(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084949
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】シャトルコック
(51)【国際特許分類】
A63B 67/187 20160101AFI20230613BHJP
【FI】
A63B67/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199361
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 恒平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
(57)【要約】
【課題】天然シャトルコックと比べて遠くに飛びすぎないシャトルコックを提供する。
【解決手段】シャトルコック100は、人工羽根部10と、ベース体3とを備えている。ベース体3は、円柱部31と、曲面部32とを含んでいる。円柱部31には、人工羽根部10が接続されている。曲面部32は、円柱部31に対して人工羽根部10とは反対側において円柱部31から突出している。ベース体3の曲面部32は、円柱部31の半径Ra1よりも大きい曲率半径Ra2を有する先端部30を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工羽根部と、
前記人工羽根部が接続された円柱部と、前記円柱部に対して前記人工羽根部とは反対側において前記円柱部から突出した曲面部とを含むベース体とを備え、
前記ベース体の前記曲面部は、前記円柱部の半径よりも大きい曲率半径を有する先端部を有している、シャトルコック。
【請求項2】
前記円柱部の径方向から前記ベース体を見た側面視において、前記先端部の曲率半径の中心は、前記円柱部の中心線の延長線上に配置されている、請求項1に記載のシャトルコック。
【請求項3】
前記先端部は、前記径方向から前記ベース体を見た側面視において前記円柱部の前記中心線に対して一方側に配置された第1部と、前記径方向から前記ベース体を見た側面視において前記円柱部の前記中心線に対して他方側に配置されかつ前記第1部に接続された第2部とを含み、
前記第2部は、前記第1部に接線連続に接続されている、請求項2に記載のシャトルコック。
【請求項4】
前記径方向から前記ベース体を見た側面視において、前記曲面部は、円弧状に設けられており、
前記曲面部の曲率半径は、前記円柱部の半径よりも大きい、請求項3に記載のシャトルコック。
【請求項5】
前記曲面部が前記円柱部から突出する軸方向において、前記円柱部は、前記曲面部よりも大きい寸法を有している、請求項1~4のいずれか1項に記載のシャトルコック。
【請求項6】
前記軸方向における前記ベース体の寸法は、13mm以上20mm以下である、請求項5に記載のシャトルコック。
【請求項7】
前記軸方向における前記ベース体の寸法は、13mm以上17mm以下である、請求項5に記載のシャトルコック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャトルコックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シャトルコックとして、天然羽根を含む天然シャトルコックと人工羽根を含む人工シャトルコックとが知られている。一般的には、シャトルコックのベース部の曲面部の先端部は、半球形状を有している。例えば、国際公開第2018/194010号(特許文献1)には、人工羽根としてプラスチックによって形成されたスカート部を含む人工シャトルコックが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報に記載のシャトルコックでは、ベース部(ベース体)の曲面部の先端部は、略半球形状を有している。このため、曲面部の先端側において受ける空気抵抗は、低減される。よって、上記公報に記載の人工シャトルコックがラケットで打撃された場合、天然シャトルコックよりも遠くに飛ぶ。
【0005】
シャトルコックは、競技規則によって一定の質量範囲が設定されている。人工羽根が天然羽根に比べて重いため、ベース部を軽くすることで人工シャトルコックの質量を規則範囲内に設定する。これにより、重心が高くなるため、ベース体が下を向くのが遅くなる。このため、飛翔する人工シャトルコックの軌道の終期において落下角度が小さくなる。よって、人工シャトルコックがラケットで打撃された場合、天然シャトルコックよりも飛び過ぎる傾向がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、天然シャトルコックと比べて遠くに飛びすぎないシャトルコックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシャトルコックは、人工羽根部と、ベース体とを備えている。ベース体は、円柱部と、曲面部とを含んでいる。円柱部には、人工羽根部が接続されている。曲面部は、円柱部に対して人工羽根部とは反対側において円柱部から突出している。ベース体の曲面部は、円柱部の半径よりも大きい曲率半径を有する先端部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシャトルコックによれば、ベース体の曲面部は、円柱部の半径よりも大きい曲率半径を有する先端部を有している。このため、半球状のベース体と比べて曲面部が正面から受ける空気抵抗が大きくなり、減速し、鉛直方向に落下し始める。円柱部は、曲面部よりも大きい寸法を有している。このため、ベース体に加わる抗力と重心からベース体に加わる抗力の作用点までの距離の積と人工羽根部に加わる抗力と重心から人工羽根部に加わる抗力の作用点までの距離の積との差を大きくすることができる。よって、シャトルコックを速く下に向かせることができる。このため、落下角度が大きくなり、遠くに飛びすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るシャトルコックの構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態に係るシャトルコックのベース体の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】実施の形態に係るシャトルコックのベース体の構成を概略的に示す側面図である。
【
図4】実施の形態に係るシャトルコックの人工羽根の構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】実施の形態の変形例に係るシャトルコックの構成を概略的に示す側面図である。
【
図6】実施の形態に係るシャトルコックが飛翔した場合に生じる空気抵抗を概略的に示す側面図である。
【
図7】実施の形態に係る人工シャトルコック、比較例に係る人工シャトルコックおよび天然シャトルコックが飛翔した場合における軌道を概略的に示す側面図である。
【
図8】実施の形態に係るシャトルコックが自由落下した場合におけるシャトルコックの回転を概略的に示す側面図である。
【
図9】比較例に係るシャトルコックの構成を概略的に示す側面図である。
【
図10】比較例に係るシャトルコックが飛翔した場合に生じる空気抵抗を概略的に示す側面図である。
【
図11】比較例に係るシャトルコックが自由落下した場合におけるシャトルコックの回転を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下では、同一または相当する部分に同一の符号を付すものとし、重複する説明は繰り返さない。
【0011】
図1~
図3を用いて、実施の形態に係るシャトルコック100の構成を説明する。
【0012】
図1に示されるように、シャトルコック100は、人工羽根部10と、複数のかがり糸2と、ベース体3とを含んでいる。人工羽根部10は、複数の人工羽根1を含んでいる。複数の人工羽根1は、ベース体3から突出している。複数の人工羽根1は、例えば、円環状に配置されている。複数の人工羽根1のうち隣り合う人工羽根1は、部分的に互いに重なるように配置されている。複数の人工羽根1の数は、例えば、16である。
【0013】
複数の人工羽根1の各々は、軸部11と、羽根部12とを含んでいる。軸部11は、ベース体3の図示されない挿入孔に差し込まれている。これにより、複数の人工羽根1がベース体3に固定されている。羽根部12は、軸部11から張り出している。複数の人工羽根1のうち隣り合う人工羽根1の羽根部12は、部分的に互いに重なるように配置されている。財団法人日本バドミントン協会の競技規則に基づいて、羽根部(人工羽根1)の長さは、先端から台(ベース体3)の上まで、62mm以上70mm以下である。なお、人工羽根1の詳細な構成は、後述される。
【0014】
複数のかがり糸2は、環形状に設けられている。複数のかがり糸2の各々は、複数の人工羽根1の全周にわたって配置されている。複数のかがり糸2の各々は、複数の人工羽根1を固定している。
【0015】
ベース体3は、円柱部31と、曲面部32と、環状部33とを含んでいる。円柱部31は、円柱状である。円柱部31には、複数の人工羽根1が接続されている。円柱部31には、テープ等の環状部33が巻かれている。
【0016】
なお、本実施の形態において、軸方向DR1とは、円柱部31の中心線CLが伸びる方向である。先端側および正面側とは、円柱部31に対して曲面部32が配置された側である。径方向DR2とは、円柱部31の径方向DR2である。径方向DR2は、軸方向DR1に直交している。
【0017】
円柱部31の径方向DR2の寸法は、円柱部31の軸方向DR1の寸法よりも大きい。望ましくは、曲面部32が円柱部31から突出する軸方向DR1において、円柱部31は、曲面部32よりも大きい寸法を有している。すなわち、円柱部31は、曲面部32よりも長い。ベース体3がひずんでいない状態において、円柱部31は、曲面部32よりも長い。シャトルコック100が打撃されたことがない状態(未使用状態)において、円柱部31は、曲面部32よりも長い。
【0018】
曲面部32は、円柱部31に対して複数の人工羽根1とは反対側において円柱部31から突出している。すなわち、曲面部32は、円柱部31に対して複数の人工羽根1とは反対側において円柱部31に接続されている。曲面部32は、円柱部31に対して滑らかに接続されている。円柱部31および曲面部32は、フィレットを構成するように接続されていてもよい。円柱部31および曲面部32は、スプライン曲線を構成するように接続されていてもよい。
【0019】
曲面部32は、先端部30を含んでいる。先端部30は、円柱部31とは反対側に配置されている。先端部30は、円柱部31の半径Ra1よりも大きい曲率半径Ra2を有している。先端部30は、シャトルコック100の最も先端側の領域である。
【0020】
先端部30は、扁平である。本実施の形態において、先端部30が扁平であるとは、円柱部31と同じ半径Ra1を有する半球が円柱部31に接続された場合における当該半球の先端よりも先端部30が円柱部31側に配置されていることを意味する。なお、
図1では、円柱部31の半径と同じ半径を有する半球の外形が破線によって示されている。先端部30は、滑らかな形状を有している。先端部30が扁平である限り、曲面部32の形状は適宜に決められてもよい。
【0021】
図示されないが、曲面部32は、中間部をさらに含んでいてもよい。中間部は、先端部30を円柱部31に接続している。中間部は、先端部30を滑らかに円柱部31に接続している。中間部は、先端部30とは異なる曲率半径を有していてもよい。中間部は、先端部30よりも小さい曲率半径を有していてもよい。すなわち、曲面部は、円柱部の半径Ra1よりも大きい複数の半径で構成されていてもよい。中間部は、円柱部31と同じ半径を有する半球部が円柱部31に接続された場合における当該半球が占める領域(
図1の破線で示される領域)よりも内側に位置していてもよい。中間部は、円柱部31と同じ半径を有する半球部が円柱部31に接続された場合における当該半球が占める領域(
図1の破線で示される領域)よりも外側に位置していてもよい。
【0022】
円柱部31の径方向DR2からベース体3を見た側面視において、先端部30の曲率半径の中心CPは、円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されている。先端部30は、円柱部31の中心線CLに対して軸対称な形状を有している。径方向DR2からベース体3を見た側面視において、先端部30の先端は、円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されている。径方向DR2からベース体3を見た側面視において、曲面部32の中心CPの位置は、先端部30の先端の位置と一致している。
【0023】
先端部30は、第1部321と、第2部322とを含んでいる。第1部321は、径方向DR2からベース体3を見た側面視において円柱部31の中心線CLに対して一方側に配置されている。第2部322は、径方向DR2からベース体3を見た側面視において円柱部31の中心線CLに対して他方側に配置されている。第2部322は、第1部321に接続されている。第2部322は、第1部321に円柱部31の中心線CLにおいて接続されている。第1部321と第2部322との接続部は、先端部30の先端に位置している。
【0024】
第2部322は、第1部321に接線連続に接続されている。本実施の形態において、第2部322が第1部321に接線連続に接続されているとは、第1部321と第2部322との接続位置(先端部30の先端)において、第1部321の接線と第2部322の接線とが一致するように第2部322が第1部321に接続されていることを意味する。本実施の形態において、第1部321と第2部322との接続位置(先端部30の先端)において、第1部321の接線および第2部322の接線は、円柱部31の中心線CLに対して直交する。例えば、曲面部32の形状が半球である場合には、第2部322が第1部321に接線連続に接続されている。なお、第2部322が第1部321に接線連続に接続されている限り、曲面部32および先端部30の形状は適宜に決められてもよい。円柱部31と曲面部32とは、接線連続に接続されていなくてもよいし、接線連続に接続されていてもよい。
図1では、円柱部31と曲面部32とは、接線連続に接続されていない。
【0025】
本実施の形態において、径方向DR2からベース体3を見た側面視において、曲面部32は、円弧状に設けられている。円弧は、円柱部31の中心線CLに対する一方側の端部および他方側の端部の両方に接続されている。円弧は、円柱部31に対して滑らかに接続されている。径方向DR2からベース体3を見た側面視において、円弧の中点は、円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されている。径方向DR2からベース体3を見た側面視において、曲率半径の中心CPは、円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されている。径方向DR2からベース体3を見た側面視において、曲率半径の中心CPは、円柱部31と曲面部32との接続位置よりも円柱部31側に配置されている。曲面部32が円弧状に設けられている場合、曲面部32は、全体として扁平である。
【0026】
曲面部32が円弧状に設けられている場合、曲面部32の曲率半径は、円柱部31の半径Ra1よりも大きい。曲面部32の曲率半径は、円柱部31の軸方向DR1における寸法よりも大きくてもよい。曲面部32の曲率半径は、曲面部32の全体において同じであってもよい。曲面部32の曲率半径は、位置によって異なっていてもよい。すなわち、曲面部32は、互いに異なる曲率半径を有する複数の曲面が組み合わせられた形状であってもよい。
【0027】
図2に示されるように、本実施の形態において、円柱部31は、第1内側部31aと、第1外皮部31bとを含んでいる。第1外皮部31bは、第1内側部31aを覆っている。曲面部32は、第2内側部32aと、第2外皮部32bとを含んでいる。第2外皮部32bは、第2内側部32aを覆っている。
【0028】
望ましくは、第1内側部31aは、発泡体によって構成されている。望ましくは、第2内側部32aは、粉砕されたコルクおよび粉砕されたコルク同士を接合するための接合剤によって構成されている。コルクは、例えば、天然のコルクまたは人工のコルクである。人工のコルクは、例えば、プラスチックによって構成されている。
【0029】
第1内側部31aおよび第2内側部32aの比重は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。望ましくは、第2内側部32aの比重は、第1内側部31aの比重よりも大きい。ベース体3の軸方向DR1における寸法が小さいほど、第2内側部32aの比重が大きいことが望ましい。
【0030】
第1外皮部31bおよび第2外皮部32bは、薄い部材(例えば、人工皮革)によって構成されている。第1外皮部31bおよび第2外皮部32bは、一体的に構成されている。
【0031】
図3に示されるように、本実施の形態において、円柱部31の表面から曲面部32の先端までの軸方向DR1における寸法(軸方向DR1におけるベース体3の寸法)を第1寸法H1を用いて示す。なお、
図3では、環状部33(
図1参照)は図示されていない。円柱部31の上面から円柱部31と曲面部32との接続位置までの軸方向DR1における寸法を第2寸法H2を用いて示す。円柱部31の表面から曲率半径の中心CPまでの軸方向DR1における寸法を第3寸法H3を用いて示す。円柱部31の直径を直径φを用いて示す。曲面部32の曲率半径を曲率半径Rを用いて示す。
【0032】
財団法人日本バドミントン協会の競技規則に基づいて、円柱部31の直径φは、25mm以上28mm以下である。例えば、円柱部31の半径が14mmである場合には、曲面部32の曲率半径Rは14mmよりも大きい。軸方向DR1における円柱部31の寸法(第2寸法H2)は、例えば、8mm以上12mm以下である。
【0033】
望ましくは、軸方向DR1におけるベース体3の寸法(第1寸法H1)は、13mm以上20mm以下である。さらに望ましくは、軸方向DR1におけるベース体3の寸法(第1寸法H1)は、13mm以上17mm以下である。例えば、羽根部(人工羽根1)の先端から台(ベース体3)の上までの寸法が62mm以上70mm以下であるため、ベース体の寸法は、羽根部(人工羽根1)の先端から台(ベース体3)の上までの寸法の13/70以上17/62以下であることが望ましい。このため、ベース体3の寸法は、羽根部(人工羽根1)の先端から台(ベース体3)の上までの寸法の例えば1/5以上1/4以下であることが望ましい。なお、ベース体3の寸法が13mm未満である場合、ベース体3を人工羽根1(
図1参照)が突き破るおそれがあるため、シャトルコック100の製造が困難になる。このため、ベース体3の寸法が13mm未満である場合、シャトルコック100の生産性が低下するおそれがある。よって、ベース体3の寸法が13mm以上であることが望ましい。
【0034】
第1寸法H1は、第2寸法H2および第3寸法H3よりも大きい。望ましくは、第2寸法H2は、第3寸法H3よりも大きい。すなわち、望ましくは、中心CPは、曲面部32内ではなく、円柱部31内に位置している。中心CPは、ベース体3の先端側に位置していることが望ましい。
【0035】
図1を参照して、シャトルコック100の重心CGについて詳細に説明する。ベース体3が短いと重心CGが曲面部32の先端側から離れて位置するが、後述のように重心CGは先端側の近くに位置していることが望ましい。すなわち、低重心が望ましい。ベース体3の短さを維持したままで重心CGを先端側に位置させるために、ベース体3の比重を大きくすることが望ましい。ベース体3が短いほど、第2内側部32a(
図2参照)の比重が大きいことが望ましい。例えば、コルクを接合する接合剤の量を増やすことで第2内側部32a(
図2参照)の比重が大きくなる。
【0036】
ベース体3が短いほど、ベース体3の側方から見た投影面積を小さくすることができる。このため、ベース体3の側面が受ける空気抵抗を小さくすることができる。短いベース体3を有するシャトルコック100は、ショートベースのシャトルコック100である。シャトルコック100がショートベースのシャトルコック100であることの詳細な効果は、後述される。また、重心CGが先端側に位置するほど、シャトルコック100の回転速度を速くすることができる。
【0037】
次に、
図1および
図4を用いて、本実施の形態に係るシャトルコックの人工羽根1の構成を詳細に説明する。
【0038】
図1に示されるように、軸部11は、第1軸部分111と、第2軸部分112とを有している。第1軸部分111は、羽根部12から突出するように配置されている。第2軸部分112は、羽根部12に接続されている。第1軸部分111と第2軸部分112とは、同一線状に延びるように配置されている。第1軸部分111と第2軸部分112とは、1つの連続した軸部11を構成している。図示されないが、軸部11は、ベース体3に設けられた長方形状の貫通孔と嵌め合わせられている。
【0039】
軸部11の設計長さは、例えば、76mm以上79mm以下である。軸部11の設計長さは、財団法人日本バドミントン協会の競技規則により、羽根の長さは、羽根の先端から台の上まで、62mmから70mmの範囲の同じ長さでなければならない、と規定されていることによって定まる。例えば、羽根の先端から台の上までの寸法が63mm以上65mmであり、軸部11の根元部においてベース体3の挿入孔に挿入される部分(埋設部)の長さが13mm以上14mm以下である場合、軸部11の設計長さは76mm以上79mm以下である。
【0040】
軸部11を構成する材料は、例えば、一軸延伸ポリエチレンテレフタレート(超延伸材)である。他に軸部11を構成する材料は、例えば、ナイロンである。軸部11を構成する材料は、望ましくはナイロン12、ナイロン11、ナイロン10、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1010などである。繊維強化のために、ナイロンにチタン酸カリウムウィスカー、ガラスなどを添加したものを軸部11を構成する材料として用いることもできる。また、軸部11を構成する材料として、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンなども用いることができる。
【0041】
図4は、人工羽根1を軸部11に対して直交するように切断した断面図である。
図4に示されるように、軸部11は、内部材113と、外部材114と、中間部材115とを有している。内部材113と外部材114とは、中間部材115を挟んで配置されている。内部材113および外部材114は中間部材115と略直交するように配置されている。断面形状において、内部材113および外部材114はそれぞれ、
図4の左右方向に中間部材115よりも突出するように延在している。内部材113および外部材114は、ほぼ等しい幅を有している。
図4の左右方向において、中間部材115は内部材113および外部材114のほぼ中央に配置されている。内部材113と、外部材114と、中間部材115とは、ほぼ等しい厚みを有している。内部材113および外部材114のそれぞれは、断面形状において各々の両端から中央に向かって厚みが厚くなるように形成されたテーパを有している。また、内部材113および外部材114のそれぞれと中間部材115との接続部分にラウンド形状が設けられている。
【0042】
軸部11の延在方向にほぼ垂直な方向における断面形状は、I字状である。すなわち、軸部11の延在方向に対して垂直な平面における断面形状は、I字状である。
【0043】
なお、
図4における人工羽根1では、第1の側面11cおよび第2の側面11dの両方が凹部13を有しているが、第1の側面11cおよび第2の側面11dの少なくともいずれかが軸部11の延在方向に延びる凹部13を有していればよい。すなわち、第1の側面11cおよび第2の側面11dの両方が凹部13を有していてもよく、第1の側面11cまたは第2の側面11dの一方が凹部13を有していてもよい。第1の側面11cまたは第2の側面11dの一方が凹部13を有している場合、中間部材115は、軸部11の内面11aおよび外面11bの一端または他端に配置されている。すなわち、軸部11の延在方向に対して垂直な平面における断面形状はコ字状(C字状)である。コ字状(C字状)の断面形状では、第1の側面11cまたは第2の側面11dの一方に内部材113の外面、中間部材115の側面、外部材114の内面で凹部13が形成されており、第1の側面11cまたは第2の側面11dの他方は内部材113の側面、中間部材115の側面、外部材114の側面で形成されている。
【0044】
羽根部12は、軸固定層91、発泡体層92および接着層93、94を有している。軸固定層91および発泡体層92は、第2軸部分112を挟むように配置されている。接着層93、94は、発泡体層92および軸固定層91を互いに固定している。羽根部12では、発泡体層92と軸固定層91とが第2軸部分112において軸部11の内面11aと外面11bとが対向する方向に内面11aおよび外面11bを挟むように積層されている。そして、羽根部12は内面11aおよび外面11bに沿う方向に延在している。さらに、羽根部12では、発泡体層92と軸固定層91とを互いに接続するとともに第2軸部分112とこれらの発泡体層92および軸固定層91とを接続固定するため、接着層93、94が配置されている。また、異なる観点でいえば、羽根部12においては、シャトルコック100(
図1参照)を構成した場合において外周側に位置する発泡体層92上に接着層93が積層されている。この接着層93上には、当該接着層93および発泡体層92のほぼ中央部に位置するように第2軸部分112が配置されている。そして、この第2軸部分112上から接着層93上にまで延在するように、もう一方の接着層94が配置されている。そして、この接着層94上に軸固定層91が配置されている。
【0045】
ここで、発泡体層92を構成する材料としては、例えば、樹脂の発泡体、より具体的には例えば、ポリエチレンフォーム(ポリエチレンの発泡体)を用いることができる。また、軸固定層91についても、同様に樹脂発泡体を用いることができる。軸固定層91の材料としては、例えば、ポリエチレンフォーム以外に、樹脂などからなるフィルム、あるいは不織布など任意の材料が用いられてもよい。
【0046】
また、接着層93、94については、例えば、両面テープを用いることができる。人工羽根1においては、発泡体層92および軸固定層91としてポリエチレンフォームを用いている。このポリエチレンフォームの押出方向は
図3および
図6の矢印95に示す方向となっていることが好ましい。この場合、矢印95に示すポリエチレンフォームの押出方向に対して交差するように軸部11が羽根部12と接続固定されているため、羽根部12が軸部11の延在方向に沿った方向に裂けるといった不具合の発生確率を低減できる。
【0047】
なお、人工羽根部10の構成は、適宜に決められてもよい。例えば、
図5に示されるように、人工羽根部10は、一体的に構成されていてもよい。人工羽根部10は、合成樹脂素材で一体形成されていてもよい。人工羽根部10には、補強のためのリング4が埋め込まれていてもよい。
【0048】
次に、
図6~
図8を用いて、本実施の形態に係るシャトルコック100の動作を説明する。
【0049】
図6に示されるように、飛翔するシャトルコック100は、空気抵抗を受ける。
図6では、空気抵抗は、矢印によって示されている。シャトルコック100が飛翔する際に、空気は、ベース体3の正面から曲面部32に沿って流れる。このため、空気抵抗の大きさは、曲面部32の形状から影響を受ける。空気抵抗の大きさは、特に、先端部30の形状から影響を受ける。先端部30が扁平(平ら)であるほど空気抵抗が大きい。正面から受ける空気抵抗が大きいほど、飛翔するシャトルコック100は減速する。
【0050】
図7に示されるように、ラケットで打撃されたシャトルコック100は、斜め上向きに飛翔してから斜め下向きに落下する。
図7の実線は、本実施の形態に係るシャトルコック100の軌道を示している。一点鎖線は、天然羽根を含む天然シャトルコックの軌道を示している。破線は、後述の人工シャトルコックである比較例に係るシャトルコック101(
図9参照)の軌道を示している。比較例に係るシャトルコック101(
図9参照)は、天然シャトルコックよりも落下角度が小さく飛びすぎる。すなわち、人工シャトルコックの軌道は、天然シャトルコックの軌道と異なることがある。
【0051】
図8に示されるように、横向きの状態から自由落下するシャトルコック100は、シャトルコック100が斜め下を向いた状態を経て、鉛直下向き方向を向く。すなわち、シャトルコック100は、回転しながら落下する。回転しながら落下するシャトルコック100の回転中心は、シャトルコック100の重心CGである。回転しながら落下するシャトルコック100の回転速度は、ベース体3に加わる抗力D1と重心CGからベース体3に加わる抗力D1の作用点P1までの距離R1との積M1と人工羽根1に加わる抗力D2と重心CGから人工羽根1に加わる抗力D2の作用点P2までの距離R2との積M2との差から影響を受ける。なお、上記のシャトルコック100の回転は、シャトルコック100の回転角度が360度未満の回転である。
【0052】
シャトルコック100の重心CGが一定の位置で人工羽根1に加わる抗力D2を一定とするとベース体3に加わる抗力D1が小さいほど人工羽根1に加わる抗力D2と重心CGから人工羽根1に加わる抗力D2の作用点P2までの距離R2との積M2とベース体3に加わる抗力D1と重心CGからベース体3に加わる抗力D1の作用点P1までの距離R1との積M1の差が大きくなり、自由落下するシャトルコック100は速く下を向く。
【0053】
続いて、比較例に係るシャトルコック101と比較しながら、本実施の形態に係るシャトルコック100の作用効果を説明する。
【0054】
図9に示されるように、比較例に係るシャトルコック101のベース体3の曲面部32は、円柱部31の半径と同じ曲率半径を有する半球状である。このため、比較例に係るシャトルコック101のベース体3の先端部30は、扁平ではない。また、軸方向DR1において、比較例に係るシャトルコック101のベース体3の円柱部31は、曲面部32以下の寸法を有している。なお、実施の形態および比較例において、人工羽根1およびかがり糸2は、同じ構成を有している。比較例に係るシャトルコック101は、人工シャトルコックである。
【0055】
図10に示されるように、比較例に係るシャトルコック101のベース体3の先端部30が扁平でないため、ベース体3の正面から受ける空気抵抗が小さい。なお、正面とは、軸方向DR1において円柱部31に対して曲面部32が配置された側である。よって、比較例に係るシャトルコック101は、天然シャトルコックと比べて遠くに飛びすぎる。特に、
図6に示されるように、比較例に係るシャトルコック101は、軌道の終期(例えば、バドミントンコートのコートエンド)において飛びすぎる。すなわち、比較例に係るシャトルコック101の軌道は、天然シャトルコックの軌道とは異なる。
【0056】
これに対して、本実施の形態に係るシャトルコック100によれば、
図1に示されるように、ベース体3の曲面部32は、円柱部31の半径Ra1よりも大きい曲率半径Ra2を有する先端部30を有している。すなわち、先端部30は、扁平である。このため、
図6に示されるように、ベース体3が正面から受ける空気抵抗を増大させることができる。よって、空気抵抗が大きいため減速し、それによって鉛直方向に落下し始める。円柱部31は、曲面部32よりも大きい寸法を有している。このため、ベース体3に加わる抗力D1と重心CGからベース体に加わる抗力D1の作用点P1までの距離との積M1と人工羽根1に加わる抗力D2と重心CGから人工羽根1に加わる抗力D2の作用点P2までの距離との積M2の差が大きくシャトルコック100が速く下を向く。このため、落下角度θ(
図7参照)が大きくなり遠くに飛びすぎることを抑制することができる。なお、
図7に示されるように、落下角度θは、シャトルコック100軌道の落下地点における接線TLと水平線HLとがなす角度である。また、例えば、シャトルコック100がコートエンドにおいて伸びるように飛翔することを抑制することができる。
【0057】
図1に示されるように、径方向DR2からベース体3を見た側面視において、先端部30の曲率半径の中心CPは、円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されている。このため、曲面部32の中心CPが円柱部31の中心線CLの延長線上に配置されていない場合と比べて、曲面部32の形状を扁平にすることができる。言い換えると、曲面部32の先端が半球状より扁平になる。
【0058】
図1に示されるように、第2部322は、第1部321に接線連続に接続されている。このため、第2部322が第1部321に接線連続に接続されていない場合(先端が尖っている場合)と比べて、曲面部32の形状を扁平にすることができる。言い換えると、曲面部32の先端が半球状より扁平になる。
【0059】
図1に示されるように、曲面部32の曲率半径は、円柱部31の半径よりも大きい。このため、曲面部32の曲率半径が円柱部31の半径以下である場合と比べて、曲面部32の形状を扁平にすることができる。言い換えると、曲面部32の先端が半球状より扁平になる。
【0060】
図11に示されるように、比較例に係るシャトルコック101のベース体3の円柱部31は、軸方向DR1において曲面部32以下の寸法を有しているため、ベース体3に加わる抗力D1と重心CGからベース体3に加わる抗力D1の作用点P1までの距離R1との積M1と人工羽根1に加わる抗力D2と重心CGから人工羽根1に加わる抗力D2の作用点P2までの距離R2との積M2との差が小さい。このため、シャトルコック100は遅く下を向く。
【0061】
これに対して、本実施の形態に係るシャトルコック100によれば、
図1に示されるように、曲面部32が円柱部31から突出する軸方向DR1において、円柱部31は、曲面部32よりも大きい寸法を有している。このため、
図8に示されるように、ベース体3に加わる抗力D1と重心CGからベース体3に加わる抗力D1の作用点P1までの距離R1との積M1と人工羽根1に加わる抗力D2と重心CGから人工羽根1に加わる抗力D2の作用点P2までの距離R2との積M2との差を大きくすることができる。したがって、シャトルコック100を速く下に向かせることができる。これにより、例えば、ネットショットにおいてシャトルが回転しすぎることなく返球が容易になるため、ラリーの継続性が向上する。
【0062】
図1に示されるように、軸方向DR1におけるベース体3の寸法は、13mm以上20mm以下であってもよい。この場合、軸方向DR1におけるベース体3の寸法を20mm以下にすることで、シャトルコック100をショートベースのシャトルコック100にすることができる。また、軸方向DR1におけるベース体3の寸法を13mm以上にすることで、シャトルコック100の生産において人工羽根1がベース体3の先端を突き破ることを抑制することができる。このため、シャトルコック100の生産性が低下することを抑制することができる。以上より、シャトルコック100のショートベース化と生産性の低下の抑制とを両立することができる。シャトルコック100をショートベースのシャトルコック100にすることで、以下の効果が奏される。第1に、先端部30(曲面部32)が扁平であるため正面から受ける空気抵抗が大きくなり減速しやすく、軌道の終期における飛びすぎを抑制できる。第2に、ベース体3の側面の投影面積を小さくできるため、ベース体3に加わる抗力D1が小さくなり、M1も小さくなる。M2とM1との差が大きくなるためシャトルコックが速く下を向く。このため、
図7に示されるように、軌道の最高到達点以降における落下角度θを大きくすることができる。第3に、上記の飛びすぎの抑制および落下角度の増大によって、シャトルコック100の軌道を天然シャトルコックの軌道に近づけることができる。第4に、軸方向DR1におけるベース体3の寸法が例えば23mmであるシャトルコック100と比較して、ベース体3を軽量化できる。例えば、シャトルコック100の質量を5g台前半に軽量化することができる。第5に、上記のように軽量化された分だけ補強材またはかがり糸2の接合剤を追加することで、シャトルコック100の強度および剛性を向上させることができるため、シャトルコック100の耐久性を向上させることができる。
【0063】
図1に示されるように、軸方向DR1におけるベース体3の寸法は、13mm以上17mm以下であってもよい。この場合、シャトルコックのショートベース化による上記の効果を向上させつつ、生産性の低下をさらに抑制できる。
【0064】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 人工羽根、10 人工羽根部、11 軸部、11a 内面、11b 外面、11c 第1の側面、11d 第2の側面、12 羽根部、3 ベース体、30 先端部、31 円柱部、32 曲面部、4 リング、91 軸固定層、92 発泡体層、93 接着層、94 接着層、95 矢印、100 シャトルコック、111 第1軸部分、112 第2軸部分、113 内部材、114 外部材、115 中間部材、321 第1部、322 第2部、CP 中心、CG 重心、D1 抗力、D2 抗力、DR1 軸方向、DR2 径方向、R1 重心を通る垂線からP1までの軸方向における距離、R2 重心を通る垂線からP2までの軸方向における距離、P1 抗力D1の作用点、P2 抗力D2の作用点、M1 モーメント、M2 モーメント、Ra1 円柱部の半径、Ra2 曲面部の曲率半径、HL 水平線、TL 接線、θ 落下角度。