(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084926
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20230613BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199328
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】世古 暢哉
(57)【要約】
【課題】直列に接続された熱電変換セルを有し、微細化が容易な熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】熱電変換素子100の熱電変換セル30A~30Cは、基板10の主面12の上に形成された熱電変換層40と、熱電変換層40を覆う絶縁層50と、第1層62と第2層66とを有する第1電極60と、第2電極70とを備える。第1層62は第1コンタクトホール52を介して熱電変換層40の主面42に接続し、第2層66は第1層62を覆う。第2電極70は第2コンタクトホール54を介して熱電変換層40の主面42に接続する。第2層66及び第2電極70と第1層62は、仕事関数が異なる材料から形成される。隣接する熱電変換セル30A~30Cにおいて、一方の熱電変換セル30B、30Cの第2層66と他方の熱電変換セル30A、30Bの第2電極70が一体に形成され、熱電変換セル30A~30Cが直列に接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の主面の上に設けられた、複数の熱電変換セルと、を備え、
前記熱電変換セルのそれぞれは、
前記基板の前記主面の上に形成された熱電変換層と、
前記熱電変換層を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され前記絶縁層の第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層の主面に接続する第1層と、前記絶縁層の上に形成され前記第1層を覆う第2層とを有する第1電極と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極と、を備え、
前記第2層は、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で、前記第1層を覆い、
前記第2層と前記第2電極は、前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成され、
隣接する前記熱電変換セルにおいて、一方の前記熱電変換セルの前記第2層と他方の前記熱電変換セルの前記第2電極が一体に形成されて、前記第1電極と前記第2電極が一対一で接続され、前記複数の熱電変換セルが直列に接続されている、
熱電変換素子。
【請求項2】
前記第1層は、前記第1コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆い、
前記第2電極は、前記第2コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆う、
請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記第1層は、第1基部と前記第1基部から延びる複数の第1櫛歯部とを有し、
前記第2電極は、第2基部と前記第2基部から延びる複数の第2櫛歯部とを有し、
前記第1櫛歯部と前記第2櫛歯部は、前記熱電変換層の前記主面において、交互に、対向して配置されている、
請求項1又は2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記複数の熱電変換セルは、マトリクス状に配列されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
基板の上に、複数の熱電変換層を形成する工程と、
前記複数の熱電変換層の上に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し前記熱電変換層のそれぞれの主面を露出する、複数の第1コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し、前記第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層のそれぞれの前記主面に接続する、複数の第1電極の第1層を形成する工程と、
前記第1電極の前記第1層が形成された前記絶縁層に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し前記熱電変換層のそれぞれの前記主面を露出する、複数の第2コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し、前記第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層のそれぞれの前記主面に接続する複数の第2電極と、前記第1電極の前記第1層のそれぞれを覆う複数の前記第1電極の第2層とを、前記第1電極の前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から共に形成して、前記熱電変換層と前記絶縁層と前記第1電極と前記第2電極とを備える複数の熱電変換セルを形成する工程と、を含み、
前記複数の熱電変換セルを形成する工程では、
前記第1電極の前記第2層を、前記第1電極の前記第1層が前記第1電極の前記第2層から露出しない状態で形成し、
隣接する前記熱電変換セルにおいて、一方の前記熱電変換セルの前記第1電極の前記第2層と他方の前記熱電変換セルの前記第2電極を一体に形成して、前記第1電極と前記第2電極とを一対一で接続し、前記複数の熱電変換セルを直列に接続する、
熱電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1電極の前記第1層は、前記第1コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆い、
前記第2電極は、前記第2コンタクトホールの開口を、前記熱電変換層が前記絶縁層から露出しない状態で覆う、
請求項5に記載の熱電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温度差によって、2つの電極間で熱起電力を発生させる熱電変換素子が知られている。例えば、特許文献1は、薄膜状の熱電変換材料層と、熱電変換材料層の一方の主面に設けられた第1電極と、熱電変換材料層の一方の主面の面内方向で第1電極と異なる箇所に設けられた第2電極と、を備える熱電変換素子を開示している。特許文献1では、第1電極を構成する材料の仕事関数と第2電極を構成する材料の仕事関数が、異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、70℃の温度差を与えた場合、熱電変換素子の開放端電圧の値は0.38mVと、開示されている。この開放端電圧の値は、市販されている、セルが直列接続されたペルチェ方式の熱流束センサにおける同条件での開放端電圧の値に対しておよそ1/10と、小さい。したがって、特許文献1の熱電変換素子を熱流束センサとして使用する場合には、熱流束センサのS/N比を確保するために、特許文献1の熱電変換素子を直列に接続することが好ましい。この場合、単位面積当たりの熱電変換素子の数を増やすために、熱電変換素子を微細化することが望まれる。また、特許文献1の熱電変換素子では、第1電極と第2電極との間隔を狭めることにより、短絡電流を増加させることができるので、この観点からも熱電変換素子の微細化が望まれる。
【0005】
一方、特許文献1の熱電変換素子を、フォトリソグラフィとエッチングにより微細化する場合、幾つかの問題が生じる虞がある。例えば、熱電変換材料層の一方の主面に第1電極を形成する場合、熱電変換材料層を構成する材料と第1電極を構成する材料が異なり、異なる電極電位を有する熱電変換材料層と第1電極が導通状態であるので、エッチング液中において、電池が熱電変換材料層と第1電極との間で形成される。その結果、熱電変換材料層と第1電極との電位差(電極電位の差)によって、電流が熱電変換材料層と第1電極との間に流れて、熱電変換材料層の溶解、第1電極を構成する材料の異常な溶解等が生じる虞がある。また、第1電極を形成された熱電変換材料層の一方の主面に第2電極を形成する場合も、エッチング液中においても同様に、電流が電池作用によって熱電変換材料層と第1電極と第2電極との間に流れて、熱電変換材料層と第1電極の溶解、第2電極を構成する材料の異常な溶解等が生じる虞がある。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、直列に接続された熱電変換セルを有し、微細化が容易な熱電変換素子及び熱電変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1観点に係る熱電変換素子は、
基板と、
前記基板の主面の上に設けられた、複数の熱電変換セルと、を備え、
前記熱電変換セルのそれぞれは、
前記基板の前記主面の上に形成された熱電変換層と、
前記熱電変換層を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の上に形成され前記絶縁層の第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層の主面に接続する第1層と、前記絶縁層の上に形成され前記第1層を覆う第2層とを有する第1電極と、
前記絶縁層の上に形成され、前記絶縁層の第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層の前記主面に接続する第2電極と、を備え、
前記第2層は、前記第1層が前記第2層から露出しない状態で、前記第1層を覆い、
前記第2層と前記第2電極は、前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成され、
隣接する前記熱電変換セルにおいて、一方の前記熱電変換セルの前記第2層と他方の前記熱電変換セルの前記第2電極が一体に形成されて、前記第1電極と前記第2電極が一対一で接続され、前記複数の熱電変換セルが直列に接続されている。
【0008】
第2観点に係る熱電変換素子の製造方法は、
基板の上に、複数の熱電変換層を形成する工程と、
前記複数の熱電変換層の上に、絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し前記熱電変換層のそれぞれの主面を露出する、複数の第1コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し、前記第1コンタクトホールを介して前記熱電変換層のそれぞれの前記主面に接続する、複数の第1電極の第1層を形成する工程と、
前記第1電極の前記第1層が形成された前記絶縁層に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し前記熱電変換層のそれぞれの前記主面を露出する、複数の第2コンタクトホールを形成する工程と、
前記絶縁層の上に、前記熱電変換層のそれぞれに対応し、前記第2コンタクトホールを介して前記熱電変換層のそれぞれの前記主面に接続する複数の第2電極と、前記第1電極の前記第1層のそれぞれを覆う複数の前記第1電極の第2層とを、前記第1電極の前記第1層を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から共に形成して、前記熱電変換層と前記絶縁層と前記第1電極と前記第2電極とを備える複数の熱電変換セルを形成する工程と、を含み、
前記複数の熱電変換セルを形成する工程では、
前記第1電極の前記第2層を、前記第1電極の前記第1層が前記第1電極の前記第2層から露出しない状態で形成し、
隣接する前記熱電変換セルにおいて、一方の前記熱電変換セルの前記第1電極の前記第2層と他方の前記熱電変換セルの前記第2電極を一体に形成して、前記第1電極と前記第2電極とを一対一で接続し、前記複数の熱電変換セルを直列に接続する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第1層をエッチングにより形成する場合に、熱電変換層がエッチング液に曝されない。また、第2層と第2電極とをエッチングにより形成する場合に、熱電変換層と第1層がエッチング液に曝されない。これらにより、エッチング液を介した熱電変換層と第1層との間の電池作用とエッチング液を介した熱電変換層と第1層と第2電極との間の電池作用が、生じない。さらに、隣接する熱電変換セルにおいて、一方の熱電変換セルの第2層と他方の熱電変換セルの第2電極が一体に形成されて、複数の熱電変換セルが直列に接続される。したがって、第1層と、第2層と第2電極とをエッチングにより形成する場合に、電池作用によって生じる熱電変換層と第1層と第2層と第2電極の過剰な溶解を抑えて、直列に接続された熱電変換セルを有する熱電変換素子を容易に微細化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図2】
図1に示す熱電変換素子をA-A線で矢視した断面図である。
【
図3】実施形態1に係る絶縁層を示す上面図である。
【
図4】実施形態1に係る熱電変換素子の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る下地層を示す断面図である。
【
図6】実施形態1に係る熱電変換層を示す上面図である。
【
図7】実施形態1に係る絶縁層と熱電変換層とを示す上面図である。
【
図8】
図7に示す絶縁層と熱電変換層をB-B線で矢視した断面図である。
【
図9】実施形態1に係る第1コンタクトホールを示す上面図である。
【
図10】実施形態1に係る第1電極の第1層を示す上面図である。
【
図11】
図10に示す第1電極の第1層をC-C線で矢視した断面図である。
【
図12】実施形態1に係る第1電極の第1層の形成を説明するための模式図である。
【
図13】実施形態1に係る第2コンタクトホールを示す上面図である。
【
図14】実施形態1に係る第2電極と第1電極の第2層とを示す上面図である。
【
図15】
図14に示す第2電極と第1電極の第2層とをD-D線で矢視した断面図である。
【
図16】実施形態1に係る第2電極と第1電極の第2層の形成を説明するための模式図である。
【
図17】実施形態2に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図18】実施形態3に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図19】
図18に示す熱電変換素子をE-E線で矢視した断面図である。
【
図20】変形例に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図21】変形例に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図22】変形例に係る熱電変換素子を示す上面図である。
【
図23】変形例に係る熱電変換素子の接続を示す模式図である。
【
図24】変形例に係る端子開口における第1電極を示す断面図である。
【
図25】変形例に係る端子開口における第2電極を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る熱電変換素子について、図面を参照して説明する。
【0012】
<実施形態1>
図1~
図16を参照して、本実施形態に係る熱電変換素子100を説明する。熱電変換素子100は、
図1と
図2に示すように、基板10と、下地層20と、3つの熱電変換セル30A~30Cと、保護層80とを備える。熱電変換セル30A~30Cは、一列に直列に接続されている。熱電変換セル30A~30Cのそれぞれは、熱電変換層40と、絶縁層50と、第1電極60と、第2電極70とを備える。第1電極60は、第1層62と第2層66とを有する。第2層66と第2電極70は、第1層62を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から形成されている。なお、
図1では、理解を容易にするために、下地層20と絶縁層50と第1コンタクトホール52と第2コンタクトホール54とを省略している。
【0013】
熱電変換素子100(熱電変換セル30A~30C)は、熱電変換層40の厚さ方向の温度差によって、熱起電力を生じる。すなわち、熱電変換素子100(熱電変換セル30A~30C)は熱エネルギーを電気エネルギーに変換する。熱電変換素子100は、例えば、熱流束を検出するセンサとして利用される。なお、理解を容易にするため、本明細書では、
図1における熱電変換素子100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+X方向と+Y方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Z方向(厚さ方向)として説明する。
【0014】
熱電変換素子100の基板10は、例えば、平板状のガラス基板である。基板10は、厚さ方向(+Z方向)の熱抵抗を小さくするために、熱伝導率が高い材料から形成されることが好ましい。
【0015】
熱電変換素子100の下地層20は、基板10の第1主面12の上に設けられる。本実施形態では、下地層20は、第1主面12の全面に設けられている。下地層20は、例えば、酸化シリコン(SiOX)から形成される。
【0016】
熱電変換素子100の熱電変換セル30A~30Cは、基板10の第1主面12の上に形成される。熱電変換セル30A~30Cは、一列に直列に接続されている。熱電変換セル30A~30Cが直列に接続されているので、熱電変換素子100の開放端電圧を大きくできる。
【0017】
まず、熱電変換セル30Bを例として、熱電変換セル30A~30Cの構成を説明する。熱電変換セル30A、30Cは、熱電変換セル30Bと同様の構成を有している。
【0018】
熱電変換セル30Bは、
図2に示すように、熱電変換層40と、絶縁層50と、第1電極60と、第2電極70とを備える。第1電極60は、第1層62と第2層66とを有する。
【0019】
熱電変換セル30Bの熱電変換層40は、下地層20の上に、矩形状に設けられる。熱電変換層40は、n型又はp型の熱電変換材料から形成される。n型の熱電変換材料としては、例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛(InGaZnO)が挙げられる。また、p型の熱電変換材料としては、例えば、銀(Ag)を添加されたマグネシウムシリサイド(Mg2Si)が挙げられる。本実施形態では、熱電変換層40は酸化インジウムガリウム亜鉛から形成されている。
【0020】
熱電変換層40の第1主面42(基板10と反対側の主面)において、熱電変換層40と第1電極60(第1層62)と、熱電変換層40と第2電極70が接続する。第1電極60(第1層62)と第2電極70は、第1主面42の異なる箇所で、熱電変換層40に接続している。
【0021】
熱電変換セル30Bの絶縁層50は、熱電変換層40と下地層20とを覆う。絶縁層50は、
図3に示すように、第1電極60(第1層62)と熱電変換層40とを接続するために、櫛歯状の第1コンタクトホール52を形成されている。また、絶縁層50は、第2電極70と熱電変換層40とを接続するために、櫛歯状の第2コンタクトホール54を形成されている。絶縁層50は、例えば、酸化シリコン(SiO
X)から形成される。なお、
図3では、下地層20を省略している。また、以下の上面図では、下地層20を省略する場合がある。
【0022】
熱電変換セル30Bの第1電極60は、
図2に示すように、絶縁層50の上に形成され、絶縁層50の第1コンタクトホール52を介して、熱電変換層40の第1主面42に接続する。第1電極60は、第1層62と第2層66とを有する。
【0023】
第1電極60の第1層62は、絶縁層50の第1コンタクトホール52を介して、熱電変換層40の第1主面42に接続している。第1層62は、第1コンタクトホール52の底で絶縁層50から露出した熱電変換層40が第1層62から露出しない状態に、第1コンタクトホール52の開口を覆っている。
【0024】
第1層62は、
図1に示すように、Y方向に延びる第1基部62aと第1基部62aから+X方向に延びる複数の第1櫛歯部62bとを有し、櫛歯状に形成される。第1櫛歯部62bと後述する第2電極70の第2櫛歯部70bは、熱電変換層40の第1主面42において、交互に、対向して配置される。本実施形態では、+Y側から、第1櫛歯部62b、第2櫛歯部70b、第1櫛歯部62b、第2櫛歯部70b、第1櫛歯部62b、第2櫛歯部70bの順に配置されている。第1層62は、例えば、小さな仕事関数を有するチタン(Ti)から形成される。
【0025】
本実施形態では、絶縁層50が熱電変換層40を覆う。また、絶縁層50の上に形成される第1電極60の第1層62が、絶縁層50の第1コンタクトホール52を介して接続している。これらにより、第1層62をエッチングにより形成する場合に、熱電変換層40は絶縁層50から露出せず、熱電変換層40はエッチング液に曝されない。熱電変換層40がエッチング液に曝されないので、熱電変換セル30B(熱電変換素子100)では、第1層62とエッチング液と熱電変換層40による電池が形成されず、第1層62と熱電変換層40に電池作用によって生じるダメージ(例えば、過剰な溶解)を与えずに、第1層62をエッチングにより形成できる。
【0026】
第1電極60の第2層66は、
図1と
図2に示すように、第1層62を第2層66から露出しない状態で覆う。また、第2層66は、第2電極70を形成する材料と同じ材料から、第2電極70と共に形成される。これらにより、第2層66をエッチングにより形成する場合に、第1層62はエッチング液に曝されない。第1層62がエッチング液に曝されないので、熱電変換セル30B(熱電変換素子100)では、第2層66とエッチング液と第1層62よる電池が形成されず、第1層62と第2層66に電池作用によって生じるダメージを与えずに、エッチングにより第2電極70を形成できる。第2層66と第2電極70を形成する材料については、後述する。
【0027】
熱電変換セル30Bの第2電極70は、絶縁層50の上に形成され、絶縁層50の第2コンタクトホール54を介して、熱電変換層40の第1主面42に接続する。第2電極70と第1電極60(第1層62)は接続せず、第2電極70は、第1主面42の第1電極60が接続している箇所と異なる箇所で、第1主面42に接続している。第2電極70は、第2コンタクトホール54の底で絶縁層50から露出した熱電変換層40が第2電極70から露出しない状態に、第2コンタクトホール54の開口を覆っている。
【0028】
第2電極70は、
図1に示すように、Y方向に延びる第2基部70aと第2基部70aから-X方向に延びる複数の第2櫛歯部70bとを有し、櫛歯状に形成される。第2櫛歯部70bと第1電極60の第1層62の第1櫛歯部62bは、熱電変換層40の第1主面42において、交互に、対向して配置される。
【0029】
第2電極70と第1電極60の第2層66は、第1電極60の第1層62を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する、同じ材料から共に形成される。例えば、第2電極70と第1電極60の第2層66は、大きな仕事関数を有する銅(Cu)から形成される。
【0030】
本実施形態では、絶縁層50が熱電変換層40を覆い、絶縁層50の上に形成される第2電極70が絶縁層50の第2コンタクトホール54を介して接続するので、第2電極70をエッチングにより形成する場合に、熱電変換層40はエッチング液に曝されない。また、第1電極60の第1層62は、第2電極70と共に形成される第2層66に覆われるので、第2電極70(第2層66)をエッチングにより形成する場合に、第1層62はエッチング液に曝されない。熱電変換層40と第1層62がエッチング液に曝されないので、第2電極70とエッチング液と熱電変換層40による電池と、第2電極70とエッチング液と第1層62による電池は、形成されない。その結果、熱電変換素子100では、熱電変換層40と第1層62と第2層66と第2電極70に電池作用によって生じるダメージを与えず、第2電極70をエッチングにより形成できる。
【0031】
次に、熱電変換セル30A~30Cの配置と接続について説明する。熱電変換セル30A~30Cは、
図1に示すように、第1櫛歯部62bを+X方向に第2櫛歯部70bを-X方向に向けて、平面視において同じ方向、同じ向きに配置されている。また、熱電変換セル30A~30Cは、Y方向に一列に配置されている。
【0032】
隣接する熱電変換セル30Aと熱電変換セル30Bにおいて、熱電変換セル30Aの第2電極70と熱電変換セル30Bの第2層66が一体に形成され、熱電変換セル30Aの第2電極70と熱電変換セル30Bの第1電極60が一対一で接続される。また、隣接する熱電変換セル30Bと熱電変換セル30Cにおいて、熱電変換セル30Bの第2電極70と熱電変換セル30Cの第2層66が一体に形成され、熱電変換セル30Bの第2電極70と熱電変換セル30Cの第1電極60が一対一で接続される。これらにより、熱電変換セル30A~30Cは一列に直列に接続されている。本実施形態では、隣接する熱電変換セル(熱電変換セル30Aと熱電変換セル30B、熱電変換セル30Bと熱電変換セル30C)の一方の第2電極70と他方の第2層66を一体に形成することにより、複数の熱電変換セル30A~30Cを接続するので、複数の熱電変換セル30A~30Cを容易に直列に接続できる。
【0033】
熱電変換素子100では、一列に直列に接続された熱電変換セル30A~30Cのそれぞれにおいて、形成される材料の仕事関数が異なる、第1電極60の第1層62と第2電極70が熱電変換層40の第1主面42に接続し、熱電変換層40の厚さ方向(Z方向)の温度差によって、熱起電力が生じる。熱電変換セル30A~30Cが直列に接続されているので、熱電変換セル30A~30Cのそれぞれの熱起電力が加算されて、熱電変換素子100全体の開放端電圧を大きくできる。また、熱電変換素子100では、第1電極60の第1層62をエッチングにより形成しても熱電変換層40と第1層62にダメージを与えず、第1電極60の第2層66と第2電極70とをエッチングにより形成しても熱電変換層40と第1層62と第2層66と第2電極70にダメージを与えない。したがって、フォトリソグラフィとエッチングにより、一列に直列に接続された熱電変換セル30A~30Cを有する熱電変換素子100を容易に微細化できる。
【0034】
熱電変換素子100の保護層80は、第1電極60、第2電極70等を保護する。保護層80は、例えば、感光性ポリイミドから形成される。なお、保護層80には、
図1に示すように、熱電変換セル30Aの第1電極60と熱電変換セル30Cの第2電極70を、外部の装置に接続するための端子開口85が設けられている。
【0035】
次に、
図4~
図16を参照して、熱電変換素子100の製造方法を説明する。
図4は、熱電変換素子100の製造方法を示すフローチャートである。熱電変換素子100の製造方法は、基板10の第1主面12の上に下地層20を形成する工程(ステップS10)と、下地層20の上(基板10の第1主面12の上)に、複数の熱電変換層40を形成する工程と(ステップS20)と、複数の熱電変換層40の上に絶縁層50を形成する工程(ステップS30)と、絶縁層50に熱電変換層40のそれぞれに対応する第1コンタクトホール52を形成する工程(ステップS40)と、絶縁層50の上に、熱電変換層40のそれぞれに対応し、第1コンタクトホール52を介して熱電変換層40のそれぞれの第1主面42に接続する、複数の第1電極60の第1層62を形成する工程(ステップS50)と、を含む。
【0036】
熱電変換素子100の製造方法は、更に、第1電極60の第1層62を形成された絶縁層50に、熱電変換層40のそれぞれに対応する第2コンタクトホール54を形成する工程(ステップS60)と、絶縁層50の上に、熱電変換層40のそれぞれに対応し、第2コンタクトホール54を介して熱電変換層40のそれぞれの第1主面42に接続する複数の第2電極70と、第1電極60の第1層62のそれぞれを覆う複数の第1電極60の第2層66とを、第1電極60の第1層62を形成する材料の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料から共に形成して、熱電変換層40と絶縁層50と第1電極60と第2電極70とを備える複数の熱電変換セル30A~30Cを形成する工程(ステップS70)と、保護層80を形成する工程(ステップS80)と、を含む。
【0037】
ステップS10では、まず、基板10を準備する。次に、
図5に示すように、基板10の第1主面12に下地層20を形成する。下地層20は、例えば、第1主面12の全面にスパッタ法により酸化シリコンから形成される。
【0038】
ステップS20では、
図6に示すように、下地層20の上に、3つの矩形状の熱電変換層40を形成する。具体的には、まず、下地層20の全面にスパッタより酸化インジウムガリウム亜鉛から熱電変換膜を形成する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、熱電変換膜から熱電変換層40を形成する。
【0039】
ステップS30では、
図7と
図8に示すように、複数の熱電変換層40の上と下地層20の上に絶縁層50を形成する。具体的には、下地層20と熱電変換層40の全面に、CVD(Chemical Vapar Deposition)により酸化シリコンから絶縁層50を形成する。ここでは、熱電変換層40は、絶縁層50によって、絶縁層50から露出しない状態で覆われている。
【0040】
ステップS40では、フォトリソグラフィとエッチングにより、絶縁層50に、熱電変換層40のそれぞれに対応する第1コンタクトホール52を形成する。本実施形態では、
図9に示すように、第1コンタクトホール52を、第1電極60の第1層62の形状に整合するように、櫛歯状に形成する。これにより、熱電変換層40の第1主面42が、絶縁層50から櫛歯状に露出する。
【0041】
ステップS50では、
図10と
図11に示すように、絶縁層50の上に熱電変換層40のそれぞれに対応する第1電極60の第1層62を形成する。第1層62は、第1コンタクトホール52を介して熱電変換層40の第1主面42に接続する。また、第1層62は、第1コンタクトホール52の底で絶縁層50から露出した熱電変換層40が第1層62から露出しない状態に、第1コンタクトホール52の開口を覆う。
【0042】
具体的には、まず、絶縁層50の上に、スパッタにより第1コンタクトホール52を埋めて、チタン薄膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、チタン薄膜から第1層62を櫛歯状に形成する。本実施形態では、チタン薄膜をエッチングする場合、
図12に示すように、熱電変換層40が絶縁層50と第1層62(チタン薄膜)に覆われており、さらに、チタン薄膜の第1電極60の第1層62となる箇所はフォトレジストで覆われているので、熱電変換層40をエッチング液に曝さずに、第1層62を形成できる。
【0043】
ステップS60では、フォトリソグラフィとエッチングにより、絶縁層50に熱電変換層40のそれぞれに対応する第2コンタクトホール54を形成する。本実施形態では、
図13に示すように、第2コンタクトホール54を、第2電極70の形状に整合するように、櫛歯状に形成する。これにより、熱電変換層40の第1主面42が、絶縁層50から櫛歯状に露出する。
【0044】
ステップS70では、
図14と
図15に示すように、絶縁層50の上に、熱電変換層40のそれぞれに対応する複数の第2電極70と、第1電極60の第1層62のそれぞれを覆う複数の第1電極60の第2層66とを共に形成して、熱電変換セル30A~30Cを形成する。第2電極70は、第2コンタクトホール54を介して熱電変換層40の第1主面42に接続する。また、第2電極70は、第2コンタクトホール54の底で絶縁層50から露出した熱電変換層40が第2電極70から露出しない状態に、第2コンタクトホール54の開口を覆う。第1電極60の第2層66は、第1電極60の第1層62を、第1層62が第2層66から露出しない状態で覆う。第2電極70と第2層66は、第1電極60の第1層62を形成する材料(チタン)の仕事関数と異なる仕事関数を有する材料(銅)から形成される。なお、
図14では、理解を容易にするために、第1コンタクトホール52を省略している。
【0045】
さらに、隣接する熱電変換セル30Aと熱電変換セル30Bにおいて、熱電変換セル30Aの第2電極70と熱電変換セル30Bの第1電極60の第2層66を一体に形成して、熱電変換セル30Aの第1電極60と熱電変換セル30Bの第2電極70とを一対一で接続し、熱電変換セル30Aと熱電変換セル30Bとを一列に直列に接続する。隣接する熱電変換セル30Bと熱電変換セル30Cにおいても、熱電変換セル30Bの第2電極70と熱電変換セル30Cの第1電極60の第2層66を一体に形成して、熱電変換セル30Bと熱電変換セル30Cとを直列に接続する。これらにより、熱電変換セル30A~30Cが一列に直列に接続される。
【0046】
具体的には、まず、絶縁層50と第1層62の上に、スパッタにより第2コンタクトホール54を埋めて、銅薄膜を成膜する。次に、フォトリソグラフィとエッチングにより、銅薄膜から第2電極70と第2層66のそれぞれを櫛歯状に形成する。この場合、隣接する熱電変換セル(熱電変換セル30Aと熱電変換セル30B、熱電変換セル30Bと熱電変換セル30C)の一方の第2電極70と他方の第2層66を一体に形成する。本実施形態では、銅薄膜をエッチングする場合に、
図16に示すように、熱電変換層40が絶縁層50と第1層62と第2電極70(銅薄膜)に覆われ、第1層62が第2層66(銅薄膜)に覆われており、さらに、銅薄膜の第1電極60の第2層66と第2電極70となる箇所はフォトレジストで覆われているので、熱電変換層40と第1層62をエッチング液に曝さずに、第2電極70を形成できる。
【0047】
ステップS80では、例えば、感光性ポリイミドから保護層80を形成する。具体的には、感光性ポリイミドを塗布し、塗布された感光性ポリイミドを露光し現像する。そして、現像された感光性ポリイミドを焼成して保護層80を形成する。以上により、熱電変換素子100を製造できる。
【0048】
以上のように、熱電変換素子100では、隣接する熱電変換セル(熱電変換セル30Aと熱電変換セル30B、熱電変換セル30Bと熱電変換セル30C)の一方の第2電極70と他方の第2層66を一体に形成することにより、熱電変換セル30A~30Cが一列に直列に接続される。熱電変換セル30A~30Cが直列に接続されているので、熱電変換素子100の開放端電圧を大きくできる。
【0049】
熱電変換素子100では、エッチングにより、熱電変換層40と第1層62にダメージを与えずに第1層62を形成でき、熱電変換層40と第1層62と第2層66と第2電極70にダメージを与えずに第2層66と第2電極70とを形成できる。したがって、熱電変換素子100を、フォトリソグラフィとエッチングにより、容易に微細化できる。また、フォトリソグラフィとエッチングにより、熱電変換セル30A~30Cの外形形状を自由に設定できる。例えば、熱電変換セル30A~30Cは対向する第1電極60と第2電極70とを有しているので、本実施形態のように、熱電変換セル30A~30Cの外形形状を矩形形状にすることにより、熱電変換セル30A~30Cを基板10の第1主面12に効率よく配置して基板10の第1主面12の面積の無駄をなくし、熱電変換セル30A~30Cの、基板10の第1主面12に占める面積比率を高くできる。さらに、櫛歯状の第1電極60(第1層62)と第2電極70を微細化することにより、第1電極60と第2電極70との間隔を狭め、第1電極60と第2電極70の周囲長を長くして、熱電変換素子100の短絡電流を大きくできる。
【0050】
熱電変換素子100では、仕事関数に基づく、第1電極60の第1層62を形成する材料と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する材料の選択が、熱電変換素子100の特性に大きく影響する。一方、従来の熱電変換素子(例えば、特許6513476号公報に記載の熱電変換素子)では、フォトリソグラフィとエッチングにより熱電変換素子を製造する場合に、仕事関数と共に、エッチングにおける電池作用も考慮して、電極を形成する材料を選択しなければならない。
【0051】
本実施形態では、第1電極60の第1層62と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する場合に、それぞれを形成する材料(チタン又は銅)の一方のみが露出してエッチングされるので、エッチングにおける電池作用を考慮せずに、第1電極60の第1層62を形成する材料と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する材料を仕事関数に基づいて選択できる。すなわち、第1電極60の第1層62を形成する材料と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する材料を選択する自由度が高くなり、熱電変換素子100の特性を容易に向上させることができる。
【0052】
<実施形態2>
実施形態1では、熱電変換セル30A~30Cは一列に配置されている。熱電変換セルはマトリクス状に配置されてもよい。
【0053】
本実施形態の熱電変換素子100は、
図17に示すように、基板10と、下地層20と、9つの熱電変換セル30A~30Iと、保護層80とを備える。本実施形態の基板10と下地層20と保護層80の構成は実施形態1と同様である。なお、
図17では、理解を容易にするために、下地層20、保護層80、符号の一部等を省略している。
【0054】
また、熱電変換セル30A~30C、30G~30Iのそれぞれの構成は、実施形態1の熱電変換セル30A~30Cの構成と同様である。熱電変換セル30D~30Fのそれぞれの構成は、第1層62の第1櫛歯部62bと第2電極70の第2櫛歯部70bが、+Y側から、第2櫛歯部70b、第1櫛歯部62b、第2櫛歯部70b、第1櫛歯部62b、第2櫛歯部70b、第1櫛歯部62bの順に配置されていることを除き、実施形態1の熱電変換セル30A~30Cの構成と同様である。ここでは、熱電変換セル30A~30Iの配置と接続について、説明する。
【0055】
熱電変換セル30A~30Iは、
図17に示すように、基板10の第1主面12の上に、3行3列のマトリクス状に配置される。具体的には、熱電変換セル30A~30Cが一列目を、熱電変換セル30D~30Fが二列目を、熱電変換セル30G~30Iが三列目を形成している。一列目では、熱電変換セル30A~30Cは、実施形態1と同様に、第1櫛歯部62bを+X方向に第2櫛歯部70bを-X方向に向けて、平面視において同じ方向、同じ向きに配置されている。二列目と三列目においても、熱電変換セル30D~30Iは、第1櫛歯部62bを+X方向に第2櫛歯部70bを-X方向に向けて、平面視において同じ方向、同じ向きに配置されている。
【0056】
一列目の熱電変換セル30A~30Cは、実施形態1の熱電変換セル30A~30Cと同様に、熱電変換セル30Aの第2電極70と熱電変換セル30Bの第2層66と、熱電変換セル30Bの第2電極70と熱電変換セル30Cの第2層66とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。
【0057】
二列目の熱電変換セル30D~30Fは、熱電変換セル30Dの第2層66と熱電変換セル30Eの第2電極70と、熱電変換セル30Eの第2層66と熱電変換セル30Fの第2電極70とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。また、三列目の熱電変換セル30G~30Iは、熱電変換セル30Gの第2電極70と熱電変換セル30Hの第2層66と、熱電変換セル30Hの第2電極70と熱電変換セル30Iの第2層66とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。
【0058】
本実施形態では、一列目の熱電変換セル30Cの第2電極70と、熱電変換セル30Cに隣接する二列目の熱電変換セル30Fの第2層66とを一体に形成することにより、一列目の熱電変換セル30A~30Cと二列目の熱電変換セル30D~30Fが直列に接続される。また、二列目の熱電変換セル30Dの第2電極70と、熱電変換セル30Dに隣接する三列目の熱電変換セル30Gの第2層66とを一体に形成することにより、二列目の熱電変換セル30D~30Fと三列目の熱電変換セル30G~30Iが直列に接続される。これらにより、熱電変換セル30A~30Iが直列に接続されている。
【0059】
本実施形態の熱電変換素子100では、実施形態1の熱電変換素子100と同様に、隣接する熱電変換セルの一方の第2電極70と他方の第2層66を一体に形成することにより、熱電変換セル30A~30Iが直列に接続される。熱電変換セル30A~30Iが直列に接続されているので、熱電変換素子100の開放端電圧を大きくできる。
【0060】
また、実施形態1と同様に、本実施形態の熱電変換素子100を、フォトリソグラフィとエッチングにより容易に微細化できる。また、熱電変換セル30A~30Iの、基板10の第1主面12に占める面積比率を高くできる。第1電極60と第2電極70との間隔を狭め、第1電極60と第2電極70の周囲長を長くして、本実施形態の熱電変換素子100の短絡電流を大きくできる。
【0061】
さらに、実施形態1と同様に、第1電極60の第1層62を形成する材料と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する材料を選択する自由度が高くなり、本実施形態の熱電変換素子100の特性を容易に向上させることができる。
【0062】
<実施形態3>
実施形態1と実施形態2では、第1電極60の第1層62と第2電極70は、櫛歯形状を有している。第1電極60の第1層62と第2電極70は、他の形状を有してもよい。
【0063】
本実施形態の熱電変換素子100は、基板10と、下地層20と、9つの熱電変換セル32A~32Iと、保護層80とを備える。本実施形態の基板10と下地層20と保護層80の構成は実施形態1と同様である。
【0064】
熱電変換セル32A~32Iのそれぞれは、実施形態1の熱電変換セル30A~30Cと同様に、熱電変換層40と、絶縁層50と、第1電極60と、第2電極70とを備える。第1電極60は、第1層62と第2層66とを有する。熱電変換セル32A~32Iの構成は、
図18と
図19に示すように、第1電極60の第1層62と第2電極70がX方向に長い矩形形状を有することを除き、実施形態1の熱電変換セル30A~30Cと同様である。
【0065】
なお、熱電変換セル32A~32C、32G~32Iでは、第1電極60が+Y側に位置し、第2電極70が-Y側に位置する。熱電変換セル32D~32Fでは、第1電極60が-Y側に位置し、第2電極70が+Y側に位置する。また、
図18では、理解を容易にするために、保護層80、符号の一部等を省略している。
図19は、熱電変換セル32A~32Iの一例として、熱電変換セル32Bの断面を示している。
【0066】
熱電変換セル32A~32Iは、実施形態2の熱電変換セル30A~30Iと同様に、3行3列のマトリクス状に配置され、直列に接続されている。
【0067】
一列目の熱電変換セル32A~32Cは、熱電変換セル32Aの第2電極70と熱電変換セル32Bの第2層66と、熱電変換セル32Bの第2電極70と熱電変換セル32Cの第2層66とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。二列目の熱電変換セル32D~32Fは、熱電変換セル30Dの第2層66と熱電変換セル32Eの第2電極70と、熱電変換セル32Eの第2層66と熱電変換セル32Fの第2電極70とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。また、三列目の熱電変換セル32G~32Iは、熱電変換セル32Gの第2電極70と熱電変換セル32Hの第2層66と、熱電変換セル32Hの第2電極70と熱電変換セル32Iの第2層66とを一体に形成することにより、一列に直列に接続される。
【0068】
さらに、一列目の熱電変換セル32Cの第2電極70と、熱電変換セル32Cに隣接する二列目の熱電変換セル32Fの第2層66とを一体に形成することにより、一列目の熱電変換セル32A~32Cと二列目の熱電変換セル32D~32Fが直列に接続される。二列目の熱電変換セル32Dの第2電極70と、熱電変換セル32Dに隣接する三列目の熱電変換セル32Gの第2層66とを一体に形成することにより、二列目の熱電変換セル32D~32Fと三列目の熱電変換セル32G~32Iが直列に接続される。これらにより、熱電変換セル32A~32Iが直列に接続されている。
【0069】
本実施形態では、第1電極60の第1層62と第2電極70が矩形形状を有しているので、実施形態1と実施形態2と同じルールで設計した場合に、熱電変換セル32A~32Iが基板10の第1主面12に占める面積を容易に小さくできる。本実施形態では、9つの熱電変換セル32A~32Iが3行3列のマトリクス状に配列されているが、熱電変換セルが基板10の第1主面12に占める面積を小さくすることにより、直列に接続する熱電変換セルの数を増やして配置することが可能となり、熱電変換素子100の開放端電圧を大きくできる。熱電変換素子100を熱流束センサのようなセンサ用途で利用する場合、出力電圧を大きくするために、開放端電圧を高めることが好ましい。
【0070】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、基板10はガラス基板に限られない。基板10は、絶縁性を有するフィルム(例えば、ポリイミドフィルム)から形成されてもよい。
【0072】
また、実施形態1~実施形態3の熱電変換素子100は下地層20を備えているが、熱電変換素子100は下地層20を備えなくともよい。熱電変換層40は、絶縁性を有する基板10の第1主面12の上に、直接、形成されてもよい。さらに、熱電変換素子100は保護層80を備えなくともよい。
【0073】
実施形態1~実施形態3では、第1電極60の第1層62を小さな仕事関数を有する材料から形成し、第1電極60の第2層66と第2電極70を大きな仕事関数を有する材料から形成している。熱電変換素子100では、第1電極60の第1層62を形成する材料の仕事関数と、第1電極60の第2層66と第2電極70とを形成する材料の仕事関数が、異なっていればよい。
【0074】
第1電極60の第1層62と、第1電極60の第2層66と第2電極70を形成する材料は、小さな仕事関数を有する材料としてセシウム(Cs)、アルミニウム(Al)等、大きな仕事関数を有する材料としてニッケル(Ni)であってもよい。
【0075】
実施形態1~実施形態3において、第1電極60(第2層66)と第2電極70の保護層80の端子開口85から露出する面には、保護メッキが施されてもよい。
【0076】
実施形態1の熱電変換セル30A~30Cと実施形態2の熱電変換セル30A~30Iでは、第1櫛歯部62bと第2櫛歯部70bはX方向に延びている。
図20に示すように、第1櫛歯部62bと第2櫛歯部70bはY方向に延びてもよい。
図20では、理解を容易にするために、絶縁層50、符号の一部等を省略している。
【0077】
実施形態3の熱電変換セル30A~30Iでは、第1電極60の第1層62と第2電極70はX方向に長い矩形形状を有している。
図21に示すように、第1電極60の第1層62と第2電極70はY方向に長い矩形形状を有してもよい。
図21では、理解を容易にするために、絶縁層50、符号の一部等を省略している。
【0078】
実施形態2の熱電変換素子100では、直列に接続された熱電変換セル30A~30Iの出力電圧を測定することにより、熱電変換セル30A~30Iを配置されている領域全体の熱流束を検出できる。熱電変換素子100は、
図22に示すように、配線92を介して、直列に接続された熱電変換セル30A~30Dの第2電極70毎に出力電圧を測定することにより、熱電変換セル30A~30Dのそれぞれが配置されている領域毎の熱流束を検出してもよい。これにより、熱電変換素子100は、熱電変換セル30A~30Dが配置されている領域全体の熱流束を検出すると共に、熱電変換セル30A~30Dが配置されている領域内における熱流束の分布を検出できる。
図22では、理解を容易にするために、第1電極60の第1層62、保護層80、符号の一部等を省略している。
【0079】
熱電変換素子100では、
図23に示すように、熱電変換セル30A~30Cを直列に接続したセル群94が、配線92を介して、並列に接続されていてもよい。これにより、熱電変換素子100は、熱電変換セル30A~30Cの一部が断線しても、熱流束を検出できる。
図23では、理解を容易にするために、熱電変換セル30A~30Cを簡略化して図示し、基板10、保護層80等を省略している。
【0080】
実施形態1の端子開口85から露出する第1電極60では、第1層62と第2層66が積層されている。端子開口85から露出する第1電極60は、
図24に示すように、第2層66のみから形成されてもよい。また、
図25に示すように、端子開口85から露出する第2電極70の下に、第1電極60の第1層62を形成するための薄膜64が残っていてもよい。
【0081】
実施形態1では、熱電変換素子100を外部の装置に接続するための端子開口85が熱電変換素子100の異なる辺に配置されているが、端子開口85の位置、形状等は任意である。また、熱電変換素子100と外部の装置との接続形態、接続位置等も任意である。さらに、熱電変換素子100における熱電変換セルの数、配置、接続経路等も、任意であり、熱電変換素子100の用途、設置場所に応じて設定されてよい。
【0082】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10 基板、12 第1主面、20 下地層、30A~30I,32A~32I 熱電変換セル、40 熱電変換層、42 第1主面、50 絶縁層、52 第1コンタクトホール、54 第2コンタクトホール、60 第1電極、62 第1層、62a 第1基部、62b 第1櫛歯部、64 薄膜、66 第2層、70 第2電極、70a 第2基部、70b 第2櫛歯部、80 保護層、85 端子開口、92 配線、94 セル群、100 熱電変換素子