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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085073
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/173 20060101AFI20230613BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60T8/173
B60T8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199551
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐希
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246CA03
3D246DA01
3D246FA03
3D246GA09
3D246GB01
3D246HA43A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA81A
3D246HA94A
3D246HA95A
3D246LA15Z
3D246LA17A
3D246LA20B
3D246LA33Z
3D246LA52Z
3D246LA65Z
3D246LA66Z
(57)【要約】
【課題】制御基板に慣性計測装置を実装した際、制動装置のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを従来よりも抑制できる液圧制御ユニットを得る。
【解決手段】本発明に係る液圧制御ユニットは、少なくとも一部が制御基板で構成され、慣性計測装置が検出した物理量に応じて、車両を制動する制動装置のブレーキ液の圧力を制御する制御装置を備え、内部に前記制御基板が収納されて、車両に搭載される液圧制御ユニットであって、前記慣性計測装置として、前記制御基板に実装された第1慣性計測装置及び第2慣性計測装置を備え、前記制御装置は、前記第1慣性計測装置の検出結果に基づいて第1物理量を取得し、前記第2慣性計測装置の検出結果に基づいて、前記第1物理量とは逆向きの第2物理量を取得する物理量取得部と、前記第1物理量と前記第2物理量との差分に応じて前記圧力を制御する制御部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が制御基板(61)で構成され、慣性計測装置(80)が検出した物理量に応じて、車両(100)を制動する制動装置(20)のブレーキ液の圧力を制御する制御装置(60)を備え、
内部に前記制御基板(61)が収納されて、車両(100)に搭載される液圧制御ユニット(50)であって、
前記慣性計測装置(80)として、前記制御基板(61)に実装された第1慣性計測装置(81)及び第2慣性計測装置(82)を備え、
前記制御装置(60)は、
前記第1慣性計測装置(81)の検出結果に基づいて第1物理量を取得し、前記第2慣性計測装置(82)の検出結果に基づいて、前記第1物理量とは逆向きの第2物理量を取得する物理量取得部(62)と、
前記第1物理量と前記第2物理量との差分に応じて前記圧力を制御する制御部(63)と、
を備えている
液圧制御ユニット(50)。
【請求項2】
前記制御基板(61)の厚み方向に前記第1慣性計測装置(81)及び前記第2慣性計測装置(82)を観察した際、前記第1慣性計測装置(81)及び前記第2慣性計測装置(82)の少なくとも一部が重なりあっている
請求項1に記載の液圧制御ユニット(50)。
【請求項3】
前記第1慣性計測装置(81)は、前記制御基板(61)の第1面(61a)に実装されており、
前記第2慣性計測装置(82)は、前記制御基板(61)における前記第1面(61a)とは反対側の面となる第2面(61b)に実装されている
請求項1又は請求項2に記載の液圧制御ユニット(50)。
【請求項4】
前記制動装置(20)からブレーキ液を排出するポンプ(31)と、
前記ポンプ(31)の駆動源であるモータ(40)と、
を備え、
前記モータ(40)と前記制御基板(61)とが端子(41)で接続されている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(50)。
【請求項5】
前記制御基板(61)を収納するハウジング(55)と、
前記制御基板(61)と外部装置とを接続するコネクタ(70)と、
を備え、
前記コネクタ(70)は、前記ハウジング(55)に固定されており、
前記第1慣性計測装置(81)及び前記第2慣性計測装置(82)は、前記制御基板(61)のうち、前記端子(41)と前記制御基板(61)との接続部を基準として前記コネクタ(70)側となる領域に実装されている
請求項4に記載の液圧制御ユニット(50)。
【請求項6】
前記第2慣性計測装置(82)は、前記第1慣性計測装置(81)が検出する物理量とは逆向きの物理量を検出する姿勢で、前記制御基板(61)に実装されている
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(50)。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(50)を備えている
車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制動する制動装置のブレーキ液の圧力を制御する液圧制御ユニット、及び、該液圧制御ユニットを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両には、車両を制動する制動装置のブレーキ液の圧力を制御する液圧制御ユニットを備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。このような液圧制御ユニットには、慣性計測装置が検出する物理量に応じて制動装置のブレーキ液の圧力を制御するものも提案されている。慣性計測装置が検出する物理量とは、例えば、互いに直交する3軸の方向の加速度、及び、上述の3軸の各々の軸周りの角速度である。なお、慣性計測装置は、これら6つの物理量(3つの加速度及び3つの角速度)のうちの少なくとも1つを検出するものであってもよい。具体的には、慣性計測装置は、検出した物理量に応じた信号を出力する。液圧制御ユニットは、慣性計測装置から出力された信号に基づいて、制動装置のブレーキ液の圧力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-015077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液圧制御ユニットが自身で慣性計測装置を備えようとした場合、該液圧制御ユニットの内部に収納されている制御基板に、慣性計測装置を実装することが想定される。しかしながら、液圧制御ユニットの内部に収納されている制御基板は、振動が伝わりやすい部品である。このため、制御基板に慣性計測装置を実装した場合、制御基板の振動によるたわみによって、慣性計測装置が出力する信号にノイズが含まれてしまう。また、慣性計測装置が出力する信号に含まれるノイズのうちのコモンモードノイズ成分は、フィルタによる除去が難しい。このため、制御基板に慣性計測装置を実装した場合、制動装置のブレーキ液の圧力の制御が不安定になってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、制御基板に慣性計測装置を実装した際、制動装置のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを従来よりも抑制できる液圧制御ユニットを得ることを第1の目的とする。また、本発明は、このような液圧制御ユニットを備えた車両を得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る液圧制御ユニットは、少なくとも一部が制御基板で構成され、慣性計測装置が検出した物理量に応じて、車両を制動する制動装置のブレーキ液の圧力を制御する制御装置を備え、内部に前記制御基板が収納されて、車両に搭載される液圧制御ユニットであって、前記慣性計測装置として、前記制御基板に実装された第1慣性計測装置及び第2慣性計測装置を備え、前記制御装置は、前記第1慣性計測装置の検出結果に基づいて第1物理量を取得し、前記第2慣性計測装置の検出結果に基づいて、前記第1物理量とは逆向きの第2物理量を取得する物理量取得部と、前記第1物理量と前記第2物理量との差分に応じて前記圧力を制御する制御部と、を備えている。
【0007】
また、本発明に係る車両は、本発明に係る液圧制御ユニットを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、制御装置の物理量取得部は、逆向きの物理量である第1物理量及び第2物理量を取得する。そして、本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、制御装置の制御部は、第1物理量と第2物理量との差分に応じて、制動装置のブレーキ液の圧力を制御する。このため、本発明に係る液圧制御ユニットは、第1物理量と第2物理量に含まれるコモンモードノイズ成分同士の少なくとも一部を相殺することができる。したがって、本発明に係る液圧制御ユニットは、制御基板に慣性計測装置を実装した際、制動装置のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを従来よりも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す一部断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る制御基板を図3の矢印A方向に観察した図である。
図5】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
図6】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例を示す一部断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
図8】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
図9】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの制御装置を示すブロック図である。
図10】本発明の実施の形態に係る第1物理量を示す図である。
図11】本発明の実施の形態に係る第2物理量を示す図である。
図12】本発明の実施の形態に係る第1物理量と第2物理量との差分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット、及び該液圧制御ユニットを備えた車両について、図面を用いて説明する。
なお、以下では、本発明に係る液圧制御ユニットが鞍乗型車両の一例である自動二輪車に搭載される例を説明するが、本発明に係る液圧制御ユニットは、自動二輪車以外の他の鞍乗型車両に搭載されてもよい。自動二輪車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、自転車(例えば、二輪車、三輪車等)、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動三輪車、及びバギー等である。また、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。また、本発明に係る液圧制御ユニットは、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動四輪車等、鞍乗型車両以外の他の車両に搭載されてもよい。
【0011】
また、以下では、2系統の液圧回路を備えている車両用ブレーキシステムに本発明に係る液圧制御ユニットを採用した例を説明しているが、本発明に係る液圧制御ユニットが採用される車両用ブレーキシステムの液圧回路の数は2系統に限定されない。本発明に係る液圧制御ユニットが採用される車両用ブレーキシステムは、1系統のみの液圧回路を備えていてもよく、また、3系統以上の液圧回路を備えていてもよい。
【0012】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に対して、同一の符号を付している場合又は符号を付すことを省略している場合がある。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0013】
実施の形態.
以下に、本実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えた車両用のブレーキシステムを説明する。
【0014】
<車両用ブレーキシステムの構成及び動作>
本実施の形態に係る液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムの構成及び動作について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される車両の構成を示す図である。図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの構成を示す図である。
【0015】
図1及び図2に示されるように、ブレーキシステム10は、例えば自動二輪車である車両100に搭載される。車両100は、胴体1と、胴体1に旋回自在に保持されているハンドル2と、胴体1にハンドル2と共に旋回自在に保持されている前輪3と、胴体1に回動自在に保持されている後輪4と、を含む。
【0016】
ブレーキシステム10は、ブレーキレバー11と、ブレーキ液が充填されている第1液圧回路12と、ブレーキペダル13と、ブレーキ液が充填されている第2液圧回路14と、を含む。ブレーキレバー11は、ハンドル2に設けられており、ドライバの手によって操作される。第1液圧回路12は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。すなわち、第1液圧回路12は、前輪3に、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。ブレーキペダル13は、胴体1の下部に設けられており、ドライバの足によって操作される。第2液圧回路14は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。すなわち、第2液圧回路14は、後輪4に、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力を生じさせるものである。
【0017】
なお、ブレーキレバー11及びブレーキペダル13は、ブレーキ操作部の一例である。例えば、ブレーキレバー11に換わるブレーキ操作部として、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルを採用してもよい。また例えば、ブレーキペダル13に換わるブレーキ操作部として、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーを採用してもよい。また、第1液圧回路12は、後輪4と共に回動するロータ4aに、ブレーキレバー11の操作量、又は、胴体1に設けられているブレーキペダル13とは別のブレーキペダルの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。また、第2液圧回路14は、前輪3と共に回動するロータ3aに、ブレーキペダル13の操作量、又は、ハンドル2に設けられているブレーキレバー11とは別のブレーキレバーの操作量に応じた制動力を生じさせるものであってもよい。
【0018】
ブレーキシステム10の第1液圧回路12と第2液圧回路14とは、同じ構成になっている。このため、以下では、代表して、第1液圧回路12の構成を説明する。
第1液圧回路12は、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ21と、マスタシリンダ21に付設されているリザーバ22と、胴体1に保持された制動装置20とを備えている。制動装置20は、車両100を制動するものであり、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ23と、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)を動作させるホイールシリンダ24とを備えている。
【0019】
また、第1液圧回路12は、主流路25、供給流路27及び副流路26を備えている。本実施の形態では、主流路25、供給流路27及び副流路26は、液圧制御ユニット50の基体51に設けられている。
【0020】
主流路25は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通させる流路である。本実施の形態では、主流路25の一端に形成されているマスタシリンダポートMPとマスタシリンダ21とが、液管で接続されている。また、主流路25の他端に形成されているホイールシリンダポートWPとホイールシリンダ24とが、液管で接続されている。これにより、主流路25は、マスタシリンダ21とホイールシリンダ24とを連通させている。なお、主流路25は、マスタシリンダ21及びホイールシリンダ24と直接接続されていてもよい。
【0021】
供給流路27は、主流路25の途中部25aにブレーキ液を供給する流路である。具体的には、マスタシリンダ21のブレーキ液が、供給流路27を介して、主流路25の途中部25aに供給される。供給流路27は、一方の端部である端部27aがマスタシリンダ21に連通し、他方の端部である端部27bが主流路25の途中部25aに接続されている。具体的には、本実施の形態では、供給流路27の端部27aは、主流路25(詳しくは、後述する第1切換弁32を基準としてマスタシリンダ21側となる領域)に接続されている。そして、供給流路27の端部27aは、マスタシリンダ21とマスタシリンダポートMPとを接続する液管と、主流路25とを介して、マスタシリンダ21に連通している。なお、供給流路27の端部27aは、マスタシリンダポートMPに接続されていてもよいし、マスタシリンダ21に直接接続されていてもよい。
【0022】
副流路26は、主流路25のブレーキ液を逃がす流路である。具体的には、ホイールシリンダ24から主流路25に流入したブレーキ液が、副流路26に逃がされる。副流路26の一方の端部である端部26aは、主流路25の途中部25bに接続されている。途中部25bは、主流路25のうちの途中部25aを基準としてホイールシリンダ24側となる領域に位置する途中部である。また、副流路26における端部26aとは反対側の端部である端部26bは、供給流路27の途中部27cに接続されている。途中部27cは、供給流路27のうちの後述する第2切換弁33とポンプ31との間となる領域に位置する途中部である。
【0023】
また、ブレーキシステム10は、第1液圧回路12に、込め弁28、弛め弁29、アキュムレータ30、第1切換弁32、第2切換弁33、ポンプ31、及びモータ40を備えている。
【0024】
込め弁28は、主流路25のうちの途中部25aと途中部25bとの間となる領域に設けられている。込め弁28の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。アキュムレータ30は、副流路26に設けられ、途中部25bから副流路26に流入したブレーキ液を貯留するものである。弛め弁29は、副流路26のうちのアキュムレータ30を基準として端部26a側となる領域に設けられている。弛め弁29の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。第1切換弁32は、主流路25のうちの途中部25aを基準としてマスタシリンダ21側となる領域に設けられている。第1切換弁32の開閉動作によって、この領域を流通するブレーキ液の流量が制御される。第2切換弁33は、供給流路27に設けられている。第2切換弁33の開閉動作によって、供給流路27を流通するブレーキ液の流量が制御される。ポンプ31は、供給流路27のうちの第2切換弁33を基準として端部27b側となる領域に設けられている。ポンプ31は、吸込側が第2切換弁33に連通し、吐出側が端部27bに連通している。モータ40は、ポンプ31の駆動源である。すなわち、ポンプ31はモータ40によって駆動される。なお、本実施の形態では、第1液圧回路12のポンプ31と第2液圧回路14のポンプ31とが、共通のモータ40によって駆動される構成となっている。
【0025】
また、本実施の形態では、ブレーキシステム10は、第1液圧回路12に、マスタシリンダ21のブレーキ液の圧力を検出するマスタシリンダ側プレッシャセンサ34と、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を検出するホイールシリンダ側プレッシャセンサ35とを備えている。マスタシリンダ側プレッシャセンサ34は、主流路25のうちの第1切換弁32よりもマスタシリンダ21側の領域に設けられている。ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35は、主流路25のうちの込め弁28よりもホイールシリンダ24側の領域に設けられている。
【0026】
込め弁28は、例えば、該込め弁28のコイルに通電されると、該込め弁28の設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。弛め弁29は、例えば、該弛め弁29のコイルに通電されると、該弛め弁29の設置個所を介してアキュムレータ30へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。第1切換弁32は、例えば、該第1切換弁32のコイルに通電されると、該第1切換弁32の設置個所でのブレーキ液の流通を開放から閉鎖に切り替える電磁弁である。第2切換弁33は、例えば、該第2切換弁33のコイルに通電されると、該第2切換弁33の設置個所を介してポンプ31へ向かうブレーキ液の流通を閉鎖から開放に切り替える電磁弁である。
【0027】
込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、及び第2切換弁33の開閉状態は、制御装置60によって制御される。また、モータ40の駆動状態も、制御装置60によって制御される。すなわち、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、第2切換弁33及びモータ40の通電状態が、制御装置60によって制御される。なお、制御装置60は、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。また、制御装置60は、基体51に取り付けられていてもよく、また、基体51以外の他の部材に取り付けられていてもよい。また、制御装置60の一部又は全ては、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。なお、本実施の形態では、制御装置60の少なくとも一部が、制御基板61で構成されている。制御装置60の詳細については後述する。
【0028】
本実施の形態では、基体51と、基体51に設けられている各部材(込め弁28、弛め弁29、アキュムレータ30、ポンプ31、第1切換弁32、第2切換弁33、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35、モータ40等)と、制御装置60と、によって、液圧制御ユニット50が構成される。
【0029】
制御装置60は、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、第2切換弁33及びモータ40を制御することにより、車両100を制動する制動装置20のブレーキ液の圧力を制御する。詳しくは、制御装置60は、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、第2切換弁33及びモータ40を制御することにより、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御し、前輪3及び後輪4に発生する制動力を制御する。例えば、制御装置60は、次のようにホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する。
【0030】
例えば、通常状態では、制御装置60は、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を開状態とし、第2切換弁33を閉状態とし、モータ40を停止状態とする。その状態で、ブレーキレバー11が操作されると、マスタシリンダ21のピストン(図示省略)がブレーキレバー11によって押圧され、マスタシリンダ21からブレーキレバー11の操作量に応じた量のブレーキ液が押し出される。そして、マスタシリンダ21から押し出されたブレーキ液は、第1切換弁32及び込め弁28を通って、ホイールシリンダ24に流入し、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力が増加する。これにより、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)が前輪3のロータ3aに押し付けられ、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力が発生する。なお、第2液圧回路14において制御装置60が同様の制御を行うことにより、後輪4には、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力が発生する。
【0031】
また、例えば、制御装置60は、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の過剰又は過剰の可能性が生じた場合に、制動装置20のホイールシリンダ24からブレーキ液を排出してホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を減少させる自動減圧制御を実行する。自動減圧制御では、制御装置60は、込め弁28を閉状態とし、弛め弁29を開状態とし、第1切換弁32を開状態とし、第2切換弁33を閉状態とする。そして、制御装置60は、モータ40を駆動する。その結果、モータ40によって駆動されるポンプ31の吸引力により、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液が途中部25bから副流路26に流入する。そして、副流路26に流入したブレーキ液は、弛め弁29を通って、アキュムレータ30に貯留される。これにより、第1液圧回路12においては、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)のロータ3aへの押圧力が減少し、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力よりも小さい制動力が発生することとなる。また、第2液圧回路14において制御装置60が同様の制御を行うことにより、後輪4には、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力よりも小さい制動力が発生することとなる。なお、従来、ポンプを用いずに自動減圧制御を行うブレーキシステムが知られている。本実施の形態に係るブレーキシステム10の第1液圧回路12及び第2液圧回路14も、ポンプを用いずに自動減圧制御を行う構成であってもよい。
【0032】
また、例えば、制御装置60は、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の不足又は不足の可能性が生じた場合に、ホイールシリンダ24へブレーキ液を供給してホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を増加させる自動増圧制御を実行する。自動増圧制御では、制御装置60は、込め弁28を開状態とし、弛め弁29を閉状態とし、第1切換弁32を閉状態とし、第2切換弁33を開状態とする。そして、制御装置60は、モータ40を駆動する。その結果、モータ40によって駆動されるポンプ31の吸引力により、マスタシリンダ21のブレーキ液が供給流路27に流入する。また、供給流路27に流入したブレーキ液は、第2切換弁33及びポンプ31を通って、端部27bから主流路25の途中部25aに流入する。そして、途中部25aから主流路25に流入したブレーキ液は、込め弁28を通ってホイールシリンダ24に流入し、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力が増加する。これにより、第1液圧回路12においては、ブレーキキャリパ23のブレーキパッド(図示省略)のロータ3aへの押圧力が増加し、前輪3には、ブレーキレバー11の操作量に応じた制動力よりも大きい制動力が発生することとなる。また、第2液圧回路14において制御装置60が同様の制御を行うことにより、後輪4には、ブレーキペダル13の操作量に応じた制動力よりも大きい制動力が発生することとなる。
【0033】
<液圧制御ユニットの構成及び動作>
本実施の形態に係る液圧制御ユニットの詳細について説明する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す一部断面図である。詳しくは、図3では、ハウジング55、制御基板61及びコネクタ70の端子保持部72を断面で示している。
液圧制御ユニット50は、上述のように、基体51を備えている。基体51は、例えば、アルミニウム合金を素材とする、略直方体の部材である。なお、基体51の各面は、平坦であってもよく、湾曲部を含んでいてもよく、また、段差を含んでいてもよい。この基体51は、面51aにモータ40が取り付けられている。また、本実施の形態では、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33の各コイルも、基体51の面51aに取り付けられている。図3に示すコイル36は、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33の各コイルのうちのいずれかを例示したものである。
【0035】
また、液圧制御ユニット50は、ハウジング55を備えている。ハウジング55は、例えば、樹脂で形成されており、略直方体の箱形形状をしている。ハウジング55は、基体51の例えば面51aに接続されている。このハウジング55には、制御基板61が収納されている。すなわち、液圧制御ユニット50は、自身の内部に、制御装置60の少なくとも一部を構成する制御基板61を収納している。なお、本実施の形態では、ハウジング55には、モータ40も収納されている。また、ハウジング55には、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33の各コイルも収納されている。
【0036】
制御基板61とモータ40とは、端子41で接続されている。そして、制御基板61は、端子41を介して、モータ40へ通電する。また、制御基板61は、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33の各コイルと、端子37で接続されている。そして、制御基板61は、端子37を介して、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33の各コイルへ通電する。
【0037】
また、液圧制御ユニット50は、制御基板61と外部装置とを接続するコネクタ70を備えている。具体的には、コネクタ70は、複数の端子71を備えている。そして、端子71のそれぞれは、制御基板61に接続されている。このコネクタ70は、ハウジング55に固定されている。具体的には、コネクタ70は、端子71のそれぞれを保持する端子保持部72を備えている。そして、端子保持部72がハウジング55に固定されている。なお、本実施の形態では、ハウジング55とは別体で形成された端子保持部72がハウジング55に固定されることにより、コネクタ70がハウジング55に固定される構成となっている。これに限らず、ハウジング55と端子保持部72とを一体的に形成し、コネクタ70をハウジング55に固定してもよい。制御基板61には、コネクタ70を介して、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する際に用いられる情報が入力される。ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する際に用いられる情報とは、例えば、マスタシリンダ側プレッシャセンサ34、ホイールシリンダ側プレッシャセンサ35、及び、車輪(前輪3及び後輪4)の回転速度を検出するための車輪速センサ(図示省略)等の各種センサの信号である。
【0038】
このように構成された液圧制御ユニット50では、制御基板61は、ハウジング55の内部において、端子41、端子37、及びコネクタ70の端子71等で保持されることとなる。なお、図3に示すように、例えば基体51にピン56を設け、該ピン56で制御基板61を保持してもよい。
【0039】
ところで、車両に搭載された慣性計測装置が検出する物理量には、車両の挙動が反映される。このため、従来の液圧制御ユニットには、慣性計測装置が検出する物理量に応じて制動装置のブレーキ液の圧力を制御するものも提案されている。なお、慣性計測装置が検出する物理量とは、例えば、互いに直交する3軸の方向の加速度、及び、上述の3軸の各々の軸周りの角速度である。なお、慣性計測装置は、これら6つの物理量(3つの加速度及び3つの角速度)のうちの少なくとも1つを検出するものであってもよい。
【0040】
本実施の形態に係る液圧制御ユニット50の制御装置60も、慣性計測装置80が検出する物理量に応じて、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する構成となっている。具体的には、慣性計測装置80は、検出した物理量に応じた信号を出力する。液圧制御ユニット50の制御装置60は、慣性計測装置80から出力された信号に基づいて、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する。また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット50は、慣性計測装置80を自身の構成として備えたものとなっている。具体的には、慣性計測装置80は、制御基板61に実装されている。
【0041】
ここで、制御基板61は、ハウジング55内において強固に固定することが難しい。このため、制御基板61には、振動が伝わりやすい。例えば、車両100の走行中、エンジンの振動、及び路面から車両100に伝わる振動等が、制御基板61に伝わる。また、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する圧力制御機構で発生する振動も、制御基板61に伝わる。具体的には、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する圧力制御機構の構成は、ブレーキ液が流れる流路(主流路25、副流路26、供給流路27)、該流路に設けられた弁(込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、第2切換弁33)、該流路に設けられたポンプ31、及び該ポンプ31の駆動源であるモータ40である。例えば、主流路25、副流路26及び供給流路27をブレーキ液が流れる際に発生する振動が、制御基板61に伝わる。例えば、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32及び第2切換弁33が駆動する際に発生する振動が、制御基板61に伝わる。例えば、ポンプ31及びモータ40が駆動する際に発生する振動が、制御基板61に伝わる。特に、モータ40の駆動時に発生する振動は大きく、モータ40と制御基板61とは端子41で接続されているので、モータ40が発生する振動が制御基板61に大きく伝わる。
【0042】
制御基板61に伝わった振動によって該制御基板61にたわみが発生した場合、慣性計測装置80が出力する信号にノイズが含まれてしまう。また、慣性計測装置80が出力する信号に含まれるノイズのうちのコモンモードノイズ成分は、フィルタによる除去が難しい。このため、制御基板61に単純に1つの慣性計測装置80を実装するだけでは、慣性計測装置80が出力する信号に含まれるコモンモードノイズ成分によって、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の制御が不安定になってしまう。そこで、本実施の形態に係る液圧制御ユニット50においては、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを抑制すべく、慣性計測装置80を次のように制御基板61に実装し、制御装置60を次のように構成している。
【0043】
図4は、本発明の実施の形態に係る制御基板を図3の矢印A方向に観察した図である。なお、図4では、制御基板61における端子37及びピン56との接続箇所の図示を省略している。また、該図4及び上述した図3では、紙面奥側から手前側へ向かう紙面直交方向を、白抜きの丸の中に黒抜きの丸を印したマークで示している。また、該図4及び上述した図3では、紙面手前側から奥側へ向かう紙面直交方向を、白抜きの丸の中にバツ印を印したマークで示している。以下の図面においても、紙面直交方向をこれらのマークで示すこととする。
【0044】
図3及び図4に示すように、本実施の形態に係る液圧制御ユニット50は、慣性計測装置80として、制御基板61に実装された第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を備えている。
【0045】
本実施の形態では、第1慣性計測装置81は、物理量として、互いに直交する3軸(X1軸、Y1軸、Z1軸)の方向の加速度を検出する。詳しくは、X1軸は、図3において、紙面右側から左側へ向かう方向が正の方向となる。Y1軸は、図3において、紙面奥側から手前側へ向かう紙面直交方向が正の方向となる。Z1軸は、図3において、紙面上側から下側へ向かう方向が正の方向となる。また、本実施の形態では、第1慣性計測装置81は、物理量として、上述の3軸の各々の軸周りの角速度を検出する。詳しくは、第1慣性計測装置81は、物理量として、X1軸周りの角速度と、Y1軸周りの角速度と、Z1軸周りの角速度とを検出する。なお、第1慣性計測装置81は、これら6つの物理量のうちの少なくとも1つを検出するものであってもよい。
【0046】
本実施の形態では、第2慣性計測装置82は、物理量として、互いに直交する3軸(X2軸、Y2軸、Z2軸)の方向の加速度を検出する。詳しくは、X2軸は、X1軸の正の方向とは逆向きが正の方向となり、図3において、紙面左側から右側へ向かう方向が正の方向となる。Y2軸は、Y1軸の正の方向とは逆向きが正の方向となり、図3において、紙面手前側から奥側へ向かう紙面直交方向が正の方向となる。Z2軸は、Z1軸の正の方向とは逆向きが正の方向となり、図3において、紙面下側から上側へ向かう方向が正の方向となる。また、本実施の形態では、第2慣性計測装置82は、物理量として、上述の3軸の各々の軸周りの角速度を検出する。詳しくは、第2慣性計測装置82は、物理量として、X2軸周りの角速度であり、X1軸周りの角速度の正の方向とは逆向きが正の方向となる角速度を検出する。また、第2慣性計測装置82は、物理量として、Y2軸周りの角速度であり、Y1軸周りの角速度の正の方向とは逆向きが正の方向となる角速度を検出する。また、第2慣性計測装置82は、物理量として、Z2軸周りの角速度であり、Z1軸周りの角速度の正の方向とは逆向きが正の方向となる角速度を検出する。なお、第2慣性計測装置82は、上述の6つの物理量のうちの少なくとも1つを検出するものであってもよい。
【0047】
また、本実施の形態においては、第1慣性計測装置81は、制御基板61の第1面61aに実装されている。第2慣性計測装置82は、制御基板61における第1面61aとは反対側の面となる第2面61bに実装されている。
【0048】
また、本実施の形態においては、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の少なくとも一部が重なりあっている。なお、制御基板61の厚み方向とは、図3の紙面上下方向であり、図4における制御基板61の観察方向(紙面直交方向)である。また、図3及び図4では、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82が完全に重なりあっている例を示している。
【0049】
また、本実施の形態においては、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61のうち、端子41と制御基板61との接続部を基準として、コネクタ70側となる領域に実装されている。
【0050】
なお、上述した第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の実装位置は、あくまでも一例である。
【0051】
図5は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
例えば、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、互いに重ならない位置に実装されていてもよい。
【0052】
図6は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例を示す一部断面図である。詳しくは、図6では、ハウジング55、制御基板61及びコネクタ70の端子保持部72を断面で示している。
例えば、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61の同一面に実装されていてもよい。なお、図6では、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82が制御基板61の第1面61aに実装されている例を示している。これに限らず、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61の第2面61bに実装されていてもよい。また、図6では、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の少なくとも一部が重なりあっている例を示している。これに限らず、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、互いに重ならない位置に実装されていてもよい。
【0053】
図7は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
例えば、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82のうちの少なくとも一方は、制御基板61のうち、端子41と制御基板61との接続部を基準として、コネクタ70側とは反対側となる領域に実装されていてもよい。なお、図7では、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61の異なるに実装されている。これに限らず、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61の同一に実装されていてもよい。また、図7では、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、互いに重ならない位置に実装されている。これに限らず、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の少なくとも一部が重なりあっていてもよい。
【0054】
図8は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例の制御基板を、図3の矢印A方向に観察した図である。
第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の実装位置を説明した上述の例では、第2慣性計測装置82は、第1慣性計測装置81が検出する物理量とは逆向きの物理量を検出する姿勢で、制御基板61に実装されていた。逆向きの物理量とは、絶対値が同じで、符号の正負が逆になる物理量である。具体的には、第1慣性計測装置81が加速度を検出する軸と、第2慣性計測装置82が加速度を検出する軸とが、平行になっていた。より具体的には、X1軸とX2軸とが平行になっており、Y1軸とY2軸とが平行になっており、Z1軸とZ2軸とが平行になっていた。しかしながら、これに限らず、図8に示すように、上述した第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82のいずれかの実装位置において、第2慣性計測装置82は、第1慣性計測装置81が検出する物理量とは逆向きの物理量を検出しない姿勢で、制御基板61に実装されていてもよい。なお図8では、X1軸とX2軸とが平行になっておらず、Y1軸とY2軸とが平行になっていない。従来、慣性計測装置が計測する物理量の軸の原点及び角度を、演算によって補正する技術が知られている。このため、第1慣性計測装置81が検出する物理量とは逆向きの物理量を検出しない姿勢で、第2慣性計測装置82が制御基板61に実装されていても、当該技術により、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の検出結果から、互いに逆向きの物理量を取得することができる。
【0055】
図9は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの制御装置を示すブロック図である。
本実施の形態に係る液圧制御ユニット50の制御装置60は、機能部として、物理量取得部62及び制御部63を備えている。物理量取得部62は、第1慣性計測装置81の検出結果に基づいて第1物理量を取得する機能部である。また、物理量取得部62は、第2慣性計測装置82の検出結果に基づいて、第1物理量とは逆向きの第2物理量を取得する機能部である。本実施の形態では、物理量取得部62は、第1慣性計測装置81が検出した物理量を、第1物理量としている。また、物理量取得部62は、第2慣性計測装置82が検出した物理量を、第2物理量としている。制御部63は、物理量取得部62が取得した第1物理量と第2物理量との差分に応じて、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する機能部である。なお、制御部63は、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する際、物理量取得部62が取得した第1物理量と第2物理量との差分以外の情報をさらに用いても、勿論よい。
以下、物理量取得部62及び制御部63の動作について、さらに後述の図10図12を用いて説明する。
【0056】
図10は、本発明の実施の形態に係る第1物理量を示す図である。図11は、本発明の実施の形態に係る第2物理量を示す図である。また、図12は、本発明の実施の形態に係る第1物理量と第2物理量との差分を示す図である。
なお、本実施の形態では、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、物理量を検出した際、物理量に応じた大きさの電圧を信号として出力する構成を想定している。このため、図10図12の縦軸では、第1物理量及び第2物理量の大きさを電圧の大きさとして表している。なお、図10図12の横軸は、時間である。
【0057】
第1慣性計測装置81がある物理量を検出した際、第2慣性計測装置82は、第1慣性計測装置81とは逆向きの物理量を検出する。例えば、液圧制御ユニット50(換言すると車両100)に対して、図3の紙面右側から左側へ加速度が生じたとする。そして、この際に、第1慣性計測装置81が電圧a[V]の信号を出力したとする。この場合、第2慣性計測装置82は、電圧-a[V]の信号を出力することとなる。すなわち、図10及び図11に示すように、第1物理量が電圧a[V]に対応する大きさとなった際、第2物理量は電圧-a[V]に対応する大きさとなる。ここで、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82が出力する信号にコモンモードノイズ成分が含まれる場合、図10及び図11において符号nで示すように、第1物理量及び第2物理量にもコモンモードノイズ成分が含まれることとなる。
【0058】
この際、第1物理量に含まれるコモンモードノイズ成分と、第2物理量に含まれるコモンモードノイズ成分とは、同位相となる。このため、第1物理量と第2物理量との差分を求めることにより、図12に示すように、第1物理量と第2物理量に含まれるコモンモードノイズ成分同士の少なくとも一部を相殺することができ、第1物理量と第2物理量との差分からコモンモードノイズ成分の少なくとも一部を除去できる。
【0059】
制御部63は、第1物理量と第2物理量との差分に応じて、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力を制御する際、例えば、第1物理量と第2物理量との差分の半分の大きさの物理量が液圧制御ユニット50(換言すると車両100)に発生しているとする。そして、制御部63は、当該物理量等に基づいて、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の過剰又は過剰の可能性、及び、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の不足又は不足の可能性を判断する。そして、制御部63は、込め弁28、弛め弁29、第1切換弁32、第2切換弁33及びモータ40を制御することにより、車両100を制動する制動装置20のブレーキ液の圧力を制御する。
【0060】
この際、上述のように、第1物理量と第2物理量との差分を求めることにより、図12に示すように、第1物理量と第2物理量に含まれるコモンモードノイズ成分同士の少なくとも一部を相殺することができ、第1物理量と第2物理量との差分からコモンモードノイズ成分の少なくとも一部を除去できる。このため、制御基板61に単純に1つの慣性計測装置80を実装する場合と比べ、ホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の制御が安定する。すなわち、本実施の形態に係る液圧制御ユニット50は、制御基板61に慣性計測装置80を実装した際、制動装置20のホイールシリンダ24のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを従来よりも抑制できる。
【0061】
<液圧制御ユニットの効果>
本実施の形態に係る液圧制御ユニット50は、少なくとも一部が制御基板61で構成され、慣性計測装置80が検出した物理量に応じて、車両100を制動する制動装置20のブレーキ液の圧力を制御する制御装置60を備えている。また、液圧制御ユニット50は、内部に制御基板61が収納されて、車両100に搭載される液圧制御ユニットである。液圧制御ユニット50は、慣性計測装置80として、制御基板61に実装された第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を備えている。また、制御装置60は、物理量取得部62と、制御部63とを備えている。物理量取得部62は、第1慣性計測装置81の検出結果に基づいて第1物理量を取得し、第2慣性計測装置82の検出結果に基づいて、第1物理量とは逆向きの第2物理量を取得する。そして、制御部63は、第1物理量と第2物理量との差分に応じて、制動装置20のブレーキ液の圧力を制御する。
このように構成された液圧制御ユニット50は、上述のように、制御基板61に慣性計測装置80を実装した際、制動装置20のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることを従来よりも抑制できる。
【0062】
好ましくは、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の少なくとも一部が重なりあっている。
第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を近い位置に実装することにより、第1慣性計測装置81の実装位置での基板61のたわみと、第2慣性計測装置82の実装位置での基板61のたわみとが似たものとなる。このため、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82が出力する信号に含まれるコモンモードノイズ成分が似たものとなる。したがって、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82をこのような位置に実装することにより、第1物理量と第2物理量との差分に残るコモンモードノイズ成分をより小さくできる。このため、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82をこのような位置に実装することにより、制動装置20のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることをさらに抑制できる。
【0063】
好ましくは、第1慣性計測装置81は、制御基板61の第1面61aに実装されている。また、第2慣性計測装置82は、制御基板61における第1面61aとは反対側の面となる第2面61bに実装されている。
このように制御基板61の異なる面に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を実装することにより、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82として同一種類の慣性計測装置を用いた場合でも、第2慣性計測装置82のZ2軸は、第1慣性計測装置81のZ1軸の正方向とは逆向きが正の方向となる。すなわち、このように制御基板61の異なる面に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を実装することにより、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82として同一種類の慣性計測装置を用いることができる。
また、制御基板61の厚み方向に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を観察した際、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の少なくとも一部が重なりあうよう構成とする場合、このように制御基板61の異なる面に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を実装することにより、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82の制御基板61への実装が容易となる。
【0064】
好ましくは、モータ40と制御基板61とが端子41で接続されている。
モータと制御基板とが端子で接続されている液圧制御ユニットにおいては、制御基板に振動が伝わりやすく、制御基板に実装された慣性計測装置が出力する信号に、コモンモードノイズ成分が含まれやすくなる。このため、このような構成の液圧制御ユニットを本実施の形態に係る液圧制御ユニット50として構成することが好適である。
【0065】
好ましくは、モータ40と制御基板61とが端子41で接続されている場合、制御基板61と外部装置とを接続するコネクタ70を備え、コネクタ70は、ハウジング55に固定されている。そして、第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82は、制御基板61のうち、端子41と制御基板61との接続部を基準として、コネクタ70側となる領域に実装されている。
コネクタ70はハウジング55に固定されているため、制御基板61におけるコネクタ70との接続箇所は、たわみにくい。このため、制御基板61のうち、端子41と制御基板61との接続部を基準として、コネクタ70側となる領域は、制御基板61において、振動によるたわみが発生しにくい領域となる。このため、当該領域に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を実装することにより、第1物理量及び第2物理量のコモンモードノイズ成分が小さくなる。したがって、第1物理量と第2物理量との差分に残るコモンモードノイズ成分をより小さくできる。このため、当該領域に第1慣性計測装置81及び第2慣性計測装置82を実装することにより、制動装置20のブレーキ液の圧力の制御が不安定になることをさらに抑制できる。
【0066】
好ましくは、第2慣性計測装置82は、第1慣性計測装置81が検出する物理量とは逆向きの物理量を検出する姿勢で、制御基板61に実装されている。第1慣性計測装置81又は第2慣性計測装置82が計測する物理量の軸の角度等を演算によって補正する必要がなくなるので、第1物理量の取得、第2物理量の取得、及び、第1物理量と第2物理量との差分の取得が容易となる。
【0067】
以上、本実施の形態に係る液圧制御ユニット50について説明したが、本発明に係る液圧制御ユニットは、本実施の形態の説明に限定されるものではなく、本実施の形態の一部のみが実施されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 胴体、2 ハンドル、3 前輪、3a ロータ、4 後輪、4a ロータ、10 ブレーキシステム、11 ブレーキレバー、12 第1液圧回路、13 ブレーキペダル、14 第2液圧回路、20 制動装置、21 マスタシリンダ、22 リザーバ、23 ブレーキキャリパ、24 ホイールシリンダ、25 主流路、25a 途中部、25b 途中部、26 副流路、26a 端部、26b 端部、27 供給流路、27a 端部、27b 端部、27c 途中部、28 込め弁、29 弛め弁、30 アキュムレータ、31 ポンプ、32 第1切換弁、33 第2切換弁、34 マスタシリンダ側プレッシャセンサ、35 ホイールシリンダ側プレッシャセンサ、36 コイル、37 端子、40 モータ、41 端子、50 液圧制御ユニット、51 基体、51a 面、55 ハウジング、56 ピン、60 制御装置、61 制御基板、61a 第1面、61b 第2面、62 物理量取得部、63 制御部、70 コネクタ、71 端子、72 端子保持部、80 慣性計測装置、81 第1慣性計測装置、82 第2慣性計測装置、100 車両、MP マスタシリンダポート、WP ホイールシリンダポート。
図1
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