IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オメガの特許一覧

<>
  • 特開-熱処理装置 図1
  • 特開-熱処理装置 図2
  • 特開-熱処理装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085037
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20230613BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20230613BHJP
   F27B 7/08 20060101ALI20230613BHJP
   F27B 7/32 20060101ALI20230613BHJP
   F27B 7/20 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B09B3/00 302Z
B09B3/00 ZAB
F27B7/08
F27B7/32
F27B7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199491
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
4K061
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA12
4D004CA04
4D004CA26
4D004CA40
4D004CB09
4D004CB13
4D004CB46
4D004CC11
4D004CC20
4K061AA08
4K061BA12
4K061DA05
4K061EA06
4K061FA06
4K061GA02
4K061HA05
(57)【要約】
【課題】従来よりも実用的な熱処理装置を提供しようとするもの。
【解決手段】被処理物(1)を挿入して熱処理する金属液体浴槽(2)と、前記金属液体浴槽(2)の熱源(3)とを有する。前記金属液体(M)を機械的に攪拌可能としてもよい。前記金属液体浴槽(2)の気化ガスを浄化するスクラバー槽(S)を有するようにしてもよい。前記熱源(3)として誘導加熱により金属液体浴槽(2)を昇温するようにしてもよい。前記被処理物(1)の金属液体浴槽(2)への挿入配管(H)を有し、前記挿入配管(H)の冷却機構を有するようにしてもよい。前記金属液体浴槽(2)と付帯機構を金属液体浴槽(2)を中心とした略同心円状に配置するようにしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物(1)を挿入して熱処理する金属液体浴槽(2)と、前記金属液体浴槽(2)の熱源(3)とを有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記金属液体(M)を機械的に攪拌可能とした請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記金属液体浴槽(2)の気化ガスを浄化するスクラバー槽(S)を有するようにした請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記熱源(3)として誘導加熱により金属液体浴槽(2)を昇温するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記被処理物(1)の金属液体浴槽(2)への挿入配管(H)を有し、前記挿入配管(H)の冷却機構を有するようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記金属液体浴槽(2)と付帯機構を金属液体浴槽(2)を中心とした略同心円状に配置するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記金属液体浴槽(2)で被処理物から発生した可燃性ガスを捕集するようにした請求項1乃至6のいずれかに記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来よりも実用的な熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生ごみ処理装置に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、一般的に、生ごみは埋立て或いは焼却の方法で処理される。生ごみは80%以上の水分を含有しており、また、腐敗しやすい有機性物質も含んでいるので、生ごみをそのまま埋め立てる方式で処理する場合には、腐敗する過程で発生される窒素と硫黄化合物による悪臭が発生することは勿論、蝿、蚊など害虫の繁殖を誘発する問題がある。
また、生ごみをそのまま埋め立てる場合には高濃度の浸出水が排出されて、土壌を広範に汚染するという深刻な問題があり、この理由で埋め立て施設が嫌悪すべき施設の一つとして認識されているので、埋め立て施設の敷地確保が難しく、また、メンテナンスに莫大な費用がかかるので次第に建設が制限されている深刻な状況である。
この従来技術に係る生ごみ処理装置は、各家庭や飲食店などに備えられ、発生する生ごみを撹拌槽内に挿入した後、微生物発酵剤を入れ撹拌すれば、生ごみは均一に混ぜ合って発酵され、発酵過程中に酸素が十分に供給され、排ガス中に含有された悪臭は別の装置によって捕集することにより処理時の悪臭の発生は著しく低減されるので、極めて使い勝手がよくなる利点がある、というものである。
しかし、このものはあまり実用的ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-88142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来よりも実用的な熱処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱処理装置は、被処理物を挿入して熱処理する金属液体浴槽と、前記金属液体浴槽の熱源とを有することを特徴とする。
この熱処理装置は、被処理物を挿入して昇温する金属液体浴槽と前記金属液体浴槽の熱源とを有しているので、被処理物を熱処理する際に金属液体は熱容量が大きく金属液体浴槽の温度が低下し難いこととなる。このための金属液体の比重(d)はd=5~22とすることが好ましい。
【0006】
また、被処理物を熱処理する際に金属液体浴槽の温度が低下しても、金属液体は熱伝導性が高いので、熱源により迅速に元の温度へと復元させることが出来る。さらに、金属液体により被処理物に対して直接的に接触して、熱を効率良く伝達することが出来る。
ここで、前記被処理物として、各種排水や廃液(例えばCOD 10,000ppm以上の高濃度廃液)などの液体、各種廃棄物などの固体を例示することが出来る。前記廃棄物として、廃食品類、廃プラスチック類、使用済みの紙おしめ・脱脂綿(熱分解・炭化)、生体の摘出臓器(胃、腸その他)、手術用具などの医療廃棄物(加熱殺菌)、学校の実験室の廃棄物などを例示することが出来る。
【0007】
前記熱処理の態様として、被処理物の蒸発(液体)、熱分解(例えば650℃)、炭化などを例示することが出来る。
前記金属液体(被処理物を熱処理時‐加熱時‐に液状である金属)として、錫(融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)などを例示することが出来る。
前記金属液体浴槽の熱源として、誘導加熱(IH)、都市ガス、プロパンガスなどを例示することが出来る。前記誘導加熱の熱を金属液体浴槽に効率良く伝導するため、グラファイトなどの固体熱伝導体を介在させて使用することが出来る。
【0008】
(2)前記金属液体を機械的に攪拌可能とするようにしてもよい。
このように、前記金属液体を機械的に攪拌可能とすると、金属液体がよく混ざるため挿入した被処理物に対する熱伝導を良好とすることが出来る。例えば、金属液体を機械的に攪拌するため、ロータリーキルン方式のように金属液体浴槽を回転させることが出来る。
【0009】
(3)前記金属液体浴槽の気化ガスを浄化するスクラバー槽を有するようにしてもよい。
このように、金属液体浴槽の気化ガスを浄化するスクラバー槽を有するようにすると、被処理物の気化ガスをスクラバー槽で浄化して清浄な状態として大気中に排出することが出来る。
【0010】
また、前記金属液体から気化成分が発生しても、介在するスクラバー槽でトラップすることにより、大気中に排出されることなく安全性を担保することが出来る。
ここで、スクラバー槽中に活性炭を添加しておくことができ、また電解水を循環させることもできる。さらに、オゾン(O3)水を電気分解して酸素ラジカル(・OH)を生成させてスクラバー槽に送ることも出来る。電解水中の電解塩素や酸素ラジカルにより、スクラバー槽中の汚れ物質(COD成分など)が酸化分解されていくこととなる。
【0011】
また前記活性炭は、スクラバー槽中の汚れ物質(COD成分など)を吸着することとなる。前記活性炭はスクラバー槽での使用後に回収して、金属液体浴槽で賦活再生してスクラバー槽で再利用することも出来る。
前記スクラバー槽で浄化した排ガスは、最終的に900℃まで昇温し次いで200℃程度に急冷してから大気へ放出(ダイオキシン対策)することも出来る。
【0012】
(4)前記熱源として誘導加熱により金属液体浴槽を昇温するようにしてもよい。
このように、熱源として誘導加熱により金属液体浴槽を昇温するようにすると、都市ガスやプロパンガス(CO2や水が排出される)を使用する場合より放熱ロスを減らして、金属液体を効率良く加熱することが出来る。
【0013】
(5)前記被処理物の金属液体浴槽への挿入配管を有し、前記挿入配管の冷却機構を有するようにしてもよい。
このように、被処理物の金属液体浴槽への挿入配管を有し、前記挿入配管の冷却機構を有するようにすると、金属液体浴槽の熱で挿入配管の内部にある被処理物(廃液など)が高温で固化して詰まることを抑制することが出来る。ここで、前記挿入配管の冷却機構として、該配管に冷却ジャケットを巻いて水冷(例えばRO水)することを例示することが出来る。
【0014】
(6)前記金属液体浴槽と付帯機構を金属液体浴槽を中心とした略同心円状に配置するようにしてもよい。
このように、金属液体浴槽と付帯機構を金属液体浴槽を中心とした略同心円状(同軸状)に配置するようにすると、例えば内側の高温の金属液体浴槽を外側のスクラバー槽で取り囲むことになり、安全性に利したものとすることが出来る。
【0015】
(7)前記金属液体浴槽で被処理物から発生した可燃性ガスを捕集するようにしてもよい。
このように、金属液体浴槽で被処理物(廃プラスチック類など)から発生した可燃性ガス(メタンガスなど)を捕集するようにすると、捕集した可燃性ガスをエネルギー利用することが出来る。具体的には、都市ガスやプロパンガスに混合して燃焼させたり、発電に利用したりすることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
被処理物を熱処理する際に金属液体は熱容量が大きく金属液体浴槽の温度が低下し難いので、従来よりも実用的な熱処理装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の熱処理装置の実施形態1を説明するシステム・フロー図。
図2】この発明の熱処理装置の実施形態2を説明するシステム・フロー図。
図3】この発明の熱処理装置の実施形態3を説明するシステム・フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態1)
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1に示すように、この実施形態の熱処理装置は、被処理物1を挿入して熱処理する金属液体浴槽2と、前記金属液体浴槽2の熱源3とを有する。金属液体浴槽2の熱源3として、都市ガスの熱風を使用した。
前記被処理物1として、固体廃棄物(粉砕有機物)、すなわち廃食品類、廃プラスチック類、使用済みの紙おしめ、脱脂綿(熱分解・炭化)を熱処理した。前記熱処理の態様として、熱分解(650℃)、炭化をした。
【0019】
前記金属液体(M)として、錫(融点232℃、沸点2,063℃、密度7g/cm3)、鉛(融点327.5℃、沸点1,750℃、密度11g/cm3)、インジウム(融点156℃、沸点2,072℃、密度22 g/cm3)、ガリウム(融点29.78℃、沸点2,208℃、密度6g/cm3)を使用した。
前記金属液体を機械的に攪拌するため、ロータリーキルン方式のように金属液体浴槽2を回転させるようにした。
【0020】
次に、この実施形態の熱処理装置の使用状態を説明する。
この熱処理装置は、被処理物1を挿入して昇温する金属液体浴槽2と前記金属液体浴槽2の熱源3とを有しているので、被処理物1を熱処理する際に金属液体は熱容量が大きく金属液体浴槽2の温度が低下し難いこととなり、従来よりも実用的であった。
【0021】
また、被処理物1を熱処理する際に金属液体浴槽2の温度が低下しても、金属液体は熱伝導性が高いので、熱源3により迅速に元の温度へと復元させることが出来た。さらに、金属液体により被処理物1に対して直接的に接触して、熱を効率良く伝達することが出来た。
そのうえ、前記金属液体を機械的に攪拌可能(ロータリーキルン方式)したので、金属液体がよく混ざるため挿入した被処理物1に対する熱伝導を良好とすることが出来た。
【0022】
(実施形態2)
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、被処理物1として、高濃度廃液(COD 10,000ppm以上)を、高濃度有機廃液貯槽4から高圧ポンプPで挿入配管Hにより金属液体浴槽2に圧入して熱処理した。
【0023】
熱源3として、誘導加熱(IH)により金属液体浴槽2を昇温するようにした。このようにしたので、都市ガスやプロパンガスを使用する場合より放熱ロスを減らして、金属液体を効率良く加熱することが出来た。
誘導加熱の熱を金属液体浴槽2に効率良く伝導するため、固体熱伝導体(グラファイトG)を介在させて使用した。
【0024】
前記金属液体浴槽2の気化ガスをエジェクターポンプEPにより注入して浄化するスクラバー槽Sを有するようにした。このようにしたので、被処理物1の気化ガスをスクラバー槽Sで浄化して清浄な状態として大気中に排出することが出来た。前記金属液体から気化成分が発生しても、介在するスクラバー槽Sでトラップすることにより、大気中に排出されることなく安全性を担保することが出来る。
【0025】
そして、スクラバー槽S中に活性炭を添加しておくようにしており、また電解水を循環させるようにしている。さらに、オゾン(O3)含有水を電解機構Eで電気分解して酸素ラジカル(・OH)を生成させてスクラバー槽Sに送るようにしている。電解水中の電解塩素、酸素ラジカルにより、スクラバー槽S中の汚れ物質(COD成分など)が酸化分解されていくこととなる。
前記活性炭は、スクラバー槽S中の汚れ物質(COD成分など)を吸着することとなる。前記活性炭はスクラバー槽Sでの使用後に回収して、金属液体浴槽2で賦活再生してスクラバー槽Sで再利用するようにしている。
【0026】
前記スクラバー槽Sで浄化した排ガスは、最終的に900℃まで昇温し次いで200℃程度に急冷してから活性炭濾過して大気へ放出(排気ガスA)するようにした。
前記金属液体浴槽2と付帯機構を金属液体浴槽2を中心とした略同心円状に配置するようにした。このように、金属液体浴槽2と付帯機構を金属液体浴槽2を中心とした略同心円状(同軸状)に配置するようにしたので、内側の高温の金属液体浴槽2を外側のスクラバー槽Sで取り囲むことになり、安全性に利したものとすることが出来た。
【0027】
前記被処理物1の金属液体浴槽2への挿入配管Hを有し、前記挿入配管Hの冷却機構を有するようにした。このようにしたので、金属液体浴槽2の熱で挿入配管Hの内部にある被処理物1(廃液など)が高温で固化して詰まることを抑制することが出来た。前記挿入配管Hの冷却機構として、該配管に冷却ジャケットJを巻いて水冷(RO水)することとした。
【0028】
(実施形態3)
次に、実施形態3を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図3に示すように、この実施形態では、高濃度廃液(COD 10,000ppm以上)を、高濃度有機廃液貯槽4から高圧ポンプPで挿入配管Hにより金属液体浴槽2に圧入して熱処理した。これと共に、廃棄物(固体有機物)として、廃食品類、廃プラスチック類、使用済みの紙おしめ、脱脂綿(熱分解・炭化)を同時に熱処理した。
【0029】
廃棄物(固体有機物)を投入して先ず粉砕刃により裁断し(図示左下)、これをカップコンベアにより図示上方へ移送し、そこから図示右方向に移送し、再び粉砕刃により裁断して、スパイラルコンベアC(モータMにより回転駆動される)により金属液体浴槽2に注入して熱処理した。
そして、前記金属液体浴槽2と付帯機構を、金属液体浴槽2を中心とした略同心円状に配置するようにした。具体的には、中央に固体処理ゾーン、その外周に液体処理ゾーン、その外周にスクラバー槽Sを配置した。
このように、金属液体浴槽2と付帯機構を金属液体浴槽2を中心とした略同心円状(同軸状)に配置するようにしたので、内側の高温の金属液体浴槽2を外側のスクラバー槽Sで取り囲むことになり、安全性に利したものとすることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0030】
従来よりも実用的なことによって、種々の熱処理装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 被処理物
2 金属液体浴槽
3 熱源
M 金属液体
S スクラバー槽
H 挿入配管
図1
図2
図3