(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084922
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】水溶性ケイ酸塩及び水溶性酸を含む、ケラチン繊維を処置するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/25 20060101AFI20230613BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q5/00
A61K8/36
A61K8/55
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021199317
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】アドリヤン・ケゼール
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・エン・ティン・リー
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アドリン・マーリアク
(72)【発明者】
【氏名】トン・シン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB332
4C083AB371
4C083AB372
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC231
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC472
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD132
4C083CC31
4C083CC38
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】より優れた品質、より良好な繊維強度及びより長い色持ち等の非常に有益な美容効果をケラチン繊維にもたらすことができる、ケラチン繊維を処置するための組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置するための組成物であって、
(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩;
(b)少なくとも1種の水溶性酸;及び
(c)水
を含み、水溶液の形態をとり、2~10のpH値を有する、組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置するための組成物であって、
(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩;
(b)少なくとも1種の水溶性酸;及び
(c)水
を含み、水溶液の形態をとり、2~10のpH値を有する、組成物。
【請求項2】
(a)水溶性ケイ酸塩が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及びこれらの混合物から、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの混合物から、より優先的にはケイ酸ナトリウムから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物中に存在する(a)水溶性ケイ酸塩の量が、前記組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に0.8質量%以上であり、且つ/又は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更により好ましくは2質量%以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(b)水溶性酸が、有機酸から、好ましくは1つ以上のカルボン酸基及び/又はホスホン酸基を有する有機酸から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(b)水溶性酸が、脂肪族モノカルボン酸及びヒドロキシ酸から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(b)水溶性酸が、グリオキシル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、フィチン酸及びこれらの混合物から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物中の(b)水溶性酸の量が、前記組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に1質量%以上であり、及び/又は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、特に3質量%以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物のpH値が、3~9、より好ましくは3~8、更により好ましくは3~6、特に4~6の範囲である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物中の(c)水の量が、前記組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上であり、及び/又は99.5質量%以下、好ましくは99質量%以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の成分(a)、(b)及び(c)の総量が、前記組成物の総質量に対して、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは85質量%以上、優先的には90質量%以上、より優先的には95質量%以上、更により優先的には97質量%以上、特に98質量%以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ケラチン繊維、好ましくは毛髪のケア又はコンディショニングのための美容方法であって、
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン繊維上へ適用する工程を含む、美容方法。
【請求項12】
(c)水を含み2~10のpH値を有する水溶液中での(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩と(b)少なくとも1種の水溶性酸との組合せの使用であって、毛髪等のケラチン繊維をケア又はコンディショニングするための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性ケイ酸塩及び酸性化合物を含む、化粧用組成物、特に毛髪等のケラチン繊維のための化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸アルカリ等の水溶性ケイ酸塩は、毛髪の染色及び脱色用製品に幅広く使用されており、高いpHをもたらし、且つ金属イオンをキレートする。
【0003】
例えば、WO2021/009083は、ケラチン繊維を処置する方法であって、以下の連続的工程:i)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩を含む組成物(A)をケラチン繊維に適用する工程と;ii)アミノ酸、オリゴペプチド、これらの塩、これらの溶媒和物、例えば水和物、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物(b)を含む組成物(B)をケラチン繊維に適用する工程とを含む方法を開示している。
【0004】
化粧品分野、特にヘアケア化粧品分野において、ケラチン繊維に美容効果を与えることができる、ケラチン繊維の処置及び/又はケアのための化粧用組成物に対して強い要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より優れた品質、より良好な繊維強度及びより長い色持ち等の非常に有益な美容効果をケラチン繊維にもたらすことができる、ケラチン繊維を処置するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の目的は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置するための組成物であって、
(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩;
(b)少なくとも1種の水溶性酸;及び
(c)水
を含み、水溶液の形態をとり、2~10のpH値を有する、組成物によって達成することができる。
【0008】
(a)水溶性ケイ酸塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ケイ酸塩及びこれらの混合物から、好ましくはアルカリ金属ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム及びこれらの混合物から、より優先的にはケイ酸ナトリウムから選択されてもよい。
【0009】
組成物中に存在しうる(a)水溶性ケイ酸塩の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に0.8質量%以上であり、且つ/又は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更により好ましくは2質量%以下であってもよい。
【0010】
(b)水溶性酸は、好ましくは1つ以上のカルボン酸基及び/又はホスホン酸基を有する有機酸から選択される有機酸であってもよい。
【0011】
(b)水溶性酸は、脂肪族モノカルボン酸及びヒドロキシ酸から選択されてもよい。
【0012】
(b)水溶性酸は、グリオキシル酸(glycoxylic acid)、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、フィチン酸及びこれらの混合物から選択することができる。
【0013】
組成物中の(b)水溶性酸の量は、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に1質量%以上であってもよく、且つ/又は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、特に3質量%以下であってもよい。
【0014】
組成物のpH値は、3~9、より好ましくは3~8、更により好ましくは3~6、特に4~6の範囲でありうる。
【0015】
組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上であってもよく、且つ/又は99.5質量%以下、好ましくは99質量%以下であってもよい。
【0016】
組成物中の成分(a)、(b)及び(c)の総量は、組成物の総質量に対して、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは85質量%以上、優先的には90質量%以上、より優先的には95質量%以上、更により優先的には97質量%以上、特に98質量%以上であってもよい。
【0017】
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を、ケアする又はコンディショニングする美容方法であって、本発明による組成物をケラチン繊維に適用する工程を含む、美容方法にも関する。
【0018】
本発明はまた、(c)水を含み2~10のpH値を有する水溶液中での(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩と(b)少なくとも1種の水溶性酸との組合せの使用であって、毛髪等のケラチン繊維をケア又はコンディショニングするための使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例2及び4~6並びに比較例1の曲げ角度を決定するやり方の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
鋭意検討の結果、本発明者らは、驚くべきことに、本発明による組成物が、ケラチン繊維の品質、ケラチン繊維の強度、及びケラチン繊維の色持ちを強化することができることを発見し、したがって本発明が完成した。
【0021】
したがって、本発明の一態様は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置するための組成物であって、
(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩;
(b)少なくとも1種の水溶性酸、及び
(c)水
を含み、水溶液の形態をとり、2~10のpH値を有する、組成物である。
【0022】
本発明の別の態様は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪をケア及び/又はコンディショニングするための美容方法又は使用であって、本発明による組成物をケラチン繊維に適用する工程を含む、美容方法又は使用である。
【0023】
以下では、本発明による方法及び方法をそれぞれ詳細に説明していく。
【0024】
[組成物]
本発明による組成物は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪を処置及び/又はケアするための組成物であって、
(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩;
(b)少なくとも1種の水溶性酸;及び
(c)水
を含み、水溶液の形態をとり、2~10のpH値を有する、組成物である。
【0025】
本発明による組成物は、毛髪等のケラチン繊維を処置することが意図される。用語「ケラチン繊維」は、頭髪、体毛、睫毛、眉毛、羊毛、アンゴラ、カシミヤ又は毛皮等のヒト又は動物起源の繊維を意味する。本発明によれば、ケラチン繊維は、好ましくはヒトのケラチン繊維、より優先的には毛髪である。
【0026】
本発明による組成物は、水溶液の形態にある。
【0027】
本発明による組成物は、2~10、好ましくは3~9、より好ましくは3~8、更により好ましくは3~6、特に4~6のpH値を有する。組成物のpHは、化粧品分野において一般的に使用されるアルカリ剤及び/又は酸剤を使用して所望の値に調整することができる。
【0028】
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩、(b)少なくとも1種の水溶性酸、及び(c)水を含む。これらの成分については、それぞれ、詳細に説明していく。
【0029】
(水溶性ケイ酸塩)
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩を含む。
【0030】
用語「水溶性ケイ酸塩」は、本明細書では、通常の室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)の水中で0.5質量%超、好ましくは1質量%超の溶解度を有するケイ酸塩を意味する。
【0031】
水溶性ケイ酸塩は、好ましくは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属ケイ酸塩、及びこれらの混合物から選択される。より優先的には、水溶性ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウム、並びにこれらの混合物等のアルカリ金属ケイ酸塩から選択される。更により優先的には、水溶性ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウムから選択される。更により好ましくは、水溶性ケイ酸塩は、メタケイ酸ナトリウムである。
【0032】
水溶性ケイ酸塩は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に0.8質量%以上、及び/又は10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更により好ましくは2質量%以下の量で存在しうる。
【0033】
水溶性ケイ酸塩は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.3質量%~5質量%、より好ましくは0.6質量%~3質量%、更により好ましくは0.7質量%~2質量%、特に0.8質量%~2質量%の量で存在しうる。
【0034】
(水溶性酸)
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の水溶性酸を含む。
【0035】
用語「水溶性酸」は、本明細書では、通常の室温(25℃)及び大気圧(760mmHg)の水中で0.5質量%超、好ましくは1質量%超の溶解度を有する酸を示す。
【0036】
本発明において使用される水溶性酸は、有機酸又は無機酸である。好ましくは、水溶性酸は、有機酸から選択される。
【0037】
無機酸は、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、リン酸(H3PO4)、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。本発明の一実施形態において、水溶性酸は、ピロリン酸、トリメタリン酸、及びヘキサメタリン酸、並びにこれらの組合せ等の無機リン酸であってもよい。
【0038】
有機酸は、例えば、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の酸性基を有するものから選択することができる。好ましくは、有機酸は、1つ以上のカルボン酸基及び/又はリン酸基を有するものから選択される。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態において、有機酸はカルボン酸である。有用なカルボン酸の非限定的な例としては、グリオキシル酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、シトラコン酸、クエン酸、マレイン酸、グリコール酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、酢酸、乳酸、グリオキシル酸一水和物、グルコン酸、プロピオン酸、アコニット酸、及びEDTA、並びにこれらの組合せを挙げることができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、カルボン酸は、2~10個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは2~7個の炭素原子を含んでもよい。
【0041】
本発明の別の実施形態において、有機酸はリン酸から選択される。有用なリン酸の非限定的な例としては、フィチン酸、イノシトール三リン酸、イノシトールペンタキスリン酸、トリポリリン酸、及びアデノシン三リン酸、並びにこれらの組合せを挙げることができる。
【0042】
本発明の一実施形態において、有機酸はモノカルボン酸から選択される。好適なモノカルボン酸の例には、アリール酸、(ヘテロ)環状酸、アルキル酸、並びに/又は脂肪族モノカルボン酸、例えば酢酸、モノ、ジ、若しくはトリクロロ酢酸、グリオキシル酸、グリコール酸、アクリル酸、メタクリル酸、ピルビン酸、プロピオン酸、D-グルコン酸、及びD-ガラクツロン酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
一実施形態において、有機酸は、2つ以上の酸性基を有しうる。このタイプの有機酸は、2つの酸性基を有するもの、3つの酸性基を有するもの、及び4つ以上の酸性基を有するものであってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、2つ以上の酸性基を有する有機酸は、ポリカルボン酸であってもよい。
【0045】
2つのカルボン酸基を有するポリカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、シトラコン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、アジピン酸、及びアゼライン酸等のジカルボン酸を挙げることができる。
【0046】
3つのカルボン酸基を有するポリカルボン酸としては、クエン酸及びアコニット酸等のトリカルボン酸を挙げることができる。
【0047】
好ましい一実施形態において、有機酸は、クエン酸及びアコニット酸等のトリカルボン酸である。
【0048】
4つ以上のカルボン酸基を有するポリカルボン酸としては、EDTA、ペンタカルボン酸、及びヘキサカルボン酸等のテトラカルボン酸を挙げることができる。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態では、水溶性酸はヒドロキシ酸から選択することができる。したがって、本発明による組成物は、成分(b)として、少なくとも1種のヒドロキシ酸を含んでもよい。
【0050】
ヒドロキシ酸は、少なくとも1つのヒドロキシ官能基を含む、少なくとも1種のモノ又はポリカルボン酸を含んでもよい。(a)ヒドロキシ酸は、α-及びβ-ヒドロキシ酸から選択することができる。例えば、(a)ヒドロキシ酸は、α-ヒドロキシ酸であってもよい。α位及びβ位とは、ヒドロキシ官能基のうちの少なくとも1つが、酸のカルボキシル官能基のうちの少なくとも1つに対するα位又はβ位を占めていること、すなわち、それぞれ、ヒドロキシ官能基を有する炭素に対して結合しているか、又はカルボキシル官能基を有する炭素に隣接する炭素に対して結合しているかという事実を反映している。酸は、例えば組成物に対して与えられる最終pHに応じて、遊離酸、その関連する塩(例えば、有機塩基及びアルカリ金属との塩)、及び任意選択で、対応するラクチド(すなわち、複数の分子の自己エステル化によって得られる形態)から選択される形態で存在してもよい。
【0051】
用語「α-ヒドロキシ酸」は、本明細書では、隣接する(アルファ)炭素原子上に少なくとも1つのヒドロキシ基を有するカルボン酸又はリン酸等の酸を意味する。
【0052】
α-ヒドロキシ酸は、以下の化学式:
(Ra)(Rb)C(OH)COOH
(式中、
Ra及びRbは、H、F、Cl、Br、I、アルキル又はアラルキル基(飽和又は不飽和であり、異性体又は非異性体であり、直鎖若しくは分岐鎖、又は環状形態であり、1から7個の炭素原子を有する)であり、加えて、Ra及びRbは、OH、CHO、COOH、及び1から6個の炭素原子を有するアルコキシル基を有してもよい)によって表すことができる。
【0053】
Ra及びRbに典型的なアルキル、アラルキル、及びアルコキシル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及びペンチルが挙げられる。
【0054】
α-ヒドロキシ酸は、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、フィチン酸及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0055】
ヒドロキシ酸は、2つ以上のカルボン酸基、より好ましくは2つ又は3つのカルボン酸基を有することが好ましい。
【0056】
また、ヒドロキシ酸は、1つ以上のヒドロキシ基、より好ましくは1つ又は2つのヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0057】
ヒドロキシ酸はまた、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、粘液酸、フィチン酸及びこれらの混合物からなる群から選択することも好ましい。
【0058】
更に好ましい実施形態において、(b)水溶性酸は、グリオキシル酸等の脂肪族モノカルボン酸、並びにヒドロキシ酸、特にα-ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、粘液酸、フィチン酸及びこれらの混合物から選択される。
【0059】
別の好ましい実施形態において、(b)水溶性酸は、グリオキシル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マンデル酸、グルコン酸、フィチン酸及びこれらの混合物から選択される。
【0060】
非限定的な一実施形態において、有機酸化合物は、約6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下のpKaを有する。有機酸のpKaは、概ね0.5以上、好ましくは1以上である。
【0061】
本発明の一実施形態において、有機酸化合物は、1モル当たり1000g(g/mol)未満、好ましくは1モル当たり750g(g/mol)未満の数平均分子量を有しうる。
【0062】
本発明の水溶性酸は、塩の形態であってもよい。用語「塩」は、本明細書では、好適な塩基を酸性化合物に添加することによって形成される塩を意味する。塩としては、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0063】
好ましい一実施形態において、水溶性酸は、塩の形態ではない。
【0064】
水溶性酸は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更により好ましくは0.7質量%以上、特に1質量%以上で存在してもよく、及び/又は15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更により好ましくは5質量%以下、特に3質量%以下の量であってもよい。
【0065】
水溶性酸は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、0.1質量%~15質量%、好ましくは0.2質量%~10質量%、より好ましくは0.5質量%~7質量%、更により好ましくは0.7質量%~5質量%、特に1質量%~3質量%の量で存在しうる。
【0066】
(水)
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0067】
水は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは90質量%以上で存在してもよく、及び/又は99.5質量%以下、好ましくは99質量%以下の量であってもよい。
【0068】
(補助剤)
本発明による組成物は、ケラチン繊維の処置のために組成物中で慣例的に使用されうる1種以上の追加の任意選択の補助剤を更に含有しうる。補助剤は、生理学的に許容される媒体、特に水溶性有機溶媒;カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性界面活性剤;カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性若しくは両性イオン性ポリマー又はこれらの混合物;増粘剤;浸透剤;pH調整剤;抜け毛防止剤;フケ防止剤;酸化防止剤;懸濁化剤;金属イオン封鎖剤;緩衝剤;香料;皮膚軟化剤;分散剤;染料及び/又は顔料;成膜剤;安定剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;補助防腐剤;乳白剤;並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0069】
補助剤は、本発明の第2の組成物中に、組成物の総質量に対して、好ましくは0.01質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.5質量%~5質量%、更により好ましくは0.5質量%~2質量%の範囲の量で存在してもよい。
【0070】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明による組成物は、アミノ酸及び/又はオリゴペプチドを、第2の組成物の総量に対して1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の量で含む。本発明の別の実施形態において、第2の組成物は、アミノ酸及び/又はオリゴペプチドを含まない。
【0071】
本発明の別の特定の実施形態において、成分(a)、(b)及び(c)の総量は、組成物の総質量に対して、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更により好ましくは85質量%以上、優先的には90質量%以上、より優先的には95質量%以上、更により優先的には97質量%以上、特に98質量%以上である。
【0072】
本発明による組成物は、当業者に周知の方法のいずれかに従って、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合することによって調製することができる。
【0073】
本発明による組成物は、ケラチン繊維、好ましくは毛髪の処置、例えばケア又はコンディショニングのために使用することができる。
【0074】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはヘア化粧用組成物、より好ましくはリンスオフタイプのヘア化粧用組成物であってもよい。
【0075】
例えば、本発明による組成物は、シャンプー及びコンディショナー等のヘアケア化粧品に使用されうる。
【0076】
本発明による組成物は、当該技術分野における任意の従来の手段によって、例えば手動で、スプレー、ブラシ及びくしを使用してケラチン繊維に適用することができる。
【0077】
本発明の一実施形態において、本発明による組成物を、染色したケラチン繊維、例えば染色した毛髪に適用して、ケラチン繊維の色持ちを改善することができる。特に、本発明による組成物は、酸化染料又は直接染料によって染色されたケラチン繊維に使用することができる。酸化染料及び直接染料の種は特に限定されず、本発明は、一般的な酸化染料又は直接染料によって染色されたケラチン繊維に使用することができる。
【0078】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、ケラチン繊維、好ましくは毛髪をケア又はコンディショニングするための美容方法であって、
ケラチン繊維上へ、本発明による組成物を適用する工程を含む、方法にも関する。
【0079】
適用工程は、任意の従来の手段によって、例えばアプリケーター、例えば手動で、スプレー、ブラシ及びくしによって実施することができる。
【0080】
本発明の一実施形態において、ケラチン繊維は、染料、好ましくは酸化染料又は直接染料で染色されたケラチン繊維である。
【0081】
本発明による美容方法は、本発明による組成物をケラチン繊維上に、1秒から1時間、好ましくは10秒から45分、より好ましくは1分から40分、更により好ましくは5分から30分の範囲の時間、周囲条件下で静置しておく工程を更に含んでもよい。
【0082】
本発明はまた、(c)水を含み2~10のpH値を有する水溶液中での(a)少なくとも1種の水溶性ケイ酸塩と(b)少なくとも1種の水溶性酸との組合せの使用であって、毛髪等のケラチン繊維をケア又はコンディショニングするための、特に品質、繊維強度及び/又は色持ちを改善するための使用にも関する。
【実施例0083】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0084】
(実施例1から3及び比較例1)
(調製)
周囲条件下でメタケイ酸ナトリウム、フェノキシエタノール、存在する場合は酸性化合物、及び水を混合することによって実施例1~3及び比較例1による組成物を調製した。組成物の配合及びそのpH値を以下のTable 1(表1)にまとめる。Table 1(表1)に示す成分の量についての数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づく。
【0085】
【0086】
(変性温度の測定)
3つの毛髪見本(1g、27cm)を各実験に使用した。毛髪見本をクレンジングシャンプー組成物で洗浄し、脱イオン水で濯ぎ、次いでタオルで乾かした。クレンジングシャンプー組成物の配合を以下のTable 2(表2)に示す。Table 2(表2)に示す成分の量についての数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づく。実施例1~3及び比較例1による組成物各1gをブラシで毛髪見本に適用した。得られた処置済みの毛髪見本を、以下に説明するように変性温度の測定の分析に供した。加えて、得られた処置済みの毛髪見本をプレーンシャンプー組成物で更に3回洗浄し、洗浄した毛髪見本は、以下に説明する分析にも供した。プレーンシャンプー組成物の配合を以下のTable 2(表2)に示す。
【0087】
【0088】
次いで処置済みの毛髪見本(毛束)を、24℃及び40%RHの条件下で1時間静置した。毛髪見本を切ることによって7~10mgの毛髪見本サンプルを調製し、サンプルをステンレス製平鍋に入れた。50μlの脱イオン水をステンレス製平鍋に添加した後、平鍋を密封し、終夜保存した。処置済みの毛髪見本サンプルの変性温度を、高圧示差走査熱量測定(HP-DSC、Perkin Elmer DSC8000)を用いて測定した。加熱を、10℃/分の加熱速度で25℃~190℃まで行った。算出した変性温度をTable 3(表3)にまとめる。Table 3(表3)の参照値は、未処置の毛髪見本の結果を示す。
【0089】
ケラチン繊維の変性温度は、ケラチンタンパク質のα-構造からβ-構造への変化時の温度に対応する。したがって、高い変性温度を有するケラチン繊維は、より高い品質を有するが、その理由は、より高い変性温度が、ケラチンタンパク質が高温下でその構造を維持できることを反映するからである。
【0090】
【0091】
Table 1(表1)の結果から分かるように、比較例1による組成物で処置されたケラチン繊維は、対照サンプルより低い変性温度を示した。これは、水溶性ケイ酸塩を含む第1の組成物の適用によってケラチン繊維が損傷したことを示す。一方で、実施例1~3それぞれによる組成物で処置されたケラチン繊維は、比較例1より高い変性温度を示し、また、対照サンプルより更に高かった。これらの結果は、本発明による組成物の適用が、ケラチン繊維の品質を改善できたことを示す。これらの効果は、ケラチン繊維の内部修復が本発明による組成物によって増強されうることから達成されたように見える。
【0092】
(実施例2及び4から6並びに比較例1)
(調製)
実施例2及び比較例1による組成物に加えて、周囲条件下でメタケイ酸ナトリウム、クエン酸、フェノキシエタノール、及び水を混合することによって実施例4~6による組成物を調製した。組成物の配合及びそのpH値を以下のTable 4(表4)にまとめた。Table 4(表4)に示す成分の量についての数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づく。
【0093】
【0094】
(強度解析)
2つの毛髪見本(1g、27cm)を各実験について用意した。各毛髪見本をクレンジングシャンプー組成物で洗浄し、脱イオン水で濯ぎ、次いでタオルで乾かした。クレンジングシャンプー組成物の配合は、上記の実施例で使用した配合と同じだった(Table 2(表2)参照)。実施例2及び4~6並びに比較例1による組成物各1gを各毛髪見本に適用した。次いで毛髪見本を終夜、24℃及び40%RHで維持し、乾燥した処置済みの毛髪見本を得た。
【0095】
毛髪見本の根元をプレート上にクリップで固定した。他方、房の先端を持って上向きにし、次いで房の先端が下向きになりうるように、房の先端を解放した。プレートと、毛髪見本の根元との間の角度を測定した(
図1を参照)。平均値を曲げ角度として決定した。結果を以下のTable 5(表5)に示す。曲げ角度が大きいほど、毛髪見本の強度は良好である。
【0096】
【0097】
Table 5(表5)の結果から見て分かるように、実施例2及び4~6それぞれによる組成物は、比較例1及び対照と比較して、pHの範囲が3~9の毛髪見本の繊維強度を有意に改善できた。
【0098】
(色持ち)
3つの毛髪見本(1g、20cm)を各実験について用意した。毛髪見本を、以下のプロトコルに従って、酸化染料又は直接染料で染色し、染色された毛髪見本を得た。
【0099】
- 酸化染料
IHIPから購入した中国人ナチュラル100%グレー毛髪見本を27℃のホットプレート上に置いた。カラー製品(Alluria Ash Blue 8.11 tone 8, L' Oreal Professional)と酸化剤製品(Alluria Cream Oxidant, L' Oreal Professional)との1:1混合物を、混合物3g/毛髪1gの量で毛髪見本に適用し、該見本を周囲環境(25℃/40%RH)下で30分間静置し、次いで37℃の水道水で洗い落とした。クレンジングシャンプー組成物(Table 2(表2)を参照)で洗浄した後、毛髪見本をタオルで乾かし、次いでドライヤーで乾燥した。
【0100】
- 直接染料
IHIPから購入した中国人ナチュラル100%グレー毛髪見本を27℃のホットプレート上に置いた。カラー製品(Colorful Hair Navy Blue, L' Oreal Professional)を、3g/毛髪1gの量で該見本に適用し、該見本を周囲環境(25℃/40%RH)下で20分間静置し、次いで10分後に反転させ、次いで37℃の水道水で洗い落とした。クレンジングシャンプー組成物(Table 2(表2)を参照)で洗浄した後、毛髪見本をタオルで乾かし、次いでドライヤーで乾燥した。
【0101】
染色済みの各毛髪見本(1g、20cm)を、上記のTable 2(表2)に示すプレーンシャンプー組成物で1回シャンプー洗浄し、次いでタオルで乾かした。毛髪見本を周囲環境(25℃/40%RH)下でビニル製ラップ上に置き、実施例2による組成物1gを適用した。毛髪見本を5分間静置し、次いで37℃の水道水で洗い落とした。毛髪見本をタオル乾燥及びドライヤー乾燥し、実験のための準備を整えた。
【0102】
得られた染色済みの毛髪見本を、Table 2(表2)に示すプレーンシャンプー組成物でシャンプー洗浄し、37℃の水道水で洗い落とし、次いでドライヤー乾燥した。酸化染料で染色した毛髪見本の場合、シャンプー洗浄のサイクルを7回繰り返した。直接染料で染色した毛髪見本の場合、シャンプー洗浄のサイクルを3回繰り返した。
【0103】
シャンプー洗浄サイクルの前と後での染色済み毛髪見本の色の差を、Konica Minolta Spectrophotometer CM-3600Aを使用して測色値(L*(明度)、a*(緑-赤)、及びb*(青-黄))を測定することによって測定した。ΔE*(ΔL*a*b系に基づく染色済み毛髪見本の色とシャンプー洗浄された毛髪見本の色との間)を算出した。ΔE*が小さくなるほど、色持ちは良好である。結果をTable 6(表6)に示す。
【0104】
【0105】
Table 6(表6)の結果から見て分かるように、毛髪への本発明による組成物の適用は、酸化染料及び直接染料で染色された両方の毛髪見本において、対照より小さなΔE*を示すことができた。したがって、この結果は、本発明が、染色されたケラチン繊維に、より良好な色持ち及びカラー防止効果をもたらすことができることを示す。
【0106】
したがって、本発明による組成物は、より優れた品質、より良好な繊維強度及びより長い色持ち等の非常に有益な美容効果をケラチン繊維にもたらすことができるため、ケラチン繊維を処置するための化粧用組成物として非常に好適であると結論付けることができる。したがって、本発明による方法は、美容目的に非常に有用であり、消費者の大きな需要を満たすことができる。