IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テクノバの特許一覧

<>
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図1
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図2
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図3
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図4
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図5
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図6
  • 特開-発熱反応装置および過剰熱発生方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085111
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】発熱反応装置および過剰熱発生方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/14 20220101AFI20230613BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20230613BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230613BHJP
   B22F 9/02 20060101ALI20230613BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230613BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20230613BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20230613BHJP
   B22F 1/08 20220101ALI20230613BHJP
   B22F 1/054 20220101ALI20230613BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230613BHJP
   B22F 1/07 20220101ALI20230613BHJP
【FI】
B22F1/14 300
C01B3/00 B ZNM
B22F9/04 C
B22F9/02 B
B22F1/00 M
B22F1/17
C22C1/00 N
B22F1/08
B22F1/054
B82Y40/00
B22F9/02 A
B22F1/07
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199609
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】591206887
【氏名又は名称】株式会社テクノバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】森 豊
【テーマコード(参考)】
4G140
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4G140AA29
4G140AA32
4G140AA34
4G140AA44
4K017AA04
4K017AA06
4K017BA03
4K017BA05
4K017BA10
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB09
4K017CA08
4K017DA05
4K017EA03
4K018AA08
4K018BA04
4K018BB05
4K018BB07
4K018BC10
4K018BC22
4K018BD07
4K018KA61
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長期間、安定的に過剰熱を発生させる発熱反応装置。
【解決手段】ナノ複合金属材料を収容可能な反応器21と、反応器内に収容されたナノ複合金属材料を加熱する複数の加熱体24a、24bと、反応器内を排気する排気部と、上流端が水素供給源11に接続され、下流端が反応器21に接続されて、反応器21に水素を供給するガス管と、ガス管に設けられ、反応器への水素の供給を遮断する遮断部と、反応器内に収容されたナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を測定する測定部と、発熱反応装置を制御するコントローラ51と、を備え、コントローラは、発熱反応中に、測定部の測定結果に基づくナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が所定値に近づくと、遮断部を制御して反応器内への水素の供給を停止し、所定時間後に遮断部を制御して反応器内への水素の供給を再開して、反応器内に収容されたナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス製の担体と、前記担体に担持され、Cu及びNiを含む二元素金属粒子とを有するナノ複合金属材料に水素を供給して発熱反応を行う発熱反応装置であって、
前記ナノ複合金属材料を収容可能な反応器と、
前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料を加熱する複数の加熱体と、
前記反応器内を排気する排気部と、
上流端が水素供給源に接続され、下流端が前記反応器に接続されて、前記反応器に水素を供給するガス管と、
前記ガス管に設けられ、前記反応器への水素の供給を遮断する遮断部と、
前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を測定する測定部と、
前記発熱反応装置を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記発熱反応中に、前記測定部の測定結果に基づく前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が所定値に近づくと、前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を停止し、所定時間後に前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を再開して、前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御する、
発熱反応装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記測定部による測定結果に基づく前記吸蔵率が1.0以上3.5以下の状態において、前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を停止する、
請求項1に記載の発熱反応装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記測定部による測定結果に基づく前記吸蔵率が1.5以上3.0以下の状態において、前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を停止する、
請求項1に記載の発熱反応装置。
【請求項4】
前記測定部は、
前記遮断部よりも上流側の前記ガス管に設けられた第1の圧力計と、
前記遮断部よりも下流側の前記ガス管に設けられた第2の圧力計と、を含み、
前記コントローラは、
前記反応器内への水素の供給停止後、前記第1及び第2の圧力計の差圧が5kPa以上200kPa以下の状態において、前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を再開する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発熱反応装置。
【請求項5】
前記担体は、
酸化度が31%超100%以下のジルコニアセラミック製であり、
前記ナノ複合金属材料は、
真空状態で水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給され、250℃以上350℃以下の温度で加熱された場合、ジルコニアビーズの不発熱ブランク試料による熱量更正試験データと比較することによって算出される過剰熱が100W/kg以上となるナノ複合金属材料である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発熱反応装置。
【請求項6】
セラミックス製の担体と、前記担体に担持され、Cu及びNiを含む二元素金属粒子とを有するナノ複合金属材料に水素を供給して発熱反応を行う過剰熱発生方法であって、
前記発熱反応中に、前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が所定値に近づくと、前記ナノ複合金属材料への水素の供給を停止し、所定時間後に前記ナノ複合金属材料への水素の供給を再開して、前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御する、
過剰熱発生方法。
【請求項7】
前記吸蔵率が1.0以上3.5以下の状態において、前記ナノ複合金属材料への水素の供給を停止する、
請求項6に記載の過剰熱発生方法。
【請求項8】
前記吸蔵率が1.5以上3.0以下の状態において、前記ナノ複合金属材料への水素の供給を停止する、
請求項6に記載の過剰熱発生方法。
【請求項9】
前記ナノ複合金属材料への水素の供給停止後、前記ナノ複合金属材料に水素を供給する水素供給源側の第1の圧力と、前記ナノ複合金属材料側の第2の圧力とをモニタし、
前記第1及び第2の圧力の差圧が5kPa以上200kPa以下の状態において、前記ナノ複合金属材料への水素の供給を再開する、
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の過剰熱発生方法。
【請求項10】
Cu、Ni、及びZrを含むアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子を、大気中にて300℃以上600℃以下の温度で焼成して第1の生成物を生成する焼成処理と、
真空中で前記第1の生成物を200℃以上450℃以下の温度で加熱して第2の生成物を生成する加熱処理と、
真空中で前記第2の生成物に水素ガス及び重水素ガスの少なくともいずれかを供給し、水素及び重水素の少なくともいずれかを吸蔵させて第3の生成物を生成する水素吸蔵処理と、
真空中で前記第3の生成物を200℃以上450℃以下の温度で加熱し、発熱反応を生じさせて第4の生成物を生成する発熱反応処理と、
大気中で前記第4の生成物を300℃以上600℃以下の温度で再焼成する再焼成処理と、を有し、
前記加熱処理、前記水素吸蔵処理、及び前記発熱反応処理を1サイクル以上行い、前記再焼成処理を1回行うサイクル処理を1回以上行って、前記ナノ複合金属材料を製造することを含む、
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の過剰熱発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発熱反応装置および過剰熱発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ複合金属材料を水素との発熱反応に用いる技術がある。当該技術において、ナノ複合金属材料に水素ガスを吸蔵させたうえで加熱すると発熱反応を生じさせることができる。また、発熱反応を終えたナノ複合金属材料は、例えば発熱反応を行う容器から取り出して大気中で再焼成することで、再度、水素ガスを吸蔵させて発熱量を増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/045230号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.Takahashi, Y.Miyoshi, H.Sakoh, A.Taniike, A.Kitamura, R.Seto, and Y.Fujita, Mesoscopic Catalyst and D-Cluster Fusion,Proc.JCF11(2011)47-52.
【非特許文献2】A.Takahashi, Are Ni+H Nuclear Reactions Possible?, 10th Int. Workshop on Anomalies in Hydrogen Loaded Metals, Siena Italy, 2012, JCMNS9(2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素との発熱反応中に、ナノ複合金属材料の発熱量を増大させるには、外部ヒータ等で昇温するしか目ぼしい手段がないのが実情である。このため、発熱量が低下したり、または発熱しなくなったりしたナノ複合金属材料を、反応容器から取り出すことなく再度活性化させて再利用することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、長期間、安定的に過剰熱を発生させることができる発熱反応装置および過剰熱発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の発熱反応装置は、セラミックス製の担体と、前記担体に担持され、Cu及びNiを含む二元素金属粒子とを有するナノ複合金属材料に水素を供給して発熱反応を行う発熱反応装置であって、前記ナノ複合金属材料を収容可能な反応器と、前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料を加熱する複数の加熱体と、前記反応器内を排気する排気部と、上流端が水素供給源に接続され、下流端が前記反応器に接続されて、前記反応器に水素を供給するガス管と、前記ガス管に設けられ、前記反応器への水素の供給を遮断する遮断部と、前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を測定する測定部と、前記発熱反応装置を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記発熱反応中に、前記測定部の測定結果に基づく前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が所定値に近づくと、前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を停止し、所定時間後に前記遮断部を制御して前記反応器内への水素の供給を再開して、前記反応器内に収容された前記ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる発熱反応装置の構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、実施形態にかかる過剰熱発生処理の手順の一例を示すフロー図である。
図3図3は、実施形態にかかるナノ複合金属材料の製造方法の一例を示す模式図である。
図4図4は、実施形態にかかるナノ複合金属材料の製造方法の手順の一例を示すフロー図である。
図5図5は、実施形態にかかるナノ複合金属材料の構成の一例を示す模式図である。
図6図6は、実施例にかかるMHE反応の反応器中心温度と過剰熱量との反応応答の代表例を示すグラフである。
図7図7は、実施例にかかる発熱反応の再活性化処理の適用例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
(発熱反応装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる発熱反応装置100の構成の一例を示す模式図である。図1(a)は、実施形態の発熱反応装置100の全体を示す図であり、図1(b)は、発熱反応装置100が備える筐体23の部分拡大図である。
【0011】
発熱反応装置100は、例えばナノニッケルコア-銅シェル構造を有するナノ複合金属材料に水素ガスを吸蔵させて発熱反応を行わせ、発生した熱を回収する装置である。回収された熱は、給湯、熱供給、または発電等に利用される。
【0012】
図1(a)に示すように、発熱反応装置100は、水素供給機構10、発熱反応機構20、循環機構30、排気機構40、及び制御機構50を備える。
【0013】
水素供給機構10は、ガスシリンダ11、ガス管12、タンク13、圧力計14a,14b、真空計14c、バルブ15a~15d、及び真空ポンプ17を備え、発熱反応機構20に水素ガスを供給する。
【0014】
水素供給源としてのガスシリンダ11には、ガス管12の上流端が接続されており、後述する反応器21内へ重水素ガスまたは軽水素ガスなどの水素ガスを供給する。ガス管12の下流端は反応器21に接続されている。ガス管12には、上流側から順にバルブ15a,15bが設けられている。
【0015】
ガス管12は、バルブ15aの下流側で分岐する2つの支管12a,12bを有しており、一方の支管12aには圧力計14aが接続され、もう一方の支管12bにはバルブ15cを介してタンク13が接続されている。
【0016】
圧力計14aは、ガス管12の下流側に設けられたバルブ15bよりも上流側の圧力を測定する。圧力計14aによって測定される圧力は、以下に述べるタンク13を含む水素供給源側から供給される水素ガスの圧力と見做すことができる。
【0017】
タンク13は、余剰な水素を一時的に貯蔵する。タンク13下流側に設けられたバルブ15cの開閉によって、タンク13内の水素が放出され、あるいは放出が停止されて、後述する反応器21内への水素の供給量が調整される。
【0018】
ガス管12は、支管12a,12bの更に下流側で分岐する支管12cを有している。支管12cには、ガス管12に近い側から順にバルブ15d及び真空計14cを介して真空ポンプ17が接続されている。
【0019】
真空計14cは、大気圧未満の圧力を測定可能な圧力計である。真空計14cで真空圧を測定しつつ、バルブ15dを開いて真空ポンプ17を稼働させることで、後述する反応器21内の圧力を真空状態にすることができる。このように、真空ポンプ17は反応器21内を排気する排気部として機能する。
【0020】
ガス管12は、バルブ15bの下流側で分岐する支管12dを有しており、支管12dには圧力計14bが接続されている。
【0021】
圧力計14bは、ガス管12に設けられたバルブ15bよりも下流側の圧力を測定する。圧力計14bによって測定される圧力は、後述する反応器21側の圧力と見做すことができる。
【0022】
発熱反応機構20は、反応器21、熱回収機器22、筐体23、加熱体24a,24b、及び温度センサ26a~26fを備え、ナノ複合金属材料に水素ガスを吸蔵させて発熱反応を行う。
【0023】
反応器21は、SUS304またはSUS316等のステンレス製の容器であり、例えば両端が閉塞された筒状に構成されている。反応器21内には、発熱反応を行わせるナノ複合金属材料等の試料を収容可能である。反応器21の一端側にはガス管12の下流端が接続されている。これにより、真空ポンプ17によって反応器21を真空状態に減圧し、また、ガスシリンダ11側から反応器21側に水素ガスを供給することができる。
【0024】
反応器21にはヒータ等の加熱体24a,24bが設けられている。加熱体24aは、反応器21の内部に、反応器21の中心軸に沿って差し込まれている。加熱体24bは、反応器21の胴体部分の外壁に螺旋状に巻き付けられている。
【0025】
図1(b)に示すように、ナノ複合金属材料等の試料SMは、加熱体24aの外周を覆うように反応器21内に装荷される。これにより、加熱体24aは反応器21に収容された試料SMを直接加熱する。加熱体24bは反応器21内の試料SMを外側から加熱する。
【0026】
反応器21内および反応器21の周囲には、熱電対等の温度センサ26a~26fが配置されている。
【0027】
温度センサ26a~26cは、反応器21の内部に差し込まれている。これらのうち、温度センサ26aは加熱体24aの内部に差し込まれており、加熱体24aの外周を覆うように装荷される試料SMの中心温度を測定する。温度センサ26b,26cは、加熱体24aの周囲に配置され、それぞれが異なる長さで反応器21内を延びる。
【0028】
温度センサ26d,26eは、反応器21の胴体部分の外壁に設けられ、反応器21の外壁の温度を測定する。温度センサ26fは、ガス管12の下流端近傍に設けられ、ガス管12の温度を測定する。
【0029】
熱回収機器22は、SUS304またはSUS316等のステンレス製であり、反応器21を囲うように、例えば一端が閉塞された筒状に構成されている。熱回収機器22の開放された一端からは、反応器21の一端に接続されたガス管12、及び反応器21に設けられた温度センサ26a~26f等が延びている。
【0030】
熱回収機器22の胴体部分の外壁には、後述する送油管32in,32otが螺旋状に巻き付けられており、反応器21内の試料SMから発せられた熱は、熱交換の原理によって、送油管32in,32ot内を流れる循環流体OLに伝えられ、回収される。
【0031】
筐体23は、SUS304またはSUS316等のステンレス製であり、熱回収機器22を囲うように、例えば両端が閉塞された筒状に構成されている。上述のガス管12は、筐体23の一端側を貫通して反応器21に接続される。
【0032】
また、筐体23の他端部側には後述する真空ポンプ47に接続された排気管42が接続され、筐体23内を真空状態にすることが可能である。このように、発熱源である反応器21全体を囲う筐体23内を真空に保つことで、反応器21内で発生した熱が筐体23を介して大気中に放散されてしまうことが抑制される。
【0033】
循環機構30は、ウォータバス31、送油管32in,32ot、貯留部33、流量計測器34a,34b、バルブ35a,35b、温度センサ36a,36b、真空ポンプ37、油循環機器38o、及び水循環機器38wを備え、循環流体OLを循環させて、反応器21から発生した熱を回収する。
【0034】
ウォータバス31は、筐体23の外部に設けられ、水等の冷却液WTを貯留することが可能に構成されている。
【0035】
送油管32inは、ウォータバス31内の冷却液WT中で上流端を送油管32otの下流端と接続され、下流端を熱回収機器22の胴体部分の外壁に螺旋状に巻き付けられて、熱回収機器22の胴体部分の外壁に螺旋状に巻き付けられた送油管32otの上流端と接続されている。つまり、送油管32inの上流端が送油管32otの下流端と接続され、送油管32inの下流端が送油管32otの上流端と接続されることで、送油管32inと送油管32otとで無端状の配管が構成されている。
【0036】
送油管32in,32ot内には油等の循環流体OLが循環している。送油管32inには、ウォータバス31よりも下流側にポンプ37が設けられており、送油管32in内の循環流体OLはウォータバス31側から熱回収機器22側へと送出される。循環流体OLは、熱回収機器22近傍で反応器21からの熱を回収し、送油管32ot内を折り返してウォータバス31側へと送還される。循環流体OLが回収した熱は、ウォータバス31内で冷却液WTへと受け渡される。
【0037】
送油管32inのポンプ37よりも下流側には温度センサ36aが設けられている。温度センサ36aは、熱電対等として構成され、送油管32in内の循環流体OLの温度を測定する。送油管32inの下流端は、筐体23の一端部側を貫通して、上述のように熱回収機器22に巻き付けられて、送油管32otの下流端に接続されている。
【0038】
熱回収機器22に巻き付けられた送油管32otの上流端は、筐体23の一端部側を貫通している。送油管32otの筐体23端部の手前側、つまり、筐体23の内部に配置された部分には、温度センサ36bが設けられている。温度センサ36bは、熱電対等として構成され、送油管32ot内の循環流体OLの温度を測定する。
【0039】
送油管32otの下流側であって、筐体23の外部に配置された部分には、油循環機器38oが設けられている。油循環機器38oは、送油管32in,32ot内を循環する循環流体OLの温度を調節する温調器である。油循環機器38oには水循環機器38wが接続されている。水循環機器38wは、ウォータバス31に貯留される冷却液WTの温度を調節する温調器である。
【0040】
油循環機器38oよりも更に下流側の送油管32otには、流量計測器34aが設けられ、流量計測器34aの更に下流側には流量計測器34bが設けられている。流量計測器34aからは送油管32otの2つの支管32a,32bが分岐している。支管32aには、バルブ35aを介して貯留部33が接続されている。支管32bにはバルブ35bが設けられている。
【0041】
貯留部33には循環流体OLが貯留されている。流量計測器34a,34bは、流量計測器34a,34bを通過する循環流体OLの流量を液滴数に基づいてそれぞれ計測する。
【0042】
流量計測器34bは、ウォータバス31の冷却水WTに浸漬された部分の送油管32ot内に流入する循環流体OLの流量を計測する。流量計測器34bが計測した流量に基づいて、バルブ35a,35bが適宜開閉され、送油管32in,32ot内を循環する循環流体OLの流量の増減が行われる。
【0043】
つまり、送油管32in,32ot内の流量を増やすには、バルブ35aを開けて、貯留部33内の循環流体OLを、支管32aを介して送油管32ot内へと新たに流入させる。送油管32in,32ot内の流量を減らすには、バルブ32bを開けて、送油管32ot内の循環流体OLの一部を、支管32bを介して送油管32ot外へと排出する。
【0044】
このように、流量計測器34bは、送油管32in,32ot内の循環流体OLの流量を調整する調整部として機能する。
【0045】
流量計測器34aは、貯留部33から送油管32otへと流入する循環流体OL、及び送油管32otから外部へ流出する循環流体OLの流量を適宜計測し、送油管32in,32ot内の循環流体OLの流量が適正に調整されたことを確認する。
【0046】
排気機構40は、排気管42、真空計44、バルブ45、及び真空ポンプ47を備え、筐体23内を真空に排気する。なお、上記の反応器21内を排気する上述のガス管12、真空計14c、バルブ15d、及び真空ポンプ17を排気機構40に含めてもよい。
【0047】
上述のように、排気管42の一端は筐体23に接続され、他端は、上流側から順に設けられた真空計44及びバルブ45を介して、真空ポンプ47に接続されている。
【0048】
真空計44は、大気圧未満の圧力を測定可能な圧力計である。真空計44で真空圧を測定しつつ、バルブ45を開いて真空ポンプ47を稼働させることで、筐体23内の圧力を真空状態にすることができる。
【0049】
制御機構50は、コントローラ51及びデータロガー52を備え、発熱反応装置100の全体を制御する。
【0050】
データロガー52は、圧力計14a,14b、及び真空計14c,44が測定した各部の圧力、温度センサ26a~26f,36a,36bが測定した各部の温度、並びに流量計測器34a,34bが測定した循環流体OLの流量等を収集して保存する。
【0051】
コントローラ51は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるPC(Personal Conputer)等として構成される。
【0052】
図示しないCPUが、ROM等に格納された制御プログラム等を読み出してRAMに展開し、実行することで、発熱反応装置100の各部を制御する制御部としての機能が、コントローラ51に実現される。
【0053】
コントローラ51は、データロガー52が収集した測定データを参照しつつ、真空ポンプ17,47、ポンプ37、加熱体24a,24b、油循環機器38o、水循環機器38w、及びバルブ15a~15d,35a,35b,45等の発熱反応装置100の各部を制御する。
【0054】
より具体的には、コントローラ51は、バルブ45の開閉を適宜行いつつ、真空計44の測定結果に基づいて真空ポンプ47を稼働させ、筐体23内の圧力を制御する。また、コントローラ51は、バルブ15dの開閉を適宜行いつつ、真空計14cの測定結果に基づいて真空ポンプ17を稼働させ、反応器21内の圧力を制御する。
【0055】
また、コントローラ51は、圧力計14bの測定結果に基づいてバルブ15a~15cの開閉を行って、反応器21内への水素ガスの供給開始、供給停止、及び供給量を制御する。
【0056】
また、コントローラ51は、温度センサ26a~26fによる測定結果に基づいて反応器21内における発熱反応の状態を把握しつつ、圧力計14a,14bの測定結果に基づいてバルブ15bの開閉を行って、反応器21内におけるナノ複合金属材料の発熱反応を制御する。ナノ複合金属材料の発熱反応の制御手法については後述する。
【0057】
また、コントローラ51は、ポンプ37を稼働させて送油管32in,32ot内の循環流体OLを循環させる。また、コントローラ51は、流量計測器34bの測定結果に基づいて、バルブ35a,35bの開閉を適宜行って、送油管32in,32ot内の循環流体OLの流量を適正に保つ。また、コントローラ51は、温度センサ36a,36bの測定結果に基づいて、油循環機器38o及び水循環機器38wによって循環流体OL及び冷却液WTの温度を適正に保つ。
【0058】
ここで、発熱反応装置100で発熱反応の対象となるナノ複合金属材料について以下に説明する。
【0059】
実施形態のナノ複合金属材料は、例えばセラミックスからなる担体と、担体に担持され、銅(Cu)及びニッケル(Ni)を含む二元素金属粒子と、から構成される金属複合触媒である。二元素金属粒子は、銅およびニッケルの二元素から構成され、ニッケルをコアとし、銅をシェルとするナノニッケルコア-銅シェル構造の金属ナノ粒子である。
【0060】
このようなナノ複合金属材料は、水素ガスを供給されることで、金属ナノ粒子中に水素を吸蔵することが可能である。このとき、ナノ複合金属材料に含まれるニッケルの原子数に対する吸蔵水素の原子数の比(H/NiまたはD/Ni)を水素の吸蔵率という。実施形態の発熱反応装置100で使用されるナノ複合金属材料は、水素の吸蔵率が例えば1.0以上、好ましくは3.5程度まで得られるよう構成されていることが望ましい。
【0061】
(発熱反応装置の動作例)
上述の発熱反応装置100は、ナノ複合金属材料に対して加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び発熱反応の再活性化処理を行って、ナノ複合金属材料から熱を発生させる。以下に、引き続き図1を参照しつつ、実施形態の発熱反応装置100の動作例について説明する。
【0062】
まず、ナノ複合金属材料等の試料SMを発熱反応装置100の反応器21内に装荷する。すなわち、図1(b)に示すように、反応器21内の加熱体24aの外周を覆うよう、試料SMを例えば1mm以上20mm以下の厚さに配置する。
【0063】
次に、コントローラ51が真空ポンプ17,47を稼働させ、また、バルブ15d,15b,45を開く。これにより、反応器21及び反応器21を取り囲む筐体23が真空状態に減圧される。圧力計14bは反応器21側の圧力を測定し、測定結果はデータロガー52によって収集され、記録される。
【0064】
コントローラ51は、データロガー52に記録された圧力計14bの測定結果から、反応器21内の圧力が例えば1Pa未満になると、試料SMの加熱処理を開始する。すなわち、コントローラ51は、反応器21に設けられた複数の加熱体24a,24bを発熱させて試料SMを加熱する。
【0065】
反応器21に設けられた複数の温度センサ26a~26fは、反応器21内および反応器21周辺の温度を測定する。データロガー52は、温度センサ26a~26fの測定結果を収集し、記録する。
【0066】
コントローラ51は、データロガー52に記録された温度センサ26a~26fの測定結果を参照しつつ、加熱処理の温度が例えば200℃以上450℃以下の範囲内となるよう加熱体24a,24bを制御する。ただし、加熱処理の温度範囲は、200℃以上300℃以下の範囲、250℃以上400℃以下の範囲、または200℃以上500℃以下の範囲であってもよい。
【0067】
このとき、加熱時の試料SMの温度分布が、最低温度として200℃以上250℃以下の範囲に維持され、最高温度として350℃以上450℃以下の範囲に維持されるようにする。また、開始時から終了時までの期間は、最低温度である200℃以上250℃以下の温度から、最高温度である350℃以上450℃以下の温度までの温度範囲に維持されるものとする。
【0068】
また、加熱処理における加熱時間は、例えば10時間以上72時間以下の範囲が好ましく、24時間以上72時間以下の範囲が更に好ましい。なお、加熱時間は加熱温度によっても異なりうる。例えば300℃で加熱処理を行う場合、加熱時間は24時間以上64時間以下の範囲が好ましく、48時間以上64時間以下の範囲がより好ましい。
【0069】
上記の所定時間が経過した後、コントローラ51は、加熱体24a,24bの発熱を停止させて試料SMを自然冷却する。コントローラ51は、試料SMを冷却する間も真空ポンプ17,47の稼働を継続し、反応器21内の圧力を例えば1Pa未満に維持しておく。
【0070】
コントローラ51は、データロガー52に記録された温度センサ26a~26fの測定結果から、試料SMの温度が例えば室温と同程度になったことが確認されると、水素吸蔵処理を開始する。
【0071】
すなわち、コントローラ51は、バルブ15a,15cを開いて、ガスシリンダ11からタンク13へと水素ガスを供給して貯蔵させる。タンク13内に必要量の水素ガスが貯蔵されたら、コントローラ51は、バルブ15aを閉じて水素供給ラインからガスシリンダ11を切り離す。また、コントローラ51は、バルブ15bを開いてタンク13から反応器21内へ水素ガスを供給する。反応器21内に供給する水素ガスのガス圧は、0.5MPa以上1MPa以下とすることができる。圧力計14aは、タンク13を含む水素供給源側の圧力を測定し、測定結果はデータロガー52によって収集され、記録される。
【0072】
また、コントローラ51は、データロガー52に記録された圧力計14a,14bの測定結果を参照しつつ、バルブ15cを適宜開閉させて、タンク13の蓄圧器としての機能により反応器21内の圧力を調整する。
【0073】
これにより、真空下で室温にて試料SMと水素との反応が生じ、ナノ複合金属材料である試料SM中に水素ガスが吸蔵される。水素吸蔵処理の処理時間は、試料SM中への水素吸蔵の進行状況にもよるが、例えば24時間以上48時間以下の範囲が好ましい。
【0074】
水素吸蔵の進行状況は、例えば圧力計14a,14bの測定結果をモニタすることで知ることができる。つまり、例えば圧力計14aの測定結果から、反応器21への水素ガスの供給量が判る。また、試料SM中への水素ガスの吸蔵が進行すると、反応器21内の水素ガスのガス圧が低下していく。したがって、例えば圧力計14bの測定結果から、反応器21内の圧力変化を知ることができ、これに基づいて試料SM中に吸蔵された水素ガスの量が判る。
【0075】
通常は、水素ガスの吸蔵量と、反応器21内に装荷された試料SM中に含まれるニッケルの量とから算出される水素の吸蔵率に基づいて、水素吸蔵処理の処理時間が決定される。
【0076】
コントローラ51は、データロガー52に記録された圧力計14a,14bの測定結果に基づいて、試料SMにおける水素の吸蔵率が所望の値になったと判定されると、発熱反応処理を開始する。
【0077】
すなわち、コントローラ51は、真空状態の反応器21内への水素ガスの供給を継続しつつ、複数の加熱体24a,24bを発熱させて試料SMを加熱する。コントローラ51は、データロガー52に記録された温度センサ26a~26fの測定結果を参照しつつ、反応器21内の温度が例えば250℃以上450℃以下の範囲内となるよう加熱体24a,24bを制御する。
【0078】
具体的には、加熱時の試料SMの温度分布が、最低温度として200℃以上250℃以下の範囲に維持され、最高温度として350℃以上450℃以下の範囲に維持されるようにする。
【0079】
これにより、ナノ複合金属材料と水素との反応によって発熱現象が生じる。この発熱現象は異常発熱現象と称される場合がある。このような発熱反応は、金属水素間新規熱反応(MHE:Metal Hydrogen Energy)と呼ばれる。以降、このような反応をMHE反応とも呼ぶ。
【0080】
MHE反応においては、加熱体24a,24bによってナノ複合金属材料が加熱されることによって、ナノ複合金属材料中に水素が吸熱吸蔵する、また少なくとも一部が脱蔵する。この水素の吸蔵および脱蔵時に、銅によって不完全にニッケルコアが覆われた不完全コア-シェル構造の表面上に水素クラスタを形成する発熱サイトが形成される。また、ニッケルコア格子のO-サイトが水素で充填した状態での昇温フォノン励起による内部水素クラスタの誘起によりニッケルコアTサイトで発熱反応MHEが生じる。(非特許文献1,2)
【0081】
また、この間も水素ガスの供給は継続されている。したがって、MHE反応中、継続的に供給される水素ガスが新たに吸蔵される過程と、水素が脱蔵される過程とがニッケルコアの表面で競合していると考えられ、これにより発熱反応が継続される。
【0082】
これ以降、MHE反応により生じる熱を過剰熱とも呼ぶ。過剰熱は、例えば温度センサ26a~26fにより測定される試料SMの内部温度から、加熱体24a,24bの発熱量を差し引いた値として算出される。
【0083】
コントローラ51は、循環機構30のポンプ37を稼働させ、送油管32in,32ot内の循環液体OLを循環させる。これにより、反応器21を囲う熱回収機器22において、反応器21内で生じた過剰熱が熱交換によって循環流体OLに伝達され、さらに、ウォータバス31内の冷却液WTに伝達されて、発熱反応装置100外へと取り出される。
【0084】
この間、コントローラ51は、流量計測器34bの測定結果に基づいてバルブ35a,35bの開閉を適宜行って、送油管32ot内の循環流体OLの流量を調整する。また、コントローラ51は、温度センサ36a,36bの測定結果に基づいて油循環機器38o及び水循環機器38wを制御して、循環流体OL及び冷却液WTの温度を調整する。
【0085】
ここで、加熱体による昇温が開始された当初、ナノ複合金属材料における水素の吸蔵率はニッケルコアのO-サイトが充填されるまでは、1.0未満と考えられる。したがって、昇温が進行するにつれ、水素の吸蔵率は増加していき、吸蔵率が例えば1.0以上になると、ニッケルコア格子のO-サイトが水素で充填した状態での昇温フォノン励起による内部水素クラスタの誘起によりニッケルコアTサイトで、ナノ複合金属材料によって発生するMHE反応過剰熱が増大する。(非特許文献1,2)
【0086】
一方、ナノ複合金属材料における水素の吸蔵率が例えば2.0を超えると、水素の脱蔵過程と吸蔵過程とが拮抗し、ナノ複合金属材料中への水素ガスの吸蔵速度が低下すると考えられる。これに伴い、ナノ複合金属材料によって発生する過剰熱も減少する。
【0087】
上述のように、水素の吸蔵率が例えば2.0~3.5に近づいてナノ複合金属材料中への水素ガスの吸蔵速度が低下したことは、圧力計14a,14bの測定結果から推測することができる。つまり、当初はナノ複合金属材料中への水素ガスの吸蔵が活発に行われて水素供給源側および反応器21側の圧力がともに低下していく。これに対し、水素ガスの吸蔵速度が低下すると水素供給源側および反応器21側の圧力がともに略一定となる。
【0088】
水素供給源側および反応器21側の圧力がともに略一定となり、水素の吸蔵率が例えば2.0~3.5に近づいたことが推測されると、コントローラ51は、MHE反応を促進させるため発熱反応の再活性化処理を行う。発熱反応の再活性化処理は、反応器21への水素ガスの供給を所定期間停止した後に再開することにより行われる。
【0089】
すなわち、コントローラ51は、バルブ15bを閉じ、反応器21への水素ガスの供給を一旦停止する。バルブ15bを閉じるタイミングは、圧力計14a,14bの測定結果に基づくナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率が、例えば1.0以上3.5以下、好ましくは1.5以上3.0以下の範囲内とする。
【0090】
ここで、バルブ15bを閉じて水素ガスの供給を絶った後も、反応器21内には、それまでに供給された水素ガスが残留している。このため、バルブ15bを閉じた後も試料SMと水素との反応は継続され、水素ガスがナノ複合金属材料へと吸蔵され続ける。
【0091】
この結果、圧力計14aの測定結果である水素供給源側の圧力は略一定に保たれるのに対し、圧力計14bの測定結果である反応器21側の圧力は低下していき、水素供給源側と反応器21側との圧力差が増大していく。
【0092】
コントローラ51は、水素供給源側と反応器21側との差圧が例えば5kPa以上200kPa以下、好ましくは20kPa以上100kPa以下の範囲内になるとバルブ15bを開き、反応器21への水素ガスの供給を再開する。
【0093】
このように、水素供給源側と反応器21側との圧力差が大きい状態でバルブ15bを開くことで、水素ガスが高速で反応器21内へと流入し、反応器21側の圧力が急激に上昇する。また、反応器21側の圧力が急激に上昇することで、ナノ複合金属材料への水素の衝突確率が増大し、ナノ複合金属材料の表面での水素クラスタ形成増加によるMHE反応が促進され発熱トリガーが発生する。その発熱トリガーにより、ニッケルコアのTサイトに保持されていた水素の一部が脱蔵して、吸蔵率が0.05~0.2程度減少する。すると、空いたTサイトに水素がゆっくりと吸蔵補給されて吸蔵率が例えば2.0以上に増加していく。この過程でフォノン励起による水素クラスタがTサイトで形成されMHE反応が増加する。かくして、低下していた過剰熱を回復させることができる(非特許文献1)。
【0094】
上記のような発熱反応の再活性化処理は、発熱反応処理中、複数回繰り返して行ってもよい。これにより、発熱反応処理中のナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が、例えば1.0以上3.5以下の範囲内に制御される。途中、発熱反応の再活性化処理を少なくとも1回、好ましくは断続的に複数回繰り返しながら、発熱反応処理は、例えば3日以上7日以下の間、継続される。
【0095】
以上により、実施形態の発熱反応装置100による加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び発熱反応の再活性化処理の動作が終了する。
【0096】
上述のように、実施形態の発熱反応装置100においては、コントローラ51が、主に圧力計14a,14bの測定結果に基づいて各種動作を行う。このとき、圧力計14a,14bは、ナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率を測定する測定部として機能する。また、圧力計14a,14bに挟まれたバルブ15bは、反応器21への水素の供給を遮断する遮断部として機能する。
【0097】
ただし、圧力計14a,14bの測定結果以外に、発熱反応装置100における他の物理量に基づいて、ナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率を測定することが可能であれば、コントローラ51が、そのような物理量の測定結果に基づいて、上記の各種動作を行ってもよい。
【0098】
一例として、反応器21に設けられた温度センサ26a~26fの測定結果から過剰熱が低下したことが判れば、ナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率が2.0~3.5付近になったことが推測可能である。したがって、例えば温度センサ26a~26fも、ナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率を測定する測定部として機能させうる。
【0099】
また、他の例として、バルブ15bを閉じてから、水素供給源側と反応器21側との差圧が所望値に到達するまでの時間を予め計測しておけば、バルブ15bを閉じてからの時間を測定し、バルブ15bを開くタイミングを計ることができる。
【0100】
以上のように、実施形態の発熱反応装置100においては、圧力計14a,14b、温度センサ26a~26f、及び図示しない計時機構の少なくともいずれか、あるいはこれらのうち少なくとも幾つかの組み合わせを、ナノ複合金属材料中の水素の吸蔵率を測定する測定部として機能させてもよい。また、コントローラ51は、これらの測定結果に基づいて上記の各種動作を行ってもよい。
【0101】
(過剰熱発生方法)
次に、図2を用いて、実施形態の発熱反応装置100において実施される過剰熱発生方法の例について説明する。図2は、実施形態にかかる過剰熱発生処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0102】
図2に示すように、発熱反応装置100の反応器21内に、ナノ複合金属材料等の試料SMを例えば1mm以上30mm以下の厚さで収容する(ステップS101)。
【0103】
次に、真空ポンプ17を稼働させて、反応器21内を例えば1Pa未満に減圧する(ステップS102)。また、真空ポンプ47を稼働させて、反応器21を囲う筐体23を真空に減圧する。
【0104】
反応器21内が1Pa未満の真空状態となったら、反応器21に設けられた加熱体24a,24bにより、反応器21内に収容した試料SMを加熱する(ステップS103)。この加熱処理は、例えば200℃以上450℃以下の温度で、10時間以上72時間以下の間、行われる。
【0105】
所定時間が経過した後、加熱体24a,24bによる試料SMの加熱を停止し、試料SMが例えば室温と同程度の温度となるまで自然冷却する(ステップS104)。
【0106】
試料SMが所定温度まで冷却されたら、真空状態の反応器21内に水素ガスを供給して、試料SM中に水素ガスを吸蔵させる(ステップS105)。反応器21内に供給する水素ガスのガス圧は、例えば0.5MPa以上1MPa以下とする。水素吸蔵処理は、例えば24時間以上48時間以下の間、行われる。
【0107】
水素ガスが吸蔵され、試料SM中の水素の吸蔵率が所望の値になったら、反応器21内への水素ガスの供給を維持したまま、加熱体24a,24bにより反応器21内を昇温する(ステップS106)。このとき、反応器21内の温度を例えば250℃以上450℃以下とする。これにより、試料SMと水素とのMHE反応が生じる(ステップS107)。
【0108】
MHE反応が生じて発熱反応処理が開始されたら、試料SM中の水素の吸蔵率を取得し(ステップS108)、水素の吸蔵率が例えば1.0以上3.5以下、好ましくは1,5以上3.0以下に近接しているか否かを判定する(ステップS109)。水素の吸蔵率が上記所定値に到達するまでに未だ余裕があれば(ステップS109:No)、水素の吸蔵率の取得を継続する(ステップS108)。
【0109】
水素の吸蔵率が上記所定値に近接していた場合には(ステップS109:Yes)、ガスシリンダ11、タンク13、及びガス管12等を含む水素供給ラインと反応器21とを遮断する(ステップS110)。これにより、反応器21内への水素ガスの供給が一旦停止される。
【0110】
水素供給ラインと反応器21とを遮断した後、試料SM中の水素の吸蔵率を取得し(ステップS111)、試料SMと水素との反応が進行して水素の吸蔵率が所望の値となったか否かを判定する(ステップS112)。
【0111】
水素の吸蔵率が所望の値となったか否かは、例えば水素の供給ラインに設けられた圧力計14a,14bの差圧によって判定することができる。圧力計14a,14bの差圧が、例えば5kPa以上200kPa以下、好ましくは20kPa以上100kPa以下であれば、水素の吸蔵率が所望の値となったと推測される。
【0112】
例えば圧力計14a,14bの差圧等に基づく水素の吸蔵率が所望の値でなければ(ステップS112:No)、水素の吸蔵率の取得を継続する(ステップS111)。
【0113】
水素の吸蔵率が所望の値であった場合には(ステップS112:Yes)、水素供給ラインと反応器21とを開放する(ステップS113)。これにより、反応器21内への水素ガスの供給が再開される。
【0114】
これ以降、ステップS107~S113までの処理を繰り返す。このように、ステップS108~S113までの発熱反応の再活性化処理を含む発熱反応処理を行うことで、発熱反応処理中、試料SMの水素の吸蔵率が例えば1.0以上3.5以下に制御される。発熱反応処理は、例えば3日以上7日以下の間、行われる。
【0115】
以上により、実施形態の過剰熱発生処理が終了する。
【0116】
(ナノ複合金属材料の例)
上述のように、実施形態のナノ複合金属材料は、例えばナノニッケルコア-銅シェル構造を有する二元素金属粒子がセラミックス製の担体に担持された構造を有する。このようなナノ複合金属材料は、例えば以下のように製造される。
【0117】
まず、二元素金属粒子および担体に含有されることとなる複数種類の金属の合金を原材料として、メルトスピニング法による処理、及び加熱による酸化処理を経て微細金属粒子が生成される。この微細金属粒子に対し、焼成処理、加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び再焼成処理を行うことでナノ複合金属材料が得られる。
【0118】
あるいは、上記のように得られたナノ複合金属材料に対し、加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び再焼成処理を更に繰り返し行って製造されるナノ複合金属材料を発熱反応装置100における発熱反応に用いてもよい。
【0119】
以下に、図3及び図4を用いて、発熱反応装置100における発熱反応に用いられるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの製造方法について説明する。以下の例では、担体としてジルコニア(ZrO)セラミックスを用いる場合について説明する。
【0120】
図3は、実施形態にかかるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの製造方法の一例を示す模式図である。
【0121】
図3に示すように、メルトスピニング法(溶融急冷法)により、Cu-Ni-Zr合金61を溶融し、急冷することによって、アモルファス金属62を生成する。メルトスピニング法は、高温で溶融された合金を結晶化に要する時間より短い時間で急冷し、アモルファス(非晶質)金属を得る方法である。
【0122】
すなわち、Cu-Ni-Zr合金61を加熱炉71で加熱することで溶融し、溶融した液体を、高速回転する冷却ロール72の表面に吹き付ける。溶融された液体は、高速回転する冷却ロール72と接触することにより凝固し、リボン状のアモルファス金属62が生成される。リボン状のアモルファス金属62の厚みは、冷却ロール72への供給量および冷却ロール72の回転速度などを調整することで、例えば5μm以上50μm以下の厚さの範囲に調整される。
【0123】
次に、アモルファス金属62を大気中で酸化処理する。すなわち、例えばアモルファス金属62をるつぼ80内に投入し、400℃以上600℃以下の温度で100時間以上200時間以下の間、加熱する。これにより、アモルファス金属62が酸化処理される。この酸化処理により、ジルコニウム(Zr)が酸化してジルコニア(ZrO)が得られる。
【0124】
次に、酸化処理後のアモルファス金属62を粉砕する粉砕処理を行うことによって、微細金属粒子63を得る。粉砕処理には、例えば乳鉢および乳棒の少なくともいずれかを自動的に回転させて行う自動乳鉢処理を用いることができる。微細金属粒子63の体積平均粒径は、0.05mm以上0.3mm以下の範囲を少なくとも含むことが好ましい。
【0125】
次に、微細金属粒子63を大気中でベーキング処理することで、ナノ複合金属材料CNZcが得られる。なお、大気中でのベーキング処理を、これ以降、焼成処理とも呼ぶことがある。
【0126】
焼成処理において、微細金属粒子63の温度は300℃以上600℃以下の範囲に維持される。また、焼成処理における温度は、400℃以上500℃以下の範囲が好ましく、450℃以上500℃以下の範囲が更に好ましく、例えば450℃とすることができる。焼成処理の時間は、120時間以上180時間以下の範囲が好ましい。
【0127】
上記の焼成処理により、微細金属粒子63に化学的な変性が生じ、ナノニッケルコア-銅シェル構造を有する二元素金属粒子が、ジルコニアセラミックスの担体内部および表面に凝着または融着した状態となる。
【0128】
次に、上記のナノ複合金属材料CNZcに対して加熱処理を行う。これにより、ナノ複合金属材料CNZhが得られる。
【0129】
ナノ複合金属材料CNZcに対する加熱処理は、例えば上述の発熱反応装置100を用い、上述の加熱処理と同様の条件で行うことができる。すなわち、例えば200℃以上450℃以下の温度で、10時間以上72時間以下の間、1Pa未満の真空条件下でナノ複合金属材料CNZcを加熱処理する。
【0130】
次に、加熱処理後のナノ複合金属材料CNZhに水素吸蔵処理を行う。これにより、ナノ複合金属材料CNZaが得られる。
【0131】
ナノ複合金属材料CNZhに対する加熱処理は、例えば引き続き、上述の発熱反応装置100を用い、上述の水素吸蔵処理と同様の条件で行うことができる。すなわち、真空状態かつ室温で、ガス圧が例えば0.5MPa以上1MPa以下の水素ガスをナノ複合金属材料CNZhに供給し、24時間以上48時間以下の間、水素吸蔵処理を行う。
【0132】
次に、水素を吸蔵させたナノ複合金属材料CNZaを昇温して発熱反応処理を行う。これにより、ナノ複合金属材料CNZeが生成される。
【0133】
ナノ複合金属材料CNZaに対する発熱反応処理は、例えば引き続き、上述の発熱反応装置100を用い、上述の発熱反応処理と同様の条件で行うことができる。すなわち、ナノ複合金属材料CNZaへの水素ガスの供給を維持したまま、真空条件下で例えば250℃以上450℃以下に昇温し、ナノ複合金属材料CNZaと水素とのMHE反応を生じさせる。発熱反応処理は例えば3日以上7日以下の間、行われる。
【0134】
以上の加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理は、複数回繰り返し行われてもよい。
【0135】
次に、ナノ複合金属材料CNZeに対して再焼成処理を行う。これにより、ナノ複合金属材料CNZが製造される。
【0136】
再焼成処理は、大気中で行われるベーキング処理であり、上述の焼成処理と同様の条件で行われる。すなわち、ナノ複合金属材料CNZeを、例えば120時間以上180時間以下の間、300℃以上600℃以下の温度で加熱する。これにより、実施形態のナノ複合金属材料CNZが製造される。
【0137】
また、上述のように、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を所定回数行った後、再焼成処理を1回行う処理を所定回数繰り返し、実施形態のナノ複合金属材料CNZnを製造してもよい。
【0138】
つまり、実施形態のナノ複合金属材料CNZは、微細金属粒子63を焼成して得られるナノ複合金属材料CNZeに対して、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を所定回数行い、更に再焼成処理を1回行うことで製造されるナノ複合金属材料である。また、実施形態のナノ複合金属材料CNZnは、微細金属粒子63を焼成して得られるナノ複合金属材料CNZeに対して、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を所定回数行い、更に再焼成処理を1回行う処理をn回繰り返すことで製造されるナノ複合金属材料である。
【0139】
図4は、実施形態にかかるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの製造方法の手順の一例を示すフロー図である。
【0140】
図4に示すように、Cu-Ni-Zr合金61から微細金属粒子63を生成する(ステップS121)。すなわち、上述のように、メルトスピニング法によって、Cu-Ni-Zr合金61からアモルファス金属62を生成する。また、アモルファス金属62を大気中で酸化処理し、その後、粉砕処理を行うことによって微細金属粒子63を生成する。
【0141】
次に、微細金属粒子63に対し、例えば120時間以上180時間以下の間、300℃以上600℃以下の温度で、大気中にて焼成処理を行う(ステップS122)。これにより、第1の生成物としてのナノ複合金属材料CNZcが生成される。
【0142】
次に、加熱処理(ステップS131)、水素吸蔵処理(ステップS132)、及び発熱反応処理(ステップS133)を、所定回数に達するまでこの順に繰り返す(ステップS130)。これらの処理の実施回数は1サイクル、または複数サイクルとすることができる。
【0143】
すなわち、加熱処理(ステップS131)では、例えば200℃以上450℃以下の温度で、10時間以上72時間以下の間、1Pa未満の真空条件下で、ナノ複合金属材料CNZcを加熱する。これにより、第2の生成物としてのナノ複合金属材料CNZhが生成される。
【0144】
また、水素吸蔵処理(ステップS132)では、真空状態かつ室温で、ガス圧が例えば0.5MPa以上1MPa以下の水素ガスを供給し、24時間以上48時間以下の間、ナノ複合金属材料CNZhに水素ガスを吸蔵させる。これにより、第3の生成物としてのナノ複合金属材料CNZaが生成される。
【0145】
また、発熱反応処理(ステップS133)では、水素ガスの供給を維持したまま、真空条件下で例えば250℃以上450℃以下に昇温し、ナノ複合金属材料CNZaと水素とのMHE反応を行う。これにより、第4の生成物としてのナノ複合金属材料CNZeが生成される。
【0146】
これらの処理を所定サイクル行った後、ナノ複合金属材料CNZeに対し、例えば120時間以上180時間以下の間、300℃以上600℃以下の温度で、大気中にて再焼成処理を行う(ステップS134)。これにより、実施形態のナノ複合金属材料CNZが生成される。
【0147】
なお、ステップS130(ステップS131~S133)を所定サイクル実施し、更にステップS134の処理を1回実施する処理を、サイクル処理と呼ぶことがある。サイクル処理は複数回繰り返してもよい。
【0148】
サイクル処理をn回繰り返す場合においては、n回目のサイクル処理において、加熱処理(ステップS131n)、水素吸蔵処理(ステップS132n)、及び発熱反応処理(ステップS133n)を、所定回数に達するまでこの順に繰り返す(ステップS130n)。これらの処理の実施回数は1サイクル、または複数サイクルとすることができる。
【0149】
これらの処理を所定サイクル行った後、ナノ複合金属材料CNZeに対し、例えば120時間以上180時間以下の間、300℃以上600℃以下の温度で、大気中にて再焼成処理を行う(ステップS134n)。これにより、実施形態のナノ複合金属材料CNZnが生成される。
【0150】
以上により、実施形態のナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnが製造される。
【0151】
次に、図3及び図4の製造方法によって得られるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの構成例について説明する。図5は、実施形態にかかるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの構成の一例を示す模式図である。
【0152】
図5に示すように、実施形態のナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnは、担体CRと、担体CRに担持された二元素金属粒子PRと、から構成される。
【0153】
担体CRは、内部と表面にナノサイズの細孔(nano pore)を有するジルコニア(ZrO)セラミックスである。ナノサイズとは、例えば2nm以上50nm以下の範囲を指す。担体CRの外形は、例えば球状、楕円状、または多角形状等であってよく、特に限定されない。
【0154】
二元素金属粒子PRは、担体CRの内部および表面の細孔に担持されている。担体CRに担持された状態とは、焼成などの化学的な処理により、担体CRの内部および表面に二元素金属粒子PRが凝着または融着した状態を意味する。また、担体CRの内部に担持された状態とは、担体CRの細孔の表面に担持されていることを意味する。
【0155】
二元素金属粒子PRは、銅(Cu)及びニッケル(Ni)の二元素から構成される金属ナノ粒子である。より具体的には、二元素金属粒子PRは、ニッケルをコアとし、銅をシェルとするナノニッケルコア-銅シェル構造を有している。二元素金属粒子PRの外形は、例えば球状、楕円状、多角形状、直線状、または少なくとも一部が捻じれた状態の紐形状等であってよく、特に限定されない。
【0156】
ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの体積平均粒径は、0.01mm以上1mm以下、好ましくは0.05mm以上0.5mm以下、より好ましくは0.05mm以上0.3mm以下の範囲を少なくとも含む。ここでは、担体CRの体積平均粒径をナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの体積平均粒径としており、例えば図5に示す粒径L1である。
【0157】
二元素金属粒子PRの体積平均粒径は、例えば図5に示す粒径L2であり、例えば2nm以上50nm以下、好ましくは2nm以上20nm以下、より好ましくは2nm以上10nm以下の範囲である。
【0158】
より詳細には、ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZn、及び二元素金属粒子PRの体積平均粒径は、以下のように測定される。
【0159】
すなわち、測定装置としてNEC社製、製品名:STEM/EDSを用い、200keV電子ビームスキャンの条件で元素分布マップを測定する。このように得られた測定結果に基づいて、ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZn、及び二元素金属粒子PRの各々の形状を1nm以下の分解能で画像解析することで、体積平均粒径を測定することができる。
【0160】
ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの担体CRに含まれるジルコニウム(Zr)の酸化度は、例えば31%超100%以下、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、更に好ましくは90%以上100%以下である。担体CR中のジルコニウム(Zr)の酸化度は、上記の焼成処理における焼成温度および焼成時間を調整することで調整可能である。
【0161】
また、上記酸化度は、焼成処理前の微細金属粒子63の重量に対する、焼成処理後のナノ複合金属材料CNZnの重量の比としている。具体的には、450℃で120時間以上180時間以下の焼成条件で焼成処理を行う。このとき、焼成処理前に対する焼成処理後のナノ複合金属材料CNZcの重量増加率を測定し、焼成処理による酸素付加量の増加率である酸化度としている。
【0162】
ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnの組成としては、銅とニッケルとの原子数比(Cu:Ni)が、例えば1:7以上1:15以下、好ましくは1:7以上1:12以下の範囲である。また、NiとZrとの原子数比は、例えば1:2以上1:4以下、好ましくは1:2以上1:3以下の範囲である。
【0163】
ナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnにおける以上の組成は、微細金属粒子63を生成する際の仕込み量である、Cu-Ni-Zr合金61の原子比(質量比)を調整することで制御される。
【0164】
以上のように、測定可能な物理量は、いずれのナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnにおいても略同等の値を示す。また、上述の図3に示す微細金属粒子63を焼成して得られるナノ複合金属材料CNZc、及び1回目のサイクル処理における発熱反応処理後であって、再焼成処理前のナノ複合金属材料CNZeにおいても、上記物理量は略同等の値となる。
【0165】
しかしながら、ナノ複合金属材料CNZeは、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を経ることで、例えばナノ複合金属材料CNZcよりも高い過剰熱を発生させる。また、ナノ複合金属材料CNZは、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理に加えて再焼成処理を経ることで、例えばナノ複合金属材料CNZeよりも飛躍的に高い過剰熱を発生させる。また、加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び再焼成処理を繰り返すほど、つまり、サイクル処理を繰り返し行ってナノ複合金属材料CNZnのn数が増すほど、ナノ複合金属材料CNZnから得られる過剰熱が高まる傾向にある。
【0166】
このメカニズムについては未解明の部分が多く、ナノ複合金属材料CNZc,CNZe,CNZ・・・CNZnを明瞭に区別することが可能な測定方法および物理量についても今のところ不明な点が多い。それを踏まえたうえで、現時点における本発明者らによる考察を以下に記載する。
【0167】
まず、微細金属粒子63を生成する際、アモルファス金属62の酸化処理によって、ニッケルは殆ど酸化されないものの、銅の少なくとも一部が酸化した酸化銅の状態となっていると考えられる。このような微細金属粒子63を焼成したナノ複合金属材料CNZcを加熱し、更に水素ガスを吸蔵させることで、ナノ複合金属材料CNZc中の酸化銅に含まれる酸素原子と水素ガスとが反応し、酸素が水または重水として排出され、担体CRの表面には、酸素原子の離脱によるホールが形成された状態となると考えられる。
【0168】
また、その後の発熱反応処理において、水素を吸蔵させたナノ複合金属材料CNZaが加熱されると、上述のように、ナノ複合金属材料CNZa中に吸蔵されていた水素の少なくとも一部が脱蔵する。この水素の脱蔵時に、二元素金属粒子PRが微粉化された状態で担体CR上に担持された状態となり、不完全コア-シェル構造の表面上に水素クラスタにより形成される発熱サイトの数が増大すると考えられる。
【0169】
より具体的には、一部の水素の脱蔵によって、不完全コア-シェル構造のコア表面に、ナノ触媒へこみ構造が形成されると考えられる。このようなナノ触媒へこみ構造は、理論モデルではサブナノホールと呼ばれている。
【0170】
これにより、ナノ複合金属材料CNZeにおいて、過剰熱の増大を図ることができると考えられる。
【0171】
また、このような発熱サイトの数は、上述の加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理と、再焼成処理とを組み合わせることによって更に増加し、ニッケルコアO-サイトが水素で充填した状態での昇温フォノン励起による内部水素クラスタを誘起するニッケルコアTサイトでの発熱反応が、水素の脱蔵と吸蔵との昇温下の動的なバランスのもとで大きく増大すると考えられる。このため、ナノ複合金属材料CNZにおいて、過剰熱の更なる増大を図ることができると考えられる。
【0172】
また、発熱サイトの数は、加熱処理、水素吸蔵処理、発熱反応処理、及び再焼成処理のサイクル処理を繰り返すことで、更に増大させることができる。よって、ナノ複合金属材料CNZnのn数が増すほど、更に過剰熱を増大させることができる。
【0173】
一例として、ナノ複合金属材料CNZにおいては、100W/kg以上の過剰熱が得られる。この場合、過剰熱は、例えば試料SMと同量のジルコニアビーズ等の不発熱ブランク試料に対し、反応器21内で同様の処理を行った場合に得られる熱量更正試験データと比較することによって算出される。
【0174】
また例えば、上述のサイクル処理を2回繰り返したナノ複合金属材料CNZにおいては、200W/kg以上の過剰熱が得られる。
【0175】
なお、上述の例では、実施形態のナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnに対し、実施形態の過剰熱発生方法を適用することとした。しかし、発熱量は落ちるものの、ナノ複合金属材料CNZc,CNZe等に対し、実施形態の過剰熱発生方法を適用してもよい。
【0176】
また、上述の図3図5の例では、担体CRはジルコニア(ZrO)セラミックスであることとしたが、担体CRを構成するセラミックスはこれに限定されず、例えばジルコニウム(Zr)、ジルコニア(ZrO)、メゾポーラスシリカ、ゼオライト、またはカーボンナノチューブ等であってよい。
【0177】
(概括)
ナノ複合金属材料と水素とで発熱反応を生じさせる技術がある。すなわち、ナノ複合金属材料に水素ガスを吸蔵させたうえで昇温すると、MHE反応と呼ばれる発熱反応が起きる。所定時間が経過すると、ナノ複合金属材料の発熱量は低下するため、MHE反応を如何に長時間継続させるかが課題となる。例えば、反応器に設けられた加熱体等によって、ナノ複合金属材料を更に加熱して発熱量の増大を図ることが考えられる。
【0178】
しかしながら、発熱量が低下し、あるいは発熱しなくなったナノ複合金属材料を反応器内に装荷したまま、再び発熱量を増大させるのは困難である。
【0179】
実施形態の発熱反応装置100によれば、MHE反応中に、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が所定値に近づくと、バルブ15bを制御して反応器21内への水素の供給を停止し、所定時間後にバルブ15bを制御して反応器21内への水素の供給を再開して、反応器21内に収容されたナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御する。
【0180】
ナノ複合金属材料と水素とのMHE反応においては、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が1.0以上3.5以下の場合、ピーク値に近い過剰熱を得ることができる。上記のようなバルブ15bの開閉動作による発熱反応の再活性化処理を適宜行うことで、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御して、長期間、安定的に過剰熱を発生させることができる。
【0181】
実施形態の発熱反応装置100によれば、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率が例えば1.0以上3.5以下、好ましくは1.5以上3.0以下になると、バルブ15bを制御して反応器21内への水素の供給を停止する。このように、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率に基づいてバルブ15bを制御することで、ナノ複合金属材料の水素の吸蔵率を1.0以上3.5以下の範囲内に制御して、長期間、安定的に過剰熱を発生させることができる。
【0182】
実施形態の発熱反応装置100によれば、反応器21内への水素の供給停止後、圧力計14a,14bの差圧が10kPa以上200kPa以下になると、バルブ15bを制御して反応器21内への水素の供給を再開する。このように、所定の差圧に達した状態で水素ガスの供給を再開することで、ナノ複合金属材料への水素ガスの吸蔵を促進することができる。よって、発熱量が低下し、あるいは発熱しなくなったナノ複合金属材料を再活性化することができ、再度、発熱反応を活発化させ、また、発熱量を増大させることができる。
【0183】
実施形態の過剰熱発生方法によれば、Cu、Ni、及びZrを含むアモルファス金属を粉砕処理した微細金属粒子63を焼成処理してナノ複合金属材料CNZcを生成し、加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を1サイクル以上行い、再焼成処理を1回行うサイクル処理を1回以上行って製造されるナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnをMHE反応させる。このようなナノ複合金属材料CNZ・・・CNZnを用いることにより、MHE反応により得られる過剰熱を増大させることができる。
【実施例0184】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0185】
(試料の生成)
まずは、以下のように微細金属粒子を生成した。以下の微細金属粒子は、上述の図2における微細金属粒子63の一例である。
【0186】
Cu-Ni-Zr合金を加熱炉で加熱することで溶融し、溶融した液体を、回転される冷却ロールに供給した。溶融された液体は、回転する冷却ロールと接触することにより凝固し、リボン状のアモルファス金属が生成した。
【0187】
このアモルファス金属をるつぼ内に投入し、大気中で、450℃の温度で120時間加熱した。加熱後のアモルファス金属を、自動乳鉢を用いて粉砕することによって、微細金属粒子を生成した。
【0188】
次に、上述の微細金属粒子からナノ複合金属材料を生成した。以下のナノ複合金属材料は、上述の図2におけるナノ複合金属材料CNZの一例である。
【0189】
上記のように生成した微細金属粒子を電気炉に投入し、大気中において、450℃で120時間焼成した。この焼成処理によりナノ複合金属材料を生成した。このナノ複合金属材料は、上述の図2におけるナノ複合金属材料CNZcの一例である。
【0190】
次に、上記のように生成したナノ複合金属材料を電気炉内に供給した。また、電気炉内を真空状態とし、24時間加熱して加熱処理を行った。次に、電気炉内を真空状態に維持した状態で水素ガスを供給して水素吸蔵処理を行った。そして、この状態を24時間維持した後、電気炉内への水素ガスの供給を継続したまま電気炉内を加熱することで、電気炉内内の材料温度分布を最低200℃、最高450℃以下の温度範囲で制御して発熱反応処理を数日間実施した。
【0191】
以上の加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を所定回数実施して、ナノ複合金属材料を生成した。このナノ複合金属材料は、上述の図2におけるナノ複合金属材料CNZeの一例である。
【0192】
また、上記のナノ複合金属材料を電気炉に投入し、大気中において、450℃で120時間、再焼成した。この再焼成処理によりナノ複合金属材料を生成した。このナノ複合金属材料は、上述の図2におけるナノ複合金属材料CNZの一例である。
【0193】
また、上記のように生成したナノ複合金属材料に対し、上記の加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を所定回数行って、更に再焼成処理を1回行うサイクル処理を更にもう1回行って、上述の実施形態におけるナノ複合金属材料CNZにあたる、実施例のナノ複合金属材料を生成した。
【0194】
(過剰熱発生試験)
次に、上記のように生成したナノ複合金属材料を試料として電気炉内に供給し、上記と同様に加熱処理、水素吸蔵処理、及び発熱反応処理を行って、過剰熱発生試験を行った。図6にその結果を示す。
【0195】
図6は、実施例にかかるMHE反応の反応器中心温度と過剰熱量との反応応答の代表例を示すグラフである。グラフの横軸は、経過時間(hh:mm)である。グラフ左側の縦軸は試料の中心温度Trc(℃)であり、グラフ右側の縦軸は単位時間あたりの過剰熱量Wex(W)である。
【0196】
過剰熱発生試験には、上述の実施形態の発熱反応装置100と同様の装置を用いた。発熱反応装置の反応器の容量は約0.4Lであり、水素ガスの供給源となる水素供給源の容量は約7.7Lとした。
【0197】
試料から得られる過剰熱量は、電気炉内に設けられ、試料の中心部の温度を測定可能な温度センサの測定値と、熱量更正試験データとを比較することにより算出した。熱量更正試験データは、試料と同量のジルコニアビーズの不発熱ブランク試料における温度センサの測定値である。
【0198】
図6に示すように、電気炉内で試料の中心温度を上げていくと、経過時間が2時間~3時間以内で過剰熱量も急激に上昇していき、経過時間が5時間程度になると過剰熱量のピークを迎える。その後は、試料の中心温度、過剰熱量ともに安定値を示している。このように、MHE反応のごく初期を除き、試料の中心温度と過剰熱量とには相関がみられた。
【0199】
(再活性化試験)
引き続き、上記の過剰熱発生試験を継続し、その間、発熱反応の再活性化処理を適用した。すなわち、上記の過剰熱発生試験における発熱反応処理中に、複数回に亘って断続的に発熱反応の再活性化処理を行った。図7にその結果を示す。
【0200】
図7は、実施例にかかる発熱反応の再活性化処理の適用例を示すグラフである。
【0201】
図7(a)のグラフの横軸は、経過時間(hh:mm)である。グラフ左側の縦軸は試料の中心温度Trc(℃)であり、グラフ右側の縦軸は試料中の水素吸蔵率(H/Ni)である。
【0202】
図7(b)のグラフの横軸は、経過時間(hh:mm)である。グラフ左側の縦軸は試料の中心温度Trc(℃)であり、グラフ右側の縦軸は水素供給源側の圧力P(MPa)及び反応器側の圧力P(MPa)である。
【0203】
発熱反応処理中は、反応器に設けられた加熱体への入電電力を160Wとした。ただし、経過時間が144時間~215時間までの71時間の間は、試料の加熱を一旦停止し、MHE反応を中断した。したがって、この間のデータは参照しないものとする。
【0204】
図7(a)に示すように、昇温の初期において、1.0未満であった試料中の水素の吸蔵率は、昇温が進行していくにつれて増大していき、吸蔵率が1.0以上になると急激にMHE反応による過剰熱が発生し、試料の中心温度は1000℃近くにまで上昇する。上記の図6の例によれば、試料の中心温度が900℃を超えると、単位時間あたり24W程度の過剰熱量が安定的に得られていると考えられる。
【0205】
その後、水素の吸蔵率が2.0を超えた辺りで吸蔵率の上昇が止まり、略横ばいとなっている。これに伴い、900℃以上に維持されていた試料の中心温度が、ポイントDPを境に800℃近くにまで低下しており、単位時間あたりの過剰熱量も低下していると考えられる。
【0206】
そこで、288時間が経過した以降、断続的に複数回の発熱反応の再活性化処理を行った。
【0207】
図7(b)に示すように、経過時間が288時間となった時、水素供給ラインと反応器とを遮断するバルブを閉じて、所定時間経過後、再びバルブを開放した。バルブを閉じてから開放するまでの間、水素供給源側の圧力Pは略一定に維持され続け、反応器側の圧力Pは試料中に水素ガスが吸蔵され続けるため低下していった。
【0208】
バルブを開いてから1日経過した後、再びバルブを閉じて、所定時間経過後、開放した。その後、さらに1日経過した後、バルブを閉じて、所定時間経過後、開放した。このように、バルブの開閉を1日1回行う動作を4回繰り返した。
【0209】
図7(a)に示すように、初回のバルブの開閉動作では、バルブを閉じてから4時間後にバルブを再び開けた。その際、水素供給源側と反応器側との差圧は6kPaであった。このようなバルブの開閉動作に連動して、バルブの開放後、試料中の水素の吸蔵率が増大するとともに、試料の中心温度が上昇している。これに伴い、単位時間あたりの過剰熱量も増大したものと考えられる。
【0210】
また、2回目のバルブの開閉動作では、バルブを閉じてから2時間後にバルブを再び開けた。その際、水素供給源側と反応器側との差圧は7kPaであった。しかしながら、このときには、試料中の水素の吸蔵率、及び試料の中心温度ともに目立った変化は見られなかった。このことから、バルブを開くタイミングは、水素供給源側と反応器側との差圧が、10kPa以上のときが好ましく、20kPa以上のときがより好ましいことが判る。
【0211】
また、3回目のバルブの開閉動作では、バルブを閉じてから6時間後にバルブを再び開けた。その際、水素供給源側と反応器側との差圧は10kPaであった。この際にも、バルブの開放後、試料中の水素の吸蔵率が増大するとともに、試料の中心温度が上昇している。これに伴い、単位時間あたりの過剰熱量も増大したものと考えられる。
【0212】
また、4回目のバルブの開閉動作では、バルブを閉じてから4時間後にバルブを再び開けた。その際、水素供給源側と反応器側との差圧は56kPaであった。この際にも、バルブの開放後、試料中の水素の吸蔵率が増大するとともに、試料の中心温度が上昇している。これに伴い、単位時間あたりの過剰熱量も増大したものと考えられる。
【0213】
以上のように、試料中への水素の吸蔵率が所定値に近づいて、過剰熱の発生が低下した後であっても、適宜、発熱反応の再活性化処理を行うことで、試料を再度活性化して、過剰熱の発生を促進し、MHE反応を継続可能であることが判った。
【0214】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0215】
10 水素供給機構
11 水素供給源
13 タンク
14a,14b 圧力計
15b バルブ
17 真空ポンプ
20 発熱反応機構
21 反応器
24a,24b 加熱体
26a~26f 温度センサ
30 循環機構
40 排気機構
50 制御機構
51 コントローラ
100 発熱反応装置
CNZ・・・CNZn,NCZc,NCZe ナノ複合金属材料
CR 担体
PR 二元素金属粒子
SM 試料




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7