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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085095
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】画像表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199592
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 文彦
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA03
3K339BA07
3K339BA09
3K339BA22
3K339BA23
3K339BA25
3K339CA30
3K339DA01
3K339EA02
3K339EA05
3K339EA06
3K339EA10
3K339GB01
3K339GB11
3K339GB21
3K339KA01
3K339KA06
3K339KA39
3K339MA01
3K339MA04
3K339MA05
3K339MA07
3K339MB04
3K339MC02
3K339MC03
3K339MC12
3K339MC13
3K339MC17
3K339MC22
3K339MC43
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC82
3K339MC85
3K339MC86
3K339MC90
3K339MC93
(57)【要約】
【課題】対象車両の後方を走行する他車両が、対象車両を追い越す際の安全性をより向上できる路面への画像表示システムを提供する。
【解決手段】画像表示システム10は、対象車両30に搭載され、前記対象車両30の周辺の路面に画像を投影するプロジェクタ12と、前記対象車両30の後方を走行する他車両40が前記対象車両30の追い越し動作を開始した場合に、前記プロジェクタ12に、前記他車両40の進入が禁止された進入不可範囲を示す画像および前記他車両40が前記追い越し動作時に通行すべき通行範囲を示す画像の少なくとも一方を含むサポート画像62を前記対象車両30の周辺の路面に投影させる画像コントローラ20と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両に搭載され、前記対象車両の周辺の路面に画像を投影するプロジェクタと、
前記対象車両の後方を走行する他車両が前記対象車両の追い越し動作を開始した場合に、前記プロジェクタに、前記他車両の進入が禁止された進入不可範囲を示す画像および前記他車両が前記追い越し動作時に通行すべき通行範囲を示す画像の少なくとも一方を含むサポート画像を前記対象車両の周辺の路面に投影させる画像コントローラと、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示システムであって、さらに、
前記対象車両の後方の状態を検知する後方センサを備え、
前記画像コントローラは、前記後方センサでの検知結果に基づいて後方を走行する前記他車両と前記対象車両との相対速度を求め、少なくとも前記相対速度に基づいて、前記追い越し動作の開始を判断する、
ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示システムであって、
前記画像コントローラは、前記後方センサでの検知結果に基づいて、後方を走行する前記他車両の操舵状況およびターンシグナルの点灯状況の少なくとも一つを特定し、前記操舵状況および前記点灯状況の少なくとも一つと、前記相対速度と、に基づいて、前記追い越し動作の開始を判断する、ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像表示システムであって、
前記画像コントローラは、少なくとも前記後方センサの検知結果に基づいて、前記サポート画像の投影の終了を判断する、ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記画像コントローラは、少なくとも前記追い越し動作を開始してからの経過時間に基づいて、前記サポート画像の投影の終了を判断する、ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記対象車両の前方の状態を検知する前方センサを備え、
前記画像コントローラは、少なくとも前記前方センサの検知結果に基づいて、前記サポート画像の投影の終了を判断する、ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、
前記画像コントローラは、前記対象車両の操舵に応じて、前記サポート画像のサイズおよび投影位置の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする画像表示システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像表示システムであって、さらに、
前記対象車両の車幅方向の加速度を検知する加速度センサを備え、
前記画像コントローラは、前記加速度センサの検知結果に応じて、前記サポート画像のサイズおよび投影位置の少なくとも一方を変更する、
ことを特徴とする画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両の周辺の路面に画像を投影して表示する画像表示システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載されたプロジェクタを用いて、当該車両の周囲の路面に画像を投影する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ターンシグナルランプのオン時に、車両の進行方向の路面にマーカの描画を行う車両用描画装置が開示されている。かかる技術によれば、車線変更や右左折時に、他車両の運転者や歩行者に対して車両の進行方向を明確に伝達することができるので、安全性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-193689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、プロジェクタが搭載された車両(以下「対象車両」という)そのものが、特定のアクション(この場合はターンシグナルランプの点灯)を実行したときにしか、画像の路面投影が行われない。そのため、特許文献1の技術では、対象車両の後方を走行する他車両が、対象車両を追い越す場合には、路面投影が行われない。換言すれば、従来技術では、路面投影技術を、他車両が対象車両を追い越す際の安全性向上に利用できていなかった。
【0005】
そこで、本明細書では、対象車両の後方を走行する他車両が、対象車両を追い越す際の安全性をより向上できる画像表示システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する画像表示システムは、対象車両に搭載され、前記対象車両の周辺の路面に画像を投影するプロジェクタと、前記対象車両の後方を走行する他車両が前記対象車両の追い越し動作を開始した場合に、前記プロジェクタに、前記他車両の進入が禁止された進入不可範囲を示す画像および前記他車両が前記追い越し動作時に通行すべき通行範囲を示す画像の少なくとも一方を含むサポート画像を前記対象車両の周辺の路面に投影させる画像コントローラと、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成とすることで、追い越し動作を行う際に、他車両が進入できない範囲、あるいは、他車両が通行すべき範囲を、当該他車両の運転手が容易に認識できるため、追い越し動作の安全性を向上できる。
【0008】
この場合、さらに、前記対象車両の後方の状態を検知する後方センサを備え、前記画像コントローラは、前記後方センサでの検知結果に基づいて後方を走行する前記他車両と前記対象車両との相対速度を求め、少なくとも前記相対速度に基づいて、前記追い越し動作の開始を判断してもよい。
【0009】
かかる構成とすることで、追い越し動作の開始を正確に判断できる。また、通常、多くの車両は、当該車両の後方の状態を検知するセンサを搭載している。かかるセンサを、上記後方センサとして流用することで、新たなセンサを追加することなく、追い越し動作の開始を判断できる。
【0010】
この場合、前記画像コントローラは、前記後方センサでの検知結果に基づいて、後方を走行する前記他車両の操舵状況およびターンシグナルの点灯状況の少なくとも一つを特定し、前記操舵状況および前記点灯状況の少なくとも一つと、前記相対速度と、に基づいて、前記追い越し動作の開始を判断してもよい。
【0011】
かかる構成とすることで、追い越し動作の開始をより正確に判断できる。
【0012】
また、前記画像コントローラは、少なくとも前記後方センサの検知結果に基づいて、前記サポート画像の投影を終了してもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、サポート画像が、不必要に長時間、投影されることを防止できる。そして、これにより、消費電力を抑制できる。また、適当なタイミングで、サポート画像の投影を終了することで、追い越し動作に無関係な他の車両や歩行者がサポート画像をみて混乱することを防止できる。
【0014】
また、前記画像コントローラは、少なくとも前記追い越し動作を開始してからの経過時間に基づいて、前記サポート画像の投影を終了してもよい。
【0015】
かかる構成とすることで、簡易な構成で、サポート画像の投影の終了タイミングを決定できる。また、かかる構成とすることで、サポート画像が、不必要に長時間、投影されることを防止できる。そして、これにより、消費電力を抑制できる。また、適当なタイミングで、サポート画像の投影を終了することで、追い越し動作に無関係な他の車両や歩行者がサポート画像をみて混乱することを防止できる。
【0016】
また、前記対象車両の前方の状態を検知する前方センサを備え、前記画像コントローラは、少なくとも前記前方センサの検知結果に基づいて、前記サポート画像の投影を終了してもよい。
【0017】
かかる構成とすることで、他車両が、対象車両の前方に到達したタイミング、換言すれば、追い越し動作が確実に完了したタイミングで、サポート画像の投影を終了できる。また、かかる構成とすることで、サポート画像が、不必要に長時間、投影されることを防止できる。そして、これにより、消費電力を抑制できる。また、適当なタイミングで、サポート画像の投影を終了することで、追い越し動作に無関係な他の車両や歩行者がサポート画像をみて混乱することを防止できる。
【0018】
また、前記画像コントローラは、前記対象車両の操舵に応じて、前記サポート画像のサイズおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、対象車両の動きを、他車両の運転手に伝えることができるため、他車両は、追い越し動作を、より安全に行うことができる。
【0020】
また、さらに、前記対象車両の車幅方向の加速度を検知する加速度センサを備え、前記画像コントローラは、前記加速度センサの検知結果に応じて、前記サポート画像のサイズおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。
【0021】
かかる構成とすることで、対象車両の動き、特に、対象車両の運転手が意図しない動き(例えば強風や路面の凹凸等に起因して生じる対象車両の動き等)を、他車両の運転手に伝えることができるため、他車両は、追い越し動作を、より安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本明細書で開示する画像表示システムによれば、対象車両の後方を走行する他車両が、対象車両を追い越す際の安全性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】画像表示システムの構成を示すブロック図である。
図2】走行中の対象車両を示すイメージ図である。
図3】サポート画像を描画した様子を示すイメージ図である。
図4】サポート画像の他の一例を示すイメージ図である。
図5】サポート画像の他の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して画像表示システム10の構成を説明する。図1は、画像表示システム10の構成を示すブロック図である。この画像表示システム10は、対象車両に搭載され、対象車両の周囲の路面に画像を投影する。
【0025】
画像表示システム10は、図1に示すように、プロジェクタ12と、後方センサ14と、前方センサ16と、舵角センサ17と、加速度センサ18と、画像コントローラ20と、を有する。プロジェクタ12は、対象車両の周辺の路面に画像を投影する。プロジェクタ12は、1以上の光源を有し、像を構成する光を路面に照射できるものであれば、その構成は限定されない。したがって、プロジェクタ12は、LED等からの光を用いて画像を投影する、LCD方式、DLP方式、または、LCOS方式の液晶プロジェクタでもよい。また、プロジェクタ12は、通常のヘッドランプのような光源からの光を、レンズを用いて投影するものでもよい。また、本例において、プロジェクタ12は、路面に描画する画像の内容や位置、サイズを変更する機能を有している。
【0026】
後方センサ14は、対象車両の後方の状態を検知するセンサである。より具体的には、後方センサ14は、対象車両の後方に設定された所定の後方検知エリアの状態を検知する。後方センサ14は、この後方検知エリアにおける他車両の有無と、後方検知エリアにある他車両との距離と、を検知できる。また、後方センサ14は、さらに、他車両の位置、他車両のターンシグナルランプの点灯状況の少なくとも一つを検知できてもよい。かかる後方センサ14は、例えば、対象車両の複数個所に離れて設置された複数のセンサを有してもよい。例えば、後方センサ14は、カメラ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ、超音波センサ、LiDARの少なくとも一つを有してもよい。
【0027】
前方センサ16は、対象車両の前方に設定された所定の前方検知エリアの状態を検知する。前方センサ16は、前方検知エリアにおける他車両の有無、他車両との距離、他車両の位置、他車両のターンシグナルランプの点灯状況等を検知する。かかる前方センサ16は、例えば、対象車両の複数個所に離れて設置された複数のセンサを有してもよい。例えば、前方センサ16は、カメラ、ミリ波レーダ、準ミリ波レーダ、超音波センサ、LiDARの少なくとも一つを有してもよい。
【0028】
舵角センサ17は、対象車両の操舵を検知する。かかる舵角センサ17は、例えば、対象車両のステアリングシャフトに取り付けられ、当該ステアリングシャフトの回転方向および回転角度を検知する。舵角センサ17は、例えば、光学式または磁気式のロータリエンコーダである。
【0029】
加速度センサ18は、対象車両の直交三軸方向、すなわち、車両前後方向軸、車両上下方向軸、および、車幅方向軸の加速度を検知する。検知結果は、画像コントローラ20に送信される。画像コントローラ20は、検知された加速度を積分することで、対象車両の速度を算出し、加速度を二階積分することで、対象車両の変位を算出する。なお、通常、車両には、運転支援(例えば自動ブレーキ機能やレーンキープアシスト機能等)や走行制御のために、カメラや、ミリ波レーダ等のセンサが搭載されている。こうした既存のセンサを、上述したセンサ14、16,17,18として流用してもよい。また、既存のセンサとは別に、画像表示システム10のために、専用のセンサを車両に追加設置してもよい。
【0030】
画像コントローラ20は、プロジェクタ12の動作を制御して、路面に画像を投影させる。より具体的には、画像コントローラ20は、後方センサ14の検知結果に基づいて、対象車両の後方を走行する他車両が追い越し動作を開始したか否かを判断する。他車両が追い越し動作を開始したと判断した場合、画像コントローラ20は、後述するサポート画像62の路面への投影をプロジェクタ12に指示するが、これについては、後述する。
【0031】
画像コントローラ20は、物理的には、プロセッサ22とメモリ24とを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ22とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0032】
メモリ24は、コンピュータが処理すべきデジタルデータを保持する装置を意味する。このメモリ24は、メモリバスを介してプロセッサ22に接続されたメインメモリ、および、入出力チャネルを介してプロセッサ22がアクセスする二次記憶装置の少なくとも一つを含む。かかるメモリ24は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。本例のメモリ24には、後方センサ14の検知結果に応じて他車両の追い越し動作の有無を検知し、その検知結果に応じて、プロジェクタ12に所定の画像を路面に投影させるためのプログラムが、予め、インストールされている。
【0033】
こうした画像コントローラ20は、単一のコンピュータでもよいし、機械的に離間した複数のコンピュータで構成されてもよい。また、画像コントローラ20は、画像表示システム10のために専用に設けられてもよい。また、対象車両の駆動制御等のために対象車両に予め搭載されている既存のコンピュータを画像コントローラ20として用いてもよい。また、画像コントローラ20の処理の一部は、対象車両の外部に設けられた他のコンピュータで実行されてもよい。
【0034】
次に、こうした画像表示システム10による画像表示処理について説明する。図2は、走行中の対象車両30を示すイメージ図である。また、図3は、サポート画像62を描画した様子を示すイメージ図である。
【0035】
図2図3において、対象車両30は、左側通行の交通ルールに従い、片側一車線の道路を走行している。したがって、対象車両30の走行車線50の右端にはセンターライン58が存在し、左端には車道外側線60が存在する。また、センターライン58の右側には対向車線56が存在し、車道外側線60と歩道54との間には、路肩52が存在する。
【0036】
上述した通り、対象車両30には、後方センサ14および前方センサ16が設けられている。図示例では、後方センサ14は、対象車両30の後端近傍に設けられた三つのセンサを有し、この三つのセンサの検知範囲が、後方検知エリア32となる。同様に、前方センサ16は、対象車両30の前端近傍に設けられた三つのセンサを有し、この三つのセンサの検知範囲が、前方検知エリア34となる。
【0037】
画像コントローラ20は、対象車両30の後方を走行する他車両40が、対象車両30の追い越し動作を開始したか否かを監視する。ここで、「追い越し」とは、進路変更をして前走車の前に出る行為を意味する。この「追い越し」は、二輪車が、車線を変更することなく四輪車の側方を通って四輪車の前方に出る「すり抜け」も含む。一方で、「追い越し」は、片側複数車線の道路で、一つの車線を走行する車両を、隣接する車線(例えば追い越し車線等)を走行する他の車両が、車線変更しないまま追い抜く「追い抜き」は含まない。
【0038】
画像コントローラ20は、例えば、対象車両30に対する他車両40の相対速度に基づいて、追い越し動作の開始を判断してもよい。例えば、画像コントローラ20は、相対速度が、規定の基準速度より大きい場合、追い越し動作が開始されたと判断してもよい。この場合、基準速度は、常に一定の固定値でもよい。また、基準速度は、対象車両30と他車両40との車間距離や、対象車両30の車速、他車両40の種類(すなわち四輪車か二輪車か)、渋滞状況、走行車線50の制限速度、後述する他車両40の挙動等に応じて変動する可変値でもよい。例えば、他車両40が対象車両30に十分に接近し、車間距離が小さくなったにも関わらず、相対速度が大きい場合、他車両40が追い越しを実行する可能性は高い。そこで、車間距離が小さいほど、基準速度を小さくしてもよい。また、追い越しをN秒で完了させたい場合、対象車両30の速度をVt、係数をAとした場合、追い越しに必要な相対速度Vrは、理論上、Vr=√(Vt×A/N)となる。つまり、対象車両30の速度Vtが高いほど、N秒で追い越すために必要な相対速度Vrも高くなる。そこで、追い越しを開始したと判断する基準速度は、対象車両30の速度Vtが高いほど、高くしてもよい。また、追い越す車両(図4における他車両40)が四輪車の場合、追い越す車両が二輪車である場合に比べて、隣接する車線にはみ出しやすくなる。そのため、一般的に、四輪車は、二輪車よりも、迅速に追い越し動作を完了させる必要性が高く、追い越しに必要な相対速度は大きいといえる。そこで、他車両40が、四輪車の場合、二輪車の場合に比べて、基準速度を大きくしてもよい。
【0039】
なお、相対速度は、後方センサ14の検知結果から特定してもよい。例えば、後方センサ14が、車間距離を検知するミリ波レーダまたは準ミリ波レーダを有する場合、画像コントローラ20は、ミリ波レーダ等で検知された車間距離の変化から相対速度を特定してもよい。また、後方センサ14が、対象車両30の後方を撮像するカメラを有する場合、画像コントローラ20は、得られた画像を解析することで、車間距離、ひいては、相対速度を特定してもよい。
【0040】
また、画像コントローラ20は、相対速度に加えて、さらに、他車両40の挙動に基づいて、追い越し動作の開始を判断してもよい。例えば、画像コントローラ20は、相対速度が追い越し可能な速度、かつ、他車両40が側方に移動した場合、追い越し動作を開始したと判断してもよい。こうした他車両40の側方への移動は、例えば、ミリ波レーダ等で検知された他車両40の位置の変化や、カメラで撮像された画像を解析することで検知してもよい。また、画像コントローラ20は、相対速度が追い越し可能な速度、かつ、他車両40がターンシグナルランプを点灯した場合、追い越し動作を開始したと判断してもよい。こうしたターンシグナルランプの点灯は、カメラで撮像された画像を解析することで検知してもよい。このように、相対速度に加えて、さらに、他車両40の挙動も考慮することで、追い越し動作の開始をより正確に判断できる。
【0041】
図3において、画像コントローラ20は、他車両40が、追い越し動作を開始したと判断した場合、プロジェクタ12に対して、サポート画像62の路面への投影を指示する。サポート画像62は、他車両40による対象車両30の追い越し動作をサポートする画像である。本例の場合、サポート画像62は、追い越し動作の際、他車両40の進入を禁止する進入不可範囲を示す画像である。すなわち、追い越しを安全に行う場合、他車両40は、対象車両30と干渉しないように、対象車両30に対して一定の間隔を開けて走行する必要がある。換言すれば、安全な追い越しのためには、対象車両30の周囲の一定範囲は、他車両40の進入が禁止された進入不可範囲とすべきである。サポート画像62は、こうした進入不可範囲を示す。
【0042】
図3の例では、サポート画像62は、進入不可範囲の境界を示すラインと、進入不可であることを示すバツ印と、を組み合わせた形状である。また、図3の例では、サポート画像62は、対象車両30の側方にのみ表示される。かかるサポート画像62は、対象車両30の左右一方にのみ投影されてもよいし、左右両側に投影されてもよい。例えば、他車両40が、追い越しのために、対象車両30の右側を通ることが予想される場合には、サポート画像62を、対象車両30の右側方の路面にのみ投影してもよい。いずれにしても、他車両40が、サポート画像62で示された進入不可範囲を避けて走行することで、他車両40は、対象車両30と干渉することなく、追い越し動作を安全に実行できる。
【0043】
画像コントローラ20は、サポート画像62の投影開始後、他車両40が後方センサ14で検知できなくなったタイミング、すなわち、他車両40が後方検知エリア32の外側に移動したタイミングで、サポート画像62の投影を終了してもよい。また、別の形態として、画像コントローラ20は、サポート画像62の投影開始後、他車両40が前方センサ16で検知できたタイミング、すなわち、他車両40が前方検知エリア34内に移動したタイミングで、サポート画像62の投影を終了してもよい。また、別の形態として、画像コントローラ20は、サポート画像62の投影開始後、規定の追い越し時間が経過したタイミングで、サポート画像62の投影を終了してもよい。この場合、追い越し時間は、他車両40が対象車両30の追い越しを終了したとみなせる時間である。かかる追い越し時間は、固定値でもよいし、相対速度等に応じて変化する可変値としてもよい。また、画像コントローラ20は、上述した技術を組み合わせてもよく、例えば、追い越し時間が経過したタイミング、および、前方センサ16で他車両40を検知できたタイミングのうち、いずれか早いタイミングで、サポート画像62の投影を終了してもよい。また、当然ながら、上記以外の条件に従って、サポート画像62の投影終了タイミングを決定してもよい。
【0044】
次に、サポート画像62について詳説する。上述した通り、本例のサポート画像62は、追い越し動作を行う他車両40の進入が禁止された進入不可範囲を示す画像である。かかるサポート画像62の形態(すなわち、サイズ、投影位置、形状、輝度、色彩等)は、常に一定でもよいし、対象車両30の挙動に応じて変更されてもよい。
【0045】
例えば、対象車両30は、路面の凹凸や、風の影響を受けて、ステアリング操作とは無関係に、車幅方向に動くことがある。また、対象車両30の運転手が何らかの理由で、ステアリング操作を行い、対象車両30が車幅方向に動く場合もある。こうした対象車両30の車幅方向への動きを、他車両40に通知できれば、他車両40が追い越し動作をより安全に実行できる。
【0046】
そこで、画像コントローラ20は、対象車両30の動きに応じて、サポート画像62のサイズおよび投影位置の少なくとも一つを変更してもよい。具体的には、画像コントローラ20は、舵角センサ17および加速度センサ18の検知結果に基づいて、サポート画像62の幅Wを変更してもよい。
【0047】
例えば、対象車両30の運転手が、ステアリングを左右いずれかに操作した場合、対象車両30は、操舵方向に動く。この場合、追い越し動作を安全に行うためには、操舵方向における進入禁止範囲を広く確保することが求められる。そこで、画像コントローラ20は、舵角センサ17により左右いずれかへの操舵が検知された場合、操舵方向のサポート画像62の幅Wを舵角量に応じて大きくする、あるいは、サポート画像62の投影位置を操舵方向にズラしてもよい。したがって、ステアリングが、例えば、右側に操作された場合、対象車両30の右側のサポート画像62の幅Wを、左側のサポート画像62の幅に比べて大きくしてもよい。
【0048】
また、運転手がステアリングを操作していない場合でも、路面の凹凸や風等に起因して、対象車両30が車幅方向に動く場合がある。こうした動きを加速度センサ18で検知し、サポート画像62に反映してもよい。したがって、例えば、画像コントローラ20は、加速度センサ18で、車幅方向の加速度が検知された場合、その加速度の向きおよび大きさに応じて、サポート画像62の幅Wおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。例えば、加速度センサ18で検知された加速度に基づいて、対象車両30が車幅方向にふらついていると判断できる場合、画像コントローラ20は、そのふらつきの振幅に応じて、サポート画像62の幅Wを大きくしてもよいし、サポート画像62の投影位置を対象車両30から離れる方向にずらしてもよい。また、加速度に基づいて、対象車両30が左右いずれか一方に動いていると判断できる場合、画像コントローラ20は、その移動方向のサポート画像62の幅Wを、検知された加速度に応じて大きくしてもよいし、移動方向のサポート画像62の投影位置を、検知された加速度に応じて移動方向にずらしてもよい。
【0049】
また、画像コントローラ20は、さらに、別の条件に応じて、サポート画像62のサイズおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。例えば、追い越しの際に、対象車両30と他車両40との間で確保すべき間隔は、天候、車速、道路幅等によっても異なる。したがって、サポート画像62の幅Wおよび投影位置は、天候、車速、道路幅も考慮して変更してもよい。例えば、降雨や降雪、強風、路面凍結の際には、サポート画像62の幅Wを大きくしてもよい。降雨や降雪は、オートワイパ機能のために車両に搭載されている雨滴センサで検知してもよい。また、路面凍結は、温度センサでの検知結果から推定してもよい。また、こうしたセンサでの検知結果に加えて、または、替えて、画像コントローラ20は、インターネット通信等で取得した気象情報に基づいて、降雨、降雪、強風、路面凍結等の状況を推定してもよい。
【0050】
また、対象車両30の車速、または、対象車両30に対する他車両40の相対速度に応じて、サポート画像62の幅Wおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。例えば、相対速度が大きいほど、サポート画像62の幅Wを大きくしてもよい。さらに、道路幅に応じて、サポート画像62の幅Wおよび投影位置の少なくとも一方を変更してもよい。例えば、走行車線50そのものの幅が大きい場合、あるいは、走行車線50に隣接して追い越し車線が存在する場合には、サポート画像62の幅Wを大きくしてもよい。道路幅は、例えば、ナビゲーション装置に記録されている地図情報から特定してもよいし、カメラで撮像された画像を解析して特定してもよい。
【0051】
また、こうしたサポート画像62のサイズおよび投影位置は、対向車線56および歩道54(「路側帯」を含む)に、はみ出さないように設定されてもよい。かかる構成とするためには、画像コントローラ20は、対象車両30に搭載されたカメラで撮像された画像を解析して、対向車線56および歩道54それぞれの、対象車両30に対する相対位置を特定してもよい。
【0052】
また、サポート画像62そのものの構成も、適宜、変更されてもよい。例えば、追い越しの際、他車両40は、対象車両30の後隅および前隅に干渉することが多い。そこで、こうした干渉を防止するために、サポート画像62を、対象車両30の全長より長くし、サポート画像62の前後方向端部が、対象車両30の前後方向端部より、前後方向外側に位置するようにしてもよい。すなわち、サポート画像62を、図4において符号62aで示す形状としてもよい。
【0053】
また、さらに、サポート画像62は、図5に示すように、対象車両30の側方に限らず、対象車両30の前方および後方にも投影されてもよい。サポート画像62を、対象車両30の前方にも投影した場合、対象車両30の運転手が、当該サポート画像62を視認しやすくなる。そして、サポート画像62を視認することで、対象車両30の運転手は、当該対象車両30を追い越そうとする他車両40の存在に気づきやすくなるため、追い越し動作の安全性が向上する。
【0054】
また、図3の例では、サポート画像62を、矩形とバツ印とを組み合わせた形状としているが、サポート画像62は、他車両40の運転手が、サポート画像62の示す意味を理解できる形状であれば、他の形状に変更されてもよい。したがって、サポート画像62は、図4において、符号62aで示すように、進入不可範囲の境界を示すラインと、進入禁止を示す道路標識と、を組み合わせた形状としてもよい。
【0055】
また、これまでの説明では、サポート画像62を、他車両40の進入不可範囲を示す画像としているが、サポート画像62は、追い越し時に、他車両40が通行すべき通行範囲を示す画像としてもよい。図4の符号62bは、通行範囲を示すサポート画像の一例である。図4から明らかな通り、通行範囲を示すサポート画像62bは、進入不可範囲より外側の路面に投影される。また、この場合、サポート画像62bは、他車両40の通行を促すような形状、例えば、進行方向を示す矢印を含む形状としてもよい。また、サポート画像62bは、ストライプまたは格子を含む形状としてもよい。かかる形状とした場合、他車両40の運転手は、ストライプまたは格子を構成する線の歪みから、路面の凹凸を容易に把握できる。その結果、他車両40の運転手は、当該凹凸を考慮した運転操作を行うため、追い越し動作をより安全に行うことができる。また、画像コントローラ20は、進入不可範囲を示すサポート画像62a、および、通行範囲を示すサポート画像62bの、いずれか一方のみを路面投影してもよいし、両方を同時に路面投影してもよい。
【0056】
また、画像コントローラ20は、サポート画像62の輝度を、対象車両30周辺の明度に応じて変更してもよい。例えば、昼間の屋外のような明るい環境下では、夜間やトンネル等の暗い環境下よりも、サポート画像62の輝度を高くしてもよい。明度は、オートライト機能のために設けられた輝度センサの検知結果から特定してもよいし、夜間点灯が義務付けられているヘッドライト等の灯火の点灯状況から特定してもよい。また、サポート画像62の色彩を、路面の色彩に応じて変更してもよい。例えば、道路の中には、滑り止めを兼ねて赤色に塗装されている道路がある。かかる道路の場合、赤色塗装されていない、通常のアスファルト舗装道路に比べて、サポート画像62の色彩を、赤色成分が少ない色彩に変更してもよい。なお、路面の色彩は、カメラで撮像した画像を解析して特定してもよい。また、サポート画像62は、時間の経過ととともに変化する動画でもよい。例えば、図4のサポート画像62bは、当該サポート画像62bに含まれる矢印の位置、色、および大きさの少なくとも一つが時間の経過とともに変化する、動画としてもよい。
【0057】
以上の説明で明らかな通り、本明細書で開示する画像表示システム10は、他車両40が追い越し動作を開始した場合に、進入不可範囲および/または通行範囲を示すサポート画像62を路面に投影する。その結果、対象車両30と他車両40との干渉が効果的に防止でき、他車両40の追い越し動作の安全性をより向上できる。なお、上述した構成は、いずれも一例であり、他車両40が追い越し動作を開始した場合に、サポート画像62を路面に投影するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、対象車両30および他車両40の車両種類は、特定されない。したがって、対象車両30および他車両40は、二輪車でもよいし、四輪車でもよいし、さらに別の形態の車両でもよい。また、画像表示システム10は、上述したサポート画像62に加え、他の種類の画像も、路面に投影してもよい。例えば、画像表示システム10は、対象車両30が右左折する際に、その進行方向を示す画像を路面に投影してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 画像表示システム、12 プロジェクタ、14 後方センサ、16 前方センサ、17 舵角センサ、18 加速度センサ、20 画像コントローラ、22 プロセッサ、24 メモリ、30 対象車両、32 後方検知エリア、34 前方検知エリア、40 他車両、50 走行車線、52 路肩、54 歩道、56 対向車線、58 センターライン、60 車道外側線、62 サポート画像。
図1
図2
図3
図4
図5