(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084979
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20230613BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230613BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20230613BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/12
H02J50/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199407
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000204424
【氏名又は名称】大井電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】沢田 拓磨
(57)【要約】
【課題】給電距離に応じて最適な共振回路を選択し、給電効率を向上させた非接触給電装置を提供する。
【解決手段】交流電力が供給されることによって磁場を発生させる複数の送電コイル10a,10b,10cと、送電コイル10a,10b,10cに接続され、共振周波数を調整する共振用コンデンサ10d,10e,10fと、送電コイル10a,10b,10cに交流電力を供給するインバータ回路14と、を含む送電装置102を備え、送電装置102と受電装置104との距離に応じて複数の送電コイル10a,10b,10cを切り替えて送電装置102から受電装置104へ非接触給電を行う非接触給電装置100とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界共鳴方式を用いた非接触給電装置であって、
交流電力が供給されることによって磁場を発生させる複数の送電コイルと、
前記送電コイルに接続され、前記送電コイルと共に共振周波数を調整する送信側共振回路と、
前記送電コイルに交流電力を供給する給電部と、
を含む送電装置を備え、
前記送電装置と、前記送電装置から電力の供給を受ける受電装置と、の距離に応じて複数の前記送電コイルを切り替えて前記送電装置から前記受電装置へ非接触給電を行うことを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電装置であって、
複数の前記送電コイルは、互いにコイル径が異なることによって前記受電装置に対する最適給電距離が異なることを特徴とする非接触給電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触給電装置であって、
複数の前記送電コイルを切り替えて間欠送電を繰り返し行って、送電電力の増減が基準変化量以上となった前記送電コイルを選択して前記受電装置への送電を開始することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の非接触給電装置であって、
前記送電装置は、
前記受電装置から送信される給電要求を受信するための受信部を備え、
送電を開始した後、前記受電装置からの給電要求を受信できた場合には前記受電装置への送電を継続し、前記受電装置からの給電要求を受信できなかった場合には前記受電装置への送電を停止させることを特徴する非接触給電装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の非接触給電装置であって、
前記送電コイルを切り替えて前記送電装置から前記受電装置へ非接触給電を開始した後に前記送信側共振回路によって給電効率が基準効率値以上となるように共振周波数を調整することを特徴とする非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)市場が活発化し、IoTデバイスへの電力供給手段として非接触給電が検討されている。非接触給電は、離れた場所に設置された装置への給電、スマートフォンや電気自動車等の充電等、様々な分野において注目されている。
【0003】
非接触給電としては、マイクロ波給電等の放射型、磁界共鳴方式、電磁誘導方式等の非放射型の給電方式が挙げられる。例えば、磁界共鳴方式を用いた非接触給電装置として、共振点をずらした複数の共振回路を備えることで可変インダクタや可変コンデンサを別途設けることなく、簡素な構成でインピーダンスを調整できる構成が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁界共鳴方式では、送受電回路にLC共振させることでクオリティファクター(Q値)を高め結合係数kが低い場合でも送電効率を高めることができる。このとき、LC共振器の結合係数kに依存する2つの共振周波数が生ずる。結合係数kは送受電コイル間の距離に依存するため、送電装置と受電装置との間の距離によって共振周波数が変化する。その結果、受電電力が変動し、給電効率が低下するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、磁界共鳴方式を用いた非接触給電装置であって、交流電力が供給されることによって磁場を発生させる複数の送電コイルと、前記送電コイルに接続され、前記送電コイルと共に共振周波数を調整する送信側共振回路と、前記送電コイルに交流電力を供給する給電部と、を含む送電装置を備え、前記送電装置と、前記送電装置から電力の供給を受ける受電装置と、の距離に応じて複数の前記送電コイルを切り替えて前記送電装置から前記受電装置へ非接触給電を行うことを特徴とする非接触給電装置である。
【0007】
ここで、複数の前記送電コイルは、互いにコイル径が異なることによって前記受電装置に対する最適給電距離が異なることが好適である。
【0008】
また、複数の前記送電コイルを切り替えて間欠送電を繰り返し行って、送電電力の増減が基準変化量以上となった前記送電コイルを選択して前記受電装置への送電を開始することが好適である。
【0009】
また、前記送電装置は、前記受電装置から送信される給電要求を受信するための受信部を備え、送電を開始した後、前記受電装置からの給電要求を受信できた場合には前記受電装置への送電を継続し、前記受電装置からの給電要求を受信できなかった場合には前記受電装置への送電を停止させることが好適である。
【0010】
また、前記送電コイルを切り替えて前記送電装置から前記受電装置へ非接触給電を開始した後に前記送信側共振回路によって給電効率が基準効率値以上となるように共振周波数を調整することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給電距離に応じて最適な共振回路を選択し、給電効率を向上させた非接触給電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態における非接触給電装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における送電コイルの例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における送電コイルの最適給電範囲を説明する図である。
【
図4】本発明の実施の形態における非接触給電処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態における非接触給電装置100は、送電装置102及び受電装置104を含んで構成される。非接触給電装置100は、磁界共鳴方式により送電装置102から受電装置104へ非接触で電力送電を行う。
【0014】
送電装置102は、共振回路10、切替手段12、インバータ回路14、電力モニタ16、通信部18及び制御部20を含んで構成される。
【0015】
共振回路10は、インバータ回路14から供給される高周波の交流電力を電磁界に変換して送出する。共振回路10は、送電装置102において送信側共振回路として機能する。共振回路10は、送電コイル10a,10b,10c及び共振用コンデンサ10d,10e,10fを含んで構成される。送電コイル10a,10b,10cは、高周波の交流電力を受けて交番電磁界を発生させる部材である。本実施の形態では、
図2に示すように、それぞれコイル径が異なる3つ送電コイル10a,10b,10cを同一平面に配置した構成とすることができる。送電距離は、一般的にコイル径に比例するとされており、
図3に示すように、コイル径に応じて最適な給電距離(最適給電距離)を有する。すなわち、複数の送電コイル10a,10b,10cを組み合わせることによって、複数の給電範囲を組み合わせて広い給電範囲において高い給電効率を実現することができる。非接触給電装置100では、送電装置102と受電装置104との間の給電距離に応じて送電コイル10a,10b,10cを切り替えることで給電効率を最適化している。
【0016】
ただし、3つ送電コイル10a,10b,10cに限定されるものではなく、送電装置102と受電装置104との間の給電距離に応じて2つ以上の送電形態を切り替えて給電効率を向上できる構成であればよい。また、3つ送電コイル10a,10b,10cの最適な給電範囲は一部が互いに重畳してもよいし、重畳しないようにしてもよい。
【0017】
共振用コンデンサ10d,10e,10fは、それぞれ送電コイル10a,10b,10cと組み合わされて共振回路10を構成する素子である。共振用コンデンサ10d,10e,10fは、例えば、送電コイル10a,10b,10cに対してそれぞれ直列に接続される。共振用コンデンサ10d,10e,10fは、可変容量コンデンサであり、その容量を調整することによって送電時における共振周波数を変更するために用いられる。共振用コンデンサ10d,10e,10fの容量は、制御部20からの制御信号に応じて変更可能に構成される。
【0018】
切替手段12は、制御部20からの切替制御信号を受けて、共振回路10における送電コイル10a,10b,10c及び共振用コンデンサ10d,10e,10fで構成される共振回路を切り替える回路を含む。本実施の形態では、送電コイル10aと共振用コンデンサ10dの組、送電コイル10bと共振用コンデンサ10eの組、及び、送電コイル10cと共振用コンデンサ10fの組のいずれか1組の共振回路を排他的に選択する。なお、送電コイル10a,10b,10cに対して共通の共振用コンデンサを接続し、送電コイル10a,10b,10cのみを切り替える構成としてもよい。
【0019】
インバータ回路14は、商用電源等から供給される交流電力を高周波の交流電力に変換して共振回路10へ供給する給電部である。インバータ回路14は、特に限定されるものではないが、例えばD級インバータ回路やE級インバータ回路とすることができる。
【0020】
電力モニタ16は、送電装置102から出力される送電電力をモニタリングして制御部20へ出力する。通信部18は、受電装置104と送受信を行うための通信手段を備えた受信部である。本実施の形態では、通信部18は無線通信としたが、これに限定されるものではなく有線通信としてもよい。通信部18の通信方式は特に限定されるものではないが、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)とすることができる。
【0021】
制御部20は、送電装置102における制御を統合的に行う。制御部20は、電力モニタ16から得られた送信電力に応じて共振回路10における切り替え処理を行う。また、制御部20は、受電装置104への送電時において共振回路10の共振周波数を調整する制御を行う。
【0022】
受電装置104は、受電コイル30、通信部32及び制御部34を含んで構成される。受電装置104は、送電装置102から非接触の給電を受ける装置に搭載される。例えば、受電装置104は、送電装置102から離れた場所に設置された装置、スマートフォン、タブレット端末、電気自動車、ハイブリッド自動車、電動自転車等に搭載される。
【0023】
受電コイル30は、外部の電磁界の変化によって交流電力を受電するための部材である。通信部32は、送電装置102と送受信を行うための通信手段を備える。本実施の形態では、通信部32は無線通信としたが、これに限定されるものではなく有線通信としてもよい。通信部32の通信方式は特に限定されるものではないが、送電装置102の通信部18と通信が可能な方式とすることが好適である。
【0024】
制御部34は、受電装置104を統合的に制御する。制御部34は、受電コイル30の受電状態をモニタリングして、送電装置102から受電が可能である場合、通信部32を介して給電要求を送信する。また、受電装置104において受電が不要となった場合、通信部32を介して受電完了要求を送信する。なお、制御部34は、受電コイル30において受電された電力をバッテリー等に供給したりする電力変換回路等を含んでもよい。
【0025】
以下、
図4のフローチャートを参照して、本実施の形態における非接触給電装置100を用いた非接触給電方法について説明する。
【0026】
非接触給電装置100において給電処理が開始されると、粗調整を行うためにコイル径が小さい送電コイル10cからコイル径が大きい送電コイル10aの順に間欠送電が行われる(ステップS10~S14)。この時、電力モニタ16によって送電電力がモニタリングされ、前回の送電電力に対して今回の送電電力が基準変動量以上の増減であるか否かを確認しつつ、送電コイル10cと共振用コンデンサ10fの組、送電コイル10bと共振用コンデンサ10eの組、及び、送電コイル10aと共振用コンデンサ10dの組の順に共振回路を排他的に選択しつつ間欠送電が行われる。送電コイル10aと共振用コンデンサ10dの組を用いた送電の後、モニタ電力に基準変動量以上の変化があったか否かが判定される(ステップS16)。モニタ電力に基準変動量以上の変化がなかった場合にはステップS10に処理が戻されて間欠送電が繰り返される。
【0027】
モニタ電力に基準変動量以上の変化があった場合、負荷となる受電装置104が送電コイル10a,10b,10cの給電可能範囲に挿入された可能性があるので、送電電力のモニタ電力の変化が一番大きかった送電コイルと共振用コンデンサの組に切り替えられる(ステップS18)。そして選択された送電コイルと共振用コンデンサの組を用いて、初期設定の共振周波数において連続送電が開始される(ステップS20)。
【0028】
このとき、給電要求タイマを起動させる(ステップS22)。そして、給電要求タイマの設定時間内に受電装置104から給電要求がなければ、送電電力のモニタ電力の変動は受電装置104でない異物によるもの(異物検出)としてステップS10に処理が戻され、間欠送電が再開される(ステップS24)。また、給電要求タイマの設定時間内に受電装置104から給電要求があるか否かが判定される(ステップS26)。給電要求タイマの設定時間内に受電装置104から給電要求がなかった場合、初期設定の共振周波数において連続送電が継続される(ステップS20)。
【0029】
給電要求タイマの設定時間内に受電装置104から給電要求があった場合、共振用コンデンサ10d,10e,10fのうち選択された共振用コンデンサの容量が変更されて共振周波数のスキャンが開始される(ステップS28)。このとき、共振周波数のスキャンのタイマが起動される。そして、共振周波数を変化させつつ送電装置102から受電装置104へ送電が行われる(ステップS30)。
【0030】
共振周波数のスキャン処理では、送電電力が送電の制限値未満であるか否かが判定される(ステップS32)。送電電力が送電の制限値未満である場合、さらに給電電力が受電装置104からの要求電力以上であるか否かが判定される(ステップS34)。給電電力が受電装置104からの要求電力以下である場合、さらに給電効率が基準効率値以上であるか否かが判定される(ステップS36)。そして、送電電力が送電の制限値未満、給電電力が受電装置104からの要求電力以上、及び、給電効率が基準効率値以上の条件がすべて満足された場合、共振周波数のスキャン処理を終了し、共振周波数をその時点の値に固定して送電装置102から受電装置104への連続送電が開始される(ステップS40)。
【0031】
なお、送電電力が送電の制限値以上、給電電力が受電装置104からの要求電力未満、及び、給電効率が基準効率値未満のいずれかの条件が満たされた場合、共振周波数のスキャン処理のタイマがタイムアウトしたか否かが判定される(ステップS38)。タイムアウトしていない場合、さらに共振周波数を変化させて送電装置102から受電装置104へ送電が行われる(ステップS30)。タイムアウトした場合、ステップS10に処理が戻され、間欠送電が再開される。
【0032】
共振周波数を固定した連続送電時には、電力モニタ16による送信電力のモニタリングが行われる。そして、送電電力のモニタ電力に変化があるか否かが判定される(ステップS42)。
【0033】
送電電力のモニタ電力に変化がない場合、受電装置104から給電完了要求があったか否かが判定される(ステップS44)。受電装置104から給電完了要求があった場合、ステップS10に処理が戻され、間欠送電が再開される。一方、受電装置104から給電完了要求がなかった場合、共振周波数を固定した連続送電が継続され、送電電力のモニタ電力に変化があるか否かの判定が繰り返される。
【0034】
送電電力のモニタ電力に変化があった場合、送電電力が制限値未満であるか否かが判定される(ステップS46)。送電電力が制限値未満である場合、ステップS28に処理が戻され、共振周波数のスキャンが再開される。
【0035】
送電電力が制限値以上となった場合、受電装置104ではなく異物に対する送電が行われていると判断され、送電装置102からの送電が停止される(ステップS48)。送電を停止させた場合、再起動タイマが起動される(ステップS50)。そして、再起動タイマを起動させた後、所定の設定時間が経過してタイムアウトするとステップS10に処理が戻され、間欠送電が再開される(ステップS52)。
【0036】
以上のように、本実施の形態における非接触給電装置100及びそれを用いた非接触給電方法によれば、給電距離に応じて最適な共振回路を選択し、給電効率を向上させた非接触給電装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 共振回路、10a,10b,10c 送電コイル、10d,10e,10f 共振用コンデンサ、12 切替手段、14 インバータ回路、16 電力モニタ、18 通信部、20 制御部、30 受電コイル、32 通信部、34 制御部、100 非接触給電装置、102 送電装置、104 受電装置。