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特開2023-84932崩壊性に優れた厚切りサツマイモのフライスナック食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084932
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】崩壊性に優れた厚切りサツマイモのフライスナック食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/10 20160101AFI20230613BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20230613BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A23L19/10
A23G3/50
A23G3/34 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199335
(22)【出願日】2021-12-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】山邉 史貴
(72)【発明者】
【氏名】伊勢 明子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】長田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B014
4B016
【Fターム(参考)】
4B014GG05
4B014GG14
4B014GP14
4B014GP16
4B014GP27
4B014GQ01
4B014GY01
4B016LC02
4B016LE01
4B016LG06
4B016LK06
4B016LP06
4B016LP07
4B016LP13
(57)【要約】
【課題】サツマイモ本来の甘さを味わうことができるように4mm以上の厚みをもったサツマイモのフライ食品でありながら、スナック食品に特有の崩壊性がありサクサクした食感を有するサツマイモのフライ食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】厚切りされたサツマイモチップがフライされてなるフライスナック食品であって、前記フライスナック食品の厚さが4mm以上30mm以下であり、前記フライスナック食品の周囲端部より中心部分に向かって7mmの位置を直径2mmのプランジャーを貫通させるのにかかる強度が200~700kgf/cmである、サツマイモのフライスナック食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚切りされたサツマイモチップがフライされてなるフライスナック食品であって、
前記フライスナック食品の厚さが4mm以上30mm以下であり、
前記フライスナック食品の周囲端部より中心部分に向かって7mmの位置を直径2mmのプランジャーを貫通させるのにかかる強度が200~700kgf/cmである、サツマイモのフライスナック食品。
【請求項2】
前記サツマイモチップの周囲端部にサツマイモの皮が存在する、請求項1に記載のサツマイモのフライスナック食品。
【請求項3】
前記フライスナック食品の周囲端部から中心部分に向かって3.5mmまでの範囲を厚さ方向に切断した断面に存在する、0.04mm以上の空隙の総面積の割合が断面積全体の8~39%である、請求項1又は2に記載のサツマイモのフライスナック食品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のサツマイモのフライスナック食品の製造方法であって、
生サツマイモを厚み5~30mmとなるようにスライスしてサツマイモチップを作製する工程と、
前記サツマイモチップをスチームブランチングする工程と、
前記スチームブランチングしたサツマイモチップを減圧条件でフライする工程とを含み、
前記スチームブランチングが、環境温度70~85℃で処理時間が10~120分間の段階、及び、温度が90~100℃で時間が5~25分間の段階を少なくとも含む条件で実施されることを特徴とする、サツマイモのフライスナック食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモのフライ食品に関し、具体的には、サツマイモそのものの甘さと素材感を味わい、かつ口中で軽く咀嚼すると崩壊してサクサクした食感を有するサツマイモのフライスナック食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スライスされた食品では厚切りや薄切りなど、従来通りの食材の加工方法であっても厚みを変えることでより強い弾力やくちどけ感の向上が得られるなど、食品素材のおいしさをより強く味わえると考えられている。
【0003】
現在市販されているサツマイモ菓子製品としては、乾燥粉末、煮熟サツマイモペースト、乾燥フレークなどのサツマイモ原料を一部添加して成形したスナックまたはその他の製品と、サツマイモを一定の形と大きさに加工した後フライした素材スナック製品に大別できる。
【0004】
成形スナックはサツマイモを主原料としているものもあるが、多くはサツマイモのペーストまたは粉末に調味料、香料等で味付けや香りづけし、でんぷん等の原料を添加して成型したものをフライすることで得られる。このフライ食品は厚みも自在にコントロールでき、軽い咀嚼で崩壊性もありくちどけがよくサツマイモの風味を呈しているが、サツマイモ本来の甘さや繊維感といったものは失われており、サツマイモ素材そのものを味わうという目的は果たせていない。
【0005】
一方、生サツマイモを用いたスナック食品としては、サツマイモを薄く切った後、短時間の加熱処理を施し、急速冷凍した後に糖シロップを含浸させフライしたスナック食品が知られている。
このスナック食品ではサツマイモの素材そのものを味わうという目的とスナックに好ましい軽い咀嚼による崩壊性は達成されているものの、砂糖の含浸等によりサツマイモそのものの甘さを味わうようなスナック食品ではない。また、前記の2mm程度にスライスしたサツマイモに糖含浸し、常圧条件下でフライされているが、サツマイモ由来の食物繊維によりフライ食品が硬くなるため、3mm以上の厚みは推奨できない。
【0006】
また、2~3mm厚程度にスライスされた生サツマイモを減圧条件でフライした商品や生サツマイモを波状にスライスしたものを減圧条件でフライしたスナック食品が知られている。
このスナック食品ではサツマイモのそのもの甘さや食感が味わうことができるが、3mm程度の厚さにとどまっている。これは、通常のフライ方法では、3mm以上の厚みとなると、前記のように、サツマイモ由来の食物繊維によりフライ食品が硬くなるため、食した際のガリガリ感が生じ、また、口の中での崩壊性が悪くなり、場合によっては大きな塊の鋭角な角によって口腔内を傷つける可能性があるためである。
【0007】
またフライ食品の風味を改善できる手法としてバッター液様油脂組成物にHLB値が8~11の乳化剤を添加する方法が知られている(特許文献1)。
上記手法は、フライ食品のなかでもてんぷらのような衣をつけた食品の油の酸化臭を改善する手法であり、サツマイモの食感等の改善を試みたものではない。
【0008】
さらに一定の厚みの乾燥野菜類の食感を改善する方法として、糖を浸漬した野菜類を特定の条件で乾燥する手法(特許文献2、3)と一定の厚みにスライスした原料を多数のピンで押し刺した後、乾燥後加熱処理を行う素焼きチップス(特許文献4)が知られている。
【0009】
前記特許文献2、3に記載の手法ではいずれも、単純な乾燥だけではしなびている野菜類に対し糖浸漬をすることで水分値をあらかじめ落とし、素材本来の味とは異なるものの浸漬した等により従来とは異なる食感を得られることができる。
この手法は、糖を浸漬しているため素材本来の味を活かしているとはいえず、素材そのものの味を味わうという目的は達成できていない。
【0010】
前記特許文献4に記載の手法は、本来の目的は孔開けすることでフライをせずとも食感を軽くする素焼きのチップスに関するものである。
上記手法は3mmのピンを野菜類に突き刺し、あらかじめ組織を破壊することで素材の崩壊性を改善しているが、突き刺している部分の崩壊性だけが上がっており、素材の繊維質で硬い食感の改善までは到達しておらず、咀嚼を続ける中での崩壊性という課題が残されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4171136号公報
【特許文献2】特許第6799916号公報
【特許文献3】特許第3817602号公報
【特許文献4】特開2021-6016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、サツマイモを通常の方法でのフライしたスナック食品は、その厚みが3mmを超えると、サツマイには食物繊維が多いという性質上、非常に硬くなりやすい傾向がある。
例えば、市場では糖度の高い「紅はるか」、「シルクスイート」、「安納芋」といったようなサツマイモ品種が開発されており、食物繊維の含有量が低い可能性がある。本発明者らが、これらの品種を通常の方法でフライしてフライスナック食品を作製したところ、その厚みが3mmを超えると喫食した際に、軽い咀嚼では容易に砕けずにガリガリとした食感が発生し、口腔内で不快な、あるいは硬いと感じるような食感となることを確認した。
【0013】
そこで、本発明の目的は、サツマイモ本来の甘さを味わうことができるように4mm以上の厚みをもったサツマイモのフライ食品でありながら、スナック食品に特有の崩壊性がありサクサクした食感を有するサツマイモのフライ食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決するために鋭意研究した結果、3mmを超える厚みのサツマイモをフライした際にガリガリとした硬質な食感をもたらす原因は、皮を含めた周囲端部から7mmまでの繊維質の多い部分にあることを発見した。
そして、研究を重ねて製法を工夫して様々なサンプルを作製した結果、フライしたサツマイモの周囲端部の7mmまでの硬度が200~600kg/cmの崩壊性を有することでサクサクとした心地よい食感を有することを発見した。
【0015】
すなわち、本発明の要旨は、
(1)厚切りされたサツマイモチップがフライされてなるフライスナック食品であって、
前記フライスナック食品の厚さが4mm以上30mm以下であり、
前記フライスナック食品の周囲端部より中心部分に向かって7mmの位置を直径2mmのプランジャーを貫通させるのにかかる強度が200~700kgf/cmである、サツマイモのフライスナック食品、
(2)前記サツマイモチップの周囲端部にサツマイモの皮が存在する、前記(1)に記載のサツマイモのフライスナック食品、
(3)前記フライスナック食品の周囲端部から中心部分に向かって3.5mmまでの範囲を厚さ方向に切断した断面に存在する、0.04mm以上の空隙の総面積の割合が断面積全体の8~39%である、前記(1)又は(2)に記載のサツマイモのフライスナック食品、
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載のサツマイモのフライスナック食品の製造方法であって、
生サツマイモを厚み5~30mmとなるようにスライスしてサツマイモチップを作製する工程と、
前記サツマイモチップをスチームブランチングする工程と、
前記スチームブランチングしたサツマイモチップを減圧条件でフライする工程とを含み、
前記スチームブランチングが、環境温度70~85℃で処理時間が10~120分間の段階、及び、温度が90~100℃で時間が5~25分間の段階を少なくとも含む条件で実施されることを特徴とする、サツマイモのフライスナック食品の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のサツマイモのフライスナック食品は、従来品に比べて、サツマイモ本来の甘さを味わうことができ、また、スナック食品に特有の崩壊性がありサクサクした食感を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、試験例1に記載の実験に供したサツマイモスナックの状態を示す概略図である。
図2図2は、一般例1のサツマイモスナックMの断面の顕微鏡像である。
図3図3は、実施例1で作製したサツマイモスナックAの断面の顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のサツマイモのフライスナック食品(以下「サツマイモスナック」ともいう)は、厚切りされたサツマイモチップがフライされてなるフライスナック食品であって、
前記フライスナック食品の厚さが4mm以上30mm以下であり、
前記フライスナック食品の周囲端部より中心部分に向かって7mmの位置を直径2mmのプランジャーを貫通させるのにかかる強度が200~700kgf/cmであることを特徴とする。
【0019】
本発明のサツマイモスナックでは、厚さが4mm以上30mm以下のものである。
前記厚さは、原料として使用するサツマイモを厚切りしたサツマイモチップの厚さに由来するものであり、本発明では、前記サツマイモチップの厚さを5mm以上30mm以下に調整することで、得られるサツマイモスナックの厚さを4mm以上30mm以下に調整することができる。
前記サツマイモスナックの厚さは、サツマイモスナックの全面が前記範囲の厚さに調整されていればよい。ただし、サツマイモスナックの一部であれば、厚みが4mm未満、30mmを超える部分があってもよい。この場合、少なくとも90%以上の面が4mm以上30mm以下に調整されていればよい。
また、前記サツマイモスナックの厚さは、サツマイモチップの甘味を感じやすい観点から、5mm以上が好ましく、サクサクした食感を発揮し易い観点から、20mm以下が好ましい。
【0020】
本発明のサツマイモスナック厚さはノギスメーター(CD-15PSX、ミツトヨ社製)等の公知の測定器を用いて測定することができる。
【0021】
本発明のサツマイモスナックの原料となるサツマイモの品種としては、主食用の品種であればいずれも使用することができる。例えば、「高系14号」(「鳴門金時」、「紅はるか」、「五郎島金時」)、「紅あずま」、「紅赤」、「紅さつま」、「アヤコマチ」、「種子島紫」(「種子島ゴールド」、「種子島マロン」)、「安納芋」(「安納紅」)、「シルクスイート」、「黄金千貫」、「栗こがね」、「こがねむらさき」、「パープルスイートロード」等が挙げられる。
【0022】
本発明のサツマイモスナックは、その固形分の大部分がサツマイモからなるものであり、例えば、サツマイモのサツマイモスナック中の含有量としては、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0023】
また、本発明者らは、サツマイモの皮がある周囲端部から7mmまでの範囲に繊維質が非常に多く、密な構造をとっている部分があり、フライされることにより、水分が抜けて繊維質がさらに圧縮されてより密な構造になるためにサツマイモスナックが破断しにくくなること、そして、サツマイモスナックの厚みを大きくすると、前記のように密な構造になっている繊維質の部分の破断がより難くなること、例えば、厚みが3mm以下の場合は多少の硬さがあっても咀嚼して破断することが可能であるが、厚みが4mm以上となった際には非常に硬い食感となり、口腔内でガリガリとした不快な食感が発生することを見出した。
【0024】
そこで、本発明者らは、サツマイモスナックとして好ましい崩壊性について調べるために、一般流通しているサツマイモのスナック食品の強度を調べたところ、おおよそ700kgf/cm以下であれば、スナック食品として問題がない又は好ましい崩壊性を有しているという知見が得られた。また、一般流通を想定した包装などの工程を経た際に、サツマイモスナックに割れ・欠けなどの著しく商品価値を落とすほどの脆弱性を避けるためには、前記強度が200kgf/cm以上であることが必要である知見も得られた。
【0025】
以上の知見から、本発明のサツマイモスナックは、フライスナック食品の周囲端部より7mmの位置を直径2mmのプランジャーを貫通させるのにかかる強度が200~700kgf/cmであることを特徴とする。
【0026】
本発明において、サツマイモスナックの強度は、次のようにして求めることができる。
まず、レオメーター(商品名:テクスチャー・アナライザー(Texture Analyzer TA.XT.plus)、Stable MicroSystems社製)および直径2mmの円柱形プランジャーを用い、20℃の温度下にて該プランジャーを、サツマイモスナックの所定の周囲端部より中心部分に向かってプランジャーを押し付け、貫入距離7mm、貫入速度2mm/sで7mmの位置まで貫入させて測定する。その他の条件は、レオメーターに添付のマニュアルに準じて行えばよい。
測定される破断強度(硬度)は、該プランジャーの7mm到達時点での総負荷によって求められる。
【0027】
また、前記のように本発明のサツマイモスナックにおいて崩壊性が改善した原因を調査したところ、一般のサツマイモのフライ食品はサツマイモの周囲端部から7mmまでの構造が階層状になっており、非常に密な構造をとっているのに対して、本発明のサツマイモスナックでは前記階層間の隙間が大きく広がった構造をとっていることがわかった。本発明のサツマイモスナックでは、スライスチップと比べて、スライス厚の膨張が見られていないため、後述のスチームブランチングにより含浸した水がそのまま一部の糖質と共にフライ油に抜け落ちていったことで、隙間(空隙)が生じていると考えられる。
【0028】
なお、フライ後に膨張することでサクサクとした軽い食感が得られる膨化食品もあり、本発明のサツマイモスナックにはサツマイモ内部に入った水分が揮発することで表面の一部が膨らんだような形状が生じることもあるが、サツマイモスナック全体としての膨化は発生しておらず、膨化食品には当たらない。
【0029】
本発明のサツマイモスナックには、その周囲端部から3.5mmの位置を厚さ方向に切断した断面において、空隙が存在することで、厚さが4mm以上30mm以下であっても、口中で軽く噛んだ場合でも破断できる前記のような強度を有することになると考えられる。
【0030】
周囲端部から3.5mmの位置を厚さ方向に切断した断面に見られる前記空隙については、サクサクした食感を奏し易い観点から、前記フライスナック食品の周囲端部から中心部分に向かって3.5mmまでの範囲を厚さ方向に切断した断面に存在する、0.04mm以上の空隙の総面積の割合が断面積全体の8~39%であることが好ましい。
【0031】
前記空隙の測定は、サツマイモスナックの前記断面における空隙の面積は顕微鏡(商品名:MXB-2500REZ機能拡張モデルRH2000、Hirox社製)を用いて、倍率140倍の3Dモードでおおよそ450μmを30分割して撮影した写真像に基づき、空隙と思われる部位をスケールでの概算からでの面積を算出し、写真全体の面積を割ることで割合を求めることができる。
【0032】
本発明のサツマイモスナックには、前記サツマイモ以外に、フライで用いる油脂が含有されている。
前記油脂としては、パーム油、ヤシ油、大豆油、米油、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、グレープシード油、サラダ油、ヒマワリ油、等が挙げられる。
【0033】
本発明のサツマイモスナック中における油脂の含有量は、0.5~10重量%であればよい。
【0034】
本発明のサツマイモスナックには、酸化防止剤、光沢剤、調味料、塩、香料、甘味料、乳原料等を含有してもよい。
前記各成分の含有量の総量は、本発明のサツマイモスナック中、本発明の効果が得られればよく、特に限定はないが、例えば、0.01~1重量%が好ましい。
【0035】
本発明のサツマイモスナックの大きさについては、市販されているスナック食品と同程度の大きさであればよく、特に限定はないが、例えば、面積が2.5~60cmであればよい。
【0036】
本発明のサツマイモスナックの製造方法は、
生サツマイモを厚み5~30mmとなるようにスライスしてサツマイモチップを作製する工程と、
前記サツマイモチップをスチームブランチングする工程と、
前記スチームブランチングしたサツマイモチップを減圧条件でフライする工程とを含み、
前記スチームブランチングが、環境温度70~85℃で処理時間が10~120分間の段階、及び、温度が90~100℃で時間が5~25分間の段階を少なくとも含む条件で実施されることを特徴とする。
【0037】
前記生サツマイモをスライスする手法としては、厚みを5~30mmとなるように調整できる公知のスライサーを用いればよく特に限定はない。
【0038】
得られるサツマイモチップの周囲端部には、皮が残存していてもよい。
前記皮は、周囲端部全域にあってもよいし、一部にあってもよい。
【0039】
前記スチームブランチングする手法しては、スチームチャンバー、スチームトンネル、テフロン式蒸し器等を用いる手法が挙げられる。
【0040】
前記スチームブランチングの条件としては、本発明のサツマイモスナックが所望の強度を得やすい観点から、環境温度70~85℃で処理時間が10~120分間の段階、及び、温度が90~100℃で時間が5~25分間の段階を少なくとも含む条件で実施される。
前記のように、1段目の処理により、サツマイモチップ全体が膨化する。ただし、この膨化により、崩壊性が改善されているわけではなく、2段目の90~100℃でスチームブランチング処理することにより、端部の繊維質が加熱により軟化するため、フライする際に水が揮発して繊維質に隙間が発生して、繊維質同士の間に空隙が発生し、発生した空隙が崩壊性の要因となっていると推測される。
【0041】
前記スチームブランチングの段階としては、処理するスケール等に応じて、さらに細かく段階を分けてもよいが、段階の数については特に限定はない。
【0042】
なお、スチームブランチングと類似の方法として。いわゆる湯煎処理が挙げられるが、この湯煎処理の場合、直接水にサツマイモチップを漬けるとサツマイモの繊維質に多量に水分が含まれた状態となり、減圧フライ中に揮発して蒸気となるため、フライ中に崩壊することが考えられる。
【0043】
前記スチームブランチングしたサツマイモチップは、そのままフライしてもよいし、必要に応じて冷蔵保存又は冷凍保存してもよい。
【0044】
前記スチームブランチングしたサツマイモチップをフライする手法としては、減圧フライ等が挙げられる。減圧フライにおける条件については、通常のサツマイモスチップを作製する条件と同様であればよく特に限定はない。
【0045】
前記フライ後のサツマイモスナックには、前記の酸化防止剤、光沢剤、調味料、塩、香料、甘味料、乳原料等をシーズニング又はコーティング等をしてサツマイモスナックに所望の味付けすることも可能である。
【0046】
以上のようにして得られる本発明のサツマイモスナックは、厚さが5mm以上でサツマイモ本来の甘さを感じることができ、しかも厚さが3mm以下のサツマイモのフライスナック食品と同様の崩壊性を有し、好ましいサクサクとした心地よい食感のフライスナック食品である。
【実施例0047】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、サツマイモのスライスチップのフライは、85℃、-0.1MPaの条件で減圧フライしているものとする。
【0048】
(実施例1)
厚さが5mmとなるようにスライスした生サツマイモを80℃60分間、次いで98℃10分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックAを作製した。
【0049】
(実施例2)
厚さが15mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間、次いで98℃10分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックBを作製した。
【0050】
(実施例3)
厚さが30mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間、次いで98℃10分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックCを作製した。
【0051】
(実施例4)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃10分間、次いで98℃10分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックDを作製した。
【0052】
(実施例5)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃120分間、次いで98℃10分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックEを作製した。
【0053】
(実施例6)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間、次いで98℃5分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックFを作製した。
【0054】
(実施例7)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間、次いで98℃20分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックGを作製した。
【0055】
(実施例8)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間、次いで98℃30分間スチームブランチング処理した後、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックHを作製した。
【0056】
(比較例1)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、80℃60分間スチームブランチング処理したのち、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックIを作製した。
【0057】
(比較例2)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを、98℃10分スチームブランチング処理したのち、減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックJを作製した。
【0058】
(比較例3)
厚さが10mmとなるようにスライスした生サツマイモを冷凍し、そのまま減圧フライしたものを放冷し、1日以上経過させてサツマイモスナックKを作製した。
【0059】
(比較例4)
厚さが3mmとなるように生スライスした以外は、実施例1と同様にしてサツマイモスナックLを作製した。
【0060】
(一般例1、2)
一般例1として市販サツマイモスナックM、一般例2として市販サツマイモスナックNを用意した。
なお、市販サツマイモスナックNは、波型の構造をとることで食感の軽さを表現したものであった。
【0061】
(試験例1)
サツマイモスナックA~Mの強度を測定するためを、レオメーター(商品名:テクスチャー・アナライザー(Texture Analyzer TA.XT.plus)、Stable MicroSystems社製)の台座に対して垂直方向に固定し、20℃の温度下にて、直径2mmの円柱形プランジャーを、サツマイモスナックの所定の周囲端部より中心部分に向かって押し付け、貫入距離7mm、貫入速度2mm/sで7mmの位置まで貫入させた。その他の条件は、レオメーターに添付のマニュアルに準じて行った。
測定される破断強度(硬度)は、該プランジャーの7mm到達時点での総負荷によって求めた。
【0062】
またプランジャーで差し込んだサツマイモスナックのプランジャーによる貫入を受けていない部分を用いて、図1に示すように、皮部より3.5mm部分を鋭利なナイフで切断し、その断面を天面として顕微鏡にて撮影を行い(140倍)、データを基に断面積における空隙面積の割合を算出した。
具体的には、サツマイモスナックの前記断面における空隙の面積は、顕微鏡(商品名:MXB-2500REZ機能拡張モデルRH2000、Hirox社製)を用いて、倍率140倍の3Dモードでおおよそ450μmを30分割して撮影した写真像に基づき、空隙と思われる部位をスケールでの概算からでの面積を算出し、写真全体の面積を割ることで割合を求めた。なお、空隙であるか否かの判断についてはピントが合っていない部位および色合いが無地となっている部位を空隙部分とし、0.5mmのスケールから部位の大きさを測定することでおおよその面積を算出した。また、全体の面積についてはスケールから画像全体の面積を算出して求めた。得られた結果を表1、2に示す。
また、観察された断面の例として、一般例1で得られた断面図を図2、実施例1で得られた断面図を図3に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
表1、2の結果より、実施例1~8で得られたサツマイモスナックA~Hは、いずれも、市販品であるサツマイモスナックMと同程度かそれ以下の強度を示していることから、崩壊性に優れたものであった。
また、実施例1~8で得られたサツマイモスナックA~Hは、いずれも厚さが5mm以上の厚みがあるため、サツマイモに特有の甘さ等を市販品であるサツマイモスナックMよりも味わうことができるものであった。
また、比較例1、2ではいずれも1段階のスチームブランチング処理を行っているが、いずれも実施例1~8で得られたサツマイモスナックA~Hに比べて、いずれも強度が高くなっており、崩壊性に劣るものであった。また、所定の位置に空隙も見られなかった。
比較例3は、スチームブランチングせずにフライを行っているが、実施例1~8で得られたサツマイモスナックA~Hに比べて、いずれも強度が高くなっており、崩壊性に劣るものであった。また、所定の位置に空隙も見られなかった。
比較例4では、厚さが3mmとなるようにサツマイモをスライスしていたが、フライ中に爆発して破片状となり、強度測定が不可であった。その理由としては、あまりに厚みが薄いと高温スチーム処理による水の含浸がスライス全体に行き渡ってしまったため、減圧フライの際に発生した蒸気にサツマイモスライスが耐え切れず崩壊するものと考えられる。
また一般例2のような波型の構造をとることで食感の軽さを表現したものも分析を行ったが、密な構造をとっていた上に、最端部から7mmまでプランジャーで貫通することが出来ず、測定不可だった。
【0066】
図2に示される一般例1のサツマイモスナックMの断面の顕微鏡像から分かるように、一般の真空フライ品に関しては全体的に空隙のない密な構造をとっている。これに対して、図3に示される実施例1で作製したサツマイモスナックAの断面の顕微鏡像から、本発明のサツマイモスナックでは密な構造からでんぷん質が抜け落ちたかのように空隙が発生しており、この空隙の発生により食感の軽さが生じているものと考えられる。空隙とは図2の黒線が囲った部分のように、撮影範囲中にさつまいもが観察できていない部位(ピントが合ってない部分)を指し、囲った部分の面積を求めた。
そのため、空隙が多いほど崩壊性が高い食感となっているが、おおよそ40%を超えたあたりからサツマイモスナックが非常にもろくなり、比較例4に示すように50%以上になると取り扱いが難しくなってくる。
図1
図2
図3