによって、主面110mに加わる加圧力の均一性を高めることが可能である。
【0113】
パッケージ120の他の例の断面図を、
図12~
図14に示す。なお、これらの図では、図を見やすくするために、部材間に隙間を設けているが、それらの隙間の一部は実際には存在しない。例えば、積層方向SDにおいて、積層体110とパッケージ120とは接触している。
図12~
図14では、ラミネートフィルムが熱融着している部分を白い点線で示す。
【0114】
図12に示す一例では、パッケージ120を構成するラミネートフィルムの同じ面が熱融着されて接合部120Pが形成されている。接合部120Pが折り曲げられることによって、積層部120Lが、積層体110の主面110m上に積層されている。
【0115】
図13および
図14に示す例では、接合部120Pは、2つの側面110sに沿って形成された第1の接合部120P1と第2の接合部120P2とを含む。それらの接合部が折り曲げられることによって、その少なくとも一部である積層部120Lが、積層体110の主面110m上に積層されている。
【0116】
図12~
図14に示すパッケージ120を構成するラミネートフィルムは、少なくとも熱融着される側の表面に、熱融着可能な樹脂層を含む。
図9に示すパッケージ120を構成するラミネートフィルムは、両方の表面に熱融着可能な樹脂層を含む。
【0117】
図12に示したパッケージ120に積層体110を封入する方法の一例について、
図15A~
図15Cを参照して説明する。まず、
図15Aに示すように、積層体110を準備する。
図15Aには、正極集電体111に接続された正極リード141、および、負極集電体115に接続された負極リード142も示す。
【0118】
次に
図15Bに示すように、ラミネートフィルムで形成された袋状体151に積層体110を収容する。袋状体151は、
図12に示す積層部120Lに対応する接合部120PPと、袋状体の一辺を接合することによって形成された接合部120PRとを含む。なお、
図15B以降の図では、接合部が存在する部分をハッチングで示す場合がある。
【0119】
次に、
図15Cに示すように、正極リード141および負極リード142が存在する部分のラミネートフィルムをシーラントなどを介して熱融着して、新たな接合部120PFを形成する。これによって、積層体110がラミネートフィルムで形成されたパッケージ120に封入される。最後に、必要に応じて、接合部120PRを、接合部120PPが存在する側、またはその反対側に折り曲げる。折り曲げられた接合部120PRの少なくとも一部は、積層体110上に積層されてもよい。このようにして、積層体110がパッケージ120に封入される。
【0120】
図13および
図14に示したパッケージ120に積層体110を封入する方法の一例について、
図16Aおよび
図16Bを参照して説明する。まず、
図16Aに示すように、積層体110を収容可能な凹部161cを有するシート161を、絞り加工などによって準備する。
【0121】
次に、凹部161c内に積層体110を配置する。次に、シート161と同じ大きさを有する平らなラミネートシートをシート161に重ね合わせ、重ね合わさった4辺を熱融着する。具体的には、
図16Bの上面図に示すように、接合部120PF、接合部120PR、および2つの接合部120PPを形成する。接合部120PPは、
図13および
図14の積層部120Lとなる部分である。熱融着(ヒートシール)によって、ラミネートフィルムで形成された袋状体151に積層体110が封入される。
【0122】
次に、2つの接合部120PPを折り曲げて積層体110上に積層する。
図13に示したパッケージ120を形成する場合、接合部120PPを、凹部161cとは反対側に折り曲げる。
図14に示したパッケージ120を形成する場合、接合部120PPを、凹部161cの側に折り曲げる。接合部120PPを折り曲げる前またはその後に、必要に応じて接合部120PRを折り曲げる。折り曲げられた接合部120PRの少なくとも一部は、積層体110上に積層されてもよい。このようにして、積層体110がパッケージ120に封入される。
【0123】
なお、凹部161cを有するシートを2枚重ねることによって、袋状体151を形成してもよい。また、上記の製造方法において、積層体110をパッケージ120に封入する際に、パッケージ120の内部を減圧してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示は、固体電池に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
100、200 :固体電池
101 :被収容物
110 :積層体
110m :主面
110s :側面
112 :発電要素
112a :正極層
112b :固体電解質層
112c :負極層
120 :パッケージ
120L :積層部
120P :接合部
120P1 :第1の接合部
120P2 :第2の接合部
130 :筒状体(ケース)
130c :コーナー部
130m :板状部
130mc :曲がり部
130mf :平坦部
130s :側壁部
130sc :バネ部