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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085020
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】2層タイプ日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20230613BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230613BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/81
A61K8/891
A61K8/31
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199466
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】木崎 寿美子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC432
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD212
4C083AD242
4C083AD262
4C083BB25
4C083CC19
4C083DD31
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】
上層が水性層で、下層が粉体を含有する乳化層とすることにより、粉体を配合しても安定性が良好で、容易に再分散でき、べたつきがなく、霧状に噴霧可能な、2層タイプ日焼け止め化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)~(D)を含有する、2層タイプ日焼け止め化粧料。
(A)有機紫外線吸収剤
(B)揮発性シリコーン油
(C)平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体
(D)ポリビニルピロリドン
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)~(D)を含有する、2層タイプ日焼け止め化粧料。
(A)有機紫外線吸収剤
(B)揮発性シリコーン油
(C)平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体
(D)ポリビニルピロリドン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層タイプ日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線による皮膚への悪影響を防御するため、種々の紫外線吸収剤を含有させた日焼け止め化粧料が開発されている。
特に特許文献1には、有機紫外線吸収剤と、シリコーン油とアクリル酸系水溶性高分子を含有する水中油型紫外線防御化粧料が記載されている。
【0003】
また、霧状に噴霧可能であることは、塗布しやすいという面で有用であり、霧状に噴霧可能な乳化組成物についても提案がなされている(特許文献2)。更に紫外線吸収効果を持続させるために、塗り直しが必要な場合も多いので、霧状に噴霧可能であることは持ち歩きや塗り直しに便利であり、消費者のニーズが高まっている。かかる霧状に噴霧可能であり、かつ高い紫外線吸収効果を有する乳化組成物として、油溶性紫外線吸収剤とアクリル酸系水溶性高分子増粘剤と非イオン性界面活性剤を含有する乳化組成物が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-89834号公報
【特許文献2】特開2006-151901号公報
【特許文献3】特開2015-199689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献3に記載された乳化組成物は、上層が乳化層であり、下層が水層であるため、粉体を配合した場合、ケーキングが生じやすく、粉体の再分散性に課題があった。そこで、本願発明は、上層が水性層で、下層が粉体を含有する乳化層とすることにより、粉体を配合しても、容易に再分散でき、べたつきがなく、霧状に噴霧可能な、2層タイプ日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(A)~(D)を含有する、2層タイプ日焼け止め化粧料。
(A)有機紫外線吸収剤
(B)揮発性シリコーン油
(C)平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体
(D)ポリビニルピロリドン
【発明の効果】
【0007】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、上層が水性層で、下層が粉体を含有する乳化層とすることにより、粉体を配合しても容易に再分散でき、べたつきがなく、霧状に噴霧可能であるという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、下記の(A)~(D)を必須成分として含有する。
(A)有機紫外線吸収剤
(B)揮発性シリコーン油
(C)平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体
(D)ポリビニルピロリドン
【0010】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、粉体を含有する乳化層が下層に、水性成分を含有する水性層が上層に分離した、外観を呈する。
【0011】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、分離しているが、使用時に容易に均一混合することができる。
【0012】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、ディスペンサー等を利用することにより、霧状に噴霧可能である。なお、本発明において「霧状に噴霧可能」とは、エアゾールの場合を除く。
【0013】
本発明の(A)有機紫外線吸収剤は、化粧料に配合し得るものであれば特に制限されないが、油溶性紫外線吸収剤であることが好ましい。係る紫外線吸収剤として、例えばパラメトキシ桂皮酸オクチル、メトキシ桂皮酸イソプロピル、メトキシ桂皮酸イソアミル等の桂皮酸誘導体;パラアミノ安息香酸(以下、「PABA」と略記する)、エチルPABA、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA、グリセリルPABA等のPABA誘導体;ホモサラート、エチルヘキシルサリチラート、ジプロピレングリコールサリチラート、TEAサリチラート等のサリチル酸誘導体;ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-12等のベンゾフェノン誘導体;3-ベンジリデンショウノウ、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウ等のベンジリデンショウノウ誘導体;アニソトリアジン、ジエチヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4-ビス-〔{4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル〕-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス〔4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ〕-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体;フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウム等のフェニルベンゾイミダゾール誘導体;ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)等のフェニルベンゾトリアゾール誘導体;アントラニル酸メンチル等のアントラニル誘導体;ジメトキシベンジリデンオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等のイミダゾリン誘導体;ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサン等のベンザルマロナート誘導体;1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエン等の4,4-ジアリールブタジエン誘導体;オクトクリレン、2-〔4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル〕安息香酸ヘキシル、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンなどが挙げられる。有機紫外線吸収剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。本発明においては、紫外線吸収能と皮膚への安全性の観点からパラメトキシ桂皮酸オクチルを用いることが最も好ましい。
【0014】
有機紫外線吸収剤の配合量は1~20質量%が好ましい。1質量%未満では充分な日焼け止め効果を得ることができず、20質量%を超えるとべたつきや、皮膚への一次刺激性が高まるなど、使用感に悪影響を及ぼす場合がある
【0015】
本発明の(B)揮発性シリコーン油としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(1cs)、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの揮発性シリコーン油は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、シクロペンタシロキサンを特に好適に用いることができる。
【0016】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料における成分(B)の配合量は、0.1~20質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~9.0質量%、特に好ましくは2~7質量%である。20質量%を越えて配合すると、2層タイプの化粧料が得られない場合がある。
【0017】
本発明の(C)平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体は、化粧料に配合し得る粉体であれば特に限定されない。なお、本発明でいう平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定した値である。
【0018】
具体的には、疎水化処理タルク、球状セルロースから選択される1種又は2種以上が好ましく、疎水化処理タルク、球状セルロースを併用して用いることが最も好ましい。
疎水化処理タルクの疎水化処理方法は特に限定されず、ジメチコン処理、シラン処理、金属石鹸処理、高級脂肪酸処理、アシルアミノ酸処理などが例示される。これらの疎水化処理の中でもアシルアミノ酸処理が好ましく、ラウロイルリシン処理が最も好ましい。
【0019】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料における成分(C)の配合量は、0.1質量~10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~8.0質量%、特に好ましくは1~5質量%である。10質量%を越えて配合すると、2層タイプの化粧料が得られない場合がある。
【0020】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、乳化剤を用いることができる。かかる乳化剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも用いることができるが、ノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0021】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、ポリビニルピロリドン以外の水溶性高分子を配合することができる。例えばアラビヤガム、トラガカントガム、カラヤガム、キサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、ジェランガム、ネイティブジェランガム、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドや、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、N-n-ブトキシメチルアクリルアミド、N-iso-ブトキシアクリルアミド、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド、またはこれら重合性モノマー原料と他の重合性モノマーとの共重合体、あるいは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、プルラン、カラギーナン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、コラーゲン、キチン誘導体、ペクチン、ゼラチン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体およびこれらの塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料には、上述の必須成分、任意成分の他に、必要に応じて通常2層タイプ日焼け止め化粧料に配合される、水性成分、油性成分、保湿剤、色素、界面活性剤、増粘剤、美容成分、香料、高分子物質、防菌防黴剤、アルコール類、粉体、生体由来成分等を適宜配合することができる。
【0023】
本発明の2層タイプ日焼け止め化粧料は、通常の製造方法により製造することができる。
【実施例0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0025】
まず、本発明の実施例及び比較例の評価方法を示す。
[霧質]
2層タイプ日焼け止め化粧料をミスト容器に充填し、吐出される霧の状態を専門パネル3名により評価し合議により下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:霧の状態が非常に良い
○:霧の状態が良い
△:霧の状態が良くない
×:霧の状態が非常に良くない
[2層分離]
2層タイプ日焼け止め化粧料を、調製後24時間後の状態を専門パネル3名により評価し合議により下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:粉体が乳化層と共に沈降
〇:乳化層が全体に分散
△:粉体がクリーム層と共に上部に浮いている
×:クリーム層は上部、粉だけ沈降してケーキング
[再分散性]
2層タイプ日焼け止め化粧料を、調製後24時間後の再分散性を専門パネル3名により評価し合議により下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎:再分散性が非常に良い
○:再分散性が良い
△:再分散性が良くない
×:再分散性が非常に良くない
【0026】
表1に示す処方を用い、実施例1~4及び比較例1~3に係る2層タイプ日焼け止め化粧料を定法により調製し、評価を行った。その結果、本発明のシリコーンポリマーである揮発性シリコーン油を配合した実施例は、比較例より霧質、2層分離性に優れていた。
【0027】
【表1】
【0028】
表2に示す処方を用い、実施例1、5、6及び比較例4、5に係る2層タイプ日焼け止め化粧料を定法により調製し、評価を行った。その結果、本発明の平均粒子径が5.0~20μmの親油性粉体を配合した実施例は、比較例より2層分離性、再分散性に優れていた。
【0029】
【表2】
【0030】
表3に示す処方を用い、実施例1、7~9及び比較例6~10に係る2層タイプ日焼け止め化粧料を定法により調製し、評価を行った。その結果、本発明のポリビニルピロリドンを配合した実施例は、比較例より霧質、2層分離性に優れていた。
【0031】
【表3】