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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085097
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電子レンジ用包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20230613BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230613BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230613BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B32B15/085 A
B32B7/023
B32B27/00 H
B32B27/00 M
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199594
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】深堀 厚
(72)【発明者】
【氏名】三浦 崇
(72)【発明者】
【氏名】東海林 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵喜
(72)【発明者】
【氏名】前田 理行
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB21
3E086BB61
3E086BB90
4F100AB21
4F100AB21B
4F100AB40B
4F100AK01E
4F100AK07
4F100AK42
4F100AK51
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA13D
4F100EH66
4F100EH66B
4F100GB15
4F100HB31
4F100HB31D
4F100HB31E
4F100JL10
4F100JL10D
4F100JL12
4F100JL12C
4F100JN01
4F100JN01B
4F100JN01D
4F100JN02
4F100JN02B
4F100JN02E
4F100JN21
4F100JN21B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】加熱殺菌処理後においても光沢度の高い金属光沢による装飾を維持することができ、しかも、電子レンジで加熱した際に火花が生じることがない電子レンジ用包装材の提供。
【解決手段】本発明の電子レンジ用包装材1は、基材フィルム10およびシーラントフィルム11を有する積層フィルムよりなり、前記シーラントフィルムと基材フィルムとの間には、錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜15を有し、前記金属蒸着膜の全光線透過率が、加熱殺菌処理後に28.0%以上76.0%以下であり、前記金属蒸着膜による光沢が、前記基材フィルムを介して視認されることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムおよびシーラントフィルムを有する積層フィルムよりなり、
前記シーラントフィルムと前記基材フィルムとの間には、錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜を有し、
前記金属蒸着膜の全光線透過率が、加熱殺菌処理後に28.0%以上76.0%以下であり、
前記金属蒸着膜による光沢が、前記基材フィルムを介して視認されることを特徴とする電子レンジ用包装材。
【請求項2】
加熱殺菌処理後の前記金属蒸着膜の波長330nm~340nmの光線透過率が、34.0%以上60.1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項3】
基材フィルムおよびシーラントフィルムを有する積層フィルムよりなり、
前記シーラントフィルムと前記基材フィルムとの間には、錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜を有し、
前記金属蒸着膜の全光線透過率が、7.7%以上22.8%以下であり、
前記金属蒸着膜による光沢が、前記基材フィルムを介して視認されることを特徴とする電子レンジ用包装材。
【請求項4】
前記金属蒸着膜の波長330nm~340nmの光線透過率が、10.5%以上27.1%以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項5】
前記基材フィルムと前記金属蒸着膜との間には、情報表示印刷層を有し、
前記情報表示印刷層は、透明インキにより形成された透明層部分を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4にいずれかに記載の電子レンジ用包装材。
【請求項6】
前記透明層部分は、透明黄色インキにより形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項7】
前記透明黄色インキに含まれる黄色顔料が、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料であることを特徴とする請求項6に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項8】
前記金属蒸着膜の厚みが10~60nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の電子レンジ用包装材。
【請求項9】
前記基材フィルムと前記シーラントフィルムとの間に中間樹脂層を有し、前記金属蒸着膜は前記中間樹脂層上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の電子レンジ用包装材。
【請求項10】
前記中間樹脂層における前記基材フィルム側の表面に、前記金属蒸着膜が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項11】
前記中間樹脂層は透明性を有し、前記中間樹脂層における前記シーラントフィルム側の表面に、前記金属蒸着膜が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項12】
前記シーラントフィルムと前記金属蒸着膜との間に、不透明印刷層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の電子レンジ用包装材。
【請求項13】
前記中間樹脂層における前記シーラントフィルム側の表面に、不透明印刷層が形成され、前記金属蒸着膜における前記基材フィルム側の表面に、前記情報表示印刷層が形成されており、
前記情報表示印刷層と前記基材フィルムとの間、および前記不透明印刷層と前記シーラントフィルムとの間に、それぞれ接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項10に記載の電子レンジ用包装材。
【請求項14】
前記金属蒸着膜における前記シーラントフィルム側の表面に、不透明印刷層が形成され、前記中間樹脂層における前記基材フィルム側の表面に、前記情報表示印刷層が形成されており、
前記情報表示印刷層と前記基材フィルムとの間、および前記不透明印刷層と前記シーラントフィルムとの間に、それぞれ接着剤層が形成されていることを特徴とする請求項11に記載の電子レンジ用包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢による装飾が施された電子レンジ用包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材においては、被包装物の高級感や豪華さを演出するために、高輝度の金属光沢による装飾が施されることがある。このような装飾手段としては、アルミニウム等の金属蒸着膜を形成することが一般的に行われている。
然るに、電子レンジ用包装材において、アルミニウム等の金属蒸着膜を形成した場合には、電子レンジによって加熱した際に、マイクロ波が照射されることにより、火花が生じるため、電子レンジの故障や火災等の事故を招くおそれがある。このため,アルミニウム等の金属蒸着膜を有する包装材は、実際上に、電子レンジ用包装材として適用することができない。
【0003】
このような問題を解決するために、特定の金属鱗片を含む光沢印刷層を形成することによって、金属光沢を有する装飾が施された電子レンジ用包装材が提案されている(特許文献1参照。)。
しかしながら、このような電子レンジ用包装材においては、光沢印刷層において十分な鏡面反射が得られず、従って、光沢度の高い金属光沢による装飾を施すことが困難である、という問題がある。
【0004】
一方、電子レンジに適正を有すると共に、遮光性およびガスバアリ性を有する包装材として、基材フィルム、透明セラミック蒸着層、透明コート層、情報表示印刷層、白色インキ層、錫よりなる絶縁蒸着層およびシーラント層が順次積層されてなる包装材が提案されている(特許文献2参照。)。この包装材によれば、錫よりなる絶縁蒸着層にマイクロ波が照射されても火花を生じることがなく、従って、電子レンジによって加熱した際には、火花による電子レンジの故障や火災等の事故を防止することができる。
しかしながら、このような包装材においては、基材フィルムと錫よりなる絶縁蒸着層との間に、遮光性を有する白色インキ層が形成されているため、絶縁蒸着層による光沢を装飾として利用することができず、結局、光沢度の高い金属光沢による装飾を施すことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-51992号公報
【特許文献2】特開2003-340965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記のような問題を解決して、電子レンジ用包装材に光輝感を付与する金属光沢による装飾を施す手段として、外面側から視認可能に錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜を形成した電子レンジ用包装材を提案している(特願2021-72986号明細書)。
しかしながら、このような電子レンジ用包装材を用いたパウチに内容物を充填・密封後、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理を施すと、金属蒸着膜が透明化する現象が生じて所望の金属光沢による装飾を維持することができないことがある、という新たな問題を発見した。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、加熱殺菌処理後においても光沢度の高い金属光沢による装飾を維持することができ、しかも、電子レンジで加熱した際に火花が生じることがない電子レンジ用包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子レンジ用包装材は、基材フィルムおよびシーラントフィルムを有する積層フィルムよりなり、
前記シーラントフィルムと前記基材フィルムとの間には、錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜を有し、
前記金属蒸着膜の全光線透過率が、加熱殺菌処理後に28.0%以上76.0%以下であり、
前記金属蒸着膜による光沢が、前記基材フィルムを介して視認されることを特徴とする。
【0009】
本発明の電子レンジ用包装材においては、金属蒸着膜の波長330nm~340nmの光線透過率が、34.0%以上60.1%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の電子レンジ用包装材は、基材フィルムおよびシーラントフィルムを有する積層フィルムよりなり、
前記シーラントフィルムと前記基材フィルムとの間には、錫またはインジウムよりなる金属蒸着膜を有し、
前記金属蒸着膜の全光線透過率が、7.7%以上22.8%以下であり、
前記金属蒸着膜による光沢が、前記基材フィルムを介して視認されることを特徴とする。
【0011】
本発明の電子レンジ用包装材においては、金属蒸着膜の波長330nm~340nmの光線透過率が、10.5%以上27.1%以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の電子レンジ用包装材においては、基材フィルムと前記金属蒸着膜との間には、情報表示印刷層を有し、
前記情報表示印刷層は、透明インキにより形成された透明層部分を有する構成とすることができる。
【0013】
本発明の電子レンジ用包装材においては、前記透明層部分は、透明黄色インキにより形成されていることが好ましい。
また、前記透明黄色インキに含まれる黄色顔料が、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の電子レンジ用包装材においては、前記金属蒸着膜の厚みが10~60nmであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の電子レンジ用包装材においては、前記基材フィルムと前記シーラントフィルムとの間に中間樹脂層を有し、前記金属蒸着膜は前記中間樹脂層上に形成されていることが好ましい。
また、前記中間樹脂層における前記基材フィルム側の表面に、前記金属蒸着膜が形成されていることが好ましい。
また、前記中間樹脂層は透明性を有し、前記中間樹脂層における前記シーラントフィルム側の表面に、前記金属蒸着膜が形成されていることが好ましい。
【0016】
また、前記シーラントフィルムと前記金属蒸着膜との間に、不透明印刷層が形成されていることが好ましい。
また、前記中間樹脂層における前記シーラントフィルム側の表面に、不透明印刷層が形成され、前記金属蒸着膜における前記基材フィルム側の表面に、前記情報表示印刷層が形成されており、
前記情報表示印刷層と前記基材フィルムとの間、および前記不透明印刷層と前記シーラントフィルムとの間に、それぞれ接着剤層が形成されていることが好ましい。
また、前記金属蒸着膜における前記シーラントフィルム側の表面に、不透明印刷層が形成され、前記中間樹脂層における前記基材フィルム側の表面に、前記情報表示印刷層が形成されており、
前記情報表示印刷層と前記基材フィルムとの間、および前記不透明印刷層と前記シーラントフィルムとの間に、それぞれ接着剤層が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シーラントフィルムと基材フィルムとの間に金属蒸着膜が形成されており、この金属蒸着膜による光沢が基材フィルムを介して外表面から視認されるので、光沢度の高い金属光沢による装飾を施すことができる。しかも、加熱殺菌処理後の金属蒸着膜の全光線透過率が76.0%以下であることにより、金属蒸着膜の欠損部の存在度合いが十分に低くなるために欠損部に加熱殺菌処理による蒸気がアタックして金属蒸着膜の透明化が生じることが抑止され、かつ、全光線透過率が28.0%以上であることにより金属蒸着膜に十分な鏡面反射を有する光沢度が得られて所期の金属光沢を発揮することができるので、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理が施されていても、所望の金属光沢による装飾を維持することができる。また、金属蒸着膜は、錫またはインジウムよりなるため、電子レンジで加熱した際に、火花が生じることがなく、従って、電子レンジに適正を有する電子レンジ用包装材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図5】本発明の第5の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図6】本発明の第5の実施形態に係る電子レンジ用包装材の製造工程の一例を示す説明用断面図である。
図7】本発明の第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。
図8】本発明の第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材の製造工程の一例を示す説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電子レンジ用包装材の実施の形態について詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この電子レンジ用包装材1は、基材フィルム10と、シーラントフィルム11とを有する積層フィルムによって構成されている。
【0020】
基材フィルム10とシーラントフィルム11との間には、中間樹脂層16が介挿されており、この中間樹脂層16における基材フィルム10側の表面上に金属の蒸着が施されることによって金属蒸着膜15が一体に形成されており、これにより、金属蒸着膜15が基材フィルム10と中間樹脂層16との間に位置するよう配置されている。また、基材フィルム10と金属蒸着膜15との間には、電子レンジ用包装材1の装飾を構成する情報表示印刷層12が形成されている。この情報表示印刷層12は、透明インキよりなる透明層部分13と、白色、黒色などの無彩色や、有彩色の不透明インキよりなる不透明層部分14とを有する。情報表示印刷層12は、透明インキおよび不透明インキによって基材フィルム10の裏面に印刷されることによって一体に形成されている。
金属蒸着膜15による光沢は、情報表示印刷層12の透明インキによる透明層部分13および基材フィルム10を介して外面側(図1において上側)から視認される。情報表示印刷層12の不透明層部分14に被覆された金属蒸着膜15の領域は、外面側から視認されない。
【0021】
また、情報表示印刷層12と金属蒸着膜15とは、接着剤層17によって一体に接着され、シーラントフィルム11と、中間樹脂層16とは、接着剤層18によって一体に接着されている。
【0022】
基材フィルム10は、通常、包装材の基本素材となるものであることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する合成樹脂により構成されていることが好ましい。基材フィルム10の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、その他等の強靱な樹脂などよりなる樹脂フィルムが挙げられる。これらの中では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(Ny)、などの樹脂フィルムが好ましい。
また、PET/Ny、PET/Ny/PET、PET/Ny/PBT、PET/PBT/PET、PBT/Ny、PBT/Ny/PBTなどの層構成の共押出しフィルムでもよい。
【0023】
また、上記の樹脂フィルムは、未延伸のままで、或いは一軸延伸または二軸延伸を施した後、基材フィルム10として用いることができる。
また、基材フィルム10としては、上記の樹脂よりなるフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層して用いることができる。
また、基材フィルム10の厚みは、基材フィルム10の材質や要求される強度などに応じて異なるが、通常1~70μm、好ましく9~25μmである。
【0024】
シーラントフィルム11としては、内容物に影響を与えず、かつ、熱によって溶融して相互に融着し得る樹脂を用いることができる。シーラントフィルム11を構成する樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0025】
シーラントフィルム11としては、上記の樹脂よりなるフィルムを単層で、或いは、二種以上を積層して用いることができる。
シーラントフィルム11の厚みは、必要な強度が得られれば特に限定されないが、通常20~200μm、好ましく30~150μmである。
【0026】
情報表示印刷層12における透明層部分13を形成する透明インキの色相は、目的とする金属光沢による装飾の色相に応じて選定される。例えば目的とする装飾の色相が金色である場合には、透明黄色インキが用いられ、目的とする装飾の色相が銀色である場合には、透明無色インキが用いられる。
【0027】
透明黄色インキを用いる場合において、当該透明黄色インキに含まれる黄色顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料(モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー)、縮合アゾ顔料、多環色顔料などが挙げられる。これらの中では、耐性が高い点、金の色相に近似した装飾を施すことができる点で、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料が好ましい。
【0028】
情報表示印刷層12を形成する透明インキおよび不透明インキの各々において、バインダー樹脂としては、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等を用いることができる。また、透明インキおよび不透明インキの各々には、各種顔料およびバインダー樹脂以外に、可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが含有されていてもよい。
【0029】
情報表示印刷層12を形成するための印刷法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式を用いることができる。
また、情報表示印刷層12の厚みは、通常0.5~5μm、好ましく1~3μmである。
【0030】
中間樹脂層16を構成する樹脂としては、特に限定されないが、機械的、物理的、化学的、その他において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂が好ましい。このような樹脂の具体例としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂などが挙げられる。これらの中では、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂が好ましい。
中間樹脂層16の厚みは、通常1~70μm、好ましく9~25μmである。
【0031】
金属蒸着膜15は、錫またはインジウムによって構成されている。
金属蒸着膜15の厚みは、例えば5~80nmであり、好ましくは10~60nmである。金属蒸着膜15の厚みが過小である場合には、光沢度の高い金属光沢による装飾を施すことが困難となることがある。一方、金属蒸着膜15の厚みが過大である場合には、電子レンジによって加熱した際に、マイクロ波が照射されることにより、火花が生じるおそれがある。
また、金属蒸着膜15の表面抵抗率は、3~8×1012Ω/□であることが好ましく、より好ましくは30~6×1012Ω/□である。
【0032】
そして、金属蒸着膜15は、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理を施した後の全光線透過率が28.0%以上76.0%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以上60%以下、特に好ましくは35%以上50%以下である。
金属蒸着膜15の全光線透過率が低いすなわち厚みが大きいほど、金属蒸着膜15の欠損部の存在度合いを低くすることができるので加熱殺菌処理に伴う金属蒸着膜15の透明化を防ぐことができるが、全光線透過率が過度に低いと、鏡面反射よりも拡散反射を優位に生じる表面状態となって金属光沢が失われ、白くくすんだ外観となってしまう。本発明においては、加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の全光線透過率が上記の範囲内であることにより、金属蒸着膜15の透明化が抑止されるとともに所期の金属光沢を発揮することができるので、加熱殺菌処理が施されていても、所望の金属光沢による装飾を維持することができる。
加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の全光線透過率が76.0%を超える場合は、金属蒸着膜15に十分な厚みが得られずに欠損部が多く存在することになり、その欠損部に加熱殺菌処理による蒸気がアタックする結果、金属蒸着膜15の透明化が生じてしまい、所望の金属光沢による装飾を施すことが困難となる。また、全光線透過率が28.0%未満である場合は、金属蒸着膜15の厚みが大きすぎて金属蒸着膜15に十分な鏡面反射が得られないので光輝感を有する金属光沢による装飾を実現することができず、また、電子レンジで加熱した際にマイクロ波が照射されることにより溶着が発生したり、さらに全光線透過率が極めて小さい場合は、電子レンジで加熱した際に火花が生じるおそれがある。
【0033】
加熱殺菌処理は、常温流通を可能とするレトルト処理や、チルド流通を可能とする120℃、4分未満の加熱処理等が挙げられるが、これらに限定されず、公知の種々の加熱殺菌処理をいう。
レトルト処理とは、加圧加熱処理をいい、例えば耐熱性容器に充填した製品を品温上昇に伴う製品の内圧で容器が破損しないように加圧しながら110℃~130℃程度の蒸気又は熱水で数十分間程度加熱し、少なくとも120℃4分間相当以上であるF0値=3.1以上となるように処理することをいう。また、チルド流通可能な加熱殺菌は、例えば、一般的に多く用いられる90℃10分間相当以上のボイル等の加熱処理をいう。
【0034】
加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の全光線透過率は、金属蒸着膜15が一体に形成された中間樹脂層16の全光線透過率であり、金属蒸着膜15が一体に形成された中間樹脂層16は、加熱殺菌処理後の電子レンジ用包装材1から不要な他のフィルムを剥離等によって除去することにより得ることができる。なお、中間樹脂層16の全光線透過率はおおよそ88~90%であり、上述した中間樹脂層16の種類や厚みの範囲内で全光線透過率は変わらない。
ここで、金属蒸着膜15が一体に形成された中間樹脂層16の全光線透過率は、JIS K7361-1に準拠して測定したものである。
【0035】
また、金属蒸着膜15は、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理後の波長330nm~340nmの光線透過率(以下、「紫外線透過率」ともいう。)が、34.0%以上60.1%以下であることが好ましく、より好ましくは37.0%以上55.0%以下、特に好ましくは40.0%以上54.0%以下である。
加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の紫外線透過率が上記の範囲内であることにより、金属蒸着膜15の透明化が抑止されるとともに所期の金属光沢を発揮することができるので、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理が施されていても、所望の金属光沢による装飾を維持することができる。
加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の紫外線透過率が60.1%を超える場合は、金属蒸着膜15に十分な厚みが得られずに欠損部が多く存在することになり、その欠損部に加熱殺菌処理による蒸気がアタックする結果、金属蒸着膜15の透明化が生じるおそれがあり、所望の金属光沢による装飾を施すことが困難となることがある。また、紫外線透過率が34.0%未満である場合は、金属蒸着膜15の厚みが大きすぎて金属蒸着膜15に十分な鏡面反射が得られないので光輝感を有する金属光沢による装飾を実現することができず、また、電子レンジで加熱した際にマイクロ波が照射されることにより溶着が発生したり、さらに紫外線透過率が極めて小さい場合は、電子レンジで加熱した際に火花が生じるおそれがある。
【0036】
加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の紫外線透過率は、金属蒸着膜15が一体に形成された中間樹脂層16の紫外線透過率である。なお、上述した中間樹脂層16の種類や厚みの範囲内で紫外線透過率は変わらない。
ここで、金属蒸着膜15が一体に形成された中間樹脂層16の紫外線透過率は、紫外可視赤外分光測色計「V-770」(日本分光社製)にて、測定間隔は1nmの条件で、金属蒸着膜15が一体化された中間樹脂層16の光線透過を測定し、得られた各点のデータを平均して算出したものである。
【0037】
また、金属蒸着膜15は、加熱殺菌処理を施していない未加熱の全光線透過率が、7.7%以上22.8%以下であることが好ましく、より好ましくは10.0%以上20.0%以下、特に好ましくは12.0%以上18.0%以下である。
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜15の全光線透過率が上記の範囲内であることにより、金属蒸着膜15の透明化が抑止されるとともに所期の金属光沢を発揮することができるので、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理を施した場合にも、所望の金属光沢による装飾を維持することができる。
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜15の全光線透過率が22.8%を超える場合は、金属蒸着膜15に十分な厚みが得られずに欠損部が多く存在することになり、加熱殺菌処理を施した場合にその欠損部に加熱殺菌処理による蒸気がアタックする結果、金属蒸着膜15の透明化が生じるおそれがあり、所望の金属光沢による装飾を維持することが困難となることがある。また、全光線透過率が7.7%未満である場合は、金属蒸着膜15の厚みが大きすぎて金属蒸着膜15に十分な鏡面反射が得られないので光輝感を有する金属光沢による装飾を実現することができず、また、電子レンジで加熱した際にマイクロ波が照射されることにより溶着が発生したり、さらに紫外線透過率が極めて小さい場合は、電子レンジで加熱した際に火花が生じるおそれがある。
【0038】
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜15の全光線透過率は、加熱殺菌処理前の電子レンジ用包装材1を対象とすること以外は加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の全光線透過率の測定方法と同様にして、測定することができる。
【0039】
また、金属蒸着膜15は、加熱殺菌処理を施していない未加熱の波長330nm~340nmの光線透過率(紫外線透過率)が、10.5%以上27.1%以下であることが好ましく、より好ましくは11.0%以上18.0%以下、特に好ましくは12.0%以上16.0%以下である。
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜15の紫外線透過率が上記の範囲内であることにより、金属蒸着膜15の透明化が抑止されるとともに所期の金属光沢を発揮することができるので、ボイルやレトルト処理等の加熱殺菌処理を施した場合にも、所望の金属光沢による装飾を維持することができる。
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜15の紫外線透過率が27.1%を超える場合は、金属蒸着膜15に十分な厚みが得られずに欠損部が多く存在することになり、加熱殺菌処理を施した場合にその欠損部に加熱殺菌処理による蒸気がアタックする結果、金属蒸着膜15の透明化が生じるおそれがあり、所望の金属光沢による装飾を施すことが困難となることがある。また、全光線透過率が10.5%未満である場合は、金属蒸着膜15の厚みが大きすぎて金属蒸着膜15に十分な鏡面反射が得られないので光輝感を有する金属光沢による装飾を実現することができず、また、電子レンジで加熱した際にマイクロ波が照射されることにより溶着が発生したり、さらに紫外線透過率が極めて小さい場合は、電子レンジで加熱した際に火花が生じるおそれがある。
【0040】
加熱殺菌処理を施していない金属蒸着膜の紫外線透過率は、加熱殺菌処理前の電子レンジ用包装材1を対象とすること以外は加熱殺菌処理後の金属蒸着膜15の紫外線透過率の測定方法と同様にして、測定することができる。
【0041】
金属蒸着膜15を形成するための蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法、あるいは化学蒸着法などを適宜選択して用いることができる。蒸着する際の加熱法としては、抵抗加熱、誘導加熱、電子線加熱などを用いることができる。また反応ガスとしては、酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を併用した反応性蒸着を用いてもよい。
【0042】
接着剤層17,18を構成する接着剤としては、ドライラミネ-ト等において使用される2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエ-テルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤などを用いることができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材1においては、金属蒸着膜15は、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面上に金属の蒸着が施されることによって一体に形成されており、これにより、金属蒸着膜15がシーラントフィルム11と中間樹脂層16との間に位置するよう配置されている。また、中間樹脂層16は透明性を有するものとされている。第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材1におけるその他の構成は、第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の構成である。
【0044】
上記の第1の実施形態および第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材1によれば、シーラントフィルム11と情報表示印刷層12との間に金属蒸着膜15が形成されており、この金属蒸着膜15による光沢が、情報表示印刷層12に形成された透明層部分13および基材フィルム10を介して視認されるので、光沢度の高い金属光沢による装飾を施すことができる。しかも、金属蒸着膜15は、錫またはインジウムよりなるため、電子レンジで加熱した際に、火花が生じることがなく、従って、電子レンジに適正を有する電子レンジ用包装材1が得られる。
【0045】
〔第3の実施形態〕
図3は、本発明の第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材1においては、シーラントフィルム11と金属蒸着膜15との間に、不透明印刷層19が形成されている。具体的には、金属蒸着膜15は、中間樹脂層16における基材フィルム10側の表面上に形成され、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面には、不透明印刷層19が形成され、不透明印刷層19とシーラントフィルム11との間に、接着剤層18が形成されている。第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材1におけるその他の構成は、第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の構成である。
このようにシーラントフィルム11と金属蒸着膜15との間に不透明印刷層19が介挿されていることにより、電子レンジ用包装材1を袋状にしたときに充填する内容物が外面側から透けて視認されることがなく、金属蒸着膜15よりも外面側の情報表示印刷層12による情報を高い精度で表示することができる。なお、不透明印刷層19を有さない場合、情報表示印刷層12の透明層部分13を介して外面側から内容物が視認可能となる。
【0046】
不透明印刷層19は、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面に、不透明インキを印刷することによって形成される。不透明インキの色彩は特に限定されないが、白色インキ、白インキを使用したグレーインキなどを用いることが好ましい。不透明印刷層19は、例えば白ベタ印刷層とすることができる。
不透明印刷層19を形成するための印刷法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式を用いることができる。
また、不透明印刷層19の厚みは、通常1~10μm、好ましくは1~3μmである。
【0047】
〔第4の実施形態〕
図4は、本発明の第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材1においては、シーラントフィルム11と金属蒸着膜15との間に、不透明印刷層19が形成されている。具体的には、金属蒸着膜15は、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面上に形成され、金属蒸着膜15におけるシーラントフィルム11側の表面には、第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の不透明印刷層19が形成され、不透明印刷層19とシーラントフィルム11との間に、接着剤層18が形成されている。第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材1におけるその他の構成は、第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の構成である。
【0048】
上記の第3の実施形態および第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材1によれば、第1の実施形態および第2の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の効果が得られ、更に、シーラントフィルム11と金属蒸着膜15との間に、不透明印刷層19が形成されているため、内容物が視認されることを防止することができる。
【0049】
〔第5の実施形態〕
図5は、本発明の第5の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この第5の実施形態に係る電子レンジ用包装材1においては、中間樹脂層16における基材フィルム10側の表面上に、金属蒸着膜15が形成され、金属蒸着膜15における基材フィルム10側の表面上には、情報表示印刷層12が形成されている。一方、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面上には、第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の不透明印刷層19が形成されている。
また、基材フィルム10と情報表示印刷層12とは、接着剤層17によって一体に接着され、シーラントフィルム11と不透明印刷層19とは、接着剤層18によって一体に接着されている。第5の実施形態に係る電子レンジ用包装材1におけるその他の構成は、第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の構成である。
【0050】
図5に示す電子レンジ用包装材1は、以下のようにして製造することができる。
先ず、図6(a)に示すように、中間樹脂層16の一面に錫またはインジウムの蒸着を施すことにより、中間樹脂層16の一面に金属蒸着膜15が形成されてなる第1の中間体2を作製する。次いで、両面印刷機により、第1の中間体2に両面印刷を施すことにより、図6(b)に示すように、金属蒸着膜15の表面に、透明層部分13および不透明層部分14よりなる情報表示印刷層12を形成すると共に、中間樹脂層16の他面に不透明印刷層19を形成し、これにより、不透明印刷層19、中間樹脂層16、金属蒸着膜15および情報表示印刷層12がこの順で積層されてなる第2の中間体3を作製する。そして、例えばドライラミネート法により、第2の中間体3における情報表示印刷層12の表面に接着剤層17を介して基材フィルム10を積層すると共に、不透明印刷層19の表面に接着剤層18を介してシーラントフィルム11を積層することにより、図5に示す電子レンジ用包装材1が得られる。
【0051】
〔第6の実施形態〕
図7は、本発明の第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材の構成を示す説明用断面図である。この第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材1においては、中間樹脂層16におけるシーラントフィルム11側の表面上に、金属蒸着膜15が形成され、金属蒸着膜15におけるシーラントフィルム11側の表面上には、第3の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の不透明印刷層19が形成されている。一方、中間樹脂層16における基材フィルム10側の表面上には、情報表示印刷層12が形成されている。また、基材フィルム10と情報表示印刷層12とは、接着剤層17によって一体に接着され、シーラントフィルム11と不透明印刷層19とは、接着剤層18によって一体に接着されている。第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材1におけるその他の構成は、第1の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の構成である。
【0052】
図7に示す電子レンジ用包装材1は、以下のようにして製造することができる。
先ず、図8(a)に示すように、中間樹脂層16の一面に錫またはインジウムの蒸着を施すことにより、中間樹脂層16の一面に金属蒸着膜15が形成されてなる第1の中間体2を作製する。次いで、両面印刷機により、第1の中間体2に両面印刷を施すことにより、図8(b)に示すように、金属蒸着膜15の表面に不透明印刷層19を形成すると共に、中間樹脂層16の他面に、透明層部分13および不透明層部分14よりなる情報表示印刷層12を形成し、これにより、不透明印刷層19、金属蒸着膜15、中間樹脂層16および情報表示印刷層12がこの順で積層されてなる第2の中間体3を作製する。そして、例えばドライラミネート法により、第2の中間体3における情報表示印刷層12の表面に接着剤層17を介して基材フィルム10を積層すると共に、不透明印刷層19の表面に接着剤層18を介してシーラントフィルム11を積層することにより、図7に示す電子レンジ用包装材1が得られる。
【0053】
第5の実施形態および第6の実施形態に係る電子レンジ用包装材1によれば、第3の実施形態および第4の実施形態に係る電子レンジ用包装材1と同様の効果が得られ、更に、情報表示印刷層12および不透明印刷層19の両方を、両面印刷機を用いることにより単一の工程で形成することが可能であるため、生産性の向上を図ることができる。
【実施例0054】
以下、本発明の具体的な実施例に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[電子レンジ用包装材の作製例1]
透明黄色インキ(ウレタン系裏刷り用グラビアインキ)をグラビア印刷により印刷した厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(基材フィルム)と、錫を真空蒸着法により蒸着した厚さ12μmの錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム〔A〕(東洋紡社製エステルフィルム)とを、透明黄色インキ面と錫蒸着面とが重なるようにポリウレタン系接着剤を使用してドライラミネート法によりドライラミネートすることによって、中間積層フィルムを作製した。さらに、この中間積層フィルムにおける錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、ポリウレタン系接着剤を使用してドライラミネート法によりシーラントフィルムとなる厚さ60μmのポリプロピレンフィルムをドライラミネートすることによって、積層フィルムを作製した。
得られた積層フィルムを35℃の恒温室に5日間保管して硬化処理を行うことにより、電子レンジ用包装材〔1〕を得た。
錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム〔A〕は、加熱殺菌処理が施されていない状態における全光線透過率が26.4%、波長330nm~340nmの光線透過率(紫外線透過率)が30.6%のものである。
なお、錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム〔A〕から錫蒸着膜を除去した中間樹脂層単層の全光線透過率は88%であった。
【0056】
[電子レンジ用包装材の作製例2~7]
電子レンジ用包装材の作製例1において、錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム〔A〕の代わりに、加熱殺菌処理が施されていない状態における全光線透過率および紫外線透過率がそれぞれ表1に記載された数値となるよう錫蒸着膜の厚みが異なる錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたことの他は同様にして、それぞれ電子レンジ用包装材〔2〕~〔7〕を得た。
電子レンジ用包装材〔2〕~〔5〕が本発明に係る実施例1~4であり、電子レンジ用包装材〔1〕、〔6〕、〔7〕は比較例1~3である。
【0057】
(包装袋および包装体の作製)
電子レンジ用包装材〔1〕~〔7〕の各々について、シーラントフィルム面同士を合わせてヒートシールすることにより、高さ170mm、幅130mmの平パウチ包装袋〔1〕~〔7〕をそれぞれ作製した。また、平パウチ包装袋〔1〕~〔7〕の各々に水180gを充填し、ヒートシールして密封後、100℃で90分間ボイルして包装体〔1〕~〔7〕をそれぞれ作製した。
ボイル後の各包装体〔1〕~〔7〕を構成する電子レンジ用包装材〔1〕~〔7〕の錫蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの全光線透過率および紫外線透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
[評価]
各包装体について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(ボイル前後の金属光沢の評価)
各包装体における透明黄色インキにより形成された透明層部分について、ボイル前およびボイル後の外観を観察した。
(電子レンジ加熱評価)
各包装体を1700Wの電子レンジにて50秒間加熱した後、包装体の外観を観察した。
【0060】
[評価結果]
(ボイル前後の金属光沢の評価)
実施例1~4に係る包装材から得られた包装体のいずれについても、ボイル前後においていずれも鏡面光沢が確認された。一方、全光線透過率および紫外線透過率が高い比較例1に係る包装材から得られた包装体は、ボイル前に有していた鏡面光沢がボイル後に透明化により失われることが確認された。また、全光線透過率および紫外線透過率がやや低い比較例2に係る包装材から得られた包装体は、ボイル前において少々白い曇りがあるがボイル後においいては鏡面光沢が得られることが確認された。また、全光線透過率および紫外線透過率が低い比較例3に係る包装材から得られた包装体は、ボイル前後にわたって白く曇り光沢感が認められなかった。
(電子レンジ加熱評価)
実施例1~4および比較例1に係る包装材から得られた包装体においては、当該包装体に溶着やスパークなどの不具合の発生は認められなかった。一方、全光線透過率および紫外線透過率が低い比較例2,3に係る包装材から得られた包装体においては、溶着やスパークが発生することが確認された。
【符号の説明】
【0061】
1 電子レンジ用包装材
2 第1の中間体
3 第2の中間体
10 基材フィルム
11 シーラントフィルム
12 情報表示印刷層
13 透明層部分
14 不透明層部分
15 金属蒸着膜
16 中間樹脂層
17,18 接着剤層
19 不透明印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8