(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084941
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】噴霧用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20230613BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/34
A61Q1/14
A61Q5/00
A61Q11/00
A61Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199350
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】501360821
【氏名又は名称】MP五協フード&ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村(北條) 沙苗
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB051
4C083AB342
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC692
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD132
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD352
4C083AD532
4C083CC04
4C083CC24
4C083CC32
4C083CC37
4C083CC41
4C083DD08
4C083EE12
4C083EE21
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】噴霧可能であり且つ保湿性に優れる噴霧用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】噴霧用組成物であって、水と、1.5質量%水溶液の粘度が150mPa・s以下を示す低粘性ガラクトキシログルカンと、ポリオールとを含み、前記噴霧用組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.3~2.3質量%である、噴霧用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧用組成物であって、
水と、1.5質量%水溶液の粘度が150mPa・s以下を示す低粘性ガラクトキシログルカンと、ポリオールとを含み、
前記噴霧用組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.3~2.3質量%である、噴霧用組成物。
【請求項2】
前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液の粘度が100mPa・s以下を示す、請求項1に記載の噴霧用組成物。
【請求項3】
前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液の粘度が50mPa・s以下を示す、請求項1又は2に記載の噴霧用組成物。
【請求項4】
前記噴霧用組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.5~2.0質量%である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の噴霧用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧用組成物に関し、より具体的には、ガラクトキシログルカンを含む噴霧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品などの分野において、ガラクトキシログルカンが使用されている。
【0003】
例えば、非特許文献1及び非特許文献2では、水とガラクトキシログルカンとグリセリンとを含む保湿剤が記載されている。この保湿剤は、肌に塗布されると、一部の水の蒸発にともない増粘・ゲル化し、肌に皮膜を形成する。これによって、残りの水の蒸発速度が緩やかになり、保湿効果を持続させることができるとされている。
【0004】
ところで、保湿剤が噴霧可能であると、塗布の煩雑さを低減することもできる。よって、噴霧可能な保湿剤は、商品価値が高いものとなる。例えば、特許文献1では、脱アシル型ジェランガムを含む噴霧可能な化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】発明推進協会公開技報番号2019-501273号
【非特許文献2】岩田 怜、“ノニオン性ポリマー(タマリンドガム)のスキンケア・ヘアケア用品への応用”,COSMETIC STAGE,Vol.15、No.1,2020,p.39-44
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、非特許文献1のガラクトキシログルカンを含む組成物は噴霧することが困難であることが判明した。より具体的には、非特許文献1に記載のガラクトキシログルカン1.0質量%を用い、これとともにグリセリン7.0質量%を水に溶解した組成物は、保湿性を有するものの、噴霧困難であった。これに対して、ガラクトキシログルカンの濃度を所定値以下とすれば噴霧可能であったが、この場合、保湿性が十分に発揮されないことがわかった。
【0008】
また、特許文献1の化粧料は、みずみずしい清涼感のある使用感に優れるものの、保湿効果については評価されていない。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、噴霧可能であり且つ保湿性に優れる噴霧用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討したところ、粘度が所定値以下のガラクトキシログルカン、すなわち低粘性ガラクトキシログルカンを用いることによって、噴霧用組成物の噴霧性が良好になるという知見を見出した。これに加えて、本発明者らは、低粘性ガラクトキシログルカンを用いた場合であっても、非特許文献1に記載のガラクトキシログルカンと比較して、噴霧用組成物に十分な保湿性を付与できるという知見も見出した。
【0011】
上記知見に基づきなされた本発明に係る噴霧用組成物は、水と、1.5質量%水溶液の粘度が150mPa・s以下を示す低粘性ガラクトキシログルカンと、ポリオールとを含み、
前記噴霧用組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が、0.3~2.3質量%である。
【0012】
斯かる構成によれば、ガラクトキシログルカンが低粘性ガラクトキシログルカンであり、且つ、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が上記範囲であることによって、噴霧可能であることに加えて、保湿性に優れるものとなる。
【0013】
また、本発明に係る噴霧用組成物は、好ましくは、前記低粘性ガラクトキシログルカンは、1.5質量%水溶液の粘度が100mPa・s以下を示し、より好ましくは、該粘度が50mPa・s以下を示す。
【0014】
斯かる構成によれば、低粘性ガラクトキシログルカンが上記のような粘度を示すことによって、より噴霧され易くなる。
【0015】
また、本発明に係る噴霧用組成物は、好ましくは、前記スプレー用組成物の総質量に対する前記低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が0.5~2.0質量%である。
【0016】
斯かる構成によれば、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が上記範囲であることによって、より噴霧され易く、且つ、保湿性により優れるものとなる。
【発明の効果】
【0017】
以上の通り、本発明によれば、噴霧可能であり且つ保湿性に優れる噴霧用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態に係る噴霧用組成物について説明する。
【0019】
本実施形態に係る噴霧用組成物は、水と、低粘性ガラクトキシログルカンと、ポリオールと、を含む。本実施形態の噴霧用組成物は、人の肌や毛髪、口腔内の保湿剤に用いられる。
【0020】
ガラクトキシログルカンは、双子葉,単子葉植物などの高等植物の細胞壁(一次壁)に存在する天然多糖である。ガラクトキシログルカンは、グルコース、キシロース、及びガラクトースを構成糖とする。ガラクトキシログルカンの主鎖は、β-1,4結合でつながったグルコースにより構成され、側鎖は、主鎖のグルコースに結合したキシロース、キシロースに結合したガラクトースにより構成される。ガラクトキシログルカンは、タマリンド、ヒメネア属植物の種子、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギ、リンゴなどから取得される。これらのなかでも、入手が容易なタマリンド種子由来のものが好ましい。また、市販品のガラクトキシログルカンとしては、DSP五協フード&ケミカル社製のグリロイド(登録商標)が挙げられる。
【0021】
本発明では、ガラクトキシログルカンのなかでも、低粘性ガラクトキシログルカンを用いることが重要である。低粘性ガラクトキシログルカンとは、低粘性ガラクトキシログルカンの1.5質量%水溶液(低粘性ガラクトキシログルカンの質量:水の質量=1.5:98.5)の粘度が、150mPa・s以下を示すものを意味する。なお、粘度は、B型粘度計を用い、測定温度25℃、回転数30rpmの条件で測定される。
【0022】
前記粘度は、噴霧性の観点からは、95mPa・s以下であることが好ましく、75mPa・s以下であることがより好ましく、70mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、前記粘度がこのような値であることによって、噴霧用組成物による肌や毛髪などへのべたつきや、口腔内のねばつきを抑制することができる。前記粘度は、肌などへの皮膜形成性や保湿性の観点からは、10mPa・s以上であることが好ましい。
【0023】
低粘性ガラクトキシログルカンは、グリロイド(登録商標)などのガラクトキシログルカンを分解することによって調製される。また、この分解の程度を調整することによって、前記粘度を適宜変更することができる。
【0024】
例えば、低粘性ガラクトキシログルカンは、ガラクトキシログルカンの化学的分解、物理的分解、又は酵素的分解によって調製される。
【0025】
化学的分解としては、酸加水分解又はアルカリ加水分解が挙げられる。酸加水分解に用いる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、又は硝酸などの無機酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、又はプロピオン酸などの有機酸が挙げられる。これらのなかでも、硫酸やクエン酸が好ましい。アルカリ加水分解に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化カルシウムなどの無機塩基が挙げられる。
【0026】
物理的分解としては、熱処理、高圧ホモジナイズ処理、超音波処理、又は機械的せん断処理が挙げられる。
【0027】
酵素的分解に用いる酵素は、β-1,4-グルカナーゼ、すなわち、いわゆるセルラーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素が挙げられる。
【0028】
低粘性ガラクトキシログルカンは、酸加水分解により調製されたものであることが好ましい。より具体的には、低粘性ガラクトキシログルカンは、以下のようにして調製することができる。
まず、アルコール水溶液にガラクトキシログルカンを分散した後、酸を加えて加熱する。その後、アルカリを加えて中和し、沈殿物を回収した後、該沈殿物をアルコール水溶液で洗浄して乾燥すると低粘性ガラクトキシログルカンが得られる。
低粘性ガラクトキシログルカンの調製時に用いるガラクトキシログルカンの量は、アルコール水溶液の全量に対してガラクトキシログルカンが0.1~20質量%である。アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが好ましい。アルコール水溶液の濃度は、30~80質量%が好ましい。酸の添加量は、アルコール水溶液に対して0.1~20重量%であり、好ましくは1~10重量%である。溶液のpHの値としては4未満が好ましい。反応温度は、20℃から150℃であり、好ましくは40℃から121℃である。反応時間は、所望の反応時間を、例えばB型粘度計〔東機産業(株)製〕で測定してモニターすることにより調節することができ、通常は数秒から48時間であり、1時間から24時間が好ましい。アルカリの添加量は、溶液の液性が中性(pHの目安:6~8)になる量である。
【0029】
低粘性ガラクトキシログルカンの含有量は、噴霧用組成物の総質量に対して、0.3~2.2質量%であることが好ましく、0.8~2.2質量%であることがより好ましく、1.2~2.2質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
特に、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が所定値以上である場合、低粘性ガラクトキシログルカンに付着している水の量も多くなるため、噴霧用組成物による保湿性を長時間にわたって維持することができるため好ましい。かかる観点から、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。なお、非特許文献1のガラクトキシログルカンを含む噴霧用組成物は、ガラクトキシログルカンの含有量が大きすぎると噴霧不可能となるため、上記のような効果は期待できない。
【0031】
ポリオールは、糖類及び水酸基を2個以上有するアルコール類を含む。
【0032】
前記糖類としては、三炭糖以上十炭糖以下の糖類が好ましく、例えば、トリオース(三炭糖。例えば、グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等)、テトロース(四炭糖。例えば、エリトロース、トレオース、エリトルロース等)、ペントース(五炭糖。例えば、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アビオース、リブロース、キシルロース等)、ヘキソース(六炭糖。例えば、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース(果糖)、ソブボース等)、ヘプトース(七炭糖。セドヘプツロース、コリオース等)等のアルドース型、ケトース型の単糖類、ショ糖、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類、デキストリン等の水溶性高分子の分解物(ただし、前記低粘性ガラクトキシログルカンを除く)、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール類が挙げられる。また、前記糖類は、これらから選択された1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0033】
前記アルコール類は、アルコール及びアルコール誘導体が含まれる。前記アルコール類としては、炭素数3~10のアルコール類が好ましく、例えば、2価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール等、)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等)、多価アルコールの誘導体等が挙げられる。また、前記アルコール類は、これらから選択された1種類であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0034】
前記多価アルコール誘導体としては、2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合するアルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)等が挙げられる。
具体的には例えば、前記2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体としては、PPG-40ブチル〔すなわち、POP(40)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブMB-370」等)、PPG-30ブテス-30〔すなわち、POE(30)・POP(30)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブ50MB-72」等)、PPG-16グリセリルエーテル(市販品として「ユニオールTG-1000」等)、PPG-24グリセリル-24(市販品として「ユニルーブ50TG-32」等)、PPG-25-ポリエチレングリコール-25トリメチロールプロパン(市販品として「ユニルーブ43TT-2500」等)、PPG-14ジグリセリル(「ユニルーブDGP-950」等)、PEG-5-PPG-65ペンタエリスリチル(「ユニルーブ5TP-300KB」等)(以上、いずれも日油(株)製)等が挙げられる。ここで、PPGはポリプロピレングリコール、POPはポリオキシプロピレン、POEはポリオキシエチレン、PEGは、ポリエチレングリコールを表す。
【0035】
多価アルコールの一種である糖アルコール類は、前記糖類としても機能するが、一方でアルコール類としても機能し、ソルビトール、マンニトール等の5~6価アルコールが好適例として挙げられる。これら糖アルコールの誘導体としては、糖アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合するアルキレンオキシドとしてはEO、PO、BO等が挙げられる。
具体的には、POPソルビット(市販品として「ユニオールHS-1600D」(日油(株)製)等)、POE(10)メチルグルコシド(市販品として「グルカムE-10」(日本ルーブリゾール(株)製)等)、POP(20)メチルグルコシド(市販品として「グルカムP-20」(日本ルーブリゾール(株)製)等)等が挙げられる。
【0036】
前記ポリオールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、イソプレングリコール、ソルビトール、グルコース、マンニトール、トレハロース、キシリトール、ポリエチレングリコールが好ましい。なお、これらは1種単独で用いられてもよく、複数種を併用して用いられてもよい。
【0037】
前記ポリオールの分子量は、2,000以下であることが好ましく、1,500以下であることがより好ましく、1,000以下であることがさらに好ましい。
【0038】
ポリオールの含有量は、噴霧用組成物の総質量に対して、2.5~27.5質量%であることが好ましい。
【0039】
水は、脱イオン水や蒸留水が好ましい。水の含有量は、噴霧用組成物に総質量に対して、通常50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0040】
噴霧用組成物の粘度は、50mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以下であることがより好ましく、15mPa・s以下であることがさらに好ましく、10mPa・s以下であることがより一層好ましい。これによって、噴霧用組成物を噴霧容器に充填する操作が容易になる。このことは、噴霧容器を繰り返し使用する場合、すなわち、再充填型の噴霧容器の場合に好ましい。これに対して、特許文献1の脱アシル型ジェランガムを含む噴霧用組成物では、低粘性ガラクトキシログルカンを含むものと比べて、脱アシル型ジェランガムの粘性のために、粘度を低下させることが困難となる。すなわち、脱アシル型ジェランガムのような比較的高い粘度を示すような多糖類を用いる場合、その性能を発揮する所定の濃度を維持しつつ充填の操作性を向上させることは、難しい。
また、本実施形態の噴霧用組成物は、粘度が上記のような値であることによって、肌や毛髪などへのべたつきや、口腔内のねばつきを抑制することもできる。
さらに、本実施形態の噴霧用組成物は、粘度が上記のような比較的低い値であっても、保湿性に優れる。
【0041】
本実施形態の噴霧用組成物を充填する噴霧容器としては、例えば、ポンプ式アトマイザータイプ、トリガータイプ、エアゾールタイプなどが挙げられる。
【0042】
本実施形態の噴霧用組成物は、化粧水、美容液、制汗剤、日焼け止め料、ファンデーション、整髪料などの化粧品に用いることができる。すなわち、本実施形態の噴霧用組成物は、皮膚や毛髪に適用することができる。また、本実施形態の噴霧用組成物は、口腔内や鼻腔内に適用することもできる。
【0043】
以上のように、例示として一実施形態を示したが、本発明に係る噴霧用組成物は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る噴霧用組成物は、上記した作用効果により限定されるものでもない。本発明に係る噴霧用組成物は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0044】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0045】
[低粘性ガラクトキシログルカンの調製]
非特許文献1に記載のガラクトキシログルカン(DSP五協フード&ケミカル社製、グリロイド)を酸処理することによって、表1の粘度を示す低粘性ガラクトキシログルカンを調製した。具体的には、耐圧容器に272gの50%アルコール水溶液を入れ、撹拌しながら28gのガラクトキシログルカンを投入して分散し、さらに硫酸を添加して溶液のpHを約2に調整した。そして、この溶液を撹拌しながら110℃まで加熱した。加熱終了後、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを約7に調整し、ろ過して沈殿物を得た。次いで、この沈殿物に300gの50%アルコール水溶液を加えて撹拌し、ろ過して沈殿物を得た。再度、沈殿物に300gの50%アルコール水溶液を加えて撹拌し、ろ過をして沈殿物を得た後、約75℃で乾燥して低粘性ガラクトキシログルカンを得た。なお、110℃での加熱時間は60分から240分の間で適宜変更し、低粘性ガラクトキシログルカン1~8を得た。
【0046】
[粘度測定]
各低粘性ガラクトキシログルカン及びガラクトキシログルカン(グリロイド6C)の粘度を測定した。具体的には、合計200gになるよう各試料3gを水197gに撹拌しながら溶解し、1.5質量%水溶液を調製した。B型粘度計(東機産業社製)を用い、25℃、30rpmの条件で、各水溶液の粘度を測定した。結果は、表1に示したとおりである。
【0047】
【0048】
[組成物の評価]
表2に示す処方にしたがって組成物を調製し、噴霧性、皮膜形成性、及び保湿性について評価した。また、B型粘度計を用い、25℃、30rpmの条件で、各組成物の粘度を測定した。結果は、表2に示したとおりである。
【0049】
(噴霧性評価)
噴霧容器(武内容器社製、Z-155ファインミストスプレー)に水溶液を充填し、25℃での噴霧性を次の評価基準にしたがい評価した。
◎:噴霧状になり広がりが良好である。
○:噴霧状になるが、広がりは悪い。
×:線状になる。
【0050】
(皮膜形成性評価)
プラスチックシャーレ(直径90mm、高さ15mm)に水溶液を入れ、送風定温乾燥機(東京理化機械社製、WFO-700)を用いて50℃、12時間、水溶液を乾燥させた。乾燥後の皮膜の形成及び皮膜の状態を確認し、次の評価基準にしたがい皮膜形成性を評価した。
◎:柔軟な皮膜を形成する。
○:硬い皮膜を形成する。
×:皮膜を形成しない。
【0051】
(保湿性評価)
噴霧容器(武内容器社製、Z-155ファインミストスプレー)に水溶液を充填し、ワンプッシュ分を肌に噴霧し、次の評価基準にしたがい保湿性を評価した。
◎:保湿感を十分に感じる。
○:保湿感を感じる。
×:保湿感が弱い。
【0052】
(総合評価)
◎を3点、○を2点、×を1点とし、各水溶液について合計点を算出した。合計点が8点以上のものを実施例、合計点が7点以下のものを比較例に分類した。
【0053】
【0054】
表2のとおり、ガラクトキシログルカン(グリロイド6C)を配合した比較例1は、噴霧性が悪かったが、低粘性ガラクトキシログルカンを配合した実施例1~8は、噴霧性が良好であった。特に、低粘性ガラクトキシログルカンの1.5質量%水溶液の粘度が50mPa・s以下である実施例1~6は、噴霧性がより良好であった。
【0055】
次に、表3に示すように、低粘性ガラクトキシログルカンとガラクトキシログルカン(グリロイド6C)の濃度を変更して組成物を調製し、上記と同様に評価した。
【0056】
【0057】
表3のとおり、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が0.5~2.0質量%の組成物は(実施例9~11)は、噴霧性が良好で且つ十分な保湿性を示した。特に、低粘性ガラクトキシログルカンの含有量が0.5~1.5質量%の組成物は、噴霧性がより良好であった。
【0058】
次に、表4に示すように、グリセリンの濃度を変更して組成物を調製し、上記と同様に評価した。
【0059】
【0060】
表4のとおり、グリセリンの含有量2.0~30.0質量%の組成物(実施例12~17)は、噴霧性が良好で且つ十分な保湿性を示した。特に、グリセリンの含有量が2.0~25.0質量%の組成物(実施例12~16)は、噴霧性がより良好であった。
【0061】
次に、表5に示すように、ポリオールの種類と濃度を変更して組成物を調製し、上記と同様に評価した。
【0062】
【0063】
表5のとおり、ポリオールの種類を変更した場合にも、各組成物は、噴霧性が良好で且つ十分な保湿性を示した。
【0064】
次に、各種用途に低粘性ガラクトキシログルカンを適用した場合の噴霧性と保湿性を評価した。
【0065】
[実施例29:スプレーローション]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:1.00質量%
ペンチレングリコール:3.00質量%
グリセリン:7.00質量%
ガリカバラ花エキス(5%)、グリセリン(60%)、水(35%):3.00質量%
パンテノール:0.50質量%
クエン酸ナトリウム水溶液(10%):1.00質量%
クエン酸水溶液(10%):0.20質量%
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:5.7
噴霧性評価:噴霧容器から肌へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:肌に噴霧後、保湿感を十分に感じた。
【0066】
[実施例30:メイクキープミスト]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:0.50質量%
グリセリン:5.00質量%
ポリイミド-1(30%水溶液):0.33質量%
エタノール:5.00質量%
フェノキシエタノール:0.40質量%
クエン酸水溶液(10%):0.10質量%
クエン酸ナトリウム水溶液(10%):0.75質量%
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:6.5
噴霧性評価:噴霧容器から肌へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:肌に噴霧後、保湿感を十分に感じた。
【0067】
[実施例31:スプレーローション、ジェランガム併用]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:0.50質量%
脱アシル型ジェランガム:0.10質量%
クエン酸ナトリウム:0.10質量%
BG:5.00質量%
グリセリン:3.00質量%
ペンチレングリコール:1.50質量%
DPG:2.00質量%
グルコース:1.00質量%
メチルパラベン:0.10質量%
塩化カルシウム水溶液(0.5M):0.75質量%
クエン酸水溶液(1%):0.50質量%
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):620
pH:5.8
噴霧性評価:噴霧容器から肌へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:肌に噴霧後、保湿感を十分に感じた。
【0068】
[実施例32:クレンジングスプレー]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:1.00質量%
ペンチレングリコール:3.00質量%
アルギニン:2.50質量%
マンニトール:5.00質量%
トレハロース:5.00質量%
フェノキシエタノール:0.50質量
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:10.4
噴霧性評価:噴霧容器から肌へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:肌に噴霧後、保湿感を十分に感じた。
【0069】
[実施例33:頭皮用スプレーローション]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:1.00質量%
ペンチレングリコール:3.00質量%
グリセリン:7.00質量%
ヨーロッパキイチゴ葉エキス(10%)、グリセリン(50%)、水(40%):3.00質量%
パンテノール:0.50質量%
クエン酸ナトリウム水溶液(10%):1.00質量%
クエン酸ナトリウム(10%):0.20質量%
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:5.7
噴霧性評価:噴霧容器から頭皮へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:頭皮に噴霧後、保湿感を十分に感じた。
【0070】
[実施例34:ヘアミスト]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:1.0質量%
グリセリン:3.00質量%
フェノキシエタノール:0.40質量%
ポリクオタニウム-11:0.50質量%
ステアリルトリモニウムクロリド(50%溶液):0.50質量%
エタノール:5.00質量%
クエン酸水溶液(10%):0.10質量%
クエン酸ナトリウム水溶液(10%):0.75質量%
合計:100.0質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:5.8
噴霧性評価:噴霧容器から髪へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:髪に噴霧後、しっとり感を感じた。
【0071】
[実施例35:口腔保湿スプレー1]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:0.50質量%
グリセリン:10.00質量%
安息香酸Na:0.10質量%
PEG-60水添ヒマシ油:3.00質量%
l-メントール:0.10質量%
エタノール:5.00質量%
キシリトール:5.00質量%
クエン酸:0.10質量%
クエン酸ナトリウム:0.50質量%
合計:100.00質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:5.7
噴霧性評価:噴霧容器から口腔内へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:口腔内に噴霧後、潤いを感じた。
【0072】
[実施例36:口腔保湿スプレー2]
水:残部
低粘性ガラクトキシログルカン3:1.00質量%
グリセリン:5.00質量%
安息香酸Na:0.10質量%
塩化セチルピリジニウム:0.01質量%
キシリトール:5.00質量%
ソルビトール:5.00質量%
チャ乾留液:0.05質量%
クエン酸:0.10質量%
クエン酸ナトリウム:0.80質量%
合計:100.00質量%
粘度(mPa・s、30rpm、25℃):1
pH:5.9
噴霧性評価:噴霧容器から口腔内へ噴霧することが可能であった。
保湿性評価:口腔内に噴霧後、潤いを感じた。