(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084902
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】搬入物固定構造
(51)【国際特許分類】
B60R 7/08 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B60R7/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199286
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 翔一
(72)【発明者】
【氏名】金 青海
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA11
3D022CB05
3D022CC11
3D022CC13
3D022CC18
3D022CC26
(57)【要約】
【課題】 車室に搬入物を固定するときの作業性に優れた搬入物固定構造を提供する。
【解決手段】搬入物固定構造101は、車室2に搬入物Wを固定するためのものであり、車室2の床部3から延出した係止ベルト10と、係止ベルト10に搬入物Wと係合可能に設けられた係合部20と、車室2に面する内装材5に係合部20を仮保持可能に設けられた仮保持部30と、を備え、仮保持部30は、床部3よりも高所に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室に搬入物を固定する搬入物固定構造であって、
上記車室の床部から延出した係止ベルトと、
上記係止ベルトに上記搬入物と係合可能に設けられた係合部と、
上記車室に面する内装材に上記係合部を仮保持可能に設けられた仮保持部と、
を備え、
上記仮保持部は、上記床部よりも高所に設けられている、搬入物固定構造。
【請求項2】
上記仮保持部は、ユーザが車外から上記車室への搬入開口部を通じて上記係合部を把持して仮保持させることができる操作可能位置に設けられている、請求項1に記載の搬入物固定構造。
【請求項3】
上記係合部は、鉤状のフックを有し、
上記仮保持部は、上記係合部の上記フックを引っ掛け可能なループを有する、請求項1または2に記載の搬入物固定構造。
【請求項4】
上記仮保持部は、上記係合部の上記フックが上記ループに引っ掛けられた状態で規定値を上回る引張荷重を受けたときに上記ループによる上記フックの保持力を弱めるように構成されている、請求項3に記載の搬入物固定構造。
【請求項5】
上記仮保持部には、車載品が着脱可能に取り付けられる被取付部が設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の搬入物固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室に搬入物を固定する搬入物固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、この種の搬入物固定構造の一例として、車椅子固定装置が開示されている。この車椅子固定装置は、車室に搬入した車椅子を固定するためのものであり、車室の床部から引き出し及び引き戻しが可能となるように延出した係止ベルトを備えている。この車椅子固定装置によれば、車椅子が車室に搬入される前の待機状態において、係止ベルトのフックが床面に露出した状態とされる。車椅子が車室に搬入されると、ユーザは、先ず係止ベルトのフックを把持して引っ張ることによって係止ベルトを床部から引き出す。その後、係止ベルトのフックを車椅子に引っ掛けて車椅子を繋留する。これにより、車椅子を車室に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の車椅子固定装置の場合、待機状態で係止ベルトのフックが床面に直に置かれるため、フックを車椅子に引っ掛ける前に床面から上方に引き上げる必要があり、ユーザは車椅子の固定作業の負担になり得る。また、車室の床面に沿って係止ベルトが延びていると、ユーザが係止ベルトを踏み付けるおそれがあり、車椅子の固定作業を円滑に行うことの妨げになり得る。このような問題は、車椅子を車室に固定するときのみならず、車椅子とは別の搬入物を車室に固定する場合においても同様に生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、車室に搬入物を固定するときの作業性に優れた搬入物固定構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車室に搬入物を固定する搬入物固定構造であって、
上記車室の床部から延出した係止ベルトと、
上記係止ベルトに上記搬入物と係合可能に設けられた係合部と、
上記車室に面する内装材に上記係合部を仮保持可能に設けられた仮保持部と、
を備え、
上記仮保持部は、上記床部よりも高所に設けられている、搬入物固定構造、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上記態様の搬入物固定構造において、車室の床部から延出した係止ベルトには、搬入物と係合可能な係合部が設けられている。この係合部は、車室に面する内装材に設けられた仮保持部によって保持可能とされている。すなわち、係合部を搬入物との係合状態に設定することができる一方で、この係合部を仮保持部によって仮保持状態に設定することもできる。係合部が仮保持状態であるとき、この係合部が設けられている係止ベルトは内装材側に一時的に仮保持された状態を形成する。これに対して、係合部が係合状態であるとき、この係合部を介して係止ベルトが搬入物と連結されるため、搬入物は車室に固定された状態を形成する。
【0008】
ここで、仮保持部は床部よりも高所に設けられているため、係合部が仮保持状態であるとき、係止ベルトを車室の床面から浮かせた状態で一時的に仮保持することができる。このため、係合部を搬入物に係合させるときに床面から上方に引き上げる必要がなく、視認し易い位置で係合部を把持して操作することが可能になる。その結果、搬入物の固定作業を行うときの作業負担を低く抑えることができる。また、仮保持部を床部よりも高所に設ける構造は、ユーザが係止ベルトを誤って踏み付けるのを防ぐのに効果があり、搬入物の固定作業の円滑化を図るのに有効である。
【0009】
以上のごとく、上述の態様によれば、車室に搬入物を固定するときの作業性に優れた搬入物固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の搬入物固定構造にかかる車室内の構成を後ろ斜め上方から見た斜視図。
【
図3】
図2において仮保持部の着脱部が離脱状態にあるときの様子を示す断面図。
【
図4】
図1の搬入物固定構造の待機状態を模式的に示す平面図。
【
図5】
図1の搬入物固定構造の搬入物固定状態を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述の態様の好ましい実施形態について、以下に説明する。
【0012】
上述の態様の搬入物固定構造において、上記仮保持部は、ユーザが車外から上記車室への搬入開口部を通じて上記係合部を把持して仮保持させることができる操作可能位置に設けられているのが好ましい。
【0013】
この搬入物固定構造によれば、仮保持部が操作可能位置にあるため、ユーザは車外から手の届く範囲内の作業によって、係合部を把持して仮保持部に仮保持させたり仮保持部から取り外したりすることが可能になる。このため、ユーザが搬入物を固定するときに車室に乗り込む手間を無くすこと若しくは車室に乗り込む手間を少なくすることができる。
【0014】
上述の態様の搬入物固定構造において、上記係合部は、鉤状のフックを有し、上記仮保持部は、上記係合部の上記フックを引っ掛け可能なループを有するのが好ましい。
【0015】
この搬入物固定構造によれば、係合部のフックを仮保持部のループに引っ掛ける簡単な作業によって、係合部を仮保持することが可能になる。
【0016】
上述の態様の搬入物固定構造において、上記仮保持部は、上記係合部の上記フックが上記ループに引っ掛けられた状態で規定値を上回る引張荷重を受けたときに上記ループによる上記フックの保持力を弱めるように構成されているのが好ましい。
【0017】
この搬入物固定構造によれば、係合部のフックが仮保持部のループに引っ掛けられた状態でこのループに想定以上の引張荷重が作用したとき、このループによるフックの保持力が弱まる。このため、例えば、ユーザが車室に乗り込んだ状態で係止ベルトに干渉してフックを介してループに作用する引張荷重が上昇したときでも、ループがフックの保持力を弱めることでユーザが姿勢を崩したり転倒したりするのを防ぐことができる。
【0018】
上述の態様の搬入物固定構造において、上記仮保持部には、搭載部品が着脱可能に取り付けられる被取付部が設けられているのが好ましい。
【0019】
この搬入物固定構造によれば、係合部の仮保持に使用する仮保持部を、搭載部品を着脱可能に取り付けるのに兼用することができる。
【0020】
以下、搬入物固定構造の実施形態の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
この実施形態の説明のための図面において、特に断わらない限り、車両前方を矢印FRで示し、車両上方を矢印UPで示し、車両内方を矢印INで示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1の搬入物固定構造101は、車両1の車室2に搬入物Wを固定するためのものである。車両1は、車室2を開閉可能なバックドア(図示省略)を有する車両であり、このバックドアを開けることによって搬入開口部8を通じて車室2への搬入物Wの搬入が可能になる。車室2は、主に荷物を収容する空間であり「荷室」とも称される。
【0023】
搬入物固定構造101は、概して、2つの係止ベルト10と、係合部20と、仮保持部30と、を備えている。
【0024】
搬入物Wは、係合部20の後述のフック21を引っ掛け可能なループ等の被係合部(後述の「被係合部Wa」)を有する。この搬入物Wは、被係合部を有していれば、その形状、大きさ、数などは特に限定されるものではない。搬入物Wの一例として、使用者が乗車した状態の車椅子や、単体の車椅子などが挙げられる。その他、車室2に搬入して積載する各種の物品を搬入物Wの対象とすることができる。
【0025】
2つの係止ベルト10はいずれも、車室2の床部3から延出している。各係止ベルト10は、可撓性を有する長尺状のウェビング部材として構成されている。床部3には、各係止ベルト10のためのベルト駆動装置4が収容されている。一方の第1係止ベルト10Aには右側のベルト駆動装置4が使用され、他方の第2係止ベルト10Bには左側のベルト駆動装置4が使用される。
【0026】
ベルト駆動装置4は、アクチュエータ(図示省略)を備えており、このアクチュエータが駆動することによって係止ベルト10の引き出し及び引き戻しが可能となるように構成されている。このベルト駆動装置4によれば、床部3からの係止ベルト10の引き出し長さを調節することができ、また任意の引き出し位置で係止ベルト10をロックすることができる。
【0027】
なお、
図1では、2つの係止ベルト10(第1係止ベルト10A及び第2係止ベルト10B)が示されているが、係止ベルト10の数は特に限定されるものではない。複数の係止ベルト10を設ける場合には、複数の係止ベルト10と同数のベルト駆動装置4を設けるのが好ましい。
【0028】
係合部20は、係止ベルト10のうちベルト駆動装置4とは反対側の一端部に設けられている。この係合部20は、鉤状のフック21を有し、このフック21において搬入物Wと係合可能となるように構成されている。
【0029】
仮保持部30は、車室2に面する内装材5に設けられている。この仮保持部30は、係合部20を仮保持可能となるように構成されている。本実施形態において、内装材5は、車室2を構成するデッキサイドトリムである。内装材5には2つの取付用孔(後述の「取付用孔5a」)が車長方向に離間した位置に設けられている。また、内装材5には、車載品Aを収容する収容空間7が設けられている。
【0030】
仮保持部30は、床部3よりも高所(車室2の床面よりも高い位置)に設けられている。また、この仮保持部30は、ユーザが車外から車両1の搬入開口部8を通じて係合部20のフック21を手指で把持して仮保持させることができる操作可能位置Pに設けられている。典型的には、一般的な体型の成人が搬入開口部8を通じて手の伸ばして届く範囲内の位置を操作可能位置Pとすることができる。これにより、ユーザはフック21の仮保持操作を車室2に乗り込むことなく車外から行うことが可能になる。
【0031】
図2に示されるように、仮保持部30は、係止ベルト10と同様に、いずれも可撓性を有するウェビング部材である第1ベルト31及び第2ベルト32を有する。
【0032】
第1ベルト31は、その一端部31aがクリップ6によって内装材5の一方の取付用孔5aに取り付けられ、その他端部31bが着脱部36を介して第2ベルト32の一端部32aに着脱可能に接合されている。これにより、第1ベルト31は、車幅方向を厚み方向とし車長方向を幅方向として、車長方向に延びる張設状態とされている。このとき、第1ベルト31は、その他端部31bが第2ベルト32の一端部32aにくっついた装着状態と一端部32aから剥がされた離脱状態のいずれかを形成するように構成されている。なお、本構成に代えて、第1ベルト31の他端部31bと第2ベルト32の一端部32aとを縫合するようにしてもよい。
【0033】
第2ベルト32は、一端部32aと他端部32bとの間の中間部32cで折り返されている。この第2ベルト32は、その中間部32cがクリップ6によって内装材5の他方の取付用孔5aに取り付けられ、一端部32aと他端部32bが着脱部33を介して着脱可能に接合されている。このとき、第2ベルト32は、他端部32bが一端部32aにくっついた装着状態と他端部32bが一端部32aから剥がされた離脱状態のいずれかを形成するように構成されている。なお、着脱部33は、その接合力が着脱部36における接合力を下回るようになっている。このため、着脱部33が外部荷重を受けて第2ベルト32の一端部32aと他端部32bの接合が解除された離脱状態になったときでき、着脱部36では第1ベルト31の他端部31bと第2ベルト32の一端部32aとの接合状態が維持される。
【0034】
ここで、着脱部33,36は、「マジック式テープ」と称される面ファスナーによって構成されている。面ファスナーは既知の構造のものであり図示を省略するが、パイル構造を利用した離着自由のテープである。小さなマッシュルーム型の膨頭子(フックタイプはカギ型のフック)の形が一方の面に配置されており、ループの形が他方の面に配置されている。これら二つの面を貼り合わせると、マッシュルーム(或いはフック)がループに引っかかる(絡む)ことで簡単にくっついた装着状態になる。一方で、これら二つの面を互いに引っ張ることで、絡みからマッシュルーム(或いはフック)が抜け、互いに剥がされた離脱状態になる。
【0035】
第2ベルト32は、他端部32bが着脱部33を介して一端部32aに接合された装着状態で、係合部20のフック21を引っ掛け可能な空間34aを形成するループ34を有する。ループ34は、車室2に面する位置にループ形状を形成している。このため、車室2において係合部20のフック21がループ34に引っ掛けられることによって、係止ベルト10を仮保持部30に仮保持することができる。
【0036】
図3に示されるように、第2ベルト32のループ34は、係合部20のフック21が引っ掛けられた状態で規定値を上回る引張荷重Fを受けたときに、着脱部33において一端部32aから他端部32bが剥がされて接合が解除された離脱状態となる。このとき、第2ベルト32の他端部32bの保持が解放されるため、ループ34のループ形状が初期状態から崩れてループ34によるフック21の保持力が弱まる。このように、仮保持部30は、係合部20のフック21がループ34に引っ掛けられた状態で引張荷重Fが大きくなるとループ34によるフック21の保持力を弱めるように構成されている。なお、このとき、着脱部33における接合が解除されても前述のように着脱部36における接合状態が維持されるため、第1ベルト31と第2ベルト32の張設状態が維持される。
【0037】
本実施形態では、仮保持部30において車両前方側にループ34が形成される構造(
図2及び
図3を参照)について例示しているが、この構造に代えて、仮保持部30の前後を逆に配置することによって、車両後方側にループ34が形成される構造を採用することもできる。
【0038】
図2及び
図3に示されるように、第1ベルト31には、車載品Aが着脱可能に取り付けられる被取付部35が設けられている。被取付部35は、前記の着脱部33,36と同様の面ファスナーよって構成されている。これにより、車載品Aが第1ベルト31に取り付けられた状態と、車載品Aが第1ベルト31から取り外された状態と、を簡単な操作で切り替えることができる。
【0039】
なお、車載品Aの種類は特に限定されるものではない。車載品Aの一例として、車両1の緊急停車時に使用される三角表示板が挙げられる。その他、車両1に搭載する各種の物品を車載品Aの対象とすることができる。
【0040】
次に、上記構成の搬入物固定構造101の待機状態と搬入物固定状態のそれぞれについて説明する。
【0041】
(待機状態)
図4に示されるように、搬入物固定構造101の待機状態では、ユーザは、車室2に乗り込んだ状態で、第1係止ベルト10A及び第2係止ベルト10Bのそれぞれを対応するベルト駆動装置4によって床部3から引き出す。そして、各係止ベルト10に固定されている係合部20のフック21を手指で把持して仮保持部30のループ34に引っ掛ける。これにより、係止ベルト10を車室2の床面から浮かせた状態で一時的に仮保持することができる。
【0042】
(搬入物固定状態)
図5に示されるように、搬入物Wを車室2に搬入して固定するときに搬入物固定構造101が使用される。ユーザは、先ず、各係合部20のフック21を車外から手指で把持して仮保持部30のループ34から外す。これにより、第1係止ベルト10A及び第2係止ベルト10Bのそれぞれの仮保持を解除する。
【0043】
その後、ユーザは、車外から手指でフック21を把持したままでの状態で、このフック21をループ34に代えて搬入物Wの被係合部Waに引っ掛ける。第1係止ベルト10A側のフック21を右側の被係合部Waに引っ掛け、第2係止ベルト10B側のフック21を左側の被係合部Waに引っ掛ける。そして、第1係止ベルト10A及び第2係止ベルト10Bのそれぞれの引き出し長さを対応するベルト駆動装置4によって調節する。これにより、第1係止ベルト10A及び第2係止ベルト10Bのそれぞれの張力を利用して搬入物Wを車室2に固定することができる。
【0044】
ここで、使用者が乗車した状態の車椅子を搬入物Wとしたときに、搬入物固定構造101を使用する介助者が行う作業について説明する。この作業は、介助者が車室に乗り込むときの第1の作業と、介助者が車室から降りるときの第2の作業と、に大別される。なお、このときの車両1として、車椅子の乗降用のスロープやリフト装置を搭載した福祉車両が好適に使用される。
【0045】
(第1の作業)
第1の作業において、介助者は、先ず、搬入物固定構造101の待機状態(
図4を参照)で、係合部20のフック21を車外から手指で把持して仮保持部30のループ34から外す。そして、介助者は、係止ベルト10の引き出し長さが長くなるようにベルト駆動装置4を駆動して、係合部20のフック21を車椅子の被係合部に引っ掛ける。
【0046】
次に、介助者は、係止ベルト10の引き出し長さが短くなるようにベルト駆動装置4を駆動しながら、車椅子とともに車室2に乗り込む(乗り込み1回目)。このとき、スロープやリフト装置を利用して車椅子を車外から車室2まで移動させる。そして、介助者は、車室2において車椅子の走行をロックする。最後に、介助者は、係止ベルト10の張力が強まるようにベルト駆動装置4によって係止ベルト10の引き出し長さを微調整する。これにより、係止ベルト10の張力を利用して車椅子を繋留して車室2に固定することができる。
【0047】
(第2の作業)
第2の作業は、基本的に第1の作業と逆の手順で実行される。介助者は、先ず、搬入物固定構造101の搬入物固定状態(
図5を参照)で、車室2に乗り込む(乗り込み2回目)。そして、介助者は、車椅子の走行のロックを解除した後、係止ベルト10の引き出し長さが長くなるようにベルト駆動装置4を駆動しながら、車椅子とともに車室2から降りる。
【0048】
次に、介助者は、係合部20のフック21を車椅子の被係合部Waから外す。その後、介助者は、係止ベルト10の引き出し長さが短くなるようにベルト駆動装置4を駆動しながら、係合部20のフック21を車椅子の被係合部Waに代えて仮保持部30のループ34に引っ掛ける。これにより、係止ベルト10を車室2の床面から浮かせた状態で一時的に仮保持することができる。
【0049】
上述のように、搬入物固定構造101を使用すれば、第1の作業と第2の作業で介助者が車室2に乗り込む回数を計2回に抑えることが可能になる。
【0050】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0051】
実施形態1において、車室2の床部3から延出した係止ベルト10には、搬入物Wと係合可能な係合部20が設けられている。この係合部20は、車室2に面する内装材5に設けられた仮保持部30によって保持可能とされている。すなわち、係合部20を搬入物Wとの係合状態に設定することができる一方で、この係合部20を仮保持部30によって仮保持状態に設定することもできる。係合部20が仮保持状態であるとき、この係合部20が設けられている係止ベルト10は内装材5側に一時的に仮保持された状態を形成する。これに対して、係合部20が係合状態であるとき、この係合部20を介して係止ベルト10が搬入物Wと連結されるため、搬入物Wは車室2に固定された状態を形成する。
【0052】
ここで、仮保持部30は床部3よりも高所に設けられているため、係合部20が仮保持状態であるとき、係止ベルト10を車室2の床面から浮かせた状態で一時的に仮保持することができる。このため、ユーザは係合部20を搬入物Wに係合させるときに床面から上方に引き上げる必要がなく、視認し易い位置で係合部20を把持して操作することが可能になる。その結果、搬入物Wの固定作業を行うときの作業負担を低く抑えることができる。また、仮保持部30を床部3よりも高所に設ける構造は、ユーザが係止ベルト10を誤って踏み付けるのを防ぐのに効果があり、搬入物Wの固定作業の円滑化を図るのに有効である。
【0053】
従って、上述の実施形態1によれば、車室2に搬入物Wを固定するときの作業性に優れた搬入物固定構造101を提供することができる。
【0054】
実施形態1の搬入物固定構造101によれば、仮保持部30が操作可能位置Pにあるため、ユーザは車外から手の届く範囲内の作業によって、係合部20を把持して仮保持部30に仮保持させたり仮保持部30から取り外したりすることが可能になる。このため、ユーザが搬入物Wを固定するときに車室2に乗り込む手間を無くすこと若しくは車室2に乗り込む手間を少なくすることができる。
【0055】
実施形態1の搬入物固定構造101によれば、係合部20のフック21を仮保持部30のループ34に引っ掛ける簡単な作業によって、係合部20を仮保持することが可能になる。
【0056】
実施形態1の搬入物固定構造101によれば、係合部20のフック21が仮保持部30のループ34に引っ掛けられた状態でこのループ34に想定以上の引張荷重Fが作用したとき、着脱部33における接合状態が解除されることによりこのループ34によるフック21の保持力が弱まる。このため、例えば、ユーザが車室2に乗り込んだ状態で係止ベルト10に干渉してフック21を介してループ34に作用する引張荷重Fが上昇したときでも、ループ34がフック21の保持力を弱めることでユーザが姿勢を崩したり転倒したりするのを防ぐことができる。
【0057】
実施形態1の搬入物固定構造101によれば、係合部20の仮保持に使用する仮保持部30を、搭載部品Aを着脱可能に取り付けるのに兼用することができる。また、搭載部品Aの取り付け及び取り外しを簡単な操作で行うことができる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0059】
上述の実施形態では、係合部20のフック21を仮保持部30のループ34に引っ掛けることによって係止ベルト10を仮保持する場合について例示したが、これに代えて、係合部20にループ34に相当する部位を設け、仮保持部30にループ34に相当する部位を設けるようにしてもよい。また、フック21及びループ34のそれぞれの形状は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜に変更が可能である。
【0060】
上述の実施形態では、着脱部33に規定値を上回る引張荷重を作用したときに接合を解除する面ファスナーを採用する場合について例示したが、同様の着脱機能を実現することができれば、この面ファスナー以外の構造を採用することもできる。例えば、磁石による吸着力を利用した着脱構造を採用することができる。
【0061】
上述の実施形態では、仮保持部30に被取付部35を設ける場合について例示したが、必要に応じて、この被取付部35を省略することもできる。
【0062】
上述の実施形態では、搬入物Wとして車椅子を例示したが、車室2に搬入し得る各種の搬入物のための固定構造に対して搬入物固定構造101を適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 車室
3 床部
5 内装材
8 搬入開口部
10,10A,10B 係止ベルト
20 係合部
21 フック
30 仮保持部
34 ループ
35 被取付部
101 搬入物固定構造
F 引張荷重
P 操作可能位置
W 搬入物