(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085079
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】構造物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E04B1/30 E
E04B1/30 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199564
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 昌尚
(72)【発明者】
【氏名】津田 康生
(72)【発明者】
【氏名】牧村 将吾
(72)【発明者】
【氏名】池田 崇
(57)【要約】 (修正有)
【課題】見上げた場合の意匠性の低下、及び施工性の低下を抑制しつつ、鉄骨梁のたわみ量を低減する。
【解決手段】構造物10は、一対の柱22と、柱22に端部がそれぞれ剛接合される一対の跳出し鉄骨梁30と、一対の柱の各々から跳出し鉄骨梁と直交する直交方向の一方側へ跳ね出す一対の第一直交跳出し鉄骨梁40と、一対の柱の各々から直交方向の他方側へ跳ね出す一対の第二直交跳出し鉄骨梁42と、一対の第一直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、第一直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一方側鉄骨梁50と、一対の第二直交跳出し鉄骨梁に架設され、第二直交跳出し鉄骨梁42に端部がそれぞれピン接合される他方側鉄骨梁52と、跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部にそれぞれ設けられ、一方側鉄骨梁と他方側鉄骨梁とに架設され、一方側鉄骨梁及び他方側鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一対の連結鉄骨梁32とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の柱と、
一対の前記柱から互いに相手側へ跳ね出すとともに、該柱に端部がそれぞれ剛接合される一対の跳出し鉄骨梁と、
一対の前記柱の各々から、前記跳出し鉄骨梁と直交する直交方向の一方側へ跳ね出す一対の第一直交跳出し鉄骨梁と、
一対の前記柱の各々から、前記直交方向の他方側へ跳ね出す一対の第二直交跳出し鉄骨梁と、
一対の前記第一直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、該第一直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一方側鉄骨梁と、
一対の前記第二直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、該第二直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される他方側鉄骨梁と、
一対の前記跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部にそれぞれ設けられ、前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに架設されるとともに、該一方側鉄骨梁及び該他方側鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一対の連結鉄骨梁と、
を備える構造物。
【請求項2】
前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに亘るとともに、両側の端部が前記一方側鉄骨梁及び前記他方側鉄骨梁から外側へそれぞれ跳ね出すスラブを備える、
請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記柱は、前記対向方向に3本以上で配列され、
隣り合う一対の前記柱には、互いに相手側へ跳ね出す一対の前記跳出し鉄骨梁がそれぞれ設けられ、
一対の前記跳出し鉄骨梁の前記先端部には、前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに架設される前記連結鉄骨梁がそれぞれ設けられる、
請求項1又は請求項2に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
隣り合う柱に、並列に架設される複数の梁が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-248760号公報
【特許文献2】特開平5-133002号公報
【特許文献3】特開2008-031644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ペデストリアンデッキ等の高架構造物では、一列に配列された複数の柱、及び隣り合う柱に架設された鉄骨梁上にスラブが設けられる。
【0005】
ここで、例えば、ブラケット方式の鉄骨梁では、地震時の水平力に抵抗するために、現場において、柱の仕口部から跳ね出すブラケットの端部と鉄骨梁本体の端部とが、ボルト及びナットによって剛接合される。
【0006】
具体的には、ブラケット及び鉄骨梁本体のウェブ同士がスプライスプレートを介してボルト接合される。また、ブラケット及び鉄骨梁本体の上側フランジ部同士がスプライスプレートを介してボルト接合されるとともに、ブラケット及び鉄骨梁本体の下側フランジ部同士がスプライスプレートを介してボルト接合される。
【0007】
しかしながら、この場合、ブラケット及び鉄骨梁本体の接合部を見上げた場合に、ボルト又はナットが見えるため、意匠性が低下する可能性がある。
【0008】
この対策として、例えば、ブラケット及び鉄骨梁本体の下側フランジ部同士を溶接接合することが考えられるが、この場合、施工性が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は、上記の事実を考慮し、見上げた場合の意匠性の低下、及び施工性の低下を抑制しつつ、地震時の水平力に抵抗可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の構造物は、互いに対向する一対の柱と、一対の前記柱から互いに相手側へ跳ね出すとともに、該柱に端部がそれぞれ剛接合される一対の跳出し鉄骨梁と、一対の前記柱の各々から、前記跳出し鉄骨梁と直交する直交方向の一方側へ跳ね出す一対の第一直交跳出し鉄骨梁と、一対の前記柱の各々から、前記直交方向の他方側へ跳ね出す一対の第二直交跳出し鉄骨梁と、一対の前記第一直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、該第一直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一方側鉄骨梁と、一対の前記第二直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、該第二直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される他方側鉄骨梁と、一対の前記跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部にそれぞれ設けられ、前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに架設されるとともに、該一方側鉄骨梁及び該他方側鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される一対の連結鉄骨梁と、を備える。
【0011】
請求項1に係る構造物によれば、一対の柱と、一対の跳出し鉄骨梁と、一対の第一直交跳出し鉄骨梁と、一対の第二直交跳出し鉄骨梁と、一方側鉄骨梁と、他方側鉄骨梁と、連結鉄骨梁とを備える。
【0012】
一対の柱は、互いに対向する。また、一対の跳出し鉄骨梁は、一対の柱から互いに相手側へ跳ね出すとともに、一対の柱に端部がそれぞれ剛接合される。
【0013】
一対の第一直交跳出し鉄骨梁は、一対の柱の各々から、跳出し鉄骨梁と直交する直交方向の一方側へ跳ね出す。また、一対の第二直交跳出し鉄骨梁は、一対の柱の各々から、直交方向の他方側へ跳ね出す。
【0014】
一方側鉄骨梁は、一対の第一直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、第一直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される。また、他方側鉄骨梁は、一対の第二直交跳出し鉄骨梁に架設されるとともに、第二直交跳出し鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される。
【0015】
連結鉄骨梁は、一対の跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部にそれぞれ設けられ、一方側鉄骨梁と他方側鉄骨梁とに架設されるとともに、一方側鉄骨梁及び他方側鉄骨梁に端部がそれぞれピン接合される。
【0016】
ここで、前述したように、一方側鉄骨梁と、第一直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁とは、ピン接合されるため、各々の下側フランジ部同士を接合するボルトが存在しない。これと同様に、他方側鉄骨梁と、第二直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁とは、ピン接合されるため、各々の下側フランジ部を接合するボルトが存在しない。したがって、一方側鉄骨梁及び他方側鉄骨梁を見上げた場合の意匠性が向上する。
【0017】
また、本発明では、一方側鉄骨梁の下側フランジ部と、第一直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の下側フランジ部とを溶接接合する場合と比較して、施工性の低下が抑制される。これと同様に、本発明では、他方側鉄骨梁の下側フランジ部と、第二直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の下側フランジ部とを溶接接合する場合と比較して、施工性の低下が抑制される。
【0018】
さらに、一方側鉄骨梁の端部側は、第一直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の2点によって支持される。これにより、柱と一方側鉄骨梁との間で曲げモーメントが伝達される。したがって、一方側鉄骨梁のたわみ量が低減される。
【0019】
これと同様に、他方側鉄骨梁の端部側は、第二直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の2点によって支持される。これにより、柱と他方側鉄骨梁との間で曲げモーメントが伝達される。したがって、他方側鉄骨梁のたわみ量が低減される。
【0020】
このように本発明では、見上げた場合の意匠性の低下、及び施工性の低下を抑制しつつ、一方側鉄骨梁及び他方側鉄骨梁のたわみ量を低減することができる。
【0021】
請求項2に記載の構造物は、請求項1に記載の構造物において、前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに亘るとともに、両側の端部が前記一方側鉄骨梁及び前記他方側鉄骨梁から外側へそれぞれ跳ね出すスラブを備える。
【0022】
請求項2に係る構造物によれば、スラブは、一方側鉄骨梁と他方側鉄骨梁とに亘る。また、スラブの両側の端部は、一方側鉄骨梁及び他方側鉄骨梁から外側へそれぞれ跳ね出す。このスラブによって、例えば、幅が広い通路等を確保することができる。
【0023】
また、前述したように、一方側鉄骨梁の端部側を、第一直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の2点によって支持することにより、スラブの重量による一方側鉄骨梁のねじれ変形が抑制される。これと同様に、他方側鉄骨梁の端部側を、第二直交跳出し鉄骨梁及び連結鉄骨梁の2点によって支持することにより、スラブの荷重による他方側鉄骨梁のねじれ変形が抑制される。したがって、スラブが安定する。
【0024】
請求項3に記載の構造物は、請求項1又は請求項2に記載の構造物において、前記柱は、前記対向方向に3本以上で配列され、隣り合う一対の前記柱には、互いに相手側へ跳ね出す一対の前記跳出し鉄骨梁がそれぞれ設けられ、一対の前記跳出し鉄骨梁の前記先端部には、前記一方側鉄骨梁と前記他方側鉄骨梁とに架設される前記連結鉄骨梁がそれぞれ設けられる。
【0025】
請求項3に係る構造物によれば、柱は、対向方向に3本以上で配列される。また、隣り合う一対の柱には、互いに相手側へ跳ね出す一対の跳出し鉄骨梁がそれぞれ設けられる。一対の跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部には、連結鉄骨梁がそれぞれ設けられる。各連結鉄骨梁は、一方側鉄骨梁と他方側鉄骨梁とに架設される。
【0026】
このように3本以上の柱を配列することにより、所定長さの高架構造物等を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、見上げた場合の意匠性の低下、及び施工性の低下を抑制しつつ、鉄骨梁のたわみ量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る構造物を示す平面図である。
【
図7】
図6に示されるブラケット及び鉄骨梁本体の接合部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る構造物について説明する。
【0030】
(構造物)
図1には、本実施形態に係る構造物10が示されている。構造物10は、一例として、ペデストリアンデッキ等の高架構造物(高架通路)とされる。この構造物10は、平面視にて、所定方向を長手方向とした長方形状に形成されている。
【0031】
なお、各図に示される矢印Xは、構造物10の長手方向を示し、矢印Yは、構造物10の幅方向を示している。
【0032】
(架構)
構造物10は、複数の架構20と、スラブ60とを備えている。複数の架構20は、構造物10の長手方向に沿って一例で配列されている。各架構20は、一対の柱22と、一対の跳出し鉄骨梁30と、第一直交跳出し鉄骨梁40と、第二直交跳出し鉄骨梁42と、一方側鉄骨梁50と、他方側鉄骨梁52と、一対の連結鉄骨梁32とを有している。
【0033】
(柱)
一対の柱22は、鉄骨造や、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT造とされており、構造物10の長手方向(矢印X方向)に互いに対向している。また、各架構20を構成する複数の柱22は、構造物10の長手方向に一列で配置されている。各柱22の仕口部には、跳出し鉄骨梁30、第一直交跳出し鉄骨梁40、及び第二直交跳出し鉄骨梁42が設けられている。
【0034】
(跳出し鉄骨梁)
図2に示されるように、一対の跳出し鉄骨梁30は、H形鋼によって形成されている。また、一対の跳出し鉄骨梁30は、一対の柱22の対向方向に沿って配置されるとともに、一対の柱22から互いに相手側へ跳ね出している。各跳出し鉄骨梁30の一端部(基端部)は、柱22の仕口部に溶接等によって剛接されている。
【0035】
図3に示されるように、跳出し鉄骨梁30は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部30A及び下側フランジ部30Bと、上側フランジ部30Aと下側フランジ部30Bとを接続するウェブ部30Cとを有している。この跳出し鉄骨梁30の梁成は、後述する一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52の梁成よりも高くされている。
【0036】
なお、一対の跳出し鉄骨梁30の全長は、例えば、一対の柱22のスパンL(
図1参照)の1/5~1/3とされる。また、跳出し鉄骨梁30の先端部30T(
図2参照)には、後述する連結鉄骨梁32が設けられている。
【0037】
(第一直交跳出し鉄骨梁)
図2に示されるように、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40は、H形鋼によって形成されている。また、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40は、一対の柱22の各々から、跳出し鉄骨梁30と直交する直交方向(矢印Y方向)の一方側へ跳ね出す片持ち梁とされている。各第一直交跳出し鉄骨梁40の一端部(基端部)は、一対の柱22の仕口部に溶接等によってそれぞれ剛接合されている。この一対の第一直交跳出し鉄骨梁40には、後述する一方側鉄骨梁50が架設されている。
【0038】
なお、跳出し鉄骨梁30と直交する直交方向とは、跳出し鉄骨梁30の材軸方向と厳密に直交する方向だけでなく、当該方向から施工誤差等によってずれた方向も含む概念である。
【0039】
(第二直交跳出し鉄骨梁)
一対の第二直交跳出し鉄骨梁42は、H形鋼によって形成されている。また、一対の第二直交跳出し鉄骨梁42は、一対の柱22の各々から、跳出し鉄骨梁30と直交する直交方向(矢印Y方向)の一方側へ跳ね出す片持ち梁とされている。各第一直交跳出し鉄骨梁40の一端部(基端部)は、柱22の仕口部に溶接等によってそれぞれ剛接合されている。この一対の第二直交跳出し鉄骨梁42には、後述する他方側鉄骨梁52が架設されている。
【0040】
なお、第一直交跳出し鉄骨梁40及び第二直交跳出し鉄骨梁42の全長は、跳出し鉄骨梁30の全長以下が好ましく、跳出し鉄骨梁30の全長の2/3以下がより好ましい。
【0041】
(一方側鉄骨梁)
一方側鉄骨梁50は、H形鋼によって形成されている。また、一方側鉄骨梁50は、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40の跳出し方向の先端部の間に、一対の柱22の対向方向(矢印X方向)に沿って配置されている。
【0042】
一方側鉄骨梁50は、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部に架設されている。この一方側鉄骨梁50の両側の端部50Eは、第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部に、図示しないボルト及びナットによってピン接合されている。
【0043】
なお、一方側鉄骨梁50の端部50Eと第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部との接合構造は、後述する連結鉄骨梁32の一端部32E1と一方側鉄骨梁50の中間部との接合構造(
図5参照)と同様である。
【0044】
図3に示されるように、一方側鉄骨梁50は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部50A及び下側フランジ部50Bと、上側フランジ部50Aと下側フランジ部50Bとを接続するウェブ部50Cとを有している。
【0045】
(他方側鉄骨梁)
図2に示されるように、他方側鉄骨梁52は、H形鋼によって形成されている。また、他方側鉄骨梁52は、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40の跳出し方向の先端部の間に、一対の柱22の対向方向に沿って配置されている。
【0046】
他方側鉄骨梁52は、一対の第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部に架設されている。具体的には、他方側鉄骨梁52の両側の端部52Eは、第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部に、図示しないボルト及びナットによってピン接合されている。
【0047】
なお、他方側鉄骨梁52の端部52Eと第二直交跳出し鉄骨梁42の先端部との接合構造は、後述する連結鉄骨梁32の一端部32E1と一方側鉄骨梁50の中間部との接合構造(
図5参照)と同様である。
【0048】
図3に示されるように、他方側鉄骨梁52は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部52A及び下側フランジ部52Bと、上側フランジ部52Aと下側フランジ部52Bとを接続するウェブ部52Cとを有している。
【0049】
(連結鉄骨梁)
図2に示されるように、連結鉄骨梁32は、H形鋼によって形成されている。また、連結鉄骨梁32は、一方側鉄骨梁50と他方側鉄骨梁52との間に、跳出し鉄骨梁30と直交する直交方向(矢印Y方向)に沿って配置されている。
【0050】
図4に示されるように、連結鉄骨梁32は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部32A及び下側フランジ部32Bと、上側フランジ部32Aと下側フランジ部32Bとを接続するウェブ部32Cとを有している。この連結鉄骨梁32の材軸方向の中央部に、跳出し鉄骨梁30の跳出し方向の先端部30Tに剛接合されている。
【0051】
具体的には、連結鉄骨梁32の梁成は、跳出し鉄骨梁30の梁成と略同じとされている。この連結鉄骨梁32の上側フランジ部32Aにおける一方の側端部には、跳出し鉄骨梁30の上側フランジ部30Aの先端部が突き当てられた状態で溶接されている。これと同様に、連結鉄骨梁32の下側フランジ部32Bにおける一方の側端部には、跳出し鉄骨梁30の下側フランジ部30Bの先端部が突き当てられた状態で溶接されている。
【0052】
また、連結鉄骨梁32のウェブ部32Cには、跳出し鉄骨梁30のウェブ部30Cの端部が突き当てられた状態で溶接されている。これにより、連結鉄骨梁32の中央部と跳出し鉄骨梁30の先端部30Tとが、剛接合されている。
【0053】
図5に示されるように、連結鉄骨梁32の一端部32E1は、一方側鉄骨梁50の中間部にピン接合されている。具体的には、一方側鉄骨梁50の中間部には、ガセットプレート34が設けられている。ガセットプレート34は、一方側鉄骨梁50の上側フランジ部50Aと下側フランジ部50Bとの間に配置されており、上側フランジ部50A、下側フランジ部50B、及びウェブ部50Cに突き当てられた状態で溶接されている。
【0054】
ガセットプレート34は、一方側鉄骨梁50の上側フランジ部50Aと下側フランジ部50Bとの間から連結鉄骨梁32側に突出している。このガセットプレート34の突出方向の先端部は、連結鉄骨梁32のウェブ部32Cに重ねられた状態で、ボルト36及び図示しないナットによって接合されている。これにより、連結鉄骨梁32の一端部32E1と一方側鉄骨梁50の中間部とが、ピン接合されている。
【0055】
ここで、
図2に示されるように、一方側鉄骨梁50の端部50E側は、第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部、及び連結鉄骨梁32の一端部32E1の2点によって支持されている。また、跳出し鉄骨梁30、第一直交跳出し鉄骨梁40、一方側鉄骨梁50、及び連結鉄骨梁32によって、平面架構が形成されている。この平面架構は、一対の柱22の対向方向を長手方向とした矩形状に形成されている。
【0056】
連結鉄骨梁32の他端部32E2は、他方側鉄骨梁52の中間部にピン接合されている。なお、連結鉄骨梁32の他端部32E2と他方側鉄骨梁52の中間部との接合構造は、連結鉄骨梁32の一端部32E1と一方側鉄骨梁50の中間部との接合構造(
図5参照)と同様である。
【0057】
ここで、他方側鉄骨梁52の端部52E側は、第二直交跳出し鉄骨梁42の先端部、及び連結鉄骨梁32の他端部32E2の2点によって支持されている。また、跳出し鉄骨梁30、第二直交跳出し鉄骨梁42、他方側鉄骨梁52、及び連結鉄骨梁32によって、平面架構が形成されている。この平面架構は、一対の柱22の対向方向を長手方向とした矩形状に形成されている。
【0058】
なお、連結鉄骨梁32、跳出し鉄骨梁30、及び柱22は、工場やサイトヤード等において予め接合(一体化)されている。
【0059】
ここで、本実施形態における「ピン接合」とは、一の鉄骨梁のウェブ部が、他の鉄骨梁のウェブ部に接合されるとともに、一の鉄骨梁の上側フランジ部及び下側フランジ部が、他の鉄骨梁の上側フランジ部及び下側フランジ部に接合されない構成に限らない。本実施形態における「ピン接合」は、例えば、一の鉄骨梁のウェブ部及び上側フランジ部が、他の鉄骨梁のウェブ部及び上側フランジ部にそれぞれ接合されるとともに、一の鉄骨梁の下側フランジ部が、他の鉄骨梁の下側フランジ部に接合されない構成も含む概念である。
【0060】
したがって、例えば、連結鉄骨梁32の一端部32E1と一方側鉄骨梁50の中間部とをピン接合する場合、
図5に示されるように、連結鉄骨梁32のウェブ部32Cが、一方側鉄骨梁50のウェブ部50Cに接合されるとともに、連結鉄骨梁32の上側フランジ部32A及び下側フランジ部32Bが、一方側鉄骨梁50の上側フランジ部50A及び下側フランジ部50Bに接合されない構成だけでなく、連結鉄骨梁32の上側フランジ部32A及びウェブ部32Cが、一方側鉄骨梁50の上側フランジ部50A及びウェブ部50Cにそれぞれ接合されるとともに、連結鉄骨梁32の下側フランジ部32Bが、一方側鉄骨梁50の下側フランジ部50Bに接合されない構成も含む概念である。
【0061】
(スラブ)
図1に示されるように、スラブ60は、鉄筋コンクリート造とされている。このスラブ60は、複数の架構20に沿って設けられており、構造物10の床を形成している。また、スラブ60は、各架構20の一方側鉄骨梁50と他方側鉄骨梁52とに亘るとともに、その両側の端部60Eが一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52から外側(矢印Y方向の外側)へそれぞれ跳ね出している。このスラブ60の幅方向の中央部は、複数の架構20に支持されている。
【0062】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0063】
先ず、比較例に係る構造物について説明する。
図6には、比較例に係る構造物(高架構造物)100が示されている。この構造物100では、一対の柱22に鉄骨梁(鉄骨大梁)110が架設されている。鉄骨梁110は、ブラケット方式とされており、一対のブラケット120と、鉄骨梁本体130とを有している。
【0064】
各ブラケット120の一端部は、工場等において、柱22の仕口部に剛接合されている。このブラケット120の他端部には、例えば、現場において、鉄骨梁本体130の端部がボルト及びナットによって剛接合される。
【0065】
具体的には、
図7に示されるように、ブラケット120及び鉄骨梁本体130のウェブ部120C,130C同士が、スプライスプレート140を介してボルト142及び図示しないナットによって接合される。
【0066】
また、ブラケット120及び鉄骨梁本体130の上側フランジ部120A,130A同士が、スプライスプレート140を介してボルト142及びナット144によってボルト接合されるとともに、ブラケット120及び鉄骨梁本体130の下側フランジ部120B,130B同士が、スプライスプレート140を介してボルト142及びナット144によって接合される。これにより、鉄骨梁110のたわみ量が低減される。
【0067】
しかしながら、この場合、ブラケット120及び鉄骨梁本体130の接合部を見上げた場合に、ボルト142及びナット144が見えるため、意匠性が低下する可能性がある。
【0068】
この対策として、ブラケット120及び鉄骨梁本体130の下側フランジ部120B,130B同士を溶接接合することが考えられるが、この場合、施工性が低下する可能性がある。また、例えば、ブラケット120及び鉄骨梁本体130が、溶融亜鉛メッキ鉄骨で形成されている場合、溶接部のタッチアップ部分が錆び易くなり、汚損する可能性がある。
【0069】
これに対して本実施形態では、
図2に示されるように、互いに対向する一対の柱22には、一対の跳出し鉄骨梁30が設けられている。一対の跳出し鉄骨梁30は、一対の柱22から互いに相手側へ跳ね出すとともに、一対の柱22に端部(基端部)がそれぞれ剛接合されている。この一対の跳出し鉄骨梁30の先端部30Tには、連結鉄骨梁32が設けられている。
【0070】
連結鉄骨梁32は、一方側鉄骨梁50と他方側鉄骨梁52とに架設されている。ここで、
図5に示されるように、連結鉄骨梁32の一端部32E1は、一方側鉄骨梁50の中間部にピン接合されている。そのため、連結鉄骨梁32及び一方側鉄骨梁50の各々の下側フランジ部32B,50B同士を接合するボルトが存在しない。
【0071】
これと同様に、連結鉄骨梁32の他端部32E2は、他方側鉄骨梁52の中間部にピン接合されている。そのため、連結鉄骨梁32及び他方側鉄骨梁52の各々の下側フランジ部32B,52B同士を接合するボルトが存在しない。
【0072】
また、第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部と一方側鉄骨梁50の端部50Eとは、ピン接合されている。そのため、第一直交跳出し鉄骨梁40及び一方側鉄骨梁50の各々の下側フランジ部同士を接合するボルトが存在しない。
【0073】
これと同様に、第二直交跳出し鉄骨梁42の先端部と他方側鉄骨梁52の端部52Eとは、ピン接合されている。そのため、第二直交跳出し鉄骨梁42及び他方側鉄骨梁52の各々の下側フランジ部同士を接合するボルトが存在しない。
【0074】
したがって、本実施形態では、一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52を見上げた場合の意匠性が向上する。
【0075】
また、本実施形態では、連結鉄骨梁32及び一方側鉄骨梁50の下側フランジ部32B,50B同士、及び連結鉄骨梁32及び他方側鉄骨梁52の下側フランジ部32B,52B同士を溶接接合する場合と比較して、施工性の低下が抑制されるとともに、錆びによる汚損が抑制される。
【0076】
これと同様に、本実施形態では、第一直交跳出し鉄骨梁40及び一方側鉄骨梁50の下側フランジ部同士、及び第二直交跳出し鉄骨梁42及び他方側鉄骨梁52の下側フランジ部同士を溶接接合する場合と比較して、施工性の低下が抑制されるとともに、錆びによる汚損が抑制される。
【0077】
さらに、一方側鉄骨梁50の端部50E側は、第一直交跳出し鉄骨梁40及び連結鉄骨梁32の2点によって支持されている。これにより、柱22と一方側鉄骨梁50との間で曲げモーメントが伝達される。したがって、一方側鉄骨梁50のたわみ量が低減される。
【0078】
これと同様に、他方側鉄骨梁52の端部52E側は、第二直交跳出し鉄骨梁42及び連結鉄骨梁32の2点によって支持されている。これにより、柱22と他方側鉄骨梁52との間で曲げモーメントが伝達される。したがって、他方側鉄骨梁52のたわみ量が低減される。
【0079】
このように本実施形態では、見上げた場合の意匠性の低下、及び施工性の低下を抑制しつつ、一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52のたわみ量を低減することができる。
【0080】
また、スラブ60は、一方側鉄骨梁50と他方側鉄骨梁52とに亘っている。このスラブ60の両側の端部60Eは、一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52から外側へそれぞれ跳ね出している。このスラブ60によって、例えば、幅が広い通路等を確保することができる。
【0081】
また、前述したように、一方側鉄骨梁50の端部50E側を、第一直交跳出し鉄骨梁40の先端部及び連結鉄骨梁32の一端部32E1の2点によって支持することにより、スラブ60の重量による一方側鉄骨梁50のねじれ変形が抑制される。
【0082】
これと同様に、他方側鉄骨梁52の端部52E側を、第二直交跳出し鉄骨梁42の先端部及び連結鉄骨梁32の他端部32E2の2点によって支持することにより、スラブ60の荷重による他方側鉄骨梁52のねじれ変形が抑制される。したがって、スラブ60が安定する。
【0083】
さらに、本実施形態では、複数の架構20を所定方向に一列で配列することにより、すなわち3本以上の柱22を所定方向に一列で配列することにより、所定長さの高架構造物(高架通路)等を容易に形成することができる。
【0084】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0085】
上記実施形態では、一方側鉄骨梁50が、一対の第一直交跳出し鉄骨梁110の先端部に架設されている。しかし、一方側鉄骨梁50が、一対の第一直交跳出し鉄骨梁110の先端部に限らず、一対の第一直交跳出し鉄骨梁110の跳出し方向の中間部に架設されても良い。これと同様に、他方側鉄骨梁52は、一対の第二直交跳出し鉄骨梁42の跳出し方向の中間部に架設されても良い。
【0086】
また、上記実施形態では、スラブ60の両側の端部60Eが、一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52から外側へそれぞれ跳ね出している。しかし、スラブ60の両側の端部60Eは、一方側鉄骨梁50及び他方側鉄骨梁52から外側へ跳ね出していなくても良い。
【0087】
また、上記実施形態では、複数の架構20が一列で配列されている。しかし、架構20は、少なくとも1つあれば良い。また、上記実施形態は、高架構造物に限らず、他の構造物にも適宜適用可能である。
【0088】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0089】
10 構造物
22 柱
30 跳出し鉄骨梁
30T 跳出し鉄骨梁の跳出し方向の先端部
32 連結鉄骨梁
32E1 連結鉄骨梁の一端部
32E2 連結鉄骨梁の他端部
40 第一直交跳出し鉄骨梁
42 第二直交跳出し鉄骨梁
50 一方側鉄骨梁
50E 一方側鉄骨梁の端部
52 他方側鉄骨梁
52E 他方側鉄骨梁の端部
60 スラブ
60E スラブの両側の端部