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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084908
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】給水システム
(51)【国際特許分類】
   E03B 5/00 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E03B5/00 B
E03B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199294
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(57)【要約】
【課題】 給水装置の定期点検を簡便化することが可能な給水システムの一例を開示する。
【解決手段】 点検制御部72は、前回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧と今回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧と差を利用して、次回の劣化点検制御を実行するタイミングを決定する。これにより、重要な機器の1つである電源部77~79についての劣化判断が適切なタイミングで実行され得る。延いては、メンテナンス作業を行う作業者は、電源部77~79が現実に故障する前に、当該電源部77~79を修理又は交換することが可能となり得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水用の電動ポンプと、
予め決められた電圧を出力する電源部と、
前記電源部の出力電圧を示す信号(以下、電源電圧という。)を利用して当該電源部の劣化を判断する劣化点検制御を実行可能な点検制御部とを備え、
前記点検制御部は、前回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧と今回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧と差(以下、変化量という。)を利用して、次回の劣化点検制御を実行するタイミングを決定する実行タイミング決定制御が実行可能である給水システム。
【請求項2】
劣化点検制御が実行されるタイミングとその次の劣化点検制御が実行されるタイミングとの間隔を実行間隔としたとき、
前記点検制御部は、変化量が予め決められた値より大きい場合には、実行間隔を前回の実行間隔より短くする請求項1に記載の給水システム。
【請求項3】
複数の前記電源部を備え、
前記点検制御部は、複数の前記電源部それぞれに対して劣化点検制御及び実行タイミング決定制御を実行する請求項2に記載の給水システム。
【請求項4】
無線通信又は有線通信にて遠隔管理装置と通信可能な通信部を備え、
前記点検制御部は、前記電源部を示す識別情報及び当該電源部の電源電圧を示す情報を、劣化点検制御の実行時に前記遠隔管理装置に送信する請求項3に記載の給水システム。
【請求項5】
携帯型無線通信機器と通信するための第2の通信部を備え、
複数の前記電源部のうち、変化量が予め決められた値より大きくなった電源部を劣化電源とし、当該劣化電源の電源電圧を劣化電圧としたとき、
前記点検制御部は、携帯型無線通信機器からの信号を受信したときに、劣化電圧を取得するとともに、当該取得した劣化電圧及び当該取得の直前に既に取得されている劣化電圧を当該携帯型無線通信機器に送信する請求項4に記載の給水システム。
【請求項6】
前記電動ポンプのモータ部を駆動するインバータ回路、及び当該インバータ回路に直流電力を供給するコンバータ部を備え、
前記インバータ回路の出力電圧、出力周波数及び出力電流、並びに前記コンバータ部の直流電圧を総称して駆動パラメータとし、給水量が予め決められた給水量以下となって前記電動ポンプが停止する直前の駆動パラメータを停止直前パラメータとしたとき、
前記点検制御部は、停止直前パラメータを取得するとともに、当該取得された停止直前パラメータを、当該取得後の劣化点検制御の実行時に前記遠隔管理装置に送信する請求項4又は5に記載の給水システム。
【請求項7】
前記電動ポンプの作動を制御するポンプ制御部と、
前記ポンプ制御部に異常が発生したか否かを判断する異常判断部とを備え、
前記点検制御部は、前記異常判断部の判断結果を、劣化点検制御の実行時に前記遠隔管理装置に送信する請求項4ないし6のいずれか1項に記載の給水システム。
【請求項8】
前記点検制御部は、前記ポンプ制御部が収納された制御盤内に収納されている請求項7に記載の給水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給水システムを安定稼働させるには、例えば、特許文献1に記載されているように、定期的な検査及びメンテナンスの実行が肝要である。つまり、電動ポンプの運転に支障を来すような重要な機器については、定期的な検査が実行され、当該機器が現実に故障する前に修理又は交換されることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-217073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上記点に鑑みた給水システムの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
給水システムは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、給水用の電動ポンプ(3)と、予め決められた電圧を出力する電源部(77)と、電源部(77)の出力電圧を示す信号(以下、電源電圧(Vp)という。)が入力される点検制御部(72)であって、当該電源電圧(Vp)を利用して当該電源部(77)の劣化を判断する劣化点検制御を実行可能な点検制御部(72)とを備え、点検制御部(72)は、前回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧(Vp)と今回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧(Vp)と差を利用して、次回の劣化点検制御を実行するタイミングを決定する実行タイミング決定制御が実行可能であることが望ましい。
【0006】
これにより、当該給水システムでは、重要な機器の1つである電源部(77)についての劣化判断が適切なタイミングで実行され得る。延いては、メンテナンス作業を行う作業者は、電源部(77)が現実に故障する前に、当該電源部(77)を修理又は交換することが可能となり得る。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る給水システムを示す図である。
図2】第1実施形態に係る給水装置を示す図である。
図3】第2送信制御を示すフローチャートの一例である。
図4】第3送信制御を示すフローチャートの一例である。
図5】劣化点検制御等を示すフローチャートの一例である。
図6】第1実施形態に係る給水システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0010】
少なくとも符号が付されて説明された機器や部材等の構成要素は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該構成要素は2以上設けられていてもよい。本開示に示された給水システム及び給水装置は、少なくとも符号が付されて説明された構成要素等を備える。
【0011】
(第1実施形態)
<1.給水システムの概要>
本実施形態は、例えば、マンションや商業ビル等の建物に適用される給水システムに本開示に係る給水システムの一例が適用されたものである。本実施に係る給水システムは、図1に示されるように、少なくとも1つの遠隔管理装置1及び少なくとも1つの給水装置2等を備えて構成されている。
【0012】
なお、本実施形態では、1つの遠隔管理装置1及び複数の給水装置2により給水システムは構成されている。遠隔管理装置1と各給水装置2とは、無線通信又は有線通信(無線通信と有線通信とを組み合わせた通信も含む。)にて互いに通信可能である。
【0013】
<1.1 給水装置の概要>
各給水装置2は、図2に示されるように、電動ポンプ3、蓄圧器5、制御盤7及び水位検出器9、並びに圧力センサPs及び流量センサFs等を少なくとも備える。電動ポンプ3は、ポンプ部及びモータ部等を有する給水用ポンプである。
【0014】
なお、本実施形態では、同一仕様の電動ポンプ3が複数設けられている。各電動ポンプ3の吐出し側は、建物の配水管側に接続されている。そして、各電動ポンプ3は、受水槽11に貯留された水を配水管を通して建物に供給する。
【0015】
蓄圧器5は、各電動ポンプ3の吐出し側に接続されて全ての電動ポンプ3が停止しているときに給水圧を保持する。なお、蓄圧器5は、不活性ガスが充填されたガス室の内圧により、全ての電動ポンプ3が停止しているときの給水圧を保持する。
【0016】
圧力センサPsは、電動ポンプ3の吐出し側にて給水圧を検出する。流量センサFsは電動ポンプ3の吐出し流量を検出する。本実施形態では、電動ポンプ3の台数と同数の流量センサFsを有し、かつ、各流量センサFsは、対応する電動ポンプ3の吐出し口にて流量を検出する。
【0017】
水位検出器9は、受水槽11内に貯留している水量、つまり水位を検出する。本実施形態に係る水位検出器9は、共通(コモン)電極9A及び複数の水位電極9B~9D等を有して構成されている。そして、コモン電極9Aと各水位電極9B~9Dとの間には、所定の電圧(例えば、12V)が印加されている。
【0018】
制御盤7は、ポンプ制御部71及び点検制御部72等を収納するケーシングである。当該制御盤7内には、ポンプ制御部71及び点検制御部72に加えて、第1通信部73、第2通信部74、受水制御部75、主電源装置76、第1電源部77、第2電源部78及び第3電源部79等が収納されている。
【0019】
<第1通信部及び第2通信部>
第1通信部73は、遠隔管理装置1との間で通信を行うための通信回路である。第2通信部74は、携帯型無線通信機器等の主に近距離無線通信機器との間で通信を行うための通信回路である。
【0020】
<受水制御部>
受水制御部75は、コモン電極9Aと各水位電極9B~9Dとの間の通電状態を利用して受水槽11内の水位を把握するとともに、把握した水位を応じて電動式の流入弁13の開閉を制御する。
【0021】
なお、受水制御部75は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されている。そして、当該受水制御部75にて受水制御用のソフトウェアが実行されることにより、上記の作動が実行される。
【0022】
<ポンプ制御部>
ポンプ制御部71は、圧力センサPs及び流量センサFsの検出値を利用して各電動ポンプ3の作動を制御する。ポンプ制御部71は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されている。
【0023】
そして、当該ポンプ制御部71にてポンプ制御用のソフトウェアが実行されることにより、電動ポンプ3の作動が制御される。ポンプ制御部71は、駆動装置4を介して電動ポンプ3の停止及び稼働を制御する。
【0024】
駆動装置4は、インバータ方式の駆動回路にて構成されている。なお、本実施形態に係る給水装置2は、電動ポンプ3と同数の駆動装置4を有する。各駆動装置4は、インバータ回路41及びコンバータ部42等を有して構成されている。
【0025】
各インバータ回路41は、対応する電動ポンプ3のモータ部に駆動電流を供給する。各コンバータ部42は、対応するインバータ回路41に直流電力を供給する。つまり、コンバータ部42は、商用電源を直流電力に変換してインバータ回路41に供給する。
【0026】
そして、各駆動装置4は、ポンプ制御部71から出力される指令周波数に応じた周波数(以下、出力周波数という。)の駆動電流をモータ部に供給する。これにより、電動ポンプ3の回転速度がポンプ制御部71により可変制御される。
【0027】
ポンプ制御部71は、圧力センサPsを利用して起動制御及び目標圧力制御を実行する。起動制御は、全ての電動ポンプ3が停止している状態において、給水圧が予め決められた値以下となったときに電動ポンプ3を起動させる制御である。なお、ポンプ制御部71は、起動制御の実行時には、前回起動させた電動ポンプ3と異なる電動ポンプ3を起動させる。
【0028】
目標圧力制御は、給水圧が目標とする圧力(以下、目標圧力という。)となるように電動ポンプ3の回転速度を調整する制御である。なお、目標圧力は、例えば、予め決められた値、又は給水量もしくは指令周波数の関数として決定される値である。
【0029】
ポンプ制御部71は、流量センサFsを利用して小水量停止制御を実行する。小水量停止制御は、流量センサFsの検出流量、つまり給水量が予め決められた流量以下となったときに電動ポンプ3を停止させる制御である。
【0030】
<主電源装置、第1電源部~第3電源部>
第1電源部77は、予め決められた第1電圧(例えば、3.3V)の直流電力を、制御部71、72、75等に供給する。第2電源部78は、予め決められた第2電圧(例えば、5V)の直流電力を、流量センサFs、各通信部73、74、及び表示・操作部(図示せず。)等に供給する。
【0031】
第3電源部79は、予め決められた第3電圧(例えば、12V)の直流電力を、圧力センサPs、流入弁13及び水位検出器9等に供給する。主電源装置76は、第1電源部77、第2電源部78及び第3電源部79に電力を供給する。
【0032】
<2.点検制御部>
点検制御部72は、第1電源部77~第3電源部79それぞれに対して、少なくとも劣化点検制御、実行タイミング決定制御、及び情報送信制御を実行する。以下、第1電源部77~第3電源部79のうち任意の電源部を示す場合には、単に「電源部」と記す。
【0033】
なお、点検制御部72は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されている。そして、点検制御部72にて点検制御用ソフトウェアが実行されることにより、点検制御部72が実現される。
【0034】
<2.1 劣化点検制御の概要>
劣化点検制御は、少なくとも電源部の出力電圧を示す信号(以下、電源電圧Vpという。)を利用して当該電源部の劣化を判断する機能を発揮する制御である。
【0035】
具体的には、点検制御部72は、前回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧Vp(n)と今回の劣化点検制御の実行時に用いた電源電圧Vp(n+1)と差(以下、変化量Δvという。)が予め決められた閾値Vcより大きくなったか否かに基づいて劣化判断をする。
【0036】
つまり、点検制御部72は、{Vp(n)-Vp(n+1)}>Vcとなったときに、電源部の劣化が進行したものとみなす。換言すれば、点検制御部72は、変化量Δvが正常とみなすことが可能な変動幅を超えたときに、電源部の劣化が進行したものとみなす。
【0037】
<2.2 実行タイミング決定制御の概要>
実行タイミング決定制御は、変化量Δvを利用して、次回の劣化点検制御を実行するタイミングを決定する制御である。以下、劣化点検制御が実行されるタイミングとその次の劣化点検制御が実行されるタイミングとの間隔を実行間隔Intという。
【0038】
すなわち、点検制御部72は、原則として、予め決められた実行間隔Int毎に劣化点検制御を実行する。しかし、変化量Δvが閾値Vcより大きくなった場合には、点検制御部72は、次回の劣化点検制御を実行するまで実行間隔Intを前回の実行間隔Intより短くする。
【0039】
具体的には、点検制御部72は、変化量Δvが閾値Vc未満の場合には、実行間隔Int実行間隔Intを6ヶ月相当の稼働時間とし、変化量Δvが閾値Vcより大きくなった場合には、実行間隔Intを1ヶ月相当の稼働時間とする。
【0040】
<2.3 情報送信制御の概要>
点検制御部72は、情報送信制御として、第1送信制御、第2送信制御及び第3送信制御が実行可能である。以下、変化量Δvが閾値Vcより大きくなった電源部を劣化電源とし、当該劣化電源の電源電圧を劣化電圧Vdという。
【0041】
<第1送信制御>
第1送信制御は、劣化点検制御の実行時に、電源部を示す識別情報、当該電源部の電源電圧Vpを示す情報(以下、電圧情報)、及び当該電源部が劣化電源であるか否かを示す情報(以下、劣化情報という。)を、遠隔管理装置1に送信する制御である。
【0042】
そして、点検制御部72は、遠隔管理装置1に送信した電圧情報及び劣化情報をRAM等の記憶部(図示せず。)に記憶する。このため、劣化電源であると判断されたときの電圧情報は、劣化電圧Vdとなる。なお、点検制御部72は、前回の電圧情報及び劣化情報を上書きして今回の電圧情報及び劣化情報を記憶させる。
【0043】
<第2送信制御>
第2送信制御は、停止直前パラメータを取得するとともに、当該取得された停止直前パラメータを電源部を示す識別情報と併せて遠隔管理装置1に送信する制御である。
【0044】
停止直前パラメータとは、電動ポンプ3が小水量停止制御により停止する直前の駆動パラメータをいう。駆動パラメータとは、インバータ回路41の出力周波数及び出力電流、並びにコンバータ部42の直流電圧の総称である。
【0045】
このため、点検制御部72は、図3に示されるように、小水量停止制御が実行される度に(S1:YES)、停止直前パラメータを取得するとともに(S2)、その取得された停止直前パラメータをRAM等の記憶部(図示せず。)に記憶する(S3)。
【0046】
そして、点検制御部72は、劣化点検制御が実行された時に、記憶部に記憶されている停止直前パラメータを、電源部を示す識別情報と併せて遠隔管理装置1に送信する。なお、点検制御部72は、前回の停止直前パラメータを上書きして今回の停止直前パラメータを記憶させる。
【0047】
<第3送信制御>
第3送信制御は、携帯型無線通信機器からの信号(以下、エントリ信号という。)を受信したときに実行される制御である。
【0048】
すなわち、点検制御部72は、図4に示されるように、エントリ信号を受信すると(S5:YES)、劣化電源の電源電圧Vp、つまり劣化電圧Vdを取得する(S6)。次に、点検制御部72は、その取得した劣化電圧Vd、及びその取得の直前に既に取得されている劣化電圧Vdを当該携帯型無線通信機器に送信する(S7)。
【0049】
換言すれば、点検制御部72は、エントリ信号を受信すると、受信した時に取得した劣化電圧Vd、及び記憶部に記憶されている取得済みの劣化電圧Vdを携帯型無線通信機器に送信する。なお、エントリ信号には、少なくとも劣化電源を示す識別情報が含まれている。
【0050】
<2.4 劣化点検制御等の詳細>
図5は、例えば第1電源部77で実行される劣化点検制御等を示す制御フローである。なお、当該制御は、給水装置2の電源スイッチ(図示せず。)が投入されると起動し、電源スイッチが遮断されると、停止する。
【0051】
当該制御が起動されると、点検制御部72は、対象電源部(この例では、第1電源部77)が劣化電源であるか否かを判断する(S11)。なお、本実施形態に係る点検制御部72は、劣化電源であることを示すフラグが記憶部に記憶されているか否かに基づいて当該判断をする。
【0052】
対象電源部が劣化電源でないと判断された場合には(S11:YES)、点検制御部72は、前回の劣化点検制御からの稼働時間が6ヶ月を越えたか否かを判断する(S12)。そして、稼働時間が6ヶ月を越えたときに(S12:YES)、点検制御部72は、対象電源部の電源電圧Vpを取得するとともに、その取得した電源電圧Vpを記憶する(S13)。
【0053】
次に、点検制御部72は、前回の劣化点検制御にて取得した電源電圧VpとS13にて取得した電源電圧Vpとの差、つまり変化量Δvを演算した後(S14)、変化量Δvが閾値Vc以下であるか否かを判断する(S15)。
【0054】
変化量Δvが閾値Vc以下である場合には(S15:YES)、点検制御部72は、電源部を示す識別情報、電圧情報、劣化情報及び停止直前パラメータを遠隔管理装置1に送信する(S17)。
【0055】
変化量Δvが閾値Vcより大きい場合には(S15:NO)、点検制御部72は、対象電源部を劣化電源であるとみなし、その旨を示すフラグを記憶した後(S16)、S17を実行する。
【0056】
また、S11にて対象電源部が劣化電源であると判断された場合には(S11:NO)、点検制御部72は、前回の劣化点検制御からの稼働時間が1ヶ月を越えたか否かを判断する(S18)。
【0057】
そして、稼働時間が1ヶ月を越えたときに(S18:YES)、点検制御部72は、対象電源部の電源電圧Vpを取得するとともに、その取得した電源電圧Vpを記憶した後(S19)、S17を実行する。
【0058】
<3.本実施形態に係る給水システムの特徴>
本実施形態に係る給水システムでは、重要な機器の1つである電源部についての劣化判断が適切なタイミングで実行され得る。延いては、メンテナンス作業を行う作業者は、電源部が現実に故障する前に、当該電源部を修理又は交換することが可能となり得る。
【0059】
つまり、点検作業を行う人員を必要とする定期点検を、例えば年1回に限定し、人為的な点検項目を削減することが可能となる、さらに、劣化電源が他の電源部に比べて短い間隔で自動点検されるので、電源部の機能喪失に陥る前に劣化した部品を交換することが可能となる。
【0060】
なお、劣化電源部が修理又は交換(以下、修理等という。)された場合には、当該修理等が実行される前の電源電圧Vpや劣化情報が初期値又はヌル値に再設定される。このため、修理等がされた以降、点検制御部72は、修理等がされた電源部を劣化の無い電源部とみなす。
【0061】
給水システムは、携帯型無線通信機器からのエントリ信号を受信したときに、劣化電圧Vdを取得するとともに、当該取得した劣化電圧Vd及び当該取得の直前に既に取得されている劣化電圧Vdを当該携帯型無線通信機器に送信する。
【0062】
これにより、定期点検を行う者(以下、サービスマンという。)がスマートフォン等の携帯型無線通信機器からエントリ信号を給水装置2に送信すれば、サービスマンは、取得した劣化電圧Vd及び当該取得の直前に既に取得されている劣化電圧Vdを自動的に得ることができる。
【0063】
延いては、当該サービスマンは、劣化の度合いを判断して、修理又は交換作業を行うことが可能となる。なお、サービスマンは、劣化電源が発生した旨の劣化情報が遠隔管理装置1に送信されたとき、又は予め決められた定期の間隔で給水装置2の点検を行う。
【0064】
ところで、小水量停止制御により電動ポンプ3が停止する直前は、電動ポンプ3が安定稼働している。このため、インバータ回路41の出力電圧、出力周波数、出力電流の経時的な変化は、インペラ等の可動部の摩耗、又はインバータ回路41自体の電力系回路の異常の予兆と考えられる。
【0065】
また、コンバータ部42の直流電圧は、消耗部品である電解コンデンサにより作られるため、リップルの増加により、直流電圧が低下した場合、運転中のトリップにつながるため、早期に部品交換する必要がある。
【0066】
したがって、停止直前パラメータを劣化点検制御の実行時に遠隔管理装置1に送信すれば、電動ポンプ3及び駆動装置4の異常が現実に発生する前に、それらを修理又は交換することが可能となる。
【0067】
(第2実施形態)
本実施形態に係る給水装置2は、図6に示されるように、ポンプ制御部71に異常が発生したか否かを判断する異常判断部8を備える。そして、点検制御部72は、異常判断部8の判断結果を、劣化点検制御の実行時に遠隔管理装置1に送信する。
【0068】
なお、異常判断部8もCPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータで構成されている。当該異常判断は、例えば、以下の手法により実行される。
【0069】
すなわち、異常判断部8は、当該マイクロコンピュータ内部の乱数発生器により作成した乱数を、DA出力ポートよりアナログ電圧を出力して、ポンプ制御部71のADポートに当該アナログ電圧を入力させ、当該ポンプ制御部71にてデジタル変換させる。
【0070】
次に、異常判断部8は、ポンプ制御部71にてデジタル変換された数値と自身が作成した乱数と比較する。そして、異常判断部8は、一致しなかった場合には、ポンプ制御部71に異常が発生したと判断し、一致した場合は、ポンプ制御部71に異常が発生していないと判断する。
【0071】
これにより、ポンプ制御部71の内部回路ので発生する微小電流のリーク等のソフトウェアに起因しないハードウェアの異常を検出することが可能となる。そして、上記のようなプロセスにより、ビット出力電圧が適正であるか否か、及びビット入力電圧の判定回路が正常であるか否かを、検証するようにしている。
【0072】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、点検制御部72が給水装置2に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、点検制御部72が遠隔管理装置1に設けられた構成であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、一度、実行間隔Intが短くなると、それ以降は、実行間隔Intが短くならない構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、実行間隔Intが短くなった以降であっても、変化量Δvが第2の閾値以上となった場合には、再度、実行間隔Intが短くなる構成であってもよい。
【0075】
上述の実施形態では、3種類の電源部を備える給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1種類又は4種類以上の電源部を備える給水装置であってもよい。
【0076】
上述の実施形態では、電源部を示す識別情報、電圧情報、劣化情報及び停止直前パラメータを劣化点検制御が実行されるタイミングで遠隔管理装置1に送信される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、それら情報のうちいずれかのみを劣化点検制御が実行されるタイミングと異なるタイミングで送信される構成であってもよい。
【0077】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1… 遠隔管理装置 1…給水システム 2… 給水装置
3… 電動ポンプ 4…駆動装置 5… 蓄圧器 7… 制御盤
9… 水位検出器 11…受水槽 13… 流入弁 41… インバータ回路
42… コンバータ部 71…ポンプ制御部 72… 点検制御部
73… 第1通信部 74…第2通信部 75… 受水制御部
76… 主電源装置 77…第1電源部 78… 第2電源部
79… 第3電源部
図1
図2
図3
図4
図5
図6